JPS6410365B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は自動車用タイヤのビードコアの構造
に関する。

自動車用タイヤのうちラジアルタイヤのカーカ
スは、バイアスタイヤのカーカスに比べて非常に
少ないタイヤコード層によつて構成されているの
で、製品タイヤのビード部の剛性を増大するため
に、タイヤの円周方向に延び、かつ硬度の大きい
ゴムからなるフイラーをビードコアの頂部に配設
している。

ラジアルタイヤのビード部の構造を第１図の断
面図によつて説明すると、１はビードコアであ
り、数本のビードワイヤによつて構成され、ビー
ド部内に配置されている。２はタイヤコードで形
成されたカーカスであり、その端部は上部ビード
コア１を包み込んでタイヤ外側の方に折り曲げら
れている。３はタイヤ外側のサイドウオール、４
はタイヤ内側で上記カーカス２を被覆するインナ
ライナーである。５は上記ビードコア１の頂辺１
ａからカーカス２に沿つて上方へ延びるフイラー
であり、硬度の大きいゴムで形成され、ビード部
の剛性をを増大させている。６は上記フイラーの
タイヤ外面側に設けたスチールチエーフア、７は
該スチールチエーフア６のタイヤ外面側に設けた
テキスタイルチエーフアであり、このテキスタイ
ルチエーフア７はビードコア１のタイヤ内面側へ
延びている。

上記のフイラー５は、ビードコア１の頂辺１ａ
に隙間なく取付ける必要があり、もしフイラー５
とビードコア頂辺１ａとの間に空隙が存在する
と、この空隙に封入されている空気はタイヤの加
硫工程においてフイラー５とビードコア頂辺１ａ
との完全な接合を妨げ、その結果、タイヤ走行時
にビード部の故障発生の原因となる。

大型ラジアルタイヤのビードコアとして、タイ
ヤ製造が容易であるとの理由から、第２図に示す
ようなバイアスタイヤ用の断面方形のビードコア
８が使用されることがある。この断面方形のビー
ドコア８は、ビードコア頂辺とフイラーとの間に
空隙を生ずることなく接合されるが、円筒形の成
形ドラムで円筒状に成形された第１次成形グリン
タイヤを、次の第２次成形工程および加硫工程に
おいてトロイダル状に変形する際に、ビードコア
とこれを包囲するカーカスとの間で必然的に生じ
る滑りのためにビードコアが変形し、製品タイヤ
のビード部に形状の不斉合部分を生じ、ビード部
の故障やユニフオミテイ不良の原因となる。

断面方形のビードコアには上記のような欠点が
あるので、一般にラジアルタイヤには、第３図に
示すような断面正六角形のビードコア９が使用さ
れている。この断面正六角形のビードコア９は、
第４図に示すように、フイラー５の基部５ａに形
成した脚部５ｂが長く、この脚部５ｂがビードコ
ア９の上部側辺９ｂ，９ｂに十分に接合し、前記
に説明したタイヤ製造時のビードコア９とフイラ
ー５の滑りによるビード部の変形を防止すること
ができるが、脚部５ｂが長いので、ビードコア９
にフイラー５を圧接する際にビードコア頂辺９ａ
とフイラー基部５ａとの間に空隙１０を生じて空
気を残留し易い欠点があつた。この断面正六角形
の場合に、第５図に示すようにフイラー基部５ａ
に形成した脚部５ｂを片側のみにすることが考え
られるが、この場合は、第１図においてタイヤ外
面側に折り曲げられたカーカス端部に対応するタ
イヤ外面側部分１１の容積が不足してこの外面側
部分１１に空気が残留し易くなるという欠点があ
つた。そして、断面を正六角形に形成し、頂辺９
ａをタイヤ軸方向と平行に向けたときは、タイヤ
軸方向の内側端および外側端にそれぞれ上下の側
辺で形成される角部が形成されるので、周囲のカ
ーカスおよびゴム層に損傷を与え易いという問題
があつた。特に、特開昭53−91205号公報に開示
されているように、断面五角形または六角形のビ
ードコアをタイヤ軸方向に長い扁平な形状に、か
つ上下を非対称に形成したときは、タイヤ軸方向
の内側端および外側端に上下の側辺で形成される
角部が鋭くなつて一層損傷を与え易いという問題
があつた。

この発明は、上記の各種断面形状のビードコア
欠点を除去し、多角形断面であつて、しかもビー
ドコアにフイラーを圧接する際に空気の残留が無
く、かつカーカス等に与える損傷が少ないビード
コアを提供するものである。

すなわちこの発明は、多数本のビードワイヤか
ら構成された断面多角形状のビードコアにおい
て、その断面がタイヤ半径方向の中心線に対して
対称であると共に、タイヤ円周方向に巻かれる数
本のビードワイヤをタイヤ回転軸方向に平行に配
列したワイヤ層をタイヤ半径方向に多数層配設し
た不等辺の八角形であり、かつ八角形を形成する
タイヤ半径方向の最外辺の長さが他のいずれの辺
の長さよりも長く、最外辺に続く上部側辺の長さ
が他のいずれの辺の長さよりも短く、さらに上部
側辺が最外辺と鈍角をなすことを特徴とする自動
車用タイヤのビードコアの構造である。

この発明において、断面八角形を形成するタイ
ヤ半径方向最外辺（頂辺）および最内辺（底辺）
は、タイヤ回転軸方向に平行であり、かつ最外辺
の長さは他のいずれの辺の長さよりも長く、この
最外辺に続く両側の上部側辺の長さは他のいずれ
辺よりも短く、さらに上部側辺は最外辺と鈍角を
なしている。上記の頂辺および底辺がタイヤ回軸
方向に平行であることにより、ビードコア下方の
圧縮力が均一となり、ビード部の耐久性が向上す
る。反対に上記の頂辺および底辺が平行でない場
合は、上記の圧縮力が不均一となるためビード部
のセパレーシヨンの原因となる。

また、上記八角形の頂辺を最も長く、その両側
の上部側辺を最も短く形成したので、第５図のフ
イラー５の脚部５ｂの長さが短くなり、そのため
ビードコアにフイラーを圧接するために脚部５ｂ
を押圧したときにフイラー基部５ａが浮き難く、
空隙１０の形成が防止される。これに対して頂辺
を短く、上部側辺を長く形成したときは空隙１０
ができて空気が残留することになる。さらに、上
記の上部側辺が最短でなく、かつ頂辺に対して鋭
角をなす場合および両側の上部側辺が平行に形成
されている場合は、ビードコアを囲むカーカスが
ビードコアの角部で損傷を受け易くなる。そし
て、上記の断面形状は、タイヤ半径方向の中心線
に対して対称に形成されることにより、左右１対
のビードコアに対して互換性が生じ、しかも八角
形であることにより、タイヤ軸方向の内側端およ
び外側端に、頂辺および底辺とほぼ垂直な中間側
辺が形成され、従来の上部側辺と下部側辺とで形
成されていた鋭い角部が消失し、そのため周囲の
カーカスの受ける損傷が減少する。なお、ビード
コアのビードワイヤの全本数は、タイヤの大き
さ、ビードワイヤの直径、抗張力などによつて設
定される。

以下にこの発明の実施例を第６図ないし第９図
によつて説明する。

第６図に示す実施例１のビードコア１２は、８
本のビードワイヤをタイヤの回転軸方向に平行に
配列した第１層１２―１を形成し、第１層１２―
１の上に９本のビードワイヤからなる第２層１２
―２を形成し、同様にビードワイヤを順次１本ず
つ増加してビードワイヤ12本からなる第５層１２
―５を形成し、次いでビードワイヤ１本の増減を
繰返して第９層１２―９を形成したのち、ビード
ワイヤを１本ずつ減少して第10層１２―１０およ
び第11層１２―１１を形成して構成されている。
このビードコア１２の断面形状は、頂辺１２ａ、
左右の上部側辺１２ｂ、左右の互いに平行な中央
側辺１２ｃ、下部側辺１２ｄおよび底辺１２ｅか
らなり、頂辺１２ａが他の辺に比べて最も長く形
成されておりタイヤ回転方向の中心線に対しては
非対称に、タイヤ半径方向の中心線Ｂ―Ｂに対し
ては対称の不等辺八角形に形成されている。

このビードコア１２には、第７図に示ように、
フイラー５の基部に形成した一方の短い脚部５ｃ
を、ビードコア１２の一方の上部側辺１２ｂに圧
接したのち、フイラー５の他方の短い脚部５ｄを
ビードコア１２の他方の上部側辺１２ｂに圧接す
ることによつて、第８図に示すようにフイラーの
基部とビードコア１２の頂辺１２ａとの間に空気
を残すことなくフイラー５を接合することがで
き、しかもビードコアは適当な容積を有してい
る。

第９図に示す実施例２のビードコア１３は、底
辺１３ｅの第１層１３―１を７本のビードワイヤ
で形成し、第５層１３―５まで１本ずつ順にビー
ドワイヤを増加して下部側辺１３ｄを形成し、次
いで１本のビードワイヤの増減を第９層１３―９
まで繰返して平行な中央側辺１３ｃを形成し、更
に第11層１３―１２まで１本ずつビードワイヤを
減少して上部側辺１３ｂおよび８本のビードワイ
ヤが並ぶ頂辺１３ａを形成したものであり、第６
図の実施例１に比べて若干縦方向に長い形状を備
えている。

以上に説明したようにこの発明は、ビードコア
の断面形状を八角形に形成したので、角の部分の
角度が大きくなつて周囲のカーカスに対する応力
集中が軽減され、カーカスに与える損傷が断面円
形のビードコアと同程度に減少し、しかも断面八
角形であるから、断面円形とは異なり、ビードワ
イヤの積層によつて形成することができ、断面円
形の場合のように加撚を必要としない。また、八
角形の頂辺の長さを最大とし、その両側の上部側
辺の長さを最小とし、更に頂辺と上部側辺間の挾
角を鈍角に設定したので、この頂辺にフイラーの
基部を圧接したとき、ビードコアとフイラーとの
間に空気層を残すことがなく、そのために製品タ
イヤのビード部の形状が均一になる。また、タイ
ヤ製造工程においてビードコアとフイラーとの間
の滑りが防止され、この滑りに伴うビード部の変
形が減少する。そして、上記八角形の断面形状が
左右対称に形成されるので、１本のタイヤの左右
のビードワイヤのいずれにも使用することができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図はタイヤのビード部の断面図、第２図は
従来の断面方形状のビードコアの断面図、第３図
は従来の断面正六角形のビードコアの断面図、第
４図および第５図は断面正六角形のビードコアと
フイラーとの接合関係を示す断面図、第６図は実
施例１のビードコアの断面図、第７図および第８
図は実施例１のビードコアとフイラーとの取付け
を示す断面図、第９図は実施例２のビードコアの
断面図である。 １２，１３：ビードコア、１２ａ，１３ａ：最
外辺（頂辺）、１２ｂ，１３ｂ：上部側辺、Ａ―
Ａ：タイヤ回転軸方向の中心線、Ｂ―Ｂ：タイヤ
半径方向の中心線。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 多数本のビードワイヤから構成された断面多
   角形状のビートコアにおいて、その断面がタイヤ
   半径方向の中心線に対して対称であると共に、タ
   イヤ円周方向に巻かれる数本のビードワイヤをタ
   イヤ回転軸方向に平行に配列したワイヤ層を、タ
   イヤ半径方向に多数層配設した不等辺の八角形で
   あり、かつ八角形を形成するタイヤ半径方向の最
   外辺の長さが他のいずれの辺の長さよりも長く、
   最外辺に続く上部側辺の長さが他のいずれの辺の
   長さよりも短く、さらに上部側辺の最外辺と鈍角
   をなすことを特徴とする自動車用タイヤのビード
   コアの構造。