JPS6131773Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、トレパン式切削工具の改良に関す
る。

被削材に貫通穴をあける回転切削工具で、コア
ー残しの切削を行ういわゆるトレパン式工具は、
本体の先端に半径方向に偏位させて設ける複数の
切刃に、それぞれバツクテーパを付す必要があ
り、このため、従来は前もつて切刃に角度を付け
たり、或いは切刃チツプの取付角度を調整するな
どしてこのバツクテーパを付している。

しかしながら、このような方法を採るとチツプ
又は取付座の加工に手間がかゝり、製造コストも
高くなる。

また、トレパン式工具は、工具本体の先端部が
円筒形状となつているため、一般の切削工具に比
較して、工具剛性が低くなつている。そのため、
切削抵抗により振動（いわゆるビビリ）及びたわ
ゆ等が発生し易いが、従来のこの種の工具は、第
１０図に示すように切刃５′，６′の半径方向すく
い角α，βを、０又はプラス（正）の角度に設定
しているため、矢印で示す大きな切削抵抗を受け
てチツプ及び本体が撓むとき、環状溝の外周側切
削を担当する刃５′は工具の中心から離れる方向
に、一方、上記溝の内周側を担当する刃６′は工
具の中心に近ずく方向に逃げ、（実線の設計時取
付位置から鎖線方向に変位する）、その結果、切
刃外端部が被削材に過度に喰込んで加工不良状態
を起したり、破損するなどの不都合を生じてい
る。

そこで、この考案は、高性能で、しかも製作し
易く、チツプの寿命も延びるトレパン式切削工具
を提供することを目的としている。

即ち、この考案は、被切削環状溝の内周側を担
当する切刃と外周側を担当する切刃の半径方向す
くい角を共に負角にし、また、両者の軸方向すく
い角は共に正角にすると共に、上記両切刃の各々
に外切刃角と内切刃角を付し、これによつて区画
される各切刃の内切刃部と外切刃部の有効刃長
を、両切刃の各々においてほゞ等しくすることに
より、上記の問題を解消したところに特徴を有す
る。

以下、この考案の構成を添付図に示す実施例に
基いて詳しく説明する。

第１図乃至第３図に示すように、この考案の切
削工具は、シヤンク部１に連なる円筒部２の外周
に、軸方向に延びる数条の切屑排出溝３を設けた
本体４と、被切削環状溝の外周側切削に関与する
切刃チツプ５及び上記溝の内周側切削に関与する
切刃チツプ６から成り、チツプ５は円筒部の外周
側に、チツプ６は円筒部の内周側に突出して本体
４の先端に固定されている。また、各チツプ５，
６は、切削バランスを考えてほゞ180゜位相を変
えた所に配置している。

なお、チツプ５，６は必要に応じてその数を増
やすことができ、そのときは、両者を交互にかつ
本体を周方向にほゞ等分する位置に設けるのが望
ましい。

次に、前述した本考案の特徴をなす部分につい
て説明する。

チツプ５及び６は、その切刃５ａ，６ａの半径
方向すくい角を第２図に示すように負角に設定し
てある。即ち、切刃５ａは、その外端５ｂと本体
の中心を結ぶ基準線に対して工具の回転方向にα
の角度傾むき、一方、切刃６ａは内端部６ｂと本
体の中心を結ぶ線に対して回転方向にβの角度で
傾むいている。

また、両チツプ５，６は、第３図に示すよう
に、軸方向すくい角が正角となるよう、工具の軸
線に対しそれぞれのチツプをθとθ_１の角度で傾
むけてある。

このように、切刃の半径方向すくい角を負角に
軸方向すくい角を正角に設定すると、第１図のチ
ツプ５を見てわかるように、このチツプの外周に
角度γのバツクテーパが自然する（チツプ６も同
様である）。従つて、チツプに前もつてテーパ角
を付けたり或いは取付座を特別の形にしたりする
必要がなく、その分工具の製作が容易になる。

また、各チツプの半径方向すくい角を負角とし
たことにより、切削負荷によつてチツプ及び本体
が撓む場合、第１１図に示すように外側の切刃の
外端部５ｂは工具の軸心に近づく方向（実線位置
から鎖線位置方向）に、内側の切刃の内端部６ｂ
は逆に工具の軸心から離れる方向に移動するの
で、両切刃５ａ，５ｂ外端部の半径方向変位によ
る被削材への過度の喰込みがなく、従つて過負荷
によるチツプの破損も防止される。

なお、各チツプの半径方向すくい角は、負角が
大きくなるにつれて切削抵抗が増し、また、チツ
プ受面のバツクメタルの量が減少して本体の支持
強度も低下することになるので、その防止のた
め、及び後述するホルダ９，１０の締付けボルト
１１が、円筒部２の外周側及び内周側へ飛び出す
のを防止するため、チツプ５のすくい角αは０〜
−10゜程度、一方チツプ６のすくい角βは−１〜
−５゜程度に設定するのが望ましい。

次に、チツプ５，６の切刃は、実施例に示す形
状にすることで加工精度及び切屑排出性に関する
工具性能を飛躍的に高めることができる。

即ち、実施例のチツプは、第４図に示すよう
に、切刃５ａ，６ａに外切刃角δとこれとほゞ等
角度の内切刃角εを付すことによつて各刃を途中
で角度をもつて交差する外切刃部５ｃ，６ｃと内
切刃部５ｄ，６ｄに各々分割すると共に、チツプ
５の切削負担領域をＡ、チツプ６のそれをＢとし
たとき、上記内切刃部と外切刃部の切削巾が約
Ａ／２又はＢ／２となるよう内外の切刃部の有効
長さをほゞ等しくして内外の切刃部による切削領
域を各々半径方向におよそ２分割している。

ここで、切刃５ａ，６ａに外切刃角と内切刃角
を付した理由は、第２図に示すように、外切刃部
５ｃ（又は６ｃ）と内切刃部５ｄ（又は６ｄ）に
掬われる切屑Ｓの流出方向を変えることによつて
それ等に互いに干渉する力を与え、１個のチツプ
より切出される切屑の巾を小さくすると共に長さ
方向にも小さく分断し、同時に第１３図に示すよ
うに、各切刃部に作用する半径方向負荷分力F₁
対F₂及びF₃対F₄を個々のチツプにおいて相殺す
るためであり、これによつて、溝３の巾や深さが
制限される場合にも、切屑の排出が円滑に行われ
る。また、切削バランスが良くなつてチツプの動
き、工具本体の倒れ、振動等が大巾に減少し、加
工精度も向上する。さらに、切屑排出の円滑化、
切削バランスの均衡により切削抵抗が小さくなる
ため、チツプの寿命も更に延びる。このとき、切
刃５ａと６ａの長さＡ・Ｂもほゞ等しくしておく
と切削バランスは非常に良くなる。

以上のほか、切屑の分断性をさらに良くするた
め、チツプ５には第５図に示すようなブレーカ溝
５ｅを設けてもよい。チツプ６も同じであるので
その図は省略する。また、切削抵抗を小さくし、
かつ切屑に折れ易い歪みを与えるため、切刃５
ａ，６ａを第６図及び第７図に示すように、工具
の回転方向に凸形状、又は第８図及び第９図に示
すように、回転方向に凹形状にしてもよく、この
ときの凹凸は曲線で表われるようにしても構わな
い。チツプの後面形状も同様に凹又は凸形状にす
ることができる。

さらに、この切刃チツプ５，６は、図示のスロ
ーアウエイチツプに限定されず、ロー付け式、ブ
レード式のいずれを採用してもよい。また、スロ
ーアウエイチツプは１コーナにのみ切刃を設けた
ものであつてもよい。

切屑排出溝３も、ねじれ溝の方が好ましいが、
ストレート溝にしても実用上差し支えはない。

なお、切刃チツプ５，６は、本体４に直接固着
することができるが、本実施例では、ねじ７，８
によつて軸方向位置の調整されるホルダ９，１０
を、本体に設けた軸方向の長孔に挿通されるホル
ダ１１を用いて先端に取付け、このホルダでチツ
プ５，６を支持することにより、ホルダに設ける
チツプ取付座の加工を容易にし、かつ切刃の位置
精度も高めるようにしている。

また、実施例の工具は、切刃チツプ取付部をユ
ニツト化し、これを回り止めキー１２を介して円
筒部２に結合することで、チツプ交換及び製作を
容易ならしめているが、本考案は、工具本体が一
体に形成されるもの或いは円筒部の内面に切り出
されたコアを支持するガイドを取付けたものにも
適用される。

以上説明したように、この考案のトレパン式切
削工具は、切刃の半径方向すくい角を負角に、一
方その軸方向すくい角は正角にすることにより、
切刃のバツクテーパを自然発生させてチツプや本
体のチツプ座の製作上の難点を解消すると共に切
削抵抗によるチツプ及び本体の撓みに起因した切
刃外端部の被削材への過度の喰込み、及びその喰
込みによる過大負荷に起因した切刃の破損を防止
したので、性能及び耐久性が向上し、製作も容易
になる。

また、各切刃には外切刃角と内切刃角を付して
それぞれの刃の切削負担領域を半径方向にほゞ等
分割し、これによつて、切削バランスを改善する
と共に切屑に歪を与えてその分断性を高め、さら
に、切削抵抗も低減するようにしたので、工具性
能がより一層向上し、高精度の加工が可能になる
ほかチツプ寿命も更に延びる。このほか、切刃の
正面視形状に凹凸を付したものは、切削バランス
の改善効果、切屑の分断効果、切削抵抗の低減効
果がより顕著になるなどの多くの効果が得られ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この考案の切刃工具の一例を示す側
面図、第２図は同上の拡大正面図、第３図は第１
図の工具を90゜回転して見た側面図、第４図は、
切刃の切削負担域を示す線図、第５図はチツプの
他の実施例を示す斜視図、第６図乃至第９図はチ
ツプのさらに他の実施例を示す正面図、第１０図
は、従来工具におけるチツプの変位状態を、第１
１図は本願の工具のチツプの変位状態を示す線
図、第１２図は切屑の生成状態を示す線図、第１
３図は本願の工具に作用する半径方向負荷分力を
示す線図である。 １……シヤンク部、２……円筒部、３……切屑
排出溝、４……本体、５，６……切刃チツプ、５
ａ，６ａ……切刃、５ｂ……外端部、６ｂ……内
端部、５ｃ，６ｃ……外切刃部、５ｄ，６ｄ……
内切刃部、７，８……位置調整ねじ、９，１０…
…ホルダ、１１……ボルト、１２……回り止めキ
ー。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 円筒状とした工具本体の先端に切刃チツプの
   取付座を設け、その座に被切削環状溝の内周側
   切削担当切刃の構成チツプと外周側切削担当切
   刃の構成チツプをそれぞれ半径方向に偏位させ
   て取付けたトレパン式工具において、上記両チ
   ツプによつて構成される切刃の半径方向すくい
   角を共に負角に設定し、両者の軸方向すくい角
   は共に正角に設定すると共に上記両切刃の各々
   に外切刃角とこれとほゞ等角度の内切刃角を付
   し、これによつて区画されるそれぞれの切刃の
   内切刃部と外切刃部の有効刃長を、両切刃の
   各々においてほゞ等しくしたことを特徴とする
   トレパン式切削工具。 (2) 上記内周切削担当切刃の半径方向すくい角を
   −１〜−５゜に、一方外周切削担当切刃のそれ
   は０〜−10゜の範囲に設定したことを特徴とす
   る実用新案登録請求の範囲第(1)項記載のトレパ
   ン式切削工具。 (3) 上記内周側切削担当切刃と外周側切削担当切
   刃の有効刃長もほゞ等しいことを特徴とする実
   用新案登録請求の範囲第(1)項又は第(2)項記載の
   トレパン式切削工具。