JPWO2003080643A1 - トリテルペン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、エンドセリン受容体拮抗薬等として有用なトリテルペン誘導体、特に式:
で示される化合物、その塩または媒和物(以下、化合物(V)という)の製造方法に関する。
背景技術
化合物(V)はエンドセリン受容体拮抗薬であり、種々の循環器系疾患(例:高血圧、虚血性疾患、脳循環障害、腎障害、諸臓器の循環不全、喘息、脳卒中、脳梗塞、脳浮腫等)の治療薬として有用である(特許文献1および特許文献2等)。また、その製造中間体であるミリセロン等のオレアノール酸誘導体の製造方法は特許文献3に記載されている。さらに、オレアノール酸を使用した化合物(V)の製造方法が非特許文献1および非特許文献2等に記載されている。しかし、これら文献に記載の製法では、製造中間体の単離、反応工程ごとに異なる試薬や溶媒の使用、または環境上有害な試薬の使用を必要とする等、工業的製法としては必ずしも満足のいく方法ではなかった。
特許文献4には、ヒドロキシ−2−ニトロベンズアルデヒドのニトロ基を接触還元してアミノ基とする方法が記載されているが、この方法ではアルデヒド基をアセタール化して保護した後に還元しているものである。
特許文献1 国際公開WO92/12991号パンフレット
特許文献2 特開平7−53484号公報
特許文献3 特開平7−316188号公報
特許文献4 特開平7−101956号公報
非特許文献1 オーガニック・プロセス・リサーチ・アンド・デベロップメント(Organic Process Research & Development)1999年,3巻,P.347−351
非特許文献2 ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)1997年,62巻,P.960−966
発明の開示
よって化合物(V)やその製造中間体をより効率よく工業的に大量生産する方法の開発が要望されていた。
発明を実施するための最良の形態
本発明者らは、化合物(V)の製造方法について改良した結果、以下に示す発明を完成した。
(1)式:
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル)で示され、
(工程1)化合物(I)と化合物(II)をリチウム試薬(A)および有機溶媒の存在下に反応させて化合物(III)を含む溶液を得る工程、
(工程2)工程1で得られた溶液中にリチウム試薬(B)を加えて化合物(IV)を含む溶液を得る工程、および
(工程3)工程2で得られた溶液に酸を加える工程、
を含むことを特徴とする、化合物(V)、その製薬上許容される塩、またはその溶媒和物の製造方法。
(2)式:
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル)で示され、
(工程1)化合物(I)、化合物(II)およびリチウム試薬(A)を有機溶媒に溶解させる工程、
(工程2)リチウム試薬(B)を加える工程、および
(工程3)酸を加える工程、
を順に行うことを特徴とする、化合物(V)、その製薬上許容される塩、またはその溶媒和物の製造方法。
(3)得られた化合物(V)、その製薬上許容される塩、またはその溶媒和物を単離する工程を含むことを特徴とする、上記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)リチウム試薬(A)が塩化リチウムまたは水酸化リチウムであり、リチウム試薬(B)が水酸化リチウムである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)有機溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドある、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)式:
(式中、R2は炭素数1〜8のアルキル)で示され、
(工程1)化合物(VI)をPd−C存在下で還元することにより化合物(VII)を得る工程、および
(工程2)工程1で得られた溶液に含まれる化合物(VII)と化合物(VIII)を反応させる工程、
を含むことを特徴とする、化合物(II)、その製薬上許容される塩、またはその溶媒和物の製造方法。
(7)工程2をpH1〜7で行う上記(6)記載の製造方法。
(8)工程2をN,N−ジメチルアニリン存在下で行う上記(6)記載の製造方法。
(9)式:
(式中、R1は炭素数1〜8のアルキル、R3は水素または炭素数1〜8のアルキル)で示され、
(工程1)化合物(I)と化合物(II’)を塩基、有機溶媒および水の存在下に反応させて化合物(IV)を含む溶液を得る工程、および
(工程2)工程1で得られた溶液に酸を加える工程
を含むことを特徴とする、化合物(V)、その製薬上許容される塩、またはその溶媒和物の製造方法。
(10)式:
(式中、R1は炭素数1〜8のアルキル、R3は水素または炭素数1〜8のアルキル)で示され、
(工程1)化合物(I)、化合物(II’)および塩基を有機溶媒および水に溶解させる工程、および
(工程2)酸を加える工程
を順に行うことを特徴とする、化合物(V)、その製薬上許容される塩、またはその溶媒和物の製造方法。
(11)得られた化合物(V)、その製薬上許容される塩、またはその溶媒和物を単離することを特徴とする、上記(9)または(10)記載の製造方法。
(12)塩基が水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、上記(9)〜(11)のいずれかに記載の製造方法。
(13)式:
(式中、R1はエチル)で示される化合物(I−1)の結晶。
(14)上記(1)記載の化合物(V)を有機溶媒に溶解した後、精製水で洗浄することにより、化合物(V)からエンドトキシンを除去することを特徴とする、化合物(V)の製造方法。
(15)有機溶媒が酢酸エチルである、上記(14)に記載の方法。
本発明の一態様として、上記化合物(I)から化合物(V)を得る製法について説明する。
[方法A](工程1)
本工程では、化合物(I)、化合物(II)およびリチウム試薬(A)を有機溶媒に溶解させる。すなわち、化合物(I)と化合物(II)をリチウム試薬(A)および有機溶媒の存在下に反応させることにより、化合物(III)を含む溶液が得られる。
ここで「溶液」とは、化合物(III)が溶解した均一液相状態を意味するが、化合物(III)が完全に溶解せず分散している懸濁液状態であるものも包含する。
以下、本明細書中における「溶液」は全て同様に懸濁液状態であるものも包含する。「溶解」も同様に懸濁状態を包含する。
化合物(I)やその3−ケト体は、例えば上記特許文献3、非特許文献1および非特許文献2等に記載されているか、ホーナ−エモンズ(Horner−Emmons)反応を利用して該文献に準じて製造可能である。また、化合物(I)は該3−ケト体をエチレンジオキソで保護する方法によっても容易に製造できる。
化合物(II)も、上記文献に記載されている方法と同様にして合成可能である。
R1またはR2で示される炭素数1〜8のアルキルは直鎖状および分枝状のアルキルを包含し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチルおよびn−オクチル、イソオクチル等が挙げられる。R1として好ましくはメチルまたはエチルであり、特に好ましくはエチルである。R2として好ましくはメチルである。
リチウム試薬(A)としては、塩化リチウム、臭化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等が例示されるが、好ましくは塩化リチウムまたは水酸化リチウムである。リチウム試薬(A)の使用量は、化合物(I)に対して約2.0〜10.0モル当量、好ましくは約2.0〜3.0モル当量である。
有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジメチルエーテル等が例示されるが、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。
反応温度は、通常、約−20〜60℃、好ましくは約10〜20℃である。
反応時間は、通常、1時間〜50時間、好ましくは約6〜24時間である。
本反応は所望により、塩基存在下に行ってもよい。塩基としては、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.6]−7−ウンデセン)、トリメチルアミン、トリエチルアミン、コリン、プロカイン、エタノールアミン等が例示されるが、好ましくはDBUである。
本工程により、化合物(III)を含む溶液が得られる。化合物(III)は単離してもよいが、好ましくは単離することなく次の反応に使用できる。
(工程2)
本工程では、工程1で得られた反応物にリチウム試薬(B)を加える。すなわち、工程1で得られた化合物(III)を含む溶液にリチウム試薬(B)を加えることにより、化合物(IV)を含む溶液が得られる。
リチウム試薬(B)としては、水酸化リチウム、炭酸リチウム等が例示されるが、好ましくは水酸化リチウムである。リチウム試薬(B)の使用量は、化合物(III)に対して約2.0〜10.0モル当量、好ましくは約2.0〜4.0モル当量である。上記工程において上記リチウム試薬(A)とリチウム試薬(B)は、同一でも異なっていてもよい。
有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジメチルエーテル等が例示されるが、好ましくは、工程1と同一溶媒が使用され、特に好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。
反応温度は、通常、約−40〜60℃、好ましくは約−10〜0℃である。
反応時間は、通常、0.1時間〜10時間、好ましくは約0.5〜2.0時間である。
本工程により、化合物(IV)を含む溶液が得られる。化合物(IV)は単離してもよいが、好ましくは単離することなく次の反応に使用できる。
(工程3)
本工程では、工程2で得られた反応物に酸を加える。すなわち、工程2で得られた化合物(IV)を含む溶液に酸を加えることにより化合物(V)が生成する。この後、反応液に有機溶媒(好ましくは酢酸エチル)と水を加えて、常法通り、抽出、水洗浄、晶析等を行うことにより、化合物(V)を好ましくは結晶として単離することができる。
酸としては、化合物(IV)のエチレンジオキシ部分を脱保護し得るものであれば特に限定されず、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、シュウ酸等が例示されるが、好ましくは塩酸である。酸の使用量は、化合物(IV)に対して約4.5〜15.0モル当量、好ましくは約7.0〜9.0モル当量である。
反応温度は、通常、約0〜80℃、好ましくは約40〜50℃である。
反応時間は、通常、0.1時間〜10時間、好ましくは約1.0〜2.0時間である。
上記工程により、各製造中間体を好ましくは単離することなく、化合物(I)から化合物(V)をワンポットの反応で得られる。また使用する塩基や溶媒の種類を統一することも可能である。よって、本製法は工業的製法として非常に有利である。
[方法B]
化合物(I)、化合物(II’)および塩基を有機溶媒および水に溶解させる工程および酸を加える工程を順に行うことにより、化合物(V)を得ることが可能である。すなわち、化合物(I)および化合物(II’)を塩基、有機溶媒および水の存在下に反応させて化合物(IV)を含む溶液を得、得られた溶液を上記方法A工程3に付すことにより、化合物(V)が得られる。
ここでR3で示される炭素数1〜8のアルキルとは、前記R1またはR2と同様である。
ここで用いる塩基としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、好ましくは水酸化リチウムである。塩基の使用量は、化合物(I)に対して約2.0〜10.0モル当量、好ましくは約2.0〜5.0モル当量である。
有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジメチルエーテル等が例示されるが、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。
添加する水の量は特に限定されないが、例えば塩基を0.1%(w/w)〜30%(w/w)、好ましくは1%(w/w)〜10%(w/w)の濃度の水溶液として反応に用いればよい。
反応温度は、通常、約−40℃〜60℃、好ましくは約−10℃〜0℃である。反応時間は、通常、0.1時間〜10時間、好ましくは約0.5時間〜4.0時間である。
本法によれば、極めて短時間で化合物(I)から直接化合物(IV)を製造することができ、大量合成法として有用である。
こうして得られた化合物(IV)を上記工程3に付し、化合物(V)を得ることができる。必要であれば上述の通り、抽出、水洗浄、晶析等を行うことにより、化合物(V)を好ましくは結晶として単離することができる。
化合物(V)はさらに周知の塩形成反応により、容易に製薬上許容される塩に変換され得る。
化合物(V)の製薬上許容される塩としては、無機塩基、アンモニア、有機塩基、塩基性アミノ酸等により形成される塩又は分子内塩が例示される。該無機塩基としては、アルカリ金属(Na、K等)、アルカリ土類金属(Ca、Mg等)、有機塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、コリン、プロカイン、エタノールアミン等が例示される。塩基性アミノ酸としては、リジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン等が例示される。化合物(V)の塩として好ましくは、アルカリ金属塩(例:2Na塩、3Na塩)である。化合物(V)またはその塩は、水やアルコール等の溶媒和物であってもよい。
さらに本発明の一態様として、上記化合物(VI)から化合物(II)を得る製法について説明する。
(工程1)化合物(VI)のニトロ基をPd−C存在下で還元することにより化合物(VII)が得られる。
Pd−Cの重量比は、化合物(VI)に対して約0.01〜0.2当量、好ましくは約0.05〜0.1当量である。
使用され得る溶媒としては、水、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等が例示されるが、好ましくは酢酸エチルまたはアセトニトリルである。
反応温度は、通常、約−10〜60℃、好ましくは約−5〜25℃である。
反応時間は、通常、0.5時間〜10.0時間、好ましくは約1.0〜5.0時間である。
本工程によれば、環境上好ましくないTiCl3等を使用することなく還元反応を行える。また反応後Pd−Cは回収してリサイクルできるので有利である。
化合物(VI)には、ニトロ基に隣接するアルデヒド基が存在する。このようなアルデヒド基が存在する場合には、アルデヒドを保護した後に還元するが(特許文献4参照)、本工程では、特にアルデヒド基を保護することなく、ニトロ基のみを選択的に還元することができた。
本工程により化合物(VII)を含む溶液が得られ、化合物(VII)は単離することなく次の反応に使用できる。よって工業的製法としての利用価値が高い。
(工程2)
工程1で得られた化合物(VII)のアミノ基に化合物(VIII)を縮合させることにより、化合物(II)が得られる。化合物(VII)は非常に不安定であるので、当該反応に際しては、反応液のpH調整が重要である。好ましくは、酢酸、酢酸ナトリム等で反応pHを1〜7、より好ましくは2〜5に調節することにより反応が効率よく進行する。また溶媒との2相系で反応させることにより化合物(VIII)の使用量を軽減することもできる。
化合物(VIII)の化合物(VI)に対する使用割合は、通常、約0.8〜5.0モル当量、好ましくは約1.0〜1.5モル当量である。
反応溶媒としては、水、酢酸、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等が例示されるが、好ましくは酢酸エチルである。反応温度は、通常、約0〜40℃、好ましくは約0〜15℃である。
反応時間は、通常、0.1時間〜5.0時間、好ましくは約0.5〜1.5時間である。 化合物(VIII)において、R2は好ましくはメチルである。
上記化合物(II)の製造は、好ましくは工程1および2を有機溶媒系で連続して行うことにより、TiCl3を用いる水系で行う場合に比べて、工程2で使用する化合物(VIII)の使用量を大幅に削減できる。
(工程2 別法)
工程1で得られた化合物(VII)と化合物(VIII)を塩基存在下で反応させて化合物(II)を得ることも可能である。目的化合物(II)を高収率で得、副生成物の生成量を少量に抑えるためには塩基として特にN,N−ジメチルアニリンを用いることが好ましい。
反応溶媒としては、水、酢酸、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等が例示されるが、好ましくはアセトニトリルである。
反応温度は、通常、約−10〜40℃、好ましくは約−10〜10℃である。
反応時間は、通常、0.1時間〜5.0時間、好ましくは約0.5〜1.5時間である。
化合物(VIII)の化合物(VI)に対する使用割合は、通常、約0.8〜5.0モル当量、好ましくは約1.0〜1.5モル当量である。
本別法は、高収率で目的化合物(II)を得られる他、TiCl3を用いる水系で行う場合に比べて、化合物(VIII)の使用量を軽減することができるという利点を有する。
化合物(II)の塩や溶媒和物としては、前記化合物(V)の場合と同様のものが例示される。
さらに本発明は、上記化合物(I−1)の結晶も提供する。該結晶としては、例えば、以下の回折角度(2θ)の主ピークを示す粉末X線回折パターンにより特徴づけられる結晶が例示される。
2θ=5.760,6.480,9.580,10.080,14.720,15.340,15.740,19.480,20.280(度)
(X線回折測定条件:CuKα線1.54オングストローム、管電圧40kV、管電流40mA)
上記各結晶は、保存安定性が高く、高純度である。化合物(I)やその塩の製造過程において、これらの結晶を単離し製造中間体として使用することにより、カラムクロマト等の精製工程を省くこともできる。よって、当該結晶は、化合物(I)を工業的に生産する上で非常に重要である。
本発明はさらに化合物(V)の精製方法を提供する。詳細には、化合物(V)の製造過程においてエンドトキシンが混入した場合のエンドトキシンの除去法である。該除去法は、上記方法等により得られた化合物(V)を一旦、有機溶媒に溶解した後、該溶液を水で洗浄する工程を包含する。
有機溶媒としては、好ましくは酢酸エチルが例示される。
使用される水には、数十〜数百EU/mL程度のエンドトキシンが含まれていても十分な精製効果が認められる。好ましくは精製水、特に注射用蒸留水が使用され得る。
化合物(V)を含む有機溶媒溶液を水で洗浄することにより、化合物(V)に混入していたエンドトキシンが水層に移動する。本工程は1回の操作でもかなりの精製効果があるが、好ましくは2回以上繰り返され、エンドトキシンの含量を当初に比べて好ましくは約1%以下、さらに好ましくは約0.5%以下にまで低減できる。よって、本精製法は、化合物(V)またはその塩を注射剤等として使用するのに好適である。
実施例
本発明の実施例を以下に示す。実施例で用いる各略号の意味は以下の通りである。
DME:エチレングリコールジメチルエーテル
AcOH:酢酸
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
参考例1 化合物(3)の合成
化合物(1)(18.2g,36.4mmol)をDME(182mL)と酢酸(18.2g)に懇濁させ、25%三塩化チタン水溶液(49.4g,80.1mmol)を流入した。その後50℃まで加熱し1時間反応した後反応液を約120gまで減圧濃縮した。濃縮液に酢酸エチル(91mL)と水道水(91mL)を加え、有機層を分取した。有機層に析出する固形物をろ別し、有機層を10%食塩水(91g)で洗浄した。水層を酢酸エチル(91mL)で抽出し、有機層と合併した後44.25gまで減圧濃縮した。得られた濃縮液のうち22.13gにDME(68.3mL)と酢酸(3.3g)を加えた。21%亜硝酸ナトリウム水溶液(17.85g,54.3mmol)を流入し、25(+10,−5)℃で1時間反応させた。反応終了後、16%水酸化ナトリウム水溶液(33.74g)を流入し50℃で4時間反応させた。この反応はpH13以上を維持するために16%水酸化ナトリウム水溶液を追加しながら実施した(16%水酸化ナトリウム水溶液総量39.68g)。反応終了後、25℃に冷却しメタノール(54.6mL)を流入し晶析させた。7%塩酸(5.6g)で中和後、ろ過して化合物(3)を白色結晶として得た。収量6.13g(69.4%)
参考例2 化合物(8)の合成
(1)化合物(6)の合成
化合物(4)(8.0g,16.5mmol)とトルエン(56mL)の縣濁液にエチレングリコール(2.0g,33.0mmol)とp−トルエンスルホン酸ピリジン塩(0.2g,0.8mmol)を加え、Dean−Starkトラップにより水分を除去しながら110℃で加熱還流した。2時間後、90℃まで冷却しエチレングリコール(1.0g,16.5mmol)を追加してさらに110℃で3時間加熱還流して化合物(5)のトルエン溶液を得た。この溶液を70℃まで冷却しピリジン(5.2g,66.0mmol)を加えた。次に無水酢酸(5.1g,49.5mmol)と4−ジメチルアミノピリジン(0.6g,5.0mmol)を加え、80℃で2時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却しメタノール(128mL)を流入した。5℃で2時間攪拌後ろ過し、冷却メタノール(24mL)で洗浄して化合物(6)を得た。収量8.3g(88%)
(2)化合物(8)の合成
−50℃に冷却した液体アンモニア(400mL)に金属リチウム(3.5g,498.6mmol)を溶解させ、化合物(6)(47.0g,82.3mmol)のTHF溶液(400mL)を1時間かけて滴下した。1時間−50℃で反応させた後、エタノール(236mL)を流入し、昇温してアンモニアを除去した。次に、10℃で水道水(705mL)を流入、7%塩酸(545g)を滴下して5〜10℃で1時間攪拌した。結晶をろ過し、50%アセトニトリル水およびアセトニトリルで洗浄して化合物(7)の未乾晶(42.6g)を得た。
得られた未乾晶のうち27.21gとジエチルホスホノ酢酸(22.7g,115.6mmol)をDMF(150mL)と酢酸エチル(600mL)に溶解した。減圧濃縮により水分を除去し、溶液を約210mLに調製し、室温で1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール(17.0g,105.1mmol)を加え、70℃で1時間反応させた。反応終了後、室温に戻し、酢酸エチル(450mL)を流入した後、3.5%塩酸を滴下し、pHを約5に調整した。水道水(23mL)を加え有機層を分取した。この有機層を40℃に保温しながら水道水(240mL)を加えて抽出した。水層は酢酸エチル(150mL)で抽出し、有機層を合併して酢酸エチル(300mL)を加えた後、約300mLまで減圧濃縮し晶析させた。0〜5℃に冷却し、1時間攪拌させた後、ろ過して化合物(8)を白色結晶として得た。収量22.8g(63%)
化合物(8)結晶の粉末X線回折パターンを図1に、主なピーク値を以下に示す。
(X線回折測定条件:CuKα線1.54オングストローム、管電圧40kV、管電流40mA)
回折角度(2θ,単位:度) 面間隔(d,単位:オングストローム)
5.760 15.33071
6.480 13.62882
9.580 9.22449
10.080 8.76802
14.720 6.01297
15.340 5.77131
15.740 5.62553
19.480 4.55309
20.280 4.37525
実施例1 化合物(9)の合成
化合物(13)(1.7g,10mmol)を酢酸エチル(17mL)に溶解して、10%Pd−C(50%含水)(0.25g)を加えて、15〜20℃で5.5時間常圧下水素化した。触媒をろ別し、酢酸エチル(8mL)で洗浄した。得られた化合物(14)の酢酸エチル溶液に、氷冷下、酢酸ナトリウム(0.8g)を溶解した水溶液(33mL)及び酢酸(3.3mL)を加えた(pH3.90)。氷冷下で3−メトキシカルボニルアクリル酸クロリド(1.5g)を滴下し、50分間攪拌した。結晶をろ過した後、水(20mL)及び酢酸エチル(5mL)で洗浄した後、乾燥して化合物(9)を得た。収量1.8g(72%)
実施例2 化合物(9)の合成
化合物(13)(10.0g,59.8mmol)と10%Pd−C(2.08g,52.1%wet,10%(w/w))をアセトニトリル(200mL)に懸濁させ0℃以下に冷却した。水素圧4kgf/cm2以下で水素供給しながら5℃以下を保ち1時間以上攪拌した。その後Pd−Cをろ別し、アセトニトリルで洗浄して化合物(14)のアセトニトリル溶液を得た。得られた溶液にN,N−ジメチルアニリン(6.53g,53.9mmol)を加え、−5℃まで冷却した3−メトキシカルボニルアクリル酸クロリド(10.7g,72.0mmol)のアセトニトリル(50mL)溶液へ滴下した。滴下終了後、黄色の固体(化合物(9))が析出した。反応液を30分攪拌し、水(100mL)を添加した。その後室温まで加温して一昼夜放置した。減圧濃縮後、氷冷下で1時間攪拌した後晶析した黄色の固体を濾過し、1mol/L塩酸および水で洗浄して化合物(7)の未乾晶粗生成物を得た。次に得られた粗生成物をDMF(100mL)およびアセトニトリル(50mL)の混合液に懸濁させ40℃で加温溶解させた。0.66%炭酸水素ナトリウム水溶液(302g)を滴下して黄色の化合物(9)の固体を析出させ、その後室温まで冷却した。1時間攪拌した後晶析した黄色の固体を濾過し、水で洗浄して化合物(9)の精生成物を得た。収量12.3g(82.5%)
実施例3 アシル化反応における塩基の検討
アシル化反応に使用する塩基として、N,N−ジメチルアニリン、イミダゾール、ピリジン、2,6−ルチジン、トリエチルアミンおよびLi2CO3を試みた。他の塩基と比較し、N,N−ジメチルアニリンを使用した場合には目的化合物(9)の生成率が高く、類縁物質の生成も最小限に抑えられた。
実施例4 化合物(12)の合成
(方法1)化合物(8)(12.6g,18.2mmol)、化合物(9)(5.0g,20.0mmol)および塩化リチウム(1.9g,45.5mmol)をDMF(47.8g)に縣濁させ10℃以下に冷却した。DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.6]−7−ウンデセン)(6.9g,45.5mmol)を加えた後室温に戻し、20時間反応させて化合物(10)のDMF溶液を得た。次に、−5℃に冷却して4%水酸化リチウム水溶液(37.7g)を滴下し、−5℃で1時間攪拌して化合物(11)のDMF溶液を得た。次に、35℃まで昇温し、35%塩酸(16.1g)を加え45℃で1時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチル(136mL)と水(120g)を加え有機層を分取した。水層を酢酸エチルで抽出し、それぞれの有機層を水で洗浄した。洗浄後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液を加え抽出した。水層を分取後、酢酸エチル(160mL)を加え、7%塩酸によりpHを約5に調整して抽出した。水層を酢酸エチルで抽出し、それぞれの有機層を水で洗浄後合併した。合併液を減圧濃縮して水分を除去した後、70℃で化合物(12)の種晶を投入し1時間攪拌した。晶析後、アセトニトリル(52g)を加え、室温まで徐々に冷却し2時間攪拌した。析出した黄色の固体をろ過し、アセトニトリルで洗浄して化合物(12)を得た。収量 9.3g(70%)
(方法2)化合物(8)(25.20g,36.4mmol)、化合物(9)(10.88g,43.7mmol)をDMF(176mL)に縣濁させた。水酸化リチウム(3.82g,91.0mmol)を加え、20時間反応させて化合物(10)のDMF溶液を得た。次に、−5℃に冷却して3%水酸化リチウム水溶液(75.34g)を滴下し、−5℃で1時間攪拌して化合物(11)のDMF溶液を得た。次に、35℃まで昇温し、35%塩酸(28.4g)を加え45℃で1時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチル(89mL)と水(240g)を加え抽出した。水層を酢酸エチルで抽出し、それぞれの有機層を水で洗浄した。洗浄後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液を加え抽出した。水層を分取後、酢酸エチル(320mL)を加え、7%塩酸によりpHを約5に調整して抽出した。水層を酢酸エチルで抽出し、それぞれの有機層を水で洗浄後合併した。この合併液の4分の1(化合物(8)6.30g,9.1mmol相当)を濃縮して水分を除去した後、70℃で化合物(12)の種晶を投入し1時間攪拌した。晶析後、アセトニトリル(26g)を加え、室温まで徐々に冷却し2時間攪拌した。析出した黄色の固体をろ過し、アセトニトリルで洗浄して化合物(12)を得た。収量:4.8g(73%)
実施例5 化合物(12)の合成
化合物(8)(3.46g,5mmol)、化合物(9)(1.50g,6mmol)をDMF(24.2mL)に懸濁させ−5℃以下に冷却した。5.6%水酸化リチウム水溶液(10.7g,25mmol)を滴下して3.5時間反応させ化合物(11)のDMF溶液を得た。次に5℃まで昇温後、35%塩酸(3.39g,32.5mmol)を加えて45℃で2時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、酢酸エチル(44.6g)と水(33.5g)を加え10%水酸化ナトリウム水溶液でpHを5.5付近へ調整した後、有機層を分取した。水層を酢酸エチルで抽出し、それぞれの有機層を水で洗浄後合併した。合併液を減圧濃縮して水分を除去した後、70℃で晶析させた。その後、アセトニトリル(14.9g)を加え、室温まで徐々に冷却した後、0℃まで冷却して1時間攪拌した。析出した黄色の固体をろ過し、アセトニトリルで洗浄して化合物(12)を得た。収量2.97g(81.4%)
実施例6
化合物(9)の代わりに化合物(II’)のR3が水素の化合物を、塩基として8.8%水酸化ナトリウム水溶液(11.4g,25mmol)を使用し、2時間反応させる以外は実施例5と同様に操作して化合物(12)を得た。収量3.11g(85.3%)。
実施例7 エンドトキシン除去法
(注)EU/mLはエンドトキシン濃度を示す。
実施例4で得られた化合物(12)(1.8g)(<0.3EU/mg)を酢酸エチル(40mL)(<1.2EU/mL)およびエンドトキシンを120EU/mLに調整した蒸留水(17mL)(蒸留水自体はもともとエンドトキシンフリー)に加えて、抽出した(水層120EU/mL)。有機層に注射用蒸留水(17mL)(エンドトキシンフリー)に加えて、抽出した(水層6EU/mL)。更に有機層に注射用蒸留水(17mL)に加えて、抽出した(水層0.6EU/mL)。有機層を濃縮した後、酢酸エチル(25.5mL)(<1.2EU/mL)を加えて濃縮した。70℃でアセトニトリル(8.6mL)(<0.3EU/mL)を加えて撹拌した後、室温まで徐々に冷却した。析出した黄色の固体をろ過し、アセトニトリル(31mL)(<0.3EU/mL)で洗浄して化合物(12)(1.5g)(<0.3EU/mg)を得た。
産業上の利用可能性
本発明の製法によれば、エンドセリン受容体拮抗薬等として有用なトリテルペン誘導体を工業的に効率よく製造することができる。また本発明は、該トリテルペン誘導体の製造に有用な中間体の結晶も提供する。
【図面の簡単な説明】
図1 参考例1で得られた化合物(5)の粉末X線回折パターンである。縦軸はピーク強度、横軸は回折角度(2θ)を示す。
Claims (15)
- 得られた化合物(V)、その製薬上許容される塩、またはその溶媒和物を単離する工程を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の製造方法。
- リチウム試薬(A)が塩化リチウムまたは水酸化リチウムであり、リチウム試薬(B)が水酸化リチウムである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 有機溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 工程2をpH1〜7で行う請求項6記載の製造方法。
- 工程2をN,N−ジメチルアニリン存在下で行う請求項6記載の製造方法。
- 得られた化合物(V)、その製薬上許容される塩、またはその溶媒和物を単離することを特徴とする、請求項9または10記載の製造方法。
- 塩基が水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1記載の化合物(V)を有機溶媒に溶解した後、精製水で洗浄することにより、化合物(V)からエンドトキシンを除去することを特徴とする、化合物(V)の製造方法。
- 有機溶媒が酢酸エチルである、請求項14記載の方法。
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