JPWO2003085773A1 - 光電変換素子 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は新規な光電変換素子に関する。
[背景技術]
色素増感型太陽電池などの、いわゆる湿式太陽電池などの光電変換素子は、一般に二つ以上の電極を有し、その電極間に電解質を蓄えた構造を有する。このような光電変換素子においては、電解質は電荷の伝達媒体として素子機能に不可欠な役割を果たす反面、従来から用いられている液体電解質では、素子の破損による電解液漏れ、長期使用時における電解液の蒸散等の問題が起こっていた。
また、液体電解質を用いた光電変換素子の製造方法としては、素子を構成する基板間に液体電解質を注ぎ込む方法や染み込ませる方法が典型的なものとして挙げられる。一般にこれらの工程は、液体をわずかな間隙に入れるという工程のため製造工程の複雑化を招くものであり、液体を素子内に長期にわたり封じ込める部材や構造の改善についても十分とはいえず、製品としての見栄えが悪くなる他、注入口の耐久性が悪いために液漏れ等を引き起こす原因になっていた。
本発明はこのような実状に鑑み成されたものであり、電解質層として特定のイオン伝導性フィルムを用いることで、見栄えが良く、耐久性が高い光電変換素子を簡便な作製方法によって提供することを目的とする。
[発明の開示]
すなわち、本発明は、電解質層を電荷移動層とした光電変換素子であって、前記電解質層が可逆な電気化学的酸化還元特性を示すイオン伝導性フィルムであることを特徴とする光電変換素子に関する。
また、本発明は、前記イオン伝導性フィルムが、高分子マトリックスに、少なくとも可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質を含有してなるイオン伝導性フィルムであることを特徴とする前記光電変換素子に関する。
また、本発明は、前記イオン伝導性フィルムが、(a)高分子マトリックスに、少なくとも(b)可塑剤および(c)可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質を含有してなるイオン伝導性フィルムであることを特徴とする前記光電変換素子に関する。
また、本発明は、前記高分子マトリックスがポリフッ化ビニリデン系高分子化合物であることを特徴とする前記光電変換素子に関する。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の光電変換素子は、電荷移動層を必須に有するものである。電荷移動層は、通常、一組の電極基板の間に挿入されることで用いられ、電荷移動層中に含まれる可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質によって、電子を輸送する作用を具備する。例えば、電気化学的酸化還元特性を示す物質の酸化体が、片方の電極で還元され電子を受け取り還元体となり、もう一方の電極まで拡散し、電極へ電子を受け渡すことで酸化体へ戻る。酸化体は再び元の電極へ拡散し、電子を受け取る。この過程は、実質的に電荷移動層中を電子が流れる事と等価であって、電荷移動層が電子輸送媒体として機能している。
本発明においては、電荷移動層として、可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質を含有するイオン伝導性フィルムを用いることを特徴とする。ここで、可逆な電気化学的酸化還元特性を示すということは、光電変換素子の作用する電位領域において、可逆的な電気化学的に酸化還元反応を起こし得ることをいう。典型的には、通常、水素基準電極(NHE)に対して−1〜+2V vs NHEの電位領域で可逆的であることが望ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムとしては、前記の可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質を含むものであれば、特に限定されないが、好ましいものとしては、(a)高分子マトリックス(成分(a))に、少なくとも(c)可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質(成分(c))を含有し、所望により(b)可塑剤(成分(b))をさらに含有するものが挙げられる。また、これらに加え、所望によりさらに任意成分(後述)を含有させてもよい。イオン伝導性フィルムとしては、前記成分(b)または、成分(b)と成分(c)、あるいはさらなる任意成分が、高分子マトリックス中に保持されることによって固体状態またはゲル状態が形成される。
本発明において高分子マトリックスとして使用できる材料としては、高分子マトリックス単体で、あるいは可塑剤の添加や、支持電解質の添加、または可塑剤と支持電解質の添加によって固体状態またはゲル状態が形成されれば特に制限は無く、一般的に用いられる高分子化合物を用いることができる。
上記高分子マトリックスとしての特性を示す高分子化合物としては、ポリヘキサフロロプロピレン、ポリテトラフロロエチレン、ポリトリフロロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を挙げることができる。またこれらの高分子化合物は単独で用いても良く、また混合して用いても良い。あるいはまた各モノマーを共重合させて得られる共重合体を用いても良い。本発明においては、特にポリフッ化ビニリデン系高分子化合物が好ましい。
ポリフッ化ビニリデン系高分子化合物としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、あるいはフッ化ビニリデンと他の重合性モノマー、好適にはラジカル重合性モノマーとの共重合体を挙げることができる。フッ化ビニリデンと共重合させる他の重合性モノマー(以下、共重合性モノマーという。)としては、具体的には、ヘキサフロロプロピレン、テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレンなどを例示することができる。
これらの共重合性モノマーは、モノマー全量に対して1〜50mol%、好ましくは1〜25mol%の範囲で使用することができる。
共重合性モノマーとしては、好適にはヘキサフロロプロピレンが用いられる。本発明においては、特にフッ化ビニリデンにヘキサフロロプロピレンを1〜25mol%共重合させたフッ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレン共重合体を高分子マトリックスとするイオン伝導性フィルムとして好ましく用いることができる。また共重合比の異なる2種類以上のフッ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレン共重合体を混合して使用しても良い。
また、これらの共重合性モノマーを2種類以上用いてフッ化ビニリデンと共重合させることもできる。例えば、フッ化ビニリデン+ヘキサフロロプロピレン+テトラフロロエチレン、フッ化ビニリデン+ヘキサフロロプロピレン+アクリル酸、フッ化ビニリデン+テトラフロロエチレン+エチレン、フッ化ビニリデン+テトラフロロエチレン+プロピレンなどの組み合わせで共重合させて得られる共重合体を使用することもできる。
さらに、本発明においては高分子マトリックスとしてポリフッ化ビニリデン系高分子化合物に、ポリアクリル酸系高分子化合物、ポリアクリレート系高分子化合物、ポリメタクリル酸系高分子化合物、ポリメタクリレート系高分子化合物、ポリアクリロニトリル系高分子化合物およびポリエーテル系高分子化合物から選ばれる高分子化合物を1種類以上混合して使用することもできる。あるいはポリフッ化ビニリデン系高分子化合物に、上記した高分子化合物のモノマーを2種以上共重合させて得られる共重合体を1種類以上混合して使用することもできる。このときの単独重合体あるいは共重合体の配合割合は、ポリフッ化ビニリデン系高分子化合物100質量部に対して、通常200質量部以下とすることが好ましい。
本発明において用いられるポリフッ化ビニリデン系高分子化合物の重量平均分子量は、通常10,000〜2,000,000であり、好ましくは100,000〜1,000,000の範囲のものが好適に使用することができる。
次に、本発明において用いる可塑剤について説明する。
本発明において用いられる可塑剤は、成分(c)の可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質に対する溶媒として作用する。かかる可塑剤としては、一般に電気化学セルや電池において電解質溶媒として使用され得るものであればいずれも使用することができる。具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリヘキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが好ましい。また、常温溶融塩類も用いることができる。ここで、常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示すものである。
常温溶融塩の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(ここで、Rは炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルキル基を示し、X−はハロゲンイオンまたはSCN−を示す。)
(ここで、R1およびR2は各々炭素数1〜10のアルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基)、または炭素数7〜20、好ましくは7〜13のアラルキル基(好ましくはベンジル基)を示しており、互いに同一でも異なっても良い。また、X−はハロゲンイオンまたはSCN−を示す。)
(ここで、R1、R2、R3、R4は、各々炭素数1以上、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基(フェニル基など)、またはメトキシメチル基などを示し、互いに同一でも異なってもよい。また、X−はハロゲンイオンまたはSCN−を示す。)
可塑剤はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
可塑剤の使用量は特に制限はないが、通常、イオン伝導性フィルム中に20質量%以上、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、かつ98質量%以下、好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下の量で含有させることができる。
次に、本発明において用いる成分(c)の可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質について説明する。
成分(c)は、前述のような可逆な電気化学的酸化還元反応を行うことができる化合物であって、通常レドックス性材料と称されるものである。
係る化合物しては、特にその種類を制限するものではないが、たとえば、フェロセン、p−ベンゾキノン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、テトラチアフルバレン、アントラセン、p−トルイルアミン等を用いることができる。また、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2、4級イミダゾリウムのヨウ素塩、テトラアルキルアンモニウムのヨウ素塩、Br2とLiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2などの金属臭化物なとが挙げられる。
また、Br2とテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ビピリジニウムブロマイド、臭素塩、フェロシアン酸−フェリシアン酸塩などの錯塩、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ヒドロキノン−キノン、ビオロゲンなどを用いることができる。レドックス材は、酸化体、還元体のどちらか一方のみを用いてもよいし、酸化体と還元体を適当なモル比で混合し、添加することもできる。
また、特に本発明の成分(c)としては、ハロゲンイオン、SCN−から選ばれる対アニオン(X−)を有する塩があげられる。カチオンとしては、4級アンモニウム塩として、具体的には、(CH3)4NX−、(C2H5)4NX−、(n−C4H9)4NX−、さらには、
等が挙げられる。対アニオン(X−)を有するホスホニウム塩、具体的には、(CH3)4PX−、(C2H5)4PX−、(C3H7)4PX−、(C4H9)4PX−等が挙げられる。
もちろん、これらの混合物も好適に用いることができる。
なお、これらの化合物の場合は、通常成分(b)と併用することが好ましい。
また、成分(c)として、レドックス性常温溶融塩類も用いることができる。ここで、レドックス性常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示すものであって、かつ可逆的な電気化学的酸化還元反応を行うことができるものである。成分(c)としてレドックス性常温溶融塩類を用いる場合、成分(b)を併用しなくても、併用してもどちらの形態でもよい。
レドックス性常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
レドックス性常温溶融塩の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(ここで、Rは炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルキル基を示し、X−はハロゲンイオンまたはSCN−を示す。)
(ここで、R1およびR2は各々炭素数1〜10のアルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基)、または炭素数7〜20、好ましくは7〜13のアラルキル基(好ましくはベンジル基)を示しており、互いに同一でも異なっても良い。また、X−はハロゲンイオンまたはSCN−を示す。)
(ここで、R1、R2、R3、R4は、各々炭素数1以上、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基(フェニル基など)、またはメトキシメチル基などを示し、互いに同一でも異なってもよい。また、X−はハロゲンイオンまたはSCN−を示す。)
成分(c)の使用量については特に制限はなく、任意であるが、通常、イオン伝導フィルム中に0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、かつ70質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下の量で含有させることができる。
成分(c)を成分(b)と併用する場合、成分(c)は、成分(b)に溶解しかつイオン伝導性フィルムとした際にも析出等が起こらない混合比とすることが望ましく好ましくは成分(c)/成分(b)が質量比で0.01〜0.5、さらに好ましくは0.03〜0.3の範囲である。
また、成分(a)に対しては、好ましくは成分(a)/(成分(b)+成分(c))質量比が1/20〜1/1、さらに好ましくは1/10〜1/2の範囲であることが望ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムは、これらの成分に加え、本発明の効果を損なわない限り、さらに他の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、例えば、支持電解質、紫外線吸収剤,アミン化合物などが代表的なものとして挙げられる。
本発明において用いられる支持電解質としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類、常温溶融塩類が使用できる。
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用でき、特にLi塩が好ましい。
塩類の具体例としては、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
また、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CH3)4NBF4、(C2H5)4NBF4、(n−C4H9)4NBF4、(C2H5)4NClO4、(n−C4H9)4NClO4、CH3(C2H5)3NBF4、(CH3)2(C2H5)2NBF4、(CH3)4NSO3CF3、(C2H5)4NSO3CF3、(n−C4H9)4NSO3CF3、さらには、
等が挙げられる。またClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CH3)4PBF4、(C2H5)4PBF4、(C3H7)4PBF4、(C4H9)4PBF4等が挙げられる。
また、これらの混合物も好適に用いることができる。
酸類も特に限定されず、無機酸、有機酸などが使用でき、具体的には硫酸、塩酸、リン酸類、スルホン酸類、カルボン酸類などが使用できる。
アルカリ類も特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがいずれも使用可能である。
常温溶融塩類も特に限定されることは無いが、本発明における常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示す。
常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
常温溶融塩の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(ここで、Rは炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルキル基を示す。X−はClO4 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを表す。)
(ここで、R1およびR2は各々炭素数1〜10のアルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基)、または炭素数7〜20、好ましくは7〜13のアラルキル基(好ましくはベンジル基)を示しており、互いに同一でも異なっても良い。また、X−はClO4 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを表す。)
(ここで、R1、R2、R3、R4は、各々炭素数1以上、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基(フェニル基など)、またはメトキシメチル基などを示し、互いに同一でも異なってもよい。また、X−はClO4 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを表す。)
以上の支持電解質の使用量については特に制限はなく、任意であるが、通常、イオン伝導フィルム中に0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、かつ70質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下の量で含有させることができる。
本発明のイオン伝導性フィルムに含有させることができる紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物、ベンゾフェノン骨格を有する化合物等の有機紫外線吸収剤を代表的な物として挙げられる。
ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物としては、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物が好適に挙げられる。
一般式(1)において、R81は、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基を示す。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。R81の置換位置は、ベンゾトリアゾール骨格の4位または5位であるが、ハロゲン原子およびアルキル基は通常4位に位置する。R82は、水素原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。R83は、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキレン基またはアルキリデン基を示す。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等を挙げることができ、またアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基等が挙げられる。
一般式(1)で示される化合物の具体例としては、3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンエタン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシベンゼンエタン酸、3−(5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸オクチルエステル等が挙げられる。
ベンゾフェノン骨格を有する化合物としては、例えば、下記の一般式(2)〜(4)で示される化合物が好適に挙げられる。
上記一般式(2)〜(4)において、R92、R93、R95、R96、R9 8、及びR99は、互いに同一もしくは異なる基であって、ヒドロキシル基、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基またはアルコキシ基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、及びシクロヘキシル基を挙げることができる。またアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、及びブトキシ基を挙げることができる。
R91、R94、及びR97は、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキレン基またはアルキリデン基を示す。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、及びプロピレン基を挙げることができる。アルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、及びプロピリデン基が挙げられる。
p1、p2、p3、q1、q2、及びq3は、それぞれ別個に0乃至3の整数を表す。
上記一般式(2)〜(4)で表されるベンゾフェノン骨格を有する化合物の好ましい例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−カルボン酸、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−カルボン酸、4−(2−ヒドロキシベンゾイル)−3−ヒドロキシベンゼンプロパン酸、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
もちろん、これらを二種以上組み合わせて使用することができる。
紫外線吸収剤の使用は任意であり、また使用する場合の使用量も特に制限されるものではないが、使用する場合はイオン伝導性フィルム中に0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上であり、20質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲の量で含有させることが望ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムに含有させることができるアミン化合物としては、特に限定されず,各種脂肪族アミン、芳香族アミンが用いられるが、例えば、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、キノリン誘導体などが代表的な物として挙げられる。これらのアミン化合物を添加することで、開放電圧の向上が見込まれる。これらの化合物の具体例としては、4−t−ブチル−ピリジン、キノリン、イソキノリンなどが挙げられる。
次に本発明のイオン伝導性フィルムを製造する方法について説明する。
本発明のイオン伝導性フィルムは、公知のフィルム成型方法により容易に製造することができる。例えば、前述の成分(a)、成分(b)および成分(c)、さらには所望により前記の任意成分を含有するイオン伝導性フィルムにおいては、これらの成分からなる混合物を公知の方法によりフィルムに成形することにより得ることが出来る。この場合の成形方法としては特に限定されず、押出し成型、キャスト法によるフィルム状態で得る方法、スピンコート法、ディップコート法などを挙げることができる。
押出し成型については常法により行うことができ、前記成分を混合し、過熱溶融した後、フィルムに成型する。
キャスト法については、前記成分を混合し、さらに適当な希釈剤にて粘度調整を行い、キャスト法に用いられる通常のコータにて塗布し、乾燥することで成膜することができる。コータとしては、ドクタコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、リバースロールコータ、グラビアコータ、スプレイコータ、カーテンコータを用いることができ、粘度および膜厚により使い分けることができる。
スピンコート法については、前記成分を混合し、さらに適当な希釈剤にて粘度調整を行い、市販のスピンコーターにて塗布し、乾燥することで成膜することができる。
ディップコート法については、前記成分を混合し、さらに適当な希釈剤にて粘度調整を行って混合物溶液を作製し、適当な基盤を混合物溶液より引き上げた後、乾燥することで成膜することができる。
本発明におけるイオン伝導性フィルムは、イオン伝導度が、通常室温で1×10−7S/cm以上、好ましくは1×10−6S/cm以上、さらに好ましくは1×10−5S/cm以上を示す。イオン伝導度は、複素インピーダンス法などの一般的な手法で求めることができる。
また、本発明におけるイオン伝導性フィルムは、酸化体の拡散係数が1×10−9cm2/s以上、好ましくは1×10−8cm2/s以上、さらに好ましくは1×10−7cm2/s以上を示す。なお、拡散係数は、イオン伝導性を示す一指標であり、定電位電流特性測定、サイクリックボルタモグラム測定などの一般的な手法で求めることができる。
本発明のイオン伝導性フィルムの厚さは、特に限定されないが、通常1μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常3mm以下、好ましくは1mm以下である。
また、本発明のイオン伝導性フィルムは、自立性を有していることが望ましい。その場合、通常、25℃におけるその引張弾性率が5×104N/m2以上、好ましくは1×105N/m2以上、最も好ましくは5×105N/m2以上である特性を有することが望ましい。なお、この引張弾性率は、通常用いられる引張り試験機で、2cm×5cmの短冊状サンプルによって測定を行った場合の値である。
本発明における光電変換素子としては、例えば、図1に示すような構造に代表される層構造をもっており、少なくとも2枚の導電性基板を用い、そのうち少なくとも一方の基板は実質的に透明の、いわゆる透明導電性基板である。また、透明導電基板上に、図1に示されるように、通常、半導体層(感光層)が形成される。
透明導電性基板は、通常、透明基板上に透明電極層を有する。
透明基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。なお、本発明における透明とは、10〜100%の透過率、好ましくは50%以上の透過率を有することであり、また、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。
また、電極として作用する透明電極層としては、本発明の目的を果たすものである限り特に限定されないが、例えば金、銀、クロム、銅、タングステンなどの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、錫や亜鉛などの金属酸化物に、他の金属元素を微量ドープしたIndium Tin Oxide(ITO(In2O3:Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO2:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))などが好適なものとして用いられる。
膜厚は通常、50〜5000nm、好ましくは100〜3000nmである。また、表面抵抗(抵抗率)は、本発明の基板の用途により適宜選択されるところであるが、通常、0.5〜500Ω/sq、好ましくは2〜50Ω/sqである。
透明電極層の形成法としては、特に限定されなく、電極層として用いる前述の金属や金属酸化物の種類により適宜公知の方法が選択使用されるところであるが、通常、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVDあるいはスパッタリング法などが用いられる。いずれの場合も基板温度20〜700℃の範囲内で形成されるのが望ましい。
もう一方の基板、即ち、対向基板は、基板自身が導電性あるいは少なくとも一方の面が導電性であればよく、前述の透明な透明導電性基板でも、また不透明な導電性基板でも良い。不透明な導電性基板としては、種々の金属製電極のほか、例えばガラス基板上に成膜されたAu、Pt、Crなどを挙げることができる。
本発明の光電変換素子において、用いられる半導体層としては、特に限定されないが、例えば、Bi2S3、CdS、CdSe、CdTe、CuInS2、CuInSe2、Fe2O3、GaP、GaAs、InP、Nb2O5、PbS、Si、SnO2、TiO2、WO3、ZnO、ZnS等が挙げられ、好ましくはCdS、CdSe、CuInS2、CuInSe2、Fe2O3、GaAs、InP、Nb2O5、PbS、SnO2、TiO2、WO3、ZnOであり、複数の組み合わせであってもよい。特に好ましくはTiO2、ZnO、SnO2、Nb2O5であり、最も好ましくはTiO2、ZnOである。
本発明に用いる半導体は単結晶でも多結晶でも良い。結晶系としては、例えば、TiO2の場合は、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが主に用いられるが、好ましくはアナターゼ型である。半導体層の形成には公知の方法を用いることができる。
半導体層の形成方法としては、上記半導体のナノ粒子分散液、ゾル溶液等を、公知の方法により基板上に塗布することで得ることが出来る。この場合の塗布方法としては特に限定されずキャスト法による薄膜状態で得る方法、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法のほか、スクリーン印刷法を初めとした各種の印刷方法を挙げることができる。
また、別の方法として、文献(Shigehito Deki,Yoshifumi Aoi,Osamu Hiroi and Akihiko Kajinami,Chem.Lett.,433(1996),Kazuhiko Shimizu,Hiroaki Imai,Hiroshi Hirashima and Koji Tsukuma,Thin Solid Films,351,220(1999))にあるような液相微粒子成長法と呼ばれる方法や、文献(Tsutomu Miyasaka,Yujiro Kijitori,Takurou N.Murakami,Mitsuhiro Kimura and Sadao Uegusa,Chem.Lett.,1250(2002).)のような電気泳動法、文献(S.Karuppuchamy,D.P.Amalnerkar,K.Yamaguchi,T.Yoshida,T.Sugiura,H.Minoura,Chem.Lett.,78(2001),D.Schlettwein,T.Oekermann,T.Yoshida,M.Tochimoto,H.Minoura,J.Electroanal.Chem.,481,42(2000))のような電着法、文献(H.
Photochem.Photobio A Chem.,145,107(2001))のような加圧法により作製することもできる。
さらには、より高性能な半導体層の作製法として、文献(Hideki Masuda and Kenji Fukuda,Science,268,1466(1995))にあるような高規則性ナノポーラスアルミナを鋳型として用い、その細孔内に上述した半導体層の作製方法を利用して、高規則性の半導体層を作製することもできる。また、文献(Patrick Hoyer and Hideki Masuda,J.Mater.Sci.Lett.,15,1228(1996),Patrick Hoyer,Langmuir,12,1411(1996),S.−Z.Chu,K.Wada,S.Inoue,S.Todoroki,Chem.Mater.14,266(2002))のようにな方法によっても高規則性の半導体層を作製することができる。
半導体層の厚みは任意であるが0.5μm以上、50μm以下、好ましくは1μm以上20μm以下である。
半導体層の光吸収効率を向上すること等を目的として、種々の色素を半導体層に吸着や含有させることが出来る。
本発明において用いる色素としては、半導体層の光吸収効率を向上させる色素であれば、特に制限されるものではなく、通常、各種の金属錯体色素や有機色素の一種または二種以上を用いることができる。また、半導体層への吸着性を付与するために、色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ホスホニル基、カルボキシルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホニルアルキル基、ホスホニルアルキル基などの官能基を有するものが好適に用いられる。
金属錯体色素としては、ルテニウム、オスミウム、鉄、コバルト、亜鉛の錯体や金属フタロシアニン、クロロフィル等を用いることができる。
本発明において用いる金属錯体色素としては、以下のようなものが例示される。
(色素1)
ここでX1は、一価のアニオンを示すが、2つのXは独立でも、架橋されていていても良い。例えば、次のようなものが例示される。
(色素2)
ここでX2は、一価のアニオンを示す。例えば次のようなものが例示される。
Yとしては、一価アニオンであって、ハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−等を挙げることができる。
(色素3)
ここでZは、非共有電子対を有する原子団であって、2つのZは独立でも、架橋されていていても良い。例えば、次のようなものが例示される。
Yとしては、一価アニオンであって、ハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−等を挙げることができる。
(色素4)
また、有機色素としては、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、金属フリーフタロシアニン系色素を用いることができる。本発明において用いる色素としては、以下のようなものが例示される。
色素を半導体層に吸着させる方法としては、溶媒に色素を溶解させた溶液を、半導体層上にスプレーコートやスピンコートなどにより塗布した後、乾燥する方法により形成することができる。この場合、適当な温度に基板を加熱しても良い。または半導体層を溶液に浸漬して吸着させる方法を用いることも出来る。浸漬する時間は色素が十分に吸着すれば特に制限されることはないが、好ましくは1〜30時間、特に好ましくは5〜20時間である。また、必要に応じて浸漬する際に溶媒や基板を加熱しても良い。好ましくは溶液にする場合の色素の濃度としては、1〜1000mM/L、好ましくは10〜500mM/L程度である。
用いる溶媒としては、色素を溶解しかつ半導体層を溶解しなければ特に制限されることはないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、などのニトリル系溶媒、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2−ブタノンなどのケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリヘキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。
本発明の光電変換素子の例としては、例えば、図1に示す断面を有する素子を挙げることができる。この素子は、透明導電性基板1(基板A)上に色素を吸着した半導体層3、対向電極基板2(基板B)を有しており、そして、半導体層3と対向電極基板2の間にイオン伝導性フィルム4が配置され、周辺がシール部材5で密封されている。なお、リード線は基板Aと基板Bの導電部分に接続され、電力を取り出すことが出来る。
本発明の光電変換素子を用いて太陽電池を製造する方法は、特に限定されないが、通常、色素を吸着した半導体層を有する基板Aとイオン伝導性フィルムと基板Bを積層し、公知の方法により、周辺部を適宜シールすることにより容易に製造することができる。周辺部をシールする方法としては、どちらかの基板にイオン伝導性フィルムを配した後、その外側にシール材を配し、もう片方の基板を合わせる方法、シールとイオン伝導性フィルムを同じ基板に配する方法等を利用することができる。
[発明を実施するための最良の形態]
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
(実施例1)
(a)イオン伝導性フィルムの作製
ポリフッ化ビニリデン1gと0.6mol/Lのヨウ化リチウム、0.1mol/Lのヨウ素を含むプロピレンカーボネート溶液を4g添加し、アセトンにて希釈し加熱し均一溶液を得た。この溶液をポリテトラフロロエチレン基板上にドクターブレード法で塗布し、加熱乾燥をし、100μm厚の均一なイオン伝導性フィルムを得た。
このフィルムをPtをスパッタ処理した2枚のNESAガラス(電極)に挟み、電極間に1Vの電圧を印加した。電流値は3.5mAで一定値となったことから、可逆な電気化学的酸化還元特性を示すものであり、また、拡散係数は1.1×10−6cm2/sであり、十分なイオン伝導性等の性能を示した。
(b)光電変換素子の作製
フィルム抵抗値10Ω/sqのSnO2:Fガラス(ガラス基板上にSnO2:F膜を形成した透明導電性ガラス)上にSOLARONIX社製Ti−Nanoxide Tをバーコートして乾燥させた。バーコートの際には、膜厚が均一になるよう、透明導電性ガラスのサイドにスコッチテープを貼り付けた。塗布した基板を、500℃で30分焼成し半導体層を形成した。これを下記式で示されるルテニウム色素/エタノール溶液(3.0×10−4mol/L)に15時間浸し、色素を吸着させた。
次に、色素を吸着した半導体層の上側に、先に得られたイオン伝導性フィルムを載せ、周辺部をEVAフィルムで囲った。最後に、Pt薄膜のついたガラスのPt面をイオン伝導フィルム側にして挟み光電変換素子とした。
このようにして得たセルに疑似太陽光を照射し電流電圧特性を測定したところ、光電変換効率は、3.8%であり、良好な光電変換特性を示した。
(実施例2)
(a)イオン伝導性フィルムの作製
ポリフッ化ビニリデン1gと0.6mol/Lのヨウ化リチウム、0.5molの過塩素酸リチウム、0.1mmol/Lのヨウ素を含むγ−ブチロラクトン溶液を4g添加し、溶液を得た後、実施例1と同様の方法で、100μm厚の均一なイオン伝導性フィルムを得た。
このフィルムをPtをスパッタ処理した2枚のNESAガラス(電極)に挟み、電極間に1Vの電圧を印加した。電流値は2.6mAで一定値となったことから、可逆な電気化学的酸化還元特性を示すものであり、また、拡散係数は8×10−7cm2/sであり、十分なイオン伝導性等の性能を示した。
(b)光電変換素子の作製
実施例1と同様の方法で、光電変化素子を作製し、電流電圧特性を測定したところ、光電変換効率は、3.3%であり、良好な光電変換特性を示した。
(実施例3)
(a)イオン伝導性フィルムの作製
実施例1と同様の溶液をポリテトラフロロエチレン基板上にドクターブレード法で塗布し、加熱乾燥をし、100μm厚の均一なイオン伝導性フィルムを得た。
このフィルムを実施例1と同様の方法により電圧を印加し電流特性を測定したところ、可逆な電気化学的酸化還元特性を示すものであり、また、拡散係数は1×10−6cm2/sであり、十分なイオン伝導性等の性能を示した。
(b)光電変換素子の作製
周囲をスコッチテープでマスクした、フィルム抵抗値10Ω/sqのITO付きPETフィルム上に日本エアロジル社製P−25 1gを水4mLに分散した溶液を塗布し、風乾した後、120℃で3時間乾燥させ、半導体層とした。これを実施例1と同様のルテニウム色素/エタノール溶液(3.0×10−4mol/L)に15時間浸し、色素を吸着した。色素を吸着した半導体層の周囲にEVAフィルムで囲み、Pt薄膜のついたITO付きPETフィルムのPt面を前記イオン伝導フィルム側にして挟さみ光電変換素子とした。
このようにして得たセルに疑似太陽光を照射し電流電圧特性を測定したところ、光電変換効率は、2.2%であり、良好な光電変換特性を得た。
(実施例4)
(a)イオン伝導性フィルムの作製
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−アクリル酸共重合体(KF−9300、呉羽化学製)0.8gと0.5mol/Lのヨウ化1−プロピル−2,3ジメチルイミダゾリウム、0.1mol/LのLiI、0.05mol/Lのヨウ素、0.5mol/Lの4−t−ブチルピリジンを含む3−メトキシアセトキトリル溶液を4g添加し、アセトンにて希釈し加熱し均一溶液を得た。この溶液をエンボス加工したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にドクターブレード法で塗布し、室温で乾燥し、100μm厚の均一なイオン伝導性フィルムを得た。
このフィルムをPtをスパッタ処理した2枚のNESAガラス(電極)に挟み、電極間に1Vの電圧を印加した。電流値は4mAで一定値となったことから、可逆な電気化学的酸化還元特性を示すものであり、また、拡散係数は5.3×10−6cm2/sであり、十分なイオン伝導性等の性能を示した。
(b)光電変換素子の作製
フィルム抵抗値10Ω/sqのSnO2:Fガラス(ガラス基板上にSnO2:F膜を形成した透明導電性ガラス)上にSOLARONIX社製Ti−Nanoxide Tをバーコートして乾燥させた。バーコートの際には、膜厚が均一になるよう、透明導電性ガラスのサイドにスコッチテープを貼り付けた。塗布した基板を、500℃で30分焼成し半導体層を形成した。半導体層の膜厚は12μmであった。これをルテニウム色素(SOLARONIX社製Rutenium535−bisTBA)/エタノール溶液(5.0×10−4mol/L)に30時間浸し、色素を吸着させた。
次に、色素を吸着した半導体層の上側に、先に得られたイオン伝導性フィルムを載せ、周辺部をEVAフィルムで囲った。最後に、Pt薄膜のついたガラスのPt面をイオン伝導フィルム側にして挟み光電変換素子とした。
このようにして得たセルに疑似太陽光を照射し電流電圧特性を測定したところ、光電変換効率は、6.0%であり、良好な光電変換特性を示した。
(実施例5)
(a)イオン伝導性フィルムの作製
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−アクリル酸共重合体(KF−9300、呉羽化学製)0.8gと5mass%の水、0.5mol/LのLiI、0.3mol/Lのヨウ素、0.5mol/Lの4−t−ブチルピリジンを含むヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム溶液を4g添加し、アセトンにて希釈し加熱し均一溶液を得た。この溶液をエンボス加工したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にドクターブレード法で塗布し、室温で乾燥し、100μm厚の均一なイオン伝導性フィルムを得た。
このフィルムをPtをスパッタ処理した2枚のNESAガラス(電極)に挟み、電極間に1Vの電圧を印加した。電流値は3.5mAで一定値となったことから、可逆な電気化学的酸化還元特性を示すものであり、また、拡散係数は1×10−6cm2/sであり、十分なイオン伝導性等の性能を示した。
(b)光電変換素子の作製
フィルム抵抗値10Ω/sqのSnO2:Fガラス(ガラス基板上にSnO2:F膜を形成した透明導電性ガラス)上にSOLARONIX社製Ti−Nanoxide Tをバーコートして乾燥させた。バーコートの際には、膜厚が均一になるよう、透明導電性ガラスのサイドにスコッチテープを貼り付けた。塗布した基板を、500℃で30分焼成し半導体層を形成した。半導体層の膜厚は12μmであった。これをルテニウム色素(SOLARONIX社製Rutenium535−bisTBA)/エタノール溶液(5.0×10−4mol/L)に30時間浸し、色素を吸着させた。
次に、色素を吸着した半導体層の上側に、先に得られたイオン伝導性フィルムを載せ、周辺部をEVAフィルムで囲った。最後に、Pt薄膜のついたガラスのPt面をイオン伝導フィルム側にして挟み光電変換素子とした。
このようにして得たセルに疑似太陽光を照射し電流電圧特性を測定したところ、光電変換効率は、4.5%であり、良好な光電変換特性を示した。
(実施例6)
フィルム抵抗値10Ω/sqのSnO2:Fガラス(ガラス基板上にSnO2:F膜を形成した透明導電性ガラス)上に、文献(S.−Z.Chu,K.Wada,S.Inoue,S.Todoroki,Chem.Mater.14,266(2002))に従い,図2のような規則構造を有する酸化チタン電極を作製した(図2中の数字は図1と同じ)。これをルテニウム色素(SOLARONIX社製Rutenium535−bisTBA)/エタノール溶液(5.0×10−4mol/L)に30時間浸し、色素を吸着させた。
次に、色素を吸着した半導体層の上側に、実施例5で得られたイオン伝導性フィルムを載せ、周辺部をEVAフィルムで囲った。最後に、Pt薄膜のついたガラスのPt面をイオン伝導フィルム側にして挟み光電変換素子とした。
このようにして得たセルに疑似太陽光を照射し電流電圧特性を測定したところ、光電変換効率は、6%であり、良好な光電変換特性を示した。
[産業上の利用分野]
本発明の光電変換素子は、電解質が固体であり、高いイオン伝導性、機械強度、経時安定性を有するなどの優れた特性を有する。また、本発明の光電変換素子は、電解質層がフィルム状であることから簡便に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
図1は、光電変換素子の断面を示す図である。
図2は、実施例6で用いた酸化チタン電極の規則構造を示す図である。
Claims (6)
- 電解質層を電荷移動層とした光電変換素子であって、前記電解質層が可逆な電気化学的酸化還元特性を示すイオン伝導性フィルムであることを特徴とする光電変換素子。
- 前記イオン伝導性フィルムが、高分子マトリックスに、少なくとも可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質を含有してなるイオン伝導性フィルムであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の光電変換素子。
- 前記イオン伝導性フィルムが、(a)高分子マトリックスに、少なくとも(b)可塑剤および(c)可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質を含有してなるイオン伝導性フィルムであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の光電変換素子。
- 前記高分子マトリックスがポリフッ化ビニリデン系高分子化合物であることを特徴とする請求の範囲第2項又は第3項に記載の光電変換素子。
- 前記ポリフッ化ビニリデン系高分子化合物がフッ化ビニリデンとヘキサフロロプロピレンとアクリル酸の共重合体であることを特徴とする請求の範囲第4項に記載の光電変換素子。
- 前記可塑剤が常温溶融塩類であることを特徴とする請求の範囲第3項に記載の光電変換素子。
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