JP2004010879A - ウレタン樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】
ポリ塩化ビニル樹脂を含まない下地塗料に添加して用いられ、下地塗料で形成された塗装被膜の柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性等の物性を改質でき、簡便に調製できるウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決の手段】
ウレタン樹脂組成物は、ポリオールおよび有機イソシアナートを重縮合させたウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基がブロック化剤で保護されているウレタンプレポリマーブロック体と、該ウレタンプレポリマーブロック体が脱保護された該末端イソシアナート基同士を架橋する架橋剤とを含み、自己架橋型をして作用するものである。
ポリ塩化ビニル樹脂を含まない下地塗料に添加して用いられ、下地塗料で形成された塗装被膜の柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性等の物性を改質でき、簡便に調製できるウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決の手段】
ウレタン樹脂組成物は、ポリオールおよび有機イソシアナートを重縮合させたウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基がブロック化剤で保護されているウレタンプレポリマーブロック体と、該ウレタンプレポリマーブロック体が脱保護された該末端イソシアナート基同士を架橋する架橋剤とを含み、自己架橋型をして作用するものである。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車車体等の基材の塗料に添加して用いられ、塗料の柔軟性や伸び性等の物性を改質するためのウレタン樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車車体等の基材に、シーリング塗料や耐チッピング塗料のような下地塗料で下地を形成した上に、上塗り塗料で塗装が施される。
【0003】
従来、下地塗料としてポリ塩化ビニル樹脂を含有するプラスチゾルが汎用されていた。
【0004】
ポリ塩化ビニル樹脂は、柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性等の物性が優れているので、これを含有するプラスチゾルで形成された塗装被膜も同様にこれら物性が優れている。しかし、ポリ塩化ビニル樹脂は焼却時に有害な物質を発生するおそれがある。
【0005】
そのため、ポリ塩化ビニル樹脂に代えて水性エマルション樹脂、水性樹脂またはウレタン樹脂を含有する組成物が検討されているが、いずれで形成した被膜もポリ塩化ビニル樹脂含有プラスチゾルで形成した被膜ほどの優れた物性が得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、ポリ塩化ビニル樹脂を含まない下地塗料に添加して用いられ、下地塗料で形成された塗装被膜の柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性等の物性を改質でき、簡便に調製できるウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するためになされた本発明のウレタン樹脂組成物は、ポリオールおよび有機イソシアナートを重縮合させたウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基がブロック化剤で保護されているウレタンプレポリマーブロック体と、該ウレタンプレポリマーブロック体が脱保護された該末端イソシアナート基同士を架橋する架橋剤とを、含んでいる。
【0008】
このウレタン樹脂組成物にアクリル樹脂微粉末が添加されたプラスチゾルを硬化させると、ポリ塩化ビニル樹脂含有プラスチゾルと同等な柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性等の物性を有する優れた塗装被膜を形成する。
【0009】
ブロック化剤がオキシム、第二アミン、フェノール、アルコール、または水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。ブロック化剤は、具体的には、オキシムとしてアセトオキシムのようなアルドオキシム、メチルエチルケトオキシムやメチルイソブチルケトオキシムのようなケトオキシムが挙げられ、第二アミンとしてジブチルアミン、ジシクロへキシルアミン、ジ−2−エチルへキシルアミンのような第二アルキルアミンが挙げられ、フェノールとしてアルキルフェノール、ヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられ、アルコールとしてアルキルアルコールが挙げられ、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしてβ−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ライトエステル(共栄社化学株式会社製の商品名)、エポキシエステル(共栄社化学株式会社製の商品名)が挙げられる。ブロック化剤は、ウレタンプレポリマーを構成する有機イソシアナートの種類に応じて、またはウレタン樹脂組成物を含ませた塗料用プラスチゾルで被膜を形成するための加熱処理温度に応じて、適宜選択されるが、メチルエチルケトオキシム、ジシクロヘキシルアミンであると一層好ましい。
【0010】
ウレタンプレポリマーを形成するポリオールは、ポリエーテルポリオールである。ポリエーテルポリオールとして、低分子アルコールや低分子アミンやフェノールのような2〜5個の活性水素含有官能基を有する低分子化合物に、炭素数2〜6のアルキレンオキサイドが付加した付加物が挙げられる。低分子アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ヒマシ油、およびこれらの誘導体が好ましく、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリンであると一層好ましい。低分子アミンは、モノエタノールアミンやジエタノールアミンやトリエタノールアミンのようなアルカノールアミン;エチレンジアミンやジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのような脂肪族ポリアミン;これら脂肪族ポリアミンのn−アルキル基置換体、これら脂肪族ポリアミンのアリル基置換体;トリレンジアミンのような芳香族ポリアミンのn−アルキル基置換体、芳香族ポリアミンのアリル基置換体;ピペリジンやN−アミノエチルピペリジンのような複素環ポリアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンのような脂肪族ポリアミンへのアルキレンオキサイドの付加物が好ましく、中でも脂肪族ポリアミン1当量へのプロピレンオキサイド0.1〜16当量の付加物がなお一層好ましい。低分子アミンはこれらの混合物であってもよい。フェノールは、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、およびビスフェノールであることが好ましい。アルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドのいずれか、またはこれらの二種以上の混合物が好ましく、プロピレンオキサイドを50重量%以上含有するエチレンオキサイド混合物であると一層好ましい。二種以上のアルキレンオキサイドの混合物を用いると、低分子ポリオール等の低分子化合物にランダム重合、またはブロック重合したポリオールが得られる。
【0011】
ウレタンプレポリマーを形成するポリオールは、ポリエステルポリオールであってもよい。ポリエステルポリオールとして、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライドのいずれかのジカルボン酸の誘導体と、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコールのような低分子ポリオール、好ましくはグリセリンやジグリセリンを、重縮合させたポリエステルポリオール;このジカルボン酸の誘導体が、アルキレンオキサイドに重付加した重付加物;ξ−カプロラクトンやδ−バレロラクトンのようなラクトンを、前記の低分子ポリオールで開環重合させたポリラクトンポリオールエステルが挙げられる。ジカルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、ダイマー酸のような脂肪酸ジカルボン酸、またはその酸無水物;テレフタル酸、イソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸、またはその酸無水物が好ましく、脂肪族ジカルボン酸であると一層好ましく、アジピン酸であるとなお一層好ましい。
【0012】
ウレタンプレポリマーを形成するポリオールは、(メタ)アクリル共重合ポリオールであってもよい。(メタ)アクリル共重合ポリオールは例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシルのような(メタ)アクリル酸の誘導体とが共重合したものである。
【0013】
ウレタンプレポリマーを形成するポリオールは、前記のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、(メタ)アクリル共重合ポリオールを複数混合して用いてもよい。
【0014】
これらのポリオールは、水酸基当量、すなわちポリオールの平均分子量を1分子中の平均水酸基数で除した水酸基1個当たりの分子量が、50〜2,000であると好ましい。水酸基当量が50未満であると、ウレタン樹脂組成物にアクリル樹脂微粉末が添加されたプラスチゾルを加熱し硬化させた塗装被膜は、結晶性が高くなって柔軟性が低くなってしまう。一方、水酸基当量が2,000より大きいと塗装被膜の強度が著しく低下してしまう。水酸基当量が100〜1,500であると一層好ましい。
【0015】
ウレタンプレポリマーを形成する有機イソシアナートは、芳香族ジイソシアナート、鎖状脂肪族ジイソシアナート、および環状脂肪族ジイソシアナートの少なくともいずれかの単量体または多量体であることが好ましい。芳香族ジイソシアナートは、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメライズジフェニルメタンジイソシアナート、ウレタン変性ジフェニルメタンジイソシアナート、変性ジフェニルメタンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、トリフェニルメタンジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ジフェニルスルホンジイソシアナートが挙げられ、中でもトリレンジイソシアナート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアナートであると特に好ましい。鎖状脂肪族ジイソシアナートは、へキサメチレンジイソシアナート、トリメチルへキサメチレンジイソシアナートが挙げられる。環状脂肪族ジイソシアナートは水添ジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロへキシルイソシアナート、3−イソシアナートエチル−3,5,5−トリエチルシクロへキシルイソシアナートが挙げられる。有機イソシアナートは、芳香族ジイソシアナートと、鎖状脂肪族ジイソシアナートや環状脂肪族ジイソシアナートとの各単量体の混合物であってもよい。有機イソシアナートは、芳香族ジイソシアナート、鎖状脂肪族ジイソシアナート、および環状脂肪族ジイソシアナートのいずれかから得られ、または任意比の混合物から得られる、ウレタン変性体、二量体、三量体、カルボジイミド変性、アロハネート変性体、ウレア変性体、またはビュレット変性体のような有機イソシアナート多量体であってもよい。
【0016】
ポリオールおよび有機イソシアナートを重縮合させてウレタンプレポリマーを調製する際、ポリオールがその水酸基の1当量に対し、有機イソシアナートがそのイソシアナート基の1.2〜2当量好ましくは1.5〜2当量となるモル比で用いられると好ましい。ウレタンプレポリマー平均分子量を、残存するイソシアナート基平均数で除したイソシアナート当量は、200〜3,000であることが好ましい。イソシアナート当量が200未満であると、ウレタン樹脂組成物にアクリル樹脂微粉末が添加されたプラスチゾルを加熱し硬化させた塗装被膜が硬くて脆くなり、一方3,000を越えると塗装被膜の接着性が悪くなる。イソシアナート当量が300〜1,500であると一層好ましい。また、ウレタンプレポリマー中のNCO%は、1〜20%であることが好ましく、2〜10%であると一層好ましい。
【0017】
架橋剤は、低級アルキルアミンにアルキレンオキサイドが付加したアミノポリエーテルポリオール、および/または前記ポリオールと同種であって、その水酸基当量すなわち架橋剤の平均分子量をその1分子中の平均水酸基数で除した水酸基1個当たりの分子量が10〜400であることが好ましい。架橋剤は、脂肪族アミンにアルキレンオキサイドが付加したアミノポリエーテルポリオールであると一層好ましい。
【0018】
ウレタンプレポリマーブロック体の平均分子量が、1,000〜500,000であることが好ましい。
【0019】
ウレタン樹脂組成物は、ウレタンプレポリマーブロック体100重量部に対し、架橋剤1〜20重量部を含んでいることが好ましい。
【0020】
ウレタン樹脂組成物は、自己架橋型をして作用するものである。
【0021】
本発明の塗料用プラスチゾルは、前記のウレタン樹脂組成物と、アクリル樹脂微粉末とを含んでいる。
【0022】
塗料用プラスチゾル中、アクリル樹脂微粉末100重量部に対して、ウレタンプレポリマーブロック体が80〜0.5重量部含まれていることが好ましい。
【0023】
アクリル樹脂微粉末は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが不飽和基含有カルボン酸またはそのエステルまたはビニルエーテルを共重合したアクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステルが重合したアクリル樹脂のような樹脂からなる微粉末である。これらのアクリル樹脂は、平均分子量が50,000〜4,000,000である、そのガラス転移温度(Tg)が20〜120℃であることが好ましい。その粒径は大きくても100μmであることが好ましく、30μm以下であると一層好ましい。
【0024】
塗料用プラスチゾルは、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、溶剤、充填剤、安定剤、難燃剤、発泡剤のような添加剤を含んでいてもよい。硬化剤は、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、セバシン酸ジヒドラジドのような酸ヒドラジド系硬化剤;ジシアンジアミド、n−ブチルジシアンジアミドのようなジシアンジアミド系硬化剤;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、およびへキサメチレンジアミンのいずれかと、ノボラックフェノールとの付加物が挙げられ、より具体的には、アミキュアーPN−23、同MY−24、同PN−D、同MY−D、同PN−H(いずれも味の素株式会社製の商品名);フジキュアーFXE−1000、同FXR−1030(いずれも富士化成工業株式会社製の商品名);アジピン酸ジヒドラジド(ADH),ステアリン酸ジヒドラジド(SDH)(いずれも日本ヒドラジン株式会社社製)が挙げられる。硬化剤は、ウレタン樹脂組成物の貯蔵安定性や硬化性、またはそれを硬化させた塗装被膜の融点やガラス転移温度(Tg)のような物性に応じ適宜選択される。硬化触媒は、ウレタン化触媒として通常使用されているジブチル錫ジラウレート、モノブチル錫オクトエートのような錫触媒であると、架橋性や硬化性が一層向上するので、好ましい。なお、これらの添加剤は、予めウレタン樹脂組成物に添加されていてもよい。
【0025】
本発明の塗装被膜は、前記プラスチゾルが、塗布されて熱で硬化したものである。プラスチゾルを加熱すると、それに含まれているウレタンプレポリマーブロック体が、熱開裂してウレタンプレポリマーとブロック化剤とに分解する。複数のウレタンプレポリマーの各々の末端イソシアナート基同士が架橋剤を介して結合し、順次繰り返されて、遂には網目状に重合した塗装被膜が得られる。この塗装被膜の柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、および接着性は、塩化ビニル樹脂プラスチゾル組成物で形成した被膜と同等以上である。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を適用するウレタン樹脂組成物、それを含有し塗装被膜を形成するためのプラスチゾルについて、詳細に説明する。
【0027】
ウレタン樹脂組成物は、以下のようにして調製される。
【0028】
先ず、ウレタンプレポリマーブロック体を合成する。樹脂組成物は、ポリオールであるポリエーテルポリオールとしてグリセリンのプロピレンオキサイド付加物を用い、有機イソシアナートとして2,4−トリレンジイソシアナートを用い、ブロック化剤としてメチルエチルケトンオキシムを用いて、ウレタンプレポリマーブロック体を合成した例により、説明する。
【0029】
プロピレンオキサイド付加物と2,4−トリレンジイソシアナートとを、40〜120℃好ましくは40〜90℃で加熱攪拌すると、末端にイソシアナート基が残存しているウレタンプレポリマーが得られる。なお加熱の際に、ウレタン化反応促進のための触媒としてジブチル錫ジラウレートや第一錫オクトエートのような有機錫化合物、トリエチルアミンやトリエチレンジアミンやジメチルベンジルアミンのような第三アミンを用いてもよい。
【0030】
このウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトンオキシムと、架橋剤であるエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物とを加え、同温で加熱攪拌する。ウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基のうちの50〜100%をブロック化剤と反応させると、ウレタンプレポリマーブロック体が得られる。なおウレタンプレポリマーブロック体は、末端イソシアナート基が全てブロック化剤で保護されていてもよく、末端イソシアナート基の一部がブロック化剤で保護され一部が架橋剤で予め架橋していてもよい。下記化学反応式[I]には、ウレタンプレポリマー(1)の末端イソシアナート基が全てメチルエチルケトンオキシム(2)で保護されてウレタンプレポリマーブロック体(3)が生成した例を示している。
【0031】
【化1】
【0032】
これによりウレタン樹脂組成物が得られる。
【0033】
ウレタン樹脂組成物に、アクリル樹脂微粉末と、必要に応じて硬化剤等の添加剤とを加え、均一に混練し、塗料用プラスチゾルを得る。
【0034】
この塗料用プラスチゾルを塗布し、比較的低温例えば110〜130℃で、短時間例えば30分間加熱処理する。すると、下記化学反応式[II]で示すように、ウレタンプレポリマーブロック体(3)が分解して、メチルエチルケトンオキシムが熱解裂し、ウレタンプレポリマー(1)の末端イソシアナート基を再生する。この末端イソシアナート基に架橋剤(4)が反応して架橋し、一部架橋化合物(5)が生成する。
【0035】
【化2】
【0036】
架橋化合物(5)にさらに順次架橋が形成される。するとアクリル樹脂微粉末を内包しつつ、遂には網目状の重合体となり、柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性の物性の優れた塗装被膜が形成される。なお、架橋剤がアミノポリエーテルポリオールであると、アミノ基が熱開裂触媒として働くので、80〜100℃の低温でも瞬時に架橋し塗装被膜が形成される。
【0037】
以下に、本発明を適用するウレタン樹脂組成物を試作した例を調製例1〜8に、本発明を適用外のウレタン樹脂組成物を調製した例を比較調製例1〜3に示す。
【0038】
(調製例1)
攪拌機、温度計、および窒素導入管の付いたフラスコへ、トリレンジイソシアナート174重量部、グリセリン1当量にプロピレンオキサイド50当量が付加した平均分子量3,000のポリエーテルポリオール1,000重量部、ジブチル錫ジラウレート0.3重量部を加え、窒素気流下、内温50〜80℃で攪拌し反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。次いで、この反応混合物へ、ブロック化剤であるメチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)を滴下し反応させ、ウレタンプレポリマーブロック体を合成した。この反応混合物へ、エチレンジアミン1当量にプロピレンオキサイド4当量付加させたアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加し、50〜80℃で加熱攪拌した。反応混合物を赤外吸収スペクトル測定したとき2260cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが観測されなくなるまで反応し、一部の架橋しているウレタンプレポリマーブロック体が含まれているウレタン樹脂組成物を得た。
【0039】
(調製例2)
調製例1で用いたグリセリンにプロピレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールに代えて、グリセリンにδ−バレロラクトンが開環重合した平均分子量3,000のポリエステルポリオールを用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0040】
(調製例3)
調製例1で用いたメチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロへキシルアミンを用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0041】
(調製例4)
調製例1で用いたブロック化剤としてメチルエチルケトオキシムを54.8重量部用いたことと、さらにβ−ヒドロキシプロピルメタクリレートであるライトエステルHOP(共栄社化学株式会社製の商品名)23.5重量部を用いたこと以外は、調製例1と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
【0042】
(調製例5)
調製例1で用いたトリレンジイソシアナートに代えて、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートの混合物を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0043】
(調製例6)
調製例1で用いたエチレンジアミンにプロピレンオキサイドを付加させたポリオールに代えて、ジエチレントリアミン1当量にプロピレンオキサイド5当量付加させたポリオール78.6重量部を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0044】
(調製例7)
調製例1で用いたメチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)に代えて、メチルエチルケトオキシム87重量部(100%当量)としたこと以外は、調製例1と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
【0045】
(調製例8)
調製例1で用いたトリレンジイソシアナート100%当量のうちの30%当量を、へキサメチレンジイソシアナートの3量体に代えたこと以外は、調製例1と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
【0046】
(比較調製例1)
調製例1の架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールを用いなかったこと以外は、調製例1と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
【0047】
(比較調製例2)
調製例1で用いた架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールに代えて、グリセリン1当量にプロピレンオキサイド4当量が付加した平均分子量300のポリエーテルポリオール100重量部を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0048】
(比較調製例3)
調製例1で用いた架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールに代えて、ビスフェノールAジグリシジルエーテルであるエピコート828(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名)を185重量部用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0049】
次に、調製例1〜8および比較調製例1〜3のウレタン樹脂組成物の各々と、アクリル樹脂微粉末とが含まれた塗料用プラスチゾルを調製した例を、実施例1〜8および比較例1〜3に示す。
【0050】
(実施例1〜8、および比較例1〜3)
夫々実施例1〜8および比較例1〜3で調製したウレタン樹脂組成物10重量部と、アクリル樹脂微粉末としてゼオンF−340(日本ゼオン株式会社製の商品名)24重量部、可塑剤としてジイソノニルフタレート(DINP)36重量部、充填剤として炭酸カルシウムであるカルシーズPL−10(神島化学工業株式会社製の商品名)40重量部、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート(DBTL)であるTN−12(堺化学社製の商品名)0.1重量部、難燃剤および潜在性硬化剤としてアジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.2重量部とを混練機に仕込み、30分間混練した後、脱泡して、実施例1〜8および比較例1〜3のプラスチゾルを調製した。ただし、比較例3では、架橋触媒を用いず、潜在性硬化剤を0.4重量部用いた。
【0051】
実施例1〜8および比較例1〜3のプラスチゾルについて、貯蔵安定性試験を行った。また、これらプラスチゾルを基材に塗布し熱で硬化させて形成した塗装被膜について、粘着強度試験、耐水接着強度試験、25℃伸び率測定試験、−30℃伸び率測定試験、および吸湿発泡試験を行った。
【0052】
(貯蔵安定性試験)
夫々のプラスチゾルについて、BH型粘度計を用い25℃での粘度を測定した。その後、夫々のプラスチゾルを35℃で10日間の貯蔵した後、再び25℃での粘度を測定した。貯蔵後の増粘率が30%未満と小さなものを○、30%以上と大きなものを×とする2段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0053】
(接着強度試験)
夫々のプラスチゾルを、50〜100mm四方で厚さ0.5mmになるように、カチオン電着塗装板である基材に塗布して、120℃で30分間加熱処理した後、常温で1日間開放乾燥して試験板とした。この試験板を60°に傾け、その表面の直径4cmの円内に、直径6mm厚さ3mmのナットを上から30秒以内で落下させる。ナットによって表面の塗布面が剥れたり、塗布面が浮いたり、または塗布面が擦り切れたりして、電着塗装面が露出するまで、ナットの落下を繰り返したときのナットの重さの和であるナット総重量を接着強度値とする。接着強度値が30kg以上と粘着性が強いものを○、30kg未満と粘着性が弱いものを×とする2段階で評価をした。その結果を表1に示す。
【0054】
(耐水接着強度試験)
夫々のプラスチゾルを、50〜100mm四方で厚さ0.5mmのカチオン電着塗装板である基材に塗布後、40℃の水中に14日間浸漬した。これを取出し水分を拭きとり、常温で1日間開放乾燥して、試験板とした。耐水接着強度試験は、前記の粘着性試験と同様に行い、接着強度値が15kgと耐水粘着性が強いものを○、15kg未満と耐水粘着性が弱いものを×とする2段階で評価をした。その結果を表1に示す。
【0055】
(25℃伸び率測定試験)
ダンベル型スペーサーでガラス板である基材に膜厚1mmとなるように夫々のプラスチゾルを塗布し、120℃で30分間加熱処理した後、25℃で1日間放置し、試験片を作成した。レオメーター Model CR−2000D、または同CR−300(いずれもSun Seientifie Co LTD社製)を用いて、同温で恒温恒湿の状態での試験片の伸び率を測定した。伸び率が200%を超えたものを○、200%未満であったものを×とする2段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
(−30℃伸び率測定試験)
前記伸び率測定試験と同様にして、試験片を作成した。その後、−30℃雰囲気中での試験片の伸び率を、同じレオメーターを用いて測定した。伸び率が60%を超えたものを○、60%未満であったものを×とする2段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
(吸湿発泡試験)
カチオン着塗装板に、夫々のプラスチゾルを縦50mm横100mm厚さ0.5mmに塗布して試験片とした。この試験片を40℃湿度90%雰囲気中に1日暴露後、120℃で30分間の加熱処理を行った。得られた被膜表面の発泡・フクレの有無を目視で観察した。発泡・フクレが認められたものを○、認められなかったものを×とする2段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明らかなように、実施例1〜8のプラスチゾルは貯蔵安定性が優れ、それを硬化させた塗装被膜は接着性に優れ、伸び性や吸湿発泡性が良好であった。一方、比較例1および2のプラスチゾルを硬化させた塗装被膜は、伸び性と吸湿発泡性とが悪く、比較例3のプラスチゾルは貯蔵安定性が悪く、それを硬化させた塗装被膜は伸び率が悪かった。
【0060】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のウレタン樹脂組成物を、アクリル樹脂微粉末含有プラスチゾルのために用いると、比較的低温、短時間の熱処理で簡便に金属塗装面、特にカチオン電着塗装面に強固に接着した被膜を形成することができる。さらに塗装被膜は優れた柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、粘着性、および耐久性の物性を有している。
【0061】
この組成物とアクリル樹脂微粉末とを含むプラスチゾルは、ポリ塩化ビニル樹脂含有プラスチゾルに代えて、自動車工業における車体の防錆、飛石の緩衝、およびピンホールの目地止め等を目的としたシーリング剤、コーティング剤、耐チッピング塗料として用いることができる。さらに、既存のポリ塩化ビニル樹脂プラスチゾルの塗装設備や熱処理設備等をそのまま使用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車車体等の基材の塗料に添加して用いられ、塗料の柔軟性や伸び性等の物性を改質するためのウレタン樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車車体等の基材に、シーリング塗料や耐チッピング塗料のような下地塗料で下地を形成した上に、上塗り塗料で塗装が施される。
【0003】
従来、下地塗料としてポリ塩化ビニル樹脂を含有するプラスチゾルが汎用されていた。
【0004】
ポリ塩化ビニル樹脂は、柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性等の物性が優れているので、これを含有するプラスチゾルで形成された塗装被膜も同様にこれら物性が優れている。しかし、ポリ塩化ビニル樹脂は焼却時に有害な物質を発生するおそれがある。
【0005】
そのため、ポリ塩化ビニル樹脂に代えて水性エマルション樹脂、水性樹脂またはウレタン樹脂を含有する組成物が検討されているが、いずれで形成した被膜もポリ塩化ビニル樹脂含有プラスチゾルで形成した被膜ほどの優れた物性が得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、ポリ塩化ビニル樹脂を含まない下地塗料に添加して用いられ、下地塗料で形成された塗装被膜の柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性等の物性を改質でき、簡便に調製できるウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するためになされた本発明のウレタン樹脂組成物は、ポリオールおよび有機イソシアナートを重縮合させたウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基がブロック化剤で保護されているウレタンプレポリマーブロック体と、該ウレタンプレポリマーブロック体が脱保護された該末端イソシアナート基同士を架橋する架橋剤とを、含んでいる。
【0008】
このウレタン樹脂組成物にアクリル樹脂微粉末が添加されたプラスチゾルを硬化させると、ポリ塩化ビニル樹脂含有プラスチゾルと同等な柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性等の物性を有する優れた塗装被膜を形成する。
【0009】
ブロック化剤がオキシム、第二アミン、フェノール、アルコール、または水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。ブロック化剤は、具体的には、オキシムとしてアセトオキシムのようなアルドオキシム、メチルエチルケトオキシムやメチルイソブチルケトオキシムのようなケトオキシムが挙げられ、第二アミンとしてジブチルアミン、ジシクロへキシルアミン、ジ−2−エチルへキシルアミンのような第二アルキルアミンが挙げられ、フェノールとしてアルキルフェノール、ヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられ、アルコールとしてアルキルアルコールが挙げられ、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしてβ−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ライトエステル(共栄社化学株式会社製の商品名)、エポキシエステル(共栄社化学株式会社製の商品名)が挙げられる。ブロック化剤は、ウレタンプレポリマーを構成する有機イソシアナートの種類に応じて、またはウレタン樹脂組成物を含ませた塗料用プラスチゾルで被膜を形成するための加熱処理温度に応じて、適宜選択されるが、メチルエチルケトオキシム、ジシクロヘキシルアミンであると一層好ましい。
【0010】
ウレタンプレポリマーを形成するポリオールは、ポリエーテルポリオールである。ポリエーテルポリオールとして、低分子アルコールや低分子アミンやフェノールのような2〜5個の活性水素含有官能基を有する低分子化合物に、炭素数2〜6のアルキレンオキサイドが付加した付加物が挙げられる。低分子アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ヒマシ油、およびこれらの誘導体が好ましく、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリンであると一層好ましい。低分子アミンは、モノエタノールアミンやジエタノールアミンやトリエタノールアミンのようなアルカノールアミン;エチレンジアミンやジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのような脂肪族ポリアミン;これら脂肪族ポリアミンのn−アルキル基置換体、これら脂肪族ポリアミンのアリル基置換体;トリレンジアミンのような芳香族ポリアミンのn−アルキル基置換体、芳香族ポリアミンのアリル基置換体;ピペリジンやN−アミノエチルピペリジンのような複素環ポリアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンのような脂肪族ポリアミンへのアルキレンオキサイドの付加物が好ましく、中でも脂肪族ポリアミン1当量へのプロピレンオキサイド0.1〜16当量の付加物がなお一層好ましい。低分子アミンはこれらの混合物であってもよい。フェノールは、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、およびビスフェノールであることが好ましい。アルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドのいずれか、またはこれらの二種以上の混合物が好ましく、プロピレンオキサイドを50重量%以上含有するエチレンオキサイド混合物であると一層好ましい。二種以上のアルキレンオキサイドの混合物を用いると、低分子ポリオール等の低分子化合物にランダム重合、またはブロック重合したポリオールが得られる。
【0011】
ウレタンプレポリマーを形成するポリオールは、ポリエステルポリオールであってもよい。ポリエステルポリオールとして、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライドのいずれかのジカルボン酸の誘導体と、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコールのような低分子ポリオール、好ましくはグリセリンやジグリセリンを、重縮合させたポリエステルポリオール;このジカルボン酸の誘導体が、アルキレンオキサイドに重付加した重付加物;ξ−カプロラクトンやδ−バレロラクトンのようなラクトンを、前記の低分子ポリオールで開環重合させたポリラクトンポリオールエステルが挙げられる。ジカルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、ダイマー酸のような脂肪酸ジカルボン酸、またはその酸無水物;テレフタル酸、イソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸、またはその酸無水物が好ましく、脂肪族ジカルボン酸であると一層好ましく、アジピン酸であるとなお一層好ましい。
【0012】
ウレタンプレポリマーを形成するポリオールは、(メタ)アクリル共重合ポリオールであってもよい。(メタ)アクリル共重合ポリオールは例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシルのような(メタ)アクリル酸の誘導体とが共重合したものである。
【0013】
ウレタンプレポリマーを形成するポリオールは、前記のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、(メタ)アクリル共重合ポリオールを複数混合して用いてもよい。
【0014】
これらのポリオールは、水酸基当量、すなわちポリオールの平均分子量を1分子中の平均水酸基数で除した水酸基1個当たりの分子量が、50〜2,000であると好ましい。水酸基当量が50未満であると、ウレタン樹脂組成物にアクリル樹脂微粉末が添加されたプラスチゾルを加熱し硬化させた塗装被膜は、結晶性が高くなって柔軟性が低くなってしまう。一方、水酸基当量が2,000より大きいと塗装被膜の強度が著しく低下してしまう。水酸基当量が100〜1,500であると一層好ましい。
【0015】
ウレタンプレポリマーを形成する有機イソシアナートは、芳香族ジイソシアナート、鎖状脂肪族ジイソシアナート、および環状脂肪族ジイソシアナートの少なくともいずれかの単量体または多量体であることが好ましい。芳香族ジイソシアナートは、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメライズジフェニルメタンジイソシアナート、ウレタン変性ジフェニルメタンジイソシアナート、変性ジフェニルメタンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、トリフェニルメタンジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ジフェニルスルホンジイソシアナートが挙げられ、中でもトリレンジイソシアナート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアナートであると特に好ましい。鎖状脂肪族ジイソシアナートは、へキサメチレンジイソシアナート、トリメチルへキサメチレンジイソシアナートが挙げられる。環状脂肪族ジイソシアナートは水添ジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロへキシルイソシアナート、3−イソシアナートエチル−3,5,5−トリエチルシクロへキシルイソシアナートが挙げられる。有機イソシアナートは、芳香族ジイソシアナートと、鎖状脂肪族ジイソシアナートや環状脂肪族ジイソシアナートとの各単量体の混合物であってもよい。有機イソシアナートは、芳香族ジイソシアナート、鎖状脂肪族ジイソシアナート、および環状脂肪族ジイソシアナートのいずれかから得られ、または任意比の混合物から得られる、ウレタン変性体、二量体、三量体、カルボジイミド変性、アロハネート変性体、ウレア変性体、またはビュレット変性体のような有機イソシアナート多量体であってもよい。
【0016】
ポリオールおよび有機イソシアナートを重縮合させてウレタンプレポリマーを調製する際、ポリオールがその水酸基の1当量に対し、有機イソシアナートがそのイソシアナート基の1.2〜2当量好ましくは1.5〜2当量となるモル比で用いられると好ましい。ウレタンプレポリマー平均分子量を、残存するイソシアナート基平均数で除したイソシアナート当量は、200〜3,000であることが好ましい。イソシアナート当量が200未満であると、ウレタン樹脂組成物にアクリル樹脂微粉末が添加されたプラスチゾルを加熱し硬化させた塗装被膜が硬くて脆くなり、一方3,000を越えると塗装被膜の接着性が悪くなる。イソシアナート当量が300〜1,500であると一層好ましい。また、ウレタンプレポリマー中のNCO%は、1〜20%であることが好ましく、2〜10%であると一層好ましい。
【0017】
架橋剤は、低級アルキルアミンにアルキレンオキサイドが付加したアミノポリエーテルポリオール、および/または前記ポリオールと同種であって、その水酸基当量すなわち架橋剤の平均分子量をその1分子中の平均水酸基数で除した水酸基1個当たりの分子量が10〜400であることが好ましい。架橋剤は、脂肪族アミンにアルキレンオキサイドが付加したアミノポリエーテルポリオールであると一層好ましい。
【0018】
ウレタンプレポリマーブロック体の平均分子量が、1,000〜500,000であることが好ましい。
【0019】
ウレタン樹脂組成物は、ウレタンプレポリマーブロック体100重量部に対し、架橋剤1〜20重量部を含んでいることが好ましい。
【0020】
ウレタン樹脂組成物は、自己架橋型をして作用するものである。
【0021】
本発明の塗料用プラスチゾルは、前記のウレタン樹脂組成物と、アクリル樹脂微粉末とを含んでいる。
【0022】
塗料用プラスチゾル中、アクリル樹脂微粉末100重量部に対して、ウレタンプレポリマーブロック体が80〜0.5重量部含まれていることが好ましい。
【0023】
アクリル樹脂微粉末は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが不飽和基含有カルボン酸またはそのエステルまたはビニルエーテルを共重合したアクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステルが重合したアクリル樹脂のような樹脂からなる微粉末である。これらのアクリル樹脂は、平均分子量が50,000〜4,000,000である、そのガラス転移温度(Tg)が20〜120℃であることが好ましい。その粒径は大きくても100μmであることが好ましく、30μm以下であると一層好ましい。
【0024】
塗料用プラスチゾルは、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、溶剤、充填剤、安定剤、難燃剤、発泡剤のような添加剤を含んでいてもよい。硬化剤は、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、セバシン酸ジヒドラジドのような酸ヒドラジド系硬化剤;ジシアンジアミド、n−ブチルジシアンジアミドのようなジシアンジアミド系硬化剤;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、およびへキサメチレンジアミンのいずれかと、ノボラックフェノールとの付加物が挙げられ、より具体的には、アミキュアーPN−23、同MY−24、同PN−D、同MY−D、同PN−H(いずれも味の素株式会社製の商品名);フジキュアーFXE−1000、同FXR−1030(いずれも富士化成工業株式会社製の商品名);アジピン酸ジヒドラジド(ADH),ステアリン酸ジヒドラジド(SDH)(いずれも日本ヒドラジン株式会社社製)が挙げられる。硬化剤は、ウレタン樹脂組成物の貯蔵安定性や硬化性、またはそれを硬化させた塗装被膜の融点やガラス転移温度(Tg)のような物性に応じ適宜選択される。硬化触媒は、ウレタン化触媒として通常使用されているジブチル錫ジラウレート、モノブチル錫オクトエートのような錫触媒であると、架橋性や硬化性が一層向上するので、好ましい。なお、これらの添加剤は、予めウレタン樹脂組成物に添加されていてもよい。
【0025】
本発明の塗装被膜は、前記プラスチゾルが、塗布されて熱で硬化したものである。プラスチゾルを加熱すると、それに含まれているウレタンプレポリマーブロック体が、熱開裂してウレタンプレポリマーとブロック化剤とに分解する。複数のウレタンプレポリマーの各々の末端イソシアナート基同士が架橋剤を介して結合し、順次繰り返されて、遂には網目状に重合した塗装被膜が得られる。この塗装被膜の柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、および接着性は、塩化ビニル樹脂プラスチゾル組成物で形成した被膜と同等以上である。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を適用するウレタン樹脂組成物、それを含有し塗装被膜を形成するためのプラスチゾルについて、詳細に説明する。
【0027】
ウレタン樹脂組成物は、以下のようにして調製される。
【0028】
先ず、ウレタンプレポリマーブロック体を合成する。樹脂組成物は、ポリオールであるポリエーテルポリオールとしてグリセリンのプロピレンオキサイド付加物を用い、有機イソシアナートとして2,4−トリレンジイソシアナートを用い、ブロック化剤としてメチルエチルケトンオキシムを用いて、ウレタンプレポリマーブロック体を合成した例により、説明する。
【0029】
プロピレンオキサイド付加物と2,4−トリレンジイソシアナートとを、40〜120℃好ましくは40〜90℃で加熱攪拌すると、末端にイソシアナート基が残存しているウレタンプレポリマーが得られる。なお加熱の際に、ウレタン化反応促進のための触媒としてジブチル錫ジラウレートや第一錫オクトエートのような有機錫化合物、トリエチルアミンやトリエチレンジアミンやジメチルベンジルアミンのような第三アミンを用いてもよい。
【0030】
このウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトンオキシムと、架橋剤であるエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物とを加え、同温で加熱攪拌する。ウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基のうちの50〜100%をブロック化剤と反応させると、ウレタンプレポリマーブロック体が得られる。なおウレタンプレポリマーブロック体は、末端イソシアナート基が全てブロック化剤で保護されていてもよく、末端イソシアナート基の一部がブロック化剤で保護され一部が架橋剤で予め架橋していてもよい。下記化学反応式[I]には、ウレタンプレポリマー(1)の末端イソシアナート基が全てメチルエチルケトンオキシム(2)で保護されてウレタンプレポリマーブロック体(3)が生成した例を示している。
【0031】
【化1】
【0032】
これによりウレタン樹脂組成物が得られる。
【0033】
ウレタン樹脂組成物に、アクリル樹脂微粉末と、必要に応じて硬化剤等の添加剤とを加え、均一に混練し、塗料用プラスチゾルを得る。
【0034】
この塗料用プラスチゾルを塗布し、比較的低温例えば110〜130℃で、短時間例えば30分間加熱処理する。すると、下記化学反応式[II]で示すように、ウレタンプレポリマーブロック体(3)が分解して、メチルエチルケトンオキシムが熱解裂し、ウレタンプレポリマー(1)の末端イソシアナート基を再生する。この末端イソシアナート基に架橋剤(4)が反応して架橋し、一部架橋化合物(5)が生成する。
【0035】
【化2】
【0036】
架橋化合物(5)にさらに順次架橋が形成される。するとアクリル樹脂微粉末を内包しつつ、遂には網目状の重合体となり、柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性の物性の優れた塗装被膜が形成される。なお、架橋剤がアミノポリエーテルポリオールであると、アミノ基が熱開裂触媒として働くので、80〜100℃の低温でも瞬時に架橋し塗装被膜が形成される。
【0037】
以下に、本発明を適用するウレタン樹脂組成物を試作した例を調製例1〜8に、本発明を適用外のウレタン樹脂組成物を調製した例を比較調製例1〜3に示す。
【0038】
(調製例1)
攪拌機、温度計、および窒素導入管の付いたフラスコへ、トリレンジイソシアナート174重量部、グリセリン1当量にプロピレンオキサイド50当量が付加した平均分子量3,000のポリエーテルポリオール1,000重量部、ジブチル錫ジラウレート0.3重量部を加え、窒素気流下、内温50〜80℃で攪拌し反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。次いで、この反応混合物へ、ブロック化剤であるメチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)を滴下し反応させ、ウレタンプレポリマーブロック体を合成した。この反応混合物へ、エチレンジアミン1当量にプロピレンオキサイド4当量付加させたアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加し、50〜80℃で加熱攪拌した。反応混合物を赤外吸収スペクトル測定したとき2260cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが観測されなくなるまで反応し、一部の架橋しているウレタンプレポリマーブロック体が含まれているウレタン樹脂組成物を得た。
【0039】
(調製例2)
調製例1で用いたグリセリンにプロピレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールに代えて、グリセリンにδ−バレロラクトンが開環重合した平均分子量3,000のポリエステルポリオールを用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0040】
(調製例3)
調製例1で用いたメチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロへキシルアミンを用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0041】
(調製例4)
調製例1で用いたブロック化剤としてメチルエチルケトオキシムを54.8重量部用いたことと、さらにβ−ヒドロキシプロピルメタクリレートであるライトエステルHOP(共栄社化学株式会社製の商品名)23.5重量部を用いたこと以外は、調製例1と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
【0042】
(調製例5)
調製例1で用いたトリレンジイソシアナートに代えて、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートの混合物を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0043】
(調製例6)
調製例1で用いたエチレンジアミンにプロピレンオキサイドを付加させたポリオールに代えて、ジエチレントリアミン1当量にプロピレンオキサイド5当量付加させたポリオール78.6重量部を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0044】
(調製例7)
調製例1で用いたメチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)に代えて、メチルエチルケトオキシム87重量部(100%当量)としたこと以外は、調製例1と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
【0045】
(調製例8)
調製例1で用いたトリレンジイソシアナート100%当量のうちの30%当量を、へキサメチレンジイソシアナートの3量体に代えたこと以外は、調製例1と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
【0046】
(比較調製例1)
調製例1の架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールを用いなかったこと以外は、調製例1と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
【0047】
(比較調製例2)
調製例1で用いた架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールに代えて、グリセリン1当量にプロピレンオキサイド4当量が付加した平均分子量300のポリエーテルポリオール100重量部を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0048】
(比較調製例3)
調製例1で用いた架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールに代えて、ビスフェノールAジグリシジルエーテルであるエピコート828(油化シェルエポキシ株式会社製の商品名)を185重量部用いたこと以外は、調製例1と同様にして、ウレタン樹脂組成物を得た。
【0049】
次に、調製例1〜8および比較調製例1〜3のウレタン樹脂組成物の各々と、アクリル樹脂微粉末とが含まれた塗料用プラスチゾルを調製した例を、実施例1〜8および比較例1〜3に示す。
【0050】
(実施例1〜8、および比較例1〜3)
夫々実施例1〜8および比較例1〜3で調製したウレタン樹脂組成物10重量部と、アクリル樹脂微粉末としてゼオンF−340(日本ゼオン株式会社製の商品名)24重量部、可塑剤としてジイソノニルフタレート(DINP)36重量部、充填剤として炭酸カルシウムであるカルシーズPL−10(神島化学工業株式会社製の商品名)40重量部、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート(DBTL)であるTN−12(堺化学社製の商品名)0.1重量部、難燃剤および潜在性硬化剤としてアジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.2重量部とを混練機に仕込み、30分間混練した後、脱泡して、実施例1〜8および比較例1〜3のプラスチゾルを調製した。ただし、比較例3では、架橋触媒を用いず、潜在性硬化剤を0.4重量部用いた。
【0051】
実施例1〜8および比較例1〜3のプラスチゾルについて、貯蔵安定性試験を行った。また、これらプラスチゾルを基材に塗布し熱で硬化させて形成した塗装被膜について、粘着強度試験、耐水接着強度試験、25℃伸び率測定試験、−30℃伸び率測定試験、および吸湿発泡試験を行った。
【0052】
(貯蔵安定性試験)
夫々のプラスチゾルについて、BH型粘度計を用い25℃での粘度を測定した。その後、夫々のプラスチゾルを35℃で10日間の貯蔵した後、再び25℃での粘度を測定した。貯蔵後の増粘率が30%未満と小さなものを○、30%以上と大きなものを×とする2段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0053】
(接着強度試験)
夫々のプラスチゾルを、50〜100mm四方で厚さ0.5mmになるように、カチオン電着塗装板である基材に塗布して、120℃で30分間加熱処理した後、常温で1日間開放乾燥して試験板とした。この試験板を60°に傾け、その表面の直径4cmの円内に、直径6mm厚さ3mmのナットを上から30秒以内で落下させる。ナットによって表面の塗布面が剥れたり、塗布面が浮いたり、または塗布面が擦り切れたりして、電着塗装面が露出するまで、ナットの落下を繰り返したときのナットの重さの和であるナット総重量を接着強度値とする。接着強度値が30kg以上と粘着性が強いものを○、30kg未満と粘着性が弱いものを×とする2段階で評価をした。その結果を表1に示す。
【0054】
(耐水接着強度試験)
夫々のプラスチゾルを、50〜100mm四方で厚さ0.5mmのカチオン電着塗装板である基材に塗布後、40℃の水中に14日間浸漬した。これを取出し水分を拭きとり、常温で1日間開放乾燥して、試験板とした。耐水接着強度試験は、前記の粘着性試験と同様に行い、接着強度値が15kgと耐水粘着性が強いものを○、15kg未満と耐水粘着性が弱いものを×とする2段階で評価をした。その結果を表1に示す。
【0055】
(25℃伸び率測定試験)
ダンベル型スペーサーでガラス板である基材に膜厚1mmとなるように夫々のプラスチゾルを塗布し、120℃で30分間加熱処理した後、25℃で1日間放置し、試験片を作成した。レオメーター Model CR−2000D、または同CR−300(いずれもSun Seientifie Co LTD社製)を用いて、同温で恒温恒湿の状態での試験片の伸び率を測定した。伸び率が200%を超えたものを○、200%未満であったものを×とする2段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
(−30℃伸び率測定試験)
前記伸び率測定試験と同様にして、試験片を作成した。その後、−30℃雰囲気中での試験片の伸び率を、同じレオメーターを用いて測定した。伸び率が60%を超えたものを○、60%未満であったものを×とする2段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
(吸湿発泡試験)
カチオン着塗装板に、夫々のプラスチゾルを縦50mm横100mm厚さ0.5mmに塗布して試験片とした。この試験片を40℃湿度90%雰囲気中に1日暴露後、120℃で30分間の加熱処理を行った。得られた被膜表面の発泡・フクレの有無を目視で観察した。発泡・フクレが認められたものを○、認められなかったものを×とする2段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明らかなように、実施例1〜8のプラスチゾルは貯蔵安定性が優れ、それを硬化させた塗装被膜は接着性に優れ、伸び性や吸湿発泡性が良好であった。一方、比較例1および2のプラスチゾルを硬化させた塗装被膜は、伸び性と吸湿発泡性とが悪く、比較例3のプラスチゾルは貯蔵安定性が悪く、それを硬化させた塗装被膜は伸び率が悪かった。
【0060】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のウレタン樹脂組成物を、アクリル樹脂微粉末含有プラスチゾルのために用いると、比較的低温、短時間の熱処理で簡便に金属塗装面、特にカチオン電着塗装面に強固に接着した被膜を形成することができる。さらに塗装被膜は優れた柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、粘着性、および耐久性の物性を有している。
【0061】
この組成物とアクリル樹脂微粉末とを含むプラスチゾルは、ポリ塩化ビニル樹脂含有プラスチゾルに代えて、自動車工業における車体の防錆、飛石の緩衝、およびピンホールの目地止め等を目的としたシーリング剤、コーティング剤、耐チッピング塗料として用いることができる。さらに、既存のポリ塩化ビニル樹脂プラスチゾルの塗装設備や熱処理設備等をそのまま使用することができる。
Claims (6)
- ポリオールおよび有機イソシアナートを重縮合させたウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基がブロック化剤で保護されているウレタンプレポリマーブロック体と、該ウレタンプレポリマーブロック体が脱保護された該末端イソシアナート基同士を架橋する架橋剤とを、含むことを特徴とするウレタン樹脂組成物。
- 前記ブロック化剤がオキシム、第二アミン、フェノール、アルコール、または水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
- 前記ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、(メタ)アクリル共重合ポリオールであって、その水酸基当量が50〜2,000であることを特徴とする請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
- 前記有機イソシアナートは、芳香族ジイソシアナート、鎖状脂肪族ジイソシアナート、および環状脂肪族ジイソシアナートの少なくともいずれかの単量体または多量体であることを特徴とする請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
- 該架橋剤は、低級アルキルアミンにアルキレンオキサイドが付加したアミノポリエーテルポリオール、および/または前記ポリオールと同種であって、その水酸基当量が10〜400であることを特徴とする請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
- 該ウレタンプレポリマーブロック体の平均分子量が、1,000〜500,000であることを特徴とする請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
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2002
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