JPS63770Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、織り技法の一つである引箔法に用い
る糸に関するものである。

（従来技術とその問題点） 漆やラツカーを模様素材とした引箔用の糸は多
数存在しているが、その殆ど全てが模様の背景に
用いたり、これらの塗料自体で模様自体を描いた
りしているのが通例である。

これらは、いずれも漆やラツカーの表面に絵を
描いたり金銀箔を貼りつけたりして模様の豪華さ
や落ち着きを表現せんとしたものであるが、模様
の下地となつている漆やラツカーはその表面部分
だけが利用され、その色合いの深さを利用して塗
料自体の中に模様を表現できないために、表面自
体とその表面に現された模様とが今一つ一体感に
欠ける不都合があつた。

（技術的課題） 本考案は、引箔用糸において、模様を塗料の色
合いの深みを利用して表現することを課題とした
ものである。

（技術的手段） この技術的課題を解決するための技術的手段
は、 (イ) にじみ防止を施した和紙上に少なくとも二層
の塗料層を設け、 (ロ) その層間に着色塗料、金属薄箔、貝箔、色粉
を単独で又は適宜組合わせてなる中間層を肉厚
を不均一にして介在せしめ、 (ハ) 表面を減磨して塗料の中に模様を現出させた
表面に着色又は無着色の透明な保護層を形成し
たシート体を、 (ニ) 左右の側部のいずれかを残して横方向に細幅
に裁断して形成すること、 である。

（技術的手段の作用） 和紙上に、にじみ防止層を介して塗料層を形成
すると、きれいな塗料層が得られる。

二層に構成した塗料層の間に着色塗料、金属薄
箔、貝箔、色粉を単独で又は適宜組合わせたもの
を素材とする中間層を設け、表面の塗料層側から
減磨させていくと、中間層の肉厚が不均一である
ために、均一な肉厚の減磨を行えないことも手伝
つて、徐々に薄肉となつた塗料層の下から中間層
の模様の全部又は一部が見えたり露出したりし
て、塗料層の中から模様が浮き出してくる。

その表面に着色又は無着色の透明な保護層を形
成することによつて模様を現出した塗料層が保護
され、製織後の織物に耐久性を持たせられること
になる。

このようにして形成されたシート体を、左右の
側部のいずれかを残して横方向に細幅に裁断して
糸を形成すると、糸順が確保され、引箔時に糸順
に狂いが生じることもない。

（本考案の効果） 模様が塗料層の色合いの深みを利用して現せる
結果、極めて美しい模様をシート上に現すことが
できるのである。

そして、この図柄の現されたシート体を糸順が
確保されて糸に裁断されるため、糸を順次経糸で
越させて織物にした時には、この図柄がそのまま
織り模様として織現されるのである。

（実施態様） にじみ防止層は、渋、どうさ、ふのり等を塗布
して形成される。

上記技術的手段における中間層の両側に位置す
る塗料層の色彩は適宜選択することができ、透明
不透明は問わないし、各塗料層を同色又は異色の
もので二層以上に積層して構成しても良く、その
素材は、従来の箔糸と同様に、主として漆やラツ
カーが使用される。

着色塗料、金属薄箔、貝箔、色粉を構成素材と
する中間層は、一層又は多層に構成する。この中
間層は、塗料層全面にわたつて埋設させることに
より、所望の模様に対応させて上記素材を配置す
るのが通例である。

塗料の減磨は、木炭、代用本炭、研石等で表面
を摺磨することによつて行うが、塗料層がラツカ
ーで構成されている場合には、シンナーを用いて
徐々に塗料を溶解させるようにしてもよい。

尚、貝箔は、軟化剤で軟化させた貝殻を薄肉に
スライスし、適宜染色を施したものを使用すると
美しい模様が得られる。

（実施例） 次に、上記技術的手段の具体例を図面を参酌し
て説明する。

第１図はシート体の断面を示したもので、和紙
１上に渋２を塗布し、その上に一層の漆層３を設
けて金属薄箔４を模様に対応させて貼着し、更に
その上に漆を塗布５して漆層３，５内に金属薄箔
４を埋設させた状態で乾燥せしめたものである。

金属薄箔４は、貼着時に生ずる皺によつて若干
の凹凸が生じており、この凹凸が後述する減磨に
よつて模様に微妙な影響を与えることになる。

このシート体の表面を木炭を用いて研磨して表
面の漆層５を減磨し、金属薄箔４を露出させする
と共にその一部を減磨させた後、その表面に透漆
６を塗布して乾燥させたものが第２図に示したシ
ート体（断面を示す）である。

第２図に示したシート体をスリツタにかけ、左
右の側部を残して横方向に細幅に裁断することに
よつて引箔用の糸が得られることになる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示したもので、第１図
は研磨前におけるシート体の断面図、第２図は裁
断前におけるシート体の断面図である。 １：和紙、２：渋、３：漆層、４：箔、５：漆
層、６：透漆層。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) にじみ防止を施した和紙上に少なくとも二層
   の塗料層を設け、その層間に着色塗料、金属薄
   箔、貝箔、色粉を単独で又は適宜組み合わせて
   なる中間層を肉厚を不均一にして介在せしめ、
   次いで表面を減磨して塗料の中に模様を現出さ
   せた表面に着色又は無着色の透明な保護層を形
   成したシート体を、左右の側部のいずれかを残
   して横方向に細幅に裁断して形成した引箔用
   糸。 (2) 塗料層及び保護層が漆又はラツカーで形成さ
   れている実用新案登録請求の範囲第１項に記載
   の引箔用糸。 (3) 中間層が一層又は多層に構成してある実用新
   案登録請求の範囲第１項に記載の引箔用糸。 (4) 中間層を除く塗料層が着色透明層である実用
   新案登録請求の範囲第１又は第２項に記載の引
   箔用糸。 (5) 中間層を除く塗料層が同色又は異色で構成さ
   れている実用新案登録請求の範囲第１、第２又
   は第３項に記載の引箔用糸。