JP2539446Y2 - ミシンの布切断装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、ミシンの布切断装置に関し、ことに針落ち
手前のベッド面に布送り方向に沿って配置された固定メ
スと、ベッド面下方でメス軸に固定される鎌メスとを備
え、メス軸の揺動により鎌メスが上下動してベッド面に
出没し、二重に重ね合わされた縫製直前の布地の内、下
側の布地の布縁を布送り方向に沿い固定メスと協働して
切断するミシンの布切断装置に関する。

従来技術 メス軸の揺動により鎌メスが上下動して布縁を固定メ
スと協働して切断するミシンの布切断装置は既知であ
り、切断する布の厚みに応じて鎌メスの上下量を調節で
きるようにしたものも既知である。実公昭59-37182号に
示されるものがそれで、ミシン主軸に連動して一定量揺
動する円弧状のクランクと、該クランクにスライド可能
に装着される滑動子と、滑動子とリンクを介して連結さ
れ、クランクに連動して揺動するメスレバーと、メスレ
バーと一体となって揺動し、鎌メスを備えたメス取付台
と、滑動子に連結され、滑動子をクランクに沿って位置
調整する手動操作機構とからなっており、鎌メスの上下
量の調整は、手動操作機構の操作により滑動子をクラン
クに沿って位置調整することにより行われるようになっ
ている。

考案が解決しようとする課題 鎌メスの上下量の調整を円弧状のクランクに装着され
る滑動子の位置調整によって行う上述する既知の機構で
は、クランクの揺動により滑動子がクランクに沿って微
振動し、クランクや滑動子が摩耗したり、ミシンの振動
・騒音の一因となる。この問題はミシンが高速化される
程顕著となる。

本考案は、上記の問題を解消するとともに、鎌メスの
上下量の調整が容易かつ確実で、しかも従来のものより
も構造が簡単で安価なミシンの布切断装置を提供するこ
とを目的とする。

課題の解決手段 本考案の布切断装置はそのため、針落ち手前に布送り
方向に沿って配置された固定メスと、メス軸に固定され
る鎌メスとを備え、メス軸の揺動により鎌メスが上下動
して布縁を布送り方向に沿い固定メスと協働して切断す
るミシンの布切断装置において、上記メス軸と平行をな
し、主軸に連動して揺動する揺動軸と、メス軸及び揺動
軸にそれぞれ固定されるクランクと、両クランクのう
ち、一方のクランクにスライド可能に嵌合し、該クラン
クに捩込んだ止ネジにて位置調整可能に止着されるクラ
ンクピンと、クランクピンと他方のクランクとを連結す
るリンクとよりなるものである。

さらにこの布切断装置において、好ましくは、クラン
クピンに目盛りを設けるとともに調整操作用工具の挿入
溝が設けられ、また止ネジはクランクの基部において軸
心に向かって捩込まれるようにされる。

作用 鎌メスの上下量の調整は、止ネジを弛め、クランクピ
ンを必要量押込み或いは引出してクランクとの嵌合位置
を変更し止ネジを捩込むことにより行われ、調整後クラ
ンクピンはクランクに固定され、一体化される。止ネジ
の位置は、主軸の回動とともに揺動するが、クランクの
傾き角度を同じにすれば、鎌メスの上下運動ストローク
とは無関係に常に同じ位置となるので、ミシンを停止し
て上下運動量を調整するときには、主軸を回動して止ネ
ジを操作のしやすい手前側の位置にして作業ができるう
え、その調整作業中に操作位置が移動することはない。
したがって調整作業は容易且つ確実に行える。

クランクピンに線、細溝等により設けた目盛りはクラ
ンクとの嵌合位置調整時の目安となる。また、クランク
ピンの押込み、引出し操作は指先で行うこともできる
が、ドライバなどの工具をピンに設けた溝に挿入して行
えば微調整も容易となる。

さらに、前記止ネジをクランクの基部において軸心に
向かって捩込まれるようにすれば、装置が小型となるう
え、慣性による振動の発生を防ぐことができる。

実施例 図はスエットパンツ、パジャマ、ショーツ、ブリーフ
等におけるように腰部の布を折返して複数本のゴムを入
れ、縁部を切揃えながら縫っていくゴム入れ縫製を行う
のに使用される多本針偏平縫い筒型ベッドミシンの前カ
バーを外したときの布切断装置を示すもので、ブラケッ
ト１に取着の取付台２に止着され、左針による縫製線に
沿って配置された固定メス３と、鎌メス台４に取着の鎌
メス５とよりなり、鎌メス台４はブラケット１にスライ
ド可能に軸支されるメス軸６の一端に止着され、メス軸
６の他端部に装着されるコイルバネ７がメス軸６を図の
右方向に付勢し、鎌メス５を固定メス３に弾接させてい
る。

メス軸６に並設され、図示しない主軸に連動して揺動
する揺動軸８にはクランク９が固着され、クランク９に
は揺動軸８と直交して形成される孔（溝でもよい）にク
ランクピン11が摺動可能に嵌合し、クランク９の基部に
その揺動軸８の軸心に向かって捩込んだ止ネジ12により
止着されている。この止ネジ12はクランク９の手前側に
位置し、ミシンの前カバーを開いたときに露出して、弛
め及び締め付け操作が容易にできる。

クランクピン11には上端に環状溝16が形成されるとと
もに下端の頭部にリンク13の一端が軸着され、リンク13
の他端はメス軸６に固着のクランクレバー14より突設さ
れるピン15に軸支されており、メス軸６の軸方向の動き
を許容できるようになっている。

鎌メス５の上下量を調節するときには、ミシンを止
め、ミシンの前カバーを開けたのち止ネジ12が弛めるの
に最も操作しやすい位置となるように揺動軸８を回動し
て、スパナまたはドライバーで止ネジ12を弛め、クラン
ク９すなわち揺動軸８を動かないようにしてクランクピ
ン11を押込みまたはドライバーの先を環状溝16に係合さ
せて押上げ、その突出量を変える。この場合、図示しな
いがクランクピン11に目盛りを付しておけば、微調整が
容易となる。

これによりメス軸６の揺動量が変わり、鎌メス５の揺
動ストロークが変化する。すなわち厚地の布の場合に
は、クランクピン11の突出長さを長くし、鎌メス５の揺
動ストロークを大きくする。また薄地の布の場合にはク
ランクピン11の突出長さを短かくする。

なお、この実施例においては、揺動軸８側に取り付け
たクランク９上でクランクピン11の作用長さを調整する
様にしたが、メス軸６に固定したクランクレバー14側で
前記と同様に作用長さを調整するようにしてもよい。こ
の場合、クランクレバー14側の作用長さを厚地にあって
は短く、薄地にあっては長くする。

考案の効果 本考案は以上のように構成され、次のような効果を奏
する。

請求項１記載の布切断装置によれば、クランクピンは
止ネジによってクランクに固定され、揺動軸と一体化さ
れるので、ミシン駆動中動くことがなく、高速ミシンに
用いても振動、騒音、磨耗の問題を生じることが無い。
また、止ネジは常にクランク上の定位置にあるので調整
操作は容易であり、かつ軸の回動により止ネジの位置を
最も操作しやすい例えば手前側の位置にして作業をおこ
なうことができる。

さらにこのメス上下量調節機構は、クランクピンを固
定する止ネジの操作を手動で行うことができるようにし
たから構造が簡単で安価にできる。

請求項２記載のようにクランクピンに目盛りを設けれ
ば、クランクピンを調整する際の目安となり、調整が正
確に行えるようになる。

請求項３記載のクランクピンのように、工具が係合す
る溝を設ければ、工具によるクランクピンの操作が容易
に行えるようになる。

さらに請求項４記載のように、止ネジをクランクの基
部において軸心に向かって捩込まれるようにすれば、慣
性力の増加による振動を防止できるうえ、調整機構がコ
ンパクト化され、ミシンベッドの外径を大きくする必要
がないので、小径の筒状衣料の縫製にも適用できるとい
う効果がある。

【図面の簡単な説明】

図は本考案に係るミシンの布切断装置の斜視図を示す。 ３……固定メス、５……鎌メス、６……メス軸、７……
コイルバネ、８……揺動軸、９……クランク、11……ク
ランクピン、12……止ネジ、13……リンク、14……クラ
ンクレバー、16……環状溝

Claims (4)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】針落ち手前に布送り方向に沿って配置され
   た固定メスと、メス軸に固定される鎌メスとを備え、メ
   ス軸の揺動により鎌メスが上下動して布縁を布送り方向
   に沿い固定メスと協働して切断するミシンの布切断装置
   において、上記メス軸と平行をなし、主軸に連動して揺
   動する揺動軸と、メス軸及び揺動軸にそれぞれ固定され
   るクランクと、両クランクのうち、一方のクランクにス
   ライド可能に嵌合し、該クランクに捩込んだ止ネジにて
   位置調整可能に止着されるクランクピンと、クランクピ
   ンと他方のクランクとを連結するリンクとよりなる布切
   断装置。
2. 【請求項２】クランクピンに目盛りを設けた請求項１記
   載の布切断装置。
3. 【請求項３】クランクピンに工具が係合する溝を設けた
   請求項１記載の布切断装置。
4. 【請求項４】止ネジはクランクの基部において軸心に向
   かって捩込まれるようにした請求項１記載の布切断装
   置。