JPS625468B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は耐地汚れ性と流動性の優れた乾式平版
印刷用インキ組成物に関するものである。

現在の印刷の主流をなす平版印刷においては、
水と油性インキとが互いに反発する性質を利用
し、親水性の非画線部と親油性の画線部とからな
る版を用い、親水性の非画線部に水を付着させ、
他方親油性の画線部に油性インキを付着させたの
ち、上記画線部に付着した油性インキを被印刷物
に転移させることによつて、目的の印刷物を得る
という操作によつて印刷が行なわれている。

しかしながら、かかる平版印刷法においては、
非画線部へのインキの付着を防止する役目をして
いる湿し水のコントロールがむずかしく、また印
刷適性および印刷効果の面からも湿し水を用いる
ことが大きな技術的障害の一つとなつている。そ
のため、かかる湿し水と必要としない平版印刷版
を使用する乾式平版印刷を行なう試みが、今まで
に色々と提案されたきた。この乾式平版印刷につ
いて最も新しく、実用性ある方法として、シリコ
ーンゴム等の非粘着性薄膜を非画線部にもうけた
平版印刷用刷版を用いて印刷する方法があげら
れ、この場合、版面への湿し水の供給なしに、一
般の油性インキで印刷できると報告されている。
しかしながら、実際には、従来の油性インキを用
いて印刷すると、印刷適性が不適当なために、地
汚れが発生するという欠点があつて好ましくない
ことがわかつた。これを改良するものとして、イ
ンキの凝集力を向上させ、インキのタツクを大き
くするとか、付着エネルギー低下剤としてオルガ
ノポリシロキサン等をインキに添加するなどの方
法がとられている。しかしながら、かかる方法を
用いた場合、耐地汚れ性は改善されるが、インキ
の流動性が十分でなく、そのためインキ着肉性、
光沢などの印刷物品質が良好でないなどの問題が
あることがわかつた。

本発明者らは、上記の乾式平版印刷法に適合す
るインキ組成物について鋭意検討した結果、（メ
タ）アクリル酸エステル重合体をビヒクルの一成
分とするインキ組成物が良好な結果を与えること
を見出し、本発明に到達した。

すなわち、本発明はアクリル酸またはメタクリ
ル酸、数平均炭素数が５〜40である一価のアルコ
ールとから生成される（メタ）アクリル酸エステ
ルの単独重合体または共重合体を0.1〜30重量％
含有することを特徴とする乾式平版印刷用インキ
組成物に関するものである。

ここに使用される（メタ）アクリル酸エステル
重合体とは、アクリル酸またはメタクリル酸と一
価のアルコールとから生成するアクリル酸エステ
ルまたはメタクリル酸エステルの単独重合体また
は共重合体を意味する。

（メタ）アクリル酸エステルの単独重合体の場
合における（メタ）アクリル酸エステルの一方の
構成成分である一価のアルコールとしては、炭素
数５〜40のアルコールが用いられる。一方（メ
タ）アクリル酸エステルの共重合体の場合には、
炭素数１〜40の範囲であつて、かつ用いられるア
ルコール成分全体の数平均炭素数が５〜40である
ような組合せのエステルが使用される。かかるア
ルコールの具体的な例としては、ｎ―ブタノー
ル、イソブタノール、ｎ―ヘキサノール、２―エ
チルヘキシルアルコール、ｎ―オクタノール、ラ
ウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステ
アリルアルコール、オレイルアルコール、リノレ
イルアルコールなどの脂肪族アルコール、シクロ
ペンタノール、シクロヘキサノール、２―メチル
シクロヘキサノール、シクロオクタノールなどの
脂環式アルコールなどがあげられる。

（メタ）アクリル酸エステル重合体の分子量と
しては10³〜10⁶のものが用いられ、特に、５×
10³〜５×10⁵のものが好ましい。これらの添加量
は、使用するインキの他の構成成分によつて決定
されるが、インキ組成物の全重量に対して0.1〜
30重量％、好ましくは0.5〜20重量％の範囲であ
る。

本発明に用いられる（メタ）アクリル酸エステ
ル重合体は上述のような組成のものであるが、本
発明の効果が損わない範囲で他のモノマが共重合
されていても良い。かかるモノマとしては、スチ
レン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル
アミド、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリ
ル酸などがあげられる。

ここで用いられるインキ組成物において、イン
キ組成物用ビヒクルの他の構成成分としては、公
知のもの、たとえば、乾性油、ロジン、ロジンエ
ステル、フエノール樹脂、ロジン変性フエノール
樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アミノアル
キド樹脂、ビニル樹脂などを使用することができ
るが、特にロジン変性フエノール樹脂が好まし
い。

また、着色剤としては、無機ないしは有機系顔
料などの従来のインキ組成物において使用されて
いるものを使用することができる。

さらに、その他の添加剤としては、たとえば、
ワツクス、グリース、乾燥剤、分散剤、充填剤、
その他の公知のものを使用することができる。

（メタ）アクリル酸エステル重合体を添加する
にあたつては、インキの製造の中間工程におい
て、（メタ）アクリル酸エステル重合体と他のビ
ヒクル構成成分とからワニスを製造し、ついでこ
のワニスをベースにしてインキ化してもよいし、
あるいはまた、他の構成成分から作りあげたイン
キに添加してもよい。

以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。

実施例 １ 下記の組成でアクリル酸２―エチルヘキシル重
合体（平均分子量50000）を含むインキ(A)と含ま
ないインキ(B)とを作つた。耐地汚れ性の尺度であ
る地汚れ発生温度を測定したところ、インキ(A)は
45℃であつたのに対して、インキ(B)は38℃であ
り、耐地汚れ性はアクリル酸２―エチルヘキシル
重合体を含むインキ(A)の方が優れていることがわ
かつた。

これらのインキのそれぞれについて小森スプリ
ント平版印刷機で版面へ湿し水を供給することな
しに、シリコーンゴムよりなる非粘着層を有する
乾式平版を用い印刷を行なつた。

その結果、両者ともインキ着肉性、光沢などが
良好な印刷物が得られた。

インキＡ；アクリル酸２―エチルヘキシル重合
体を含むインキ 印刷インキ用カーボンブラツク 20.0部 フタロシアニンブルー 3.0部 ロジン変性フエノール樹脂ワニン（） 7.0部 ロジン変性フエノール樹脂ゲルワニス（）
52.0部 アクリル酸２―エチルヘキシル重合体（平均分
子量50000） 3.0部 ワツクスコンパウンド 6.0部 ナフテン酸コバルト塩（金属濃度7.5部） 1.0部 ナフテン酸マンガン塩（金属濃度6.5部）1.0部 日石５号ソルベント 7.0部 計 100.0部 上記混合物を三本ロールを用いて練りあげたと
ころ、インコメーター・タツク13.8（400r.p.m、
30℃の１分値）の乾式平版用インキが得られた。

ロジン変性フエノール樹脂ワニス（）の処方 ロジン変性アルキルフエノール樹脂 48.0部 アマニ油 17.0部日石５号ソルベント 35.0部 計 100.0部 ロジン変性フエノール樹脂ゲルワニス（）の処
方 ロジン変性アルキルフエノール樹脂 48.0部 アマニ油 17.0部アルミニウムオクトエート
1.5部 日石５号ソルベント 33.5部 計 100.0部 インキＢ；アクリル酸２―エチルヘキシル重合
体を含まないインキ 印刷インキ用カーボンブラツク 20.0部 フタロシアニンブルー 3.0部 ロジン変性フエノール樹脂ワニス（） 10.0部 ロジン変性フエノール樹脂ゲルワニス（）
52.0部 ワツクスコンパウンド 6.0部 ナフテン酸コバルト塩（金属濃度7.5部） 1.0部 ナフテン酸コバルト塩（金属濃度6.5％）1.0部 日石５号ソルベント 7.0部 計 100.0部 上記混合物を三本ロールを用いて練り上げたと
ころ、インコメーター・タツク14.5のインキが得
られた。

耐地汚れ性の評価法（地汚れ発生温度の測定） 版胴に温水と通じて版面を昇温できるように改
造した印刷機に、シリコーンゴムよりなる非粘着
層を有する乾式平版刷版をとりつけ、湿し水を供
給することなしに、版面を昇温しながら印刷し、
一定のベタ濃度において印刷物に地汚れが発生し
た際の版面温度を地汚れ発生温度とした。地汚れ
発生温度の高いインキほど実用印刷において地汚
れが発生しにくかつた。

比較例 １ 実施例１の組成において、アクリル酸２―エチ
ルヘキシル重合体の代りに、メタクリル酸ブチル
系重合体（三菱レーヨン（株）製BR―102、分子
量36万）を使用したインキを作製し、実施例１と
同様なインキ評価を行なつたところ、印刷機上で
の転移性が悪く、刷色も不安定であつた。また、
地汚れ発生温度を測定したところ、35℃であり、
インキ(B)よりも更に低い（悪い）値を示した。

インコメータによるタツク値は12.0（400r.p.
m）と低い値であつたが、金属ロールはげが発生
した。

実施例 ２ 下記組成でメタクリル酸ラウリルとアクリル酸
ブチルとの共重合体（共重合比８：２、平均分子
量25000）を含むインキＣと含まないインキＤと
を作つた。地汚れ発生温度を測定したところイン
キＣは42℃であり、インキＤは37℃で、インキＣ
の方が耐地汚れ性が優れていた。

これらのインキのそれぞれについて小森スプリ
ント平版印刷機で版面へ湿し水を供給することな
しに、シリコーンゴムよりなる非粘着層を有する
乾式平版を用いて印刷を行なつた。両者とも、イ
キ着肉性、光沢などの良好な印刷物が得られた。

インキＣ；メタクリル酸ラウリルとアクリル酸
ブチルとの共重合体を含むインキ ベンジジンイエローＧ 15.0部 ロジン変性フエノール樹脂ワニス（） 15.0部 ロジン変性フエノール樹脂ゲルワニス（）
58.0部 メタクリル酸ラウリルとアクリル酸ブチルとの
共重合体（共重合比８：２、平均分子量
25000） 4.0部 ペーストドライヤー 0.5部日石５号ソルベント 7.5部 計 100.0部 上記混合物を三本ロールを用いて練りあげたと
ころ、インコメーター・タツク13.5のインキが得
られた。

ロジン変性フエノール樹脂ワニス（）の処方 ロジン変性アルキルフエノール樹脂 45.0部 アマニ油 5.0部 長油性アマニ油アルキド樹脂 15.0部 日石５号ソルベント 35.0部 計 100.0部 ロジン変性フエノール樹脂ゲルワニス（）の処
方 ロジン変性アルキルフエノール樹脂 45.0部 アマニ油 5.0部 長油性アマニ油アルキド樹脂 15.0部 アルミニウムオクトエート 34.0部日石５号ソルベント 34.0部 計 100.0部 インキＤ；アクリル酸エステル重合体を含まな
いインキ ベンジジンイエローＧ 15.0部 ロジン変性フエノール樹脂ワニス（） 19.0部 ロジン変性フエノール樹脂ゲルワニス（）
58.0部 ペーストドライヤー 0.5部日石５号ソルベント 7.5部 計 100.0部 比較例 ２ 実施例１のインキＡの組成で、アクリル酸２―
エチルヘキシルの代りに、弗素系界面活性剤であ
る“フロラード”FC―430（住友スリーエム
（株）製）を使用してインキＦを得た。このイン
キの地汚れ発生温度を測定したところ、38℃であ
り、本発明のインキＡに比べて著しく劣るもので
あつた。また機上安定性やインキ転移性の点でも
本発明のインキに比べて劣るものであつた。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ アクリル酸またはメタクリル酸と、数平均炭
   素数が５〜40である一価のアルコールとから生成
   される（メタ）アクリル酸エステルの単独重合体
   または共重合体を0.1〜30重量％含有することを
   特徴とする乾式平版印刷用インキ組成物。