JPS624093B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は巾着網等の漁網を海中から漁船の甲
板上に引き上げる場合に使用する格納式ブーム型
船尾揚網装置に関するものである。

従来、漁船における揚網装置としては、漁船の
船尾の甲板上に左右方向に延長するレールを敷設
し、かつそのレールに摺動自在に嵌設された可動
フレームに、駆動装置により回転される揚網ロー
ラを有する揚網機を、縦軸を中心として旋回でき
るように取付け、さらに前記可動フレームには、
これをレールに沿つて移動させる移動用駆動装置
および揚網機を旋回させる旋回用駆動装置を設け
た型式のものが知られている。

しかるに、この型式の揚網装置の場合は、非揚
網においても常に揚網機が漁船の甲板から上方に
突出しているので、その漁船の船尾に他の漁船の
船首が接近したとき、その船首が前記揚網機に突
き当つてこれを破損させる恐れがあり、かつ甲板
上に揚網機および可動フレームが突出しているの
で、その揚網機および可動フレームが船上作業の
邪魔になつて甲板上の有効作業面積が狭くなり、
さらに揚網機および可動フレームが投網作業の邪
魔になり、しかも甲板からの揚網ローラの高さが
低いので、揚網時に漁網が船体と摩擦して損傷し
易いという問題がある。

また一方、従来の揚網方式の場合は、漁船の舷
側で漁網の一側部を支持しながら、漁船の船尾に
おいて揚網を行ない、次いで揚網作業が終りに近
くなると、漁船の舷側においても揚網を行なうと
共に、その舷側において網締環の巻揚げ作業を行
なつているので、網張力が船体の側方から作用し
て船体が不安定になり、そのため船体の復元性の
点で相当無理な船体構造が要求され、かつ船体の
復元性を良くするために、船速その他の必要条件
がかなり犠牲にされ、不経済な船体構造となつて
いた。またこのように配慮された船体構造の場合
でも、荒天時には船体の復元性が不足して危険性
を伴なつていた。

この発明は、前述の問題を有利に解決しかつ漁
船の船尾に設けた２台のブーム型揚網装置により
漁網の一側部を支持して他側部を引き上げていく
ことができる格納式ブーム型船尾揚網装置を提供
することを目的とするものである。

次にこの発明を図示の例によつて詳細に説明す
る。

第１図ないし第１０図はこの発明の一実施例を
示すものであつて、漁船１の船尾に左右方向に延
長する揚網装置格納用凹部２が設けられ、かつそ
の凹部２の左右両側には、後部旋回台４Ａ，４Ｂ
が配置され、各後部旋回台４Ａ，４Ｂはそれぞれ
支持台１１に固定された縦軸１２に旋回自在に嵌
合され、各支持台１１は前記凹部２の底部にボル
ト１３により固定されている。各後部旋回台４
Ａ，４Ｂには前記縦軸１２と同心的に配置された
ウオーム歯車１４が固定され、前記支持台１１に
固定された旋回用駆動装置３により回転されるウ
オーム１５は前記ウオーム歯車１４に噛み合わさ
れ、前記旋回用駆動装置３によりウオーム１５お
よびウオーム歯車１４を介して後部旋回台４Ａ，
４Ｂが旋回されるように構成されている。

各後部旋回台４Ａ，４Ｂには、伸縮自在な後部
ブーム６Ａ，６Ｂが横軸７により枢着され、各後
部ブーム６Ａ，６Ｂは中空孔を有する主ブーム１
６とその中に摺動自在に嵌挿された中空孔を有す
る補助ブーム１７とそれらのブーム１６，１７を
連結する液圧シリンダ装置からなる伸縮装置１８
とにより構成され、各後部ブーム６Ａ，６Ｂにお
ける主ブーム１６の中間部と各後部旋回台４Ａ，
４Ｂとは液圧シリンダ装置からなる俯仰用ジヤツ
キ５を介して連結されている。

各後部ブーム６Ａ，６Ｂの先端部に固定された
アーム１９には、後部揚網機１０Ａ，１０Ｂが緩
衝装置２０を介して吊下げられ、前記後部揚網装
置１０Ａ，１０Ｂは、フレーム２１に回転自在に
取付けられた揚網ローラ９とこれを駆動するロー
ラ駆動装置８とにより構成されている。前記緩衝
装置２０は、下端に支持片２２を連設した横断面
円形の箱体２３と、その箱体２３の上端板に回動
および摺動自在に嵌挿された吊り杆２４と、その
吊り杆２４の下端のフランジ２５と前記箱体２３
の上端板との間に介在されたつる巻きばね２６と
により構成され、前記吊り杆２４の上端部は前記
アーム１９の先端部に対し水平な上部ボルト２７
により回動自在にかつ着脱自在に取付けられ、さ
らに前記支持片２２の下端部は、後部揚網機１０
Ａ，１０Ｂのフレーム２１の上部に対し水平な下
部ボルト２８により回動自在にかつ着脱自在に取
付けられている。また後部ブーム６Ａ，６Ｂの基
端側には、揚網ローラ９に対する漁網２９の巻付
角度を大きくするためのガイドローラ３０，３１
が横軸３２により回転自在に取付けられている。

漁船１における機関室３３付近には、後部旋回
台と同様の手段により縦軸を中心として回動され
る前部旋回台３４が設置され、かつその前部旋回
台３４には、後部ブームと同一構造の伸縮自在な
前部ブーム３５の基端部が横軸により俯仰自在に
取付けられ、前部ブーム３５の先端部には、ロー
ラ駆動装置３６により回転される送網ローラ３７
を備えている送網機３８のフレーム３９が前述の
ような緩衝装置２０を介して吊下げ支持され、ま
た前部ブーム３５も後部ブームと同様に俯仰用ジ
ヤツキ５により俯仰されるように構成されてい
る。

漁船１の船尾側には、揚網装置格納用凹部２の
船首側に隣接する位置においてロープガイド装置
格納用凹部４０が設けられ、その凹部４０内の後
部１には支持フレーム４１の基端部が左右方向に
延長する横軸により枢着され、かつその支持フレ
ーム４１の先端部の左右両側には、保持金具４２
が左右方向に延長する支軸４３により枢着され、
その保持金具４２には、ロープ支承用滑車４４を
取付けた滑車支持金具４５が前後方向に延長する
支軸４６により枢着され、前記支持フレーム４１
はロータリーアクチユエータ４７により俯仰され
るように構成されている。また機関室３３付近に
は、前記前部旋回台３４の左側および右側の下方
において左舷主ウインチ４８および右舷主ウイン
チ４９が設けられている。

漁船１の船首側には、油圧モータ５３により駆
動される送水ポンプ５４と船底から送水ポンプの
吸入口に吸水する吸水管５５と送水ポンプ５４の
吐出口に接続された送水管５６とからなる１対の
側方推進装置５７，５８が設けられ、一方の側方
推進装置５７の送水管５６は漁船１の左舷側に開
口すると共に、他方の側方推進装置５８の送水管
５６は漁船１の右舷側に開口し、何れか一方の送
水管から噴射される水の噴射反力により漁船１の
船首側に側方推進力が与えられる。

漁網２９を海中から漁船１の甲板上に引き上げ
る場合は、第１図および第２図に示すように、例
えば漁網２９の一側部が、漁船１の右舷側後方上
部において後部ブーム６Ａの先端から吊下げられ
ている後部揚網機１０Ａの揚網ローラ９に巻掛け
られて支持され、かつ漁網２９の他側部は、漁船
１の左舷側後方上部に後部ブーム６Ｂの先端から
吊下げられている後部揚網機１０Ｂの揚網ローラ
９とガイドローラ３１と送網機３８の送網ローラ
３７とに順次巻掛けられ、その後部揚網機１０Ｂ
および送網機３８が運転されることにより、前記
漁網２９の他側部が海中から前記左舷側の後部揚
網機１０Ｂに向かつて引き揚げられ、次いで送網
機３８によりガイドローラ３１を経て船首側に牽
引移送され、続いてその送網機３８から下ろされ
て甲板上に堆積される。１個所の堆積が終ると、
前部ブーム３５の倒伏方向揺動またはこれとブー
ム伸長動作の併用により送網機３８が船尾側に向
かつて所定距離だけ移送され、前述のようにして
引き揚げられて船首側に移送された漁網は前記堆
積場所の船尾側に隣接する場所に堆積されてい
く。

漁網２９の下部の網締環に挿通されている引締
用ロープ５０の両側を主ウインチ４８，４９によ
り巻取る場合は、第２図に鎖線で示すように支持
フレーム４１を起立し、かつ前記滑車４４に前記
引締用ロープ５０を掛けてガイドする。

非揚網時には、第８図および第９図に示すよう
に、各後部ブーム６Ａ，６Ｂを凹部２内に倒伏し
て、各後部ブーム６Ａ，６Ｂとこれに付属する後
部揚網機１０Ａ，１０Ｂおよび他の部材を揚網装
置格納用凹部２内に格納し、その凹部２の開口部
に多数の蓋板５１を嵌合敷設し、また支持フレー
ム４１を倒伏回動して、その支持フレームとその
先端部に取付けられている滑車支持金具４５をロ
ープガイド装置格納用凹部４０内に格納し、その
凹部４０の開口部に多数の蓋５２を嵌合敷設す
る。

投網作業を行なう場合は、第８図および第９図
に示すように各後部揚網装置およびロープガイド
装置を格納した状態で船尾から投網する。

従来は投網作業および揚網作業を船首と船尾と
において分割して行なつているので、作業の連繋
および調整が悪くかつ作業手順も複雑で危険を伴
うと共に多数の作業員を必要とするという欠点が
あつたが、前述のように投網作業、環巻揚げ作業
および揚網作業の各作業を船尾において統合して
行なえば、投網作業、環巻揚げ作業、揚網作業の
手順を簡略化して、作業性能を向上させることが
でき、かつ漁撈機械類の機種、台数を統合、削減
することができ、そのため設備投資額の減少およ
び操業経費の節減を計ることができると共に必要
乗組員数を減少することができ、また安全にかつ
円滑にしかも短時間で全作業を実施することがで
きる。

後部ブーム６Ａ，６Ｂおよび前部ブーム３５を
クレーンとして利用する場合は、ブームの先端部
から揚網機および緩衝装置を外してその代りにフ
ツクを取付ければよい。

前部ブーム３５の俯仰および旋回手段として
は、トツピングウインチおよびバングウインチに
よりワイヤロープを介して行なつてもよい。また
前部ブーム３５は非伸縮式であつてもよいが、後
部ブーム６Ａ，６Ｂは伸縮式である方が好まし
い。さらにまた第１１図に示すように、滑車支持
金具４５を保持金具４２に対し前述のような緩衝
装置２０、上部ボルト２７および下部ボルト２８
を介して吊下げてもよい。

この発明によれば、非揚網時においては、各後
部揚網装置全体を漁船１に設けられた揚網装置格
納用凹部２内に格納しておくことができるので、
各後部揚網装置が漁船上の作業の邪魔になるのを
防止して、漁船上の作業スペースを広くすること
ができ、かつ他の漁船の船首が後部揚網装置に衝
突してこれを破損させる恐れを排除することがで
き、さらに投網時に各後部揚網装置が邪魔になる
ことはなく円滑な投網作業を行なうことができ、
その上、揚網時においても前記従来の揚網装置に
比べて作業スペースが広くなるので安全に操業す
ることができ、しかも各後部揚網装置を格納する
と、漁船の重心が低くなるので、荒天時における
漁船の安定性を向上させることができる。また揚
網を漁船の船尾のみにおいて行なうので、網張力
は船首尾方向にのみ作用し、漁船をローリングさ
せるような外力は作用しなくなり、そのため船体
の安定性が向上するので、船体復元性の配慮が不
要になつて経済的な船体構造を採用することがで
きると共に、船体の推進性能を向上させることが
でき、かつ推進用主機関の規模を縮小して船体コ
ストを低減させると共に燃料消費量を節減するこ
とが可能になり、また特に、荒天時の操業が安全
になり、かつ各後部ブーム６Ａ，６Ｂの先端側を
船尾から後方または斜め後方に張り出すことによ
り、漁網が漁船の推進用スクリユウにからまる恐
れをなくすることができ、さらに漁船の対網位置
や姿勢を推進用スクリユウまたは船首側に装備さ
れる噴水式側方推進装置により容易に調整できる
ので、漁船全体を側方に牽引する裏漕き船が不要
になる。さらにまた各後部旋回台４Ａ，４Ｂを旋
回すると共に後部ブーム６Ａ，６Ｂを俯仰するこ
とにより、各後部揚網機１０Ａ，１０Ｂの高さお
よび水平方向の位置を任意に調節することができ
るので、潮流、風向、風速等の海況によつて変化
する漁網２９の揚網方向あるいは魚種によつて異
なる漁網の規模に応じて任意の高さ、上下方向角
度および水平方向角度で揚網を行なうことができ
ると共に、最終網締め時の各後部揚網機１０Ａ，
１０Ｂによる漁網２９の保持巾を任意に調節して
適切な網成りを維持することができ、かつ各後部
揚網機１０Ａ，１０Ｂを漁船の甲板よりも相当高
い位置に配置できるので、揚網ローラ９に対する
漁網２９の巻付角度を大きくして漁網のスリツプ
を防止することができ、そのため揚網効率を向上
させることができる。また漁網２９を船体と摩擦
しないようにして引き揚げることができるので、
漁網の摺擦損傷を防止することができ、さらに後
部ブーム６Ａ，６Ｂをクレーンとしても利用でき
る等の効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第１０図はこの発明の一実施例を
示すものであつて、第１図は揚網を行なつている
状態を示す平面図、第２図はその一部縦断側面
図、第３図は後部ブームおよびその支持部を示す
一部縦断正面図、第４図は後部ブームの旋回部を
示す平面図、第５図は後部揚網機の緩衝支持部を
示す一部縦断側面図、第６図はロープガイド装置
の一部を示す正面図、第７図はその側面図、第８
図は後部揚網装置およびロープガイド装置を格納
した状態を示す縦断側面図、第９図は後部揚網装
置を格納した状態を示す縦断正面図、第１０図は
漁船の船首側に設けられた側方推進装置を示す平
面図である。第１１図は滑車支持金具の支持部の
変形例を示す正面図である。 図において、１は漁船、２は揚網装置格納用凹
部、３は旋回用駆動装置、４Ａおよび４Ｂは後部
旋回台、５は俯仰用ジヤツキ、６Ａおよび６Ｂは
後部ブーム、７は横軸、８は駆動装置、９は揚網
ローラ、１０Ａおよび１０Ｂは後部揚網機、１２
は縦軸、１４はウオーム歯車、１５はウオーム、
１６は主ブーム、１７は補助ブーム、１８は伸縮
装置、２０は緩衝装置、２９は漁網、３４は前部
旋回台、３５は前部ブーム、３８は送網機、４０
はロープガイド装置格納用凹部、４１は支持フレ
ーム、４４はロープ支承用滑車、４５は滑車支持
金具、４７はロータリーアクチユエータである。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 漁船１の船尾側に設けられた揚網装置格納用
   凹部２内の左右両側に、それぞれ旋回用駆動装置
   ３により縦軸を中心として回動される２台の後部
   旋回台４Ａ，４Ｂが設置され、各後部旋回台４
   Ａ，４Ｂには俯仰用ジヤツキ５により俯仰される
   後部ブーム６Ａ，６Ｂの基端部が横軸７により俯
   仰自在に取付けられ、かつ後部ブーム６Ａ，６Ｂ
   の先端部には、駆動装置８により回転される揚網
   ローラ９を有する後部揚網機１０Ａ，１０Ｂが取
   付けられていることを特徴とする漁船における格
   納式ブーム型船尾揚網装置。