JPS6343428Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、ケーシング内に多翼フアンを設ける
ことにより旋回スクロールや軸受を有効に冷却し
うるようにしたスクロール圧縮機に関する。

従来、ケーシングに固着して設けられた固定ス
クロールと、前記ケーシングに回転自在に軸支さ
れ、一端側がモータから直線的に延びる回転軸と
なり他端側がクランク軸となつた駆動軸と、該駆
動軸のクランク軸部分に回転自在に軸支された旋
回スクロールとからなり、旋回スクロールを固定
スクロールに対して旋回させることにより吸込み
口から吸込んだ空気を圧縮し、吐出口から吐出さ
せるように構成したスクロール圧縮機が知られて
いる。

しかし、このような従来技術によるスクロール
圧縮機においては、ケーシング内を外部に開放す
る以外に何らの冷却方法が採用されていないのが
実情であつた。このため、圧縮室内に給油を行な
わない無給油式スクロール圧縮機では、圧縮作用
によつて圧縮熱を発生し、この圧縮熱が各スクロ
ール部材に伝達されて熱膨張し、該各スクロール
部材が接触を起こす原因となる。従来、このよう
な接触を避けるためにスクロール部材間のクリア
ランスを大きくする方法が用いられてきたが、こ
のような方法では圧縮時の吐出圧力が低い場合に
は温度上昇が少ないため、圧縮効率が低下すると
いう欠点があつた。一方、前述した無給油式スク
ロール圧縮機では軸受にグリース等の潤滑剤を封
入したものが使用されているが、軸受温度が上昇
すると潤滑剤が早期に劣化したり、軸受用シール
部材から漏出して軸受の損傷原因となる欠点があ
つた。

本考案は上記従来技術の問題点に鑑みなされた
もので、旋回スクロール背面側と、駆動軸、旋回
スクロールを支持する軸受を冷気によつて直接冷
却しうるようにし、圧縮効率を高めると共に、寿
命を延ばすことができるようにした無給油式のス
クロール圧縮機を提供することを目的とする。

この目的を達成するために、本考案は、内部が
支持壁によつて一側のクランク室と他側のフアン
室とに画成された筒状のケーシングと、該ケーシ
ングのクランク室側に固着して設けられた固定ス
クロールと、前記ケーシングのフアン室側に取付
けられたモータと、一端が該モータからフアン室
内を直線的に延びる回転軸となり、他端がクラン
ク室内に延在してクランク軸となつた駆動軸と、
該駆動軸の回転軸部分を支持するため、前記ケー
シングの支持壁に設けられた潤滑油封入型の一の
軸受と、前記固定スクロールと重なり合うように
クランク室内に配置された旋回スクロールと、前
記クランク軸に対し該旋回スクロールを支持させ
るため、該クランク軸と旋回スクロールとの間に
設けられた潤滑油封入型の他の軸受と、前記クラ
ンク室内を外部と連通するように、前記ケーシン
グのクランク室側に形成された吸気口と、前記ク
ランク室とフアン室とを連通するように、前記一
の軸受の周囲に位置して前記支持壁に穿設された
連通孔と、前記フアン室を外部と連通するように
前記ケーシングのフアン室側に形成された排気口
と、前記吸気口、連通孔、排気口を介してクラン
ク室、フアン室内に冷気を流通させるように、前
記フアン室内において回転軸に固着して設けられ
た多翼フアンとから構成したことにある。

このように構成することにより、モータを回転
することによつて駆動軸を介して旋回スクロール
が旋回し、固定スクロールと旋回スクロールとの
間で気体を圧縮する。この際、圧縮熱、回転抵抗
等による熱が固定スクロール、旋回スクロールに
伝達され、さらにケーシング、駆動軸を介して各
軸受に伝達される。しかし、モータの回転によつ
て多翼フアンが回転し、吸気口、連通孔、排気口
を介してクランク室、フアン室内に冷気が流通
し、ケーシング、旋回スクロール背面側、各軸受
は冷気によつて晒され、各スクロールが熱膨張し
たり、軸受の潤滑油が漏出するのを防止する。

以下、本考案について図面に示す実施例と共に
説明する。

図面において、１は脚２，２を有する筒状のケ
ーシングを示し、該ケーシング１はその内部の軸
方向中間を仕切るように設けられた支持壁３によ
つてクランク室４とフアン室５に画成されてい
る。前記クランク室４はケーシング１の上部に形
成された吸気口６によつて大気と連通し（第２図
参照）、クランク室４とフアン室５は支持壁３に
後述の軸受１３外周側を囲むように穿設された複
数の連通孔７，７……によつてフアン室５と連通
し、しかもフアン室５はケーシング１の上部に形
成された排気口８によつて大気と連通している
（第３図参照）。

前記ケーシング１にはクランク室４の開口側を
閉塞するように固定スクロール９が固着して設け
られている。ここで、固定スクロール９は鏡板９
Ａと、該鏡板９Ａの一側面に立設されたラツプ部
９Ｂと、該ラツプ部９Ｂと対向する面に形成され
た放熱フイン９Ｃとからなり、前記ラツプ部９Ｂ
はインボリユートまたはインボリユートに近い渦
巻状に形成されている。そして、鏡板９Ａの中心
位置には吐出口１０が形成されている。

また、ケーシング１のフランジ部１Ａにはフア
ン室５の開口側を閉塞するようにモータ１１のフ
ランジ部１１Ａが固着して設けられ、該モータ１
１には駆動軸１２がケーシング１に向け突出して
設けられている。ここで、前記駆動軸１２はモー
タ１１のロータ（図示せず）から直線的に延びフ
アン室５を貫通する回転軸１２Ａと、該回転軸１
２Ａの先端部にこれと一体的に形成され、クラン
ク室４内に延在しているクランク軸１２Ｂとから
なり、回転軸１２Ａの軸心とクランク軸１２Ｂの
軸心とは距離δだけ偏心していると共に、回転軸
１２Ａは固定スクロール９と同一軸心となるよう
に設けられている。

１３，１３は例えばアンギユラ玉軸受等の軸受
で、該軸受１３の外輪は支持壁３の穴３Ａに圧入
され、内輪は回転軸１２Ａに圧入されることによ
つて駆動軸１２はケーシング１に対して軸線方
向、半径方向に変位不可能に取付けられている。
そして、軸受１３は例えば正面組合せまたは図示
のように背面組合せ軸受が用いられ、該軸受１３
内には潤滑油が充填され、その両端はオイルシー
ル１４，１４によつて密封されている。

次に、１５はクランク軸１１Ｂと同一軸心に設
けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール１
５は鏡板１５Ａと、該鏡板１５Ａの一側面に立設
されたラツプ部１５Ｂと、ラツプ部１５Ｂと対向
する面に形成された軸受穴１５Ｃとからなり、前
記ラツプ部１５Ｂもインボリユートまたはインボ
リユートに近い渦巻状に形成され、しかも鏡板１
５Ａの端部には吸込み口１６が穿設されている。
そして、ラツプ部１５Ｂは固定スクロール９のラ
ツプ部９Ｂと所定角度ずらせて重なり合うように
取付けられ、該各ラツプ部９Ｂ，１５Ｂ間には複
数の圧縮室１７が形成され、旋回スクロール１５
が旋回する過程で吸込み口１６から吸込んだ空気
を圧縮し、吐出口１０から吐出するように構成さ
れている。

１８，１８は軸受１３と同様にアンギユラ玉軸
受等の軸受で、該軸受１８の外輪は旋回スクロー
ル１４の軸受穴１５Ｃに圧入され、内輪はクラン
ク軸１２Ｂに圧入されることによつて、該旋回ス
クロール１５はクランク軸１２Ｂに対して軸線方
向、半径方向に変位不可能に取付けられている。
そして、軸受１８も例えば正面組合せ、背面組合
せ軸受が用いられ、軸受１８内には潤滑油が充填
され、軸受穴１５Ｃの開口端はオイルシール１９
で密封されている。

一方、２０はケーシング１の支持壁３と旋回ス
クロール１５との間に設けられた補助クランク
で、該補助クランク２０は第２図に示す如く異な
る位置に２個設けられている。そして、補助クラ
ンク２０は支持壁３側の軸２０Ａの軸心と旋回ス
クロール１５側の軸２０Ｂの軸心とは距離δだけ
偏心しており、駆動軸１２が回転するとき、旋回
スクロール１５は補助クランク２０によつて固定
スクロール９の軸心を中心として半径δをもつて
公転する。なお、補助クランク２０は旋回スクロ
ール１５と支持壁３との間に設けるものに限るこ
となく、旋回スクロール１５と固定スクロール９
との間に設けてもよく、要はケーシング１や固定
スクロール９等の固定部材と旋回スクロール１５
との間に配置されればよいものである。

さらに、２１はフアン室５内に設けられた多翼
フアンで、該多翼フアン２１は回転軸１２Ａに固
着されたボス２１Ａと、該ボス２１Ａに設けられ
た支持板２１Ｂと、該支持２１Ｂに設けられた円
環状の多翼フアン部材２１Ｃとからなり、しかも
該多翼フアン２１にはカウンタウエイト２２が取
付けられている。

このように構成されるスクロール圧縮機におい
て、モータ１１が回転すると駆動軸１２も軸受１
３に軸支されつつ回転する。この結果、回転軸１
２Ａに固着された多翼フアン２１は第３図中の反
時計方向に回転し、吸気口６からの外部空気はク
ランク室４、複数の連通孔７を介してフアン室５
内に吸込まれ、この空気は多翼フアン部材２１Ｃ
によつて第３図矢示のようにケーシング１内壁に
沿つて送られ、排気口８から外部に排気される。

一方、駆動軸１２の回転はクランク軸１２Ｂ、
軸受１８を介して旋回スクロール１５にも伝達さ
れる。ここで、旋回スクロール１５の軸心と固定
スクロール９の軸心とは距離δだけ偏心している
と共に、補助クランク２０の軸２０Ａ，２０Ｂの
軸心も距離δだけ偏心しているから、旋回スクロ
ール１５は固定スクロール９に対して相対的な円
運動を行なう。そして、多翼フアン２１の回転に
よつてクランク室４内に吸気された外部空気の一
部は吸込み口１６から吸込まれ、圧縮室１７内で
徐々に圧縮されて吐出口１０から吐出される。こ
の際、圧縮室１７内の圧縮空気によつて旋回スク
ロール１５に作用する半径方向、軸線方向の押圧
力は軸受１８、駆動軸１２、軸受１３を介してケ
ーシング１に伝えられるから、該旋回スクロール
１５が半径方向、軸線方向に変位することはな
く、圧縮室１７の気密を確保することができる。

而して、圧縮室１７内の圧縮作用によつて圧縮
熱が発生し、この圧縮熱が固定スクロール９、旋
回スクロール１５に伝達され、さらにケーシング
１、駆動軸１２を介して軸受１３，１８、補助ク
ランク２０等に伝達される。この結果、圧縮熱に
よつて前記各スクロール９，１５は半径方向、軸
線方向に熱膨張を起こしてラツプ部９Ｂ，１５Ｂ
が接触して抉れを生じたり、軸受１３，１８や補
助クランク２０等に封入された潤滑油が溶けて漏
出しようとする。

しかし、本考案においては前述した如く多翼フ
アン２１の回転によつてクランク室４、フアン室
５内を外部の冷却空気が常時環流し、旋回スクロ
ール１５の背面、ケーシング１内部はこの冷却空
気によつて晒されているから、各スクロール９，
１５が熱膨張により変形したり、軸受１３，１８
内の潤滑油が劣化したり、オイルシール１４，１
９から漏出することを防止しうる。特に、吸気口
６から流入した冷却空気は旋回スクロール１５の
背面を軸受１８に向けて径方向内側に進み、次に
直角に折曲つて軸受１３の周囲に設けられた連通
孔７を軸方向に進み、さらに排気口８から外部に
排出されるから、この間旋回スクロール１５の背
面、軸受１３，１８の外周を直接冷却することが
できる。従つて、スクロール圧縮機を無給油式と
した場合にもその寿命を延すことができると共
に、各ラツプ部９Ｂ，１５Ｂのクリアランスを狭
くすることができ、圧縮効率を高めることができ
る。

なお、吸気口６または吸込み口１６にフイルタ
を設け、塵埃の侵入を防止するようにしてもよ
い。また、吸込み口１６は旋回スクロール１５に
設けるものとして述べたが、固定スクロール９に
吸込み口を設け、圧縮室１７の直接外部空気を吸
込む構成としてもよい。さらに、モータ１１はそ
のフランジ部１１Ａをケーシング１のフランジ部
１Ａに固着し、フアン室５を閉塞するものとして
述べたが、フアン室５を有する有底状のケーシン
グ部材と、支持壁３とクランク室４を有する他の
ケーシング部材とを固着し、ケーシング１を形成
してもよい。

本考案に係るスクロール圧縮機は以上詳細に述
べた如くであつて、ケーシング内をクランク室と
フアン室との画成し、該フアン室内にはクランク
室を介して外部空気を吸気する多翼フアンを設け
る構成としたから、固定スクロール、旋回スクロ
ールと駆動軸、旋回スクロールを支持する軸受と
を常時直接的に冷却することができ、該各スクロ
ールが熱膨張によつて変形することを防止しうる
と共に、各軸受部分の潤滑油が熱のために劣化し
たり、漏出する事故を防止できる。また、旋回ス
クロールとクランク軸との間の軸受、回転軸とケ
ーシングとの間の軸受によつて該旋回スクロール
に作用する軸線方向、半径方向の全荷重を受ける
構成としたことと相まつて、固定スクロールに対
して旋回スクロールを非接触構成としうるから、
低圧縮時にも圧縮効率を高めることができると共
に、無給油式圧縮機への適用が容易となる。しか
も、多翼フアンはケーシング内に設ければよいか
ら、部品点数が少なく、かつモータをケーシング
に取付ける構成としたから、モータ直結型の小型
スクロール圧縮機を製造するに最適である等幾多
の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るスクロール圧縮機の縦断
面図、第２図は第１図の−矢示方向断面図、
第３図は第１図の−矢示方向断面図である。 １……ケーシング、３……支持壁、４……クラ
ンク室、５……フアン室、６……吸気口、７……
連通孔、８……排気口、９……固定スクロール、
１０……吐出口、１１……モータ、１２……駆動
軸、１２Ａ……回転軸、１２Ｂ……クランク軸、
１３，１８……軸受、１５……旋回スクロール、
１６……吸込み口、１７……圧縮室、２０……補
助クランク、２１……多翼フアン、２２……カウ
ンタウエイト。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 内部が支持壁によつて一側のクランク室と他側
   のフアン室とに画成された筒状のケーシングと、
   該ケーシングのクランク室側に固着して設けられ
   た固定スクロールと、前記ケーシングのフアン室
   側に取付けられたモータと、一端が該モータから
   フアン室内を直線的に延びる回転軸となり、他端
   がクランク室内に延在してクランク軸となつた駆
   動軸と、該駆動軸の回転軸部分を支持するため、
   前記ケーシングの支持壁に設けられた潤滑油封入
   型の一の軸受と、前記固定スクロールと重なり合
   うようにクランク室内に配置された旋回スクロー
   ルと、前記クランク軸に対し該旋回スクロールを
   支持させるため、該クランク軸と旋回スクロール
   との間に設けられた潤滑油封入型の他の軸受と、
   前記クランク室内を外部と連通するように、前記
   ケーシングのクランク室側に形成された吸気口
   と、前記クランク室とフアン室とを連通するよう
   に、前記一の軸受の周囲に位置して前記支持壁に
   穿設された連通孔と、前記フアン室を外部と連通
   するように前記ケーシングのフアン室側に形成さ
   れた排気口と、前記吸気口、連通孔、排気口を介
   してクランク室、フアン室内に冷気を流通させる
   ように、前記フアン室内において回転軸に固着し
   て設けられた多翼フアンとから構成してなるスク
   ロール圧縮機。