JPS636116B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は防汚用加工処理剤に関し、更に詳しく
は錫を含有しない、従つて環境汚染の心配のない
防汚用加工処理剤に関する。 漁業分野において、特に貝類や魚類の養殖にお
いて使用される漁網には、しばしば藻類や貝類が
繁殖し、目的とする魚類や貝類の発育に種々の幣
害をおよぼす事はよく知られている所である。か
かる幣害を防止する為に特殊加工した漁網が開発
され、その一部は実際に利用されてはいるが、そ
れらも種々の欠点を有し、満足して使用し得るも
のは未だ実用化されていない。その欠点の主なる
ものは、藻類や貝類などが漁網に付着するのを防
止する効果（以下防汚効果という）を有する活性
成分が漁網から海水または淡水（以下、単に海水
という）中に除々に遊離するため、防汚効果が消
失すること、従つて同時に海水が汚染されること
である。 本発明者は、かかる欠点を克服し得る防汚用加
工処理剤を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、必
須成分として水酸化トリアルキル錫およびアリー
ルスルホン酸誘導体を有機溶媒に溶解してなる組
成物が極めて優れた防汚効果を有することを見い
出しこれを特許出願した（特開昭55−122706号）。
その発明は、上記組成物で漁網を処理すると、組
成物中の成分が漁網内部にまで浸透すると共に化
学反応を起こし、水に不溶の水酸化トリアルキル
錫のアリールスルホン酸塩が生成するので、海水
を全く汚染することなく防汚効果が得られるとい
う画期的なものであつた。しかしながら、錫を原
料とするこの種の製剤は、環境汚染の立場から次
第に規制される傾向にあり、錫を含有しない防汚
用加工処理剤の開発が強く望まれる様になつた。 水酸化トリアルキル錫を含有する前記組成物に
は、環境汚染の可能性は実質的に存在しない。し
かし、本発明者は上記の現状に鑑み、錫を含有し
ない防汚用加工処理剤について鋭意研究を重ねた
結果、錫の代りに銅を含有する新規な防汚用加工
処理剤を開発することに成功した。 即ち本発明は、酸化銅または亜酸化銅、ピリダ
ジン誘導体、アリールスルホン酸またはその誘導
体および吸湿性のアクリル樹脂またはナイロン樹
脂をアルコール溶媒に混合してなる防汚用加工処
理剤に関する。 本発明においてアリールスルホン酸とは、ドデ
シルベンゼンモノスルホン酸、ドデシルベンゼン
ジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸（スルホ
ン化度：約70％、分子量：約4000〜7000）などを
意味し、その誘導体とはこれらスルホン酸のエス
テル、特にメチルまたはエチルエステル、および
アンモニウム塩を意味する。 ピリダジン誘導体としては、３−ヒドロキシ−
６−クロロピリダジンおよび３−ヒドロキシ−６
−ブロモピリダジンなどが挙げられるが、３・６
−ジクロロピリダジンと、以下の式： ［式中、Ｘは塩素または臭素を表す］ で表されるクロロキシレノールおよび同じ式で表
されるブロモキシレノールの混合物（以下クロロ
キシレノール／ブロモキシレノール混合物とい
う）とを水酸化ナトリウム水溶液中、常温で反応
させて得られる反応生成物が最も好ましい。この
様なクロロキシレノール／ブロモキシレノール混
合物としては、ドクトル・エフ・ダジツヒ社で製
造され、油化産業社から「ラルーベン」の商品
名で販売されている製品（主成分：５−クロロ−
４−ヒドロキシ−１・３−ジメチルベンゼン）を
使用するのが便利である。尚、ラルーベンを使用
した場合のこの反応生成物の融点は、201〜203℃
である。この様な反応生成物を以降、「３・６−
ジクロロピリダジンとクロロキシレノール／ブロ
モキシレノール混合物との反応物」と呼ぶ。 吸湿性のアクリル樹脂またはナイロン樹脂とし
ては、HDCの商品名で市販されているもの
（東亜ペイント社製、アクリル樹脂を20％の割合
でキシレン／エチセロ（50/50）に溶解したもの）
および三菱レーヨン製アクリル樹脂MR−1517
が最も好ましいが、トレジンＭ−20（帝国化学
産業株式会社製、メトキシナイロンをメタノール
に20％の割合で溶解したもの）を使用することも
できる。 本発明の防汚用加工処理剤の樹脂成分として、
吸湿性のアクリル樹脂またはナイロン樹脂が望ま
しいという事実は、経験的に見い出だされたこと
である。吸湿性の少ない樹脂、例えばウレタン樹
脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化
ビニル樹脂などを使用すると、防汚効果は著しく
減少する（実施例８参照）。これは、本発明の処
理剤の有効成分がこれらの樹脂中で安定化し過ぎ
るためでないかと考えられる。 酸化銅（CuO）および亜酸化銅（Cu₂O）は工
業用に使用されている品質のもので十分である。 上記成分を混合する為に使用されるアルコール
溶媒はイソブチルアルコールまたはイソプロピル
アルコールである。後述する様に、一般にイソブ
チルアルコールは上記成分を混合するのに使用
し、イソプロピルアルコールはその混合液を更に
希釈するのに使用する。 本発明の防汚用加工処理剤を製造するには、適
当に調節された量の上記各成分、即ち酸化銅また
は亜酸化銅、ピリダジン誘導体、アリールスルホ
ン酸およびその誘導体、および吸湿性のアクリル
樹脂またはナイロン樹脂をイソブチルアルコール
に入れて常温で約４時間撹拌すればよい。各成分
の混合割合は、ピリダジン誘導体：酸化銅または
亜酸化銅：アリールスルホン酸またはその誘導
体：吸湿性のアクリル樹脂またはナイロン樹脂：
アルコール溶媒＝１〜２：２〜６：10〜30：40〜
80：100〜200であることが好ましい。 この様にして得た組成物は、船底、養殖資材、
発電所冷却水管、海洋構築物などに加工された鉄
板、コンクリートおよびプラスチツク板の防汚用
塗装剤として使用することができる。 この防汚用塗装剤をイソブチルアルコールまた
はイソプロピルアルコールでほぼ倍量に希釈すれ
ば、防汚用漁網処理剤が得られる。これらの塗装
剤および魚網処理剤は共に本発明の防汚用加工処
理剤に包含されるものである。 本発明の防汚用加工処理剤を塗装剤として用い
る場合は、通常の塗料の場合と同じ方法で、これ
を物体表面に塗布すればよい。また、漁網を処理
する場合は、防汚用加工処理剤に漁網を一定時
間、例えば５分〜１夜浸漬した後風乾すればよ
い。アリールスルホン酸の代りにその誘導体が使
用されている場合は、浸漬後風乾する代りに110
〜130℃で加熱すればよい。 本発明に係る防汚用加工処理剤で処理された物
体、例えば魚網は、長期間に渡つて防汚効果を保
持し、藻類や貝類の付着から保護される。これ
は、漁網の内部にまで浸透した処理剤中の成分が
溶媒の揮散と共にそこで互いに反応し、かくして
水に不溶の防汚効果を有する物質が生成するから
である。この物質の構造は、正確には決定されて
いないが、アリールスルホン酸またはその誘導体
のスルホン酸基の一部が銅と、一部がピリダジン
環の窒素に結合している化合物であると推定され
ている。防汚効果を発揮するこの物質が実質的に
水に不溶であるため、本発明に係る処理剤は環境
汚染の必配が全くない。 本発明に係る防汚用加工処理剤は、漁網の処理
に使用するのが最も適しているが、漁網の材質
は、ナイロン、サラン、ポリエステル、ポリエチ
レンなど、いかなる材質のものであつてもよい。 以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明
する。 実施例 １ ３・６−ジクロロピリダジンとクロロキシレノ
ール／ブロモキシレノール混合物との反応物７重
量部、亜酸化銅20重量部、ドデシルベンゼンジス
ルホン酸65重量部、HDC350重量部をイソブチル
アルコール1008部に入れて４時間撹拌し、防汚用
加工処理剤（塗装用）を得る。 この塗装用処理剤を同量のイソプロピルアルコ
ールで希釈すると漁網用処理剤が得られる。 実施例 ２ ドデジルベンゼンモノスルホン酸を105重量部、
イソブチルアルコールを968重量部使用するほか
は実施例１と同様に操作し、防汚用加工処理剤を
得る。 実施例 ３ ３・６−ジクロロピリダジンとクロロキシレノ
ール／ブロモキシレノール混合物との反応物14重
量部、亜酸化銅40重量部、ドデシルベンゼンモノ
スルホン酸105重量部、ドデシルベンゼンジスル
ホン酸65重量部、HDC700重量部、およびイソブ
チルアルコール1976重量部を用い、実施例１と同
様にして防汚用加工処理剤を得る。 実施例 ４ ポリスチレン溶液（スルホン化度68％のスルホ
ン化樹脂を20重量％含有する水溶液）を1/3まで
濃縮したもの100重量部、亜酸化銅22重量部、
３・６−ジクロロピリダジンとクロロキシレノー
ル／ブロモキシレノール混合物との反応物７重量
部、HDC300重量部、およびイソブチルアルコー
ル500重量部をよく混合し、防汚用加工処理剤を
得る。この処理剤は塗装用にのみ使用する。 実施例 ５ ポリスチレン溶液を1/3まで濃縮したもの50重
量部、ドデシルベンゼンモノスルホン酸51重量
部、３・６−ジクロロピリダジンとクロロキシレ
ー／ブロモキシレノール混合物との反応物７重量
部、亜酸化銅21重量部、HDC300重量部、および
イソブチルアルコール500重量部をよく混合し、
塗装用処理剤を得る。この処理剤を同量のイソプ
ロピルアルコールで希釈すると漁網用処理剤が得
られる。 実施例 ６ ３・６−ジクロロピリダジンクロロキシレノー
ル／ブロモキシレノール混合物との反応物７重量
部、亜酸化銅40重量部、ドデシルベンゼンモノス
ルホン酸105重量部、HDC350重量部およびイソ
ブチルアルコール968重量部をよく混合し、防汚
用加工処理剤を得る。この処理剤は実施例２の処
理剤に亜酸化銅をさらに20重量部追加したもので
ある。同様にして、実施例３および５で得られる
処理剤は、亜酸化銅を更に20重量部追加すること
ができる。 実施例 ７ ３・６−ジクロロピリダジンクロロキシレノー
ル／ブロモキシレノール混合物との反応物７重量
部、酸化銅10重量部、ドデシルベンゼンモノスル
ホン酸105重量部、HDC350重量部、およびイソ
ブチルアルコール968重量部をよく混合し、防汚
用加工処理剤を得る。 実施例 ８ 実施例１で得た防汚用加工処理剤にポリエステ
ル製漁網を５分間浸漬し、48時間風乾した。この
防汚加工した漁網の防汚効果を、神奈川県立小田
原水産試験所に於いて試験した。 本発明に係る処理剤で処理した漁網、および非
処理漁網を、昭和57年２月26日から122日間海中
に没した後、藻類の付着状況を観察した。その結
果、非処理漁網には多量の藻類が繁殖していた
が、本発明に係る防汚加工処理剤で処理した漁網
には、藻類が全く付着していないことがわかつた
（参考写真１および２参照）。 尚、実施例１のアクリル樹脂（HDC）の代わ
りに同量のウレタン樹脂を使用した場合には、30
日経過後より海藻が付着しはじめ、本発明の処理
剤に於いて、樹脂の種類が重要なフアクターとな
ることがわかつた。 以上の試験結果を以下の表にまとめる。 【表】

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 酸化銅または亜酸化銅、ピリダジン誘導体、
   アリールスルホン酸またはその誘導体、および吸
   湿性のアクリル樹脂またはナイロン樹脂をアルコ
   ール溶媒に混合してなる防汚用加工処理剤。 ２ ピリダジン誘導体が３・６−ジクロロピリダ
   ジンと式： ［式中、Ｘは塩素または臭素を表す］ で示されるクロロキシレノールおよび同じ式で表
   されるブロモキシレノールの混合物との反応物で
   ある第１項に記載の処理剤。 ３ アリールスルホン酸がドデシルベンゼンモノ
   −またはジスルホン酸である第１項に記載の処理
   剤。