JPS6348554B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、特許請求の範囲第１項の前提概念部
に記載のミシンに関する。

裁縫物切断装置を有するミシンにおいては、縫
い方向に平行に行なわれる裁縫物の耳の切断に際
して、もし切断装置が裁縫技術上の根拠からミシ
ンの駆動装置でなくそれから独立した自分自身の
駆動装置で駆動される場合は、障害が生ずる。こ
の場合、上刃の上下運動はミシンの送り要素の送
り運動に同期することなく行なわれるので、たま
たま裁縫物が押し進められる時に上刃が沈下し
た、下刃と共働し、しかも裁縫物に接触する位置
に来ることが起りうる。その結果、裁縫物は上刃
でせき止められ、それによつて所望の送り方向か
ら押し出される。

単位時間当りの切断過程の回数を高くすること
により、上刃の裁縫物の送りを妨げる位置での滞
留時間を減らすことが出来るので、上記の有害な
作用は切断頻度を高くすることにより回避され
る。しかし、切断頻度を増やすことによつて、切
断刃の損耗が早められることは不可避である。

ドイツ公開第2719894号公報により、固定下刃
と上下運動可能な上刃より構成されている縫い方
向に横に配設されたミシン用鋏は公知である。そ
の上刃は、圧縮空気シリンダにより駆動される２
つの連結部材より成るトグルレバーに結合されて
いる。切断過程の実施のためにピストン棒が一方
の端位置から他方の端位置に移動し、その際、両
連結部材は最初の屈曲位置から伸長位置を経て鏡
像的に位置する次の屈曲位置へと揺動する。連結
部材の両屈曲位置において、上刃は持上げられ、
連結部材の伸長位置でのみ切断位置へ沈下する。
この場合ピストン棒は、その都度連結部材が伸長
位置にあり、かつ上刃が切断位置にある位置を大
きな速度で通過するので、連結部材は比較的速や
かに伸長位置に通り抜けて揺動する。この方策に
より、上刃はその下向き運動の終り頃にかつその
上向き運動の開始時に特に速く動かされ、従つて
その沈下位置での滞留、ひいては実際の切断過程
が比較的短かくなることが達成される。

縫い方向に対して横方向に設けられた鋏は、加
工品の端のすじ又は糸目の切断に対し、ひいては
休止によつて中断される作業方法に対し、利用で
きるかも知れない。これに反して、この鋏は縫い
方向に平行でより高い頻度で行なわれる裁縫物の
耳の切落しに対しては、たとえ鋏が90゜回転させ
られ、その刃が縫い方向に平行になつたとして
も、全く不適である。つまり、この場合圧縮空気
シリンダ以外になお数個の弁から成る拍子発信器
（Taktgeber）を備えなければならない空気圧作
動駆動装置をもつてしては、ほゞその回転数で高
速に動くミシンに対応する切断頻度が達成されな
い。

この公知の鋏は、更になお根本的な欠点を有す
る。それは、トグルレバー伝動装置が２つの屈曲
位置から伸長位置へ運動する場合、上刃と結合さ
れた関節が進んだ経路は同時に駆動部材が進んだ
経路に関してその場合一貫して平坦になつてゆく
連結部材間の角度にもとずいて減少し、上記経路
が連結部材の伸長位置において完全に零になり、
ついで刃も又停止することである。この運動過程
は、連結棒の伸長位置を通過する速やかな揺動に
より意図される作用、すなわち上刃の沈下位置で
の滞留時間の短縮の達成を妨げており、そしてこ
れを少くとも幾分かは無効にする。

この発明は、大きな頻度で縫い方向に平行に行
なわれる裁縫物の耳の切落しに適し、そして上刃
の切断位置での滞留時間を減少する特許請求の範
囲第１項の前提概念部による切断装置を有するミ
シンを提供することを課題とする。この課題は、
特許請求の範囲第１項の特徴部に示された構成に
より解決される。

本発明による切断装置においては、トグルレバ
ー駆動装置の利用にもとずき、トグルレバー駆動
装置の連結部材の屈曲位置から伸長位置への運動
に際して、上刃と結合された関節の進んだ経路
が、同時に駆動装置の進んだ経路と関連してその
際常時平坦になつて行く連結部材間の角度が同じ
く常に減少し、連結部材が伸長位置にきてそのな
す角度が完全に零になる状態が生ずる。本発明の
切断装置においては、連結部材が屈曲位置にある
場合に、同時に切断位置である上刃の最下位置並
びに連結部材が伸長位置にある場合に上刃の最高
位置が得られるので、上刃の沈下位置では上刃と
結合した連結部材の関節のより大きな相対速度が
発生し、上刃の上昇位置では連結部材の関節のよ
り小さな相対速度が発生する。この方法で、連結
部材関節、したがつて上刃はその運動径路の下
部、従つて本来の切断過程の間比較的速やかに通
過し、かつその運動径路の上部は比較的ゆつくり
と通過して移動する。

トグルレバー伝動装置を偏心駆動装置により駆
動し、その際トグルレバー伝動装置の駆動部材が
偏心杆自身により形成され又は他の駆動部材を介
して偏心杆と結合されている上記手段により、調
和した、それ故に動揺の少いかつ高い切断頻度の
可能な駆動運動が得られる。

トグルレバー伝動装置の連結部材はたゞ一方の
屈曲位置と伸長位置との間を往復揺動するだけ
で、伸長位置を通り抜けて鏡像的位置にある他方
の屈曲位置に移動することはないので、トグルレ
バー伝動装置の駆動部材は連結部材の屈曲位置で
も伸長位置でもその移動径路の転向点にくること
が達成される。同様に連結部材が屈曲位置及び伸
長位置にある期間中の駆動部材の運動状態は概ね
等しいので、トグルレバー伝動装置の不同な運動
状態は屈曲位置と伸長位置の範囲では駆動部材の
運動状態から影響を受けることはない。

故に、本発明による切断装置では、上刃は比較
的長時間下刃から離れた上昇位置にあり、下刃と
共働する下降位置には比較的短時間しかいない。
これにより、ミシンから独立した切断装置の駆動
装置において、切断過程及び裁縫物送りがたまた
ま時間的に重なつた場合でも、裁縫物の送りが妨
害されることなく、この有利な作用は必要に応じ
てなお増大させることができる。それと同時に、
トグルレバー伝動装置の駆動装置は、上刃が下降
している場合はより早く、上刃が上昇している場
合はより遅く駆動運動が行なわれるように不同に
駆動する。この目的のために、駆動部材はその連
結部材が他のトグルレバー伝動装置の連結部材と
同期して動く第２のトグルレバー伝動装置で構成
することができる。

本発明のさらに進んだ提案により、上刃と結合
されない連結部材の外側関節は該連結部材に対し
て斜め方向に変位可能となつている。この方策に
より、上刃の行程高さは種々の裁縫物の厚さに対
応することができる。この方法の更に広汎な利点
は、上刃の駆動要素がミシンの裁縫物載置面の下
部に配設されており、この上刃が該上刃と結合さ
れない連結部材の関節の変位により必要に応じて
完全に裁縫物載置面の下に沈下させることができ
ることである。

以下、本発明を図に示す実施例にもとずき説明
する。

第２図に示すミシンは下部ハウジング１、柱脚
２、アーム３及び頭部４より成る。頭部４には、
糸案内針６を担持し公知の方法で上下に動くこと
のできる針棒５が配設されており、頭部４には更
に端部に布地押え８が配設された押え棒７が装着
されている。下部ハウジング１の基板９には、布
地送り１２の通過のための溝１１を備えた縫板１
０が嵌め込まれている。布地送り１２は、裁縫物
の送りを行うために公知の方法で四角形運動を発
生する。布地送り１２の駆動要素のうち、その上
下運動を行う駆動軸１３、クランク１４、リンク
１５及び布地送り１２を有する支持部材１６のみ
が図示されている。

切断装置１７は、縫板１０に固定され布地送り
１２の側方にて溝１８内に伸びている下刃１９、
ならびにこれと共働する上刃２０を含む。下刃１
９は水平にのびた刃２１を有し、上刃２０は斜め
に伸びた刃２２を有する。上刃２０は、曲りレバ
ー２３の上方に曲つた端部に固定され、曲りレバ
ーは駆動軸１３に回転可能に装着されている。曲
りレバー２３は引張り棒２４の一端に結合され、
該引張棒の他端はクランク２５に枢着されてい
る。クランク２５は、軸２６の一端に固着されて
いる。軸２６の他端には、クランク２７が固定さ
れている。

クランク２７は関節２８を介して連結部材２９
と結合されており、該部材は関節３０を介して第
２の連結部材３１と接続されている。両連結部材
２９，３１は、関節３０を把持しリンク３２とし
て構成された駆動部材と一緒にトグルレバー伝動
装置３３を形成する。連結部材３１の関節３０の
反対側の端にはピン３４が設けられており、この
ピンはレバー３６のスリツト３５に受入れられて
いる。上記のピン３４とスリツト３５とは、関節
３７を構成する。レバー３６はピボツト３８に固
定されており、ピボツト３８は柱脚２の側方に配
設された板３９に装着されている。板３９には斜
めにのびた案内スリツト４０が形成されており、
その中をピン３４が通つている。レバー３６には
レバー４１が固定されており、その自由端には軸
方向に移動可能な把手４２が取付けられている。
把手４２のレバー４１と向合つた端には、突起４
３が形成されている。図示しないバネが把手４２
をピボツト３８の方向に引き、それによつて突起
４３が、レバー３６，４１を覆うハウジング４５
の外側に設けられた多数のノツチ４４のいずれか
１つに係合している。ハウジング４５内にはさら
に垂直方向にスリツト４６が形成され、その中に
レバー４１が入つている。

トグルレバー３３の駆動には、偏心駆動装置４
７が使用される。それは下部ハウジング１の支持
板４８に固定された駆動モータ４９、モータ軸５
０に固定された偏心板５１及び該偏心板５１に取
付けられた偏心杆５２を含む。上記の偏心杆５２
は、固定ピン５３に取付けられた２つのアームを
有するクランク５４を介してリンク３２に結合さ
れている。

この切断装置の作用は次の通りである。

駆動モータ４９は、ミシンの運転中も停止中も
スイツチを入れておいて差支えない。

駆動モータ４９のスイツチが入つている場合、
偏心板５１は偏心杆５２を往復運動させ、それに
よつてクランク５４はピン５３のまわりに揺動状
態におかれる。これによりリンク３２は往復運動
状態になる。この運動は、関節３０を介して連結
部材２９，３１に伝達される。連結部材２９，３
１はこの場合、第１図中に示される屈曲位置と伸
長位置の間を動きつゞけ、伸長位置において両部
材は一直線になる。

リンク３２の往復運動はサインカーブである。
偏心板５１が旋回する間のリンク３２の関節３０
の運動経過は、第４図に示す線図中に曲線ａで示
されている。この線図は、縦軸に行程ｗを横軸に
時間ｔをとつて示されている。曲線ａの横軸より
上の部分は関節３０の運動の左半分を示し、横軸
より下の部分は運動行程の右半分を示す。曲線ａ
の上側の頂点は、関節３０の運動行程第１図にお
いて左側の死点T_Lを表わし、下側の頂点は右側
の死点T_Rを示す。リンク３２の関節３０はサイ
ンカーブで動くから、運動行程の左半分の通過に
対する時間t₁は、右半分の通過に対する時間t₂と
正確に一致する。

トグルレバー伝動装置３３の関節３７は垂直方
向には案内スリツト４０により、そして水平方向
にはロツクレバー３６により固定保持されている
ので、連結部材２９，３１が揺動すれば関節２８
は上下運動を続ける。連結部材２９，３１はその
屈曲位置の範囲では、その伸長位置のときに較べ
て非常に大きな関節２８の上下運動を惹き起すの
で、この運動はサインカーブ状にはならない。こ
の関節２８の非サインカーブ状揺動は、クランク
２７、軸２６、クランク２５及び引張り棒２４を
介して曲りレバー２３に伝達され、これにより上
刃２０もまた非サインカーブ状に上下運動する。
偏心板５１の回転中の上刃２０の運動行程は線図
中に曲線ｂで示す。この場合行程又は運動路の下
半分は横軸より下に上半分は横軸より上に示され
る。横軸は下刃１９の刃２１の位置を限定するも
のではない。曲線ｂの下の頂点は上刃２０の運動
行程の下死点T_uを示し、上の頂点は上死点T_pを
示す。運動がサインカーブ状でない結果、上刃２
０が運動行程の下半分を通過するには比較的短い
時間t₃ですみ、上半分を通過するには極めて長い
時間t₄が必要となる。

上刃２０の刃２２は斜めについており、下刃１
９の刃２１は水平についているので、両方の刃２
１，２２の切断点は上刃２０の下向き運動の際に
は、布地送り方向Ｖと逆方向に移動し、そして上
向き運動の際には送り方向Ｖと同方向に移動す
る。さらに上刃２０の運動行程の下半分は非常に
早く、又上半分は比較的緩やかに通過するので、
上刃２０は切断過程完了後、その運動行程の下死
点T_uに達し、極めて速く沈下位置から両死点T_u
及びT_pの間の位置に上昇し、そして両刃２１，
２２の切断点は送り方向Ｖに生ずる運動の最初の
半分の間は同様に速く動く。この場合、刃２１，
２２の切断点の速度はミシンの最高回転数及び布
地送り１２の最大送りにおける裁縫物の送り速度
よりも大きい。このような方法で、ミシンが運転
されている場合でも裁縫物の送り運動は、上刃２
０が下死点T_uに位置する際に正確に挿入され、
裁縫物が刃２２によつて押し動かされることはな
い。

上刃２０の両死点T_u及びT_pの中間位置への到
達後、両刃２１，２２の切断点は送り方向Ｖの方
向に動くので、裁縫物は減速して行つて停止する
上刃２０の上昇運動の後半部でもまた上刃２０の
刃２２に衝き当ることは起り得ない。この運動状
態にもとずいて本切断装置はその駆動がミシンの
駆動装置によらずして独自の原動機によつて行な
われるような場合に使用するのに特に適してい
る。

トグルレバー伝動装置３３の上部関節３７の案
内スリツト４０内での変位により、上刃２０の行
程高さは裁縫物の種々の厚さに適応し、その際第
１図において関節３７が左へ移動すれば行程高さ
は減少し、右へ移動すれば行程高さは増加する。
案内スリツト４０の傾斜姿勢にもとずき、関節３
７が左へ移動した場合は、連結部材２９，３１は
強い屈曲姿勢から弱い又は平らな屈曲姿勢に揺動
する。より平らな屈曲姿勢の場合は変らない行程
幅で揺動するリンク３２は連結部材２９，３１を
伸長姿勢を経て第２の屈曲姿勢に移動させる。第
２の屈曲姿勢はいずれにせよ常に第１の屈曲姿勢
よりはるかに平らであるので、上刃２０は連結部
材２９，３１が第２の屈曲姿勢にある場合裁縫物
に接触することなく進むことができる。この結果
上刃２０の移動行程の下半分の通過のための時間
はなお線図に示された時間t₃より短かくなり、か
つそれに応じて移動行程の上半分の通過のための
時間は時間t₄よりも長くなる。上刃２０の行程高
さが小さい場合中間の、もしくはより大きな行程
高さの場合よりもなお有利な運動状態がそれによ
つて生ずる。

もし裁縫過程が同時に裁縫物の切断を伴なわず
に行なう必要のある場合にはレバー４１は全く下
方へ回動させられる。この方法で関節３７は第１
図において案内スリツト４０の左端に変位し、そ
れによつて上刃２０は完全に縫い板１０の上面よ
り沈下する。

【図面の簡単な説明】

第１図は第２図の―線によるミシンの部分
の断面図、第２図は第１図の―線によるミシ
ンの断面図、第３図は切断装置の上刃と下刃との
斜視図、第４図は駆動偏心板の回転時の駆動部材
及び上刃の運動経過に関する曲線図である。 １７…切断装置、１９…下刃、２０…上刃、２
９，３１…連結部材、３０…中間関節、３２…リ
ンク（駆動部材）、２８，３７…外側関節。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 裁縫物載置面の平面に配設された下刃と、垂
   直方向に可動な上刃とを有し、上刃の駆動装置が
   互いに枢着結合された２つの連結部材を有するト
   グルレバーで構成され、その際中間関節が駆動部
   材と結合され、両連結部材の中の１方の連結部材
   の外側関節が上刃と結合され、他方の連結部材の
   外側関節が機枠の固定点に支持された裁縫物切断
   装置を有するミシンにおいて、連結部材２９，３
   １が偏心駆動装置４７により一方の屈曲位置と概
   ね伸長された位置との間に往復揺動可能であり、
   上記連結部材２９，３１が伸長位置に変位する際
   上刃２０を下刃１９から離れた上昇位置にもたら
   し、上記連結部材２９，３１が屈曲位置に変位す
   る際上刃２０を下刃１９と共働する下降位置にも
   たらすリンク機構２３，２４，２５，２６，２７
   を上記外側関節２８と上刃２０との間に設けたこ
   とを特徴とするミシン。 ２ 上刃２０と結合されていない連結部材３１の
   外側関節３７が、連結部材２９，３１の伸長位置
   に対して斜方向に変位可能となつていることを特
   徴とする特許請求の範囲第１項に記載のミシン。