JPS629043B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、自動車に装備されるリヤサスペンシ
ヨンに関し、特にバンプ時にホイールをトーイン
変化およびキヤンバ変化させるようにしたものに
関する。

（従来の技術） 一般に、自動車のリヤサスペンシヨンにおい
て、悪路走行時や旋回走行時等のようにホイール
がバンプする場合、走行安定性を向上させるため
には、ホイールを走行方向に対して内側に向くよ
うにトーイン変化させることが好ましいことは知
られている。

そのため、従来、例えば米国特許第3759542号
明細書および図面に開示されているように、ホイ
ールを回転自在に支持するホイール支持部材と、
各々一端を車体に揺動自在に支持し、他端を弾性
部材を介してホイール支持部材の前後部に支持し
た車体左右方向に平行に延びる前後２本のラテラ
ルリンクと、ホイール支持部材の車体前後方向の
移動を規制するラジアスリンクとを備え、上記両
ラテラルリンクを、前側ラテラルリンクと後側ラ
テラルリンクとの傾斜角が互いに異なるように配
置して、ホイールのバンプ時に前側ラテラルリン
クとホイール支持部材との連結部を後側ラテラル
リンクとホイール支持部材との連結部よりも車体
内方に大きく変位させるようにすることにより、
ホイールをトーイン変化させるようにしたものが
提案されている。

（発明が解決しようとする問題点） ところが、自動車のリヤサスペンシヨンの車体
内方にはリヤサスペンシヨン部材やデイフアレン
シヤルなど種々の機構、部材が配置されており、
そのため、リヤサスペンシヨンの型式やリヤサス
ペンシヨン周りの構造によつては、スペース上、
車体左右方向に延びる前後２本のラテラルリンク
を傾斜角を異ならせて設けることが困難なことが
あり、また構造が複雑となつて、上述の如きリヤ
サスペンシヨンをそのまま採用できない場合があ
る。

そこで、本発明は斯かる点に鑑みてなされたも
ので、バンプ時、リヤサスペンシヨンにおいてダ
ンパー機能をするスプリングユニツトのばね反力
を利用し、このばね反力を、ホイールを回転自在
に支持するホイール支持部材に適切に作用せしめ
て、ホイールをトーイン変化のみならず負の方向
（ホイールの外周下端接地部が車体左右方向外側
に移動してホイールが下開き状態となる方向）に
キヤンバ変化させるようにすることにより、既存
の構成部材（スプリングユニツト）の利用による
簡単な構造によつてバンプ時のトーイン効果およ
び負の方向のキヤンバ効果を有効に実現すること
を目的とするものである。

この目的を達成するため、本発明の構成は、ホ
イールを回転自在に支持するホイール支持部材
と、一端を車体に揺動自在に支持し、他端を弾性
部材を介して上記ホイール支持部材に支持した揺
動部材と、上端を車体に、下端をホイール支持部
材にそれぞれ連結したスプリングユニツトとを備
え、上記スプリングユニツトはホイール支持部材
の上下方向仮想回転軸より後方位置において車体
外方下向きに傾斜してかつ上記ホイール支持部材
の揺動軸より車体左右方向内側位置において取付
けられており、バンプ時に発生するスプリングユ
ニツトのばね反力の水平外向き分力によりホイー
ル支持部材をトーイン方向に回転変位させ、ホイ
ールをトーイン変化させるとともに、上記ばね反
力の垂直下向き分力によりホイールを負の方向に
キヤンバ変化させるようにしたものである。

（作用） この構成により、本発明では、車体とホイール
支持部材との間に装着されるスプリングユニツト
が該ホイール支持部材に対し、ホイール支持部材
の上下方向仮想回転軸よりも後方位置でかつその
揺動軸よりも車体左右方向内側位置において車体
外方下向きに傾斜して取り付けられ、しかもホイ
ール支持部材は揺動部材に対して弾性部材を介し
て支持されているため、ホイールのバンプ時、ホ
イール支持部材に作用するスプリングユニツトの
ばね反力のうち、その水平外向き分力によりホイ
ールがトーイン変化する。しかも、上記スプリン
グユニツトからのばね反力の垂直下向き分力によ
りホイールが負の方向にキヤンバ変化する。この
ホイールのトーイン変化および負の方向のキヤン
バ変化により自動車の走行安定性をより一層確実
に向上できるのである。

しかも、このホイールのトーイン変化およびキ
ヤンバ変化を既存のスプリンユニツトからの反力
を利用して行つているため、特別な部材は必要な
く、上記作用効果を簡単な構造で実現できること
となる。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に
説明する。

第１図および第２図は本発明をセミトレーリン
グ式リヤサスペンシヨンに適用した第１実施例を
示し、左側後輪のリヤサスペンシヨンを示してい
る。１はホイール、２はホイール１を回転自在に
支持するホイール支持部材としてのホイールハブ
である。また、３はほぼ車体前後方向に延びる揺
動部材としてのセミトレーリングアームであつ
て、該セミトレーリングアーム３の一端すなわち
二又状の前端は弾性体ブツシユ４，４を介して車
体に上下方向に揺動自在に支持されており、一
方、他端（後端）は、上記ホイールハブ２をほぼ
車体方向に貫通する支軸５の各前後軸端部に回転
自在に嵌合する弾性部材としての弾性体ブツシユ
６，６を介して該ホイールハブ２に回動自在に弾
性的に支持されている。さらに、７はほぼ上下方
向に配設されたシヨツクアブソーバで、該シヨツ
クアブソーバ７の上端は車体に、下端はホイール
ハブ２にそれぞれ連結されている。また、８はほ
ぼ上下方向に配設されたコイルスプリングよりな
るスプリングユニツトで、該スプリングユニツト
８の上端は車体に、下端はホイールハブ２にそれ
ぞれ連結されている。

そして、本発明の特徴として、上記スプリング
ユニツト８は、上記ホイールハブ２におけるホイ
ール中心軸を含み垂直面と直交する面内を回転す
る上下方向仮想回転軸Ｐに対して、該ホイールハ
ブ２の上下方向仮想回転軸Ｐよりも後方位置でし
かも弾性体ブツシユ６，６を通る線上にある、ホ
イールハブ２の揺動軸よりも車体左右方向内側位
置で連結され、かつ車体側から斜め外方下向きに
傾斜してホイールハブ２に取付けられている。

したがつて、上記第１実施例においては、ホイ
ール１のバンプ時、セミトレーリングアーム３は
その車体との連結部（弾性体ブツシユ４，４）を
回動中心として回動し、それに伴つて該セミトレ
ーリングアーム３の後端に連結されたホイールハ
ブ２は上方に移動する。その際、このバンプ荷重
に対してその反力として、スプリングユニツト８
に外方下向きのばね反力が発生し、このばね反力
はホイールハブ２の上下方向仮想回転軸Ｐより後
方位置に作用することになる。そのことにより、
ホイールハブ２は、上記ばね反力のうちの水平外
向きの分力によつて、上記仮想回転軸Ｐを中心と
してトーイン方向（図で時計回り方向）に回転変
位し、ホイール１がトーイン変化することにな
り、走行安定性を向上させることができる。

また、これと並行して、バンプ時には上記スプ
リングユニツト８のばね反力がホイールハブ２の
水平揺動軸（弾性体ブツシユ６，６を通る線上に
ある軸）よりも車体内方に作用する。このため、
該ばね反力の垂直下向き分力はホイールハブ２を
水平揺動軸を中心としていわゆる負のキヤンバ方
向に回転させるモーメント力となつて作用し、こ
のことによりホイール１を負の方向にキヤンバ変
化させることができる。よつて、この負の方向の
キヤンバ変化および上記トーイン変化の相乗的な
効果により自動車の走行安定性をより一層向上さ
せることができる。

しかも、この場合、このようなバンプ時におけ
るトーイン変化および負の方向のキヤンバ変化
を、既存のスプリングユニツト８のばね反力にお
ける水平外向きおよび垂直下向きの各分力の利用
により、簡単な構造でもつて有効にかつ確実に得
ることができる。

第３図および第４図は本発明をストラツト式リ
ヤサスペンシヨンに適用した第２実施例を示し、
１０はホイール１１を回転自在に支持するホイー
ル支持部材としてのホイールハブ、１２および１
３は車体左右方向に延びる揺動部材としての前後
２本の２リンク式サスペンシヨンアームであつ
て、該両サスペンシヨンアーム１２，１３の長さ
はほぼ等しく設けられているとともに、前側サス
ペンシヨンアーム１２は車体後方外向きに傾斜
し、後側サスペンシヨンアーム１３は車体前方外
向きに傾斜するように配置されている。該各サス
ペンシヨンアーム１２，１３の基端部はそれぞれ
車体前後方向にほぼ平行な軸心を有する弾性体ブ
ツシユ１４，１５を介して車体１６に上下方向に
揺動自在に支持されている一方、先端部はそれぞ
れ車体前後方向にほぼ平行な軸心を有する弾性部
材としての弾性体ブツシユ１７，１８を介して上
記ホイールハブ１０の前後部に回動自在に弾性的
に支持されている。また、１９は車体前後方向に
延びホイール１１に加わる車体前後方向の力をそ
の長さ方向に受けて分担するラジアスリンクとし
てのトレーリングリンクであつて、該トレーリン
グリンク１９の前端は車体１６に、後端はホイー
ルハブ１０の下端にそれぞれ車体左右方向にほぼ
平行な軸心を有する弾性体ブツシユ２０，２１を
介して回動自在に弾性的に連結されている。さら
に、２２はほぼ上下方向に延びるシヨクアブソー
バよりなるストラツトであつて、該ストラツト２
２の上端は車体１６に、下端はホイールハブ１０
にそれぞれ連結されており、また２３はほぼ上下
方向に延びるコイルスプリングよりなるスプリン
グユニツトであつて、同じく該スプリングユニツ
ト２３の上端は車体１６に、下端はホイールハブ
１０にそれぞれ連結されている。

そして、上記ホイールハブ１０におけるホイー
ル中心軸を含み垂直面と直交する面内を回転する
上下方向仮想回転軸P′（前後サスペンシヨンアー
ム１２，１３の延長交点を通る軸）に対して、上
記スプリンクユニツト２３は車体前後方向のオフ
セツト量e₁をもつて後方位置で連結されていると
ともに、車体側から斜め外方下向きに傾斜して取
付けられている。また、上記スプリングユニツト
２３は、ホイールハブ１０におけるホイール中心
軸を含む垂直面内を回転する水平揺動軸Ｑ（前後
サスペンシヨンアーム１２，１３とホイールハブ
１０との各連結部を結ぶ車体前後方向の軸）より
もオフセツト量e₂をもつて車体左右方向内側位置
で連結されている。

したがつて、本例においても、バンプ時、ホイ
ールハブ１０が前後サスペンシヨンアーム１２，
１３を介して上方に揺動する際、スプリングユニ
ツト２３の外方下向きのばね反力Ｓがホイールハ
ブ１０に対しその上下方向仮想回転軸P′より後方
位置に作用して、該ばね反力Ｓの水平外向き分力
S₁によりホイールハブ１０をトーイン方向に回転
させるモーメント力が生じるので、ホイール１１
がトーイン変化し、上記第１実施例と同様に簡単
な構造でもつて走行安定性を向上できる。

また、スプリングユニツト２３のばね反力Ｓが
ホイールハブ１０の水平揺動軸Ｑより車体内方位
置に作用するので、該ばね反力Ｓの垂直下向き分
力S₂はホイールハブ１０を水平揺動軸Ｑを中心と
してキヤンバ方向（第４図で時計回り方向）に回
転させるモーメント力として作用することにな
り、ホイール１１をキヤンバ変化させることがで
き、走行安定性をより一層向上させることができ
る。

尚、本発明は上記実施例に限定されるものでは
なく、その他種々の変形例をも包含するものであ
る。例えば、上記実施例の如きセミトレーリング
式、ストラツト式リヤサスペンシヨンの他に、ウ
イツシユボン式などの各種ダブルリンク式あるい
は各種スイングアーム式のリヤサスペンシヨンに
対しても適用できるものである。例えばウイツシ
ユボン式の場合、車体左右方向に延びる上下２本
のアームが本発明における揺動部材を構成し、該
両アームの先端部を弾性部材を介してホイール支
持部材に支持し、かつ該ホイール支持部材にスプ
リングユニツトをホイール支持部材の上下方向仮
想回転軸より後方位置でかつホイール支持部材の
揺動軸よりも車体左右方向内側で車体外方外向き
に傾斜させて取付ければよい。

（発明の効果） 以上説明したように、本発明によれば、ホイー
ルを回転自在に支持するホイール支持部材と、一
端を車体に揺動自在に支持した揺動部材とを弾性
部材を介して接続し、該ホイール支持部材に、上
端を車体に連結したスプリングユニツトの下端
を、ホイール支持部材の上下方向仮想回転軸より
後方位置でかつホイール支持部材の揺動軸よりも
車体左右方向内側で車体外方外向きに傾斜させて
取付けるという簡単な構造により、バンプ時、上
記スプリングユニツトのばね反力の水平外向き分
力によりホイールをトーイン変化させるととも
に、垂直下向き分力によりホイールを負の方向に
キヤンバ変化させることができるので、既存のス
プリングユニツトのばね反力の利用によりバンプ
時のトーイン効果および負の方向のキヤンバ効果
を有効かつ確実に実現でき、走行安定性の向上並
びに構造の簡略化に大いに寄与し、容易に実施可
能であるなど実用上優れた効果を奏するものであ
る。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を例示し、第１図および
第２図はそれぞれ第１実施例を示す斜め後方から
見た斜視図および平面図、第３図および第４図は
それぞれ第２実施例を示す平面図および後方から
見た立面図である。 １……ホイール、２……ホイールハブ、６……
弾性体ブツシユ、８……スプリングユニツト、１
０……ホイールハブ、１２，１３……サスペンシ
ヨンアーム、１６……車体、１７，１８……弾性
体ブツシユ、２３……スプリングユニツト、Ｐ，
P′……上下方向仮想回転軸。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ホイールを回転自在に支持するホイール支持
   部材と、一端を車体に揺動自在に支持し他端を弾
   性部材を介して上記ホイール支持部材に支持した
   揺動部材と、上端を車体に、下端をホイール支持
   部材に連結したスプリングユニツトとを備え、上
   記スプリングユニツトはホイール支持部材の上下
   方向仮想回転軸より後方位置において車体外方下
   向きに傾斜してかつ上記ホイール支持部材の揺動
   軸より車体左右方向内側位置において取付けられ
   ており、バンプ時に上記スプリングユニツトのば
   ね反力の水平外向き分力によりホイールをトーイ
   ン変化させるとともに、ばね反力の垂直下向き分
   力によりホイールを負の方向にキヤンバ変化させ
   るように構成したことを特徴とする自動車のリヤ
   サスペンシヨン。