JP4561009B2 - D−ヒダントインハイドロラーゼをコードするdna、n−カルバミル−d−アミノ酸ハイドロラーゼをコードするdna、該遺伝子を含む組み換えdna、該組み換えdnaにより形質転換された細胞、該形質転換細胞を用いるタンパク質の製造方法、および、d−アミノ酸の製造方法 - Google Patents
D−ヒダントインハイドロラーゼをコードするdna、n−カルバミル−d−アミノ酸ハイドロラーゼをコードするdna、該遺伝子を含む組み換えdna、該組み換えdnaにより形質転換された細胞、該形質転換細胞を用いるタンパク質の製造方法、および、d−アミノ酸の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、D−アミノ酸の製造に好適に利用できるD−ヒダントインハイドロラーゼ(D−ヒダントイナーゼと呼ぶ)をコードするDNA、N−カルバミル−D−アミノ酸ハイドロラーゼ(D−カルバミラーゼと呼ぶ)をコードするDNA、該遺伝子を含む組み換えDNA、該組み換えDNAにより形質転換された細胞、該形質転換細胞を用いるタンパク質の製造方法、およびD−アミノ酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵素を用いたアミノ酸製法の一つとして、化学的に安価に合成される5置換ヒダントイン化合物を出発物質として、これを光学活性なアミノ酸に不斉分解する方法が知られている。この5置換ヒダントイン化合物から光学活性アミノ酸を製造する方法は、医薬品、化学工業品、食品添加物などの製造に重要な方法である。
【0003】
この5置換ヒダントイン化合物から光学活性アミノ酸を製造する方法では、以下の▲1▼、▲2▼の酵素が必要である。
▲1▼5置換ヒダントイン化合物に作用し、当該物質を加水分解することによりN−カルバミルアミノ酸を生成する反応を触媒する酵素:ヒダントインハイドロラーゼ(ヒダントイナーゼ)。
▲2▼生成したN−カルバミルアミノ酸に作用し、当該物質を加水分解することにより光学活性アミノ酸を生成する反応を触媒する酵素:N−カルバミルアミノ酸ハイドロラーゼ(カルバミラーゼ)。
【0004】
ここで、5置換ヒダントイン化合物から光学活性アミノ酸を製造するためには、上記▲1▼ヒダントイナーゼおよび▲2▼カルバミラーゼのうち、少なくとも一方に光学選択性の酵素を用いればよく、従来から微生物酵素系を用いた方法および微生物酵素系と化学反応系とを組み合わせた方法が知られている。
【0005】
このうち、D−アミノ酸生産菌または当該菌が産生する酵素含有物を用いて5置換ヒダントイン化合物からD−アミノ酸を製造する方法として、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌を用いる方法(特公昭56−003034号公報)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属細菌を用いる方法(特開平03−019696号公報)などが知られている。これらのD−アミノ酸生産菌では、一般的に、そのヒダントイナーゼ活性がD体の5置換ヒダントインに対して特異的であることが多く、DL−5置換ヒダントイン(ここでは5−ベンジルヒダントイン)を出発物質とした場合、下記反応式に示すように、D体のみが加水分解されてN−カルバミル−D−アミノ酸となり、さらにD体のみに作用するD−カルバミラーゼによって加水分解されて、最終的にD体のアミノ酸(ここではD−フェニルアラニン)のみが得られる。
【0006】
【化1】
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、D−アミノ酸生産菌の培養菌体を用いて5置換ヒダントイン化合物から光学活性アミノ酸を製造する場合には、反応に必要な酵素の生産量を増加させるため、ヒダントイン誘導体などの誘導物質を使用したり、培養菌体を大量に使用する必要があるなどの問題点がある。
【0008】
また、光学活性アミノ酸を効率良く製造するためには、D−ヒダントイナーゼ遺伝子およびD−カルバミラーゼ遺伝子を単離し、遺伝子増幅、転写および翻訳活性を高めることによってこの酵素の生産量を高めた組み換え体を用いることが好ましい。しかしながら、従来の方法では反応に多くの時間を要し、反応の中間体であるN−カルバミル−D−アミノ酸が副生するなどの問題点があった。
【0009】
本発明は上述の問題点を解決するために成されたものであり、5置換ヒダントイン化合物をD−アミノ酸に変換する能力を持つ微生物よりD−ヒダントイナーゼ遺伝子およびD−カルバミラーゼ遺伝子を単離して、そのアミノ酸配列やコードする遺伝子の塩基配列を解明するとともに、該酵素の生産量を高めた組み換え体を作製し、5置換ヒダントインからD−アミノ酸を効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは5置換ヒダントイン化合物をD−アミノ酸に変換する能力を持つ微生物よりD−ヒダントイナーゼ遺伝子およびD−カルバミラーゼ遺伝子を単離することに成功し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0012】
(請求項1) 下記(a)または(b)の塩基配列を有し、D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列
【0013】
(請求項2) 下記(c)または(d)のアミノ酸配列を有し、D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列
(d)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
【0014】
(請求項3) 請求項1または2に記載のDNAとベクターDNAとが接続されて得られる組み換えDNA。
【0015】
(請求項4) 前記ベクターDNAは、pUC系プラスミド、pBR322系プラスミドまたはその誘導体に由来することを特徴とする請求項3に記載の組み換えDNA。
【0016】
(請求項5) 請求項3または4に記載の組み換えDNAによって形質転換された細胞。
【0017】
(請求項6) 前記細胞は、エシェリヒア・コリに由来することを特徴とする請求項5に記載の細胞。
【0018】
(請求項7) 請求項5または6に記載の細胞を培地中で培養し、培地中および/または細胞中にD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質を蓄積させることを特徴とするD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
【0019】
(請求項8) 下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質。
(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
【0020】
(請求項9) 請求項7に記載の製造方法を用いてD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質を製造するタンパク質製造工程と、
前記D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質を5置換ヒダントインに作用させて、N−カルバミル−D−アミノ酸を製造するN−カルバミル−D−アミノ酸製造工程と、
を含むことを特徴とするN−カルバミル−D−アミノ酸の製造方法。
【0021】
(請求項10) 請求項7に記載の製造方法を用いてD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質を製造するタンパク質製造工程と、
前記D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質およびN−カルバミル−D−アミノ酸を加水分解する酵素または当該酵素含有物を、5置換ヒダントインに作用させてD−アミノ酸を製造するD−アミノ酸製造工程と、
を含むことを特徴とするD−アミノ酸の製造方法。
【0022】
(請求項11) 下記(a)または(b)の塩基配列を有し、D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(a)配列表の配列番号3に記載の塩基配列
(b)配列表の配列番号3に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列
【0023】
(請求項12) 下記(c)または(d)のアミノ酸配列を有し、D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列
(d)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
【0024】
(請求項13) 請求項11または12に記載のDNAとベクターDNAとが接続されて得られる組み換えDNA。
【0025】
(請求項14) 前記ベクターDNAは、pUC系プラスミド、pBR322系プラスミドまたはその誘導体に由来することを特徴とする請求項13に記載の組み換えDNA。
【0026】
(請求項15) 請求項13または14に記載の組み換えDNAによって形質転換された細胞。
【0027】
(請求項16) 前記細胞は、エシェリヒア・コリに由来することを特徴とする請求項15に記載の細胞。
【0028】
(請求項17) 請求項15または16に記載の細胞を培地中で培養し、培地中および/または細胞中にD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質を蓄積させることを特徴とするD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
【0029】
(請求項18) 下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質。
(a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
【0030】
(請求項19) 請求項17に記載の製造方法を用いてD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質を製造するタンパク質製造工程と、
前記D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質をN−カルバミルアミノ酸に作用させてD−アミノ酸を製造するD−アミノ酸製造工程と、
を含むことを特徴とするD−アミノ酸の製造方法。
【0031】
(請求項20) 請求項17に記載の製造方法を用いてD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質を製造するタンパク質製造工程と、
前記D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質および5置換ヒダントインを加水分解する酵素または当該酵素含有物を5置換ヒダントインに作用させてD−アミノ酸を製造するD−アミノ酸製造工程と、
を含むことを特徴とするD−アミノ酸の製造方法。
【0032】
(請求項21) 請求項7に記載の製造方法を用いてD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質を製造する第1のタンパク質製造工程と、
請求項17に記載の製造方法を用いてD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質を製造する第2のタンパク質製造工程と、
前記D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質および前記D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質を5置換ヒダントインに作用させて、D−アミノ酸を製造するD−アミノ酸製造工程と、
を含むことを特徴とするD−アミノ酸の製造方法。
【0033】
(請求項22) 請求項9に記載のN−カルバミル−D−アミノ酸の製造方法において、5置換ヒダントイン化合物をラセミ化する酵素または当該酵素含有物を5置換ヒダントインに作用させ、5置換ヒダントイン化合物をラセミ化する工程を含むことを特徴とするN−カルバミル−D−アミノ酸の製造方法。
【0034】
(請求項23) 請求項10、19、20または21に記載のD−アミノ酸の製造方法において、5置換ヒダントイン化合物をラセミ化する酵素または当該酵素含有物を5置換ヒダントインに作用させ、5置換ヒダントイン化合物をラセミ化する工程を含むことを特徴とするD−アミノ酸の製造方法。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、
[I]D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質およびD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
[II]D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質およびD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質の製造方法
[III]D−アミノ酸の製造方法
の順に添付の図面を参照して詳細に説明する。
なお、本明細書においては、D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質をD−ヒダントイナーゼと呼ぶことがあり、D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質をD−カルバミラーゼと呼ぶことがある。
【0036】
[I]D−ヒダントイナーゼおよびD−カルバミラーゼをコードするDNA
本発明のD−ヒダントイナーゼおよびD−カルバミラーゼをコードするDNAは、特公昭56−025119号に記載のフラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199(FERM−P4229)の染色体DNAより単離、取得されたものである。なお、フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199(FERM−P4229)はアルカリゲネス アクアマリヌス(Alcaligenes aquamarinus)として通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託された微生物であるが、再同定の結果、フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)に分類されることが判明した。現在では、フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199(FERM−P4229)として経済産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。
【0037】
上記微生物について、細菌の分類学書であるバージェーズ マニュアル オブデターミネイティブ バクテリオロジー 第1巻(第9版 1994年、ウイリアム アンド ウイルキンス社出版)に照らしあわせて生理性状試験を実施した試験結果を以下に示す。
【0038】
フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199の再同定結果
【0039】
以上の菌学的性質より、AJ11199菌をフラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)と同定した。
【0040】
本発明者らは、上記AJ11199菌の染色体DNAを用いて作製した遺伝子ライブラリーより、D−カルバミラーゼ遺伝子を単離、取得することに成功した。また、該遺伝子の下流の塩基配列が目的とするD−ヒダントイナーゼ遺伝子であると予想した。即ち、図1に示すように、本発明のAJ11199菌由来のD−カルバミラーゼ遺伝子およびD−ヒダントイナーゼ遺伝子はクラスターを形成していると考えられる。このようにして、本発明のD−ヒダントイナーゼ遺伝子およびD−カルバミラーゼ遺伝子の全長を単離・取得することに成功した。
【0041】
なお、遺伝子の単離の際に用いたPCR法の操作については、White, T.J. et al., Trends Genet.5巻、185ページ、1989年などに記載されている。また、染色体DNAを調製する方法や、さらにDNA分子をプローブとして用いて遺伝子ライブラリーから目的とするDNA分子を単離する方法については、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press(1989年)などに記載されている。
【0042】
さらに、単離されたD−ヒダントイナーゼ若しくはD−カルバミラーゼをコードするDNAの塩基配列を決定する方法は、A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley & Sons, Inc.(1985年)などに記載されている。また、Applied Biosystems社製のDNAシークエンサーを用いて、塩基配列を決定することができる。
【0043】
なお、添付した本発明の配列表において、上記方法によって特定されたAJ11199菌由来のD−ヒダントイナーゼをコードするDNAを配列番号1に示し、D−カルバミラーゼをコードするDNAを配列番号3に示す。
【0044】
これらのDNAは、いずれもD−アミノ酸の製造に係わるタンパク質をコードするものである。
【0045】
また、配列表の配列番号2に、配列表の配列番号1の塩基配列がコードするD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質のアミノ酸配列を示し、配列表の配列番号4に、配列表の配列番号3の塩基配列がコードするD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0046】
配列表の配列番号2に記載のD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質、および、配列表の配列番号4に記載のD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質は、下記反応式に示すように、5−ベンジルヒダントインに代表される5置換ヒダントインから、D−フェニルアラニンに代表される光学活性アミノ酸を生成する反応を触媒する。
【0047】
【化1】
【0048】
次に、本発明のD−ヒダントイナーゼをコードするDNAおよびD−カルバミラーゼをコードするDNAについて詳細に説明する。
【0049】
(1)D−ヒダントイナーゼをコードするDNA
配列表の配列番号1の塩基配列を有する本発明のD−ヒダントイナーゼ遺伝子は、前述したようにフラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199株の染色体DNAから単離されたものであり、既知のアグロバクテリウム(Agrobacterium)属細菌由来のD−ヒダントイナーゼ遺伝子(WO96/20275号公報)と58%(アミノ酸配列において46%)の相同性を示す。
【0050】
ここで、本発明のD−ヒダントイナーゼをコードするDNAは、配列表の配列番号1に示されるDNAだけではない。即ち、フラボバクテリウム属に属する細菌の種や株ごとに塩基配列の違いが観察される。
【0051】
なお、本発明のDNAは単離されたD−ヒダントイナーゼをコードするDNAのみではなく、当然ながら、単離されたD−ヒダントイナーゼをコードするDNAに人工的に変異が加えられたDNAであっても、D−ヒダントイナーゼをコードする場合には本発明のDNAである。人工的に変異を加える方法として頻繁に用いられるものとして、Method in Enzymol.154ページ、1987年などに記載されている部位特異的変異導入法がある。
【0052】
また、配列表の配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を有し、D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明のDNAである。ここで「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、60℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。また、「D−ヒダントイナーゼ活性」とは、5置換ヒダントイン化合物を加水分解することによってN−カルバミル−D−アミノ酸を生成する活性であればよい。
【0053】
さらに、配列表の配列番号1に記載のDNAがコードするD−ヒダントイナーゼと実質的に同一のタンパク質をコードするDNAも本発明のDNAである。即ち、
(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードするDNA
(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列を有し、D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
も本発明のDNAである。
【0054】
なお、上記(a)、(b)のアミノ酸配列に基づいて、これをコードするDNAを演繹するには、DNAの塩基配列ユニバーサルコドンを採用すればよい。また、「数個」とは、タンパク質の立体構造や酵素活性を大きく損なわない範囲のものであり、具体的には、2〜50個、好ましくは2〜30個、さらに好ましくは2〜10個である。「D−ヒダントイナーゼ活性」とは、5置換ヒダントイン化合物を加水分解することによってN−カルバミル−D−アミノ酸を生成する活性であればよい。ただし、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列においてかかる置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むタンパク質の場合には、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の半分程度以上の酵素活性を保持していることが望ましい。
【0055】
(2)D−カルバミラーゼをコードするDNA
次に、本発明のD−カルバミラーゼをコードするDNAについて説明する。配列表の配列番号3の塩基配列を有する本発明のD−カルバミラーゼは、フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199株の染色体DNAから単離されたものであり、既知のアグロバクテリウム(Agrobacterium)属細菌由来のD−カルバミラーゼ遺伝子(特許公報2902112号)と78%(アミノ酸配列において79%)、既知のシュードモナス(Pseudomonas)属細菌由来のD−カルバミラーゼ遺伝子(特許公報2902112号)と67%(アミノ酸配列において58%)の相同性を示す。
【0056】
なお、本発明のD−カルバミラーゼをコードするDNAは、配列表の配列番号3に示されるDNAだけではない。即ち、フラボバクテリウム属に属する細菌の種および株ごとに塩基配列の違いが観察されるはずだからである。
【0057】
また、単離されたD−カルバミラーゼをコードするDNAに人工的に変異が加えられたDNAであっても、D−カルバミラーゼをコードする場合には、本発明のDNAである。人工的に変異を加える方法として頻繁に用いられるものとして、Method in Enzymol.154ページ、1987年などに記載されている部位特異的変異導入法がある。
【0058】
また、配列表の配列番号3に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を有し、D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明のDNAである。ここで「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、60℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。また、「D−カルバミラーゼ活性」とは、N−カルバミル−D−アミノ酸を加水分解することによってD−アミノ酸を生成する活性であればよい。
【0059】
また、上記DNAがコードするD−カルバミラーゼと実質的に同一のタンパク質をコードするDNAも本発明のDNAである。即ち、
(a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列をコードするDNA
(b)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列を有し、D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
も本発明のDNAである。
【0060】
なお、上記(a)、(b)のアミノ酸配列に基づいて、これをコードするDNAを演繹するには、DNAの塩基配列ユニバーサルコドンを採用すればよい。また、「数個」とは、タンパク質の立体構造や酵素活性を大きく損なわない範囲のものであり、具体的には、2〜50個、好ましくは2〜30個、さらに好ましくは2〜10個である。「D−カルバミラーゼ活性」とは、N−カルバミル−D−アミノ酸を加水分解することによってD−アミノ酸を生成する活性であればいかなるものでもよい。ただし、配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列においてかかる置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むタンパク質の場合には、配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の半分程度以上の酵素活性を保持していることが望ましい。
【0061】
[II]D−ヒダントイナーゼおよびD−カルバミラーゼの製造方法
次に、組み換えDNA技術によってD−ヒダントイナーゼおよびD−カルバミラーゼを製造する方法について説明する。なお、組み換えDNA技術を利用して酵素、生理活性物質などの有用タンパク質を製造する例は数多く知られており、組み換えDNA技術を用いることで、天然に微量に存在する有用タンパク質を大量生産できる。
【0062】
図2は、本発明のD−ヒダントイナーゼおよびD−カルバミラーゼの製造工程のフローチャートである。
まず、本発明のD−ヒダントイナーゼDNAおよび/またはD−カルバミラーゼDNAを調製する(ステップS1)。
次に、調製したDNAをベクターDNAと接続して組み換えDNAを作製し(ステップS2)、該組み換えDNAによって細胞を形質転換して形質転換体を作製する(ステップS3)。続いて、該形質転換体を培地中で培養し、培地中および/または細胞中にD−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼを生成蓄積させる(ステップS4)。
その後、ステップS5に進み、該酵素を回収・精製することによってD−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼを大量生産する。
また、ステップS5で生産した酵素またはステップS4の酵素が蓄積された培地を用いてアミノ酸を合成することで、目的とするアミノ酸を大量に製造することができる(ステップS6)。
【0063】
なお、ベクターDNAと接続されるDNAは、本発明のD−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼが発現可能であればよい。
【0064】
ここで、ベクターDNAに接続されるD−ヒダントイナーゼ遺伝子としては、上述の
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNA、
(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を有するDNA、
(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードするDNA、
(d)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列をコードするDNA
などを使用できる。
【0065】
また、ベクターDNAと接続されるD−カルバミラーゼ遺伝子としては、
(a)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するDNA、
(b)配列表の配列番号3に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を有するDNA、
(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列をコードするDNA、
(d)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列をコードするDNA
などを使用できる。
【0066】
さらに、これらのDNAの他、上記D−ヒダントイナーゼ遺伝子とD−カルバミラーゼ遺伝子を連結したDNAなどを用いることもできる。この場合には、本発明のD−ヒダントイナーゼおよび本発明のD−カルバミラーゼが同時に発現することになる。
【0067】
ところで、組み換えDNA技術を用いてタンパク質を大量生産する場合、形質転換される宿主細胞としては、細菌細胞、放線菌細胞、酵母細胞、カビ細胞、植物細胞、動物細胞などを用いることができる。一般には、大腸菌を用いてタンパク質を大量生産する技術について数多くの知見があるため、大腸菌、好ましくはエシェリヒア・コリが用いられる。以下、形質転換された大腸菌を用いてD−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼを製造する方法を説明する。
【0068】
D−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼをコードするDNAを発現させるプロモーターとしては、通常大腸菌においてタンパク質生産に用いられるプロモーターを使用することができ、例えば、T7プロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、PLプロモーターなどの強力なプロモーターが挙げられる。
【0069】
また、生産量を増大させるためには、タンパク質遺伝子の下流に転写終結配列であるターミネーターを連結することが好ましい。このターミネーターとしては、T7ターミネーター、fdファージターミネーター、T4ターミネーター、テトラサイクリン耐性遺伝子のターミネーター、大腸菌trpA遺伝子のターミネーターなどが挙げられる。
【0070】
D−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼをコードする遺伝子を宿主細胞に導入するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、Col E1由来の複製開始点を有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミド、あるいはその誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入、付加または逆位などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。なお、ここでいう改変とは、変異剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異などによる改変をも含む。
【0071】
また、形質転換体を選別するために、該ベクターはアンピシリン耐性遺伝子などのマーカーを有することが好ましく、このようなプラスミドとして、例えば、pUC系(宝酒造(株)製)、pPROK系(クローンテック製)、pKK233−2(クローンテック製)などのように強力なプロモーターを持つ発現ベクターが市販されている。
【0072】
プロモーター、D−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼをコードする遺伝子、ターミネーターの順に連結したDNA断片と、ベクターDNAとを連結して組み換えDNAを得ることができる。
【0073】
該組み換えDNAを用いて宿主細胞を形質転換し、この細胞を培養すると、D−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼが発現生産される。なお、形質転換を行う方法および形質転換体を選別する方法はMolecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989年)などに記載されている方法を適用することができる。
【0074】
また、生産培地としては、M9−カザミノ酸培地、LB培地など、大腸菌を培養するために通常用いる培地を用いてもよい。さらに、培養条件、生産誘導条件は、用いたベクターのマーカー、プロモーター、宿主菌などの種類に応じて適宜選択する。酵素生産量を高めるため、培地にイソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を添加したり、温度上昇などの酵素誘導処理を行うことも好ましい。
【0075】
培養菌体を遠心分離操作などにより回収した後、菌体を破砕あるいは溶菌させ、D−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼを回収し、粗酵素液として使用することができる。菌体破砕には超音波破砕、フレンチプレス破砕、ガラスビーズ破砕などの方法を用いることができ、また溶菌させる場合には卵白リゾチームや、ペプチターゼ処理、または、これらを適宜組み合わせた方法が用いられる。さらに、必要に応じて、通常の沈澱、濾過、カラムクロマトグラフィーなどの手法により、これらの酵素を精製して用いることも可能である。この場合、これらの酵素の抗体を利用した精製法も利用できる。
【0076】
上述の組み換え体を用いる方法によって得られる本発明のD−ヒダントイナーゼは、下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質である。
(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
【0077】
また、上述の組み換え体を用いる方法によって得られる本発明のD−カルバミラーゼは、下記(c)または(d)のアミノ酸配列を有し、D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質である。
(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列
(d)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
【0078】
なお、ここで、「数個」および「D−ヒダントイナーゼ活性」、「D−カルバミラーゼ活性」の定義は、[I]D−ヒダントイナーゼおよびD−カルバミラーゼをコードするDNAの項の説明と同義である。
【0079】
[III]D−アミノ酸の製造方法
次に、本発明のD−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼを用いたD−アミノ酸の製造方法について述べる。
【0080】
本発明のD−アミノ酸の製造方法は、ヒダントイナーゼおよびカルバミラーゼのうち、少なくとも一方に本発明の酵素を用いるものであり、ヒダントイナーゼおよびカルバミラーゼの組み合わせとしては下記の3通りが考えられる。
(i)本発明のD−ヒダントイナーゼ +カルバミラーゼ
(ii)ヒダントイナーゼ + 本発明のD−カルバミラーゼ
(iii)本発明のD−ヒダントイナーゼ + 本発明のD−カルバミラーゼ
【0081】
(i)の場合、本発明のD−ヒダントイナーゼとしては、下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。
(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
【0082】
また、このようなD−ヒダントイナーゼをコードするDNAとベクターが接続されて得られる組み換えDNAによって形質転換された細胞を培養することによって得られたD−ヒダントイナーゼを用いることもできる。形質転換された細胞を用いて、D−ヒダントイナーゼを製造する場合、培養しながら、培養液中に直接基質を添加してもよいし、培養液より分離された菌体、洗浄菌体などいずれも使用可能である。また、菌体を破砕あるいは溶菌させた菌体処理物をそのまま用いてもよいし、当該菌体処理物からD−ヒダントイナーゼを回収し、粗酵素液として使用してもよいし、さらに、酵素を精製して用いてもよい。即ち、D−ヒダントイナーゼ活性を有する画分であれば、全てを使用することが可能である。
【0083】
本発明のD−ヒダントイナーゼの基質としては、当該酵素の基質特異性において加水分解できる5置換ヒダントイン化合物であればいかなるものも使用できる。例えば、ヒダントイン、5−メチルヒダントイン、5−ベンジルヒダントイン、5−(4−ヒドロキシベンジル)ヒダントイン、5−インドリルメチルヒダントイン、5−(3,4−ジヒドロキシベンジル)ヒダントイン、5−メチルチオエチルヒダントイン、5−イソプロピルヒダントイン、5−イソブチルヒダントイン、5−sec−ブチルヒダントイン、5−カルボキシエチルヒダントイン、5−カルボキシメチルヒダントイン、5−(4−アミノブチル)ヒダントイン、5−ヒドロキシメチルヒダントインなどに代表されるような天然型アミノ酸に対応する5置換ヒダントイン化合物の他、5−フェニルヒダントイン、5−(4−ヒドロキシフェニル)ヒダントイン、5−メトキシメチルヒダントイン、5−ベンジロキシメチルヒダントイン、5−(3,4−メチレンジオキシベンジル)ヒダントイン、ジヒドロウラシルなどに代表されるような非天然型のアミノ酸若しくはその誘導体に対応する5置換ヒダントインなどが挙げられる。
【0084】
本発明のD−ヒダントイナーゼと組み合わせて用いるカルバミラーゼとしては、N−カルバミル−D−アミノ酸に作用し、当該物質を加水分解することによりD−アミノ酸を生成する反応を触媒する酵素または当該酵素含有物であれば、特に限定なく公知のものを用いることができる。すなわち、N−カルバミル−D−アミノ酸のみに特異的に作用するカルバミラーゼ(D−カルバミラーゼ)であっても、光学選択性を有しないカルバミラーゼであってもよい。ここで、「酵素含有物」とは、当該酵素を含むものであればよく、具体的には培養物、培養菌体、菌体を破砕あるいは溶菌させた菌体処理物、粗酵素液、精製酵素などを含むものが挙げられる。
【0085】
D−カルバミラーゼとしては、例えばシュードモナス(Pseudomonas)や、アグロバクテリウム(Agrobacterium)にその存在が知られている(特許2902112号公報)。
【0086】
次に(ii)の場合について説明する。本発明のD−カルバミラーゼとしては、下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。
(a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
【0087】
また、このようなD−カルバミラーゼをコードするDNAとベクターが接続されて得られる組み換えDNAによって形質転換された細胞を培養することによって得られたD−カルバミラーゼを用いることもできる。形質転換された細胞を用いて、D−カルバミラーゼを製造する場合、培養しながら、培養液中に直接基質を添加してもよいし、培養液より分離された菌体、洗浄菌体などいずれも使用可能である。また、菌体を破砕あるいは溶菌させた菌体処理物をそのまま用いてもよいし、当該菌体処理物からD−カルバミラーゼを回収し、粗酵素液として使用してもよいし、さらに、酵素を精製して用いてもよい。即ち、D−カルバミラーゼ活性を有する画分であれば、全てを使用することが可能である。
【0088】
また、本発明のD−カルバミラーゼの基質としては、当該酵素の基質特異性において加水分解できるN−カルバミル−D−アミノ酸であればいかなるものも使用できる。即ち、上述した5置換ヒダントイン化合物より得られるN−カルバミル−D−アミノ酸以外のN−カルバミル−D−アミノ酸であっても基質として使用することができる。
【0089】
さらに、本発明のD−カルバミラーゼと組み合わせて用いるヒダントイナーゼとしては、5置換ヒダントイン化合物に作用し、当該物質を加水分解することによりN−カルバミルアミノ酸を生成する反応を触媒する酵素または当該酵素含有物であれば、特に限定なく公知のものを用いることができる。ここで、「酵素含有物」とは、当該酵素を含むものであればよく、具体的には培養物、培養菌体、菌体を破砕あるいは溶菌させた菌体処理物、粗酵素液、精製酵素などを含むものが挙げられる。ただし、本発明のD−カルバミラーゼは、D体特異的であるので、光学特異性のないヒダントイナーゼまたはD体に特異的に作用するD−ヒダントイナーゼを用いる必要がある。光学特異性のないヒダントイナーゼは、例えばマイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens)AJ3912株にその存在が知られている(特願2001−065814号)。
また、D体ヒダントイン化合物に特異的に作用するD−ヒダントイナーゼは、例えばアグロバクテリウム エスピー(Agrobacterium sp.)AJ11220株にその存在が知られている(特公昭56−003034号公報)。なお、マイクロバクテリウム リクエファシエンスAJ3912株は、1975年6月27日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され、受託番号FERM−P3133が付与された微生物である。また、アグロバクテリウム エスピー(Agrobacterium sp.)AJ11220株(FERM−P4347)はシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)として1977年12月20日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託された微生物であるが、再同定の結果、アグロバクテリウム エスピー(Agrobacterium sp.)に分類されることが判明した。現在では、アグロバクテリウム エスピー(Agrobacterium sp.)AJ11220(FERM−P4347)として独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センターに寄託されている。
【0090】
次に、(iii)の場合について説明する。(iii)では、(i)で説明した本発明のD−ヒダントイナーゼおよび(ii)で説明した本発明のD−カルバミラーゼを組み合わせて用いる。(i)〜(iii)のうち最も好ましい組み合わせは(iii)である。
【0091】
ここで、反応工程としては、D−ヒダントイナーゼとD−カルバミラーゼの混合物を5置換ヒダントイン化合物に作用させてもよいし、D−ヒダントイナーゼを5置換ヒダントイン化合物に作用させた後、D−カルバミラーゼを作用させてもよい。反応工程の簡素化の観点からは前者の方法が好ましい。
【0092】
なお、上記(i)〜(iii)の方法によってD−アミノ酸を製造する際に、L体のN−カルバミルアミノ酸やアミノ酸を製造することも可能である。例えば、本発明のD−ヒダントイナーゼを用いて、DL−5置換ヒダントインからN−カルバミル−D−アミノ酸を製造したあと、残存するL−5置換ヒダントインとN−カルバミル−D−アミノ酸とを分離して、L−5置換ヒダントインを回収し、これを加水分解させることによりN−カルバミル−L−アミノ酸を、さらに加水分解反応を進行させることによりL−アミノ酸を製造できる。当該加水分解反応には、L体に作用する加水分解酵素を用いてもよいが、亜硝酸等による化学的な加水分解処理を施すことによっても、光学活性を維持したまま、高収率でL−アミノ酸を製造することが可能である。
【0093】
また、DL体の5置換ヒダントイン化合物をD−アミノ酸へと変換させる際には、5置換ヒダントイン化合物の自発的ラセミ化若しくは化学的なラセミ化若しくはヒダントインラセマーゼを用いるラセミ化反応などを組み合わせることにより、DL体の5置換ヒダントイン化合物からモル収率50%以上でD−アミノ酸を製造することが可能となる。
【0094】
換言すれば、D−ヒダントイナーゼおよびD−カルバミラーゼの他、さらにヒダントインラセマーゼを用いることが好ましい。ヒダントインラセマーゼとしては、例えば、特願2001−065815号に記載のマイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens)AJ3912株(FERM−P3133)由来のヒダントインラセマーゼを好ましく用いることができる。
この場合、下記反応式に示すように、混成タンパク質に含まれるヒダントンラセマーゼが5置換ヒダントイン化合物のラセミ化を触媒するので、DL体の5置換ヒダントイン化合物から理論的にはモル収率100%でD−アミノ酸を製造することが可能となる。
【0095】
【化2】
【0096】
なお、上記混成タンパク質を用いてN−カルバミルアミノ酸を製造することも可能である。例えば、上記混成タンパクにD−カルバミラーゼの阻害剤などを添加して加水分解反応をN−カルバミルアミノ酸で止めることにより、N−カルバミルアミノ酸を製造できる。
【0097】
本発明のD−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼをコードするDNAとベクターが接続されて得られる組み換えDNAによって形質転換された細胞の培養液、分離菌体、洗浄菌体、菌体処理物、当該菌体処理物から得られる粗酵素液または精製酵素を用いてアミノ酸生成反応を進行させる場合には、5置換ヒダントイン化合物と培養液、分離菌体、洗浄菌体、菌体処理物、粗酵素液、または、精製酵素を含む反応液を25〜60℃の適当な温度に調整し、pH5〜9に保ちつつ、8時間〜5日静置または攪拌すればよい。
【0098】
また、本発明のD−ヒダントイナーゼおよび/またはD−カルバミラーゼをコードするDNAとベクターが接続されて得られる組み換えDNAによって形質転換された細胞を水溶性媒体中で培養しながら、アミノ酸生成反応を進行させる場合には、5置換ヒダントイン化合物を含み、かつ、形質転換された細胞の生育に必要な炭素源、窒素源、無機イオンなどの栄養素を含む水溶性媒体が用いられる。さらにビタミン、アミノ酸などの有機微量栄養素を添加すると望ましい結果が得られる場合が多い。5置換ヒダントイン化合物は分割添加してもよい。好気的条件下でpH5〜9、温度25〜40℃の適当な範囲に制御しつつ、8時間〜5日間培養することが好ましい。
【0099】
培養液あるいは反応液中のD−アミノ酸の定量は周知の方法を用いて速やかに測定することができる。即ち、簡便にはMerck製のHPTLC CHIRなどを利用した薄層クロマトグラフィーを利用することができ、より分析精度を高めるには、ダイセル化学工業製のCHIRALPAK WHなどの光学分割カラムを利用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いればよい。
【0100】
培養液あるいは反応液中に蓄積されたD−アミノ酸は、定法により培養液あるいは反応液中より採取することができる。例えば、濾過、遠心分離、真空濃縮、イオン交換または吸着クロマトグラフィー、結晶化などの操作を必要に応じて適宜組み合わせて用いることができる。特に、高濃度の5置換ヒダントイン化合物からの変換を行った際には、培養液あるいは反応液を冷却し、pHを調整するなどによってD−アミノ酸を容易に結晶として得ることができる。
【0101】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例における5置換ヒダントイン化合物、N−カルバミルアミノ酸、およびアミノ酸の定量および光学純度測定には、ダイセル化学工業製光学分割カラムCHIRALPAK WHを利用したHPLCを用いた。分析条件は以下のとおりである。
カラム:ダイセル化学CHIRALPAK WH 0.46cmφ×25cm
移動相:5% (v/v) methanol, 1mMCuSO4
カラム温度:50℃
流速:1.5 ml/分
検出:UV210
【0102】
(実施例1)AJ11199菌由来のD−ヒダントイナーゼ遺伝子およびD−カルバミラーゼ遺伝子の単離
【0103】
1.菌体の取得
フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199株をCM2G寒天培地(グルコース0.5%、酵母エキス1.0%、ペプトン1.0%、NaCl 0.5%、寒天2%、pH7.0)上で30℃、24時間培養し、リフレッシュした。これを50mlのCM2G液体培地を張り込んだ500 ml容の坂口フラスコに1白金耳植菌し、30℃、16時間好気的に振とう培養した。
【0104】
2.菌体からの染色体DNAの取得
培養液50mlを遠心分離操作(12,000×g、4℃、15分間)に供し、集菌した。この菌体を10mlの50:20 TE(50mM Tris−HCl (pH 8.0)、20mM EDTA)に懸濁して洗浄し、遠心分離操作により、菌体を回収した後、再びこの菌体を10mlの50:20 TEに懸濁した。
さらに、この懸濁液に0.5mlの20mg/mlリゾチーム溶液、1mlの10% SDS溶液を加えた後、55℃で20分間インキュベートした。インキュベート後、1倍容の10:1 TE飽和のフェノールを加えて除タンパクを行った。分離した水層に対して、1倍容の2−プロパノールを加えてDNAを沈澱させ、回収した。沈澱したDNAを0.5ml 50:20 TEに溶解した後、5μlの10mg/ml RNase、5μlの10mg/ml ProteinaseKを加えて、55℃で2時間反応させた。反応後、1倍容の10:1 TE飽和のフェノールで除タンパクを行った。さらに、分離した水層に対して、1倍容の24:1 クロロホルム/イソアミルアルコールを加えて攪拌し、水層を回収した。この操作をさらに2回行った後に得られた水層に、終濃度0.4Mとなるように3M酢酸ナトリウム溶液(pH 5.2)を加え、さらに2倍容のエタノールを加えた。沈澱となって生じたDNAを回収し、70%エタノールで洗浄、乾燥させ、1mlの10:1 TEに溶解させた。
【0105】
3.遺伝子ライブラリーからのD−カルバミラーゼ遺伝子の単離
まず、フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199株の染色体DNA200μgに制限酵素Sau3AIを1U添加し、37℃にて15分間反応させて部分消化した。次に、このDNAからアガロース電気泳動にて3〜8kbpの断片を回収した。これをプラスミドpUC18のBamHI切断物とライゲーションさせ、大腸菌JM109を形質転換して遺伝子ライブラリーを作製した。これをアンピシリンを含むLB培地(トリプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム1%、アンピシリン0.01%、寒天2%、pH7.0)にプレーティングした後、コロニーをN−カルバミル−D−フェニルアラニンを単一窒素源とする液体培地(グルコース0.2%、N−カルバミル−D−フェニルアラニン0.2%、Na2HPO4 0.6%、KH2PO4 0.3%、NaCl 0.05%、MgSO4 0.012%、CaCl2 0.1mM、アンピシリン0.01%、チアミン0.0001%、pH7.0)に植菌し、集積培養することによってN−カルバミル−D−フェニルアラニンを単一窒素源として生育可能な株を選抜した。こうして得られた形質転換体を単離し、アンピシリンとイソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を含むLB培地にて培養後、遠心・集菌した菌体を0.5%のN−カルバミル−D−フェニルアラニンを含む0.1Mリン酸緩衝液に1%添加し、37℃にて5時間反応させた。反応液を解析したところ、D−フェニルアラニンの生成が確認できたことから、この形質転換体が目的とする遺伝子を含むプラスミドを保持していると確認した。この形質転換体からプラスミドDNAを調製し、pUC632−1と命名した。
【0106】
4.挿入断片の塩基配列
プラスミドpUC632−1の挿入断片の塩基配列をジデオキシ法によって決定した。プラスミドpUC632−1の挿入断片の塩基配列を配列表の配列番号5に示す。その結果、挿入断片の長さは4.1kbpであり、D−カルバミラーゼ遺伝子であると考えられる約0.9kbのオープンリーディングフレーム(ORF;塩基番号306〜1220)を含むことが明らかとなった。このORFをORF1と命名した。また、ORF1の下流には約1.1kbのORF(塩基番号1287〜2336)が存在しており、さらにその下流に約1.5kbのORF(塩基番号2341〜3798)が見出された。これらのORFをそれぞれORF2、ORF3と命名した(図1)。
【0107】
5.各オープンリーディングフレームと既知配列との相同性
こうして得られた各ORFについて、既知配列との相同性検索を行ったところ、ORF1は、既知のアグロバクテリウム(Agrobacterium)属細菌由来のD−カルバミラーゼ遺伝子と78%(アミノ酸配列において79%)、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌由来のD−カルバミラーゼ遺伝子と67%(アミノ酸配列において58%)の相同性を示した。また、ORF3は既知のアグロバクテリウム(Agrobacterium)属細菌由来のD−ヒダントイナーゼ遺伝子と58%(アミノ酸配列において46%)の相同性を示した。一方、ORF2は特に既知配列との相同性は確認されなかった。以上の結果より、ORF1がD−カルバミラーゼ遺伝子であり、ORF3がD−ヒダントイナーゼ遺伝子であることが予想された。D−ヒダントイナーゼ遺伝子全長の塩基配列を配列表の配列番号1に、対応するアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示した。また、D−カルバミラーゼ遺伝子全長の塩基配列を配列表の配列番号3に、対応するアミノ酸配列を配列表の配列番号4に示した。
【0108】
(実施例2)AJ11199株由来D−ヒダントイナーゼ遺伝子およびD−カルバミラーゼ遺伝子のE.coliにおける発現
【0109】
1.発現プラスミドの構築
両遺伝子をE.coliで発現させるために、pUC18のlacプロモーターの下流に両遺伝子を連結したプラスミドpUC632HおよびpUC632Cを以下のようにして構築した。まず、フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199株の染色体DNAを鋳型とし、表1に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRにより各遺伝子を増幅した。これらの断片を、それぞれXbaI/HindIII、EcoRI/XbaIにて処理し、pUC18のXbaI/HindIII、EcoRI/XbaI切断物とライゲーションした後、E.coli JM109 に導入した。アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを持った株を選択し、それぞれのプラスミドを発現プラスミドpUC632HおよびpUC632Cと命名した。
【0110】
【表1】
【0111】
2.無細胞抽出液の調製
pUC632Hを持つE.coli 形質転換体およびpUC632Cを持つE.coli 形質転換体を0.1mg/ml アンピシリンを含むLB培地で37℃、16時間シード培養した。LB培地50mlを張り込んだ500ml容坂口フラスコにこのシード培養液を1ml添加し、37℃にて本培養を行った。培養開始2.5時間後に、終濃度1mMとなるようにIPTGを添加し、さらに4時間培養を行った。
培養終了後、集菌、洗浄を行い、菌体を5mlの50mM KPB (pH 8.0)に懸濁し、0.1mmφ glass beadsとともに3分間(30秒×6回、90秒のインターバル)ビーズビーターにて破砕した。溶液を回収し、20,000g×10分の遠心分離操作を行い、その上清を無細胞抽出液とした。
【0112】
3.D−ヒダントイナーゼおよびD−カルバミラーゼ活性測定
D−ヒダントイナーゼ活性の測定は、120mg/dl D−5−ベンジルヒダントイン(BH)、50mM KPB (pH 8.0)および酵素溶液を含む反応液を37℃で30分インキュベートした後、9倍容の1.1mM CuSO4、11.1mM H3PO4を添加し、20,000g×10分の遠心分離操作により沈澱を取り除いた後、生成したN−カルバミルフェニルアラニン(N−Car−Phe)をHPLCにて定量することによった。酵素活性の単位としては、この条件にて1分間に1μmolのN−カルバミルフェニルアラニンを生成する酵素活性をもって1Uと定義した。
【0113】
D−カルバミラーゼ活性の測定は、80mg/dl N−カルバミル−D−フェニルアラニン、50mM KPB (pH 7.5)および酵素溶液を含む反応液を37℃で30分インキュベートした後、9倍容の1.1mM CuSO4、11.1mM H3PO4を添加し、20,000g×10分の遠心分離操作により沈澱を取り除いた後、生成したD−フェニルアラニン(D−Phe)をHPLCにて定量することによった。酵素活性の単位としては、この条件にて1分間に1μmolのD−フェニルアラニンを生成する酵素活性をもって1Uと定義した。
【0114】
その結果を表2に示す。pUC632Hを用いて形質転換した株ではD−ヒダントイナーゼ活性が検出され、pUC632Cを用いて形質転換した株にはD−カルバミラーゼ活性が検出されたことから、両遺伝子がフラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199株由来D−ヒダントイナーゼ遺伝子およびD−カルバミラーゼ遺伝子であり、E.coliの菌体内で発現されていることを確認した。
【0115】
【表2】
【0116】
(実施例3)E.coli洗浄菌体を用いたD−フェニルアラニンの生産
実施例2と同様にして培養したJM109/pUC632Hの洗浄菌体およびJM109/pUC632Cの洗浄菌体を調製し、1g/dlのD−5−ベンジルヒダントインを含む0.1mM KPB(pH7.5)にそれぞれ1g/dlとなるように添加して30℃で反応させた。反応24時間後にサンプリングし、遠心上清をHPLCで解析することにより、生成したD−フェニルアラニンを定量した。
【0117】
その結果を3に示した。この表に示されるように、D−ヒダントイナーゼ遺伝子およびD−カルバミラーゼ遺伝子を発現させたE.coli洗浄菌体を用いることにより、ベンジルヒダントインから効率良くD−フェニルアラニンを生成させることができた。
【0118】
【表3】
【0119】
(実施例4)E.coli洗浄菌体を用いたD−アミノ酸の生産
実施例3と同様にして調製したJM109/pUC632Hの洗浄菌体およびJM109/pUC632Cの洗浄菌体を、1g/dlの各種5置換ヒダントイン化合物を含む0.1mM KPB(pH7.5)にそれぞれ1g/dlとなるように添加して30℃で反応させた。反応24時間後にサンプリングし、遠心上清をHPLCで解析することにより生成したD−アミノ酸を定量した。
【0120】
その結果を表4に示した。この表に示されるように、D−ヒダントイナーゼ遺伝子およびD−カルバミラーゼ遺伝子を発現させたE.coli洗浄菌体を用いることにより、各種5置換ヒダントイン化合物から効率良くD−アミノ酸を生成させることができた。
【0121】
【表4】
【0122】
(実施例5)ヒダントインラセマーゼによるラセミ化との組み合わせによるD−フェニルアラニンの生産
特願2001−065815号に記載のマイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens)AJ3912(FERM−P3133)由来のヒダントインラセマーゼ遺伝子搭載プラスミドpUCFHRを持つE.coli形質転換体を0.1mg/mlアンピシリンを含むLB培地で37℃、16時間シード培養した。LB培地50mlを張り込んだ500ml容坂口フラスコにこのシード培養液を1ml添加し、37℃にて本培養を行った。培養開始2.5時間後に、終濃度1mMとなるようにIPTGを添加し、さらに4時間培養を行った。培養終了後、集菌、洗浄を行い、洗浄菌体を調製した。
また、実施例3と同様にしてJM109/pUC632Hの洗浄菌体およびJM109/pUC632Cの洗浄菌体を調製し、上記ヒダントインラセマーゼ発現株の洗浄菌体とともに1g/dlのDL−5−ベンジルヒダントインを含む0.1mM KPB(pH7.5)にそれぞれ1g/dlとなるように添加して30℃で反応させた。反応24、48、72時間後にサンプリングし、遠心上清をHPLCで解析することにより、生成したD−フェニルアラニンを定量した。
【0123】
その結果を表5に示した。この表に示されるように、ヒダントインラセマーゼ遺伝子、D−ヒダントイナーゼ遺伝子およびD−カルバミラーゼ遺伝子を発現させたE.coli洗浄菌体を用いることにより、DL体のベンジルヒダントインから効率良くD−フェニルアラニンを生成させることができた。
【0124】
【表5】
【0125】
(実施例6)実施例5と同様にして反応を行い、D−フェニルアラニンを含む反応液500mlを得た。この反応液を遠心分離(10,000g×10分)して菌体を分離し、遠心上清を減圧濃縮操作により20mlまで濃縮することによって、D−フェニルアラニンの結晶を析出させた。析出結晶は、濾紙を用いて濾過により回収し、粗結晶とした。粗結晶(2.4g)に水10ml、濃硫酸1mlを加えて溶解させ、これに100mgの活性炭を加え、溶液の脱色を行わせた。次に、濾過により活性炭を除いた後、濾液に28%アンモニア水を5ml加えてpH3.5とし、D−フェニルアラニンを再結晶させた。その後、濾紙を用いて濾過により回収した析出結晶を乾燥させ、1.8gのD−フェニルアラニンを得た。HPLC分析に供したところ、物質純度99%、光学純度は99%e.e.以上であった。
【0126】
【発明の効果】
本発明によって、D−ヒダントイナーゼおよびD−カルバミラーゼの遺伝子を大腸菌などの宿主において安定に大量に発現させることが可能となった。この結果、このような形質転換体から該酵素を容易に調製することができるようになり、該形質転換体やその抽出液、精製酵素等を用いることによって医薬品、化学工業品、食品添加物等の製造に有用なD−アミノ酸を効率良く生産できるようになった。
【0127】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】AJ11199株のD−ヒダントイナーゼおよびD−カルバミラーゼをコードする遺伝子群の構造を示す図である。
【図2】本発明のD−ヒダントイナーゼおよびD−カルバミラーゼの製造工程を示すフローチャートである。
Claims (23)
- 下記(a)または(b)の塩基配列を有し、D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列 - 下記(c)または(d)のアミノ酸配列を有し、D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列
(d)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列 - 請求項1または2に記載のDNAとベクターDNAとが接続されて得られる組み換えDNA。
- 前記ベクターDNAは、pUC系プラスミド、pBR322系プラスミドまたはその誘導体に由来することを特徴とする請求項3に記載の組み換えDNA。
- 請求項3または4に記載の組み換えDNAによって形質転換された細胞。
- 前記細胞は、エシェリヒア・コリに由来することを特徴とする請求項5に記載の細胞。
- 請求項5または6に記載の細胞を培地中で培養し、培地中および/または細胞中にD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質を蓄積させることを特徴とするD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
- 下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質。
(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列 - 請求項7に記載の製造方法を用いてD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質を製造するタンパク質製造工程と、
前記D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質を5置換ヒダントインに作用させて、N−カルバミル−D−アミノ酸を製造するN−カルバミル−D−アミノ酸製造工程と、
を含むことを特徴とするN−カルバミル−D−アミノ酸の製造方法。 - 請求項7に記載の製造方法を用いてD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質を製造するタンパク質製造工程と、
前記D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質およびN−カルバミル−D−アミノ酸を加水分解する酵素または当該酵素含有物を、5置換ヒダントインに作用させてD−アミノ酸を製造するD−アミノ酸製造工程と、
を含むことを特徴とするD−アミノ酸の製造方法。 - 下記(a)または(b)の塩基配列を有し、D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(a)配列表の配列番号3に記載の塩基配列
(b)配列表の配列番号3に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列 - 下記(c)または(d)のアミノ酸配列を有し、D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列
(d)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列 - 請求項11または12に記載のDNAとベクターDNAとが接続されて得られる組み換えDNA。
- 前記ベクターDNAは、pUC系プラスミド、pBR322系プラスミドまたはその誘導体に由来することを特徴とする請求項13に記載の組み換えDNA。
- 請求項13または14に記載の組み換えDNAによって形質転換された細胞。
- 前記細胞は、エシェリヒア・コリに由来することを特徴とする請求項15に記載の細胞。
- 請求項15または16に記載の細胞を培地中で培養し、培地中および/または細胞中にD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質を蓄積させることを特徴とするD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
- 下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質。
(a)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列 - 請求項17に記載の製造方法を用いてD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質を製造するタンパク質製造工程と、
前記D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質をN−カルバミルアミノ酸に作用させてD−アミノ酸を製造するD−アミノ酸製造工程と、
を含むことを特徴とするD−アミノ酸の製造方法。 - 請求項17に記載の製造方法を用いてD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質を製造するタンパク質製造工程と、
前記D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質および5置換ヒダントインを加水分解する酵素または当該酵素含有物を5置換ヒダントインに作用させてD−アミノ酸を製造するD−アミノ酸製造工程と、
を含むことを特徴とするD−アミノ酸の製造方法。 - 請求項7に記載の製造方法を用いてD−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質を製造する第1のタンパク質製造工程と、
請求項17に記載の製造方法を用いてD−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質を製造する第2のタンパク質製造工程と、
前記D−ヒダントイナーゼ活性を有するタンパク質および前記D−カルバミラーゼ活性を有するタンパク質を5置換ヒダントインに作用させて、D−アミノ酸を製造するD−アミノ酸製造工程と、
を含むことを特徴とするD−アミノ酸の製造方法。 - 請求項9に記載のN−カルバミル−D−アミノ酸の製造方法において、5置換ヒダントイン化合物をラセミ化する酵素または当該酵素含有物を5置換ヒダントインに作用させ、5置換ヒダントイン化合物をラセミ化する工程を含むことを特徴とするN−カルバミル−D−アミノ酸の製造方法。
- 請求項10、19、20または21に記載のD−アミノ酸の製造方法において、5置換ヒダントイン化合物をラセミ化する酵素または当該酵素含有物を5置換ヒダントインに作用させ、5置換ヒダントイン化合物をラセミ化する工程を含むことを特徴とするD−アミノ酸の製造方法。
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