JPH0238717B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は布帛に複合模様、即ち色及び／または
光沢の異なる複合模様を表す、特に、ホツトメル
ト性接着能を有する糸（以下、これを熱融着型糸
という）を用いて刺繍または織柄を形成すること
により布帛上にホツトメルト型接着剤層を所要模
様に施し、それにスタンピングホイルを用いる転
写法により複合模様を形成する方法に関する。

本明細書においてスタンピングホイルとは、特
許請求の範囲の項の記載を含め、熱不融性プラス
チツクフイルムなどの基材層に離型剤層を介して
転写膜を真空蒸着、印刷などにより形成したもの
にして、該転写膜にホツトメルト型接着剤層が施
されていないものをいう。

従来の技術とその問題点 上記のような方法により布帛に模様を形成する
ものとして、本発明者等の１人は先に特公昭48−
32297号の発明を提供した。この種の方法による
転写模様の顕出は、繊細及び／または微妙な図柄
調の模様でもこれを良好になし得る。それは、こ
のような方法によれば、実質的に刺繍または織柄
通りの模様にホツトメルト性接着能のある部位を
布帛に付与できるので、それにスタンピングホイ
ルを用いて転写法により施される模様も実質的に
刺繍または織り柄通りのものが得られるからであ
る。しかし、この先提供に係る発明では、熱融着
型糸に全面的にスタンピングホイルを転写するた
め、転写による色或い光沢の顕出がそのスタンピ
ングホイルの転写膜のみの色或いは光沢による制
約を受け、複数の色或いは光沢を複合するには、
それに即応する複数種の色或いは光沢を同一のス
タンピングホイルの転写膜に予め持たせておく必
要があり、これは複数種の高価なグラビア印刷ロ
ールを使い分けて施されなければならず、それだ
けコスト高となる。即ち、この先提供の発明は色
及び／または光沢の異なる複合模様の形成を転写
法で簡潔、合目的の下に達成し得るまでには至ら
ない。

本発明者等は上記先提供の発明を改良したもの
として、ホツトメルト性接着能を有する糸により
刺繍または織り柄を形成することにより布帛表面
にホツトメルト性接着能のある部位による模様を
施し、その模様の上に、転写膜の面に離型能のあ
る熱不融性組成物によるマスキングを部分的に施
したスタンピングホイルを用いて、熱圧転写する
布帛に複合模様を表す方法の発明（特開昭59−
199879号公報）を発明した。当該発明の方法によ
ると、布帛の刺繍または織り模様における熱融着
型糸に、単一色、光沢のスタンピングホイルを用
いる転写法により色及び／または光沢の異なる模
様を複合して施すことができ、複数種の色或いは
光沢を持たせた転写膜付きのスタンピングホイル
による場合と異なり、所要の複合模様を簡潔、合
目的の下に表すことができるし、またその複合模
様を繊細及び／または微妙な図柄調の場合でも、
良好な態様のものとしてかつ変化に富む図柄のも
のとして顕出することが保証される。しかし、当
該発明の方法で得られる転写模様と非転写部（マ
スキング相当部）になる模様との複合模様は、光
沢での風合いの点で必ずも満足し得るとは限らな
い。即ち、その複合模様の光沢は、スタンピング
ホイルからの転写膜の面の光沢、非転写部である
熱融着型糸表面の光沢という、樹脂乃至金属光沢
様の艶に富む外観風合いのもので、見た目に冷た
い感じを呈し、布帛本来の沈んだ深みのある外観
風合いに対する親和性に劣り、特に布帛が和服地
や帯地の場合、問題である。

本発明の目的は、上記先行技術の問題を解消
し、上記先行技術による利点のみならず、所要の
複合模様を布帛本来の沈んだ深みのある外観風合
いに対し親和性に富むものとして顕出することが
できる、布帛に複合模様を表す方法を提供するに
ある。

問題点を解決するための手段 上記目的を達成するための本発明の方法は、刺
繍又は織製により模様を表す布帛において、ホツ
トメルト性接着能を有する糸を少なくとも一部の
構成要素として上記模様を形成し、該模様の上に
転写膜の面に離型能のある熱不融性組成物により
マスキングを部分的に施したスタンピングホイル
を重ね、圧着加熱して、当該模様におけるホツト
メルト性接着能のある糸上での上記マスキング部
以外のスタンピングホイルにおける転写膜を該糸
に転写し、以て該転写膜の転写による模様と当該
糸の上記マスキング相当部分に残る非転写部によ
る模様の複合模様を上記刺繍または織り模様に表
し、その上から織物或いは編物（以下、織編物と
いう）を重ね、加圧加熱することを特徴としてい
る。

作 用 本発明に従えば、熱融着型糸を少なくとも一部
の構成要素として布帛に施した刺繍または織り模
様に、転写膜の面に離型能のある熱不融性組成物
によるマスキングを部分的に施したスタンピング
ホイルを用い、熱圧転写がなされる、即ち上記の
特開昭59−199879号公報の発明と同様な要領の下
に、上記刺繍または織り模様の上に、上記マスキ
ング部以外のスタンピングホイルにおける転写膜
の転写による模様と上記熱融着型糸の上記マスキ
ング相当部分に残る非転写部による模様の複合模
様が表され、従つて本発明によると該特開昭59−
199879号公報の発明におけると同様に、布帛の刺
繍または織り模様における熱融着型糸に、スタン
ピングホイルを用いる転写法による前示複合模様
を簡潔、合目的的に表すことができ、またその複
合模様を繊細及び／または微妙な図柄調の場合で
も、良好な態様のものとしてかつ変化に富む図柄
のものとして顕出することが保証される。

なお、当該複合模様がこのような好ましい図
柄、態様のものとして得られるのは、下記の理由
による。

スタンピングホイルのマスキングを形成する組
成物は、該スタンピングホイルの転写膜の面に液
状の形で彫刻ロール或いスクリーン法等により各
種図柄の変化に富んだもので、しかも繊細及び／
または微妙な図柄調の模様に施すことができる、
即ち当該組成物によりスタンピングホイルの転写
膜の面に対するマスキングは、それによる模様が
繊細及び／または微妙な図柄調の場合でも、これ
を所定の図柄通りに形成することができるし、ま
た変化に富む図柄のものにできる。このマスキン
グ付きスタンピングホイルを用いて、布帛表面の
刺繍或いは織り柄による模様をなすホツトメルト
性接着能ある部位に熱圧転写を施すと、そのマス
キング相当個所が布帛表面のホツトメルト性接着
能部位に非転写部として残る。この非転写部はマ
スキングに従う良好な態様の模様、図柄調のもの
として残存すると共に、その結果、転写部も良好
な態様の模様、図柄調のものとして得られ、また
変化に富む図柄のものとして施すことができる。

そして本発明では、上記のようにして得られた
複合模様を有する布帛の上から織編物を重ね、加
圧加熱することにより、その複合模様を効果的に
艶消ししたものとして当該布帛が収得され、その
艶消しされた複合模様は布帛本来の沈んだ深みの
ある風合いに対し親和性に富むものであること
が、本発明者等の実験結果から確認された。また
布帛に金糸、銀糸様光沢性糸による刺繍或いは織
り模様が施されている場合には、当該糸も艶消し
されていた。

金、銀箔紙類に対する常法の艶消し加工法とし
て最も効果あるものとされている、表面がサンド
ペーパ状の粗面になつたエンボスロールによる処
理によつては、上記複合模様に対する艶消しは殆
んど効果を示さなかつた。因みにエンボスロール
の加熱下での加圧圧力を５Kg／cm²（ゲージ圧）程
度と高くしても、実際効果ある艶消し成果が得ら
れず、むしろ加圧圧力を高くしすぎると、艶消し
効果の割には布帛の刺繍または織り模様の凹凸に
よる立体性が相当に消失乃至平坦化されてしま
い、その刺繍または織り模様の凹凸立体感による
装飾性及び有用性が低減されるという不都合を伴
う傾向が強くなる。

これと異なり、織編物を艶消し具として用いる
ときは、布帛上の前示複合模様に効果的な艶消し
処理を加熱加圧の下、施し得る。その理由は必ず
しも定かではないが、加熱加圧下、布帛の当該複
合模様における素地乃至ベースである熱融着型糸
に対する織編物のなじみがよく、該織編物表面の
毛羽がきめ細かなエンボス加工的艶消し作用をす
る機能を果たすためのようである。因みに、織編
物による艶消し処理では、前示エンボスロールに
おけると同じ温度条件の下、１Kg／cm²（ゲージ
圧）程度の加圧圧力でエンボスロールより良好な
成果が得られた。

発明の効果 上記のように本発明によると、前述の特開昭59
−199879号公報の発明におけると同様の利点のみ
ならず、所要の複合模様を布帛本来の沈んだ深み
のある外観風合いに対し親和性に富むものとして
顕出することができる、布帛に複合模様を表す方
法を提供することができる。

実施例 次に本発明を添付図面を参照して説明する。

図において１が複合模様を形成される布帛（第
１図）、２がスタンピングホイル（第２図）であ
り、布帛１は熱融着型糸３を少なくとも一部の構
成要素として刺繍または織製により形成した模様
４を有し、スタンピングホイル２は離型能のある
熱不融性組成物、例えばシリコン或いは四弗化エ
チレン樹脂系離型剤、熱硬化型樹脂（例えばメラ
ミン系、アクリル系、エポキシ系、ニトロセルロ
ース系の樹脂、またこれ等の樹脂の構成成分の２
種以上を含む樹脂）にシリコンまたは四弗化エチ
レン樹脂を適量混合した或いは加えないものの塗
工による部分的なマスキング５を転写面側に有す
る。マスキング５は適当な模様の形に施すことが
できる。布帛１及びスタンピングホイル２は長尺
のストリツプ状のものを適用することが好まし
い。符号６は糸３のホツトメルト型接着剤、７は
糸３と共に布帛１の模様４を構成する糸を示して
いる。熱融着型糸３は場合によつては、全体がホ
ツトメルト性になつたものであつても構わない。

上記布帛１の模様４側の面にスタンピングホイ
ル２の転写面側を重ね、該布帛１及びスタンピン
グホイル２の重ね合せ体を、金属ロールと硬質ゴ
ム乃至紙ロールの対にして少なくともその何れか
が加熱手段を備えたピンチロール（図示せず）の
間を通過させることにより圧着する。すると、そ
の熱圧下、糸３のホツトメルト型接着剤６が溶融
し、該糸３上でのスタンピングホイル２のマスキ
ング５部以外の部分の転写膜２ａが糸３に転写さ
れる（第４図）。そしてこれにより、スタンピン
グホイル２のマスキング５部相当個所が、模様４
における糸３の非転写部、即ち当該糸３の色、光
沢模様として残り、上記転写部及び非転写部によ
る色及び／または光沢の異なる複合模様が形成さ
れる。

こうして得られた複合模様付き布帛の複合模様
側の面に織編物（図示せず）を重ね、その布帛及
び織編物重ね合せ体を、前述したと同様なピンチ
ロールの間を通過させて、加熱加圧（一般的には
その加熱温度60〜150℃、加圧圧力（ピンチロー
ルにおける圧下ロール（胴長1.2ｍ）に加える圧
下力〕１〜10トン、被処理物ランニング速度10
ｍ／min程度以下）する。この熱圧処理により布
帛の複合模様は、当初の樹脂乃至金属光沢様の光
沢が艶消しされ、布帛本来の沈んだ深みのある外
観風合いに対し親和性に富む風合いのものとな
る。

本発明で織編物は、無紋乃至無模様（即ち所謂
無地）の各種組織の織物、任意織り紋或いは織り
模様の織物、無柄（所謂無地）の各種組織の編
物、任意柄編みの編物、各種レース地等を使用す
ればよい。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明法で模様付けされる布帛の一例
を示す平面図、第２図はスタンピングホイルの転
写面側の平面図、第３図は布帛の刺繍または織り
模様を構成している糸の一部を転写前の状態で示
す拡大断大面図、第４図は同糸の同様な部分を転
写後の状態で示す拡大断面図である。 １…布帛、２…スタンピングホイル、３…熱融
着型糸、４…刺繍または織り模様、５…マスキン
グ、６…ホツトメルト型接着剤。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 刺繍又は織製により模様を表す布帛におい
   て、ホツトメルト性接着能を有する糸を少なくと
   も一部の構成要素として上記模様を形成し、該模
   様の上に転写膜の面に離型能のある熱不融性組成
   物によりマスキングを部分的に施したスタンピン
   グホイルを重ね、圧着加熱して、当該模様におけ
   るホツトメルト性接着能のある糸上での上記マス
   キング部以外のスタンピングホイルにおける転写
   膜を該糸に転写し、以て該転写膜の転写による模
   様と当該糸の上記マスキング相当部分に残る非転
   写部による模様の複合模様を上記刺繍または織り
   模様に表し、その上から織物或いは編物を重ね、
   加圧加熱することを特徴とする布帛に複合模様を
   表す方法。