JPWO2002099109A1 - 新規なポリペプチド、そのポリペプチドをコードするdnaおよびそれらの用途 - Google Patents
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Abstract
コンパクチンの6β位を水酸化し抗高脂血症剤のプラバスタチンを生産する、新規微生物ストレプトマイセス・エスピー、その微生物が生産する新規ポリペプチド、そのポリペプチドをコードするDNA、前記DNAを組み込んで得られる組み換えDNA、前記組み換えDNAが導入された微生物、および前記微生物を用いるプラバスタチンの製造方法。
Description
技術分野
本発明は、コンパクチンの6β位水酸化活性を有する新規なポリペプチド、そのポリペプチドをコードするDNAおよびそれらの用途に関する。
さらに詳しく言えば、コンパクチンの6β位を水酸化して抗高脂血症剤として知られるプラバスタチンを生産する新規ポリペプチド、前記ポリペプチドをコードするDNA、そのDNAを組み込んだ組み換えDNA、前記組み換えDNAが導入された微生物、および前記微生物を用いたプラバスタチンの製造方法に関する。
背景技術
近年、高齢化や食事の欧米化に伴い、冠状動脈の硬化により引き起こされる虚血性心疾患が増加している。虚血性心疾患の発症率は、血清コレステロール値が一定水準を超えた場合に増加することが知られている(W.B.Kannel,Ann.Inntern.Med.,74,1(1971))。
生体内のコレステロールは、食事から吸収されるものと体内で生合成されるものがあり、ヒトの場合、生合成される量が食事から吸収される量の3〜4倍多いと報告されている(J.M.Dietschy,N.Engl.J.Med.,282,1179(1970))。従って、コレステロールの生合成を抑制すれば、血清コレステロール値が低下し虚血性心疾患の予防および治療効果が得られると期待される。
コレステロールは、生体内では、アセチルCoAを出発物質として、20段階以上の複雑な反応を経て生合成されるが、これらの経路では下記式
で示される3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−コエンザイムA(HMG−CoA)を還元するHMG−CoA還元酵素が律速酵素となっている。
このHMG−CoA還元酵素を阻害する物質として、青カビの一種であるペニシリウム・チトリヌム(Penicillium citrinum)の生産するコンパクチンが知られている。コンパクチンは下記式
で示されるが、前記HMG−CoAに拮抗し、HMG−CoA還元酵素を特異的に強力に阻害する。
コンパクチン発見後も、高活性なコンパクチン誘導体が探索され、コンパクチンを投与したイヌの尿中活性代謝物としてプラバスタチン(プラバスタチンナトリウム):
が発見された(特公昭61−13699号、米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)。プラバスタチンは優れたコレステロールの生合成阻害活性および臓器選択的阻害活性を示すことから、動脈硬化等の虚血性心疾患を治療または予防する抗高脂血症剤として用いられている。
プラバスタチンを合成する方法としては、コンパクチンを原料として、その6β位を水酸化してプラバスタチンに変換する微生物学的方法が知られている。
特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)公報には、アブシディア(Absidia)属、カニンガメラ(Cunninghamella)属、シンセファラストラム(Syncephalastrum)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する特定の微生物がプラバスタチンへの変換能を有することが記載されている。
また、特許第2603677号(米国特許第5179013号)明細書および特許第2672551号明細書には、ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces calbophilus)SANK 62585株(FERM BP−1145)がコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有し、その微生物由来の水酸化酵素およびその遺伝子について記載されている。
しかし、これらの微生物学的方法では、プラバスタチンの生成能力、生産効率の点で十分といえるものではなかった。
発明の開示
本発明の課題は、医薬として使用されるプラバスタチンを安価に製造するために、コンパクチンの6β位を水酸化する酵素活性を有するポリペプチドおよびそのポリペプチドをコードする遺伝子を提供すると共に、その遺伝子を組み込んだ微生物を用いたプラバスタチンの製造法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題に鑑みて、コンパクチンの6β位を水酸化する微生物の探索を行い、土壌から分離された特定の微生物が培地に添加したコンパクチンの6β位を水酸化してプラバスタチンを生産する能力に秀でていることを発見した。本発明者らはその微生物からコンパクチンの6β位の水酸化に関与する遺伝子を同定し、その遺伝子のクローニングに成功し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の以下の構成からなる。
1.配列番号1に記載の塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列を含むDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
2.配列番号1に記載の塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列および1782番目から1970番目の塩基配列を含むDNA、またはこれらDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
3.配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の配列を有するDNAでコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または前記アミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチド。
4.配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列を有するDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが組み込まれた組み換えDNA。
5.配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列をするDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAと、配列番号1で示される塩基配列中1782番目から1970番目の塩基配列を含むDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとが組み込まれた組み換えDNA。
6.前記4または5に記載の組み換えDNAが導入された微生物。
7.前記3に記載のポリペプチドを発現させるための条件下で、前記1に記載の配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の配列のDNAを有する微生物、または前記DNAあるいはそのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしかつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが組み込まれた組み換えDNAが導入された前記6に記載の微生物を培養し、その培養液もしくは培養液から分離した細胞を含む液にコンパクチンを添加して反応させてプラバスタチンを生産蓄積せしめ、これらを採取することを特徴とするプラバスタチンの製造方法。
8.前記3に記載のポリペプチドを発現させるための条件下で、前記2に記載の配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の配列および1782番目から1970番目の配列のDNAを有する微生物、または前記DNAあるいはそのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが組み込まれた組み換えDNAが導入された前記6に記載の微生物を培養し、その培養液もしくは培養液から分離した細胞を含む液にコンパクチンを添加して反応させてプラバスタチンを生産蓄積せしめ、これらを採取することを特徴とするプラバスタチンの製造方法。
9.ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)TM−6(FERM BP−8002)またはストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)TM−7(FERM BP−8003)。
発明の詳細な説明
(1)微生物
本発明者は上記課題に鑑み日本国内の土壌より分離した多数の微生物についてスクリーニングした結果、下記のTM−6株およびTM−7株がコンパクチンの6β位水酸化活性の高い新規なポリペプチドを生産することを見出した。
TM−6株およびTM−7株ともに、その形態はオートミール寒天(ISP3)上で茶味灰の基生菌糸上に豊富な明るい灰色の気菌糸を着生し、可溶性色素は産生しない菌である。
これらの2種の菌株について、後述(実施例5)するように16SrRNA遺伝子のシーケンス決定を行った。その結果、2株間でのシーケンスは100%一致し(配列番号4)、これらの菌株はストレプトマイセス属に属するものと同定し、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)TM−6株およびストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)TM−7株と命名し、2001年4月25日付で日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに第FERM P−18311号および第FERM P−18312号として寄託され、2002年4月5日付で、国際寄託番号FERM BP−8002およびFERM BP−8003として国際寄託されている。
特許第2603677号(米国特許第5179013号)明細書および特許第2672551号明細書に記載のストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585株(FERM BP−1145)についても同様に16SrRNA遺伝子のシーケンス決定を行い(配列番号6)、TM−6株およびTM−7株と対比したところ、明らかに異なる菌種であることがわかった。また、本出願人による特開2001−286293号に記載の水酸化活性を有するミクロテトラスポラ・レクチカテナ(Microtetraspora recticatena)IFO 14525株についてもシーケンスの決定を行い(配列番号5)対比したが、その相同性は低く、異なる属種の菌株であった。
この結果をもとに作成した系統樹を図1に示す。
(2)DNA解析
上記TM−7株を用いてコンパクチンの6β位水酸化酵素を発現するDNA(配列番号1)のクローニングについて説明する。
ストレプトマイセス・エスピーTM−7株を培養し、得られた菌株を破砕して染色体DNAを得る。得られた染色体DNAに対して、P450水酸化酵素ファミリーに共通して存在する酸素結合領域とヘム結合領域のアミノ酸配列から設計したプライマーを用いてPCR反応を行う。PCR反応で増幅されたDNA断片を取得し、これをベースにさらにPCR反応を行い、最初のPCR反応で増幅されたDNA断片の両外側の周辺領域を取得する。こうして本発明の目的とするコンパクチンのプラバスタチンへの変換に関与するDNAを得ることができる。
得られたDNA(配列番号1)は、2種のタンパク質をコードする配列boxA(配列番号1の塩基配列中、544番目から1758番目の配列)およびboxB(配列番号1の塩基配列中、1782番目から1970番目の配列)を含んでいる。
boxA(544番目から1758番目)の塩基配列でコードされるポリペプチドはコンパクチンの6β位水酸化活性に関与している。
このポリペプチドをコードするDNAと、水酸化活性を有する他の種々のポリペプチドをコードするDNAとを対比した結果、ストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585株(FERM BP−1145)由来の水酸化酵素遺伝子(sca−2(Gene,164,81−85(1995)):酵素のアミノ酸配列を配列番号9に示す)との相同性は75.2%、ミクロテトラスポラ・レクチカテナ(Microtetraspora recticatena)IFO 14525株由来のP−450をコードする遺伝子(moxA:酵素のアミノ酸配列を配列番号10に示す)との相同性は45.7%、アミコラータ・オートトレフィカ(Amycolata autotrophica)N−102株由来の25位部分のP−450をコードする遺伝子(VD25:酵素のアミノ酸配列を配列番号11に示す)との相同性は45.7%、ストレプトマイセス・リビダンス由来の水酸化酵素遺伝子(酵素のアミノ酸配列を配列番号12に示す)との相同性は75.2%、ストレプトマイセス・テンダエ(Streptomyces tendae)Tji901株の有するニッコーマイシン(nikkomycin)生合成経路にあるピリジルホモスレオニン・モノオキシゲナーゼ(pyridylhomothreonine monooxygenase)をコードする遺伝子(NikF:酵素のアミノ酸配列を配列番号13に示す)との相同性は45.8%であり、高い相同性を示すものはなかった。
本発明のTM−7株由来のboxAの塩基配列でコードされるポリペプチドとストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585株(FERM BP−1145)由来のポリペプチド(sca−2)との対比を図5に示す。図中のアミノ酸配列(1文字配列)において、白抜き文字部はアミノ酸配列が一致している部分である。
boxAの下流にあるboxB(1782番目から1970番目)はフェレドキシンに高い相同性を有するタンパク質をコードし、boxAによるコンパクチンの6β水酸化において電子伝達を担い、その活性作用を増強しているものと考えられる。なお、特許第2603677号明細書および特許第2672551号明細書に記載のストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585株(FERM BP−1145)の遺伝子sca−2が生産する酵素の作用はフェレドキシンを介さないことが示されているので、本発明の酵素はsca−2由来の酵素とは性質が異なる(Biochimica et Biophysica Acta,1084(1991),35−40)。
(3)プラスミドの構築および形質転換体の調製
(3−1)boxAおよびboxBの両方を含有するDNA断片の調製
上記(2)において解析した配列番号1の塩基配列に基いて、センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを設計、合成し、その5’末端に適切な制限酵素サイトを付加したプライマーを作製する。具体的には5’末端にBglIIサイトを付加したプライマーboxBglF(5’−gcagatcttgtgagcgtcgggtgggtaa−3’:配列番号7)および5’末端にKpnIサイトを付加したプライマーboxKpnR(5’−gcggtaccccgcacggcccctactcgac−3’:配列番号8)を使用することができる。
次に、この2種のプライマー(boxBglFおよびboxKpnR)とTM−7株染色体DNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行う。PCR反応としては、例えば、Takara LA Taq(宝酒造社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングと伸長を68℃、2分間行う2段階の反応を25回繰り返す条件にて行うことができる。
これにより、boxAおよびboxBを含むDNA断片が増幅され、アガロース電気泳動等の手法によりDNA断片を分画・回収する。
(3−2)プラスミドの構築
上記のboxAおよびboxBを含むDNA断片と、宿主微生物に応じた適切なプラスミドベクターを用いて、常法によりプラスミドを構築する。
例えば、プラスミドベクターおよび前記DNA断片をそれぞれ前記の制限酵素で消化し、DNA Ligation Kit ver.2(宝酒造)などを用いて連結することにより、コンパクチンの6β位の水酸化酵素活性に寄与するDNAであるboxAおよびboxBの両方を内部に含有するDNA断片と、プラスミドベクターとが連結したプラスミドを構築することができる。
プラスミドベクターとしては、宿主微生物にストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)を使用する場合には、pIJ702、pSK117などが利用できる。
pIJ702を利用する場合、他の宿主微生物としてストレプトマイセス・フラジエ(Streptomyces fradiae)、ストレプトマイセス・サーモトレランス(Streptomyces thermotorelans)なども利用できる。
(3−3)形質転換体の調製
構築されたプラスミドを常法により宿主微生物に挿入し、宿主微生物を形質転換させることにより、boxAおよびboxBの遺伝子を有し、コンパクチンの6β位を水酸化してプラバスタチンを生産する微生物を得ることができる。
プラスミドの導入方法については特に制限はなく、例えば、宿主微生物がストレプトマイセス属に属する微生物の場合には、コンピテントセル法またはエレクトロポレーション法などを採用することができる。具体的な方法については、Genetic Manipulation of Streptomyces:A Laboratory Manual.John Innes Foundation,Norwich,1985などに記載されている。
(4)微生物を用いたプラバスタチンの製造方法
本発明の微生物TM−6株またはTM−7株、あるいは上記方法によりTM−6株またはTM−7株の遺伝子で形質転換された微生物の培養方法およびコンパクチンを原料としたプラバスタチンの製造法について説明する。
本発明で使用する培地組成は、使用する微生物が良好に生育し、かつコンパクチンの6β位を水酸化する酵素活性を発現するのに適当な炭素源、窒素源、無機塩および天然有機栄養物等により成り立っている。炭素源としては、グルコース、フラクトース、グリセロール、ソルビトール、アルコール類、酢酸、澱粉等を単独に用いるかもしくは併用でき、その使用濃度は特に限定されず、おおよそ1〜10%が適当である。窒素源としてはアンモニア、尿素、硫安、硝安、酢安等の化合物を一種または二種以上使用することができる。無機塩としては、燐酸一カリウム、燐酸二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸第一鉄などの塩類を使用することができる。さらに使用菌の生育促進効果を持つ有機栄養源としては、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸などが用いられ、さらにビタミン類、核酸類を少量培地に含有せしめることもできる。
コンパクチンの6β位を水酸化するためのコンパクチンの添加時期は、菌体の生育の最初からおよび生育後のいずれでもよく、また、培養液から菌体を回収し菌体を適当な水溶液に懸濁させた液中に添加してもよい。コンパクチンは種々の濃度で用いることができるが、約0.1g〜2g/Lの濃度で用いることが望ましく、これを一括添加しても分割して添加してもよい。なお、特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)、特公平3−71116号(米国特許第4537859号)、特公平7−24579号公報に記載の菌株では原料コンパクチンの濃度を0.5g/Lとして変換を行っているが、本発明のTM−6株およびTM−7株では原料コンパクチンの濃度をさらに上げてもプラバスタチンへの変換が良好に行えるため、より小さな装置で効率よくプラバスタチンを製造できる利点がある。
培養は通気撹拌培養、振盪培養等の好気的条件下、あるいは静置培養でもよい。培養中のpHは中性ないし弱アルカリ性が好適であり、このためのpH中和剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、塩酸等の公知のものが使用できる。培養温度は20〜40℃の範囲で使用菌の成育に最適な温度で培養できる。培養時間は使用菌株の相違、原料の添加方法、添加濃度等により差はあるが、3〜10日でプラバスタチンが培養液中に生成蓄積する。
生成蓄積したプラバスタチンは、それ自体公知の方法に準拠して単離・精製することができる。すなわち、疎水性の担体あるいはイオン吸着樹脂に吸着せしめ、有機溶媒あるいはアルカリ水、酸性水で溶出し、濃縮後、結晶化等によって回収される。単離・精製法の一例を以下に示す。
培養液中では、プラバスタチンは、通常、ナトリウム塩として含まれており、酸性条件下でフリー体とした後、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等の抽出溶媒を用いて抽出することができる。
前処理としては、(a)前記ろ液をアルカリ性条件下に酢酸ブチル等で洗浄するか、あるいは、(b)酸性条件下でフリー体を酢酸エチル等によりろ液を抽出し、これにアルカリ水溶液を加えてプラバスタチン塩を水層に採取し、このプラバスタチン塩に対しイオン交換樹脂による処理を施し予備精製する。ここで、イオン交換樹脂処理は、プラバスタチンを含む水層を中性にしてから、イオン交換樹脂に浸漬し、プラバスタチンを樹脂に吸着させ、その後、例えばアセトン含有水溶液でプラバスタチンを溶出させて行う。
次いで、プラバスタチン抽出液を濃縮する。濃縮は、不純物の濃度等にもよるが、1ml当たり10mg以上のプラバスタチンを含有する程度まで行うのが好ましい。
かくして得られた濃縮抽出液に、好ましくは第2級アミンを添加してプラバスタチンの第2級アミン塩を析出させる。
プラバスタチンと塩を形成させる第2級アミンとしては、R1R2NH(式中、R1およびR2は、同一または異なる炭素数1〜8のアルキル基、環状アルキル基、アリル基、または置換されていてもよいフェニル基である。)で示されるものが使用できるが、プラバスタチンの回収率および純度の点から、ジシクロヘキシルアミンおよびジエチルアミンが好ましい。
第2級アミンの添加量はプラバスタチンに対して1当量以上であればよい。第2級アミンを添加し、室温で1〜数時間撹拌すればプラバスタチンのアミン塩が析出する。
以上の晶析操作により、高純度(絶対純度99〜100%)のプラバスタチンを高収率で得ることができるが、さらに再結晶によりアミン塩を精製してもよい。再結晶の具体的操作はアミンの種類により異なる。
例えば、プラバスタチンのジシクロアミン塩は水系溶媒に難溶性であり、アルコール水溶液等の水系溶媒から再結晶により精製することができる。再結晶操作としては、例えば、ジシクロヘキシルアミン塩をイソプロパノール水溶液に加熱しながら溶解した後、放冷し、結晶を析出させる。析出後、好ましくは、0〜10℃程度に冷却して約15分間〜1時間程度撹拌する。また、ジシクロヘキシルアミン塩以外の水溶性アミン塩およびアンモニウム塩の場合は、有機系溶媒から再結晶して精製する。例えば、ジエチルアミンの場合には、アミン塩をメタノールに溶解し、酢酸イソプロピル、酢酸エチル等の非極性有機溶媒を加えて結晶を析出させ、室温で約1〜2時間撹拌する。
コンパクチンの微生物による変換反応においては、プラバスタチン(6β体)と共に、生体内で不活性なエピマーである6α体が副生するが、再結晶処理において、6α体を除くことができる。特に、水系溶媒から再結晶した場合は6α体を大幅に除去することができる。
以上のようにして得られたアミン塩は、例えば水に懸濁させた後、硫酸水溶液等を用いて酸性に調整し、酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出することによりフリー体とすることができる。さらに、水酸化ナトリウム溶液などで処理してナトリウム塩等の非毒性塩に転換することもできる。
なお、本明細書において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、上記のDNA、またはそのDNAの断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第二版(Molecular Cloning,A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズ可能なDNAとして、具体的には配列番号1等の塩基配列と少なくとも80%以上の相同性を有するDNA、好ましくは90%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。
また、本明細書において、「アミノ酸の欠失、置換もしくは付加」とは、部位特異的変異誘発法により行うことができ、また、「1個もしくは数個のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数、例えば1〜5個のアミノ酸を意味する。1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質は、モレキュラー・クローニング第二版等に記載の方法に準じて調製することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は下記の記載により限定されるものではない。
参考例:コンパクチン溶液の調製
コンパクチンを乳鉢で微粉化し、得られた微粉コンパクチンを高温で0.2N水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。塩酸でpH7.0〜7.5に中和し、蒸留水でメスアップし、コンパクチン溶液とした。
実施例1:
表1に示すTSB培地50mLを含む250mL容三角フラスコに、本発明のTM−7株、および特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)公報に記載のストレプトマイセス・ハルステディ(Streptomyces halstedii)IFO3199株の凍結種母を各々2%植菌し、28℃、220rpmで24時間培養し、種母培養を行った。
続いてコンパクチンを最終濃度で500mg/L、FeSO4・7H2Oを最終濃度で100mg/L含むTSB培地50mLに種母をそれぞれ2%植菌し、28℃、220rpmで培養した。24時間後にサンプリングを行い、HPLCによりプラバスタチンの生成量(濃度)およびコンパクチンの残存量(濃度)を分析した。
また、表2に示す培地(特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)公報の実施例1で使用されている培地)50mLを含む250mL容三角フラスコに特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)公報に記載のアブシディア・コエルレア(Absidia coerulea)IFO4423株の凍結種母を2%植菌し、28℃、220rpmで48時間培養し、種母培養を行った。続いて上記培地100mLを含む500mL容坂口フラスコに種母を2%植菌し、28℃、120rpmで48時間培養した。48時間後、コンパクチンを最終濃度で500mg/L、FeSO4・7H2Oを最終濃度で100mg/L添加し、さらに培養を続けた。48時間後と120時間後にサンプリングを行い、HPLCによりプラバスタチンの生成量(濃度)およびコンパクチンの残存量(濃度)を分析した。
なお、HPLCによる分析条件は以下のとおりである。
結果を表3に示す。表3から明らかなように、特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)公報に記載のIFO3199株またはIFO4423株ではプラバスタチンを数mg/L程度しか生産しないが、本発明のTM−7株では24時間で200mg/Lを超えるプラバスタチンを生産しており、優れた変換能を有することがわかる。なお、変換率は、消費されたコンパクチンの質量に対するプラバスタチンの生成質量から求めたものである。
実施例2:
前記表1に示すTSB培地(Difco社)50mLを含む250mL容フラスコに、本発明のTM−6株およびTM−7株の凍結種母をそれぞれ2%植菌し、28℃、220rpmで24時間培養し、種母培養を行った。
続いて、コンパクチンを0.5g/L添加したMGS培地(エスサンミート2%,ポリペプトン0.5%,グルタミン酸ナトリウム0.25%,グルコース2%,硫酸第一鉄0.01%,pH無調整)50mLを含む250mL容フラスコに、種母をそれぞれ2%植菌し、28℃、220rpmで培養した。
培養36時間後、実施例1と同様のHPLC分析によりプラバスタチンの生成量を測定したところ、TM−6株およびTM−7株ともに0.25g/Lのプラバスタチンが検出された。
さらに、各フラスコにコンパクチンをそれぞれ0.5g/L、1.0g/L、2.0g/Lおよび3.0g/Lに相当する量を添加し、48時間後までのプラバスタチンの生成速度をHPLCにより測定した。
結果を表4および図2に示す。
表4および図2から明らかなように、0.5〜2.0g/Lというかなり高いコンパクチン濃度においても、本発明の菌株を使用した場合は優れた変換能を維持しており、また3.0g/Lという高濃度においても本発明のTM−6株は優れた変換能を有していることがわかる。
実施例3:
ガラスビーズ3個を入れた250mL容三角フラスコに、前記表1に示すTSB培地(Difco社)50mL、および本発明のTM−7株または特許第2603677号(米国特許第5179013号)に記載のストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585株(FERM BP−1145)の凍結種母をそれぞれ2%植菌し、28℃、220rpmで24時間培養し、種母培養を行った。
続いてコンパクチンを最終濃度で500μg/mL、FeSO4・7H2Oを最終濃度で100μg/mL添加したTSB2倍濃度培地1.5Lを含む1/2インペラ(6枚×6枚、2段、間隔4.5cm)を備えた3L容のミニジャー発酵装置に種母を2%植菌し、28℃、0.5vvm、400rpmで培養した。
培養22時間後、コンパクチンを1000μg/mL(1500mg)添加し、その後、表5に示すようにHPLC分析によりコンパクチン濃度の低下を確認して適宜コンパクチンを添加し、培養を継続した。
なお、溶存酸素量(DO)が低下したら撹拌の回転数を上げ(上限700rpm)、またpHは50%グルコースを用いて上限がpH7.5に収まるように調整した。
コンパクチン濃度とプラバスタチン生成量の経時的変化を各菌株についてHPLC測定した結果を図3に示す。同様にプラバスタチンの異性体の6α位が水酸化されたエピマー体(6α体)についてもその生成量を測定した。その結果をも併せて図3に示す。
図3より明らかなように、SANK 62585株に比べて本発明のTM−7株はコンパクチンをプラバスタチンに良好に変換し得ること、またプラバスタチンの生成量に対して6α体の生成量の比率が小さいことがわかる。
実施例4:
ガラスビーズ3個を入れた250mL容三角フラスコに、前記表1に示すTSB培地(Difco社)50mL、および本発明のTM−7株の凍結種母を2%植菌し、28℃、220rpmで24時間培養し、種母培養を行った。
続いてコンパクチンを最終濃度で500μg/mL、FeSO4・7H2Oを最終濃度で100μg/mL添加したTSB2倍濃度培地1.5Lを含む1/2インペラ(6枚×6枚、2段、間隔4.5cm)を備えた3L容のミニジャー発酵装置に種母を2%植菌し、28℃、0.5vvm、400rpmで培養した。
培養26時間後、コンパクチン溶液(25g/L)の添加を連続的に行った。添加速度は表6に示すように変化させた。
DO、pH、核酸(N.A.)、コンパクチン濃度とプラバスタチン生成量、およびエピマー(6α体)の生成量を図4に示す。
図4より明らかなように、本発明のTM−7株は長時間の培養によっても活性を失わず、160時間後には4.6g/Lまでプラバスタチンを蓄積することがわかる。
実施例5:放線菌の16SrRNA遺伝子のシーケンス決定
本発明の放線菌TM−6株およびTM−7株について近隣結合法による系統解析を行うため、16SrRNA遺伝子のシーケンスを決定し、シーケンス解析により微生物の属種の同定を行った。
また、特許第2603677号(米国特許第5179013号)および特許第2672551号に記載のストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585(FERM BP−1145)の寄託菌を入手し、同様にして16SrRNA遺伝子のシーケンスを決定した。
操作方法は以下のとおりである。
(1)DNA抽出
放線菌体からのDNA抽出は以下のように行った。C培地で30℃、200rpmで2日間培養した放線菌を5000rpm、3分の遠心により集菌して菌体を得た。菌体は360μLのTE(10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA)に再懸濁し、凍結・融解を2回行った。その後、40μLの10mg/mLリゾチーム(最終濃度1mg/mL)を加えて、50℃で30分インキュベートした。さらに100μLの10mg/mLプロテインキナーゼK(最終濃度1mg/mL)と500μLのBL緩衝液(Tris−HCl(pH8.0;40mM)、Tween20(1%)、Nonidet P−40(0.2%)、EDTA(0.2mM))を加えてさらに30分インキュベートした。90℃、10分のインキュベーションでプロテインキナーゼKを失活させた後、その1μLを以下に示すPCR反応に用いた。
(2)PCR増幅
PCR反応はタカラ・PCRサーマルサイクルMP(Takara PCR Thermal Cycle MP;宝酒造製)を用いて行った。PCRに用いたプライマー・セットは真性細菌の小サブユニット・リボソーマルRNA(16SrRNA)遣伝子のほぼ全長(9〜1541塩基部位)を特異的に増幅できるように設計し、9F(5’−gtgtttgatcctggctcag(配列番号14))ならびに1541R(5’−aaggaggtgatccagcc(配列番号15))を用いた。PCRのサイクル・プログラムは96℃、2分のプレヒーティングの後に、30サイクルのPCRを行った。1サイクルの構成は、変性ステップを96℃、20秒、アニーリング・ステップを50℃、20秒、伸長ステップを72℃、2分として行った。
得られたPCRの増幅産物を1%のアガロースゲル電気泳動により生成量および長さを確認した後、スピン・カラム(QIA quick PCR Purification Kit,QIAGEN製)によって精製してシーケンス用の鋳型DNAとした。
(3)シーケンス決定
シーケンスの決定はクローニングを介さずにPCR増幅産物のダイレクト・シーケンスによって行った。シーケンスの決定は増幅された16SrRNA遺伝子の約2/3にあたる約1000塩基部位付近について行った。シーケンス・プライマーとしては9F(5’−gtgtttgatcctggctcag(配列番号14))、515F(5’−gtgccagcagccgcggt(配列番号16))、1099F(5’−gcaacgagcgcaaccc(配列番号17))および536R(5’−gtattaccgcggctgctg(配列番号18))を用い、シーケンスの決定はABI310蛍光自動シーケンサー(パーキン・エルマー製)を用い、シーケンス反応は専用キットであるビッグ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンス・キット(BigDye terminator Cycle sequence kit;パーキン・エルマー製)を用いて行った。その結果、TM−6株およびTM−7株について配列番号4に示す配列を得(相同性100%)、ストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585(FERM BP−1145)については配列番号6に示す配列を得た。
(4)系統解析
近隣結合法による系統解折は系統解析プログラムPHYLIPを用いて行った。
前記で得た配列番号4のシーケンス・データをデータ・ベース(GenBank,EMBL,DDBJ,RDP)から集めた既に報告されているストレプトマイセス(Streptomyces)グループの16SrRNA遺伝子配列とともにプログラム・パッケージClustar−Xを用いてアライメントした。
TM−6株およびTM−7株のシーケンス・データ(配列番号4)を、ストレプトマイセス(Streptomyces)グループの16SrRNA遺伝子配列と近隣結合法による遺伝子レベルで比較し、系統樹を作成した(図1)。
以上の結果から、菌株TM−6株およびTM−7株は、ストレプトマイセス属に属するが、特許第2603677号(米国特許第5179013号)および特許第2672551号に記載のストレプトマイセス・カルボフィラスとは別種であることを確認した。これらの菌株はストレプトマイセス・エスピーTM−6(Streptomyces sp.TM−6:受託番号FERM BP−8002)およびストレプトマイセス・エスピーTM−7(Streptomyces sp.TM−7:受託番号FERM BP−8003)として平成14年4月5日に独立行政法人産業技術総合研究所に国際寄託された。
実施例6:TM−7株由来の塩基配列の決定
(1)ストレプトマイセス・エスピーTM−7株染色体のDNAの調製
グルコース1%、麦芽エキス0.4%、酵母エキス1%からなる培地にTM−7株を接種し、28℃、3日間培養した。得られた培養液を3000rpm、10分間遠心して菌体を集めた。その菌体からBlood & Cell Culture kit(QIAGEN社)を用いて染色体DNAを調製した。
(2)コンパクチンの水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分的配列のクローニング
Gene,164,81−85(1995)の記載に基づき、P450sca−2のアミノ酸配列とMoxAのアミノ酸配列(配列番号10)とのコンセンサス配列(Glu Phe Thr Val Lys ArgおよびHis Gln Cys Leu Gly Gln)から以下のようなミックス・プライマー(P450F2およびP450R2)を設計し作成した(配列表の配列番号19および20参照)。
コドンの揺らぎを考慮して反応性を高めるために、混合塩基s(=c+g)を使用した。
次に、この2種のプライマー(P450F2およびP450R2)と前項(1)で得たTM−7株染色体DNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(宝酒造社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングを40℃、2分間、伸長を68℃、30秒間行う3段階の反応を30回繰り返した。その結果、約750bpの大きさのDNA断片(以下、DNA断片−Aという)が増幅された。このDNA断片−Aは水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分である可能性が高い。PCR反応にて増幅したDNA断片−Aを含む反応液をアガロースゲル電気泳動にかけて分画した。この約750bpの大きさのDNA断片−Aをアガロースゲルから切り出して、SUPREC 01(宝酒造社)によって回収した。
次に得られたDNA断片−Aの塩基配列を解析するに足る量のDNA断片−Aを得るために、プラスミドベクターpT7Blue T(Novagen社)にDNA Ligation kit ver.2(宝酒造社)を用いてDNA断片−Aを連結し、大腸菌JM109株を形質転換した。その後、アンピシリン(50μg/mL)、X−gal(5−Bromo−4−Chloro−3−Indolyl−β−D−Galactoside;40μg/mL)、IPTG(Isopropyl−β−D−thiogalactopyranoside;100μM)を含むLB寒天培地(1.0%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、pH7.0、1.5%寒天)を用いて、形質転換された大腸菌を選択した。こうして分離した形質転換大腸菌のコロニーをアンピシリン(50μg/mL)を含むLB液体培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、pH7.0)で培養した。増殖した形質転換大腸菌の菌体からプラスミド精製キット(QIAfilter Plasmid Midi Kit,QIAGEN社)を用いてプラスミドDNAの分離精製を行い、一定量のDNA断片−Aを得た。
(3)クローニングされたDNA断片−Aの塩基配列の解析
前項(2)で得られたDNA断片−Aの塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PE Biosystems 377XL)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。塩基配列解析の結果、PCR反応で増幅されたDNA断片−Aは電気泳動で約750bpと測定されたが、塩基配列分析の結果、正確には737bpであることが明らかとなった(配列番号1の塩基877〜塩基1613参照)。クローニングされた前記の737bpのDNA配列の両端には前記のPCR反応の時に使用した2種類のプライマーに対応するDNA配列が見出されたので、前記のPCR反応ではDNA断片−Aがこの2種類のプライマー(P450F2およびP450R2)により特異的に増幅されたことが明らかとなった。
(4)DNA断片−Aの周辺領域の解析
前記のとおり、TM−7株由来の水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分的配列が決定されたのでインバースPCR法(細胞工学14巻、p.591−593,1995年)によって、クローニング断片の上流、下流域に広がる周辺領域の塩基配列を増幅、クローニング、配列解析した。すなわち、TM−7株染色体DNA((1)参照)をH緩衝液(50mM Tris−HCl,pH7.5,10mM MgCl2,10mMジチオスレイトール,100mM NaCl)中で制限酵素MluIとPstIでそれぞれ消化した。得られた各制限酵素切断DNA断片をDNA Ligation Kit ver.2(宝酒造社)を用いて自己環状化させた。
他方、DNA断片−Aの塩基配列から、以下のようなプライマー(InvF1およびInvR1)を設計し作成した(配列番号21および22参照)。
次にこの2種のプライマー(InvF1およびInvR1)と前記の自己環状化させたTM−7株染色体DNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(宝酒造社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングと伸長を68℃、4分間行う2段階の反応を25回繰り返した。
この結果、約7kbpの大きさのDNA断片(DNA断片−B)と約6kbpの大きさのDNA断片(DNA断片−C)が増幅したが、これらは、水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAおよびその上流と下流領域を含むDNA配列を有するDNAである可能性が高い。
このPCR増幅反応液をアガロースゲル電気泳動にかけて分画した。約7kbpおよび約6kbpの大きさのDNA断片をそれぞれアガロースゲルから切り出して、SUPREC 01(宝酒造社)によって回収した。次に得られたDNA断片−BおよびDNA断片−Cについて、塩基配列を解析するに足る量の各DNA断片を得るために、前記(2)と同様にプラスミドベクターpT7Blue T(Novagen社)、DNA Ligation kit ver.2(宝酒造社)、大腸菌JM109株およびプラスミド精製キット(QIAfilter Plasmid Midi Kit,QIAGEN社)を用いて、一定量の各DNA断片を得た。
(5)DNA断片−B(約7kbpのサイズ)およびDNA断片−C(約6kbpのサイズ)の塩基配列の解析
前項(4)で得られたDNA断片−BおよびDNA断片−Cの塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PE Biosystems 377XL)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。このように塩基配列の解析を行い、DNA断片−BおよびDNA断片−C配列から、配列番号1に示された1992b pの塩基配列の情報を得た。
実施例7:
(1)TM−7株由来のboxAおよびboxBの両方を含有するDNA断片の調製
実施例6において解析した配列番号1の塩基配列を参考にして、5’末端にBglIIサイトを付加したプライマーboxBglF(5’−gcagatcttgtgagcgtcgggtgggtaa−3’:配列番号7)および5’末端にKpnIサイトを付加したプライマーboxKpnR(5’−gcggtaccccgcacggcccctactcgac−3’:配列番号8)を設計し作製した。
次に、この2種のプライマー(boxBglFおよびboxKpnR)と実施例6(1)で得たTM−7株染色体DNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(宝酒造社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングと伸長を68℃、2分間行う2段階の反応を25回繰り返した。
この結果、boxAおよびboxBを含む約1.5kbpの大きさのDNA断片(以下、DNA断片−Dという)が増幅された。このPCR増幅反応液を、アガロースゲル電気泳動にかけて分画した。上記の約1.5kbpの大きさのDNA断片−Dをアガロースゲルから切り出して、SUPREC 01(宝酒造社)によって回収した。
(2)プラスミドpIJboxABの構築
pIJ702をT緩衝液(33mM Tris−HCl,pH7.9,10mM 酢酸マグネシウム,0.5mM ジチオスレイトール,66mM 酢酸カリウム)中で制限酵素BglIIとKpnIにより消化してプラスミド消化物を得た。同様に前項(1)で得たDNA断片−Dを制限酵素BglIIとKpnIで消化し、得られたDNA断片−Dの消化物とプラスミド消化物とを、DNA Ligation Kit ver.2(宝酒造)を用いて連結した。これによって、コンパクチンのプラバスタチン類への生物学的変換に関与するDNAであるboxAおよびboxBの両方を内部に含有するDNA断片−Dと、プラスミドpIJ702とが連結された約6.5kbpのサイズのプラスミド(プラスミドpIJboxABと称する)が構築された。
(3)形質転換体ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)pIJboxAB株およびストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)pIJsca2株の調製
前項(2)で調製したプラスミドpIJboxABを用い、ストレプトマイセス・リビダンスTK21株を、Genetic Manipulation of Streptomyces:A Laboratory Manual.John Innes Foundation,Norwich,1985に記載された方法に従い形質転換した。こうして、プラスミドpIJboxABで形質転換されたストレプトマイセス・リビダンスpIJboxAB株を得た。
また、Gene,163(1995),81−85に記載された方法に従い、ここに記載されたpSCA205と同じプラスミドを作製し、pIJsca2とした。プラスミドpIJsca2を用い、ストレプトマイセス・リビダンスTK21株を、Genetic Manipulation of Streptomyces:A Laboratory Manual,John Innes Foundation,Norwich,1985に記載された方法に従い形質転換した。こうして、プラスミドpIJsca2で形質転換されたストレプトマイセス・リビダンスpIJsca2株を得た。
(4)形質転換体によるコンパクチンのプラバスタチンへの変換
前項(3)で得た形質転換体ストレプトマイセス・リビダンスpIJboxAB株、ストレプトマイセス・リビダンスpIJsca2株、およびストレプトマイセス・リビダンスpIJ702株の凍結種母をチオペプチン25μg/mLを含むTSB培地(Difco社)25mLに植菌し28℃で48時間振とう培養した。得られた培養液の1mLを遠心分離(3000rpm、5分間)し、菌体を集め、25mM リン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄して、洗浄菌体を得た。こうして得られたpIJboxAB株の洗浄菌体を、変換反応用の緩衝液(25mMリン酸緩衝液(pH7.0)、0.2%グリセロール、100μg/mL 硫酸第一鉄、625μg/mL コンパクチンを含有)1mLに懸濁した。これを28℃、7時間反応させた。反応液をアセトニトリルで抽出し、HPLCでプラバスタチン量を測定した。
HPLC条件:
結果を図6および図7に示す。図6は各形質転換体にて処理した溶液のHPLC分析チャートであり、図7はコンパクチンからプラバスタチンへの変換効率を示すグラフである。
これらの図から、宿主であるストレプトマイセス・リビダンスpIJ702株では認められない保持時間1.8分のプラバスタチンのピークが形質転換体ストレプトマイセス・リビダンスpIJboxAB株およびストレプトマイセス・リビダンスpIJsca2株では確認され、基質であるコンパクチン(保持時間3.2分)が減少していた。このことはboxAおよびboxBがコンパクチンからプラバスタチンへの変換に関与していることを示唆している。
さらに本発明のストレプトマイセス・リビダンスpIJboxAB株はストレプトマイセス・リビダンスpIJsca2株に比べ以下の点で優れている。
(1)コンパクチンからプラバスタチンへの変換速度(コンパクチンの減少速度)が約2倍である。
(2)6α体が少ない。すなわち、6β/6α比がストレプトマイセス・リビダンスpIJboxAB株は17.2であることに対し、ストレプトマイセス・リビダンスpIJsca2株では7.0である。
実施例8〜11:
実施例8〜11において、プラバスタチンの絶対純度(試料中のプラバスタチンの絶対含量(%))は、含量既知の標準品の分析値(検量線)を用いて、分析対象物試料溶液中のプラバスタチンの濃度を測定して求めたものであり、相対純度は下記条件で測定したHPLCの分析時間15分の間に検出された総ピーク面積に対するプラバスタチンのピーク面積の割合により求めた。
HPLC条件:
実施例8:
表1に記載のTSB培地50mLを含む250mL容三角フラスコにTM−7株(FERM BP−8003)の凍結種母1mLを植菌し、28℃、220rpmで24時間培養し、種母培養を行った。続いてコンパクチンを最終濃度で500mg/L、FeSO4・7H2Oを最終濃度で100mg/L添加したTSB培地50mLを含む250mL容三角フラスコに種母を2%植菌し、28℃、220rpmで培養した。48時間および72時間後にコンパクチンを最終濃度で500mg/L追加し、96時間後まで培養を行い、変換培養液を得た。
変換反応培養液(3L)をセライトろ過した後、pH9.0に調整した後、酢酸ブチル(1.27L)で洗浄した。水層を6moL/L硫酸によりpH4.3に調整し、酢酸エチル(3.54L)で抽出した。抽出液の一部(580mL)を30mLまで濃縮した。濃縮液中のプラバスタチン(フリー体)の含量は840mgであった。これにジシクロヘキシルアミン(511μL、1.3当量)を加え、室温で1.5時間撹拌した。析出した結晶をろ過、乾燥し、935mgの粗結晶(淡黄色固体)を得た。
HPLCによる分析の結果、プラバスタチン(溶出時間4.6分)の相対純度91.6%であり、ジシクロヘキシルアミン塩としての絶対純度76%、回収率は59%であった。主な不純物ピーク(溶出時間(分)およびその割合(面積%))は、3.5分(6αエピマー体):1.2%、5.0分(3α転位体):0.7%、12.5分:0.87%、13.4分:1.5%であった。
実施例9:
実施例8で得た粗結晶のうち700mg(532mgのジシクロヘキシルアミン塩を含む。)を、10%イソプロパノール水溶液(14mL)に加熱溶解した後、室温まで放冷し0℃で30分間撹拌した。析出した結晶をろ過、乾燥し、376mgの粗結晶(白色固体)を得た。HPLCによる分析の結果、プラバスタチン(4.6分)の相対純度98.9%、ジシクロヘキシルアミン塩の絶対純度99%、回収率は71%であった。主な不純物ピークは、3.5分(6αエピマー体):0.55%、5.0分(3α転位体):検出限界以下、12.5分:0.03%、13.4分:0.26%であった。6αエピマー体は54%減少した。
実施例10:
実施例9で得た結晶のうち100mg(99mgのジシクロヘキシルアミン塩を含む。)を、10%イソプロパノール水溶液(3mL)に加熱溶解した後、室温まで放冷し0℃で15分間撹拌した。析出した結晶をろ過、乾燥し、75.6mgの粗結晶(白色固体)を得た。HPLCによる分析の結果、プラバスタチン(4.6分)の相対純度99.5%、ジシクロヘキシルアミン塩の絶対純度100%、回収率は76%であった。検出された全不純物ピークの分析値は、3.5分(6αエピマー体):0.28%、8.1分(ラクトン体):0.07%、13.4分:0.11%であった。6αエピマー体は49%減少した。
実施例11:
実施例10で得た結晶を水1.5mLに懸濁し、1M硫酸でpH4.3に調整した。酢酸エチルで抽出後、水酸化ナトリウム水溶液をプラバスタチンと等モル量となるように添加し、さらに酢酸エチルを添加することでプラバスタチンのナトリウム塩を50mg得た。
産業上の利用可能性
ストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585(FERM BP−1145)がコンパクチンの6β位の水酸化しプラバスタチンに変換することは知られているが、本発明のTM−6株およびTM−7株は前記菌株に比べて非常に高い水酸化活性を有する。また、従来知られている菌株を用いた場合に比べ、分離が困難な6α位が水酸化されたエピマー体の生成比率が低いため、生合成後の分離操作が容易に行える。
さらに、TM−6株およびTM−7株からクローニングされるコンパクチンの6β位水酸化に関与するポリペプチド(酵素)をコードするDNAを組み込んだ微生物(形質転換体)を用いることによりプラバスタチンをより効率的に生産することができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、近隣結合法による本発明の菌株(TM−6、TM−7)および関連菌株の遺伝子解析の系統樹である。図中の目盛りの「0.01」は遺伝的近隣度を表わしている。
図2は、本発明のTM−6株およびTM−7株による各種コンパクチン濃度における水酸化効率を示すグラフである。
図3は、実施例3でコンパクチン濃度とプラバスタチン生成量の経時的変化を各菌株についてHPLC測定した結果を示す。
図4は、実施例4でコンパクチン濃度とプラバスタチン生成量の経時的変化を各菌株についてHPLC測定した結果を示す。
図5は、本発明boxAおよびsca−2によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列の相同性を示す。
図6は、本発明の形質転換体およびsca−2を形質導入した微生物により処理した溶液のHPLCチャートである。
図7は本発明の形質転換体およびsca−2を形質導入した微生物によるコンパクチン変換効率を示すグラフである。
本発明は、コンパクチンの6β位水酸化活性を有する新規なポリペプチド、そのポリペプチドをコードするDNAおよびそれらの用途に関する。
さらに詳しく言えば、コンパクチンの6β位を水酸化して抗高脂血症剤として知られるプラバスタチンを生産する新規ポリペプチド、前記ポリペプチドをコードするDNA、そのDNAを組み込んだ組み換えDNA、前記組み換えDNAが導入された微生物、および前記微生物を用いたプラバスタチンの製造方法に関する。
背景技術
近年、高齢化や食事の欧米化に伴い、冠状動脈の硬化により引き起こされる虚血性心疾患が増加している。虚血性心疾患の発症率は、血清コレステロール値が一定水準を超えた場合に増加することが知られている(W.B.Kannel,Ann.Inntern.Med.,74,1(1971))。
生体内のコレステロールは、食事から吸収されるものと体内で生合成されるものがあり、ヒトの場合、生合成される量が食事から吸収される量の3〜4倍多いと報告されている(J.M.Dietschy,N.Engl.J.Med.,282,1179(1970))。従って、コレステロールの生合成を抑制すれば、血清コレステロール値が低下し虚血性心疾患の予防および治療効果が得られると期待される。
コレステロールは、生体内では、アセチルCoAを出発物質として、20段階以上の複雑な反応を経て生合成されるが、これらの経路では下記式
で示される3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−コエンザイムA(HMG−CoA)を還元するHMG−CoA還元酵素が律速酵素となっている。
このHMG−CoA還元酵素を阻害する物質として、青カビの一種であるペニシリウム・チトリヌム(Penicillium citrinum)の生産するコンパクチンが知られている。コンパクチンは下記式
で示されるが、前記HMG−CoAに拮抗し、HMG−CoA還元酵素を特異的に強力に阻害する。
コンパクチン発見後も、高活性なコンパクチン誘導体が探索され、コンパクチンを投与したイヌの尿中活性代謝物としてプラバスタチン(プラバスタチンナトリウム):
が発見された(特公昭61−13699号、米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)。プラバスタチンは優れたコレステロールの生合成阻害活性および臓器選択的阻害活性を示すことから、動脈硬化等の虚血性心疾患を治療または予防する抗高脂血症剤として用いられている。
プラバスタチンを合成する方法としては、コンパクチンを原料として、その6β位を水酸化してプラバスタチンに変換する微生物学的方法が知られている。
特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)公報には、アブシディア(Absidia)属、カニンガメラ(Cunninghamella)属、シンセファラストラム(Syncephalastrum)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する特定の微生物がプラバスタチンへの変換能を有することが記載されている。
また、特許第2603677号(米国特許第5179013号)明細書および特許第2672551号明細書には、ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces calbophilus)SANK 62585株(FERM BP−1145)がコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有し、その微生物由来の水酸化酵素およびその遺伝子について記載されている。
しかし、これらの微生物学的方法では、プラバスタチンの生成能力、生産効率の点で十分といえるものではなかった。
発明の開示
本発明の課題は、医薬として使用されるプラバスタチンを安価に製造するために、コンパクチンの6β位を水酸化する酵素活性を有するポリペプチドおよびそのポリペプチドをコードする遺伝子を提供すると共に、その遺伝子を組み込んだ微生物を用いたプラバスタチンの製造法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題に鑑みて、コンパクチンの6β位を水酸化する微生物の探索を行い、土壌から分離された特定の微生物が培地に添加したコンパクチンの6β位を水酸化してプラバスタチンを生産する能力に秀でていることを発見した。本発明者らはその微生物からコンパクチンの6β位の水酸化に関与する遺伝子を同定し、その遺伝子のクローニングに成功し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の以下の構成からなる。
1.配列番号1に記載の塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列を含むDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
2.配列番号1に記載の塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列および1782番目から1970番目の塩基配列を含むDNA、またはこれらDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
3.配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の配列を有するDNAでコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または前記アミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチド。
4.配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列を有するDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが組み込まれた組み換えDNA。
5.配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列をするDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAと、配列番号1で示される塩基配列中1782番目から1970番目の塩基配列を含むDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとが組み込まれた組み換えDNA。
6.前記4または5に記載の組み換えDNAが導入された微生物。
7.前記3に記載のポリペプチドを発現させるための条件下で、前記1に記載の配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の配列のDNAを有する微生物、または前記DNAあるいはそのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしかつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが組み込まれた組み換えDNAが導入された前記6に記載の微生物を培養し、その培養液もしくは培養液から分離した細胞を含む液にコンパクチンを添加して反応させてプラバスタチンを生産蓄積せしめ、これらを採取することを特徴とするプラバスタチンの製造方法。
8.前記3に記載のポリペプチドを発現させるための条件下で、前記2に記載の配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の配列および1782番目から1970番目の配列のDNAを有する微生物、または前記DNAあるいはそのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが組み込まれた組み換えDNAが導入された前記6に記載の微生物を培養し、その培養液もしくは培養液から分離した細胞を含む液にコンパクチンを添加して反応させてプラバスタチンを生産蓄積せしめ、これらを採取することを特徴とするプラバスタチンの製造方法。
9.ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)TM−6(FERM BP−8002)またはストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)TM−7(FERM BP−8003)。
発明の詳細な説明
(1)微生物
本発明者は上記課題に鑑み日本国内の土壌より分離した多数の微生物についてスクリーニングした結果、下記のTM−6株およびTM−7株がコンパクチンの6β位水酸化活性の高い新規なポリペプチドを生産することを見出した。
TM−6株およびTM−7株ともに、その形態はオートミール寒天(ISP3)上で茶味灰の基生菌糸上に豊富な明るい灰色の気菌糸を着生し、可溶性色素は産生しない菌である。
これらの2種の菌株について、後述(実施例5)するように16SrRNA遺伝子のシーケンス決定を行った。その結果、2株間でのシーケンスは100%一致し(配列番号4)、これらの菌株はストレプトマイセス属に属するものと同定し、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)TM−6株およびストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)TM−7株と命名し、2001年4月25日付で日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに第FERM P−18311号および第FERM P−18312号として寄託され、2002年4月5日付で、国際寄託番号FERM BP−8002およびFERM BP−8003として国際寄託されている。
特許第2603677号(米国特許第5179013号)明細書および特許第2672551号明細書に記載のストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585株(FERM BP−1145)についても同様に16SrRNA遺伝子のシーケンス決定を行い(配列番号6)、TM−6株およびTM−7株と対比したところ、明らかに異なる菌種であることがわかった。また、本出願人による特開2001−286293号に記載の水酸化活性を有するミクロテトラスポラ・レクチカテナ(Microtetraspora recticatena)IFO 14525株についてもシーケンスの決定を行い(配列番号5)対比したが、その相同性は低く、異なる属種の菌株であった。
この結果をもとに作成した系統樹を図1に示す。
(2)DNA解析
上記TM−7株を用いてコンパクチンの6β位水酸化酵素を発現するDNA(配列番号1)のクローニングについて説明する。
ストレプトマイセス・エスピーTM−7株を培養し、得られた菌株を破砕して染色体DNAを得る。得られた染色体DNAに対して、P450水酸化酵素ファミリーに共通して存在する酸素結合領域とヘム結合領域のアミノ酸配列から設計したプライマーを用いてPCR反応を行う。PCR反応で増幅されたDNA断片を取得し、これをベースにさらにPCR反応を行い、最初のPCR反応で増幅されたDNA断片の両外側の周辺領域を取得する。こうして本発明の目的とするコンパクチンのプラバスタチンへの変換に関与するDNAを得ることができる。
得られたDNA(配列番号1)は、2種のタンパク質をコードする配列boxA(配列番号1の塩基配列中、544番目から1758番目の配列)およびboxB(配列番号1の塩基配列中、1782番目から1970番目の配列)を含んでいる。
boxA(544番目から1758番目)の塩基配列でコードされるポリペプチドはコンパクチンの6β位水酸化活性に関与している。
このポリペプチドをコードするDNAと、水酸化活性を有する他の種々のポリペプチドをコードするDNAとを対比した結果、ストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585株(FERM BP−1145)由来の水酸化酵素遺伝子(sca−2(Gene,164,81−85(1995)):酵素のアミノ酸配列を配列番号9に示す)との相同性は75.2%、ミクロテトラスポラ・レクチカテナ(Microtetraspora recticatena)IFO 14525株由来のP−450をコードする遺伝子(moxA:酵素のアミノ酸配列を配列番号10に示す)との相同性は45.7%、アミコラータ・オートトレフィカ(Amycolata autotrophica)N−102株由来の25位部分のP−450をコードする遺伝子(VD25:酵素のアミノ酸配列を配列番号11に示す)との相同性は45.7%、ストレプトマイセス・リビダンス由来の水酸化酵素遺伝子(酵素のアミノ酸配列を配列番号12に示す)との相同性は75.2%、ストレプトマイセス・テンダエ(Streptomyces tendae)Tji901株の有するニッコーマイシン(nikkomycin)生合成経路にあるピリジルホモスレオニン・モノオキシゲナーゼ(pyridylhomothreonine monooxygenase)をコードする遺伝子(NikF:酵素のアミノ酸配列を配列番号13に示す)との相同性は45.8%であり、高い相同性を示すものはなかった。
本発明のTM−7株由来のboxAの塩基配列でコードされるポリペプチドとストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585株(FERM BP−1145)由来のポリペプチド(sca−2)との対比を図5に示す。図中のアミノ酸配列(1文字配列)において、白抜き文字部はアミノ酸配列が一致している部分である。
boxAの下流にあるboxB(1782番目から1970番目)はフェレドキシンに高い相同性を有するタンパク質をコードし、boxAによるコンパクチンの6β水酸化において電子伝達を担い、その活性作用を増強しているものと考えられる。なお、特許第2603677号明細書および特許第2672551号明細書に記載のストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585株(FERM BP−1145)の遺伝子sca−2が生産する酵素の作用はフェレドキシンを介さないことが示されているので、本発明の酵素はsca−2由来の酵素とは性質が異なる(Biochimica et Biophysica Acta,1084(1991),35−40)。
(3)プラスミドの構築および形質転換体の調製
(3−1)boxAおよびboxBの両方を含有するDNA断片の調製
上記(2)において解析した配列番号1の塩基配列に基いて、センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを設計、合成し、その5’末端に適切な制限酵素サイトを付加したプライマーを作製する。具体的には5’末端にBglIIサイトを付加したプライマーboxBglF(5’−gcagatcttgtgagcgtcgggtgggtaa−3’:配列番号7)および5’末端にKpnIサイトを付加したプライマーboxKpnR(5’−gcggtaccccgcacggcccctactcgac−3’:配列番号8)を使用することができる。
次に、この2種のプライマー(boxBglFおよびboxKpnR)とTM−7株染色体DNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行う。PCR反応としては、例えば、Takara LA Taq(宝酒造社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングと伸長を68℃、2分間行う2段階の反応を25回繰り返す条件にて行うことができる。
これにより、boxAおよびboxBを含むDNA断片が増幅され、アガロース電気泳動等の手法によりDNA断片を分画・回収する。
(3−2)プラスミドの構築
上記のboxAおよびboxBを含むDNA断片と、宿主微生物に応じた適切なプラスミドベクターを用いて、常法によりプラスミドを構築する。
例えば、プラスミドベクターおよび前記DNA断片をそれぞれ前記の制限酵素で消化し、DNA Ligation Kit ver.2(宝酒造)などを用いて連結することにより、コンパクチンの6β位の水酸化酵素活性に寄与するDNAであるboxAおよびboxBの両方を内部に含有するDNA断片と、プラスミドベクターとが連結したプラスミドを構築することができる。
プラスミドベクターとしては、宿主微生物にストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)を使用する場合には、pIJ702、pSK117などが利用できる。
pIJ702を利用する場合、他の宿主微生物としてストレプトマイセス・フラジエ(Streptomyces fradiae)、ストレプトマイセス・サーモトレランス(Streptomyces thermotorelans)なども利用できる。
(3−3)形質転換体の調製
構築されたプラスミドを常法により宿主微生物に挿入し、宿主微生物を形質転換させることにより、boxAおよびboxBの遺伝子を有し、コンパクチンの6β位を水酸化してプラバスタチンを生産する微生物を得ることができる。
プラスミドの導入方法については特に制限はなく、例えば、宿主微生物がストレプトマイセス属に属する微生物の場合には、コンピテントセル法またはエレクトロポレーション法などを採用することができる。具体的な方法については、Genetic Manipulation of Streptomyces:A Laboratory Manual.John Innes Foundation,Norwich,1985などに記載されている。
(4)微生物を用いたプラバスタチンの製造方法
本発明の微生物TM−6株またはTM−7株、あるいは上記方法によりTM−6株またはTM−7株の遺伝子で形質転換された微生物の培養方法およびコンパクチンを原料としたプラバスタチンの製造法について説明する。
本発明で使用する培地組成は、使用する微生物が良好に生育し、かつコンパクチンの6β位を水酸化する酵素活性を発現するのに適当な炭素源、窒素源、無機塩および天然有機栄養物等により成り立っている。炭素源としては、グルコース、フラクトース、グリセロール、ソルビトール、アルコール類、酢酸、澱粉等を単独に用いるかもしくは併用でき、その使用濃度は特に限定されず、おおよそ1〜10%が適当である。窒素源としてはアンモニア、尿素、硫安、硝安、酢安等の化合物を一種または二種以上使用することができる。無機塩としては、燐酸一カリウム、燐酸二カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸第一鉄などの塩類を使用することができる。さらに使用菌の生育促進効果を持つ有機栄養源としては、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸などが用いられ、さらにビタミン類、核酸類を少量培地に含有せしめることもできる。
コンパクチンの6β位を水酸化するためのコンパクチンの添加時期は、菌体の生育の最初からおよび生育後のいずれでもよく、また、培養液から菌体を回収し菌体を適当な水溶液に懸濁させた液中に添加してもよい。コンパクチンは種々の濃度で用いることができるが、約0.1g〜2g/Lの濃度で用いることが望ましく、これを一括添加しても分割して添加してもよい。なお、特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)、特公平3−71116号(米国特許第4537859号)、特公平7−24579号公報に記載の菌株では原料コンパクチンの濃度を0.5g/Lとして変換を行っているが、本発明のTM−6株およびTM−7株では原料コンパクチンの濃度をさらに上げてもプラバスタチンへの変換が良好に行えるため、より小さな装置で効率よくプラバスタチンを製造できる利点がある。
培養は通気撹拌培養、振盪培養等の好気的条件下、あるいは静置培養でもよい。培養中のpHは中性ないし弱アルカリ性が好適であり、このためのpH中和剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、塩酸等の公知のものが使用できる。培養温度は20〜40℃の範囲で使用菌の成育に最適な温度で培養できる。培養時間は使用菌株の相違、原料の添加方法、添加濃度等により差はあるが、3〜10日でプラバスタチンが培養液中に生成蓄積する。
生成蓄積したプラバスタチンは、それ自体公知の方法に準拠して単離・精製することができる。すなわち、疎水性の担体あるいはイオン吸着樹脂に吸着せしめ、有機溶媒あるいはアルカリ水、酸性水で溶出し、濃縮後、結晶化等によって回収される。単離・精製法の一例を以下に示す。
培養液中では、プラバスタチンは、通常、ナトリウム塩として含まれており、酸性条件下でフリー体とした後、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等の抽出溶媒を用いて抽出することができる。
前処理としては、(a)前記ろ液をアルカリ性条件下に酢酸ブチル等で洗浄するか、あるいは、(b)酸性条件下でフリー体を酢酸エチル等によりろ液を抽出し、これにアルカリ水溶液を加えてプラバスタチン塩を水層に採取し、このプラバスタチン塩に対しイオン交換樹脂による処理を施し予備精製する。ここで、イオン交換樹脂処理は、プラバスタチンを含む水層を中性にしてから、イオン交換樹脂に浸漬し、プラバスタチンを樹脂に吸着させ、その後、例えばアセトン含有水溶液でプラバスタチンを溶出させて行う。
次いで、プラバスタチン抽出液を濃縮する。濃縮は、不純物の濃度等にもよるが、1ml当たり10mg以上のプラバスタチンを含有する程度まで行うのが好ましい。
かくして得られた濃縮抽出液に、好ましくは第2級アミンを添加してプラバスタチンの第2級アミン塩を析出させる。
プラバスタチンと塩を形成させる第2級アミンとしては、R1R2NH(式中、R1およびR2は、同一または異なる炭素数1〜8のアルキル基、環状アルキル基、アリル基、または置換されていてもよいフェニル基である。)で示されるものが使用できるが、プラバスタチンの回収率および純度の点から、ジシクロヘキシルアミンおよびジエチルアミンが好ましい。
第2級アミンの添加量はプラバスタチンに対して1当量以上であればよい。第2級アミンを添加し、室温で1〜数時間撹拌すればプラバスタチンのアミン塩が析出する。
以上の晶析操作により、高純度(絶対純度99〜100%)のプラバスタチンを高収率で得ることができるが、さらに再結晶によりアミン塩を精製してもよい。再結晶の具体的操作はアミンの種類により異なる。
例えば、プラバスタチンのジシクロアミン塩は水系溶媒に難溶性であり、アルコール水溶液等の水系溶媒から再結晶により精製することができる。再結晶操作としては、例えば、ジシクロヘキシルアミン塩をイソプロパノール水溶液に加熱しながら溶解した後、放冷し、結晶を析出させる。析出後、好ましくは、0〜10℃程度に冷却して約15分間〜1時間程度撹拌する。また、ジシクロヘキシルアミン塩以外の水溶性アミン塩およびアンモニウム塩の場合は、有機系溶媒から再結晶して精製する。例えば、ジエチルアミンの場合には、アミン塩をメタノールに溶解し、酢酸イソプロピル、酢酸エチル等の非極性有機溶媒を加えて結晶を析出させ、室温で約1〜2時間撹拌する。
コンパクチンの微生物による変換反応においては、プラバスタチン(6β体)と共に、生体内で不活性なエピマーである6α体が副生するが、再結晶処理において、6α体を除くことができる。特に、水系溶媒から再結晶した場合は6α体を大幅に除去することができる。
以上のようにして得られたアミン塩は、例えば水に懸濁させた後、硫酸水溶液等を用いて酸性に調整し、酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出することによりフリー体とすることができる。さらに、水酸化ナトリウム溶液などで処理してナトリウム塩等の非毒性塩に転換することもできる。
なお、本明細書において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、上記のDNA、またはそのDNAの断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第二版(Molecular Cloning,A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズ可能なDNAとして、具体的には配列番号1等の塩基配列と少なくとも80%以上の相同性を有するDNA、好ましくは90%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。
また、本明細書において、「アミノ酸の欠失、置換もしくは付加」とは、部位特異的変異誘発法により行うことができ、また、「1個もしくは数個のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数、例えば1〜5個のアミノ酸を意味する。1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質は、モレキュラー・クローニング第二版等に記載の方法に準じて調製することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は下記の記載により限定されるものではない。
参考例:コンパクチン溶液の調製
コンパクチンを乳鉢で微粉化し、得られた微粉コンパクチンを高温で0.2N水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。塩酸でpH7.0〜7.5に中和し、蒸留水でメスアップし、コンパクチン溶液とした。
実施例1:
表1に示すTSB培地50mLを含む250mL容三角フラスコに、本発明のTM−7株、および特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)公報に記載のストレプトマイセス・ハルステディ(Streptomyces halstedii)IFO3199株の凍結種母を各々2%植菌し、28℃、220rpmで24時間培養し、種母培養を行った。
続いてコンパクチンを最終濃度で500mg/L、FeSO4・7H2Oを最終濃度で100mg/L含むTSB培地50mLに種母をそれぞれ2%植菌し、28℃、220rpmで培養した。24時間後にサンプリングを行い、HPLCによりプラバスタチンの生成量(濃度)およびコンパクチンの残存量(濃度)を分析した。
また、表2に示す培地(特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)公報の実施例1で使用されている培地)50mLを含む250mL容三角フラスコに特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)公報に記載のアブシディア・コエルレア(Absidia coerulea)IFO4423株の凍結種母を2%植菌し、28℃、220rpmで48時間培養し、種母培養を行った。続いて上記培地100mLを含む500mL容坂口フラスコに種母を2%植菌し、28℃、120rpmで48時間培養した。48時間後、コンパクチンを最終濃度で500mg/L、FeSO4・7H2Oを最終濃度で100mg/L添加し、さらに培養を続けた。48時間後と120時間後にサンプリングを行い、HPLCによりプラバスタチンの生成量(濃度)およびコンパクチンの残存量(濃度)を分析した。
なお、HPLCによる分析条件は以下のとおりである。
結果を表3に示す。表3から明らかなように、特公昭62−54476号(米国特許第4346227号、同第4410629号および同第4448979号)公報に記載のIFO3199株またはIFO4423株ではプラバスタチンを数mg/L程度しか生産しないが、本発明のTM−7株では24時間で200mg/Lを超えるプラバスタチンを生産しており、優れた変換能を有することがわかる。なお、変換率は、消費されたコンパクチンの質量に対するプラバスタチンの生成質量から求めたものである。
実施例2:
前記表1に示すTSB培地(Difco社)50mLを含む250mL容フラスコに、本発明のTM−6株およびTM−7株の凍結種母をそれぞれ2%植菌し、28℃、220rpmで24時間培養し、種母培養を行った。
続いて、コンパクチンを0.5g/L添加したMGS培地(エスサンミート2%,ポリペプトン0.5%,グルタミン酸ナトリウム0.25%,グルコース2%,硫酸第一鉄0.01%,pH無調整)50mLを含む250mL容フラスコに、種母をそれぞれ2%植菌し、28℃、220rpmで培養した。
培養36時間後、実施例1と同様のHPLC分析によりプラバスタチンの生成量を測定したところ、TM−6株およびTM−7株ともに0.25g/Lのプラバスタチンが検出された。
さらに、各フラスコにコンパクチンをそれぞれ0.5g/L、1.0g/L、2.0g/Lおよび3.0g/Lに相当する量を添加し、48時間後までのプラバスタチンの生成速度をHPLCにより測定した。
結果を表4および図2に示す。
表4および図2から明らかなように、0.5〜2.0g/Lというかなり高いコンパクチン濃度においても、本発明の菌株を使用した場合は優れた変換能を維持しており、また3.0g/Lという高濃度においても本発明のTM−6株は優れた変換能を有していることがわかる。
実施例3:
ガラスビーズ3個を入れた250mL容三角フラスコに、前記表1に示すTSB培地(Difco社)50mL、および本発明のTM−7株または特許第2603677号(米国特許第5179013号)に記載のストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585株(FERM BP−1145)の凍結種母をそれぞれ2%植菌し、28℃、220rpmで24時間培養し、種母培養を行った。
続いてコンパクチンを最終濃度で500μg/mL、FeSO4・7H2Oを最終濃度で100μg/mL添加したTSB2倍濃度培地1.5Lを含む1/2インペラ(6枚×6枚、2段、間隔4.5cm)を備えた3L容のミニジャー発酵装置に種母を2%植菌し、28℃、0.5vvm、400rpmで培養した。
培養22時間後、コンパクチンを1000μg/mL(1500mg)添加し、その後、表5に示すようにHPLC分析によりコンパクチン濃度の低下を確認して適宜コンパクチンを添加し、培養を継続した。
なお、溶存酸素量(DO)が低下したら撹拌の回転数を上げ(上限700rpm)、またpHは50%グルコースを用いて上限がpH7.5に収まるように調整した。
コンパクチン濃度とプラバスタチン生成量の経時的変化を各菌株についてHPLC測定した結果を図3に示す。同様にプラバスタチンの異性体の6α位が水酸化されたエピマー体(6α体)についてもその生成量を測定した。その結果をも併せて図3に示す。
図3より明らかなように、SANK 62585株に比べて本発明のTM−7株はコンパクチンをプラバスタチンに良好に変換し得ること、またプラバスタチンの生成量に対して6α体の生成量の比率が小さいことがわかる。
実施例4:
ガラスビーズ3個を入れた250mL容三角フラスコに、前記表1に示すTSB培地(Difco社)50mL、および本発明のTM−7株の凍結種母を2%植菌し、28℃、220rpmで24時間培養し、種母培養を行った。
続いてコンパクチンを最終濃度で500μg/mL、FeSO4・7H2Oを最終濃度で100μg/mL添加したTSB2倍濃度培地1.5Lを含む1/2インペラ(6枚×6枚、2段、間隔4.5cm)を備えた3L容のミニジャー発酵装置に種母を2%植菌し、28℃、0.5vvm、400rpmで培養した。
培養26時間後、コンパクチン溶液(25g/L)の添加を連続的に行った。添加速度は表6に示すように変化させた。
DO、pH、核酸(N.A.)、コンパクチン濃度とプラバスタチン生成量、およびエピマー(6α体)の生成量を図4に示す。
図4より明らかなように、本発明のTM−7株は長時間の培養によっても活性を失わず、160時間後には4.6g/Lまでプラバスタチンを蓄積することがわかる。
実施例5:放線菌の16SrRNA遺伝子のシーケンス決定
本発明の放線菌TM−6株およびTM−7株について近隣結合法による系統解析を行うため、16SrRNA遺伝子のシーケンスを決定し、シーケンス解析により微生物の属種の同定を行った。
また、特許第2603677号(米国特許第5179013号)および特許第2672551号に記載のストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585(FERM BP−1145)の寄託菌を入手し、同様にして16SrRNA遺伝子のシーケンスを決定した。
操作方法は以下のとおりである。
(1)DNA抽出
放線菌体からのDNA抽出は以下のように行った。C培地で30℃、200rpmで2日間培養した放線菌を5000rpm、3分の遠心により集菌して菌体を得た。菌体は360μLのTE(10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA)に再懸濁し、凍結・融解を2回行った。その後、40μLの10mg/mLリゾチーム(最終濃度1mg/mL)を加えて、50℃で30分インキュベートした。さらに100μLの10mg/mLプロテインキナーゼK(最終濃度1mg/mL)と500μLのBL緩衝液(Tris−HCl(pH8.0;40mM)、Tween20(1%)、Nonidet P−40(0.2%)、EDTA(0.2mM))を加えてさらに30分インキュベートした。90℃、10分のインキュベーションでプロテインキナーゼKを失活させた後、その1μLを以下に示すPCR反応に用いた。
(2)PCR増幅
PCR反応はタカラ・PCRサーマルサイクルMP(Takara PCR Thermal Cycle MP;宝酒造製)を用いて行った。PCRに用いたプライマー・セットは真性細菌の小サブユニット・リボソーマルRNA(16SrRNA)遣伝子のほぼ全長(9〜1541塩基部位)を特異的に増幅できるように設計し、9F(5’−gtgtttgatcctggctcag(配列番号14))ならびに1541R(5’−aaggaggtgatccagcc(配列番号15))を用いた。PCRのサイクル・プログラムは96℃、2分のプレヒーティングの後に、30サイクルのPCRを行った。1サイクルの構成は、変性ステップを96℃、20秒、アニーリング・ステップを50℃、20秒、伸長ステップを72℃、2分として行った。
得られたPCRの増幅産物を1%のアガロースゲル電気泳動により生成量および長さを確認した後、スピン・カラム(QIA quick PCR Purification Kit,QIAGEN製)によって精製してシーケンス用の鋳型DNAとした。
(3)シーケンス決定
シーケンスの決定はクローニングを介さずにPCR増幅産物のダイレクト・シーケンスによって行った。シーケンスの決定は増幅された16SrRNA遺伝子の約2/3にあたる約1000塩基部位付近について行った。シーケンス・プライマーとしては9F(5’−gtgtttgatcctggctcag(配列番号14))、515F(5’−gtgccagcagccgcggt(配列番号16))、1099F(5’−gcaacgagcgcaaccc(配列番号17))および536R(5’−gtattaccgcggctgctg(配列番号18))を用い、シーケンスの決定はABI310蛍光自動シーケンサー(パーキン・エルマー製)を用い、シーケンス反応は専用キットであるビッグ・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンス・キット(BigDye terminator Cycle sequence kit;パーキン・エルマー製)を用いて行った。その結果、TM−6株およびTM−7株について配列番号4に示す配列を得(相同性100%)、ストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585(FERM BP−1145)については配列番号6に示す配列を得た。
(4)系統解析
近隣結合法による系統解折は系統解析プログラムPHYLIPを用いて行った。
前記で得た配列番号4のシーケンス・データをデータ・ベース(GenBank,EMBL,DDBJ,RDP)から集めた既に報告されているストレプトマイセス(Streptomyces)グループの16SrRNA遺伝子配列とともにプログラム・パッケージClustar−Xを用いてアライメントした。
TM−6株およびTM−7株のシーケンス・データ(配列番号4)を、ストレプトマイセス(Streptomyces)グループの16SrRNA遺伝子配列と近隣結合法による遺伝子レベルで比較し、系統樹を作成した(図1)。
以上の結果から、菌株TM−6株およびTM−7株は、ストレプトマイセス属に属するが、特許第2603677号(米国特許第5179013号)および特許第2672551号に記載のストレプトマイセス・カルボフィラスとは別種であることを確認した。これらの菌株はストレプトマイセス・エスピーTM−6(Streptomyces sp.TM−6:受託番号FERM BP−8002)およびストレプトマイセス・エスピーTM−7(Streptomyces sp.TM−7:受託番号FERM BP−8003)として平成14年4月5日に独立行政法人産業技術総合研究所に国際寄託された。
実施例6:TM−7株由来の塩基配列の決定
(1)ストレプトマイセス・エスピーTM−7株染色体のDNAの調製
グルコース1%、麦芽エキス0.4%、酵母エキス1%からなる培地にTM−7株を接種し、28℃、3日間培養した。得られた培養液を3000rpm、10分間遠心して菌体を集めた。その菌体からBlood & Cell Culture kit(QIAGEN社)を用いて染色体DNAを調製した。
(2)コンパクチンの水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分的配列のクローニング
Gene,164,81−85(1995)の記載に基づき、P450sca−2のアミノ酸配列とMoxAのアミノ酸配列(配列番号10)とのコンセンサス配列(Glu Phe Thr Val Lys ArgおよびHis Gln Cys Leu Gly Gln)から以下のようなミックス・プライマー(P450F2およびP450R2)を設計し作成した(配列表の配列番号19および20参照)。
コドンの揺らぎを考慮して反応性を高めるために、混合塩基s(=c+g)を使用した。
次に、この2種のプライマー(P450F2およびP450R2)と前項(1)で得たTM−7株染色体DNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(宝酒造社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングを40℃、2分間、伸長を68℃、30秒間行う3段階の反応を30回繰り返した。その結果、約750bpの大きさのDNA断片(以下、DNA断片−Aという)が増幅された。このDNA断片−Aは水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分である可能性が高い。PCR反応にて増幅したDNA断片−Aを含む反応液をアガロースゲル電気泳動にかけて分画した。この約750bpの大きさのDNA断片−Aをアガロースゲルから切り出して、SUPREC 01(宝酒造社)によって回収した。
次に得られたDNA断片−Aの塩基配列を解析するに足る量のDNA断片−Aを得るために、プラスミドベクターpT7Blue T(Novagen社)にDNA Ligation kit ver.2(宝酒造社)を用いてDNA断片−Aを連結し、大腸菌JM109株を形質転換した。その後、アンピシリン(50μg/mL)、X−gal(5−Bromo−4−Chloro−3−Indolyl−β−D−Galactoside;40μg/mL)、IPTG(Isopropyl−β−D−thiogalactopyranoside;100μM)を含むLB寒天培地(1.0%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、pH7.0、1.5%寒天)を用いて、形質転換された大腸菌を選択した。こうして分離した形質転換大腸菌のコロニーをアンピシリン(50μg/mL)を含むLB液体培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、pH7.0)で培養した。増殖した形質転換大腸菌の菌体からプラスミド精製キット(QIAfilter Plasmid Midi Kit,QIAGEN社)を用いてプラスミドDNAの分離精製を行い、一定量のDNA断片−Aを得た。
(3)クローニングされたDNA断片−Aの塩基配列の解析
前項(2)で得られたDNA断片−Aの塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PE Biosystems 377XL)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。塩基配列解析の結果、PCR反応で増幅されたDNA断片−Aは電気泳動で約750bpと測定されたが、塩基配列分析の結果、正確には737bpであることが明らかとなった(配列番号1の塩基877〜塩基1613参照)。クローニングされた前記の737bpのDNA配列の両端には前記のPCR反応の時に使用した2種類のプライマーに対応するDNA配列が見出されたので、前記のPCR反応ではDNA断片−Aがこの2種類のプライマー(P450F2およびP450R2)により特異的に増幅されたことが明らかとなった。
(4)DNA断片−Aの周辺領域の解析
前記のとおり、TM−7株由来の水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分的配列が決定されたのでインバースPCR法(細胞工学14巻、p.591−593,1995年)によって、クローニング断片の上流、下流域に広がる周辺領域の塩基配列を増幅、クローニング、配列解析した。すなわち、TM−7株染色体DNA((1)参照)をH緩衝液(50mM Tris−HCl,pH7.5,10mM MgCl2,10mMジチオスレイトール,100mM NaCl)中で制限酵素MluIとPstIでそれぞれ消化した。得られた各制限酵素切断DNA断片をDNA Ligation Kit ver.2(宝酒造社)を用いて自己環状化させた。
他方、DNA断片−Aの塩基配列から、以下のようなプライマー(InvF1およびInvR1)を設計し作成した(配列番号21および22参照)。
次にこの2種のプライマー(InvF1およびInvR1)と前記の自己環状化させたTM−7株染色体DNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(宝酒造社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングと伸長を68℃、4分間行う2段階の反応を25回繰り返した。
この結果、約7kbpの大きさのDNA断片(DNA断片−B)と約6kbpの大きさのDNA断片(DNA断片−C)が増幅したが、これらは、水酸化活性を有するタンパク質をコードするDNAおよびその上流と下流領域を含むDNA配列を有するDNAである可能性が高い。
このPCR増幅反応液をアガロースゲル電気泳動にかけて分画した。約7kbpおよび約6kbpの大きさのDNA断片をそれぞれアガロースゲルから切り出して、SUPREC 01(宝酒造社)によって回収した。次に得られたDNA断片−BおよびDNA断片−Cについて、塩基配列を解析するに足る量の各DNA断片を得るために、前記(2)と同様にプラスミドベクターpT7Blue T(Novagen社)、DNA Ligation kit ver.2(宝酒造社)、大腸菌JM109株およびプラスミド精製キット(QIAfilter Plasmid Midi Kit,QIAGEN社)を用いて、一定量の各DNA断片を得た。
(5)DNA断片−B(約7kbpのサイズ)およびDNA断片−C(約6kbpのサイズ)の塩基配列の解析
前項(4)で得られたDNA断片−BおよびDNA断片−Cの塩基配列をDNA塩基配列解析装置(PE Biosystems 377XL)を用い、ダイターミネーター・サイクル・シークエンス法で解析した。このように塩基配列の解析を行い、DNA断片−BおよびDNA断片−C配列から、配列番号1に示された1992b pの塩基配列の情報を得た。
実施例7:
(1)TM−7株由来のboxAおよびboxBの両方を含有するDNA断片の調製
実施例6において解析した配列番号1の塩基配列を参考にして、5’末端にBglIIサイトを付加したプライマーboxBglF(5’−gcagatcttgtgagcgtcgggtgggtaa−3’:配列番号7)および5’末端にKpnIサイトを付加したプライマーboxKpnR(5’−gcggtaccccgcacggcccctactcgac−3’:配列番号8)を設計し作製した。
次に、この2種のプライマー(boxBglFおよびboxKpnR)と実施例6(1)で得たTM−7株染色体DNAをテンプレートとして用いてPCR反応を行った。PCR反応は、Takara LA Taq(宝酒造社)とPCR増幅装置(Biometra社 T Gradient)を用い、変性を98℃、20秒間、アニーリングと伸長を68℃、2分間行う2段階の反応を25回繰り返した。
この結果、boxAおよびboxBを含む約1.5kbpの大きさのDNA断片(以下、DNA断片−Dという)が増幅された。このPCR増幅反応液を、アガロースゲル電気泳動にかけて分画した。上記の約1.5kbpの大きさのDNA断片−Dをアガロースゲルから切り出して、SUPREC 01(宝酒造社)によって回収した。
(2)プラスミドpIJboxABの構築
pIJ702をT緩衝液(33mM Tris−HCl,pH7.9,10mM 酢酸マグネシウム,0.5mM ジチオスレイトール,66mM 酢酸カリウム)中で制限酵素BglIIとKpnIにより消化してプラスミド消化物を得た。同様に前項(1)で得たDNA断片−Dを制限酵素BglIIとKpnIで消化し、得られたDNA断片−Dの消化物とプラスミド消化物とを、DNA Ligation Kit ver.2(宝酒造)を用いて連結した。これによって、コンパクチンのプラバスタチン類への生物学的変換に関与するDNAであるboxAおよびboxBの両方を内部に含有するDNA断片−Dと、プラスミドpIJ702とが連結された約6.5kbpのサイズのプラスミド(プラスミドpIJboxABと称する)が構築された。
(3)形質転換体ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)pIJboxAB株およびストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)pIJsca2株の調製
前項(2)で調製したプラスミドpIJboxABを用い、ストレプトマイセス・リビダンスTK21株を、Genetic Manipulation of Streptomyces:A Laboratory Manual.John Innes Foundation,Norwich,1985に記載された方法に従い形質転換した。こうして、プラスミドpIJboxABで形質転換されたストレプトマイセス・リビダンスpIJboxAB株を得た。
また、Gene,163(1995),81−85に記載された方法に従い、ここに記載されたpSCA205と同じプラスミドを作製し、pIJsca2とした。プラスミドpIJsca2を用い、ストレプトマイセス・リビダンスTK21株を、Genetic Manipulation of Streptomyces:A Laboratory Manual,John Innes Foundation,Norwich,1985に記載された方法に従い形質転換した。こうして、プラスミドpIJsca2で形質転換されたストレプトマイセス・リビダンスpIJsca2株を得た。
(4)形質転換体によるコンパクチンのプラバスタチンへの変換
前項(3)で得た形質転換体ストレプトマイセス・リビダンスpIJboxAB株、ストレプトマイセス・リビダンスpIJsca2株、およびストレプトマイセス・リビダンスpIJ702株の凍結種母をチオペプチン25μg/mLを含むTSB培地(Difco社)25mLに植菌し28℃で48時間振とう培養した。得られた培養液の1mLを遠心分離(3000rpm、5分間)し、菌体を集め、25mM リン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄して、洗浄菌体を得た。こうして得られたpIJboxAB株の洗浄菌体を、変換反応用の緩衝液(25mMリン酸緩衝液(pH7.0)、0.2%グリセロール、100μg/mL 硫酸第一鉄、625μg/mL コンパクチンを含有)1mLに懸濁した。これを28℃、7時間反応させた。反応液をアセトニトリルで抽出し、HPLCでプラバスタチン量を測定した。
HPLC条件:
結果を図6および図7に示す。図6は各形質転換体にて処理した溶液のHPLC分析チャートであり、図7はコンパクチンからプラバスタチンへの変換効率を示すグラフである。
これらの図から、宿主であるストレプトマイセス・リビダンスpIJ702株では認められない保持時間1.8分のプラバスタチンのピークが形質転換体ストレプトマイセス・リビダンスpIJboxAB株およびストレプトマイセス・リビダンスpIJsca2株では確認され、基質であるコンパクチン(保持時間3.2分)が減少していた。このことはboxAおよびboxBがコンパクチンからプラバスタチンへの変換に関与していることを示唆している。
さらに本発明のストレプトマイセス・リビダンスpIJboxAB株はストレプトマイセス・リビダンスpIJsca2株に比べ以下の点で優れている。
(1)コンパクチンからプラバスタチンへの変換速度(コンパクチンの減少速度)が約2倍である。
(2)6α体が少ない。すなわち、6β/6α比がストレプトマイセス・リビダンスpIJboxAB株は17.2であることに対し、ストレプトマイセス・リビダンスpIJsca2株では7.0である。
実施例8〜11:
実施例8〜11において、プラバスタチンの絶対純度(試料中のプラバスタチンの絶対含量(%))は、含量既知の標準品の分析値(検量線)を用いて、分析対象物試料溶液中のプラバスタチンの濃度を測定して求めたものであり、相対純度は下記条件で測定したHPLCの分析時間15分の間に検出された総ピーク面積に対するプラバスタチンのピーク面積の割合により求めた。
HPLC条件:
実施例8:
表1に記載のTSB培地50mLを含む250mL容三角フラスコにTM−7株(FERM BP−8003)の凍結種母1mLを植菌し、28℃、220rpmで24時間培養し、種母培養を行った。続いてコンパクチンを最終濃度で500mg/L、FeSO4・7H2Oを最終濃度で100mg/L添加したTSB培地50mLを含む250mL容三角フラスコに種母を2%植菌し、28℃、220rpmで培養した。48時間および72時間後にコンパクチンを最終濃度で500mg/L追加し、96時間後まで培養を行い、変換培養液を得た。
変換反応培養液(3L)をセライトろ過した後、pH9.0に調整した後、酢酸ブチル(1.27L)で洗浄した。水層を6moL/L硫酸によりpH4.3に調整し、酢酸エチル(3.54L)で抽出した。抽出液の一部(580mL)を30mLまで濃縮した。濃縮液中のプラバスタチン(フリー体)の含量は840mgであった。これにジシクロヘキシルアミン(511μL、1.3当量)を加え、室温で1.5時間撹拌した。析出した結晶をろ過、乾燥し、935mgの粗結晶(淡黄色固体)を得た。
HPLCによる分析の結果、プラバスタチン(溶出時間4.6分)の相対純度91.6%であり、ジシクロヘキシルアミン塩としての絶対純度76%、回収率は59%であった。主な不純物ピーク(溶出時間(分)およびその割合(面積%))は、3.5分(6αエピマー体):1.2%、5.0分(3α転位体):0.7%、12.5分:0.87%、13.4分:1.5%であった。
実施例9:
実施例8で得た粗結晶のうち700mg(532mgのジシクロヘキシルアミン塩を含む。)を、10%イソプロパノール水溶液(14mL)に加熱溶解した後、室温まで放冷し0℃で30分間撹拌した。析出した結晶をろ過、乾燥し、376mgの粗結晶(白色固体)を得た。HPLCによる分析の結果、プラバスタチン(4.6分)の相対純度98.9%、ジシクロヘキシルアミン塩の絶対純度99%、回収率は71%であった。主な不純物ピークは、3.5分(6αエピマー体):0.55%、5.0分(3α転位体):検出限界以下、12.5分:0.03%、13.4分:0.26%であった。6αエピマー体は54%減少した。
実施例10:
実施例9で得た結晶のうち100mg(99mgのジシクロヘキシルアミン塩を含む。)を、10%イソプロパノール水溶液(3mL)に加熱溶解した後、室温まで放冷し0℃で15分間撹拌した。析出した結晶をろ過、乾燥し、75.6mgの粗結晶(白色固体)を得た。HPLCによる分析の結果、プラバスタチン(4.6分)の相対純度99.5%、ジシクロヘキシルアミン塩の絶対純度100%、回収率は76%であった。検出された全不純物ピークの分析値は、3.5分(6αエピマー体):0.28%、8.1分(ラクトン体):0.07%、13.4分:0.11%であった。6αエピマー体は49%減少した。
実施例11:
実施例10で得た結晶を水1.5mLに懸濁し、1M硫酸でpH4.3に調整した。酢酸エチルで抽出後、水酸化ナトリウム水溶液をプラバスタチンと等モル量となるように添加し、さらに酢酸エチルを添加することでプラバスタチンのナトリウム塩を50mg得た。
産業上の利用可能性
ストレプトマイセス・カルボフィラス SANK 62585(FERM BP−1145)がコンパクチンの6β位の水酸化しプラバスタチンに変換することは知られているが、本発明のTM−6株およびTM−7株は前記菌株に比べて非常に高い水酸化活性を有する。また、従来知られている菌株を用いた場合に比べ、分離が困難な6α位が水酸化されたエピマー体の生成比率が低いため、生合成後の分離操作が容易に行える。
さらに、TM−6株およびTM−7株からクローニングされるコンパクチンの6β位水酸化に関与するポリペプチド(酵素)をコードするDNAを組み込んだ微生物(形質転換体)を用いることによりプラバスタチンをより効率的に生産することができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、近隣結合法による本発明の菌株(TM−6、TM−7)および関連菌株の遺伝子解析の系統樹である。図中の目盛りの「0.01」は遺伝的近隣度を表わしている。
図2は、本発明のTM−6株およびTM−7株による各種コンパクチン濃度における水酸化効率を示すグラフである。
図3は、実施例3でコンパクチン濃度とプラバスタチン生成量の経時的変化を各菌株についてHPLC測定した結果を示す。
図4は、実施例4でコンパクチン濃度とプラバスタチン生成量の経時的変化を各菌株についてHPLC測定した結果を示す。
図5は、本発明boxAおよびsca−2によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列の相同性を示す。
図6は、本発明の形質転換体およびsca−2を形質導入した微生物により処理した溶液のHPLCチャートである。
図7は本発明の形質転換体およびsca−2を形質導入した微生物によるコンパクチン変換効率を示すグラフである。
Claims (9)
- 配列番号1に記載の塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列を含むDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
- 配列番号1に記載の塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列および1782番目から1970番目の塩基配列を含むDNA、またはこれらDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
- 配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の配列を有するDNAでコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または前記アミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチド。
- 配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列を有するDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが組み込まれた組み換えDNA。
- 配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の塩基配列をするDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAと、配列番号1で示される塩基配列中1782番目から1970番目の塩基配列を含むDNA、またはこのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとが組み込まれた組み換えDNA。
- 請求の範囲4または5に記載の組み換えDNAが導入された微生物。
- 請求の範囲3に記載のポリペプチドを発現させるための条件下で、請求の範囲1に記載の配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の配列のDNAを有する微生物、または前記DNAあるいはそのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしかつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが組み込まれた組み換えDNAが導入された請求の範囲6に記載の微生物を培養し、その培養液もしくは培養液から分離した細胞を含む液にコンパクチンを添加して反応させてプラバスタチンを生産蓄積せしめ、これらを採取することを特徴とするプラバスタチンの製造方法。
- 請求の範囲3に記載のポリペプチドを発現させるための条件下で、請求の範囲2に記載の配列番号1で示される塩基配列中、544番目から1758番目の配列および1782番目から1970番目の配列のDNAを有する微生物、または前記DNAあるいはそのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコンパクチンの6β位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAが組み込まれた組み換えDNAが導入された請求の範囲6に記載の微生物を培養し、その培養液もしくは培養液から分離した細胞を含む液にコンパクチンを添加して反応させてプラバスタチンを生産蓄積せしめ、これらを採取することを特徴とするプラバスタチンの製造方法。
- ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)TM−6(FERM BP−8002)またはストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)TM−7(FERM BP−8003)。
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