JP4676733B2 - 酸化チタン電極の製造方法および光電変換素子の製造方法 - Google Patents
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エム・グレッチェル(M. Gratzel)外,「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソーサイアティ(Journal of American Chemical Society)」,第115巻,1993年,p.6382
また、本発明は、前記記載の製造方法で製造された酸化チタン電極を用いたことを特徴とする光電変換素子の製造方法に関する。
また、本発明は、少なくとも一方が透明な二枚の導電性基板と、当該導電性基板のうち片方の導電性基板の導電面上に設けられた増感剤により修飾された酸化チタン層と、当該2枚の導電性基板の間に設けられた、少なくとも可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質を含有した電解液を含有する電解質層からなる光電変換素子であって、前記酸化チタン層として前記記載の製造方法で製造された酸化チタン電極を用いたことを特徴とする光電変換素子の製造方法に関する。
また、本発明は、前記固体電解質が、少なくとも(a)高分子マトリックスおよび(c)可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質からなるイオン伝導性フィルムであることを特徴とする前記記載の光電変換素子の製造方法に関する。
また、本発明は、前記高分子マトリックスがポリフッ化ビニリデン系高分子化合物であることを特徴とする前記記載の光電変換素子の製造方法に関する。
また、本発明は、前記ポリフッ化ビニリデン系高分子化合物がカルボキシル基を含有することを特徴とする前記記載の光電変換素子の製造方法に関する。
さらに、本発明は、前記可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質が常温溶融塩類であることを特徴とする前記記載の光電変換素子の製造方法に関する。
本発明で用いる酸化チタン電極は、酸化チタンのナノ粒子分散液、ゾル溶液等を、公知の方法により基板上に塗布することで得ることが出来る。この場合の塗布方法としては特に限定されるものではなく、キャスト法による薄膜状態で得る方法、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法のほか、スクリーン印刷法を初めとした各種の印刷方法を挙げることができる。酸化チタン層の厚みは任意であるが、通常0.5μm以上50μm以下、好ましくは1μm以上20μm以下である。
こうして得られる酸化チタン電極は、その性状を向上させるため四塩化チタン水溶液で処理される。四塩化チタン水溶液は常法(非特許文献1参照)に従い調整できる。酸化チタン電極を四塩化チタン水溶液で処理する方法としては、特に限定されないが、四塩化チタン水溶液を酸化チタン電極上にキャストしたり、四塩化チタン水溶液中に酸化チタン電極を浸漬するなどの方法が挙げられる。
温度は、通常−10℃〜100℃であり、好ましくは0℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜70℃である。処理時間は、通常10分〜60時間であり、好ましくは30分〜20時間である。処理前および処理後の酸化チタン電極のラマン散乱スペクトルを比較すると、処理時間の経過とともに、100〜800cm−1に観測される酸化チタン由来のピーク強度が増大し、ある時間を境に減少に転じることが分かった。ピーク強度の増大ともに酸化チタン電極の性能は向上するが、ピーク強度が減少に転じると、その電極にはクラックが発生し、ときには酸化チタン膜が剥離してしまうという不具合が発生する。
従って、本発明においては、酸化チタン由来のピーク強度が最大となる時間で四塩化チタン水溶液処理を終了することが重要であり、この処理により最も性能の高い酸化チタン電極を得ることが可能となる。
すなわち、少なくとも一方が透明な二枚の導電性基板と、当該導電性基板のうち片方の導電性基板の導電面上に設けられた増感剤により修飾された酸化チタン層と、当該2枚の導電性基板の間に設けられた、少なくとも可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質を含有した電解液を含有する電解質層からなる光電変換素子において、前記酸化チタン層として前記記載の製造方法で製造された酸化チタン電極を用いることにより高性能な光電変換素子となる。
もちろん、これらの混合物も好適に用いることができる。
レドックス性常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
レドックス性常温溶融塩の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
液体系の電解質としては特に限定されるものではなく、通常、溶媒、上述した可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質(溶媒に可溶なもの)およびさらに必要に応じて支持電解質を基本的成分として構成される。
常温溶融塩の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
溶媒はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用でき、特にLi塩が好ましい。
塩類の具体例としては、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
また、これらの混合物も好適に用いることができる。
アルカリ類も特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがいずれも使用可能である。
常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
常温溶融塩の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
高分子固体電解質としては、特に好ましいものとして、(a)高分子マトリックス(成分(a))に、少なくとも(c)可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質(成分(c))を含有し、所望により(b)可塑剤(成分(b))をさらに含有するものが挙げられる。また、これらに加え、所望によりさらに前記した(d)支持電解質や(e)常温溶融塩などの他の任意成分を含有させてもよい。高分子固体電解質としては、前記成分(c)または、成分(b)と成分(c)、あるいはさらなる任意成分が、高分子マトリックス中に保持されることによって固体状態またはゲル状態が形成される。
上記高分子マトリックスとしての特性を示す高分子化合物としては、ヘキサフロロプロピレン、テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、フッ化ビニリデンなどのモノマーを重合または共重合して得られる高分子化合物を挙げることができる。またこれらの高分子化合物は単独で用いても良く、また混合して用いても良い。これらの中でも、特にポリフッ化ビニリデン系高分子化合物が好ましい。
共重合性モノマーとしては、好適にはヘキサフロロプロピレンが用いられる。本発明においては、特にフッ化ビニリデンにヘキサフロロプロピレンを1〜25mol%共重合させたフッ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレン共重合体を高分子マトリックスとするイオン伝導性フィルムとして好ましく用いることができる。また共重合比の異なる2種類以上のフッ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレン共重合体を混合して使用しても良い。
常温溶融塩の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
溶媒はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
成分(c)は、可逆な電気化学的酸化還元反応を行うことができる化合物であって、通常レドックス性材料と称されるものである。
かかる化合物しては、特にその種類を制限するものではないが、たとえば、フェロセン、p−ベンゾキノン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、テトラチアフルバレン、アントラセン、p−トルイルアミン等を用いることができる。また、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2、4級イミダゾリウムのヨウ素塩、テトラアルキルアンモニウムのヨウ素塩、Br2とLiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2などの金属臭化物などが挙げられる。
もちろん、これらの混合物も好適に用いることができる。
なお、これらの化合物の場合は、通常成分(b)と併用することが好ましい。
レドックス性常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
レドックス性常温溶融塩の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
成分(c)を成分(b)と併用する場合、成分(c)は、成分(b)に溶解し、かつ高分子固体電解質とした際にも析出等が起こらない混合比とすることが望ましく、好ましくは成分(c)/成分(b)が質量比で0.01〜0.5、さらに好ましくは0.03〜0.3の範囲である。
また、成分(a)は、[成分(a)/(成分(b)+成分(c)]の質量比が、0.05〜1の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.5の範囲であることが望ましい。
ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物としては、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物が好適に挙げられる。
p1、p2、p3、q1、q2、及びq3は、それぞれ別個に0乃至3の整数を表す。
もちろん、これらを二種以上組み合わせて使用することができる。
キャスト法については、前記混合物をさらに適当な希釈剤にて粘度調整を行い、キャスト法に用いられる通常のコータにて塗布し、乾燥することで成膜することができる。コータとしては、ドクタコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、リバースロールコータ、グラビアコータ、スプレイコータ、カーテンコータを用いることができ、粘度および膜厚により使い分けることができる。
スピンコート法については、前記混合物をさらに適当な希釈剤にて粘度調整を行い、市販のスピンコーターにて塗布し、乾燥することで成膜することができる。
ディップコート法については、前記混合物をさらに適当な希釈剤にて粘度調整を行って混合物溶液を作製し、適当な基盤を混合物溶液より引き上げた後、乾燥することで成膜することができる。
また、本発明におけるイオン伝導性フィルムは、酸化体の拡散係数が1×10−9cm2/s以上、好ましくは1×10−8cm2/s以上、さらに好ましくは1×10−7cm2/s以上を示す。なお、拡散係数は、イオン伝導性を示す一指標であり、定電位電流特性測定、サイクリックボルタモグラム測定などの一般的な手法で求めることができる。
イオン伝導性フィルムの厚さは、特に限定されないが、通常1μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常3mm以下、好ましくは1mm以下である。
透明基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。なお、本発明における透明とは、10〜100%の透過率、好ましくは50%以上の透過率を有することであり、また、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。
膜厚は通常、10〜5000nm、好ましくは100〜3000nmである。また、表面抵抗(抵抗率)は、本発明の基板の用途により適宜選択されるところであるが、通常、0.5〜500Ω/sq、好ましくは2〜50Ω/sqである。
金属錯体色素としては、ルテニウム、オスミウム、鉄、コバルト、亜鉛の錯体や金属フタロシアニン、クロロフィル等を用いることができる。
本発明において用いる金属錯体色素としては、以下のようなものが例示される。
《酸化チタン電極の製造》
表面抵抗値10Ω/sqのSnO2:Fガラス(ガラス基板上にSnO2:F膜を形成した透明導電性ガラス)上にSOLARONIX社製Ti−Nanoxide T/SPをギャップ130μmのアプリケーターを用いてコートし、乾燥後、450℃で1時間焼成することで厚さ10μmの酸化チタン層を形成した。
非特許文献1記載の方法に従い作製した0.2mol/Lの四塩化チタン水溶液中に、上記酸化チタン電極を浸漬し、密閉状態で、40℃で放置した。所定時間放置後、純水で洗浄し、乾燥させた。得られたサンプルを、顕微ラマン装置(日本分光社製NS−1000)を用いてラマン散乱スペクトルを測定することで、図2のようなラマン散乱スペクトルが得られた。このラマン散乱スペクトルの634cm−1の酸化チタン由来のピーク強度の四塩化チタン水溶液処理時間依存性を表1に示した。処理時間2時間を境にピーク強度が減少に転じることが分かった。これらのサンプルを450℃で1時間焼成したところ、ピーク強度が減少に転じた後のサンプルでは、酸化チタン膜に激しくクラックが発生した。
上記で得られた四塩化チタン水溶液処理した酸化チタン電極を、下記式で示されるルテニウム色素(Rutenium−535−bisTBA、ソーラロニクス社製)/エタノール溶液(3.0×10−4mol/L)に15時間浸後、余分な色素をエタノールで洗浄し、風乾することで色素を吸着させた。
次に、色素を吸着した酸化チタン電極の酸化チタン面とPt薄膜のついた導電ガラスのPt面を、44μmのPETフィルムをスペーサとして周辺に配置して向かい合わせて、その隙間に0.1mol/Lのヨウ化リチウム、0.5mol/Lのヨウ化1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、0.5mol/Lの4−t−ブチルピリジン、0.05mol/Lのヨウ素を含む3−メトキシプロピオニトリル溶液を毛管現象により注入し、周辺を紫外線硬化型シール材でシールし、光電変換素子とした。この光電変換素子に疑似太陽光を照射し電流電圧特性を測定したところ、表1のような結果が得られ、Run3のみが良好な特性を示すことが分かった。
《四塩化チタン水溶液処理》
0.2mol/Lの四塩化チタン水溶液中に、実施例1と同様に製造した酸化チタン電極を浸漬し、密閉状態で、70℃で放置した。所定時間放置後、純水で洗浄し、乾燥させた。得られたサンプルを、顕微ラマン装置(日本分光社製NS−1000)を用いてラマン散乱スペクトルを測定した。このラマン散乱スペクトルの634cm−1の酸化チタン由来のピーク強度の四塩化チタン水溶液処理時間依存性を表2に示した。処理時間30分を境にピーク強度が減少に転じることが分かった。これらのサンプルを450℃で1時間焼成したところ、ピーク強度が減少に転じた後のサンプルでは、酸化チタン膜に激しくクラックが発生した。
上記で得られた四塩化チタン水溶液処理した酸化チタン電極を、下記式で示されるルテニウム色素(Rutenium−620−1H3TBA、ソーラロニクス社製)/エタノール溶液(1.0×10−4mol/L)に15時間浸後、余分な色素をエタノールで洗浄し、風乾することで色素を吸着させた。
次に、色素を吸着した酸化チタン電極の酸化チタン面とPt薄膜のついた導電ガラスのPt面を、44μmのPETフィルムをスペーサとして周辺に配置して向かい合わせて、その隙間に0.6mol/Lのヨウ化1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、0.5mol/Lの4−t−ブチルピリジン、0.1mol/Lのチオシアン酸グアニジン、0.05mol/Lのヨウ素を含む3−メトキシプロピオニトリル溶液を毛管現象により注入し、周辺を紫外線硬化型シール材でシールし、光電変換素子とした。この光電変換素子に疑似太陽光を照射し電流電圧特性を測定したところ、表2のような結果が得られ、Run4のみが良好な特性を示すことが分かった。
2 対向電極基板
3 酸化チタン層
4 イオン伝導性フィルム
5 シール部材
Claims (8)
- 酸化チタン電極を四塩化チタン水溶液で処理する際に、酸化チタン電極のラマン散乱スペクトルにおける100〜800cm−1に観察される酸化チタン由来のピーク強度が最大になるように処理時間を調整することを特徴とする光電変換素子用酸化チタン電極の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法で製造された酸化チタン電極を用いたことを特徴とする光電変換素子の製造方法。
- 少なくとも一方が透明な二枚の導電性基板と、当該導電性基板のうち片方の導電性基板の導電面上に設けられた増感剤により修飾された酸化チタン層と、当該2枚の導電性基板の間に設けられた、少なくとも可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質を含有した電解液を含有する電解質層からなる光電変換素子であって、前記酸化チタン層として請求項1に記載の製造方法で製造された酸化チタン電極を用いたことを特徴とする光電変換素子の製造方法。
- 前記電解質層が、固体電解質であることを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子の製造方法。
- 前記固体電解質が、少なくとも(a)高分子マトリックスおよび(c)可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質からなるイオン伝導性フィルムであることを特徴とする請求項3又は4に記載の光電変換素子の製造方法。
- 前記高分子マトリックスがポリフッ化ビニリデン系高分子化合物であることを特徴とする請求項5に記載の光電変換素子の製造方法。
- 前記ポリフッ化ビニリデン系高分子化合物がカルボキシル基を含有することを特徴とする請求項6に記載の光電変換素子の製造方法。
- 前記可逆な電気化学的酸化還元特性を示す物質が常温溶融塩類であることを特徴とする請求項3〜7のいずれかの項に記載の光電変換素子の製造方法。
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