JPS6231100Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案はミシンの上送り装置に関するもので
ある。

〔従来技術〕

ミシンの上送り装置は、加工布の上方に配置さ
れ、下方へ向うばね力を付与された上送り歯が加
工布下方の下送り歯とともに四送り運動を行つて
その加工布に上方から送りを付与するものであ
る。

〔考案が解決しようとする問題点〕

この場合、加工布が厚いものであると、上送り
歯が上昇したときもその上送り歯が加工布から離
れず、加工布に対して送り方向とは逆方向への送
りが作用するおそれがあつた。従つて、加工布が
厚い場合には上送り歯の上昇量を大きくする必要
がある。ただし、このような場合でも布送りを確
実なものとするために加工布が存在しない場合の
上送り歯の下降位置は上方へ移動しないほうがよ
い。つまり、加工布が厚い場合にはその加工布を
下送り歯との間で滑らないように確実に把持する
ために大きな布押え圧力を必要とする。

また、これとは逆に加工布が薄い場合には上送
り歯の上昇位置がそれに応じて下方移動するのが
よいが、下降位置まで下方移動すると、薄い加工
布にとつては布押え圧力が大きくなつてその加工
布が破れたりするおそれがある。従つて、この場
合にも加工布が存在しない場合の下送り歯の下降
位置は移動しないほうがよい。

以上のように、上送り歯の下降位置は加工布の
厚さにかかわらず一定であるのがよい。

〔考案の目的〕

この考案の目的は、以上のような課題を合理的
に満たすことができる上送り装置を提供すること
にある。

〔問題点を解決するための手段及びその作用〕

この考案においては、設定レバーと伝達レバー
と連結レバーとにより四節リンク機構を構成し、
上送り歯が最下点に位置する状態において、設定
レバーと連結レバーとの連結点が伝達レバーと連
結レバーとの連結点を中心とする円弧に沿い設定
レバーの変位を伴なうことなく移動可能に構成さ
れているので、連結レバーのみを、設定レバーと
伝達レバーとの位置関係に影響を及ぼすことなく
移動させることができ、この移動にかかわらず上
送り歯は最下点から移動しない。

〔実施例〕

以下、この考案をオーバーロツクミシンにおい
て具体化した一実施例を図面に基づいて説明す
る。

ミシン機枠１１の下部に支持され、図示しない
モータにより一方向へ積極回転されるミシン主軸
１２には水平送り用偏心輪１３が固定されてお
り、偏心輪抱き１４がその基端においてこの水平
送り用偏心輪１３を抱持している。

また、ミシン機枠１１には第一〜第六の支持軸
１５〜２０がそれぞれ定位置において回動可能に
支持されている。前記第一の支持軸１５には送り
調節部材２１がその中央部において固定され、そ
の一端には前記偏心輪抱き１４の先端が軸連結さ
れている。送り調節部材２１の他端部には調節溝
２２が形成されている。前記第二の支持軸１６に
は連結レバー７１および第二の揺動腕としての水
平送り腕２３がそれぞれ固定され、その連結レバ
ー７１の下端には連結リンク２４の一端が軸連結
されている。この連結リンク２４の他端には軸２
５により角コマ２６が取付けられており、その角
コマ２６が前記調節溝２２に摺動可能に嵌合され
ている。そして、前記送り調節部材２１と角コマ
２６とにより、後述する上送り歯３８の水平送り
量を調節するための送り調節器が構成されてい
る。

前記第３の支持軸１７には中間レバー２７が固
定され、その先端には連結リンク２８の一端が軸
連結されている。この連結リンク２８の他端は前
記角コマ２６の軸２５に連結されている。前記第
三の支持軸１７には調節レバー２９が固定され、
その先端寄りには締付け用の段付きねじ３０が取
付けられている。ミシン機枠１１には締付け板３
１が固定されており、その締付け板３１に透設し
たガイド孔３１ａ内を前記段付きねじ３０が挿通
していて、その段付きねじ３０を締付け板３１に
対して締付けることにより調節レバー２９を任意
の回動位置で固定できる。従つて、この調節レバ
ー２９が回動操作されると、第３の支持軸１７が
左右いずれかに回動されて中間レバー２７および
連結リンク２８を介して各コマ２６が調節溝２２
内を移動し、その角コマ２６が第一の支持軸１５
の軸心に対して接近離間する。そして、段付きね
じ３０を締付けることにより角コマ２６をその移
動位置において固定できる。

前記第四の支持軸１８には第一の揺動腕として
の上下送り腕３２が固定され、その自由端には第
１のリンクとしての連結リンク３３が下端にて回
動可能に軸連結されている。この連結リンク３３
の上端には軸３５により第二のリンクとしての水
平送り連杆３４が中間部において回動可能に連結
され（第５図参照）、その一端は軸３６により前
記水平送り腕２３の上端（自由端）に回動可能に
連結されている。前記軸３５には前後方向に延び
る上送り台３７がその中間部において回動可能に
支持され、その前端すなわち加工布送り込み側端
には上送り歯３８が固定されている。従つて、前
記連結リンク３３および水平送り連杆３４は軸３
５により上送り台３７に回動可能に連結されてい
る。また、この上送り台３７および水平送り連杆
３４はミシン機枠１１の加工布支持面３９の上方
に配置されるとともに、上送り歯３８は針板４０
の開口４０ａを通つて四送り運動する下送り歯４
１と対向している。

そして、ミシン主軸１２が回転されると、第３
図に示すように水平送り用偏心輪１３の回転にと
もない偏心輪抱き１４を介して送り調節部材２１
が左右に揺動される。このため調節溝２２と角コ
マ２６との係合および連結リンク２４等を介して
水平送り腕２３が第二の支持軸１６を中心にして
水平方向に揺動され、水平送り連杆３４および軸
３５を介して上送り台３７が前後に往復動され
る。これにより上送り歯３８が水平送り運動を行
う。従つて、水平送り用偏心輪１３、偏心輪抱き
１４、水平送り腕２３等により、上送り台３７に
水平運動を付与するための水平運動付与機構が構
成されている。

また、調節レバー２９の回動操作により角コマ
２６が移動された場合には、その角コマ２６と第
一の支持軸１５の軸心との間の距離が変更され
て、水平送り腕２３の揺動範囲が広くまたは狭く
なり、上送り歯３８の水平送り量が変更調節され
る。

前記水平送り連杆３４の他端部のねじ孔には調
節ねじ４２が螺入されている。また、前記軸３５
の後方において水平送り連杆３４には段付きねじ
４３により押えばね４４がその中間にて回動可能
に支持され（第６図参照）、その前端の透孔４４
ａに前記調節ねじ４２が挿嵌されるとともに、後
端が上送り台３７の下面に弾性接触している。従
つて、上送り台３７には第１図における時計方向
のばね力、すなわち上送り歯３８が下方へ移動し
て加工布支持面３９上の加工布を押圧するばね力
が付与されるとともに、調節ねじ４２の螺入量を
変更することによりそのばね力を調節することが
できる。

前記押えばね４４の固定部後方において水平送
り連杆３４にはねじ４５により断面ほぼ逆Ｕ字状
のストツパー部材４６が固定され、第７図に示す
ようにそのストツパー部材４６は上送り台３７に
上方から嵌合してその上送り台３７の時計方向へ
の回動を規制するようになつている。

前記ミシン主軸１２には上下送り用偏心輪４７
が固定されており、偏心輪抱き４８がその基端に
おいてこの上下送り用偏心輪４７を抱持してい
る。前記第五の支持軸１９には連結レバー４９が
固定され、その先端が前記偏心輪抱き４８の先端
に軸連結されている。また、第五の支持軸１９に
はカツター支持レバー５０と、伝達レバー５１と
が固定されており、支持レバー５０の先端には可
動カツター５２が取付けられている。そして、ミ
シン主軸１２の回転に基づく上下送り用偏心輪４
７の回転により、偏心輪抱き４８を介して第五の
支持軸１９が一定範囲内で往復回動される。この
ため、カツター支持レバー５０が揺動されて可動
カツター５２が上下動され、その可動カツター５
２と第２図に示す固定カツター５３との協働によ
り後方へ送られる加工布の布端が切断される。

なお、５４は布押え、５５は針板４０の開口４
０ａを通つて四送り運動する補助送り歯、５６は
ミシン針をそれぞれ示し、補助送り歯５５はその
加工布送り量を縫製途中においても変更調節し
て、その送り量を前記上送り歯３８および下送り
歯４１による加工布送り量よりも大きく又は小さ
くできるようになつている。

前記伝達レバー５１の先端には連結リンク５７
がその一端において軸６５により連結され、第２
図に示すようにその他端の孔５７ａには段付きピ
ン５８が回動可能に挿入されている。また、前記
第四の軸１８には設定レバー５９が固定されてお
り、その設定レバー５９には円弧状をなす設定溝
５９ａが透接されている。また、前記連結リンク
５７の先端の段付きピン５８が設定溝５９ａ内に
挿通されてその段付きピン５８の先端のねじ部５
８ａにナツト６０が螺着されており、そのナツト
６０を緩めることにより段付きピン５８が設定溝
５９ａ内を上下に移動し得て段付きピン５８と前
記第四の支持軸１８との間に距離が変更設定さ
れ、ナツト６０を締付けることによりその設定位
置で固定できる。

そして、第４図に示すように、ミシン主軸１２
の回転にともなう上下送り用偏心輪４７の回転に
より前記第五の軸１９が往復回動されると、伝達
レバー５１が揺動され、連結リンク５７を介して
設定レバー５９も第四の支持軸１８とともに揺動
される。従つて、第８図および第９図に示すよう
に上下送り腕３２が上下に揺動され、連結リンク
３３および軸３５を介して上送り台３７に上下運
動が付与される。この場合、上送り台３７には押
えばね４４により時計方向への回動力が付与され
て上送り歯３８には下方への力が付与されている
が、その時計方向への回動はストツパー部材４６
により阻止されるため、上送り台３７に上下運動
が付与されて軸３５の部分が上昇しても、その上
送り台３７が時計方向へ回動して上送り歯３８が
下降することはない。従つて上送り歯３８は連結
リンク３３の上下動にともなつて上下動される。

また、第８図に示すように、前記上送り歯３８
が下降位置にくるように伝達レバー５１が揺動し
たときに、前記設定溝５９ａがその伝達レバー５
１の軸６５の軸心を中心とした円弧に沿うように
なつている。このように、上下送り用偏心輪４
７、偏心輪抱き４８、連結レバー４９、連結リン
ク５７、設定レバー５９等により上下運動付与機
構が構成され、また後述する説明から明らかにな
るが、連結レバー４９、設定レバー５９等により
上送り歯３８の下方位置を一定に保ちその位置を
基準として上方にのみ上送り歯３８の上昇量を変
化させるための上下運動量調節手段が構成されて
いる。なお、前記ストツパー部材４６は連結リン
ク３３に設けられたものでよく、要は上送り台３
７が上昇されたときに上送り台３７の時計方向へ
の回動を阻止するものであればよい。

ミシン機枠１１の後部にはばね６１により上方
へ付勢された押下げ棒６２が配置されている。ま
た、前記第六の支持軸２０には押え上げレバー６
３および連結レバー６４が固定されており、その
押え上げレバー６３の先端下面に前記押下げ棒６
２の上端が係合している。そして、図示しない押
え上げペダルが踏込み操作されると、連結レバー
６４が第１図の反時計方向へ回動され、このため
押え上げレバー６３が第六の支持軸２０とともに
第１図の反時計方向へ回動され、押下げ棒６２が
下方移動されて上送り台３７の後端上面に係合
し、その上送り台３７が軸３５を中心として第１
図の反時計方向に回動され、上送り歯３８が上方
退避位置まで移動される。

さて、第１図は上送り歯３８が下降位置にある
状態を示すものである。この状態でミシンが運転
され、ミシン主軸１２が回転されると、前述した
ように水平送り用偏心輪１３および上下送り用偏
心輪４７により、上送り台３７に対してそれぞれ
水平方向および上下方向の運動が付与されて、そ
れらの運動が合成され、第１０図に示すように上
送り歯３８が四運動送りを行う。

この場合、この上送り装置においては、水平送
り用偏心輪１３および上下送り用偏心輪４７から
上送り台３７へ至る伝達経路は全てリンクおよび
レバー機構により構成されているので、上送り台
がカムに直接係合している従来の上送り装置とは
異なり、ミシンが高速で運転されても衝突音や振
動が発生することはなく、円滑な布送りを得るこ
とができる。

また、加工布が厚いものの場合には、上送り歯
３８の上昇位置を上方へ移動させて、その上送り
歯３８が上昇したときに加工布から確実に離れる
ようにする必要がある。この場合には次のように
する。まず、ミシンを停止させて上送り歯３８を
下降位置に位置させる。このようにすると、設定
レバー５９の設定溝５９ａが伝達レバー５１の軸
６５を中心とした円弧上に位置するので、連結リ
ンク５７が軸６５を中心にして設定レバー５９に
関係なく単独で回動できるようになる。つまり連
結リンク５７が回動されても上送り歯３８は下降
位置を保持し続ける状態となる。

従つて、この状態で連結リンク５７の先端のナ
ツト６０を緩め、設定レバー５９に対するナツト
６０の固定を解除して設定レバー５９に対する連
結リンク５７の結合を解除しその連結リンク５７
を下方へ回動させ、その回動位置においてナツト
６０を再び締付けて連結レバー５７を設定レバー
５９に結合する。このようにすると、段付きピン
５８と第四の軸１８との間の距離が短くなるの
で、ミシンの運転にともない伝達レバー５１が揺
動されると、設定レバー５９すなわち上下送り腕
３２の揺動量が連結リンク５７の結合位置変更前
より大きくなり、上送り歯３８の上昇量か大きく
なる。しかしながら、設定レバー５９に対する連
結リンク５７の結合位置変更時に設定レバー５９
が回動されないので、加工布が存在しない場合の
上送り歯３８の下降位置は変更されず、結果とし
て上送り歯３８は第１０図に２点鎖線Ａで示すよ
うに、下降位置が一定でその下降位置を基準とし
て上方へのみ上昇量が変化された四送り運動軌跡
を得ることになる。

従つて、加工布が厚いものの場合でも上送り歯
３８は戻り運動のときに確実に加工布から離れる
ことができ、布送りに悪影響を与えることがな
い。しかも加工布が存在しない場合の上送り歯３
８の下降位置が変更されないので、厚い加工布を
送る場合に上送り歯３８がその厚さにともなつて
上昇されることにより、上送り歯３８に付与され
る押えばね４４のばねが大きくなり、布押え圧力
が大きくなつてその厚い加工布を下送り歯４１と
協働して確実に送ることができる。

また、加工布が薄いものの場合には上送り歯３
８か下降位置にあるときに前記とは逆に連結リン
ク５７を上方回動させその位置で固定すれば、第
１０図に２点鎖線Ｂで示すようにその薄い加工布
に対処した上送り歯３８の上昇量を得ることがで
きる。しかも下降位置が変化されずに布厚が薄く
なることにより、上送り歯３８による布押え圧力
が弱くなり、加工布の破れを確実に防止できる。

なお、上送り歯３８の水平移動量の調節は調節
レバー２９により行う。

〔考案の効果〕

以上詳述したように、本考案においては、設定
レバー、伝達レバー、連結レバーよりなる四節リ
ンク機構を構成し、上送り歯が最下点にある状態
において、連結レバーと設定レバーとの連結点を
連結レバーと伝達レバーとの連結点を中心とする
円弧に沿いその設定レバーの変位を伴なうことな
く移動可能に構成されているので、上送り歯が最
下点にある時に連結レバーのみを他の設定レバー
及び伝達レバーの位置関係に影響を及ぼすことく
移動させることができ、上送り歯の最下点を変更
することなくその上下運動量を変更することがで
き、加工布の厚さにかかわりなく加工布を確実に
布送りすることができる効果を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案を具体化した上送り装置を示
す側面図、第２図は同じく平面図、第３図は水平
運動付与機構を示す側断面図、第４図は上下運動
付与機構を示す側断面図、第５図は第四の支持軸
上のレバーを示す断面図、第６図は押えばねの取
付状態を示す断面図、第７図はストツパー部材の
取付状態を示す拡大断面図、第８図および第９図
はそれぞれ上送り歯が下降位置、上昇位置にある
ときをしめす一部側面図、第１０図は上送り歯の
四運動送りを示す線図である。 ミシン主軸１２、水平送り用偏心輪１３、偏心
輪抱き１４、上下送り腕３２、上送り台３７、上
送り歯３８、加工布支持面３９、下送り歯４１、
上下送り用偏心輪４７、偏心輪抱き４８、連結リ
ンク５７、設定レバー５９。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 加工布支持面３９上に配置され且つ加工布送り
   込み側に下送り歯４１と協働する上送り歯３８が
   取付けられた上送り台３７と、 その上送り台３７とミシン主軸１２との間に設
   けられ、前記ミシン主軸１２の回転に従い前記上
   送り台３７に水平運動を付与するための水平運動
   付与機構１３，１４，２３等と、 一軸線の周りを揺動可能に設けられると共に前
   記上送り台３７に作動的に連結され、揺動により
   上送り台３７に上下運動を付与する揺動腕３２
   と、その揺動腕３２と一体に設けられると共に前
   記一軸線から離れる方向に延びる設定レバー５９
   と、前記ミシン主軸１２の回転により前記一軸線
   に平行な軸線の周りを揺動される伝達レバー５１
   と、一端が前記伝達レバー５１に回動可能に連結
   され、他端が前記設定レバー５９に回動可能に連
   結された連結レバー５７とからなる上下運動付与
   機構とを有し、 前記連結レバー５７他端の設定レバー５９に対
   する連結点は、前記上送り歯３８が最下点に位置
   する状態の時、前記連結レバー５７一端と伝達レ
   バー５１との連結点を中心とする円弧に沿いその
   設定レバー５９の変位を伴なうことなく移動可能
   に構成されていることを特徴とするミシンのため
   の上送り装置。