JP2004536564A - 菌類遺伝子発現の新規レギュレータ - Google Patents
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Abstract
本発明は、菌類遺伝子発現のレギュレータならびに商業および医療適用分野におけるそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は、酵素、二次代謝産物および他の有用な産物の生産に関与する菌類遺伝子のレギュレータならびに菌類の侵入に関与する遺伝子のレギュレータに関する。本発明は、菌類遺伝子発現の新規のレギュレータならびに商業および医療適用分野におけるレギュレータ遺伝子を使用する方法を提供する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌類遺伝子発現のレギュレータならびに商業および医療適用分野におけるそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は、酵素、二次代謝産物および他の有用な産物の生産に関与する菌類遺伝子のレギュレータならびに菌類の侵入に関与する遺伝子のレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
菌類は、商業および医療適用分野にとって有用な物質の最も一般的な天然供給源である。これらの有用な物質の多くは、二次代謝産物である。
【0003】
種々の菌類による二次代謝産物の生産は、治療上重要な様々な医薬品の極めて重要な供給源である。ペニシリンおよびセファロスポリンのようなβ−ラクタム抗菌剤は、それぞれペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)およびアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)により生産されるが、これらの化合物は圧倒的高頻度で使用されている抗菌剤である(ルエンゴおよびペナルバ(Luengo and Penalva)、Prog.Ind.Microbiol.第29巻、603〜38ページ(1994年);ジェンセンおよびデマイン(Jensen and Demain)、Biotechnology、第28巻、239〜68ページ(1995年);ブラクヘージ(Brakhage)、Microbiol.Mol.Biol.Rev.第62巻、547〜85ページ(1998年)にレビューされている)。環状ウンデカペプチド類のメンバーであるシクロスポリンAは、トリポクラジウム・インフラタム(Tolypocladium inflatum)により生産される。シクロスポリンAは、移植患者における罹患率を劇的に低減し、生存率を増大させる(ボレル(Borel)、Prog.Allergy、第38巻、9〜18ページ(1986年))。さらに、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)および他のいくつかの菌類により生産されるロバスタチンを始めとするいくつかの菌類二次代謝産物は、コレステロール低下薬である(アルバーツら(Alberts et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第77巻、3957〜3961ページ(1980年))。これらおよび他の多くの菌類二次代謝産物は、世界的に医療に大きく貢献してきた(デマイン(Demain)、Ciba Found Symp、第171巻、3〜16ページ(1992年);ベントレイ(Bentley)、Crit.Rev.Biotechnol.第19巻、1〜40ページ(1999年)を参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
残念ながら、二次代謝産物の活性を検出することと純粋な薬物を十分量生産することとの間には多くの課題が存在する。そのため、菌類による二次代謝産物の生産を向上させるために努力がなされてきた。最近、二次代謝産物の生産に必要な反応を触媒する生合成酵素をコードする遺伝子を操作することにより、菌株が改善された。ペナルバら(Penalva et al.)、Trends Biotechnol.第16巻、483〜489ページ(1998年)は、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)の生産株のペニシリン合成構造遺伝子のコピー数を増大させたことを開示している。他の研究では、他の生合成酵素をコードする遺伝子の発現を変動させ、それにより、菌類の代謝全体に影響を及ぼしている。ミンゴら(Mingo et al.)、J.Biol.Chem.第21巻、14545〜14550ページ(1999年)は、フェニル酢酸の2−ヒドロキシル化を触媒する、アスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)の酵素phacAをコードする遺伝子の破壊が、おそらく基質であるフェニル酢酸に対する競合の消失により、ペニシリン生産の増大をもたらすことを示している。同様に、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)におけるアミノアジピン酸レダクターゼをコードする遺伝子の破壊が、おそらく基質α−アミノアジピン酸塩に対する競合の消失により、ペニシリンの生産を増大させた(カスキエロら(Casquiero et al.)、J.Bacteriol.第181巻、1181〜1188ページ(1999年))。
【0005】
したがって、遺伝子操作は、二次代謝産物の生産を向上させるのに有望である。二次代謝産物生産の生合成酵素の活性を増大させる、あるいは競合する生合成経路の活性を低減する遺伝子操作は、生産向上に有効であることが立証されている。最大の効果は、いくつかの遺伝子操作戦略の組合せによって達成されると思われる。例えば、生合成酵素をコードする遺伝子を制御する遺伝子の発現を変動させること、あるいは代謝前駆物質の濃度を変化させることにより、生産が向上すると思われる。さらに、遺伝子操作は、発酵槽の運転または下流の処理において遭遇する問題(例えば、エネルギーコスト、所望の代謝産物の特異的生産、代謝産物の最大限の回収、発酵廃棄物の処理コスト)に対して大きな効果を与えるために用いることができると思われる。したがって、菌類における二次代謝産物の生産を向上させ得るレギュレータ遺伝子(制御遺伝子)が必要とされている。
【0006】
酵素は、他の商業的に重要な菌類産物である。近年、遺伝子操作により菌類の酵素生産を向上させる努力がなされている。ノイエルら(Noel et al.)、Molecular Microbiology、第27巻、131〜142ページ(1998年)は、ZBCタンパク質であるxlnRがアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)においてキシラン分解性細胞外酵素の発現を誘導することを教示している。ハスパーら(Hasper et al.)、Molecular Microbiology、第36巻、193〜200ページ(2000年)は、xlnRがアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)におけるD−キシロースレダクターゼ遺伝子の発現も制御することを教示している。菌類によって生産される多くの有用な酵素を考えると、これらの酵素の生産を向上させ得るレギュレータ遺伝子が依然として必要とされている。
【0007】
菌類の侵入に関連する遺伝子を識別するレギュレータも必要である。菌類の侵入は菌類の病原性に必要であり、その制御は二次代謝産物および酵素の生産に関連していると思われる。菌類感染は、特に免疫不全の患者においては重大な健康上の問題である。ハーおよびホワイト(Ha and White)、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、第43巻、763〜768ページ(1999年)は、病原性の酵母カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)により引き起こされるカンジダ症がAIDSおよび他の免疫不全状態に伴って最も高頻度にみられる菌類感染であることを教示している。ウエイグら(Weig et al.)、Trends in Microbiology、第6巻、468〜470ページ(1998年)は、カンジダ感染の頻度が近年増加し、かつ罹患率および死亡率の有意な上昇を伴っていることを開示している。これらの感染の多くは、病院内の環境において発生している。バイリーおよびダグラス(Baillie and Douglas)、Methods in Enzymology、第310巻、644〜656ページ(1999年)は、カンジダ種により引き起こされる院内敗血症の大部分がカテーテルおよびシャント上のバイオフィルム形成に由来することを教示している。侵入またはバイオフィルム形成に必要な遺伝子に関してはほとんど知られていない。したがって、抗真菌薬開発の標的として作用する、菌類の侵入を制御する新たな遺伝子を特定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、新規な菌類レギュレータ遺伝子ならびに商業および医療適用分野においてレギュレータ遺伝子を使用する方法を提供する。
【0009】
第1の態様において、本発明は、二次代謝産物の生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御するタンパク質をコードすることが示されている、新規な単離遺伝子または組換え遺伝子を提供する。特定の好ましい実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体(ホモログ)を提供する。これらの遺伝子およびその相同体は、二次代謝産物または酵素の生産を向上させるのに、あるいは新規抗真菌薬を発見するための標的として有用である。
【0010】
第2の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御するタンパク質をコードすることが示されている遺伝子に対して特異的に相補的である単離核酸および組換え核酸を提供する。
【0011】
第3の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御することが示されている精製タンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのようなタンパク質の相同体を提供する。
【0012】
第4の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御することが示されているタンパク質に特異的に結合する新規な結合物質を提供する。
【0013】
第5の態様において、本発明は、菌類の侵入に必要な菌類遺伝子であって、かつ、その発現が二次代謝産物の生産も変動させる因子によって制御されると考えられる菌類遺伝子FLO11の発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な組換え遺伝子を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。これらの遺伝子は、抗真菌薬の開発の標的として有用であり、また、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。
【0014】
第6の態様において、本発明は、二次代謝産物ロバスタチンの生産に関与する菌類遺伝子lovFの発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な組換え遺伝子を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。
【0015】
第7の態様において、本発明は、二次代謝産物ロバスタチンの生産に関与する菌類遺伝子lovEの発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な組換え遺伝子を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。
【0016】
第8の態様において、本発明は、二次代謝産物ペニシリンの生産に関与する菌類遺伝子acvAの発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な組換え遺伝子を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。
【0017】
第9の態様において、本発明は、新規な菌類レギュレータ遺伝子を菌類において発現させることからなる、二次代謝産物または酵素の生産を変動させる方法を提供する。
【0018】
第10の態様において、本発明は、新規なキメラの菌類レギュレータ遺伝子を提供する。
【0019】
第11の態様において、本発明は、新規なキメラの菌類レギュレータ遺伝子を菌類において発現させることからなる、二次代謝産物または細胞外酵素の生産を変動させる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、菌類遺伝子発現のレギュレータならびに商業および医療適用分野におけるそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は、酵素、二次代謝産物および他の有用な産物の生産に関与する菌類遺伝子のレギュレータならびに菌類の侵入に関与する遺伝子のレギュレータに関する。本願明細書に引用した特許および刊行物は、この分野における知識水準を反映するものであり、それら全部を本願明細書に援用する。引用文献の教示と本明細書との間に不一致があった場合には、後者を優先すべきである。
【0021】
本発明は、菌類遺伝子発現の新規レギュレータならびに商業および医療適用分野においてレギュレータ遺伝子を使用する方法を提供する。
【0022】
第1の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御するタンパク質をコードすることが示されている新規な単離遺伝子または組換え遺伝子を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。これらの遺伝子およびその相同体は、二次代謝産物または酵素の生産を向上させるのに、あるいは新たな抗真菌薬を発見するための標的として有用である。
【0023】
本明細書において、「組換え遺伝子」とは、タンパク質をコードする核酸配列であって、線状DNAもしくはRNA、共有結合により閉じた環状DNAもしくはRNAの形態で、または染色体の一部として存在していてよく、ただし、遺伝子が通常自然状態で存在する天然の染色体遺伝子座の単一コピーではあり得ない。したがって、本発明のこの態様は、そのような組換え遺伝子を含む、遺伝的に修飾された生物体を含む。
【0024】
本明細書において、遺伝子の「相同体」は、対照標準遺伝子と比較したとき、表Iに示す値よりも低いE値を有するか、あるいは相同領域においてより高い同一性の割合の値を有する遺伝子である。表Iに対照標準遺伝子、それらのE値、および適用可能な場合、それらの同一性の割合の一覧を示す。対照標準遺伝子と公開遺伝子データベース由来の配列との間に同一性を有する領域が存在する場合は、その同一性を有する領域を示す。そのような場合、部位1を、配列表(Sequence listing)に示す対照標準遺伝子の最初のヌクレオチドと定義する。
【0025】
特定の好ましい実施形態において、相同体は新規な対照標準遺伝子の優性突然変異体である。「優性(ドミナント)突然変異体」は、非突然変異型の遺伝子の存在を越えて生物体の表現型を変化させることができるタンパク質をコードする対立遺伝子である。優性突然変異体には、この遺伝子の非突然変異型(またはその相同体)が生物体に存在する場合でさえも生物体の表現型を変化させることができるタンパク質をコードする突然変異体が含まれるが、限定はされない。好ましい優性突然変異体としては、優性負(ドミナントネガティブ)突然変異体、優性正(ドミナントポジティブ)突然変異体および優性ネオモルフ変異体が挙げられる。「優性負突然変異体」は、同変異体が派生したもとの遺伝子もしくは遺伝子産物またはその相同体の、一部の機能を妨害することにより、その表現型上の効果を達成する優性突然変異体である。「優性正突然変異体」は、同変異体が派生したもとの遺伝子もしくは遺伝子産物またはその相同体の、一部の機能を活性化することにより、その表現型上の効果を達成する優性突然変異体である。「優性ネオモルフ変異体」は、同変異体が派生したもとの遺伝子もしくは遺伝子産物またはその相同体に、新規または異なる機能を与えることにより表現型上の効果を達成する優性突然変異体である。
【0026】
【表1】
表Iに示すデータは、新規な対照標準遺伝子を利用可能な遺伝子データベースと比較することにより得られる。本発明者らは、http://www.Ncbi.nlm.nih.gov/blast/にて公的に利用可能であるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)ツールを利用した。これは、配列データベースを探索するために設計された類似性検索プログラムのセットである。NCBI BLASTの現行バージョンであるBLAST2.1.2には、NCBIウェブサイトから直接アクセスした。BLASTプログラムの出力の1つが期待値(E値)であり、これは、ある特定の大きさのデータベースを検索するとき、偶然に起きることが予想できる「ヒット」の数を表すパラメータである。
【0027】
本発明の新規なレギュレータ遺伝子のヌクレオチドコーディング配列のE値を決定するために、blastnプログラムを用いた。このプログラムは、ヌクレオチド問い合わせ(クエリ)配列(対照標準配列)をヌクレオチド配列データベースに対して比較する。NCBI BLASTサイトで利用可能な次のデータベースを用いた。すなわち、GenBank、EMBL、DDBJおよびPDBのすべての配列を含むnr、酵母(サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))ゲノムヌクレオチド配列、特許、および非ヒト/マウスEST(発現配列タグ)配列を用いた。http://www.mips.biochem.mpg.de/egi-bin/blast/blast_page?genus=neurosporaにおいて入手可能なニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)の部分ゲノム配列を用いたBLAST解析も行った。表Iは、これらの5つのデータベースにおける最も低いE値を示している。
【0028】
ギャップアライメント解析には、blastnアルゴリズムのデフォルト設定を用いた。これらは、−G(ギャップ開始コスト)、デフォルト値=5;−E(ギャップ延長コスト)、デフォルト値=2;−q(塩基ミスマッチに対するペナルティ)、デフォルト値=−3;−r(塩基マッチに対するスコア(reward))、デフォルト値=1;−e(期待値)、デフォルト値=10.0;および−W(ワードサイズ)、デフォルト値=11である。
【0029】
データベース中に関連配列を有さない新規な対照標準遺伝子については、推測に基づく関連遺伝子について妥当なE値を定義する方法として、E値を1e−5と「仮に設定」した。データベース中に同一ではないが関連する配列を有する遺伝子については、E値は最も近い「関係のある」遺伝子のE値である。データベース中の遺伝子と広範な相同領域を有する遺伝子については、アルゴリズムにより得られる同一性の割合の値(%)を同一性を有する領域とともに表Iに含める。
【0030】
表IIに、遺伝子配列の一部はデータベースにあるが、本発明者らが今回より完全な配列を提供する、本発明の新規なレギュレータ遺伝子を示す。
【0031】
【表2】
本発明のこの態様による好ましい遺伝子は、Pc804(配列番号1)、An01(配列番号3)、An05(配列番号5)、An09(配列番号7)、An10(配列番号9)、An13(配列番号11)、An17(配列番号13)、An20(配列番号15)、An28(配列番号17)、An34(配列番号19)、At01−1(配列番号21)、At01−2(配列番号23)、At03(配列番号25)、At05(配列番号27)、At07(配列番号29)、At08(配列番号31)、At11(配列番号33)、At14(配列番号35)、At16(配列番号37)、At18(配列番号39)、At19(配列番号41)、At20(配列番号43)、At22(配列番号45)、At24(配列番号47)、At27(配列番号49)、At32(配列番号51)、Pc05(配列番号53)、Pc06(配列番号55)、Pc07(配列番号57)、Pc08(配列番号59)、Pc09(配列番号61)、Pc10(配列番号63)、Pc18(配列番号65)、Pc24(配列番号69)、Pc25(配列番号71)、Pc33(配列番号73)、Pc34(配列番号75)、At501(配列番号77)、At574(配列番号79)、At279(配列番号81)、At286(配列番号83)、At291(配列番号85)、At320(配列番号87)、At322(配列番号89)、An1000(配列番号91)、At167(配列番号93)、At221(配列番号95)、At233(配列番号97)、At239(配列番号99)、At240(配列番号101)、At274(配列番号103)、Pc1000(配列番号105)、Pc1001(配列番号107)からなる群から選択される。
【0032】
第2の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御するタンパク質をコードすることが示されている遺伝子に対して特異的に相補的である単離核酸または組換え核酸を提供する。「組換え」という用語は、先に使用されているとおりである。
【0033】
ある配列が他の配列と特異的にハイブリッド形成するに十分に相同であるならば、その配列は前記他の配列に対して「特異的に相補的」である。ある配列が、in vivoまたはイオン強度に関して生理的条件に近い条件、例えば、140mM NaCl、5mM MgCl2のような条件下でハイブリダイズしてワトソン・クリック型塩基対またはフーグスティン型塩基対を形成するならば、その配列は前記他の配列に「特異的にハイブリダイズする」。そのような特異的なハイブリッド形成は、ストリンジェントな条件下、例えば、68℃で0.2×SSC中で維持されることが好ましい。
【0034】
第3の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御することが示されている精製タンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのようなタンパク質の相同体を提供する。本明細書において、タンパク質の「相同体」とは、対照標準タンパク質と比較したとき、表IIIに示す値よりも低いE値を有するか、あるいは類似性の領域においてより高い正の割合の値を有するタンパク質である。表IIIに対照標準タンパク質、それらのE値、および適用可能な場合はそれらの正の割合の一覧を示す。対照標準タンパク質とタンパク質配列データベース由来の配列との間に同一性の領域が存在する場合、正の領域が示される。そのような場合、部位1を、配列表(Sequence listing)に示す対照標準タンパク質の最初のアミノ酸と定義する。正の割合の値は、BLAST2.1.2アルゴリズムにより規定される。
【0035】
【表3】
表IIIに示す値を得るために、各nr、酵母データベースおよび特許データベースに対してblastpアライメントを実施した。このアルゴリズムは、アミノ酸問い合わせ(クエリ)配列(対照標準配列)をタンパク質配列データベースに対して比較する。この解析には、blastpアルゴリズムに次のデフォルト設定を用いた。すなわち、−G(ギャップ開始コスト)、デフォルト値=11;−E(ギャップ延長コスト)、デフォルト値=1;−e(期待値)、デフォルト値=10.0;および−W(ワードサイズ)、デフォルト値=3であった。さらに、アミノ酸残基の対合の可能性のある対を全てアラインするために、デフォルト置換行列BLOSUM−62を用いてスコアを割り当てた。この行列の適切な設定は、ギャップ存在コスト=11;残基当たりのギャップコスト=1;およびラムダ比=0.85であった。E値が1e−25より低い場合、正の割合の値をこの値が発生する領域とともに示す。さらに、部分的配列のみが以前に知られていたタンパク質について、コーディング配列データを表IIに示す。本発明のこの態様による好ましいタンパク質は、Pc804(配列番号2)、An01(配列番号4)、An05(配列番号6)、An09(配列番号8)、An10(配列番号10)、An13(配列番号12)、An17(配列番号14)、An20(配列番号16)、An28(配列番号18)、An34(配列番号20)、At01−1(配列番号22)、At01−2(配列番号24)、At03(配列番号26)、At05(配列番号28)、At07(配列番号30)、At08(配列番号32)、At11(配列番号34)、At14(配列番号36)、At16(配列番号38)、At18(配列番号40)、At19(配列番号42)、At20(配列番号44)、At22(配列番号46)、At24(配列番号48)、At27(配列番号50)、At32(配列番号52)、Pc05(配列番号54)、Pc06(配列番号56)、Pc07(配列番号58)、Pc08(配列番号60)、Pc09(配列番号62)、Pc10(配列番号64)、Pc18(配列番号66)、Pc23(配列番号68)、Pc24(配列番号70)、Pc25(配列番号72)、Pc33(配列番号74)、Pc34(配列番号76)、At501(配列番号78)、At574(配列番号80)、At279(配列番号82)、At286(配列番号84)、At291(配列番号86)、At320(配列番号88)、At322(配列番号90)、An1000(配列番号92)、At167(配列番号94)、At221(配列番号96)、At233(配列番号98)、At239(配列番号100)、At240(配列番号102)、At274(配列番号104)、Pc1000(配列番号106)、Pc1001(配列番号108)からなる群から選択される。
【0036】
本明細書中の「精製」は、他のタンパク質の混入が約25重量%より低い、好ましくは約10重量%より低いことを意味する。そのような精製タンパク質は、天然供給源から、組換え発現から、または化学合成により得ることができる。「タンパク質」は、本明細書では少なくとも10アミノ酸残基を有する任意のポリペプチドを含むことを意味する。
【0037】
第4の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御することが示されているタンパク質に特異的に結合する新規な結合物質を提供する。当業者によく知られている多くの方法を用いて、新規な結合物質を単離することが可能である。結合物質が他の無関係なタンパク質に対するよりも大きい親和力でタンパク質に結合するならば、その結合物質はそのタンパク質に「特異的に結合する」。好ましくは、その分子の結合親和力は、無関係なタンパク質に対する親和力よりも少なくとも5倍大きく、より好ましくは少なくとも10倍大きく、さらに好ましくは少なくとも50倍大きく、最も好ましくは少なくとも100倍大きい。特定の好ましい実施形態において、そのような結合物質はタンパク質の生物学的機能を低下させる。他の好ましい実施形態において、結合物質はタンパク質の生物学的機能を増大させる。他の好ましい実施形態において、結合物質は、菌類のレギュレータ遺伝子によりコードされるタンパク質に対して新規または異なる生物学的機能を付与する。これらの効果は、2次構造または3次構造の変化によりタンパク質活性を増大または低下させること、2次構造または3次構造の変化により新規なタンパク質活性を発生させること、転写を増大または低下させること、翻訳を増大または低下させること、翻訳後修飾を増大または低下させること、細胞内の局在状態を変化させること、ある細胞位置から他への移動を増大または低下させること、タンパク質と他の分子との相互作用によりタンパク質活性を増大または低下させること、またはタンパク質と他の分子との相互作用により新規なタンパク質活性を発生させることにより、達成可能である。
【0038】
第5の態様において、本発明は、菌類の侵入に必要な菌類遺伝子であって、かつ、その発現が二次代謝産物生産も変動させる因子によって制御されると考えられている菌類遺伝子FLO11の発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な単離遺伝子または組換え遺伝子ならびにそれらのコードタンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子またはタンパク質の相同体を提供する。「相同体」という用語は、先に定義されている。これらの遺伝子は、抗真菌薬の開発の標的として有用であり、また、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。それらは、菌類代謝におけるFLO11の役割を研究するためのツールとしても有用である。
【0039】
本発明のこの態様による好ましい遺伝子は、An01(配列番号3)、An05(配列番号5)、An09(配列番号7)、An10(配列番号9)、An13(配列番号11)、An17(配列番号13)、An20(配列番号15)、An28(配列番号17)、An34(配列番号19)、At01−1(配列番号21)、At01−2(配列番号23)、At03(配列番号25)、At05(配列番号27)、At07(配列番号29)、At08(配列番号31)、At11(配列番号33)、At14(配列番号35)、At16(配列番号37)、At18(配列番号39)、At19(配列番号41)、At20(配列番号43)、At22(配列番号45)、At24(配列番号47)、At27(配列番号49)、At32(配列番号51)、Pc05(配列番号53)、Pc06(配列番号55)、Pc07(配列番号57)、Pc08(配列番号59)、Pc09(配列番号61)、Pc10(配列番号63)、Pc18(配列番号65)、Pc23(配列番号67)、Pc24(配列番号69)、Pc25(配列番号71)、Pc33(配列番号73)、Pc34(配列番号75)からなる群から選択される。
【0040】
本発明のこの態様による好ましいタンパク質は、An01(配列番号4)、An05(配列番号6)、An09(配列番号8)、An10(配列番号10)、An13(配列番号12)、An17(配列番号14)、An20(配列番号16)、An28(配列番号18)、An34(配列番号20)、At01−1(配列番号22)、At01−2(配列番号24)、At03(配列番号26)、At05(配列番号28)、At07(配列番号30)、At08(配列番号32)、At11(配列番号34)、At14(配列番号36)、At16(配列番号38)、At18(配列番号40)、At19(配列番号42)、At20(配列番号44)、At22(配列番号46)、At24(配列番号48)、At27(配列番号50)、At32(配列番号52)、Pc05(配列番号54)、Pc06(配列番号56)、Pc07(配列番号58)、Pc08(配列番号60)、Pc09(配列番号62)、Pc10(配列番号64)、Pc18(配列番号66)、Pc23(配列番号68)、Pc24(配列番号70)、Pc25(配列番号72)、Pc33(配列番号74)、およびPc34(配列番号76)からなる群から選択される。
【0041】
第6の態様において、本発明は、二次代謝産物ロバスタチンの生産に関与すると考えられている菌類遺伝子lovFの発現の直接的または間接的なレギュレータである、新規な組換え遺伝子およびそれらのコードタンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子またはタンパク質の相同体を提供する。「相同体」という用語は、先に定義されている。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。それらは、菌類代謝におけるlovFの役割を研究するためのツールとしても有用である。
【0042】
本発明のこの態様による好ましい遺伝子は、At279(配列番号81)、At286(配列番号83)、At291(配列番号85)、At320(配列番号87)、At322(配列番号89)、An1000(配列番号91)、At167(配列番号93)、At221(配列番号95)、At233(配列番号97)、At239(配列番号99)、At240(配列番号101)、At274(配列番号103)、Pc1000(配列番号105)およびPc1001(配列番号107)からなる群から選択される。
【0043】
本発明のこの態様による好ましいタンパク質は、At279(配列番号82)、At286(配列番号84)、At291(配列番号86)、At320(配列番号88)、At322(配列番号90)、An1000(配列番号92)、At167(配列番号94)、At221(配列番号96)、At233(配列番号98)、At239(配列番号100)、At240(配列番号102)、At274(配列番号104)、Pc1000(配列番号106)およびPc1001(配列番号108)からなる群から選択される。
【0044】
第7の態様において、本発明は、二次代謝産物ロバスタチンの生産に関与すると考えられている菌類遺伝子lovEの発現の直接的または間接的なレギュレータである、新規な組換え遺伝子およびそれらのコードタンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子またはタンパク質の相同体を提供する。「相同体」という用語は、先に定義されている。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。それらは、菌類代謝におけるlovEの役割を研究するためのツールとしても有用であると思われる。
【0045】
本発明のこの態様による好ましい遺伝子は、At501(配列番号77)、At574(配列番号79)からなる群から選択される。
【0046】
本発明のこの態様による好ましいタンパク質は、At501(配列番号78)、At574(配列番号80)からなる群から選択される。
【0047】
第8の態様において、本発明は、二次代謝産物ペニシリンの生産に関与する菌類遺伝子acvAの発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な組換え遺伝子およびそれらのコードタンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。「相同体」という用語は、先に定義されている。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。それらは、菌類代謝におけるacvAの役割を研究するためのツールとしても有用であると思われる。
【0048】
本発明のこの態様による好ましい遺伝子は、Pc804(配列番号1)である。本発明のこの態様による好ましいタンパク質は、Pc804(配列番号2)である。
【0049】
第9の態様において、本発明は、新規な菌類レギュレータ遺伝子を菌類において発現させることからなる、二次代謝産物または細胞外酵素の生産を変動させる方法を提供する。そのような発現は、他の遺伝子の発現、薬物または小分子との相互作用、または例えば実施例に記載のような遺伝子形質転換により、達成かつ/または変動させることができる。さらにそのような発現は、遺伝子全体またはその遺伝子の生物学的に活性な一部分もしくはフラグメントの発現、あるいは、遺伝子または遺伝子の一部もしくはフラグメントの融合産物を含んでいてよい。特定の好ましい実施形態では、本発明の複数の新規なレギュレータ遺伝子の組合せを同時または順次発現させることができる。
【0050】
本明細書中の「二次代謝産物または細胞外酵素の生産を変動させる」という用語は、菌類の発酵における二次代謝産物または細胞外酵素の生産プロセスに影響する1つ以上の変数に明確に影響を及ぼすことを意味する。これらの変数としては、生産される二次代謝産物または細胞外酵素の量(絶対量または発酵ブロスの単位体積当たりもしくは固形物の単位質量当たりの量)、十分な量の生産に必要な体積、原料コストおよびエネルギーコスト、発酵槽の運転時間または培養実施時間、発酵槽の運転後に処理しなければならない廃棄物の量、所望の代謝産物または細胞外酵素の特異的生産(菌類により生産されるすべての二次代謝産物および副産物の総量として、ならびにその一部分として)、発酵ブロスまたは培養物から回収可能な最終的な二次代謝産物または細胞外酵素産物の割合、および、二次代謝産物または細胞外酵素を生産する微生物の二次代謝産物または細胞外酵素との接触により受ける可能性のある悪影響に対する抵抗性が含まれるが、限定はされない。また、「二次代謝産物」という用語は、一次代謝産物から誘導される化合物であって、生物体により生産され、一次代謝物ではなく、エタノールまたはフーゼルアルコールでなく、標準的条件下での生育には必要でない化合物を意味する。二次代謝産物は、多くの一次代謝経路の中間体から誘導される。これらの経路には、アミノ酸の生合成経路、芳香族アミノ酸の生合成のシキミ酸経路、アセチル補酵素A(CoA)からのポリケチド生合成経路、アセチルCoAからのメバロン酸経路ならびに多糖およびペプチド多糖の生合成経路が含まれるが、限定はされない。全体として、二次代謝は炭素代謝のすべての一次代謝経路に伴って生じる(菌類生理学(Fungal Physiology)、第9章、246〜274ページ、ディー エイチ グリフィン(DH Griffin)編(1994年))。「二次代謝産物」はまた、二次代謝産物の合成経路に割り当てられる、二次代謝産物の生合成経路における中間化合物も含む。「二次代謝産物の合成経路に割り当てられる」とは、中間体が一旦細胞により合成されたならば、細胞はその中間体を一次代謝産物に変換しないことを意味している。「中間化合物」には、後続の化学変換または後続の生物変換により有用な化合物に変換可能な二次代謝中間化合物も含まれる。したがって、そのような中間化合物の利用可能性を改善することにより、最終的な有用化合物の生産がさらに向上すると思われ、本明細書では最終的な有用化合物自体を二次代謝産物と称しうる。酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、二次代謝産物を生産することは知られていない。「一次代謝産物」という用語は、ほぼすべての生物の機能に明確な役割を有する天然の産物を意味する。一次代謝産物には、脂質、炭水化物、タンパク質および核酸の生合成に関与する化合物が含まれるが、限定はされない。「二次代謝産物の収量を増加させる」という用語は、全発酵ブロス中に存在する二次代謝産物の量を発酵ブロスの単位体積あたり、または固体培地の単位質量あたり増加させることを意味する。「細胞外酵素」は、菌類によりその周囲の培地中に分泌される酵素である。
【0051】
第10の態様において、本発明は、新規なキメラの菌類レギュレータ遺伝子を提供する。本発明の意味において、「キメラの菌類レギュレータ遺伝子」とは、自然状態では融合されない核酸配列に融合されている菌類レギュレータ遺伝子またはその一部である。そのような融合の目的のための好ましい核酸には、菌類レギュレータ遺伝子またはその一部ならびに遺伝子の制御領域が含まれるが、限定はされない。
【0052】
いくつかの好ましいキメラの菌類レギュレータ遺伝子の非限定的な例を、下表IVに、また配列番号として配列表中に示す。
【0053】
【表4】
第11の態様において、本発明は、新規なキメラの菌類レギュレータ遺伝子を菌類において発現させることからなる、二次代謝産物または細胞外酵素の生産を変動させる方法を提供する。そのような発現は、他の遺伝子の発現、薬物または小分子との相互作用、または例えば実施例に記載のような遺伝子形質転換により、達成かつ/または変動させることができる。特定の好ましい実施形態において、本発明の複数の新規レギュレータ遺伝子および/またはキメラレギュレータ遺伝子の組合せを同時または順次発現させることができる。
【0054】
本明細書中の「二次代謝産物または細胞外酵素の生産を変動させる」という用語は、菌類発酵における二次代謝産物または細胞外酵素の生産プロセスに影響する1つまたは複数の変数に明確に影響を及ぼすことを意味する。これらの変数としては、生産される二次代謝産物または細胞外酵素の量(絶対量または発酵ブロスの単位体積当たりもしくは固形物の単位質量当たりの量)、十分な量の生産に必要な体積、原料コストおよびエネルギーコスト、発酵槽の運転時間または培養実施時間、発酵槽の運転後に処理しなければならない廃棄物の量、所望の代謝産物または細胞外酵素の特異的生産(菌類により生産されるすべての二次代謝産物および副産物の総量として、ならびにその一部分として)、発酵ブロスまたは培養物から回収可能な最終的な二次代謝産物または細胞外酵素産物の割合、および、二次代謝産物または細胞外酵素を生産する微生物の二次代謝産物または細胞外酵素との接触により受ける可能性のある悪影響に対する抵抗性が含まれるが、限定はされない。また、「二次代謝産物」という用語は、一次代謝産物から誘導される化合物であって、生物体により生産され、一次代謝物ではなく、エタノールまたはフーゼルアルコールでなく、標準的条件下での生育には必要でない化合物を意味する。二次代謝産物は、多くの一次代謝経路の中間体から誘導される。これらの経路には、アミノ酸の生合成経路、芳香族アミノ酸の生合成のシキミ酸経路、アセチル補酵素A(CoA)からのポリケチド生合成経路、アセチルCoAからのメバロン酸経路ならびに多糖およびペプチド多糖の生合成経路が含まれるが、限定はされない。全体として、二次代謝は炭素代謝のすべての一次代謝経路に伴って生じる(菌類生理学(Fungal Physiology)、第9章、246〜274ページ、ディー エイチ グリフィン(DH Griffin)編(1994年))。「二次代謝産物」はまた、二次代謝産物の合成経路に割り当てられる、二次代謝産物の生合成経路における中間化合物も含む。「二次代謝産物の合成経路に割り当てられる」とは、中間体が一旦細胞により合成されたならば、細胞はその中間体を一次代謝産物に変換しないことを意味している。「中間化合物」は、後続の化学変換または後続の生物変換により有用な化合物に変換可能な二次代謝中間化合物も含む。したがって、そのような中間化合物の利用可能性を改善することにより、最終的な有用化合物の生産がさらに向上すると思われ、本明細書では最終的な有用化合物自体を二次代謝産物と称しうる。酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、二次代謝産物を生産することは知られていない。「一次代謝産物」という用語は、ほぼすべての生物の機能に明確な役割を有する天然の産物を意味する。一次代謝産物には、脂質、炭水化物、タンパク質および核酸の生合成に関与する化合物が含まれるが、限定はされない。「二次代謝産物の収量を増加させる」という用語は、全発酵ブロス中に存在する二次代謝産物の量を発酵ブロスの単位体積あたり、または固体培地の単位質量あたり増加させることを意味する。「細胞外酵素」は、菌類によりその周囲の培地中に分泌される酵素である。
【0055】
以下の実施例は、本発明の特定の特に好ましい実施形態をさらに例示することを目的とするものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例1】
【0056】
(糸状菌の形質転換)
プロトプラストを次のように生成させた。富栄養培地に胞子を接種し、約20時間または発芽管が5〜10胞子長になるまで、胞子を発芽させた。菌が胞子形成しない場合(いくつかのタキソール生産菌類は胞子形成しない)、菌糸を超音波処理して小断片とし、これらの菌糸小断片を接種物として使用することが可能である。他の選択肢は、菌が胞子形成する培地を見つけることである。例えば、タキソール生産菌類の胞子形成は、ガンマ線照射したカーネーション葉を含む水寒天プレート上で生育させることにより誘発可能である。さらに、胞子形成の遅いペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)株においては高塩類の培地により胞子形成を促進し得る。発芽胞子(germling)を遠心分離し、無菌蒸留水で2回、1M硫酸マグネシウムで1回洗浄した。次いで、発芽胞子を約2mg/mlのノボザイム(Novozyme、登録商標)を含む1M硫酸マグネシウムに再懸濁した。次いで、試験管を80rpmで振とうしながら約2時間または大部分の菌糸が消化されてプロトプラストが十分多くなるまで、30℃でインキュベートした。プロトプラストを1層のミラクロス(Miracloth、登録商標)でろ過した。少なくとも1容量のSTCを加え、プロトプラストを遠心により沈殿させた。プロトプラストをSTCで2回洗浄した。次いでプロトプラストを1mlのSTCに再懸濁し、血球計数器で計数した。STC、SPTCおよびDMSOが9:1:0.1の溶液中にプロトプラストが約5×107個/mlの最終濃度とし、これをナルゲン(Nalgene、登録商標)クリオ(Cryo)冷却器で−80℃で凍結した(−1℃/分で冷却)。
【0057】
形質転換用溶液は次のとおりであった。すなわち、STC(0.8Mソルビトール、25mMトリス−HCl pH7.5、25mM CaCl2)およびSPTC(0.8Mソルビトール、40%PEG4000、25mMトリス−HCl pH8、50mM CaCl2)。
【0058】
菌類発現ベクター中に本発明の新規なレギュレータ遺伝子を含む1〜5μgのDNAを50mL容ファルコン(Falcon、登録商標)チューブに入れた。凍結されていた100μlのプロトプラストをDNAに加え、緩やかに混合し、次いで氷上で30分間インキュベートした。15μlのSPTCを加えた後、タッピングにより混合し、室温で15分間インキュベートした。500μlのSPTCを加え、タッピングおよびローリングにより十分に混合し、次いで室温で15分間インキュベートした。25mlの再生最少培地を加え、十分に混合し、2倍濃度の選択薬を添加した25mlの再生最少培地を含むプレート上に注いだ。形質転換用プレートを26℃で5〜6日間またはコロニーが出現し始めるまでインキュベートした。再生最少培地は、pH6.5で微量元素、塩類、25mM硝酸ナトリウム、0.8Mスクロースおよび1%アガロースを含む。ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)およびアスペルギルス・テレウス(A.terreus)とともに使用して成功した選択薬は、広域スペクトルのグリコペプチド系抗生物質であるフレオマイシンである。形質転換体をつま楊枝(菌が胞子形成した場合)または無菌の鉗子(菌が胞子形成しなかった場合)を用いて採取し、新しいプレート上にのせた。精製用プレートは、最少培地(再生最少培地と同じであるが、0.8Mスクロースの代わりに2%スクロースを含む)および1倍濃度の薬物を含む。採取した形質転換体を26℃で5〜6日間インキュベートした。
【実施例2】
【0059】
(生産培地における形質転換体の増殖)
ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)およびペニシリン生産の場合には、胞子および菌糸体を含むプラグを接種物として用いた。用いた培地は、30%ラクトース、5×ファーマメディア(pharmamedia、登録商標)綿実粉末、硫酸アンモニウム、炭酸カルシウム、リン酸カリウム、硫酸カリウムおよびフェノキシ酢酸pH7を含む、公開されているP2生産培地であった。フラスコを225rpmで振とうしながら26℃でインキュベートした。
【0060】
アスペルギルス・テレウス(A.terreus)およびロバスタチン生産の場合には、胞子を接種物として用いた。胞子を、木製接種スティックを用いて精製用プレートから採取した。培地は、トウモロコシ浸漬液、硝酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、P2000(ダウケミカル(Dow chemical))、微量元素および炭素源としてラクトースまたはグルコースを含むRPMであった。培地はpH6.5であった。フラスコを225rpmで振とうしながら26℃でインキュベートした。96ウエルの静置培養の場合には、同じ培地を用い、胞子は木製のつま楊枝を用いて精製用プレートから採取した。96ウエルプレートを振とうせずに26℃でインキュベートした。
【0061】
サンプリングは、ペニシリンについては6日間インキュベーションした後に、ロバスタチンについては5日間後に、タキソールについては21日間後に行った。振とうフラスコ実験の場合、1〜1.5mlの上清を96ウエルプレートに入れ、遠心分離し、上清を新しい96ウエルプレートに移した。保存のため、または後のアッセイに備えて、試料を−80℃で凍結した。
【0062】
96ウエルプレートに放置して増殖させた培養物を遠心分離し、上清を新しい96ウエルプレートに移した。試料を−80℃で凍結した。
【0063】
ハワイバイオテクノロジーグループ(Hawaii Biotechnology Group)製のアッセイキットのタキソール検出限界は、0.5ng/mLである。25ng/Lのレベルでタキソールを生産する菌を仮定すると、タキソール生産培養物を20〜25倍に濃縮した段階がこのキットを用いて達成可能な標準曲線内(>0.625ng/mL)にあるべきである。2連の試験に十分な量の各試料を得るために、最小限15mLの培養容量が必要である。試料は、21日間インキュベートした後に採取する。
【実施例3】
【0064】
(ペニシリン濃度の測定)
10mMリン酸カリウム(pH7.0)中のフェノキシメチルペニシリン(ナトリウム塩)溶液を0、25、50、100、200、300、400および500μg/mLに調製した。イミダゾール試薬を次のように調製した。8.25gのイミダゾールを60mLの水に溶解し、10mLの5M HClを加え、次いで、10mLの塩化第二水銀溶液(0.27gを100mLの水に溶解)を加えた。pHを5M HClで6.80±0.05に調整し、この溶液を水で100mLに希釈した。
【0065】
4000gで10分間遠心分離して、発酵ブロスを清澄化した。40μLの清澄発酵ブロスとペニシリン標準溶液を96ウエルUVコレクションプレートの個々のウエルにピペットで注入した。200μLのイミダゾール試薬を96ウエルフィルタープレート(0.45ミクロン)にピペットで注入した。分割した試料および標準溶液の入ったコレクションプレートにイミダゾール試薬を真空ろ過して添加することにより、ペニシリンの誘導体化反応を開始させた。コレクションプレートを45℃の96ウエルプレートリーダーに入れ、325nmにおける増加を20分間にわたりモニターした。
【0066】
すべての分光光度検出にモレキュラーデバイセズ社(Molecular Devices)製96ウエルUV/Visプレートリーダーを用いた。これは、例えばブンドガードおよびイルバー(Bundgaard and Ilver)、Journal of Pharm Pharmac、第24巻、790〜794ページ(1972年)に記載されている、通常のアッセイである。
【実施例4】
【0067】
(ロバスタチン濃度の測定)
10μLの試料を取り出し、H2Oで1:100に希釈した。10μLのこの希釈ブロスを1mM HMGCoA、1mM NADPH、0.005mM DTTおよび5μLの(His)6HMGRを含む反応液(全量200μL)中でアッセイした。340nmにおける吸光度の消失を経時的に観察した。これはNADPHの消失を表すが、ロバスタチンはこの反応を阻害する。試料を含む反応について初期速度を計算し、希釈率で補正し、ロバスタチン標準品を含む反応と比較して、生成した代謝産物の濃度を測定した。(His)6HMGRは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発現させ、ニッケルカラムで精製した。
【実施例5】
【0068】
(タキソール濃度の測定)
アッセイ1:少なくとも15mLの静止培養からのブロスをpH7に中性化し(タキソールは非中性条件で不安定)、液体窒素を用いて凍結し、全試料を一晩凍結乾燥して(細胞塊とブロスとを一緒に)乾固させる。乾燥物質をガラスビーズを用いた激しい振とうにより粉砕する。10mLの塩化メチレンを用いて各試料(乾燥物質1gと推定)を抽出する。6時間後に、塩化メチレン抽出物を綿栓に通し、一晩凍結乾燥して乾固させる。50μLのメタノールをすべての試料に添加し、溶解したらすぐに、450μLの適切な緩衝液または水を加え、イムノアッセイにより試験する。約25ng/Lを生産する菌類由来の開始試料15mLが存在すると仮定すると、最終濃度は約0.75ng/mLであると予想される。
【0069】
アッセイ2:少なくとも15mLの静止培養からのブロスをpH7に中性化し、4層のチーズクロスでろ過する。ブロスを15mLの塩化メチレンを用いて2回抽出し、有機層を合わせる。バイオマスをほぐし、各10mLのクロロホルム/メタノール(1:1)で3回抽出する。ほぐした菌糸体の抽出物を抽出済のブロスと合わせ、試料当たり60mLの有機抽出物を一晩凍結乾燥して乾固させる。50μLのメタノールをすべての試料に添加し、溶解したらすぐに、450μLの適切な緩衝液または水を加え、イムノアッセイにより試験する。約25ng/Lを生産する菌類由来の開始試料15mLが存在すると仮定すると、最終濃度は約0.75ng/mLであると予想される。
【0070】
アッセイキットは、抗タキサン抗体により検出されるタキソールタンパク質抗原を含む。被検単離物にタキソールが存在すると、タキソールタンパク質抗原の検出が競合的に阻害される。イムノアッセイは100μLの試料を必要とし、キット中のプロトコールに準拠する。96ウエルプレートを用いてイムノアッセイを行い、アッセイには約8〜9時間を要する。
【0001】
本発明は、菌類遺伝子発現のレギュレータならびに商業および医療適用分野におけるそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は、酵素、二次代謝産物および他の有用な産物の生産に関与する菌類遺伝子のレギュレータならびに菌類の侵入に関与する遺伝子のレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
菌類は、商業および医療適用分野にとって有用な物質の最も一般的な天然供給源である。これらの有用な物質の多くは、二次代謝産物である。
【0003】
種々の菌類による二次代謝産物の生産は、治療上重要な様々な医薬品の極めて重要な供給源である。ペニシリンおよびセファロスポリンのようなβ−ラクタム抗菌剤は、それぞれペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)およびアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)により生産されるが、これらの化合物は圧倒的高頻度で使用されている抗菌剤である(ルエンゴおよびペナルバ(Luengo and Penalva)、Prog.Ind.Microbiol.第29巻、603〜38ページ(1994年);ジェンセンおよびデマイン(Jensen and Demain)、Biotechnology、第28巻、239〜68ページ(1995年);ブラクヘージ(Brakhage)、Microbiol.Mol.Biol.Rev.第62巻、547〜85ページ(1998年)にレビューされている)。環状ウンデカペプチド類のメンバーであるシクロスポリンAは、トリポクラジウム・インフラタム(Tolypocladium inflatum)により生産される。シクロスポリンAは、移植患者における罹患率を劇的に低減し、生存率を増大させる(ボレル(Borel)、Prog.Allergy、第38巻、9〜18ページ(1986年))。さらに、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)および他のいくつかの菌類により生産されるロバスタチンを始めとするいくつかの菌類二次代謝産物は、コレステロール低下薬である(アルバーツら(Alberts et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第77巻、3957〜3961ページ(1980年))。これらおよび他の多くの菌類二次代謝産物は、世界的に医療に大きく貢献してきた(デマイン(Demain)、Ciba Found Symp、第171巻、3〜16ページ(1992年);ベントレイ(Bentley)、Crit.Rev.Biotechnol.第19巻、1〜40ページ(1999年)を参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
残念ながら、二次代謝産物の活性を検出することと純粋な薬物を十分量生産することとの間には多くの課題が存在する。そのため、菌類による二次代謝産物の生産を向上させるために努力がなされてきた。最近、二次代謝産物の生産に必要な反応を触媒する生合成酵素をコードする遺伝子を操作することにより、菌株が改善された。ペナルバら(Penalva et al.)、Trends Biotechnol.第16巻、483〜489ページ(1998年)は、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)の生産株のペニシリン合成構造遺伝子のコピー数を増大させたことを開示している。他の研究では、他の生合成酵素をコードする遺伝子の発現を変動させ、それにより、菌類の代謝全体に影響を及ぼしている。ミンゴら(Mingo et al.)、J.Biol.Chem.第21巻、14545〜14550ページ(1999年)は、フェニル酢酸の2−ヒドロキシル化を触媒する、アスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)の酵素phacAをコードする遺伝子の破壊が、おそらく基質であるフェニル酢酸に対する競合の消失により、ペニシリン生産の増大をもたらすことを示している。同様に、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)におけるアミノアジピン酸レダクターゼをコードする遺伝子の破壊が、おそらく基質α−アミノアジピン酸塩に対する競合の消失により、ペニシリンの生産を増大させた(カスキエロら(Casquiero et al.)、J.Bacteriol.第181巻、1181〜1188ページ(1999年))。
【0005】
したがって、遺伝子操作は、二次代謝産物の生産を向上させるのに有望である。二次代謝産物生産の生合成酵素の活性を増大させる、あるいは競合する生合成経路の活性を低減する遺伝子操作は、生産向上に有効であることが立証されている。最大の効果は、いくつかの遺伝子操作戦略の組合せによって達成されると思われる。例えば、生合成酵素をコードする遺伝子を制御する遺伝子の発現を変動させること、あるいは代謝前駆物質の濃度を変化させることにより、生産が向上すると思われる。さらに、遺伝子操作は、発酵槽の運転または下流の処理において遭遇する問題(例えば、エネルギーコスト、所望の代謝産物の特異的生産、代謝産物の最大限の回収、発酵廃棄物の処理コスト)に対して大きな効果を与えるために用いることができると思われる。したがって、菌類における二次代謝産物の生産を向上させ得るレギュレータ遺伝子(制御遺伝子)が必要とされている。
【0006】
酵素は、他の商業的に重要な菌類産物である。近年、遺伝子操作により菌類の酵素生産を向上させる努力がなされている。ノイエルら(Noel et al.)、Molecular Microbiology、第27巻、131〜142ページ(1998年)は、ZBCタンパク質であるxlnRがアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)においてキシラン分解性細胞外酵素の発現を誘導することを教示している。ハスパーら(Hasper et al.)、Molecular Microbiology、第36巻、193〜200ページ(2000年)は、xlnRがアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)におけるD−キシロースレダクターゼ遺伝子の発現も制御することを教示している。菌類によって生産される多くの有用な酵素を考えると、これらの酵素の生産を向上させ得るレギュレータ遺伝子が依然として必要とされている。
【0007】
菌類の侵入に関連する遺伝子を識別するレギュレータも必要である。菌類の侵入は菌類の病原性に必要であり、その制御は二次代謝産物および酵素の生産に関連していると思われる。菌類感染は、特に免疫不全の患者においては重大な健康上の問題である。ハーおよびホワイト(Ha and White)、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、第43巻、763〜768ページ(1999年)は、病原性の酵母カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)により引き起こされるカンジダ症がAIDSおよび他の免疫不全状態に伴って最も高頻度にみられる菌類感染であることを教示している。ウエイグら(Weig et al.)、Trends in Microbiology、第6巻、468〜470ページ(1998年)は、カンジダ感染の頻度が近年増加し、かつ罹患率および死亡率の有意な上昇を伴っていることを開示している。これらの感染の多くは、病院内の環境において発生している。バイリーおよびダグラス(Baillie and Douglas)、Methods in Enzymology、第310巻、644〜656ページ(1999年)は、カンジダ種により引き起こされる院内敗血症の大部分がカテーテルおよびシャント上のバイオフィルム形成に由来することを教示している。侵入またはバイオフィルム形成に必要な遺伝子に関してはほとんど知られていない。したがって、抗真菌薬開発の標的として作用する、菌類の侵入を制御する新たな遺伝子を特定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、新規な菌類レギュレータ遺伝子ならびに商業および医療適用分野においてレギュレータ遺伝子を使用する方法を提供する。
【0009】
第1の態様において、本発明は、二次代謝産物の生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御するタンパク質をコードすることが示されている、新規な単離遺伝子または組換え遺伝子を提供する。特定の好ましい実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体(ホモログ)を提供する。これらの遺伝子およびその相同体は、二次代謝産物または酵素の生産を向上させるのに、あるいは新規抗真菌薬を発見するための標的として有用である。
【0010】
第2の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御するタンパク質をコードすることが示されている遺伝子に対して特異的に相補的である単離核酸および組換え核酸を提供する。
【0011】
第3の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御することが示されている精製タンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのようなタンパク質の相同体を提供する。
【0012】
第4の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御することが示されているタンパク質に特異的に結合する新規な結合物質を提供する。
【0013】
第5の態様において、本発明は、菌類の侵入に必要な菌類遺伝子であって、かつ、その発現が二次代謝産物の生産も変動させる因子によって制御されると考えられる菌類遺伝子FLO11の発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な組換え遺伝子を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。これらの遺伝子は、抗真菌薬の開発の標的として有用であり、また、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。
【0014】
第6の態様において、本発明は、二次代謝産物ロバスタチンの生産に関与する菌類遺伝子lovFの発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な組換え遺伝子を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。
【0015】
第7の態様において、本発明は、二次代謝産物ロバスタチンの生産に関与する菌類遺伝子lovEの発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な組換え遺伝子を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。
【0016】
第8の態様において、本発明は、二次代謝産物ペニシリンの生産に関与する菌類遺伝子acvAの発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な組換え遺伝子を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。
【0017】
第9の態様において、本発明は、新規な菌類レギュレータ遺伝子を菌類において発現させることからなる、二次代謝産物または酵素の生産を変動させる方法を提供する。
【0018】
第10の態様において、本発明は、新規なキメラの菌類レギュレータ遺伝子を提供する。
【0019】
第11の態様において、本発明は、新規なキメラの菌類レギュレータ遺伝子を菌類において発現させることからなる、二次代謝産物または細胞外酵素の生産を変動させる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、菌類遺伝子発現のレギュレータならびに商業および医療適用分野におけるそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は、酵素、二次代謝産物および他の有用な産物の生産に関与する菌類遺伝子のレギュレータならびに菌類の侵入に関与する遺伝子のレギュレータに関する。本願明細書に引用した特許および刊行物は、この分野における知識水準を反映するものであり、それら全部を本願明細書に援用する。引用文献の教示と本明細書との間に不一致があった場合には、後者を優先すべきである。
【0021】
本発明は、菌類遺伝子発現の新規レギュレータならびに商業および医療適用分野においてレギュレータ遺伝子を使用する方法を提供する。
【0022】
第1の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御するタンパク質をコードすることが示されている新規な単離遺伝子または組換え遺伝子を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。これらの遺伝子およびその相同体は、二次代謝産物または酵素の生産を向上させるのに、あるいは新たな抗真菌薬を発見するための標的として有用である。
【0023】
本明細書において、「組換え遺伝子」とは、タンパク質をコードする核酸配列であって、線状DNAもしくはRNA、共有結合により閉じた環状DNAもしくはRNAの形態で、または染色体の一部として存在していてよく、ただし、遺伝子が通常自然状態で存在する天然の染色体遺伝子座の単一コピーではあり得ない。したがって、本発明のこの態様は、そのような組換え遺伝子を含む、遺伝的に修飾された生物体を含む。
【0024】
本明細書において、遺伝子の「相同体」は、対照標準遺伝子と比較したとき、表Iに示す値よりも低いE値を有するか、あるいは相同領域においてより高い同一性の割合の値を有する遺伝子である。表Iに対照標準遺伝子、それらのE値、および適用可能な場合、それらの同一性の割合の一覧を示す。対照標準遺伝子と公開遺伝子データベース由来の配列との間に同一性を有する領域が存在する場合は、その同一性を有する領域を示す。そのような場合、部位1を、配列表(Sequence listing)に示す対照標準遺伝子の最初のヌクレオチドと定義する。
【0025】
特定の好ましい実施形態において、相同体は新規な対照標準遺伝子の優性突然変異体である。「優性(ドミナント)突然変異体」は、非突然変異型の遺伝子の存在を越えて生物体の表現型を変化させることができるタンパク質をコードする対立遺伝子である。優性突然変異体には、この遺伝子の非突然変異型(またはその相同体)が生物体に存在する場合でさえも生物体の表現型を変化させることができるタンパク質をコードする突然変異体が含まれるが、限定はされない。好ましい優性突然変異体としては、優性負(ドミナントネガティブ)突然変異体、優性正(ドミナントポジティブ)突然変異体および優性ネオモルフ変異体が挙げられる。「優性負突然変異体」は、同変異体が派生したもとの遺伝子もしくは遺伝子産物またはその相同体の、一部の機能を妨害することにより、その表現型上の効果を達成する優性突然変異体である。「優性正突然変異体」は、同変異体が派生したもとの遺伝子もしくは遺伝子産物またはその相同体の、一部の機能を活性化することにより、その表現型上の効果を達成する優性突然変異体である。「優性ネオモルフ変異体」は、同変異体が派生したもとの遺伝子もしくは遺伝子産物またはその相同体に、新規または異なる機能を与えることにより表現型上の効果を達成する優性突然変異体である。
【0026】
【表1】
表Iに示すデータは、新規な対照標準遺伝子を利用可能な遺伝子データベースと比較することにより得られる。本発明者らは、http://www.Ncbi.nlm.nih.gov/blast/にて公的に利用可能であるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)ツールを利用した。これは、配列データベースを探索するために設計された類似性検索プログラムのセットである。NCBI BLASTの現行バージョンであるBLAST2.1.2には、NCBIウェブサイトから直接アクセスした。BLASTプログラムの出力の1つが期待値(E値)であり、これは、ある特定の大きさのデータベースを検索するとき、偶然に起きることが予想できる「ヒット」の数を表すパラメータである。
【0027】
本発明の新規なレギュレータ遺伝子のヌクレオチドコーディング配列のE値を決定するために、blastnプログラムを用いた。このプログラムは、ヌクレオチド問い合わせ(クエリ)配列(対照標準配列)をヌクレオチド配列データベースに対して比較する。NCBI BLASTサイトで利用可能な次のデータベースを用いた。すなわち、GenBank、EMBL、DDBJおよびPDBのすべての配列を含むnr、酵母(サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))ゲノムヌクレオチド配列、特許、および非ヒト/マウスEST(発現配列タグ)配列を用いた。http://www.mips.biochem.mpg.de/egi-bin/blast/blast_page?genus=neurosporaにおいて入手可能なニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)の部分ゲノム配列を用いたBLAST解析も行った。表Iは、これらの5つのデータベースにおける最も低いE値を示している。
【0028】
ギャップアライメント解析には、blastnアルゴリズムのデフォルト設定を用いた。これらは、−G(ギャップ開始コスト)、デフォルト値=5;−E(ギャップ延長コスト)、デフォルト値=2;−q(塩基ミスマッチに対するペナルティ)、デフォルト値=−3;−r(塩基マッチに対するスコア(reward))、デフォルト値=1;−e(期待値)、デフォルト値=10.0;および−W(ワードサイズ)、デフォルト値=11である。
【0029】
データベース中に関連配列を有さない新規な対照標準遺伝子については、推測に基づく関連遺伝子について妥当なE値を定義する方法として、E値を1e−5と「仮に設定」した。データベース中に同一ではないが関連する配列を有する遺伝子については、E値は最も近い「関係のある」遺伝子のE値である。データベース中の遺伝子と広範な相同領域を有する遺伝子については、アルゴリズムにより得られる同一性の割合の値(%)を同一性を有する領域とともに表Iに含める。
【0030】
表IIに、遺伝子配列の一部はデータベースにあるが、本発明者らが今回より完全な配列を提供する、本発明の新規なレギュレータ遺伝子を示す。
【0031】
【表2】
本発明のこの態様による好ましい遺伝子は、Pc804(配列番号1)、An01(配列番号3)、An05(配列番号5)、An09(配列番号7)、An10(配列番号9)、An13(配列番号11)、An17(配列番号13)、An20(配列番号15)、An28(配列番号17)、An34(配列番号19)、At01−1(配列番号21)、At01−2(配列番号23)、At03(配列番号25)、At05(配列番号27)、At07(配列番号29)、At08(配列番号31)、At11(配列番号33)、At14(配列番号35)、At16(配列番号37)、At18(配列番号39)、At19(配列番号41)、At20(配列番号43)、At22(配列番号45)、At24(配列番号47)、At27(配列番号49)、At32(配列番号51)、Pc05(配列番号53)、Pc06(配列番号55)、Pc07(配列番号57)、Pc08(配列番号59)、Pc09(配列番号61)、Pc10(配列番号63)、Pc18(配列番号65)、Pc24(配列番号69)、Pc25(配列番号71)、Pc33(配列番号73)、Pc34(配列番号75)、At501(配列番号77)、At574(配列番号79)、At279(配列番号81)、At286(配列番号83)、At291(配列番号85)、At320(配列番号87)、At322(配列番号89)、An1000(配列番号91)、At167(配列番号93)、At221(配列番号95)、At233(配列番号97)、At239(配列番号99)、At240(配列番号101)、At274(配列番号103)、Pc1000(配列番号105)、Pc1001(配列番号107)からなる群から選択される。
【0032】
第2の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御するタンパク質をコードすることが示されている遺伝子に対して特異的に相補的である単離核酸または組換え核酸を提供する。「組換え」という用語は、先に使用されているとおりである。
【0033】
ある配列が他の配列と特異的にハイブリッド形成するに十分に相同であるならば、その配列は前記他の配列に対して「特異的に相補的」である。ある配列が、in vivoまたはイオン強度に関して生理的条件に近い条件、例えば、140mM NaCl、5mM MgCl2のような条件下でハイブリダイズしてワトソン・クリック型塩基対またはフーグスティン型塩基対を形成するならば、その配列は前記他の配列に「特異的にハイブリダイズする」。そのような特異的なハイブリッド形成は、ストリンジェントな条件下、例えば、68℃で0.2×SSC中で維持されることが好ましい。
【0034】
第3の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御することが示されている精製タンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのようなタンパク質の相同体を提供する。本明細書において、タンパク質の「相同体」とは、対照標準タンパク質と比較したとき、表IIIに示す値よりも低いE値を有するか、あるいは類似性の領域においてより高い正の割合の値を有するタンパク質である。表IIIに対照標準タンパク質、それらのE値、および適用可能な場合はそれらの正の割合の一覧を示す。対照標準タンパク質とタンパク質配列データベース由来の配列との間に同一性の領域が存在する場合、正の領域が示される。そのような場合、部位1を、配列表(Sequence listing)に示す対照標準タンパク質の最初のアミノ酸と定義する。正の割合の値は、BLAST2.1.2アルゴリズムにより規定される。
【0035】
【表3】
表IIIに示す値を得るために、各nr、酵母データベースおよび特許データベースに対してblastpアライメントを実施した。このアルゴリズムは、アミノ酸問い合わせ(クエリ)配列(対照標準配列)をタンパク質配列データベースに対して比較する。この解析には、blastpアルゴリズムに次のデフォルト設定を用いた。すなわち、−G(ギャップ開始コスト)、デフォルト値=11;−E(ギャップ延長コスト)、デフォルト値=1;−e(期待値)、デフォルト値=10.0;および−W(ワードサイズ)、デフォルト値=3であった。さらに、アミノ酸残基の対合の可能性のある対を全てアラインするために、デフォルト置換行列BLOSUM−62を用いてスコアを割り当てた。この行列の適切な設定は、ギャップ存在コスト=11;残基当たりのギャップコスト=1;およびラムダ比=0.85であった。E値が1e−25より低い場合、正の割合の値をこの値が発生する領域とともに示す。さらに、部分的配列のみが以前に知られていたタンパク質について、コーディング配列データを表IIに示す。本発明のこの態様による好ましいタンパク質は、Pc804(配列番号2)、An01(配列番号4)、An05(配列番号6)、An09(配列番号8)、An10(配列番号10)、An13(配列番号12)、An17(配列番号14)、An20(配列番号16)、An28(配列番号18)、An34(配列番号20)、At01−1(配列番号22)、At01−2(配列番号24)、At03(配列番号26)、At05(配列番号28)、At07(配列番号30)、At08(配列番号32)、At11(配列番号34)、At14(配列番号36)、At16(配列番号38)、At18(配列番号40)、At19(配列番号42)、At20(配列番号44)、At22(配列番号46)、At24(配列番号48)、At27(配列番号50)、At32(配列番号52)、Pc05(配列番号54)、Pc06(配列番号56)、Pc07(配列番号58)、Pc08(配列番号60)、Pc09(配列番号62)、Pc10(配列番号64)、Pc18(配列番号66)、Pc23(配列番号68)、Pc24(配列番号70)、Pc25(配列番号72)、Pc33(配列番号74)、Pc34(配列番号76)、At501(配列番号78)、At574(配列番号80)、At279(配列番号82)、At286(配列番号84)、At291(配列番号86)、At320(配列番号88)、At322(配列番号90)、An1000(配列番号92)、At167(配列番号94)、At221(配列番号96)、At233(配列番号98)、At239(配列番号100)、At240(配列番号102)、At274(配列番号104)、Pc1000(配列番号106)、Pc1001(配列番号108)からなる群から選択される。
【0036】
本明細書中の「精製」は、他のタンパク質の混入が約25重量%より低い、好ましくは約10重量%より低いことを意味する。そのような精製タンパク質は、天然供給源から、組換え発現から、または化学合成により得ることができる。「タンパク質」は、本明細書では少なくとも10アミノ酸残基を有する任意のポリペプチドを含むことを意味する。
【0037】
第4の態様において、本発明は、二次代謝産物生産、酵素生産または菌類の侵入に関与する菌類遺伝子を制御することが示されているタンパク質に特異的に結合する新規な結合物質を提供する。当業者によく知られている多くの方法を用いて、新規な結合物質を単離することが可能である。結合物質が他の無関係なタンパク質に対するよりも大きい親和力でタンパク質に結合するならば、その結合物質はそのタンパク質に「特異的に結合する」。好ましくは、その分子の結合親和力は、無関係なタンパク質に対する親和力よりも少なくとも5倍大きく、より好ましくは少なくとも10倍大きく、さらに好ましくは少なくとも50倍大きく、最も好ましくは少なくとも100倍大きい。特定の好ましい実施形態において、そのような結合物質はタンパク質の生物学的機能を低下させる。他の好ましい実施形態において、結合物質はタンパク質の生物学的機能を増大させる。他の好ましい実施形態において、結合物質は、菌類のレギュレータ遺伝子によりコードされるタンパク質に対して新規または異なる生物学的機能を付与する。これらの効果は、2次構造または3次構造の変化によりタンパク質活性を増大または低下させること、2次構造または3次構造の変化により新規なタンパク質活性を発生させること、転写を増大または低下させること、翻訳を増大または低下させること、翻訳後修飾を増大または低下させること、細胞内の局在状態を変化させること、ある細胞位置から他への移動を増大または低下させること、タンパク質と他の分子との相互作用によりタンパク質活性を増大または低下させること、またはタンパク質と他の分子との相互作用により新規なタンパク質活性を発生させることにより、達成可能である。
【0038】
第5の態様において、本発明は、菌類の侵入に必要な菌類遺伝子であって、かつ、その発現が二次代謝産物生産も変動させる因子によって制御されると考えられている菌類遺伝子FLO11の発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な単離遺伝子または組換え遺伝子ならびにそれらのコードタンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子またはタンパク質の相同体を提供する。「相同体」という用語は、先に定義されている。これらの遺伝子は、抗真菌薬の開発の標的として有用であり、また、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。それらは、菌類代謝におけるFLO11の役割を研究するためのツールとしても有用である。
【0039】
本発明のこの態様による好ましい遺伝子は、An01(配列番号3)、An05(配列番号5)、An09(配列番号7)、An10(配列番号9)、An13(配列番号11)、An17(配列番号13)、An20(配列番号15)、An28(配列番号17)、An34(配列番号19)、At01−1(配列番号21)、At01−2(配列番号23)、At03(配列番号25)、At05(配列番号27)、At07(配列番号29)、At08(配列番号31)、At11(配列番号33)、At14(配列番号35)、At16(配列番号37)、At18(配列番号39)、At19(配列番号41)、At20(配列番号43)、At22(配列番号45)、At24(配列番号47)、At27(配列番号49)、At32(配列番号51)、Pc05(配列番号53)、Pc06(配列番号55)、Pc07(配列番号57)、Pc08(配列番号59)、Pc09(配列番号61)、Pc10(配列番号63)、Pc18(配列番号65)、Pc23(配列番号67)、Pc24(配列番号69)、Pc25(配列番号71)、Pc33(配列番号73)、Pc34(配列番号75)からなる群から選択される。
【0040】
本発明のこの態様による好ましいタンパク質は、An01(配列番号4)、An05(配列番号6)、An09(配列番号8)、An10(配列番号10)、An13(配列番号12)、An17(配列番号14)、An20(配列番号16)、An28(配列番号18)、An34(配列番号20)、At01−1(配列番号22)、At01−2(配列番号24)、At03(配列番号26)、At05(配列番号28)、At07(配列番号30)、At08(配列番号32)、At11(配列番号34)、At14(配列番号36)、At16(配列番号38)、At18(配列番号40)、At19(配列番号42)、At20(配列番号44)、At22(配列番号46)、At24(配列番号48)、At27(配列番号50)、At32(配列番号52)、Pc05(配列番号54)、Pc06(配列番号56)、Pc07(配列番号58)、Pc08(配列番号60)、Pc09(配列番号62)、Pc10(配列番号64)、Pc18(配列番号66)、Pc23(配列番号68)、Pc24(配列番号70)、Pc25(配列番号72)、Pc33(配列番号74)、およびPc34(配列番号76)からなる群から選択される。
【0041】
第6の態様において、本発明は、二次代謝産物ロバスタチンの生産に関与すると考えられている菌類遺伝子lovFの発現の直接的または間接的なレギュレータである、新規な組換え遺伝子およびそれらのコードタンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子またはタンパク質の相同体を提供する。「相同体」という用語は、先に定義されている。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。それらは、菌類代謝におけるlovFの役割を研究するためのツールとしても有用である。
【0042】
本発明のこの態様による好ましい遺伝子は、At279(配列番号81)、At286(配列番号83)、At291(配列番号85)、At320(配列番号87)、At322(配列番号89)、An1000(配列番号91)、At167(配列番号93)、At221(配列番号95)、At233(配列番号97)、At239(配列番号99)、At240(配列番号101)、At274(配列番号103)、Pc1000(配列番号105)およびPc1001(配列番号107)からなる群から選択される。
【0043】
本発明のこの態様による好ましいタンパク質は、At279(配列番号82)、At286(配列番号84)、At291(配列番号86)、At320(配列番号88)、At322(配列番号90)、An1000(配列番号92)、At167(配列番号94)、At221(配列番号96)、At233(配列番号98)、At239(配列番号100)、At240(配列番号102)、At274(配列番号104)、Pc1000(配列番号106)およびPc1001(配列番号108)からなる群から選択される。
【0044】
第7の態様において、本発明は、二次代謝産物ロバスタチンの生産に関与すると考えられている菌類遺伝子lovEの発現の直接的または間接的なレギュレータである、新規な組換え遺伝子およびそれらのコードタンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子またはタンパク質の相同体を提供する。「相同体」という用語は、先に定義されている。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。それらは、菌類代謝におけるlovEの役割を研究するためのツールとしても有用であると思われる。
【0045】
本発明のこの態様による好ましい遺伝子は、At501(配列番号77)、At574(配列番号79)からなる群から選択される。
【0046】
本発明のこの態様による好ましいタンパク質は、At501(配列番号78)、At574(配列番号80)からなる群から選択される。
【0047】
第8の態様において、本発明は、二次代謝産物ペニシリンの生産に関与する菌類遺伝子acvAの発現の直接的または間接的なレギュレータである新規な組換え遺伝子およびそれらのコードタンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明はさらにそのような遺伝子の相同体を提供する。「相同体」という用語は、先に定義されている。これらの遺伝子は、二次代謝産物または菌類酵素の生産を向上させるのに有用であると予想される。それらは、菌類代謝におけるacvAの役割を研究するためのツールとしても有用であると思われる。
【0048】
本発明のこの態様による好ましい遺伝子は、Pc804(配列番号1)である。本発明のこの態様による好ましいタンパク質は、Pc804(配列番号2)である。
【0049】
第9の態様において、本発明は、新規な菌類レギュレータ遺伝子を菌類において発現させることからなる、二次代謝産物または細胞外酵素の生産を変動させる方法を提供する。そのような発現は、他の遺伝子の発現、薬物または小分子との相互作用、または例えば実施例に記載のような遺伝子形質転換により、達成かつ/または変動させることができる。さらにそのような発現は、遺伝子全体またはその遺伝子の生物学的に活性な一部分もしくはフラグメントの発現、あるいは、遺伝子または遺伝子の一部もしくはフラグメントの融合産物を含んでいてよい。特定の好ましい実施形態では、本発明の複数の新規なレギュレータ遺伝子の組合せを同時または順次発現させることができる。
【0050】
本明細書中の「二次代謝産物または細胞外酵素の生産を変動させる」という用語は、菌類の発酵における二次代謝産物または細胞外酵素の生産プロセスに影響する1つ以上の変数に明確に影響を及ぼすことを意味する。これらの変数としては、生産される二次代謝産物または細胞外酵素の量(絶対量または発酵ブロスの単位体積当たりもしくは固形物の単位質量当たりの量)、十分な量の生産に必要な体積、原料コストおよびエネルギーコスト、発酵槽の運転時間または培養実施時間、発酵槽の運転後に処理しなければならない廃棄物の量、所望の代謝産物または細胞外酵素の特異的生産(菌類により生産されるすべての二次代謝産物および副産物の総量として、ならびにその一部分として)、発酵ブロスまたは培養物から回収可能な最終的な二次代謝産物または細胞外酵素産物の割合、および、二次代謝産物または細胞外酵素を生産する微生物の二次代謝産物または細胞外酵素との接触により受ける可能性のある悪影響に対する抵抗性が含まれるが、限定はされない。また、「二次代謝産物」という用語は、一次代謝産物から誘導される化合物であって、生物体により生産され、一次代謝物ではなく、エタノールまたはフーゼルアルコールでなく、標準的条件下での生育には必要でない化合物を意味する。二次代謝産物は、多くの一次代謝経路の中間体から誘導される。これらの経路には、アミノ酸の生合成経路、芳香族アミノ酸の生合成のシキミ酸経路、アセチル補酵素A(CoA)からのポリケチド生合成経路、アセチルCoAからのメバロン酸経路ならびに多糖およびペプチド多糖の生合成経路が含まれるが、限定はされない。全体として、二次代謝は炭素代謝のすべての一次代謝経路に伴って生じる(菌類生理学(Fungal Physiology)、第9章、246〜274ページ、ディー エイチ グリフィン(DH Griffin)編(1994年))。「二次代謝産物」はまた、二次代謝産物の合成経路に割り当てられる、二次代謝産物の生合成経路における中間化合物も含む。「二次代謝産物の合成経路に割り当てられる」とは、中間体が一旦細胞により合成されたならば、細胞はその中間体を一次代謝産物に変換しないことを意味している。「中間化合物」には、後続の化学変換または後続の生物変換により有用な化合物に変換可能な二次代謝中間化合物も含まれる。したがって、そのような中間化合物の利用可能性を改善することにより、最終的な有用化合物の生産がさらに向上すると思われ、本明細書では最終的な有用化合物自体を二次代謝産物と称しうる。酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、二次代謝産物を生産することは知られていない。「一次代謝産物」という用語は、ほぼすべての生物の機能に明確な役割を有する天然の産物を意味する。一次代謝産物には、脂質、炭水化物、タンパク質および核酸の生合成に関与する化合物が含まれるが、限定はされない。「二次代謝産物の収量を増加させる」という用語は、全発酵ブロス中に存在する二次代謝産物の量を発酵ブロスの単位体積あたり、または固体培地の単位質量あたり増加させることを意味する。「細胞外酵素」は、菌類によりその周囲の培地中に分泌される酵素である。
【0051】
第10の態様において、本発明は、新規なキメラの菌類レギュレータ遺伝子を提供する。本発明の意味において、「キメラの菌類レギュレータ遺伝子」とは、自然状態では融合されない核酸配列に融合されている菌類レギュレータ遺伝子またはその一部である。そのような融合の目的のための好ましい核酸には、菌類レギュレータ遺伝子またはその一部ならびに遺伝子の制御領域が含まれるが、限定はされない。
【0052】
いくつかの好ましいキメラの菌類レギュレータ遺伝子の非限定的な例を、下表IVに、また配列番号として配列表中に示す。
【0053】
【表4】
第11の態様において、本発明は、新規なキメラの菌類レギュレータ遺伝子を菌類において発現させることからなる、二次代謝産物または細胞外酵素の生産を変動させる方法を提供する。そのような発現は、他の遺伝子の発現、薬物または小分子との相互作用、または例えば実施例に記載のような遺伝子形質転換により、達成かつ/または変動させることができる。特定の好ましい実施形態において、本発明の複数の新規レギュレータ遺伝子および/またはキメラレギュレータ遺伝子の組合せを同時または順次発現させることができる。
【0054】
本明細書中の「二次代謝産物または細胞外酵素の生産を変動させる」という用語は、菌類発酵における二次代謝産物または細胞外酵素の生産プロセスに影響する1つまたは複数の変数に明確に影響を及ぼすことを意味する。これらの変数としては、生産される二次代謝産物または細胞外酵素の量(絶対量または発酵ブロスの単位体積当たりもしくは固形物の単位質量当たりの量)、十分な量の生産に必要な体積、原料コストおよびエネルギーコスト、発酵槽の運転時間または培養実施時間、発酵槽の運転後に処理しなければならない廃棄物の量、所望の代謝産物または細胞外酵素の特異的生産(菌類により生産されるすべての二次代謝産物および副産物の総量として、ならびにその一部分として)、発酵ブロスまたは培養物から回収可能な最終的な二次代謝産物または細胞外酵素産物の割合、および、二次代謝産物または細胞外酵素を生産する微生物の二次代謝産物または細胞外酵素との接触により受ける可能性のある悪影響に対する抵抗性が含まれるが、限定はされない。また、「二次代謝産物」という用語は、一次代謝産物から誘導される化合物であって、生物体により生産され、一次代謝物ではなく、エタノールまたはフーゼルアルコールでなく、標準的条件下での生育には必要でない化合物を意味する。二次代謝産物は、多くの一次代謝経路の中間体から誘導される。これらの経路には、アミノ酸の生合成経路、芳香族アミノ酸の生合成のシキミ酸経路、アセチル補酵素A(CoA)からのポリケチド生合成経路、アセチルCoAからのメバロン酸経路ならびに多糖およびペプチド多糖の生合成経路が含まれるが、限定はされない。全体として、二次代謝は炭素代謝のすべての一次代謝経路に伴って生じる(菌類生理学(Fungal Physiology)、第9章、246〜274ページ、ディー エイチ グリフィン(DH Griffin)編(1994年))。「二次代謝産物」はまた、二次代謝産物の合成経路に割り当てられる、二次代謝産物の生合成経路における中間化合物も含む。「二次代謝産物の合成経路に割り当てられる」とは、中間体が一旦細胞により合成されたならば、細胞はその中間体を一次代謝産物に変換しないことを意味している。「中間化合物」は、後続の化学変換または後続の生物変換により有用な化合物に変換可能な二次代謝中間化合物も含む。したがって、そのような中間化合物の利用可能性を改善することにより、最終的な有用化合物の生産がさらに向上すると思われ、本明細書では最終的な有用化合物自体を二次代謝産物と称しうる。酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、二次代謝産物を生産することは知られていない。「一次代謝産物」という用語は、ほぼすべての生物の機能に明確な役割を有する天然の産物を意味する。一次代謝産物には、脂質、炭水化物、タンパク質および核酸の生合成に関与する化合物が含まれるが、限定はされない。「二次代謝産物の収量を増加させる」という用語は、全発酵ブロス中に存在する二次代謝産物の量を発酵ブロスの単位体積あたり、または固体培地の単位質量あたり増加させることを意味する。「細胞外酵素」は、菌類によりその周囲の培地中に分泌される酵素である。
【0055】
以下の実施例は、本発明の特定の特に好ましい実施形態をさらに例示することを目的とするものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例1】
【0056】
(糸状菌の形質転換)
プロトプラストを次のように生成させた。富栄養培地に胞子を接種し、約20時間または発芽管が5〜10胞子長になるまで、胞子を発芽させた。菌が胞子形成しない場合(いくつかのタキソール生産菌類は胞子形成しない)、菌糸を超音波処理して小断片とし、これらの菌糸小断片を接種物として使用することが可能である。他の選択肢は、菌が胞子形成する培地を見つけることである。例えば、タキソール生産菌類の胞子形成は、ガンマ線照射したカーネーション葉を含む水寒天プレート上で生育させることにより誘発可能である。さらに、胞子形成の遅いペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)株においては高塩類の培地により胞子形成を促進し得る。発芽胞子(germling)を遠心分離し、無菌蒸留水で2回、1M硫酸マグネシウムで1回洗浄した。次いで、発芽胞子を約2mg/mlのノボザイム(Novozyme、登録商標)を含む1M硫酸マグネシウムに再懸濁した。次いで、試験管を80rpmで振とうしながら約2時間または大部分の菌糸が消化されてプロトプラストが十分多くなるまで、30℃でインキュベートした。プロトプラストを1層のミラクロス(Miracloth、登録商標)でろ過した。少なくとも1容量のSTCを加え、プロトプラストを遠心により沈殿させた。プロトプラストをSTCで2回洗浄した。次いでプロトプラストを1mlのSTCに再懸濁し、血球計数器で計数した。STC、SPTCおよびDMSOが9:1:0.1の溶液中にプロトプラストが約5×107個/mlの最終濃度とし、これをナルゲン(Nalgene、登録商標)クリオ(Cryo)冷却器で−80℃で凍結した(−1℃/分で冷却)。
【0057】
形質転換用溶液は次のとおりであった。すなわち、STC(0.8Mソルビトール、25mMトリス−HCl pH7.5、25mM CaCl2)およびSPTC(0.8Mソルビトール、40%PEG4000、25mMトリス−HCl pH8、50mM CaCl2)。
【0058】
菌類発現ベクター中に本発明の新規なレギュレータ遺伝子を含む1〜5μgのDNAを50mL容ファルコン(Falcon、登録商標)チューブに入れた。凍結されていた100μlのプロトプラストをDNAに加え、緩やかに混合し、次いで氷上で30分間インキュベートした。15μlのSPTCを加えた後、タッピングにより混合し、室温で15分間インキュベートした。500μlのSPTCを加え、タッピングおよびローリングにより十分に混合し、次いで室温で15分間インキュベートした。25mlの再生最少培地を加え、十分に混合し、2倍濃度の選択薬を添加した25mlの再生最少培地を含むプレート上に注いだ。形質転換用プレートを26℃で5〜6日間またはコロニーが出現し始めるまでインキュベートした。再生最少培地は、pH6.5で微量元素、塩類、25mM硝酸ナトリウム、0.8Mスクロースおよび1%アガロースを含む。ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)およびアスペルギルス・テレウス(A.terreus)とともに使用して成功した選択薬は、広域スペクトルのグリコペプチド系抗生物質であるフレオマイシンである。形質転換体をつま楊枝(菌が胞子形成した場合)または無菌の鉗子(菌が胞子形成しなかった場合)を用いて採取し、新しいプレート上にのせた。精製用プレートは、最少培地(再生最少培地と同じであるが、0.8Mスクロースの代わりに2%スクロースを含む)および1倍濃度の薬物を含む。採取した形質転換体を26℃で5〜6日間インキュベートした。
【実施例2】
【0059】
(生産培地における形質転換体の増殖)
ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)およびペニシリン生産の場合には、胞子および菌糸体を含むプラグを接種物として用いた。用いた培地は、30%ラクトース、5×ファーマメディア(pharmamedia、登録商標)綿実粉末、硫酸アンモニウム、炭酸カルシウム、リン酸カリウム、硫酸カリウムおよびフェノキシ酢酸pH7を含む、公開されているP2生産培地であった。フラスコを225rpmで振とうしながら26℃でインキュベートした。
【0060】
アスペルギルス・テレウス(A.terreus)およびロバスタチン生産の場合には、胞子を接種物として用いた。胞子を、木製接種スティックを用いて精製用プレートから採取した。培地は、トウモロコシ浸漬液、硝酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、P2000(ダウケミカル(Dow chemical))、微量元素および炭素源としてラクトースまたはグルコースを含むRPMであった。培地はpH6.5であった。フラスコを225rpmで振とうしながら26℃でインキュベートした。96ウエルの静置培養の場合には、同じ培地を用い、胞子は木製のつま楊枝を用いて精製用プレートから採取した。96ウエルプレートを振とうせずに26℃でインキュベートした。
【0061】
サンプリングは、ペニシリンについては6日間インキュベーションした後に、ロバスタチンについては5日間後に、タキソールについては21日間後に行った。振とうフラスコ実験の場合、1〜1.5mlの上清を96ウエルプレートに入れ、遠心分離し、上清を新しい96ウエルプレートに移した。保存のため、または後のアッセイに備えて、試料を−80℃で凍結した。
【0062】
96ウエルプレートに放置して増殖させた培養物を遠心分離し、上清を新しい96ウエルプレートに移した。試料を−80℃で凍結した。
【0063】
ハワイバイオテクノロジーグループ(Hawaii Biotechnology Group)製のアッセイキットのタキソール検出限界は、0.5ng/mLである。25ng/Lのレベルでタキソールを生産する菌を仮定すると、タキソール生産培養物を20〜25倍に濃縮した段階がこのキットを用いて達成可能な標準曲線内(>0.625ng/mL)にあるべきである。2連の試験に十分な量の各試料を得るために、最小限15mLの培養容量が必要である。試料は、21日間インキュベートした後に採取する。
【実施例3】
【0064】
(ペニシリン濃度の測定)
10mMリン酸カリウム(pH7.0)中のフェノキシメチルペニシリン(ナトリウム塩)溶液を0、25、50、100、200、300、400および500μg/mLに調製した。イミダゾール試薬を次のように調製した。8.25gのイミダゾールを60mLの水に溶解し、10mLの5M HClを加え、次いで、10mLの塩化第二水銀溶液(0.27gを100mLの水に溶解)を加えた。pHを5M HClで6.80±0.05に調整し、この溶液を水で100mLに希釈した。
【0065】
4000gで10分間遠心分離して、発酵ブロスを清澄化した。40μLの清澄発酵ブロスとペニシリン標準溶液を96ウエルUVコレクションプレートの個々のウエルにピペットで注入した。200μLのイミダゾール試薬を96ウエルフィルタープレート(0.45ミクロン)にピペットで注入した。分割した試料および標準溶液の入ったコレクションプレートにイミダゾール試薬を真空ろ過して添加することにより、ペニシリンの誘導体化反応を開始させた。コレクションプレートを45℃の96ウエルプレートリーダーに入れ、325nmにおける増加を20分間にわたりモニターした。
【0066】
すべての分光光度検出にモレキュラーデバイセズ社(Molecular Devices)製96ウエルUV/Visプレートリーダーを用いた。これは、例えばブンドガードおよびイルバー(Bundgaard and Ilver)、Journal of Pharm Pharmac、第24巻、790〜794ページ(1972年)に記載されている、通常のアッセイである。
【実施例4】
【0067】
(ロバスタチン濃度の測定)
10μLの試料を取り出し、H2Oで1:100に希釈した。10μLのこの希釈ブロスを1mM HMGCoA、1mM NADPH、0.005mM DTTおよび5μLの(His)6HMGRを含む反応液(全量200μL)中でアッセイした。340nmにおける吸光度の消失を経時的に観察した。これはNADPHの消失を表すが、ロバスタチンはこの反応を阻害する。試料を含む反応について初期速度を計算し、希釈率で補正し、ロバスタチン標準品を含む反応と比較して、生成した代謝産物の濃度を測定した。(His)6HMGRは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発現させ、ニッケルカラムで精製した。
【実施例5】
【0068】
(タキソール濃度の測定)
アッセイ1:少なくとも15mLの静止培養からのブロスをpH7に中性化し(タキソールは非中性条件で不安定)、液体窒素を用いて凍結し、全試料を一晩凍結乾燥して(細胞塊とブロスとを一緒に)乾固させる。乾燥物質をガラスビーズを用いた激しい振とうにより粉砕する。10mLの塩化メチレンを用いて各試料(乾燥物質1gと推定)を抽出する。6時間後に、塩化メチレン抽出物を綿栓に通し、一晩凍結乾燥して乾固させる。50μLのメタノールをすべての試料に添加し、溶解したらすぐに、450μLの適切な緩衝液または水を加え、イムノアッセイにより試験する。約25ng/Lを生産する菌類由来の開始試料15mLが存在すると仮定すると、最終濃度は約0.75ng/mLであると予想される。
【0069】
アッセイ2:少なくとも15mLの静止培養からのブロスをpH7に中性化し、4層のチーズクロスでろ過する。ブロスを15mLの塩化メチレンを用いて2回抽出し、有機層を合わせる。バイオマスをほぐし、各10mLのクロロホルム/メタノール(1:1)で3回抽出する。ほぐした菌糸体の抽出物を抽出済のブロスと合わせ、試料当たり60mLの有機抽出物を一晩凍結乾燥して乾固させる。50μLのメタノールをすべての試料に添加し、溶解したらすぐに、450μLの適切な緩衝液または水を加え、イムノアッセイにより試験する。約25ng/Lを生産する菌類由来の開始試料15mLが存在すると仮定すると、最終濃度は約0.75ng/mLであると予想される。
【0070】
アッセイキットは、抗タキサン抗体により検出されるタキソールタンパク質抗原を含む。被検単離物にタキソールが存在すると、タキソールタンパク質抗原の検出が競合的に阻害される。イムノアッセイは100μLの試料を必要とし、キット中のプロトコールに準拠する。96ウエルプレートを用いてイムノアッセイを行い、アッセイには約8〜9時間を要する。
Claims (69)
- Pc804(配列番号1)、An01(配列番号3)、An05(配列番号5)、An09(配列番号7)、An10(配列番号9)、An13(配列番号11)、An17(配列番号13)、An20(配列番号15)、An28(配列番号17)、An34(配列番号19)、At01−1(配列番号21)、At01−2(配列番号23)、At03(配列番号25)、At05(配列番号27)、At07(配列番号29)、At08(配列番号31)、At11(配列番号33)、At14(配列番号35)、At16(配列番号37)、At18(配列番号39)、At19(配列番号41)、At20(配列番号43)、At22(配列番号45)、At24(配列番号47)、At27(配列番号49)、At32(配列番号51)、Pc05(配列番号53)、Pc06(配列番号55)、Pc07(配列番号57)、Pc08(配列番号59)、Pc09(配列番号61)、Pc10(配列番号63)、Pc18(配列番号65)、Pc23(配列番号67)、Pc24(配列番号69)、Pc25(配列番号71)、Pc33(配列番号73)、Pc34(配列番号75)、At501(配列番号77)、At574(配列番号79)、At279(配列番号81)、At286(配列番号83)、At291(配列番号85)、At320(配列番号87)、At322(配列番号89)、An1000(配列番号91)、At167(配列番号93)、At221(配列番号95)、At233(配列番号97)、At239(配列番号99)、At240(配列番号101)、At274(配列番号103)、Pc1000(配列番号105)、Pc1001(配列番号107)からなる群から選択される、菌類遺伝子発現のレギュレータである単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc804(配列番号1)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAn01(配列番号3)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAn05(配列番号5)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAn09(配列番号7)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAn10(配列番号9)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAn13(配列番号11)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAn17(配列番号13)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAn20(配列番号15)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAn28(配列番号17)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAn34(配列番号19)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt01−1(配列番号21)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt01−2(配列番号23)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt03(配列番号25)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt05(配列番号27)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt07(配列番号29)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt08(配列番号31)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt11(配列番号33)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt14(配列番号35)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt16(配列番号37)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt18(配列番号39)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt19(配列番号41)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt20(配列番号43)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt22(配列番号45)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt24(配列番号47)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt27(配列番号49)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt32(配列番号51)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc05(配列番号53)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc06(配列番号55)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc07(配列番号57)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc08(配列番号59)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc09(配列番号61)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc10(配列番号63)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc18(配列番号65)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc23(配列番号67)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc24(配列番号69)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc25(配列番号71)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc33(配列番号73)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc34(配列番号75)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt501(配列番号77)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt574(配列番号79)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt279(配列番号81)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt286(配列番号83)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt291(配列番号85)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt320(配列番号87)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt322(配列番号89)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAn1000(配列番号91)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt167(配列番号93)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt221(配列番号95)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt233(配列番号97)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt239(配列番号99)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt240(配列番号101)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がAt274(配列番号103)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc1000(配列番号105)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 前記遺伝子がPc1001(配列番号107)である請求項1に記載の単離遺伝子または組換え遺伝子。
- 請求項1に記載の遺伝子に特異的に相補的である単離核酸または組換え核酸。
- Pc804(配列番号2)、An01(配列番号4)、An05(配列番号6)、An09(配列番号8)、An10(配列番号10)、An13(配列番号12)、An17(配列番号14)、An20(配列番号16)、An28(配列番号18)、An34(配列番号20)、At01−1(配列番号22)、At01−2(配列番号24)、At03(配列番号26)、At05(配列番号28)、At07(配列番号30)、At08(配列番号32)、At11(配列番号34);At14(配列番号36)、At16(配列番号38)、At18(配列番号40)、At19(配列番号42)、At20(配列番号44)、At22(配列番号46)、At24(配列番号48)、At27(配列番号50)、At32(配列番号52)、Pc05(配列番号54)、Pc06(配列番号56)、Pc07(配列番号58)、Pc08(配列番号60)、Pc09(配列番号62)、Pc10(配列番号64)、Pc18(配列番号66)、Pc23(配列番号68)、Pc24(配列番号70)、Pc25(配列番号72)、Pc33(配列番号74)、Pc34(配列番号76)、At501(配列番号78)、At574(配列番号80)、At279(配列番号82)、At286(配列番号84)、At291(配列番号86)、At320(配列番号88)、At322(配列番号90)、An1000(配列番号92)、At167(配列番号94)、At221(配列番号96)、At233(配列番号98)、At239(配列番号100)、At240(配列番号102)、At274(配列番号104)、Pc1000(配列番号106)、およびPc1001(配列番号108)からなる群から選択される精製タンパク質。
- 請求項57に記載のタンパク質に特異的に結合する結合物質。
- An01(配列番号3)、An05(配列番号5)、An09(配列番号7)、An10(配列番号9)、An13(配列番号11)、An17(配列番号13)、An20(配列番号15)、An28(配列番号17)、An34(配列番号19)、At01−1(配列番号21)、At01−2(配列番号23)、At03(配列番号25)、At05(配列番号27)、At07(配列番号29)、At08(配列番号31)、At11(配列番号33)、At14(配列番号35)、At16(配列番号37)、At18(配列番号39)、At19(配列番号41)、At20(配列番号43)、At22(配列番号45)、At24(配列番号47)、At27(配列番号49)、At32(配列番号51)、Pc05(配列番号53)、Pc06(配列番号55)、Pc07(配列番号57)、Pc08(配列番号59)、Pc09(配列番号61)、Pc10(配列番号63)、Pc18(配列番号65)、Pc23(配列番号67)、Pc24(配列番号69)、Pc25(配列番号71)、Pc33(配列番号73)、およびPc34(配列番号75)からなる群から選択されるFLO11発現を制御する単離遺伝子または組換え遺伝子。
- At279(配列番号81)、At286(配列番号83)、At291(配列番号85)、At320(配列番号87)、At322(配列番号89)、An1000(配列番号91)、At167(配列番号93)、At221(配列番号95)、At233(配列番号97)、At239(配列番号99)、At240(配列番号101)、At274(配列番号103)、Pc1000(配列番号105)およびPc1001(配列番号107)からなる群から選択されるlovF発現を制御する単離遺伝子または組換え遺伝子。
- At501(配列番号77)およびAt574(配列番号79)からなる群から選択されるlovE発現を制御する単離遺伝子または組換え遺伝子。
- Pc804(配列番号1)からなる群から選択されるacvA発現を制御する単離遺伝子または組換え遺伝子。
- An01(配列番号4)、An05(配列番号6)、An07(配列番号8)、An09(配列番号8)、An10(配列番号10)、An13(配列番号12)、An17(配列番号14)、An20(配列番号16)、An28(配列番号18)、An34(配列番号20)、At01−1(配列番号22)、At01−2(配列番号24)、At03(配列番号26)、At05(配列番号28)、At07(配列番号30)、At08(配列番号32)、At11(配列番号34)、At14(配列番号36)、At16(配列番号38)、At18(配列番号40)、At19(配列番号42)、At20(配列番号44)、At22(配列番号46)、At24(配列番号48)、At27(配列番号50)、At32(配列番号52)、Pc05(配列番号54)、Pc06(配列番号56)、Pc07(配列番号58)、Pc08(配列番号60)、Pc09(配列番号62)、Pc10(配列番号64)、Pc18(配列番号66)、Pc23(配列番号68)、Pc24(配列番号70)、Pc25(配列番号72)、Pc33(配列番号74)、およびPc34(配列番号76)からなる群から選択されるFLO11発現を制御する精製タンパク質。
- At279(配列番号82)、At286(配列番号84)、At291(配列番号86)、At320(配列番号88)、At322(配列番号90)、An1000(配列番号92)、At167(配列番号94)、At221(配列番号96)、At233(配列番号98)、At239(配列番号100)、At240(配列番号102)、At274(配列番号104)、Pc1000(配列番号106)およびPc1001(配列番号108)からなる群から選択されるlovF発現を制御する精製タンパク質。
- At501(配列番号78)およびAt574(配列番号80)からなる群から選択されるlovE発現を制御する精製タンパク質。
- Pc804(配列番号2)からなる群から選択されるacvA発現を制御する精製タンパク質。
- 請求項1に記載の遺伝子を菌類において発現させることからなる、二次代謝産物または酵素の生産を変動させる方法。
- 配列番号112〜132からなる群から選択されるキメラの菌類レギュレータ遺伝子または遺伝子産物。
- 請求項68に記載のキメラの菌類レギュレータ遺伝子を菌類において発現させることからなる、二次代謝産物または酵素の生産を変動させる方法。
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