JP2871206B2 - かがり幅調節可能な縁かがりミシン - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、かがり幅調節可能な縁
かがりミシンに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、縁かがりミシンでは、かがり縫い
目の幅であるかがり幅は針板側にある爪の幅によって影
響されるため、かがり幅を変えるには所望のかがり幅に
適した幅の爪を持つ針板に交換する必要があり、手間が
掛かり作業能率が低下する欠点があった。この欠点を除
去するため、針板の針落点の布端側に巻き縫い等の細幅
のかがり幅を設定する固定爪を持ち、その固定爪に隣接
し布送り方向と直交する方向に移動可能な移動爪により
かがり幅の量を変化させるものが提案されている（実公
昭６３−２１２５４号）。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の装置は巻き縫い等の細幅のかがり幅の縫製を行う際
には、移動爪を下メスホルダーの下方位置に持ってい
き、固定爪のみにするという操作を、かがり幅を小さく
するという操作の他に行わなければならず、手間がかか
り作業能率が低下するという問題点があった。また、ミ
シン運転中に誤って移動爪を下メスホルダーの下方位置
に持って行こうとすると、その軌跡上にあるルーパー等
の内部機構と衝突し、機構の破壊を招く虞れがあるとい
う問題点があった。本発明は上記の問題点を解決するた
めなされたものであり、その目的とするところは、かが
り幅調節ダイヤル等の操作体を作業者が調節するのみで
所望のかがり幅が得られ、巻き縫い等の細幅のかがり幅
の縫製時にも同様の操作により所望のかがり幅が得られ
るようにしたかがり幅調節可能な縁かがりミシンを提供
することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明では、実施例図面に例示する様に、針糸を持
ち駆動軸に連動して針板１の針溝を通過して上下動する
針３２と、針板１の下において駆動軸に連動して針３２
と協働して布端に縁かがり縫い目を形成するルーパー３
３と、布送り方向と交差する方向に位置調節可能に設け
られた布端を切断するメス２７、３０とを有する縁かが
りミシンにおいて、針板１と一体に構成されて布送り方
向に延設され巻き縫い等の細幅のかがり幅を設定する細
幅の固定爪２と、針板１と別体に形成され前記固定爪２
と平行に並んで太幅のかがり幅を設定する移動爪５と、
前記移動爪５が、移動爪５の布送り方向の前後移動に対
応してかがり幅の量を変化させる先細の形状を持つこと
と、前記移動爪５を布送り方向に前後移動させ、かがり
幅の量を変化させると共に、移動爪５を縫い目形成位置
から離脱させ前記固定爪１のみでかがり幅を設定できる
ようにするためのカム１５を持つかがり幅調節ダイヤル
１６と、そのカム１５に従動して移動爪５を布送り方向
に前後移動させるレバー１０と、を備えることを特徴と
するかがり幅調節可能な縁かがりミシンが提供される。

【０００５】

【作用】上記のように構成されたかがり幅調節可能な縁
かがりミシンでは、かがり幅調節ダイヤル１６を調節す
ることによりカム面１５に従動してレバー１０が揺動
し、移動爪５を移動する。移動爪５の移動の方向は布送
り方向に直交する方向ではなく、布送り方向に移動爪５
が前後移動する。移動爪５は先細の形状を持っているか
ら、その前後方向の位置により縫い目形成位置での幅が
変化する。また、移動爪５を縫い目形成位置から離脱さ
せれば固定爪１のみでの縫製が実行される。移動爪５は
布送り方向に直交する方向には移動しないからルーパー
３３等と干渉する虞れがない。

【０００６】

【実施例】本発明の実施例について図面を参照し説明す
る。図１はかがり幅調節機構の要部を示す分解斜視図で
ある。針板１には針落ち位置の近傍に固定爪２が固着さ
れ一体となっている。固定爪２は略針状の形状をした細
幅の部材であり、布送り方向に延設されている。

【０００７】針板１の裏面には案内溝３が形成され、ま
た、長方形の開口部４が固定爪２の近傍に設けられてい
る。その案内溝３に案内され開口部４から先端部を突出
させて移動爪５が配設されている。移動爪５は薄板状の
弾性部材で形成され、後端には軸６がかしめられ、先端
部は左方に延出した後上方に屈曲し、前方に延出した形
状をしている。移動爪５の先端は３段階のステップ状に
先細になる形状に形成されている。移動爪５は案内溝３
に挿入係合した状態で爪押さえ７がビス８により針板１
に固定され、移動爪５は前後方向（布送り方向）に摺動
可能である。

【０００８】移動爪５後端の軸６に係合する略Ｌ字形状
をしたレバー１０が、揺動軸１１により図示しない機枠
に揺動自在に支承されている。揺動軸１１に嵌挿される
ようにしてトーションコイルバネ１２が配設されてい
る。トーションコイルバネ１２の一方のフック１２Ａは
レバー１０の先端部１０Ａと共に軸６を挟み付けて係合
し、他方のフック１２Ｂは図示しない機枠に係合する。
従って、レバー１０はトーションコイルバネ１２により
時計回転方向、即ち、移動爪５を前進させる方向に付勢
されている。レバー１０の他端には偏心軸からなるカム
フォロワ１３が螺合され、ナット１４により固定されて
いる。カムフォロワ１３は摺動面となる軸がねじ軸１３
Ａに対して偏心しており、ねじ軸１３Ａの位置を適当に
調節しナット１４により固定することによりカムフォロ
ワ１３の位置を微調整することができる。

【０００９】一方、芯部に略円筒状のカム面１５を有す
る、かがり幅調節ダイヤル１６が回動軸１７により図示
しない機枠に回動自在に支承されている。回動軸１７に
は、ばね座金１８が嵌挿され、かがり幅調節ダイヤル１
６の回動にフリクションを与えている。カムフォロワ１
３はトーションコイルバネ１２の付勢力によりカム面１
５に押し当てられてその位置を規制されている。従っ
て、かがり幅調節ダイヤル１６の回動位置を調節するこ
とにより、移動爪５の前後進位置を調節することにな
る。即ち、かがり幅調節ダイヤル１６はかがり幅の量を
変化させる操作体をなし、レバー１０、トーションコイ
ルバネ１２、カムフォロワ１３及びカム面１５等はかが
り幅の量を変化させる駆動手段をなす。

【００１０】図２は針落ち位置の近傍を拡大して示す平
面図、図３は側面図である。針落ち位置に隣接して略針
形状をした固定爪２が布送り方向に延出して設置されて
いる。さらに、固定爪２に隣接して移動爪５の先端部５
Ａが配設されている。図示の位置は移動爪５が最も前進
した位置を示しており、最も幅広い縁かがり縫いを行う
場合である。かがり幅調節ダイヤル１６を手指で回転さ
せて移動爪５を後退させると、移動爪５の先端部５Ａの
幅が段階的に小さくなり、ついには移動爪５の先端が針
落ち位置より後退し、固定爪２のみでの最も幅狭い縁か
がり縫いを行うようになる。

【００１１】図４は針板部分を示す平面図、図５は正面
図、図６は側面図である。針板１には固定爪２に隣接し
て移動爪５の先端部５Ａが配設されている。図５を参照
し、機枠２０に揺動軸１１が回動自在に支承され、揺動
軸１１はレバー１０を揺動可能に支持している。レバー
１０の中央部にはトーションコイルバネ１２が揺動軸１
１にコイル部を嵌挿されて配設され、そのフック部の一
端１２Ｂを機枠２０に係止され、他端１２Ａで移動爪５
にかしめられた軸６を押圧している。レバー１０の下端
には偏心軸からなるカムフォロワ１３が螺合されナット
１４により固定されている。カムフォロワ１３はかがり
幅調節ダイヤル１６のカム面１５に摺接する。

【００１２】かがり幅調節ダイヤル１６の上方の機枠２
０には固定軸２１が固定され、その固定軸２１の先端に
固定されたピン２２に、リンクレバー２３が揺動自在に
支承されている。リンクレバー２３の下端部にはカムフ
ォロワ２４が設けられ、かがり幅調節ダイヤル１６の左
側面に形成された側面カムに当接し摺接する。リンクレ
バー２３の上端はメスホルダ２５の摺動軸部２５Ａに当
接する。メスホルダ２５の摺動軸部２５Ａには圧縮ばね
２６が嵌挿され、メスホルダ２５の摺動軸部２５Ａを図
面左方向に付勢している。

【００１３】メスホルダ２５は摺動軸部２５Ａの先端に
ブロック部２５Ｂが一体に形成された部材であり、図６
に示すように、ブロック部２５Ｂには下刄２７が取り付
けられている。また、メスホルダ２５のブロック部２５
Ｂの一端にはＵ字溝２８に機枠２０と一体となった回り
止め２９が係合され、メスホルダ２５の回動を防止して
いる。メスホルダ２５に固定された下刄２７の近傍に公
知の機構に接続された上刄３０が配設され、下刄２７と
協働して加工布の布端を裁断する。また、針板１の針落
ち位置には、針棒３１に装着されたミシン針３２が斜め
に落下する。落下したミシン針３２の近傍にルーパー３
３の剣先が位置することがある。

【００１４】上記の構成に基づき作動について説明す
る。作業者が、所望のかがり幅になるようにかがり幅調
節ダイヤル１６を調節すると、かがり幅調節ダイヤル１
６のカム面１５に従動してレバー１０が回動し、移動爪
５が前後移動してその位置が決まる。移動爪５の位置が
決まると移動爪５の先端部の先細の形状と固定爪２によ
りかがり幅が設定され、設定されたかがり幅での縫製が
実行される。かがり幅調節ダイヤル１６を更に回し、移
動爪５を後退端まで移動すると、移動爪５の先端が針落
ち位置から外れ、固定爪２のみによる巻き縫いが実行さ
れる。

【００１５】ここで、針板１と固定爪２とは一体に構成
されるので固定爪２の上面が針板１と同一平面となるよ
うにすることは比較的容易である。このため加工布は布
押さえと固定爪２とで挟み、押さえ荷重を針板１と固定
爪２とで支えることになる。このため、移動爪５は針板
１と同一平面に保持する必要がない。たとえ、移動爪５
が針板１より上に出ていたとしても、弾性部材で形成さ
れた移動爪５は布押さえの荷重により針板１上面まで下
げられるので、布送り等に何ら支障を生じない。

【００１６】以上説明した実施例では移動爪５の先端部
５Ａの幅が段階的に小さくなる形状としたが、先端部５
Ａの幅が連続的に小さくなる略三角形の形状とすること
もできる。

【００１７】

【発明の効果】本発明は、上記の構成を有し固定爪に隣
接した移動爪を布送り方向に前後移動させてかがり幅を
調節するようにしたものであるから、かがり幅調節ダイ
ヤル等の操作体を作業者が調節するのみで所望のかがり
幅が得られ、巻き縫い等の細幅のかがり幅の縫製時にも
特別の操作無く同様の操作により所望のかがり幅が得ら
れるという操作性に優れた効果がある。また、かがり幅
を調整する際に、移動爪が前後方向に移動するのみで針
板の下方向に移動する部材がないので、ルーパーへの糸
通し等の操作の妨げにならず、また、運転中に誤って太
幅のかがり縫いから巻き縫い等の細幅のかがり縫いに切
り換えたとしても、移動爪がミシンの内部機構と干渉し
ないため、ミシンを破壊する虞れがないという効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 かがり幅調節機構の要部を示す分解斜視図

【図２】 針落ち位置の近傍を拡大して示す平面図

【図３】 側面図

【図４】 針板部分を示す平面図

【図５】 正面図

【図６】 側面図

【符号の説明】

１ 針板 ２ 固定爪 ５ 移動爪 ７ 爪押さえ １０ レバー １２ トーションコイルバネ １３ カムフォロワ １５ カム面 １６ かがり幅調節ダイヤル ２０ 機枠 ３２ ミシン針 ３３ ルーパー

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 針糸を持ち駆動軸に連動して針板の針溝
   を通過して上下動する針と、針板の下において駆動軸に
   連動して針と協働して布端に縁かがり縫い目を形成する
   ルーパーと、布送り方向と交差する方向に位置調節可能
   に設けられた布端を切断するメスとを有する縁かがりミ
   シンにおいて、 針板と一体に構成されて布送り方向に延設され巻き縫い
   等の細幅のかがり幅を設定する細幅の固定爪と、 針板と別体に形成され前記固定爪と平行に並んで太幅の
   かがり幅を設定する移動爪と、 前記移動爪が、移動爪の布送り方向の前後移動に対応し
   てかがり幅の量を変化させる先細の形状を持つことと、 前記移動爪を布送り方向に前後移動させ、かがり幅の量
   を変化させると共に、移動爪を縫い目形成位置から離脱
   させ前記固定爪のみでかがり幅を設定できるようにする
   ためのカムを持つかがり幅調節ダイヤルと、 そのカムに従動して移動爪を布送り方向に前後移動させ
   るレバーと、を備えることを特徴とするかがり幅調節可
   能な縁かがりミシン。