JPWO2002046755A1 - 溶液濃度計測方法および尿検査方法 - Google Patents
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Abstract
抗原過剰域においても高信頼性で実用性が高い省力化された溶液中の抗原濃度の計測方法を提供するため、抗原を含む被検溶液に抗体溶液を混合して濁度を計測し、さらに酸性溶液を混合して濁度を計測して、これらの計測値より前記抗原の濃度を確定する。
Description
技術分野
本発明は、被検溶液中に溶解している抗原の濃度、特に尿中のアルブミンの濃度を計測する方法に関する。
背景技術
従来の被検溶液に含まれる抗原の濃度を計測する方法においては、まず、抗原に特異的に結合する抗体をこの被検溶液に混合し、抗原抗体反応によって抗原抗体複合物を生成させる。この生成にともなって被検溶液が混濁することから、その濁度に基づいて抗原の濃度を求める。この方法では、抗原モル濃度と抗体モル濃度が等しい領域(当量域)から抗原モル濃度に比べて抗体モル濃度が大きい領域(抗体過剰域)で計測が行われていた。
このような領域で計測が行われていた理由を、図5および6を参照し、かつポリクローナル抗体を用いた例に代表させて説明する。
複数個の抗原決定基を有する多価抗原を含む溶液と、2個の抗原結合部位を有する2価抗体を含む溶液とを混合すると、抗原と抗体とが結合する。ここで、抗体モル濃度を一定にして抗原モル濃度を増加させた場合、抗原と抗体との結合の様子がどのように変化するかを図5に示す。
図5は、抗体モル濃度を一定にして抗原モル濃度を増減させた場合の、抗原と抗体との結合の様子を概念的に示した図である。抗原モル濃度が低く、混合後の抗体モル濃度が抗原モル濃度よりも充分大きい場合(抗体過剰域)の結合の様子は、図5の(a)に示される。
また、抗原モル濃度を増加させ、混合後の抗体モル濃度が抗原モル濃度と同程度になる場合(当量域)は、、図5の(b)に示すように、抗原が抗体によって架橋されて大きな粒子が生成する。
さらに、抗原モル濃度を増加させ、混合後の抗体モル濃度が当量域よりも小さくなった場合(抗原過剰域)の結合の様子は、図5の(c)に示される。このとき、抗体1つに対して最大2個の抗原が結合するため、抗体モル濃度が抗原モル濃度よりも充分小さくなるのは、抗体モル濃度が抗原モル濃度の約1/2以下の場合である。すなわち、混合後の抗体モル濃度が抗原モル濃度の約1/2より小さくなれば抗原過剰域が得られ、この場合の結合の様子は図5の(c)に示される。もちろん、この1/2という基準は、抗原と抗体の結合定数によって異なる。
つぎに、図5の(a)〜(c)に示した結合の様子に対応する被検溶液の濁度を図6に示す。図6に示すように、aの領域においては、抗原濃度に応じて濁度が増加するが、bの領域においては濁度が抗原濃度に対してほとんど変化しなくなる。そして、cの領域においては、抗原濃度が増加するにつれて濁度が低下する。
したがって、抗原濃度を計測するためには、図6のaの領域で作成した検量線に基づいて、濁度の計測値から抗原濃度を算出するのが好ましいことになる。
この場合、抗体モル濃度は、被検溶液が示し得る最大抗原モル濃度の約1/2以上になるように、望ましくは抗原モル濃度よりも高くなるように設定する必要がある。言い換えると、混合後の被検溶液中の抗原モル濃度が抗体モル濃度よりも高くなることがないように抗体モル濃度を設定する必要がある。すなわち、少なくとも混合後の被検溶液中の抗原モル濃度が抗体モル濃度の約2倍以上になることがないように抗体モル濃度を設定する必要があるということになる。もちろん、この2倍という基準は、抗原と抗体の結合定数などによって異なる。
このように、従来の被検溶液に含まれる抗原の濃度を計測する方法においては、抗体過剰域から当量域で抗原濃度を計測する必要があるので抗体濃度を高くしておく必要がある。この場合、低濃度域での感度が犠牲にされることがあるという問題がある。
また、実際に被検溶液が抗原過剰域、すなわち図6のcの領域にないことを確認するために、または抗原過剰域を無くすために、被検溶液を希釈したり、被検溶液に抗体をさらに添加する操作を行っている。これにより、計測方法の工程を煩雑にするという問題があった。
さらに、濁度を計測する際に被検溶液を保持するサンプルセルは、繰り返し使用されると汚染され、濁度の計測値が変化することがある。
本発明は、上記の問題を解決して、低濃度域の感度を犠牲にすることのない抗体濃度を設定し得る溶液濃度計測方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、抗原過剰域、すなわち図6のcの領域の有無を確認するために、被検溶液を希釈したり、抗体を追加添加する操作が不要な溶液濃度計測方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、サンプルセルの汚染による濁度の計測誤差を補正することのできる溶液濃度計測方法を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明は、(A)サンプルセル内において、被検溶液に、前記被検溶液中の特定の抗原と結合する抗体を混合する工程、(B)抗体混合後の前記被検溶液の濁度を計測する工程、(C)抗体混合後の前記被検溶液に、前記被検溶液中のタンパク質成分を凝集させる酸性溶液を混合する工程、および(D)前記酸性溶液混合後の被検溶液の濁度を計測する工程を、工程(A)〜(D)の順で実施し、工程(B)で得られた濁度および工程(D)で得られた濁度から前記被検溶液の抗原濃度を算出することを特徴とする溶液濃度計測方法に関する。
前記溶液濃度計測方法においては、工程(A)において混合する前記抗体の量が、前記被検溶液の濁度と抗原濃度との関係を示す曲線において抗原過剰域を形成する量であるのが好ましい。すなわち、抗体を前記被検溶液に混合しても、遊離した抗原が存在していてもよい。
例えば、前記抗体が抗原結合部位を1分子当り2個有する2価抗体であり、工程(B)において、前記被検溶液中の抗原モル濃度が抗体モル濃度の2倍以上であるのが好ましい。
また、前記溶液濃度計測方法においては、工程(B)で得られた濁度と工程(D)で得られた濁度との差に基づいて抗原過剰か否かを判断するとともに、工程(B)で得られた濁度から算出された前記被検溶液の抗原濃度を確定するのが好ましい。
また、工程(B)で得られた濁度と工程(D)で得られた濁度とから算出された前記被検溶液の抗原濃度が抗原過剰域以下である場合、工程(D)で得られた濁度に基づいて前記サンプルセルの汚れを判定するのが好ましい。
前記酸性溶液は、スルホサリチル酸、トリクロロ酢酸およびピクリン酸、タンニン、タンニン酸およびm−ガロイル没食子酸よりなる群から選択される少なくとも1種の水溶液であるのが好ましい。
前記酸性溶液混合後の前記被検溶液のスルホサリチル酸、トリクロロ酢酸およびピクリン酸、タンニン、タンニン酸およびm−ガロイル没食子酸よりなる群から選択される少なくとも1種の濃度は5×10−3〜5g/dlであるのが好ましい。
工程(C)において、前記被検溶液または前記酸性溶液にさらにpH調整剤を添加して前記被検溶液のpHを1.5〜5.8に調節するのが好ましい。
前記pH調整剤は、フタル酸水素カリウム、酢酸、クエン酸およびアスコルビン酸よりなる群から選択されるのが好ましい。
また、工程(B)で得られた濁度が実質的にゼロの場合、工程(D)で得られた濁度から前記被検溶液の抗原濃度を算出するのが好ましい。
また、前記被検溶液が尿であり、前記抗原がアルブミンである場合、前記溶液濃度計測方法は、尿検査方法として用いることが可能である。
前記被検溶液の濁度計測に使用する光の波長は、500nm以上であるのが好ましい。
さらに、本発明の溶液濃度計測方法ないし尿検査方法は、被検溶液に光を照射する光源と、前記光が前記被検溶液を透過するように前記被検溶液を保持するサンプルセルと、前記被検溶液を透過した前記光を検知する光センサ1および/または前記光が前記被検溶液中を伝搬する際に発生した散乱光を検知するように配置した光センサ2と、前記サンプルセル中の前記被検溶液に、前記抗体を含んだ抗体溶液を混合する混合機1と、前記サンプルセル中の前記被検溶液に、前記酸性溶液を混合する混合機2と、前記混合機1および2を制御し前記光センサ1および/または光センサ2の出力信号を解析するコンピュータとを備え、前記抗体溶液および酸性溶液の混合前後の前記光センサ1および/または光センサ2の出力信号より、前記被検溶液中の抗原濃度を計測する溶液濃度計測装置により実施することができる。
発明を実施するための最良の形態
タンパク質を含む溶液に、スルホサリチル酸、トリクロロ酢酸、ピクリン酸、タンニン、タンニン酸、m−ガロイル没食子酸などを添加すると、タンパク質成分が凝集して溶液全体が混濁する。
ここでいうタンパク質成分には、アルブミンおよびグロブリンなどの抗原だけでなく、抗体も含まれる。このような酸を含む溶液を被検溶液に混合して濁度を計測することにより、被検溶液中のタンパク質成分濃度を計測することができる。
例えば、尿を被検溶液とした場合には、これに酸性溶液を混合してアルブミンおよびグロブリンを凝集させることにより光学特性(濁度)を変化させ、酸性溶液混合前後の散乱光強度の差(酸性溶液混合後の散乱光強度−酸性溶液混合前の散乱光強度)および/または酸性溶液混合前後の透過光強度の比(酸性溶液混合後の透過光強度/酸性溶液混合前の透過光強度)から、尿中のアルブミンおよびグロブリンの濃度を求めることができる。
また、ここで挙げたタンニンは、広く植物界に分布し、多数のフェノール性ヒドロキシル基をもつ複雑な芳香族化合物の総称(株式会社東京化学同人発行の化学辞典)であり、約600〜2000の分子量を有する(共立出版株式会社発行の化学大辞典)。タンニン酸は、式C76H52O46で表され、CAS登録番号が1401−55−4の物質である。また、m−ガロイル没食子酸は式C14H10O9で表され、CAS登録番号が536−08−3の物質である。
上記の酸性溶液を被検溶液に混合した場合の濁度は、タンパク質濃度に応じて増加する。すなわち、タンパク質濃度が増加すれば濁度が増加する。ただし、酸の種類および/または濃度を調節することによって、抗体だけを凝集させないことも可能である。
一方、タンパク質に結合する2価抗体を含んだ抗体溶液を被検溶液と混合した場合、抗体過剰域から当量域においてはタンパク質濃度が増加すれば濁度も増加するが、タンパク質濃度が高い抗原過剰域においては、タンパク質濃度が増加しても濁度は低下する。
これらのことを鑑み、本発明おいては、まず、例えば被検溶液に2価抗体を含む抗体溶液を混合する(工程(A))。これによって被検溶液中の多価抗原と抗体が結合して被検溶液が混濁するので、このときの濁度TBを計測する(工程(B))。
しかし、この状態では、被検溶液が抗原モル濃度が抗体モル濃度よりも十分高い抗原過剰域に相当している可能性があるため、被検溶液にさらに酸性溶液を混合する(工程(C))。そして、酸性溶液混合後の被検溶液の濁度TDを計測する(工程(D))。ここで、被検溶液が当初含んでいた抗原の濃度に応じた濁度が生成される。
より具体的に述べると、工程(C)において酸性溶液が混合されても抗体が凝集しない場合、抗原過剰域に相当していると、酸性溶液と混合した時点でこの抗原濃度に応じて濁度が大きく増加する。抗原過剰域でない場合は、濁度は、ほとんど変化しない。
また、酸性溶液が混合されることによって抗体が凝集する場合は、抗体濃度に応じて濁度が増加すると同時に、抗原過剰域に相当していると、この抗原濃度に応じて濁度が大きく増加する。抗原過剰域でない場合は、抗体濃度に応じて濁度が増加するのみである。
つまり、工程(B)の濁度をTB、工程(D)における濁度をTDとすると、以上の現象は以下のようにまとめることができる。
(1)酸性溶液の混合によって抗体が凝集しない場合
▲1▼被検溶液の抗原濃度が抗原過剰域にある場合
TD=TB+TAG
(TAGは抗原濃度に応じて増加する濁度)
▲2▼被検溶液の抗原濃度が抗体過剰域〜当量域にある場合
TD≒TB
(2)酸性溶液の混合によって抗体が凝集する場合
▲1▼被検溶液の抗原濃度が抗原過剰域にある場合
TD=TB+TAB+AG
(TAB+AGは抗体および抗原濃度に応じて増加する濁度)
▲2▼被検溶液の抗原濃度が抗体過剰域〜当量域にある場合
TD=TB+TAB
(TABは抗体濃度に応じて増加する濁度)
なお、抗体が酸性溶液が混合されて凝集するかしないかは、当該酸の種類または/および酸の濃度に依存する。
したがって、抗体の酸による凝集特性と酸性溶液を混合した後の濁度の変化量から、上記(1)および(2)にしたがって被検溶液が抗原過剰域にあるか否かを判定することができ、同時に抗原過剰域にある場合は、その濃度を決定することができる。
このように、被検溶液に抗体溶液を混合した時に得られる濁度と、さらに酸性溶液を混合した時に得られる濁度とから、被検溶液の抗原濃度を決定することができる。抗原としては、酸性溶液を混合することにより凝集するもので、例えばアルブミンがあげられる。
ここで、工程(D)の酸性溶液の混合によって抗体が凝集しない場合である上記(1)における、工程(D)の濁度TDおよび工程(B)の濁度TBの差(TD−TB)と被検溶液の抗原濃度との関係を図7に示す。
抗体溶液を添加する工程(B)は既に行われており、TBは一定である。工程(C)において酸性溶液を混合しても、抗体過剰域〜当量域(図7のXの部分)においてはさらに被検溶液中に凝集するものが非常に少ないため、TD≒TBが成り立つ。したがって、図7に示すXの部分において検量線はほぼ平行に伸びるが、例えば被検溶液が尿の場合は、抗体と結合してない遊離の抗原や、抗原および抗体以外のタンパク質が凝集し得るため、抗原濃度の上昇に伴って濁度も若干上昇する(≒TB+α)。したがって、いずれの場合においても、TDはTB、TAG、TAB+AGまたはTABの他に、抗体と結合していない遊離の抗原や、抗原および抗体以外のタンパク質に起因する濁度αも含むことになる。ただし、計測装置の精度によってはこのαを無視することができる。
一方、抗原過剰域(図7のYの部分)においては、抗原濃度が上昇するとともに、工程(D)におけるTDの上昇にともなって、TD−TBも上昇する。
本発明による溶液濃度計測方法により、尿、髄液、血清、血漿および唾液などの体液、乳製品、酒および食酢などの流体状食品、培養液などの産業用液、ならびに人工透析液およびその廃液などに含まれるアルブミンなどのタンパク質の濃度を求めることができる。
以下に、実施例に代表させて本発明をより詳しく説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
実施例1
本実施例においては、尿を被検溶液として用い、尿中のアルブミン濃度を計測した。また、酸性溶液としてタンニン酸水溶液を用いた。具体的には、ウサギ由来のポリクローナルヒトアルブミン抗体を含んだ抗体水溶液を被検尿と混合した。この混合後の抗体濃度が約0.375mg/mlになるように、抗体水溶液の抗体濃度と混合比率を設定した。
ここで、前記ポリクローナル抗体は2価の抗体でその分子量は約15万であった。したがって混合後の抗体モル濃度は2.5×10−6mol/l(2.5μM)であった。また、試薬であるタンニン酸水溶液は3×10−3M(mol/L)(≒0.5g/dl)の濃度を有し、被検溶液の容量99に対して1の比率で混合した。したがって、混合後のタンニン酸の濃度は3×10−5M(≒5×10−3g/dl)であった。
本実施例について、図1〜4を用いて説明する。図1は、本発明の溶液濃度の計測方法に使用する装置の概略構成を示す側面図であり、図2はその光学系を示す上面図である。これらの図において、半導体レーザモジュールからなる光源1は、波長780nm、強度3.0mW、ビーム直径2.0mmの略平行光2を投射する。サンプルセル3は、ガラス製で、上部が開放されていて開口部を有する。そして、サンプルセル3が、底面が10×10mm、高さが50mmの直方体状容器であり、側面に透明な光学窓を有する。
サンプルセル3の内部に収容された被検溶液に略平行光2を照射することができ、また、透過光および散乱光7を外部に取り出すことができる。被検溶液を透過した光を検知する光センサ4および被検溶液中を光が伝搬する際に発生した散乱光7を検知する光センサ5により、それぞれ透過光および散乱光が検知される。コンピュータ6は、光源1を制御するとともに、光センサ4および5の出力信号を解析する。サンプルセル3の底部には、注入口8が設けられており、この注入口8からサンプルセル3中の被検溶液に抗体溶液が混合される。ピペッタ9は、注入口8から抗体溶液を被検溶液へ混合し、コンピュータ6によって制御される。また、ピペッタ10は、酸性溶液をサンプルセル3中の被検溶液に混合し、コンピュータ6によって制御される。
上記の計測装置を用いて、尿のアルブミン濃度を計測した。まず、被検溶液1.485mlをサンプルセル3へ導入した。コンピュータ6が光源1を動作させ、同時に光センサ4および5の出力信号のモニターを開始した。つぎに、コンピュータ6がピペッタ9を制御し、注入口8から抗体溶液1.485mlをサンプルセル3へ混合した(工程(A))。この抗体溶液の抗体モル濃度は5×10−6mol/l(5μM)であったので、被検溶液との混合後の抗体モル濃度は、2.5×10−6mol/l(2.5μM)になった。この抗体溶液の混合の前後の光センサ4および5のそれぞれの出力信号の計測値から濁度を求めた(工程(B))。
ここで、抗体溶液混合後で酸性溶液混合前の濁度と被検溶液のアルブミン濃度の関係を図3に示した。図3において、横軸はアルブミンモル濃度、縦軸は濁度を示している。
これから明らかなように、アルブミンモル濃度が5×10−6mol/l(5μM)以上になると、抗原過剰域となり、アルブミン濃度が増加すると濁度が低下した。尿のアルブミンモル濃度は5×10−6mol/l(5μM)以上になることがあり、なかには、5×10−5mol/l(50μM)を超える場合もあるため、このように、抗体溶液を混合しただけでは、抗原過剰域が存在する可能性があり、アルブミン濃度を確定できなかった。
つぎに、工程(C)に対する参考例として被検溶液にタンニン酸水溶液を混合した。
ここで、まず抗体溶液が混合される前の被検溶液にタンニン酸水溶液を混合した。被検溶液2.97mlをサンプルセル3へ導入し、コンピュータ6が光源1を動作させ、同時に光センサ4および5の出力信号のモニターを開始した。つぎに、コンピュータ6でピペッタ10を制御して、タンニン酸水溶液0.03mlをサンプルセル3へ混合した。このときの、タンニン酸水溶液の濃度は3×10−3M(≒0.5g/dl)で、被検溶液とタンニン酸水溶液を混合した後のタンニン酸の濃度は3×10−5M(≒5×10−3g/dl)であった。これにより、アルブミンが凝集して被検溶液が濁り、透過光強度が低下し、散乱光強度が増加した。
この混合の前後の光センサ4および5のそれぞれの出力信号の計測値より濁度を求め、濁度と被検溶液のアルブミン濃度の関係を図4に示した。図4で、横軸はアルブミンモル濃度、縦軸は濁度を示している。これから明らかなように、濁度はアルブミン濃度が増加すると、これに応じて増加する。したがって、濁度を計測することで、アルブミン濃度を決定することができることがわかった。
つぎに、被検溶液に抗体溶液を混合した後にタンニン酸水溶液を混合した(工程(C))。上記したタンニン酸濃度では、抗体は凝集せず、以下のようになった。
アルブミンモル濃度が約2μM(抗体過剰域〜当量域)の被検溶液に抗体溶液を混合した後、当該被検溶液の濁度は0.025であった。これは、図3に示したとおりである。つぎに、さらにタンニン酸水溶液を混合したところ、濁度は約0.025のままで変化しなかった。
同様に、アルブミンモル濃度が約4μMの被検溶液に抗体溶液を混合したところ、濁度は0.038で、さらにタンニン酸水溶液を混合してもこの濁度は約0.038のままで変化しなかった。
これより、抗体過剰域から当量域においては、濁度は、ここで示した計測精度においては、変化しないことがわかった。
また、アルブミンモル濃度が約8μM(抗原過剰域)の被検溶液および約10μM(抗原過剰域)の被検溶液に、抗体溶液を混合した後の濁度は、それぞれ約0.025および0であった。これらにさらにタンニン酸水溶液を混合すると(工程(C))、濁度はそれぞれ0.04および0.06へと増加した。
これより、抗原過剰域においては、タンニン酸混合後は、抗原濃度に応じた濁度を示すことがわかった。なお、上記では、タンニン酸水溶液の混合比が99対1であったため、実質的にこの希釈効果は濁度としては観測されなかった。
これらを踏まえ、以下のようにアルブミン濃度を決定した。
抗体溶液混合後の濁度が約0.02であるときは、アルブミンモル濃度としては、図3より約1.5μMまたは約8.5μMと予想できた。つぎにタンニン酸水溶液を混合した後の濁度が、約0.02のままで変化しなかった場合は、アルブミン濃度は約1.5μMと確定した。一方、濁度が増加した場合は、アルブミン濃度は約8.5μMと確定した。
また、抗体溶液混合後の濁度が約0.0である時は、アルブミンモル濃度としては、図3より約0μMまたは約10μM以上と予想された。そして抗体溶液を混合後の濁度が0のままで変化しなかった場合は、アルブミン濃度は約0μMと確定した。一方、濁度が約0.06まで増加すると、アルブミン濃度は約10μM以上と確定した。ここで、濁度が約0.1まで増加すると、アルブミンモル濃度は20μMに近いことが予想できた。
以上のように、本実施例によれば、抗体溶液混合後の濁度と、酸性溶液混合後の濁度より抗原濃度を決定できた。
本実施例に示した図3および4のような特性の場合は、抗原過剰域においても、抗体溶液混合後の濁度がゼロでない場合は、酸性溶液混合後の濁度を確認した上で、抗体溶液混合後の濁度より、抗原濃度を決定することが可能であった。
また、抗体溶液混合後の濁度がゼロの場合は、酸性溶液混合後の濁度より、抗原濃度を決定することが可能であった。さらに、酸性溶液混合後に、濁度がある量以上変化した場合、抗原過剰域と判断することも可能であった。
つぎに、上記酸性溶液にさらに酸を添加して、被検溶液に混合後の被検溶液のpHを1.5〜5.8にすると、高いアルブミンモル濃度(約20μM以上)でも動作が安定した。添加する酸として、フタル酸水素カリウム、酢酸、クエン酸、アスコルビン酸などが、計測動作の安定性、再現性が特に良かった。
本実施例では、抗体溶液または酸性溶液混合前の散乱光強度、すなわち光センサ5の出力信号と、混合後300秒後の光センサ5の出力信号の差を濁度とした。図3および4の縦軸はこれを表わしている。この濁度は透過光強度に基づいて求めてもよい。例えば、混合前後の透過光強度の比より濁度を決定してもよい。
さらに、散乱光強度および透過光強度双方を利用して濁度を決定してもよい。すなわち、上記双方の強度を計測することにより、低濃度域の被検溶液については、散乱光強度の計測値から溶液濃度を算出し、高濃度域の被検溶液については、透過光強度の計測値から溶液濃度を算出することにより、実質的に高精度に測定できる被検溶液の濃度範囲、すなわちダイナミックレンジを拡大できる。このダイナミックレンジ向上の詳しい理由は、特開平11−307217号公報に記載されている。
なお、本実施例では、タンニン酸水溶液試薬の濃度が3×10−3M(≒0.5g/dl)で、被検溶液の容量99に対して1の比率で混合することで、混合後のタンニン酸の濃度が3×10−5M(≒5×10−3g/dl)の例を示した。これ以外の混合後濃度でも、3×10−5〜3×10−2M(5×10−3〜5g/dl)の範囲にあれば、各混合後タンニン酸濃度に応じて検量線を作成することによりタンパク質濃度を計測できた。
上記の範囲よりも、タンニン酸が低濃度の場合は、タンパク質が凝集しないこともあり、安定的な計測が難しい。また、上記の範囲よりも、タンニン酸が高濃度の場合は、抗体が凝集して混濁することがあったり、凝集したタンパク質が急激に沈殿して、混濁が不均一になり略平行光2付近では濃度に応じて混濁がしないこともあり、安定的な計測が難しい。したがって、上記濃度範囲で計測することが実用上望ましい。
また、被検溶液と試薬の混合比率が異なると、異なる検量線が得られるため、この混合比率に応じた検量線を作成する必要がある。同様に、タンニンおよびm−ガロイル没食子酸を用いた場合でも、混合後の濃度が、5×10−3〜5g/dlの範囲にあれば、同様に動作させることが可能である。
また、本実施例では、被検溶液との混合後の抗体モル濃度が、2.5×10−6mol/l(2.5μM)の例を示したが、これ以外の濃度でも同様の効果を発揮することができる。この場合、混合後の抗体濃度を高くすると、抗原過剰域となる抗原濃度も当然高くなる。ただし、混合後の抗体濃度を大きくすると、抗原の低濃度域における感度が低下する。
例えば、尿中のアルブミンの濃度は5μM以上を示すことはあるが、100μMを超えることは稀である。そこで、抗体濃度を約50μMに設定することで、抗原濃度が100μMまで、抗原過剰域(cの領域)にならないようにすることも不可能ではない。ただし、この場合、低濃度域の感度が犠牲になる。
本発明は、低濃度域の感度を犠牲にすることなく、かつ抗原過剰域においても濃度を確定できるように抗体濃度を設定すると、特に有効である。具体的には、抗体が抗原結合部位を1分子当り2個有する2価抗体で、抗原が抗原決定基を複数有する多価抗原であるとき、混合後の抗原モル濃度が抗体モル濃度の2倍以上になり得る程度に抗体濃度を高くすると効果的である。言い換えると、被検溶液が示すであろう最大の抗原モル濃度の1/2以下のモル濃度に抗体モル濃度を設定すると効果的である。
以上のように、本実施例によれば、低濃度域の感度を犠牲にすることのない抗体濃度を設定でき、また、抗原過剰域でないことを確認するため、被検溶液を希釈したり、抗体を追加添加する動作を不要することでき、従来必要であった高濃度被検溶液の希釈等の工程が不要になり、計測および検査の高精度化、効率化、および省力化に有効な実用的効果を高めることができる。
特に、尿中のアルブミン濃度を計測する場合、必要となる1μM程度以下の低濃度域の感度を確保しつつ、出現し得る100μM程度のアルブミン濃度でも計測でき、特に実用的である。
実施例2
本実施例では、尿を被検溶液として用い、尿中のアルブミン濃度を計測した。また、酸性溶液として濃度が40g/dlのスルホサリチル酸水溶液を用いた。
具体的には、実施例1と同様に、ウサギ由来のポリクローナルヒトアルブミン抗体を含んだ抗体水溶液を被検尿と混合した。この混合後の抗体濃度は約0.375mg/ml(2.5μM)であった。また、スルホサリチル酸水溶液を、被検溶液の容量9に対して1の比率で混合した。したがって、混合後のスルホサリチル酸の濃度は4g/dlであった。
本実施例について、図1〜4を用いて説明する。本実施例は、実施例1と同様に、図1および2に示した計測装置を用いた。上記の計測装置を用いて、以下のように尿を被検溶液としてアルブミン濃度を計測した。
まず、被検溶液1.35mlをサンプルセル3へ導入し、コンピュータ6が光源1を動作させた。そして、これと同時に光センサ4および5の出力信号のモニターを開始した。つぎに、コンピュータ6がピペッタ9を制御して、注入口8から抗体溶液1.35mlをサンプルセル3へ混合した(工程(A))。この抗体溶液の抗体モル濃度は、5×10−6mol/l(5μM)であったので被検溶液との混合後の抗体モル濃度は、2.5×10−6mol/l(2.5μM)になった。この抗体溶液の混合の前後の光センサ4および5のそれぞれの出力信号の計測値から濁度を求めた(工程(B))。
ここで、酸性溶液を混合する前の濁度と被検溶液のアルブミン濃度の関係は、混合後の抗体濃度が実施例1と同じであるため、図3のようになった。実施例1と同様に、抗体溶液を混合しただけでは、抗原過剰域が存在する可能性があり、アルブミン濃度を確定できなかった。
つぎに、被検溶液にスルホサリチル酸水溶液を混合した。ここで、まず抗体溶液が混合される前の被検溶液にスルホサリチル酸水溶液を混合した。被検溶液2.7mlをサンプルセル3へ導入し、コンピュータ6で光源1を動作させ、同時に光センサ4および5の出力信号のモニターを開始した。つぎに、コンピュータ6でピペッタ10を制御して、スルホサリチル酸水溶液をサンプルセル3へ0.3ml混合した。このときの、スルホサリチル酸水溶液は、40g/dlの濃度で、被検溶液と混合後のタンニン酸の濃度は4g/dlであった。これにより、アルブミンが凝集して被検溶液が濁り、透過光強度が低下し、散乱光強度が増加した。
この混合の前後の光センサ4および5のそれぞれの出力信号の計測値より濁度を求めた。この濁度と被検溶液のアルブミン濃度の関係は、実施例1の図4と実質的に同じになった。本実施例は、実施例1とは、酸性溶液の混合比が異なるが、酸の種類による濁度の違いにより、結果的には図4と同じアルブミン濃度−濁度特性が得られた。これから明らかなように、濁度はアルブミン濃度が増加すると、これに応じて増加した。したがって、濁度を計測することで、アルブミン濃度を決定することができることがわかった。
つぎに、被検溶液に抗体溶液を混合した後にスルホサリチル酸水溶液を混合した(工程(C))。上記した濃度のスルホサリチル酸を用いたが、実施例1とは異なり、抗原が凝集してアルブミン濃度がゼロとなっても、抗体濃度に応じて被検溶液が混濁した。すなわち、図8に示すような抗体モル濃度−濁度特性が得られた。例えば、混合後の抗体モル濃度が2.5μMのとき、濁度は0.024であった。
また、アルブミンモル濃度が約2μM(抗体過剰域〜当量域)の被検溶液に抗体溶液を混合した後の濁度は0.025であった。これは、図3のとおりである。つぎに、さらにスルホサリチル酸水溶液を混合すると、濁度は約0.04まで増加した。
同様に、アルブミンモル濃度が約4μM(抗体過剰域〜当量域)の被検溶液に抗体溶液を混合した後の濁度は0.038で、さらにスルホサリチル酸水溶液を混合すると、濁度は約0.05まで増加した。
これより、抗体過剰域から当量域においては、スルホサリチル酸溶液を混合した時点の濁度は、ここで示した計測精度においては、抗体溶液のみを混合した時よりは増加することがわかった。しかし、この濁度の増加量は、アルブミンモル濃度がゼロの被検溶液に抗体溶液を混合し、さらにスルホサリチル酸を混合した場合の濁度、すなわち、抗体のみを含む被検溶液の濁度0.024よりは小さかった。
また、アルブミンモル濃度が約8μM(抗原過剰域)の被検溶液および約10μM(抗原過剰域)の被検溶液に、抗体溶液を混合した後の濁度は、それぞれ約0.025および0であった。これらに、さらにスルホサリチル酸水溶液を混合すると(工程(C))、濁度はそれぞれ、約0.06および0.07へと増加した。
これより、抗原過剰域においても、スルホサリチル酸混合後は、抗体溶液のみを混合した時より濁度が増加することがわかった。この増加後の濁度は、アルブミンモル濃度がゼロの被検溶液に抗体溶液を混合し、さらにスルホサリチル酸を混合した場合の濁度、すなわち抗体のみを含む被検溶液の濁度0.024よりは大きかった。さらに、抗原濃度に応じて、濁度も増加した。
さらに高濃度域では、抗原モル濃度と抗体モル濃度の合計モル濃度をアルブミン単体のモル濃度とみなし、図4から読み取った時の濁度をほぼ示した。例えば、アルブミンモル濃度が30μMの場合は、濁度は約0.115を示した。なお、上記では、スルホサリチル酸水溶液の混合比が9対1であったが、実質的にこの希釈効果は濁度としては観測されなかった。
これらを踏まえ、以下のようにアルブミン濃度を決定した。
抗体溶液混合後の濁度が約0.02であるときは、アルブミンモル濃度としては、図3より約1.5μMまたは約8.5μMと予想できた。つぎに、スルホサリチル酸水溶液を混合した後の濁度は増加したが、その増加量が約0.024以下の場合は、アルブミン濃度は約1.5μMと確定した。一方、濁度の増加量が0.024以上の場合は、アルブミン濃度は約8.5μMと確定した。
また、抗体溶液混合後の濁度が約0.0であるときは、アルブミンモル濃度としては、図3より約0μMまたは約10μM以上と予想された。そして、抗体溶液を混合した後には濁度が増加したが、その増加量が約0.024以下の場合は、アルブミン濃度は0μMと確定した。一方、濁度の増加量が0.024以上の場合は、アルブミン濃度は約10μM以上と確定した。そして、この濁度の増加量が0.12程度のときは、アルブミンモル濃度が30μMに近いことが予想された。
以上のように、本実施例によれば、抗体溶液混合後の濁度と、酸性溶液混合後の濁度より抗原濃度を決定できた。
本実施例に示した図3および8のような特性の場合は、抗原過剰域においても、抗体溶液混合後の濁度がゼロでない場合は、酸性溶液混合後の濁度の増加量を確認した上で、抗体溶液混合後の濁度より、抗原濃度を決定することが可能である。
また、抗体溶液混合後の濁度がゼロの場合は、酸性溶液混合後の濁度より、抗原濃度を決定することが可能である。
さらに、酸性溶液混合後に、濁度がある量以上変化した場合、抗原過剰域と判断することも可能である。
本実施例では、混合後のスルホサリチル酸の濃度が4g/dlの例を示した。これ以外の混合後濃度でも、混合後スルホサリチル酸濃度に応じて検量線を作成することによりアルブミン濃度を計測できる。また、スルホサリチル酸以外にトリクロロ酢酸、ピクリン酸などを用いた場合でも、同様の効果が得られる。
また、本実施例では、被検溶液との混合後の抗体モル濃度を、2.5×10−6mol/l(2.5μM)としたが、これ以外の濃度でも同様の効果を発揮することができる。この場合、混合後の抗体濃度を高くすると、抗原過剰域となる抗原濃度も当然高くなる。ただし、混合後の抗体濃度を高くすると、抗原の低濃度域における感度が低下する。
例えば、尿中のアルブミンの濃度は5μM以上を示すことはあるが、100μMを超えることは稀である。そこで、抗体濃度を約50μMに設定することで、抗原濃度が100μMまで、抗原過剰域(cの領域)にならないようにすることも不可能ではない。ただし、この場合、低濃度域の感度が犠牲になる。
本発明は、低濃度域の感度を犠牲にすることなく、かつ抗原過剰域においても濃度を確定できるように抗体濃度を設定すると、特に有効である。具体的には、抗体が抗原結合部位を1分子当り2個有する2価抗体で、抗原が抗原決定基を複数有する多価抗原であるとき、混合後の抗原モル濃度が抗体モル濃度の2倍以上になり得る程度に抗体濃度を高くすると効果的である。言い換えると、被検溶液が示すであろう最大の抗原モル濃度の1/2以下のモル濃度に抗体モル濃度を設定すると効果的である。
以上のように、本実施例によれば、低濃度域の感度を犠牲にすることのない抗体濃度を設定でき、また、抗原過剰域でないことを確認するため、被検溶液を希釈したり、抗体を追加添加する動作を不要にすることができ、従来必要であった高濃度被検溶液の希釈等の工程が不要になり、計測および検査の高精度化、効率化、および省力化に有効な実用的効果を高めることができる。
特に、尿中のアルブミン濃度を計測する場合、必要となる1μM程度以下の低濃度域の感度を確保しつつ、出現しうる100μM程度のアルブミン濃度でも計測でき、特に実用的である。
また、上記により確定したアルブミン濃度が所定値より小さいとき、例えば、0.2μM以下のときは、酸性溶液を混合した後の濁度の計測値を用いてこの濃度を補正したり、サンプルセルの汚れを検出したりすることができる。
すなわち、本来、上記実施例で示した抗体濃度では、スルホサリチル酸水溶液混合後の濁度は、0.024になるはずである。しかし、サンプルセルの汚染等により、計測された濁度が変化することがある。この場合、この変化量や変化比で、確定されたアルブミン濃度を補正する。
例えば、スルホサリチル酸水溶液混合後の濁度が半分の0.012であれば、抗体溶液を混合した後に計測された濁度を2倍にしてから、濃度を検量線より算出すればよい。また、アルブミン濃度がゼロである標準溶液を被検溶液として用い、これに抗体溶液および酸性溶液を混合して、濁度を計測し、混合後の抗体濃度より予想される(サンプルセルの汚染がない場合の)濁度と比較して補正してもよい。
なお、上記ではサンプルセル中の被検溶液に抗体溶液を混合した例を示したが、先にサンプルセルに抗体溶液を入れておき、これに被検溶液を混合しても同様の効果得られる。ただし、この場合被検溶液が有する当初の濁度によって計測値が影響を受けることがある。
以上のように、本発明によれば、抗原過剰域においても、抗原濃度を確定でき、高信頼性で実用性が高い省力化された溶液濃度の測定、とりわけ尿中のアルブミン濃度の測定が可能になる。
産業上の利用の可能性
本発明に係る溶液濃度計測方法は、抗原としてアルブミンを含む尿を被検溶液として用いることにより、尿検査方法として好適に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施の形態に用いた計測装置の概略構成を示す側面図である。
図2は、図1に示す計測装置の光学系の概略上面図である。
図3は、被検溶液のアルブミン濃度と、抗体溶液混合後の前記被検溶液の濁度との関係を示す図である。
図4は、被検溶液のアルブミン濃度と、タンニン酸水溶液またはスルホサリチル酸混合後の前記被検溶液の濁度との関係を示す図である。
図5は、抗原と抗体の結合の様子を概念的に示した図である。
図6は、図5の(a)〜(c)に示した状態と、被検溶液の抗原濃度および濁度の関係とを示す図である。
図7は、工程(D)において計測した濁度TDおよび工程(B)において計測した濁度TBの差(TD−TB)と、被検溶液の抗原濃度との関係を示す図である。
図8は、被検溶液のアルブミン濃度と、スルホサリチル酸水溶液混合後の前記被検溶液の濁度との関係を示す図である。
本発明は、被検溶液中に溶解している抗原の濃度、特に尿中のアルブミンの濃度を計測する方法に関する。
背景技術
従来の被検溶液に含まれる抗原の濃度を計測する方法においては、まず、抗原に特異的に結合する抗体をこの被検溶液に混合し、抗原抗体反応によって抗原抗体複合物を生成させる。この生成にともなって被検溶液が混濁することから、その濁度に基づいて抗原の濃度を求める。この方法では、抗原モル濃度と抗体モル濃度が等しい領域(当量域)から抗原モル濃度に比べて抗体モル濃度が大きい領域(抗体過剰域)で計測が行われていた。
このような領域で計測が行われていた理由を、図5および6を参照し、かつポリクローナル抗体を用いた例に代表させて説明する。
複数個の抗原決定基を有する多価抗原を含む溶液と、2個の抗原結合部位を有する2価抗体を含む溶液とを混合すると、抗原と抗体とが結合する。ここで、抗体モル濃度を一定にして抗原モル濃度を増加させた場合、抗原と抗体との結合の様子がどのように変化するかを図5に示す。
図5は、抗体モル濃度を一定にして抗原モル濃度を増減させた場合の、抗原と抗体との結合の様子を概念的に示した図である。抗原モル濃度が低く、混合後の抗体モル濃度が抗原モル濃度よりも充分大きい場合(抗体過剰域)の結合の様子は、図5の(a)に示される。
また、抗原モル濃度を増加させ、混合後の抗体モル濃度が抗原モル濃度と同程度になる場合(当量域)は、、図5の(b)に示すように、抗原が抗体によって架橋されて大きな粒子が生成する。
さらに、抗原モル濃度を増加させ、混合後の抗体モル濃度が当量域よりも小さくなった場合(抗原過剰域)の結合の様子は、図5の(c)に示される。このとき、抗体1つに対して最大2個の抗原が結合するため、抗体モル濃度が抗原モル濃度よりも充分小さくなるのは、抗体モル濃度が抗原モル濃度の約1/2以下の場合である。すなわち、混合後の抗体モル濃度が抗原モル濃度の約1/2より小さくなれば抗原過剰域が得られ、この場合の結合の様子は図5の(c)に示される。もちろん、この1/2という基準は、抗原と抗体の結合定数によって異なる。
つぎに、図5の(a)〜(c)に示した結合の様子に対応する被検溶液の濁度を図6に示す。図6に示すように、aの領域においては、抗原濃度に応じて濁度が増加するが、bの領域においては濁度が抗原濃度に対してほとんど変化しなくなる。そして、cの領域においては、抗原濃度が増加するにつれて濁度が低下する。
したがって、抗原濃度を計測するためには、図6のaの領域で作成した検量線に基づいて、濁度の計測値から抗原濃度を算出するのが好ましいことになる。
この場合、抗体モル濃度は、被検溶液が示し得る最大抗原モル濃度の約1/2以上になるように、望ましくは抗原モル濃度よりも高くなるように設定する必要がある。言い換えると、混合後の被検溶液中の抗原モル濃度が抗体モル濃度よりも高くなることがないように抗体モル濃度を設定する必要がある。すなわち、少なくとも混合後の被検溶液中の抗原モル濃度が抗体モル濃度の約2倍以上になることがないように抗体モル濃度を設定する必要があるということになる。もちろん、この2倍という基準は、抗原と抗体の結合定数などによって異なる。
このように、従来の被検溶液に含まれる抗原の濃度を計測する方法においては、抗体過剰域から当量域で抗原濃度を計測する必要があるので抗体濃度を高くしておく必要がある。この場合、低濃度域での感度が犠牲にされることがあるという問題がある。
また、実際に被検溶液が抗原過剰域、すなわち図6のcの領域にないことを確認するために、または抗原過剰域を無くすために、被検溶液を希釈したり、被検溶液に抗体をさらに添加する操作を行っている。これにより、計測方法の工程を煩雑にするという問題があった。
さらに、濁度を計測する際に被検溶液を保持するサンプルセルは、繰り返し使用されると汚染され、濁度の計測値が変化することがある。
本発明は、上記の問題を解決して、低濃度域の感度を犠牲にすることのない抗体濃度を設定し得る溶液濃度計測方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、抗原過剰域、すなわち図6のcの領域の有無を確認するために、被検溶液を希釈したり、抗体を追加添加する操作が不要な溶液濃度計測方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、サンプルセルの汚染による濁度の計測誤差を補正することのできる溶液濃度計測方法を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明は、(A)サンプルセル内において、被検溶液に、前記被検溶液中の特定の抗原と結合する抗体を混合する工程、(B)抗体混合後の前記被検溶液の濁度を計測する工程、(C)抗体混合後の前記被検溶液に、前記被検溶液中のタンパク質成分を凝集させる酸性溶液を混合する工程、および(D)前記酸性溶液混合後の被検溶液の濁度を計測する工程を、工程(A)〜(D)の順で実施し、工程(B)で得られた濁度および工程(D)で得られた濁度から前記被検溶液の抗原濃度を算出することを特徴とする溶液濃度計測方法に関する。
前記溶液濃度計測方法においては、工程(A)において混合する前記抗体の量が、前記被検溶液の濁度と抗原濃度との関係を示す曲線において抗原過剰域を形成する量であるのが好ましい。すなわち、抗体を前記被検溶液に混合しても、遊離した抗原が存在していてもよい。
例えば、前記抗体が抗原結合部位を1分子当り2個有する2価抗体であり、工程(B)において、前記被検溶液中の抗原モル濃度が抗体モル濃度の2倍以上であるのが好ましい。
また、前記溶液濃度計測方法においては、工程(B)で得られた濁度と工程(D)で得られた濁度との差に基づいて抗原過剰か否かを判断するとともに、工程(B)で得られた濁度から算出された前記被検溶液の抗原濃度を確定するのが好ましい。
また、工程(B)で得られた濁度と工程(D)で得られた濁度とから算出された前記被検溶液の抗原濃度が抗原過剰域以下である場合、工程(D)で得られた濁度に基づいて前記サンプルセルの汚れを判定するのが好ましい。
前記酸性溶液は、スルホサリチル酸、トリクロロ酢酸およびピクリン酸、タンニン、タンニン酸およびm−ガロイル没食子酸よりなる群から選択される少なくとも1種の水溶液であるのが好ましい。
前記酸性溶液混合後の前記被検溶液のスルホサリチル酸、トリクロロ酢酸およびピクリン酸、タンニン、タンニン酸およびm−ガロイル没食子酸よりなる群から選択される少なくとも1種の濃度は5×10−3〜5g/dlであるのが好ましい。
工程(C)において、前記被検溶液または前記酸性溶液にさらにpH調整剤を添加して前記被検溶液のpHを1.5〜5.8に調節するのが好ましい。
前記pH調整剤は、フタル酸水素カリウム、酢酸、クエン酸およびアスコルビン酸よりなる群から選択されるのが好ましい。
また、工程(B)で得られた濁度が実質的にゼロの場合、工程(D)で得られた濁度から前記被検溶液の抗原濃度を算出するのが好ましい。
また、前記被検溶液が尿であり、前記抗原がアルブミンである場合、前記溶液濃度計測方法は、尿検査方法として用いることが可能である。
前記被検溶液の濁度計測に使用する光の波長は、500nm以上であるのが好ましい。
さらに、本発明の溶液濃度計測方法ないし尿検査方法は、被検溶液に光を照射する光源と、前記光が前記被検溶液を透過するように前記被検溶液を保持するサンプルセルと、前記被検溶液を透過した前記光を検知する光センサ1および/または前記光が前記被検溶液中を伝搬する際に発生した散乱光を検知するように配置した光センサ2と、前記サンプルセル中の前記被検溶液に、前記抗体を含んだ抗体溶液を混合する混合機1と、前記サンプルセル中の前記被検溶液に、前記酸性溶液を混合する混合機2と、前記混合機1および2を制御し前記光センサ1および/または光センサ2の出力信号を解析するコンピュータとを備え、前記抗体溶液および酸性溶液の混合前後の前記光センサ1および/または光センサ2の出力信号より、前記被検溶液中の抗原濃度を計測する溶液濃度計測装置により実施することができる。
発明を実施するための最良の形態
タンパク質を含む溶液に、スルホサリチル酸、トリクロロ酢酸、ピクリン酸、タンニン、タンニン酸、m−ガロイル没食子酸などを添加すると、タンパク質成分が凝集して溶液全体が混濁する。
ここでいうタンパク質成分には、アルブミンおよびグロブリンなどの抗原だけでなく、抗体も含まれる。このような酸を含む溶液を被検溶液に混合して濁度を計測することにより、被検溶液中のタンパク質成分濃度を計測することができる。
例えば、尿を被検溶液とした場合には、これに酸性溶液を混合してアルブミンおよびグロブリンを凝集させることにより光学特性(濁度)を変化させ、酸性溶液混合前後の散乱光強度の差(酸性溶液混合後の散乱光強度−酸性溶液混合前の散乱光強度)および/または酸性溶液混合前後の透過光強度の比(酸性溶液混合後の透過光強度/酸性溶液混合前の透過光強度)から、尿中のアルブミンおよびグロブリンの濃度を求めることができる。
また、ここで挙げたタンニンは、広く植物界に分布し、多数のフェノール性ヒドロキシル基をもつ複雑な芳香族化合物の総称(株式会社東京化学同人発行の化学辞典)であり、約600〜2000の分子量を有する(共立出版株式会社発行の化学大辞典)。タンニン酸は、式C76H52O46で表され、CAS登録番号が1401−55−4の物質である。また、m−ガロイル没食子酸は式C14H10O9で表され、CAS登録番号が536−08−3の物質である。
上記の酸性溶液を被検溶液に混合した場合の濁度は、タンパク質濃度に応じて増加する。すなわち、タンパク質濃度が増加すれば濁度が増加する。ただし、酸の種類および/または濃度を調節することによって、抗体だけを凝集させないことも可能である。
一方、タンパク質に結合する2価抗体を含んだ抗体溶液を被検溶液と混合した場合、抗体過剰域から当量域においてはタンパク質濃度が増加すれば濁度も増加するが、タンパク質濃度が高い抗原過剰域においては、タンパク質濃度が増加しても濁度は低下する。
これらのことを鑑み、本発明おいては、まず、例えば被検溶液に2価抗体を含む抗体溶液を混合する(工程(A))。これによって被検溶液中の多価抗原と抗体が結合して被検溶液が混濁するので、このときの濁度TBを計測する(工程(B))。
しかし、この状態では、被検溶液が抗原モル濃度が抗体モル濃度よりも十分高い抗原過剰域に相当している可能性があるため、被検溶液にさらに酸性溶液を混合する(工程(C))。そして、酸性溶液混合後の被検溶液の濁度TDを計測する(工程(D))。ここで、被検溶液が当初含んでいた抗原の濃度に応じた濁度が生成される。
より具体的に述べると、工程(C)において酸性溶液が混合されても抗体が凝集しない場合、抗原過剰域に相当していると、酸性溶液と混合した時点でこの抗原濃度に応じて濁度が大きく増加する。抗原過剰域でない場合は、濁度は、ほとんど変化しない。
また、酸性溶液が混合されることによって抗体が凝集する場合は、抗体濃度に応じて濁度が増加すると同時に、抗原過剰域に相当していると、この抗原濃度に応じて濁度が大きく増加する。抗原過剰域でない場合は、抗体濃度に応じて濁度が増加するのみである。
つまり、工程(B)の濁度をTB、工程(D)における濁度をTDとすると、以上の現象は以下のようにまとめることができる。
(1)酸性溶液の混合によって抗体が凝集しない場合
▲1▼被検溶液の抗原濃度が抗原過剰域にある場合
TD=TB+TAG
(TAGは抗原濃度に応じて増加する濁度)
▲2▼被検溶液の抗原濃度が抗体過剰域〜当量域にある場合
TD≒TB
(2)酸性溶液の混合によって抗体が凝集する場合
▲1▼被検溶液の抗原濃度が抗原過剰域にある場合
TD=TB+TAB+AG
(TAB+AGは抗体および抗原濃度に応じて増加する濁度)
▲2▼被検溶液の抗原濃度が抗体過剰域〜当量域にある場合
TD=TB+TAB
(TABは抗体濃度に応じて増加する濁度)
なお、抗体が酸性溶液が混合されて凝集するかしないかは、当該酸の種類または/および酸の濃度に依存する。
したがって、抗体の酸による凝集特性と酸性溶液を混合した後の濁度の変化量から、上記(1)および(2)にしたがって被検溶液が抗原過剰域にあるか否かを判定することができ、同時に抗原過剰域にある場合は、その濃度を決定することができる。
このように、被検溶液に抗体溶液を混合した時に得られる濁度と、さらに酸性溶液を混合した時に得られる濁度とから、被検溶液の抗原濃度を決定することができる。抗原としては、酸性溶液を混合することにより凝集するもので、例えばアルブミンがあげられる。
ここで、工程(D)の酸性溶液の混合によって抗体が凝集しない場合である上記(1)における、工程(D)の濁度TDおよび工程(B)の濁度TBの差(TD−TB)と被検溶液の抗原濃度との関係を図7に示す。
抗体溶液を添加する工程(B)は既に行われており、TBは一定である。工程(C)において酸性溶液を混合しても、抗体過剰域〜当量域(図7のXの部分)においてはさらに被検溶液中に凝集するものが非常に少ないため、TD≒TBが成り立つ。したがって、図7に示すXの部分において検量線はほぼ平行に伸びるが、例えば被検溶液が尿の場合は、抗体と結合してない遊離の抗原や、抗原および抗体以外のタンパク質が凝集し得るため、抗原濃度の上昇に伴って濁度も若干上昇する(≒TB+α)。したがって、いずれの場合においても、TDはTB、TAG、TAB+AGまたはTABの他に、抗体と結合していない遊離の抗原や、抗原および抗体以外のタンパク質に起因する濁度αも含むことになる。ただし、計測装置の精度によってはこのαを無視することができる。
一方、抗原過剰域(図7のYの部分)においては、抗原濃度が上昇するとともに、工程(D)におけるTDの上昇にともなって、TD−TBも上昇する。
本発明による溶液濃度計測方法により、尿、髄液、血清、血漿および唾液などの体液、乳製品、酒および食酢などの流体状食品、培養液などの産業用液、ならびに人工透析液およびその廃液などに含まれるアルブミンなどのタンパク質の濃度を求めることができる。
以下に、実施例に代表させて本発明をより詳しく説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
実施例1
本実施例においては、尿を被検溶液として用い、尿中のアルブミン濃度を計測した。また、酸性溶液としてタンニン酸水溶液を用いた。具体的には、ウサギ由来のポリクローナルヒトアルブミン抗体を含んだ抗体水溶液を被検尿と混合した。この混合後の抗体濃度が約0.375mg/mlになるように、抗体水溶液の抗体濃度と混合比率を設定した。
ここで、前記ポリクローナル抗体は2価の抗体でその分子量は約15万であった。したがって混合後の抗体モル濃度は2.5×10−6mol/l(2.5μM)であった。また、試薬であるタンニン酸水溶液は3×10−3M(mol/L)(≒0.5g/dl)の濃度を有し、被検溶液の容量99に対して1の比率で混合した。したがって、混合後のタンニン酸の濃度は3×10−5M(≒5×10−3g/dl)であった。
本実施例について、図1〜4を用いて説明する。図1は、本発明の溶液濃度の計測方法に使用する装置の概略構成を示す側面図であり、図2はその光学系を示す上面図である。これらの図において、半導体レーザモジュールからなる光源1は、波長780nm、強度3.0mW、ビーム直径2.0mmの略平行光2を投射する。サンプルセル3は、ガラス製で、上部が開放されていて開口部を有する。そして、サンプルセル3が、底面が10×10mm、高さが50mmの直方体状容器であり、側面に透明な光学窓を有する。
サンプルセル3の内部に収容された被検溶液に略平行光2を照射することができ、また、透過光および散乱光7を外部に取り出すことができる。被検溶液を透過した光を検知する光センサ4および被検溶液中を光が伝搬する際に発生した散乱光7を検知する光センサ5により、それぞれ透過光および散乱光が検知される。コンピュータ6は、光源1を制御するとともに、光センサ4および5の出力信号を解析する。サンプルセル3の底部には、注入口8が設けられており、この注入口8からサンプルセル3中の被検溶液に抗体溶液が混合される。ピペッタ9は、注入口8から抗体溶液を被検溶液へ混合し、コンピュータ6によって制御される。また、ピペッタ10は、酸性溶液をサンプルセル3中の被検溶液に混合し、コンピュータ6によって制御される。
上記の計測装置を用いて、尿のアルブミン濃度を計測した。まず、被検溶液1.485mlをサンプルセル3へ導入した。コンピュータ6が光源1を動作させ、同時に光センサ4および5の出力信号のモニターを開始した。つぎに、コンピュータ6がピペッタ9を制御し、注入口8から抗体溶液1.485mlをサンプルセル3へ混合した(工程(A))。この抗体溶液の抗体モル濃度は5×10−6mol/l(5μM)であったので、被検溶液との混合後の抗体モル濃度は、2.5×10−6mol/l(2.5μM)になった。この抗体溶液の混合の前後の光センサ4および5のそれぞれの出力信号の計測値から濁度を求めた(工程(B))。
ここで、抗体溶液混合後で酸性溶液混合前の濁度と被検溶液のアルブミン濃度の関係を図3に示した。図3において、横軸はアルブミンモル濃度、縦軸は濁度を示している。
これから明らかなように、アルブミンモル濃度が5×10−6mol/l(5μM)以上になると、抗原過剰域となり、アルブミン濃度が増加すると濁度が低下した。尿のアルブミンモル濃度は5×10−6mol/l(5μM)以上になることがあり、なかには、5×10−5mol/l(50μM)を超える場合もあるため、このように、抗体溶液を混合しただけでは、抗原過剰域が存在する可能性があり、アルブミン濃度を確定できなかった。
つぎに、工程(C)に対する参考例として被検溶液にタンニン酸水溶液を混合した。
ここで、まず抗体溶液が混合される前の被検溶液にタンニン酸水溶液を混合した。被検溶液2.97mlをサンプルセル3へ導入し、コンピュータ6が光源1を動作させ、同時に光センサ4および5の出力信号のモニターを開始した。つぎに、コンピュータ6でピペッタ10を制御して、タンニン酸水溶液0.03mlをサンプルセル3へ混合した。このときの、タンニン酸水溶液の濃度は3×10−3M(≒0.5g/dl)で、被検溶液とタンニン酸水溶液を混合した後のタンニン酸の濃度は3×10−5M(≒5×10−3g/dl)であった。これにより、アルブミンが凝集して被検溶液が濁り、透過光強度が低下し、散乱光強度が増加した。
この混合の前後の光センサ4および5のそれぞれの出力信号の計測値より濁度を求め、濁度と被検溶液のアルブミン濃度の関係を図4に示した。図4で、横軸はアルブミンモル濃度、縦軸は濁度を示している。これから明らかなように、濁度はアルブミン濃度が増加すると、これに応じて増加する。したがって、濁度を計測することで、アルブミン濃度を決定することができることがわかった。
つぎに、被検溶液に抗体溶液を混合した後にタンニン酸水溶液を混合した(工程(C))。上記したタンニン酸濃度では、抗体は凝集せず、以下のようになった。
アルブミンモル濃度が約2μM(抗体過剰域〜当量域)の被検溶液に抗体溶液を混合した後、当該被検溶液の濁度は0.025であった。これは、図3に示したとおりである。つぎに、さらにタンニン酸水溶液を混合したところ、濁度は約0.025のままで変化しなかった。
同様に、アルブミンモル濃度が約4μMの被検溶液に抗体溶液を混合したところ、濁度は0.038で、さらにタンニン酸水溶液を混合してもこの濁度は約0.038のままで変化しなかった。
これより、抗体過剰域から当量域においては、濁度は、ここで示した計測精度においては、変化しないことがわかった。
また、アルブミンモル濃度が約8μM(抗原過剰域)の被検溶液および約10μM(抗原過剰域)の被検溶液に、抗体溶液を混合した後の濁度は、それぞれ約0.025および0であった。これらにさらにタンニン酸水溶液を混合すると(工程(C))、濁度はそれぞれ0.04および0.06へと増加した。
これより、抗原過剰域においては、タンニン酸混合後は、抗原濃度に応じた濁度を示すことがわかった。なお、上記では、タンニン酸水溶液の混合比が99対1であったため、実質的にこの希釈効果は濁度としては観測されなかった。
これらを踏まえ、以下のようにアルブミン濃度を決定した。
抗体溶液混合後の濁度が約0.02であるときは、アルブミンモル濃度としては、図3より約1.5μMまたは約8.5μMと予想できた。つぎにタンニン酸水溶液を混合した後の濁度が、約0.02のままで変化しなかった場合は、アルブミン濃度は約1.5μMと確定した。一方、濁度が増加した場合は、アルブミン濃度は約8.5μMと確定した。
また、抗体溶液混合後の濁度が約0.0である時は、アルブミンモル濃度としては、図3より約0μMまたは約10μM以上と予想された。そして抗体溶液を混合後の濁度が0のままで変化しなかった場合は、アルブミン濃度は約0μMと確定した。一方、濁度が約0.06まで増加すると、アルブミン濃度は約10μM以上と確定した。ここで、濁度が約0.1まで増加すると、アルブミンモル濃度は20μMに近いことが予想できた。
以上のように、本実施例によれば、抗体溶液混合後の濁度と、酸性溶液混合後の濁度より抗原濃度を決定できた。
本実施例に示した図3および4のような特性の場合は、抗原過剰域においても、抗体溶液混合後の濁度がゼロでない場合は、酸性溶液混合後の濁度を確認した上で、抗体溶液混合後の濁度より、抗原濃度を決定することが可能であった。
また、抗体溶液混合後の濁度がゼロの場合は、酸性溶液混合後の濁度より、抗原濃度を決定することが可能であった。さらに、酸性溶液混合後に、濁度がある量以上変化した場合、抗原過剰域と判断することも可能であった。
つぎに、上記酸性溶液にさらに酸を添加して、被検溶液に混合後の被検溶液のpHを1.5〜5.8にすると、高いアルブミンモル濃度(約20μM以上)でも動作が安定した。添加する酸として、フタル酸水素カリウム、酢酸、クエン酸、アスコルビン酸などが、計測動作の安定性、再現性が特に良かった。
本実施例では、抗体溶液または酸性溶液混合前の散乱光強度、すなわち光センサ5の出力信号と、混合後300秒後の光センサ5の出力信号の差を濁度とした。図3および4の縦軸はこれを表わしている。この濁度は透過光強度に基づいて求めてもよい。例えば、混合前後の透過光強度の比より濁度を決定してもよい。
さらに、散乱光強度および透過光強度双方を利用して濁度を決定してもよい。すなわち、上記双方の強度を計測することにより、低濃度域の被検溶液については、散乱光強度の計測値から溶液濃度を算出し、高濃度域の被検溶液については、透過光強度の計測値から溶液濃度を算出することにより、実質的に高精度に測定できる被検溶液の濃度範囲、すなわちダイナミックレンジを拡大できる。このダイナミックレンジ向上の詳しい理由は、特開平11−307217号公報に記載されている。
なお、本実施例では、タンニン酸水溶液試薬の濃度が3×10−3M(≒0.5g/dl)で、被検溶液の容量99に対して1の比率で混合することで、混合後のタンニン酸の濃度が3×10−5M(≒5×10−3g/dl)の例を示した。これ以外の混合後濃度でも、3×10−5〜3×10−2M(5×10−3〜5g/dl)の範囲にあれば、各混合後タンニン酸濃度に応じて検量線を作成することによりタンパク質濃度を計測できた。
上記の範囲よりも、タンニン酸が低濃度の場合は、タンパク質が凝集しないこともあり、安定的な計測が難しい。また、上記の範囲よりも、タンニン酸が高濃度の場合は、抗体が凝集して混濁することがあったり、凝集したタンパク質が急激に沈殿して、混濁が不均一になり略平行光2付近では濃度に応じて混濁がしないこともあり、安定的な計測が難しい。したがって、上記濃度範囲で計測することが実用上望ましい。
また、被検溶液と試薬の混合比率が異なると、異なる検量線が得られるため、この混合比率に応じた検量線を作成する必要がある。同様に、タンニンおよびm−ガロイル没食子酸を用いた場合でも、混合後の濃度が、5×10−3〜5g/dlの範囲にあれば、同様に動作させることが可能である。
また、本実施例では、被検溶液との混合後の抗体モル濃度が、2.5×10−6mol/l(2.5μM)の例を示したが、これ以外の濃度でも同様の効果を発揮することができる。この場合、混合後の抗体濃度を高くすると、抗原過剰域となる抗原濃度も当然高くなる。ただし、混合後の抗体濃度を大きくすると、抗原の低濃度域における感度が低下する。
例えば、尿中のアルブミンの濃度は5μM以上を示すことはあるが、100μMを超えることは稀である。そこで、抗体濃度を約50μMに設定することで、抗原濃度が100μMまで、抗原過剰域(cの領域)にならないようにすることも不可能ではない。ただし、この場合、低濃度域の感度が犠牲になる。
本発明は、低濃度域の感度を犠牲にすることなく、かつ抗原過剰域においても濃度を確定できるように抗体濃度を設定すると、特に有効である。具体的には、抗体が抗原結合部位を1分子当り2個有する2価抗体で、抗原が抗原決定基を複数有する多価抗原であるとき、混合後の抗原モル濃度が抗体モル濃度の2倍以上になり得る程度に抗体濃度を高くすると効果的である。言い換えると、被検溶液が示すであろう最大の抗原モル濃度の1/2以下のモル濃度に抗体モル濃度を設定すると効果的である。
以上のように、本実施例によれば、低濃度域の感度を犠牲にすることのない抗体濃度を設定でき、また、抗原過剰域でないことを確認するため、被検溶液を希釈したり、抗体を追加添加する動作を不要することでき、従来必要であった高濃度被検溶液の希釈等の工程が不要になり、計測および検査の高精度化、効率化、および省力化に有効な実用的効果を高めることができる。
特に、尿中のアルブミン濃度を計測する場合、必要となる1μM程度以下の低濃度域の感度を確保しつつ、出現し得る100μM程度のアルブミン濃度でも計測でき、特に実用的である。
実施例2
本実施例では、尿を被検溶液として用い、尿中のアルブミン濃度を計測した。また、酸性溶液として濃度が40g/dlのスルホサリチル酸水溶液を用いた。
具体的には、実施例1と同様に、ウサギ由来のポリクローナルヒトアルブミン抗体を含んだ抗体水溶液を被検尿と混合した。この混合後の抗体濃度は約0.375mg/ml(2.5μM)であった。また、スルホサリチル酸水溶液を、被検溶液の容量9に対して1の比率で混合した。したがって、混合後のスルホサリチル酸の濃度は4g/dlであった。
本実施例について、図1〜4を用いて説明する。本実施例は、実施例1と同様に、図1および2に示した計測装置を用いた。上記の計測装置を用いて、以下のように尿を被検溶液としてアルブミン濃度を計測した。
まず、被検溶液1.35mlをサンプルセル3へ導入し、コンピュータ6が光源1を動作させた。そして、これと同時に光センサ4および5の出力信号のモニターを開始した。つぎに、コンピュータ6がピペッタ9を制御して、注入口8から抗体溶液1.35mlをサンプルセル3へ混合した(工程(A))。この抗体溶液の抗体モル濃度は、5×10−6mol/l(5μM)であったので被検溶液との混合後の抗体モル濃度は、2.5×10−6mol/l(2.5μM)になった。この抗体溶液の混合の前後の光センサ4および5のそれぞれの出力信号の計測値から濁度を求めた(工程(B))。
ここで、酸性溶液を混合する前の濁度と被検溶液のアルブミン濃度の関係は、混合後の抗体濃度が実施例1と同じであるため、図3のようになった。実施例1と同様に、抗体溶液を混合しただけでは、抗原過剰域が存在する可能性があり、アルブミン濃度を確定できなかった。
つぎに、被検溶液にスルホサリチル酸水溶液を混合した。ここで、まず抗体溶液が混合される前の被検溶液にスルホサリチル酸水溶液を混合した。被検溶液2.7mlをサンプルセル3へ導入し、コンピュータ6で光源1を動作させ、同時に光センサ4および5の出力信号のモニターを開始した。つぎに、コンピュータ6でピペッタ10を制御して、スルホサリチル酸水溶液をサンプルセル3へ0.3ml混合した。このときの、スルホサリチル酸水溶液は、40g/dlの濃度で、被検溶液と混合後のタンニン酸の濃度は4g/dlであった。これにより、アルブミンが凝集して被検溶液が濁り、透過光強度が低下し、散乱光強度が増加した。
この混合の前後の光センサ4および5のそれぞれの出力信号の計測値より濁度を求めた。この濁度と被検溶液のアルブミン濃度の関係は、実施例1の図4と実質的に同じになった。本実施例は、実施例1とは、酸性溶液の混合比が異なるが、酸の種類による濁度の違いにより、結果的には図4と同じアルブミン濃度−濁度特性が得られた。これから明らかなように、濁度はアルブミン濃度が増加すると、これに応じて増加した。したがって、濁度を計測することで、アルブミン濃度を決定することができることがわかった。
つぎに、被検溶液に抗体溶液を混合した後にスルホサリチル酸水溶液を混合した(工程(C))。上記した濃度のスルホサリチル酸を用いたが、実施例1とは異なり、抗原が凝集してアルブミン濃度がゼロとなっても、抗体濃度に応じて被検溶液が混濁した。すなわち、図8に示すような抗体モル濃度−濁度特性が得られた。例えば、混合後の抗体モル濃度が2.5μMのとき、濁度は0.024であった。
また、アルブミンモル濃度が約2μM(抗体過剰域〜当量域)の被検溶液に抗体溶液を混合した後の濁度は0.025であった。これは、図3のとおりである。つぎに、さらにスルホサリチル酸水溶液を混合すると、濁度は約0.04まで増加した。
同様に、アルブミンモル濃度が約4μM(抗体過剰域〜当量域)の被検溶液に抗体溶液を混合した後の濁度は0.038で、さらにスルホサリチル酸水溶液を混合すると、濁度は約0.05まで増加した。
これより、抗体過剰域から当量域においては、スルホサリチル酸溶液を混合した時点の濁度は、ここで示した計測精度においては、抗体溶液のみを混合した時よりは増加することがわかった。しかし、この濁度の増加量は、アルブミンモル濃度がゼロの被検溶液に抗体溶液を混合し、さらにスルホサリチル酸を混合した場合の濁度、すなわち、抗体のみを含む被検溶液の濁度0.024よりは小さかった。
また、アルブミンモル濃度が約8μM(抗原過剰域)の被検溶液および約10μM(抗原過剰域)の被検溶液に、抗体溶液を混合した後の濁度は、それぞれ約0.025および0であった。これらに、さらにスルホサリチル酸水溶液を混合すると(工程(C))、濁度はそれぞれ、約0.06および0.07へと増加した。
これより、抗原過剰域においても、スルホサリチル酸混合後は、抗体溶液のみを混合した時より濁度が増加することがわかった。この増加後の濁度は、アルブミンモル濃度がゼロの被検溶液に抗体溶液を混合し、さらにスルホサリチル酸を混合した場合の濁度、すなわち抗体のみを含む被検溶液の濁度0.024よりは大きかった。さらに、抗原濃度に応じて、濁度も増加した。
さらに高濃度域では、抗原モル濃度と抗体モル濃度の合計モル濃度をアルブミン単体のモル濃度とみなし、図4から読み取った時の濁度をほぼ示した。例えば、アルブミンモル濃度が30μMの場合は、濁度は約0.115を示した。なお、上記では、スルホサリチル酸水溶液の混合比が9対1であったが、実質的にこの希釈効果は濁度としては観測されなかった。
これらを踏まえ、以下のようにアルブミン濃度を決定した。
抗体溶液混合後の濁度が約0.02であるときは、アルブミンモル濃度としては、図3より約1.5μMまたは約8.5μMと予想できた。つぎに、スルホサリチル酸水溶液を混合した後の濁度は増加したが、その増加量が約0.024以下の場合は、アルブミン濃度は約1.5μMと確定した。一方、濁度の増加量が0.024以上の場合は、アルブミン濃度は約8.5μMと確定した。
また、抗体溶液混合後の濁度が約0.0であるときは、アルブミンモル濃度としては、図3より約0μMまたは約10μM以上と予想された。そして、抗体溶液を混合した後には濁度が増加したが、その増加量が約0.024以下の場合は、アルブミン濃度は0μMと確定した。一方、濁度の増加量が0.024以上の場合は、アルブミン濃度は約10μM以上と確定した。そして、この濁度の増加量が0.12程度のときは、アルブミンモル濃度が30μMに近いことが予想された。
以上のように、本実施例によれば、抗体溶液混合後の濁度と、酸性溶液混合後の濁度より抗原濃度を決定できた。
本実施例に示した図3および8のような特性の場合は、抗原過剰域においても、抗体溶液混合後の濁度がゼロでない場合は、酸性溶液混合後の濁度の増加量を確認した上で、抗体溶液混合後の濁度より、抗原濃度を決定することが可能である。
また、抗体溶液混合後の濁度がゼロの場合は、酸性溶液混合後の濁度より、抗原濃度を決定することが可能である。
さらに、酸性溶液混合後に、濁度がある量以上変化した場合、抗原過剰域と判断することも可能である。
本実施例では、混合後のスルホサリチル酸の濃度が4g/dlの例を示した。これ以外の混合後濃度でも、混合後スルホサリチル酸濃度に応じて検量線を作成することによりアルブミン濃度を計測できる。また、スルホサリチル酸以外にトリクロロ酢酸、ピクリン酸などを用いた場合でも、同様の効果が得られる。
また、本実施例では、被検溶液との混合後の抗体モル濃度を、2.5×10−6mol/l(2.5μM)としたが、これ以外の濃度でも同様の効果を発揮することができる。この場合、混合後の抗体濃度を高くすると、抗原過剰域となる抗原濃度も当然高くなる。ただし、混合後の抗体濃度を高くすると、抗原の低濃度域における感度が低下する。
例えば、尿中のアルブミンの濃度は5μM以上を示すことはあるが、100μMを超えることは稀である。そこで、抗体濃度を約50μMに設定することで、抗原濃度が100μMまで、抗原過剰域(cの領域)にならないようにすることも不可能ではない。ただし、この場合、低濃度域の感度が犠牲になる。
本発明は、低濃度域の感度を犠牲にすることなく、かつ抗原過剰域においても濃度を確定できるように抗体濃度を設定すると、特に有効である。具体的には、抗体が抗原結合部位を1分子当り2個有する2価抗体で、抗原が抗原決定基を複数有する多価抗原であるとき、混合後の抗原モル濃度が抗体モル濃度の2倍以上になり得る程度に抗体濃度を高くすると効果的である。言い換えると、被検溶液が示すであろう最大の抗原モル濃度の1/2以下のモル濃度に抗体モル濃度を設定すると効果的である。
以上のように、本実施例によれば、低濃度域の感度を犠牲にすることのない抗体濃度を設定でき、また、抗原過剰域でないことを確認するため、被検溶液を希釈したり、抗体を追加添加する動作を不要にすることができ、従来必要であった高濃度被検溶液の希釈等の工程が不要になり、計測および検査の高精度化、効率化、および省力化に有効な実用的効果を高めることができる。
特に、尿中のアルブミン濃度を計測する場合、必要となる1μM程度以下の低濃度域の感度を確保しつつ、出現しうる100μM程度のアルブミン濃度でも計測でき、特に実用的である。
また、上記により確定したアルブミン濃度が所定値より小さいとき、例えば、0.2μM以下のときは、酸性溶液を混合した後の濁度の計測値を用いてこの濃度を補正したり、サンプルセルの汚れを検出したりすることができる。
すなわち、本来、上記実施例で示した抗体濃度では、スルホサリチル酸水溶液混合後の濁度は、0.024になるはずである。しかし、サンプルセルの汚染等により、計測された濁度が変化することがある。この場合、この変化量や変化比で、確定されたアルブミン濃度を補正する。
例えば、スルホサリチル酸水溶液混合後の濁度が半分の0.012であれば、抗体溶液を混合した後に計測された濁度を2倍にしてから、濃度を検量線より算出すればよい。また、アルブミン濃度がゼロである標準溶液を被検溶液として用い、これに抗体溶液および酸性溶液を混合して、濁度を計測し、混合後の抗体濃度より予想される(サンプルセルの汚染がない場合の)濁度と比較して補正してもよい。
なお、上記ではサンプルセル中の被検溶液に抗体溶液を混合した例を示したが、先にサンプルセルに抗体溶液を入れておき、これに被検溶液を混合しても同様の効果得られる。ただし、この場合被検溶液が有する当初の濁度によって計測値が影響を受けることがある。
以上のように、本発明によれば、抗原過剰域においても、抗原濃度を確定でき、高信頼性で実用性が高い省力化された溶液濃度の測定、とりわけ尿中のアルブミン濃度の測定が可能になる。
産業上の利用の可能性
本発明に係る溶液濃度計測方法は、抗原としてアルブミンを含む尿を被検溶液として用いることにより、尿検査方法として好適に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施の形態に用いた計測装置の概略構成を示す側面図である。
図2は、図1に示す計測装置の光学系の概略上面図である。
図3は、被検溶液のアルブミン濃度と、抗体溶液混合後の前記被検溶液の濁度との関係を示す図である。
図4は、被検溶液のアルブミン濃度と、タンニン酸水溶液またはスルホサリチル酸混合後の前記被検溶液の濁度との関係を示す図である。
図5は、抗原と抗体の結合の様子を概念的に示した図である。
図6は、図5の(a)〜(c)に示した状態と、被検溶液の抗原濃度および濁度の関係とを示す図である。
図7は、工程(D)において計測した濁度TDおよび工程(B)において計測した濁度TBの差(TD−TB)と、被検溶液の抗原濃度との関係を示す図である。
図8は、被検溶液のアルブミン濃度と、スルホサリチル酸水溶液混合後の前記被検溶液の濁度との関係を示す図である。
Claims (11)
- (A)サンプルセル内において、被検溶液に、前記被検溶液中の特定の抗原と結合する抗体を混合する工程、(B)抗体混合後の前記被検溶液の濁度を計測する工程、(C)抗体混合後の前記被検溶液に、前記被検溶液中のタンパク質成分を凝集させる酸性溶液を混合する工程、および(D)前記酸性溶液混合後の被検溶液の濁度を計測する工程を、工程(A)〜(D)の順で実施し、工程(B)で得られた濁度および工程(D)で得られた濁度から前記被検溶液の抗原濃度を算出することを特徴とする溶液濃度計測方法。
- 工程(A)において混合する前記抗体の量が、前記被検溶液の濁度と抗原濃度との関係を示す曲線において抗原過剰域を形成する量であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の溶液濃度計測方法。
- 前記抗体が抗原結合部位を1分子当り2個有する2価抗体であり、工程(B)において、前記被検溶液中の抗原モル濃度が抗体モル濃度の2倍以上であることを特徴とする請求の範囲第2項記載の溶液濃度計測方法。
- 工程(B)で得られた濁度と工程(D)で得られた濁度との差に基づいて抗原過剰か否かを判断するとともに、工程(B)で得られた濁度から算出された前記被検溶液の抗原濃度を確定することを特徴とする請求の範囲第1項記載の溶液濃度計測方法。
- 工程(B)で得られた濁度と工程(D)で得られた濁度とから算出された前記被検溶液の抗原濃度が抗原過剰域以下である場合、工程(D)で得られた濁度に基づいて前記サンプルセルの汚れを判定することを特徴とする請求の範囲第1項記載の溶液濃度計測方法。
- 前記酸性溶液が、スルホサリチル酸、トリクロロ酢酸およびピクリン酸、タンニン、タンニン酸およびm−ガロイル没食子酸よりなる群から選択される少なくとも1種の水溶液であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の溶液濃度計測方法。
- 前記酸性溶液混合後の前記被検溶液のスルホサリチル酸、トリクロロ酢酸およびピクリン酸、タンニン、タンニン酸およびm−ガロイル没食子酸よりなる群から選択される少なくとも1種の濃度が5×10−3〜5g/dlであることを特徴とする請求の範囲第6項記載の溶液濃度計測方法。
- 工程(C)において、前記被検溶液または前記酸性溶液にさらにpH調整剤を添加して前記被検溶液のpHを1.5〜5.8に調節することを特徴とする請求の範囲第1項記載の溶液濃度計測方法。
- 前記pH調整剤が、フタル酸水素カリウム、酢酸、クエン酸およびアスコルビン酸よりなる群から選択されることを特徴とする請求の範囲第8項記載の溶液濃度計測方法。
- 工程(B)で得られた濁度が実質的にゼロの場合、工程(D)で得られた濁度から前記被検溶液の抗原濃度を算出することを特徴とする請求の範囲第1項記載の溶液濃度計測方法。
- 前記被検溶液が尿であり、前記抗原がアルブミンであることを特徴とする請求の範囲第1項記載の溶液濃度計測方法を用いた尿検査方法。
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