JPS627031Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はクランク軸の表面を伝わつてケース外
へ潤滑油が漏出するのを防ぐ内燃機関の油切装置
に関する。

一般にクランク軸に嵌合すると共にケースに固
着される油切蓋には、ラビリンス溝やあるいはＶ
型パツキン等のシール手段が施されているが、漏
出しようとする潤滑油を常に完全に阻止すること
は無理である。従つてラビリンス溝等を通過して
クランク軸のケース外露出部分の表面にまで潤滑
油が流れ出てくると、クランク軸の回転により潤
滑油が飛び散り、ケースの表面等を汚したり、あ
るいは潤滑油が作業者にひつかかるという不具合
がある。

本考案は上記のような不具合を解消すると共
に、外部からの塵や水がシール手段の部分まで侵
入しないようにすることを目的としている。以下
図面に基づいて本考案を説明する。

内燃機関の縦断面部分図である第１図におい
て、１はエンジン台板、２はシリンダブロツク、
３はケース（シリンダブロツク蓋）である。エン
ジン台板１の軸受部５とメタルキヤツプ６によつ
てクランク軸７が支承されており、クランク軸７
は油切用フランジ部８を備えると共に、ケース３
の貫通孔１０から外側（第１図の右側）へ突出し
ている。ケース３の貫通孔１０のクランク室１２
側部分には環状の内向き突起１３が形成され、内
向き突起１３の内周面は油切用フランジ部８の外
周面にわずかな〓間を隔てて対向し、また内向き
突起１３の第１図の右側近傍には垂直な第１逃し
孔１５が形成されている。

クランク軸７のケース３より突出する部分には
環状の油切蓋１６が嵌合し、油切蓋１６はその外
周端部分がボルト１７によりケース３に固着され
ている。油切蓋１６は上下２つ割型である。

第１図のイ部分の拡大図である第２図におい
て、油切蓋１６の左側端面１７は油切用フランジ
部８の右側端面とわずかな〓間を隔てて対向し、
また油切蓋１６の左端部分の外周側には油切用フ
ランジ部８の外径と略同径の外向き環状突起１８
が形成されている。油切蓋１６の内周面にはクラ
ンク軸７の長さ方向に間隔を隔てて複数個（３
個）の環状ラビリンス溝２０が形成されると共
に、油切蓋１６の左端部分には左側が開口した円
周溝２１が形成されている。円周溝２１の下端に
は垂直な第２逃し孔２２が形成されている。油切
蓋１６にはクランク軸７と平行なきり孔２３が形
成され、このきり孔２３は全部のラビリンス溝２
０の下端底部に連通すると共に、円周溝２１に開
口している。

油切蓋１６の右端部分の内周面には環状溝２５
が形成されており、環状溝２５の下端底部には垂
直な排出孔２６が形成され、排出孔２６の下端は
ケース３の外部に下向きに開口している。

クランク室１２からクランク軸７の表面を通つ
て漏出しようとする潤滑油は、第１段階として内
向き突起１３とフランジ部８間の〓間で油切り作
用を受け、第２段階として油切蓋１６の左端面１
７とフランジ部８の右端面の間の隙間で油切り作
用を受け、段３段階として各ラビリンス溝２０よ
り油切り作用を受ける。油切蓋１６の左端面１７
とフランジ部８の右端面間で油切りされた潤滑油
は第１逃し孔１５を通つてクランク室１２へ戻さ
れる。各ラビリンス溝２０によつて油切りされた
潤滑油はきり孔２３、円周溝２１、第２逃し孔２
２及び第１逃し孔１５を通つてクランク室１２に
戻される。

ラビリンス溝２０をも通過した潤滑油は環状溝
２５から排出孔２６を通つて穏やかに下方へ滴下
される。即ち環状溝２５と排出孔２６を設けるこ
とにより、油切蓋１６の右端より左右のクランク
軸７の表面部分に潤滑油が流れてゆくことはなく
なるので、クランク軸７の回転によりケース３外
でクランク軸７の表面から潤滑油が飛散すること
はない。

また外部からクランク軸７と油切蓋１６間に侵
入する水や塵は環状溝２５の部分において阻止さ
れ、排出孔２６から排出される。

また油切蓋１６の左端部に外向き突起１８を形
成することにより、油切蓋１６の左端面１７とフ
ランジ部８間の隙間の長さ、即ち第２図における
上下方向の長さを長くしているので、上記隙間に
よる油切り作用が大きくなつている。

第１，第２図は内燃機関の後端部分、即ちクラ
ツチ等が接続される側のクランク軸部分に本考案
を採用した例を示したが、第３図は内燃機関の前
端部分に採用した例を示している。第３図におい
て、クランク軸７はケース（ギヤケース蓋）３３
からケース３３の外部、即ち第３図の左側へ突出
しており、油切蓋３６にはクランク軸７に軸継手
３０を介して間接的に嵌合し、ボルト３７により
ケース３３に固着されている。軸継手３０はキー
３１を介してクランク軸７と一体回転する。油切
蓋３６の内周面にはクランク軸７の長さ方向に間
隔を隔てた２個の環状ラビリンス溝４０と、両ラ
ビリンス溝４０間に位置する断面積の大きな環状
逃し溝４１が形成されており、ラビリンス溝４０
及び逃し溝４１の下端底部はそれぞれ垂直な逃し
孔４２を介してクランク軸７と平行なきり孔４３
に連通している。油切蓋３６の下端には排油パイ
プ４５の先端おねじ部が螺着されており、上記き
り孔４３は排油パイプ４５を介してオイルパンに
連通している。

油切蓋３６のケース３３側とは反対側、即ち第
３図の左側の端部の内周面に環状溝４６が形成さ
れており、環状溝４６の下端底部には垂直な排出
孔４７が形成され、排出孔４７の下端にはケース
３３の外部に開口している。

第３図の環状溝４６と排出孔４７を設けること
による効果は、第１，第２図の場合と同じであ
る。

以上説明したように本考案によると： (1) ケース３，３３の内部からクランク軸７の表
面又は軸継手３０の表面に沿つて漏出しようと
する潤滑油がケース３，３３の外部で飛び散る
のを防ぐことができる。

即ちケース３，３３側とは反対側の油切蓋１
６，３６端部の内周面に環状溝２５，４６を形
成すると共に、環状溝２５，４６の下端底部を
排出孔２６，４７を介してケース３，３３の外
部に連通しているので、たとえ潤滑油がラビリ
ンス溝２０，４０等のシール手段の部分を通過
しても、環状溝２５，４６及び排出孔２６，４
７を通つて穏やかに滴下されることになり、潤
滑油がクランク軸７又は軸継手３０のケース
３，３３外露出部分の表面にまで流れ出ること
はなくなる。従つてクランク軸７の回転によつ
てケース３，３３の外部で潤滑油が飛び散るこ
とはなくなり、ケース３，３３の表面等が汚れ
る心配はない。

(2) 外部からの塵や水がシール手段部分まで侵入
するのを阻止できる。

即ちケース３，３３側とは反対側の油切蓋１
６，３６部分に環状溝２５，４６と排出孔２
６，４７を設けているので、外部からの塵や水
を環状溝２５，４６の部分で阻止し、排出孔２
６，４７を介してケース３，３３の外部へ排出
することができる。つまり防塵及び防水機能が
大幅に向上する。

(3) 全ラビリンス溝２０，４０はクランク軸７と
平行な孔（きり孔２３等）に連通し、このきり
孔２３，４３は第２図では逃し孔２２を介して
ケース３内に連通し、第３図ではパイプ４５を
介してオイルパンに連通し、一方環状溝２５，
４６は排出孔２６，４７を介してケース外部に
連通している。

即ちラビリンス溝２０，４０に溜る油と、環
状溝２５，４６内に溜る塵等を含んだ油との排
出経路を異ならせており、しかもラビリンス溝
２０，４０内に溜る比較的きれいな油はケース
３内あるいはオイルパン内に回収して再利用で
きるようにし、一方外部からの塵等がまざる環
状溝２５，４６内の油はケース外部に放出する
ようになつている。従つて塵等がまざつていな
い比較的きれいな油のみを有効に再利用するこ
とができ、実用的である。

(4) 環状溝２５，４６を油切蓋１６の内周面に複
数のラビリンス溝２０，４０と共に形成するの
で、ラビリンス溝２０，４０及び環状溝２５，
４６を同時に切削加工することができ、加工が
簡単である。またラビリンスフイン等によりラ
ビリンス機構を構成する場合に比べて、部品点
数も減り、油切蓋１６の組付け作業も容易であ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案による油切装置を備えた内燃機
関の縦断面部分図、第２図は第１図のイ部分の拡
大図、第３図は別の実施例を示す内燃機関の縦断
面部分図である。 ３，３３……ケース、７……クランク軸、１
６，３６……油切蓋、２０，４０……環状ラビリ
ンス溝（シール手段の１例）、２５，４６……環
状溝、２６，４７……排出孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クランク軸７のケース３より突出する部分に環
   状の油切蓋１６を嵌合すると共に、油切蓋１６を
   ケース３に固着し、シール手段として油切蓋１６
   の内周側に複数の環状ラビリンス溝２０，４０を
   形成し、上記全ラビリンス溝２０，４０をクラン
   ク軸７と平行な孔２３，４３により連通すると共
   に該孔２３，４３をケース３内あるいは排油パイ
   プを介してオイルパン内に連通し、ケース３から
   最も遠い環状ラビリンス溝２０，４０よりもさら
   に遠い位置に位置する環状溝２５，４６を、油切
   蓋１６の内周面に形成し、環状溝２５，４６の下
   端底部を略垂直な排出孔２６，４７を介してケー
   ス外部と連通したことを特徴とする内燃機関の油
   切装置。