JPH1192910A - チタン硬化部材の硬化処理方法 - Google Patents

チタン硬化部材の硬化処理方法

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JPH1192910A
JPH1192910A JP24854997A JP24854997A JPH1192910A JP H1192910 A JPH1192910 A JP H1192910A JP 24854997 A JP24854997 A JP 24854997A JP 24854997 A JP24854997 A JP 24854997A JP H1192910 A JPH1192910 A JP H1192910A
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JP
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titanium
gas
helium
argon
treatment
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JP24854997A
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English (en)
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Yoshitsugu Shibuya
義継 渋谷
Masahiro Sato
雅浩 佐藤
Atsushi Satou
佐藤  惇司
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Original Assignee
Citizen Watch Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 チタンおよびチタン合金からなる部材におい
て、処理前の表面状態を維持したままで表面と内部を硬
化処理することにより外観品質が優れたチタン硬化部材
の硬化処理方法を提供することにある。 【解決手段】 真空槽内部に加熱手段とチタンおよびチ
タン合金からなる部材を配置し真空排気した後、ヘリウ
ムもしくはアルゴンの常圧雰囲気中でチタンおよびチタ
ン合金からなる部材を加熱手段により700〜800℃
まで所定時間加熱し焼鈍処理した後、ヘリウムもしくは
アルゴンに窒素成分と酸素成分を含むガスを混合させた
ガスを導入した常圧雰囲気中で加熱状態を所定時間保持
しチタンおよびチタン合金からなる部材中に窒素と酸素
を熱拡散により拡散、固溶させ硬化層を形成させた後、
ヘリウムもしくはアルゴンの常圧雰囲気中で常温まで冷
却させて硬化処理を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チタンおよびチタ
ン合金からなり、その表面と内部が硬化処理されたチタ
ン硬化部材の硬化処理方法に関するもので、特に装飾用
品として用いられるチタンおよびチタン合金製の時計ケ
−ス、時計バンド、ピアス、イアリング、指輪、眼鏡フ
レ−ムなどの硬化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、チタンおよびチタン合金はメタル
アレルギ−を起こしにくい、人にやさしい金属として注
目されている。時計、眼鏡、宝飾などに代表される装飾
用品についても上記のコンセプトは広く支持されている
が、一方で使用中のキズ発生などによる外観品質の低下
が大きな問題として指摘されている。これは主に、チタ
ンおよびチタン合金からなる部材自身の表面硬度の低さ
に起因するものであり、解決を目指して種々の表面硬化
処理が試みられている。表面硬化処理には、大きく分け
て金属部材表面に硬質膜を被覆する方法と金属部材自身
を硬化する方法がある。金属部材表面に硬質膜を被覆す
る方法としては電気メッキに代表されるウェットプロセ
ス、真空蒸着・イオンプレ−ティング・スパッタリング
・プラズマCVDなどに代表されるドライプロセスが公
知であり、一方、金属部材自身を硬化する方法としては
イオン注入、イオン窒化、ガス窒化、浸炭などが知られ
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、チタン
およびチタン合金からなる部材の表面硬度を増加させる
ために部材上に硬質膜を被覆形成させた場合には、部材
と被膜間の密着性に難があり膜剥離の問題に対しては完
全に解決するまでには至っていないことや、部材上に直
接被膜を施すことから、チタンおよびチタン合金の地金
色のままでの表面硬化層が得られないという欠点があっ
た。
【0004】一般にチタンおよびチタン合金を硬化処理
する方法としてイオン窒化、ガス窒化などの方法が広く
採用されているが、これらの方法を採用した場合、表面
でキズがつきにくい高硬度の表面硬化層を得るために
は、表面から1μmの深さでのビッカ−ス硬度Hvが最
低でもHv=750以上の値が必要である。表面から1
μmの深さでのビッカ−ス硬度Hv=750以上を得る
ためには処理温度を850℃以上に設定しなければなら
ないが、処理温度が850℃以上の高温度では部材の結
晶粒が粗大化して表面粗れが生ずることや、部材の表面
に窒化チタンに代表されるチタンと窒素の化合物や二酸
化チタンに代表されるチタンと酸素の化合物形成し黄色
く着色してしまうため、処理前の表面状態を維持し、か
つチタン地金色のままでの硬化処理ができないなどの問
題があった。また、処理時間も長く生産性にも難点があ
った。従って、本発明の課題は、表面粗れを生じさせな
い温度で部材を硬化処理し、表面に窒化チタンや二酸化
チタンなどの着色物質を形成させずに表面から1μmの
深さでのビッカ−ス硬度Hv=750以上を有する硬化
層を形成させる硬化処理方法を見い出すことである。
【0005】本発明の目的は、チタンおよびチタン合金
からなる部材において、表面粗れを生じさせず、表面に
着色物質を形成させずに処理前の表面状態を維持したま
まで部材の表面と内部が硬化処理されたキズのつきにく
い高硬度のチタンおよびチタン合金からなるチタン硬化
部材の硬化処理方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明において上記課題
を解決するために、ガス導入口とガス排気口とを備えた
真空槽に加熱手段とトレイとチタンおよびチタン合金か
らなる部材を配置し真空排気した後、ヘリウムもしくは
アルゴンを該真空槽内部に導入し圧力を大気圧にした常
圧雰囲気中でトレイ上に載置されたチタンおよびチタン
合金からなる部材を加熱手段により700〜800℃ま
で所定時間加熱し焼鈍処理する加熱工程と、ヘリウムも
しくはアルゴンに窒素成分と酸素成分を含むガスを混合
させたガスを導入し圧力を大気圧にした常圧雰囲気中で
加熱工程と同一温度で所定時間保持しチタンおよびチタ
ン合金からなる部材の表面から内部へ窒素と酸素を拡
散、固溶させて窒素と酸素が固溶した硬化層を形成させ
る硬化処理工程と、ヘリウムもしくはアルゴンに窒素成
分と酸素成分を含むガスを混合させたガスの供給を停止
し真空排気した後にヘリウムもしくはアルゴンを導入し
圧力を大気圧した常圧雰囲気中で硬化処理工程と同一温
度で所定時間保持した後に常温まで冷却する冷却工程と
からなる3工程により硬化処理することを特徴とする硬
化処理方法により達成される。
【0007】表面状態を維持したままで深い硬化層を有
する硬化部材の硬化処理方法を種々検討した結果、以下
の硬化処理方法を用いることによりチタンおよびチタン
合金からなる部材の表面と内部を硬化処理することが可
能であることを見い出した。すなわち、加熱手段とトレ
イとチタンおよびチタン合金からなる部材を配置した真
空槽内部を残留ガスの影響が排除できる圧力まで真空排
気した後に、ヘリウムもしくはアルゴンを真空槽内部に
導入し圧力を大気圧にした常圧雰囲気中でトレイ上に載
置されたチタンおよびチタン合金からなる部材を加熱手
段により700〜800℃まで所定時間加熱し焼鈍処理
する加熱工程と、ヘリウムもしくはアルゴンに酸素成分
と窒素成分を含んだガスを混合させたガスを真空槽内部
に導入し圧力を大気圧にした常圧雰囲気中で加熱工程と
同一温度で所定時間保持し部材の表面から内部へ窒素と
酸素を拡散、固溶させて窒素や酸素の化合物を形成させ
ることなく硬化層を形成させる硬化処理工程と、ヘリウ
ムもしくはアルゴンに窒素成分と酸素成分を含むガスを
混合させたガスの供給を停止し真空排気した後にヘリウ
ムもしくはアルゴンを導入し圧力を大気圧にした常圧雰
囲気中で硬化処理工程と同一温度で所定時間保持した後
に、加熱を停止し常温まで冷却させることにより部材の
表面とその内部を硬化処理させることが可能となる。
【0008】このとき表面粗れを生じさせないことと最
表面での硬度を上昇させるためには、チタンおよびチタ
ン合金からなる部材の表面近傍で窒素と酸素が固溶した
第1の硬化層を形成していること、また深い硬化層を得
るためには深さ方向に酸素が深く固溶した第2の硬化層
を形成していることである。このような構成の硬化層を
形成させることにより、表面粗れを生じさせずに処理前
の表面状態を維持したままでの表面硬化処理が可能とな
る。
【0009】チタン硬化部材の硬化処理方法図1は本発
明における、チタンおよびチタン合金からなる部材を硬
化処理するための硬化処理方法の工程を示す図である。
本発明における硬化処理方法の工程は、加熱工程2、硬
化処理工程4、冷却工程6により構成されている。すな
わち、真空槽内を1×10- 3 Torr以下の圧力まで
真空排気した後、ヘリウムもしくはアルゴンを導入し圧
力を大気圧にした常圧雰囲気中で部材を加熱手段により
700〜800℃まで所定時間加熱して焼鈍処理する加
熱工程2と、ヘリウムもしくはアルゴンに窒素成分と酸
素成分を含んだガスを混合させたガスを真空槽内部に導
入し圧力を大気圧にした常圧雰囲気中で加熱工程2と同
一温度で所定時間保持し、チタンおよびチタン合金から
なる部材の表面から内部へ窒素と酸素を拡散、固溶させ
硬化層を形成させる硬化処理工程4と、圧力を大気圧に
したのヘリウムもしくはアルゴンの常圧雰囲気中で硬化
処理工程4と同一温度で所定時間保持した後に加熱を停
止して常温まで冷却する冷却工程6とからなる3工程か
ら構成されていることを特徴としている。本発明におい
て、チタンおよびチタン合金からなる部材を硬化処理す
る硬化処理方法は、ヘリウムもしくはアルゴンを導入し
圧力を大気圧にした常圧雰囲気中で部材を加熱手段によ
り700〜800℃まで所定時間加熱し焼鈍処理する加
熱工程と、ヘリウムもしくはアルゴンに窒素成分と酸素
成分を含んだガスを混合させたガスを導入し圧力を大気
圧にした常圧雰囲気中で加熱工程と同一温度を所定時間
保持し、チタンおよびチタン合金からなる部材の表面か
ら内部へ窒素と酸素を拡散、固溶させ硬化層を形成させ
る硬化処理工程と、ヘリウムもしくはアルゴンに窒素成
分と酸素成分を含むガスを混合させたガスの供給を停止
し真空排気した後に、ヘリウムもしくはアルゴンを導入
し圧力を大気圧した常圧雰囲気中で常温まで冷却する冷
却工程とからなることを特徴としている。
【0010】チタンおよびチタン合金からなる部材を7
00〜800℃まで加熱し焼鈍処理する加熱工程2は、
熱間鍛造後の研磨加工でチタンおよびチタン合金からな
る部材を加工するときに発生する加工ひずみ層を緩和さ
せることを目的として行なうものである。加工ひずみ層
は研磨加工時の応力が格子ひずみとなって残っている状
態で結晶的にはアモルファス相である。研磨加工後のチ
タンおよびチタン合金からなる部材に対し焼鈍処理を行
なわず硬化処理を施すと、加工ひずみ層を緩和しながら
窒素と酸素の拡散、固溶を行なうことになるため、チタ
ンおよびチタン合金からなる部材の最表面では窒素と酸
素の反応量が高くなり、内部へ拡散、固溶する量よりも
最表面層で反応する量の方が大きくなり、結果として最
表面に着色物質である窒化チタンなどの窒化物や二酸化
チタンなど酸化物のが形成される。この着色物質が形成
されると外観品質が低下するため硬化部材として好まし
い状態ではない。従って研磨加工したチタンおよびチタ
ン合金からなる部材は本発明における硬化処理工程4を
施す前に加熱工程2を施す必要がある。
【0011】硬化処理工程4は加熱工程2が終了後、直
ちにヘリウムもしくはアルゴンに窒素成分と酸素成分を
含むガスを混合させたガスを導入し圧力を大気圧にした
常圧雰囲気中で加熱工程2と同じ加熱状態を所定時間保
持することを特徴としている。
【0012】図2に鏡面外観を有するJIS規格で定義
されたチタン第2種材を、ヘリウムに亜酸化窒素ガスを
混合させた常圧雰囲気中で処理温度をパラメ−タ−にと
り690〜810℃に変化させ5時間硬化処理した後の
ビッカ−ス硬度を測定した結果を示す。処理温度が69
0℃以下の温度では、表面から1μmでの深さでのビッ
カ−ス硬度がHv=750以下となり充分な硬化処理が
なされない。この原因は690℃以下の温度ではチタン
およびチタン合金からなる部材に対し窒素と酸素が充分
に拡散、固溶しないため硬化層が形成されず表面硬度が
上昇しないからである。一方、処理温度が810℃以上
ではチタンおよびチタン合金からなる部材に対して窒素
の拡散、固溶速度が大きく、厚い硬化層が得られるため
表面から1μmの深さでのビッカ−ス硬度はHv=11
40となるが処理温度が高いために結晶粒が粗大化して
表面粗れが発生してしまい、処理前の表面状態を維持す
ることができない。
【0013】図3(a)は鏡面外観を有するJIS規格
で定義されたチタン第2種材の未処理品の表面をX線の
入射角α=0.5°で薄膜X線回折により分析した結果
を示す。同様に、図2(b)はヘリウムに亜酸化窒素ガ
スを混合させた常圧雰囲気中でチタン第2種材を処理温
度800℃で、図2(c)はヘリウムに亜酸化窒素ガス
を混合させた常圧雰囲気中でチタン第2種材を処理温度
810℃で5時間処理した後の表面を薄膜X線回折によ
り分析した結果を示す。処理温度800℃のピ−クはチ
タン第2種材とほぼ同等のピ−クを示していて、表面に
着色物質である窒化チタンなどの窒素物や二酸化チタン
などの酸化物を形成しておらず、目視による外観検査で
も表面は無着色である。これに対し、処理温度810℃
ではチタン第2種材のピ−クと異なり、2Θで27.2
゜の部分に明かなピ−クが認められ、これは着色物質で
あるで二酸化チタンのピ−クと一致する。また、36.
3°と42.4°の部分にピ−クが認められ、これは着
色物質である窒化チタンのピ−クと一致する。目視によ
る外観検査でも表面が黄色く着色していることから、表
面に二酸化チタンと窒化チタンが形成されていることは
明らかである。従って処理温度が810℃以上では、表
面への窒素と酸素の供給量が過剰となり着色物質である
二酸化チタンや窒化チタンを形成して外観品質を低下さ
せるため硬化部材への適用は困難である。
【0014】以上の理由から、本発明において硬化処理
工程の処理温度は700〜800℃の範囲内とする必要
がある。チタンおよびチタン合金からなる部材を処理前
の表面状態を維持したままで部材の表面と内部を硬化処
理するためには、表面粗れを生じさせないこと、部材の
表面近傍で窒素と酸素が化合物を形成せずに固溶した状
態で硬化層を形成していることである。このような構成
の硬化層を形成させることにより、表面粗れを生じさせ
ずに処理前の表面状態を維持したままでの表面硬化処理
が可能となる。重要なことはチタンおよびチタン合金か
らなる部材に対し、表面から窒素と酸素が、窒化チタン
などの窒化物や二酸化チタンなどの酸化物を形成するこ
となく拡散、固溶し、表面近傍で窒素と酸素が固溶した
第1の硬化層を、さらに第1の硬化層よりも内側に酸素
が深く固溶した第2の硬化層を形成していることであ
る。
【0015】窒素成分と酸素成分を同時に含むガスとし
ては亜酸化窒素ガスを用いることができる。窒素成分を
含むガスとしてはアンモニアガスを用いることができ
る。酸素成分を含むガスとしては水蒸気もしくは酸素ガ
スを用いることができる。
【0016】冷却工程6は硬化処理工程4が終了したチ
タンおよびチタン合金からなる部材の表面に着色物質で
ある窒化チタンなどの窒化物や二酸化チタンなどの酸化
物を形成させることなく、速やかに常温まで冷却させ真
空槽内部から取り出すため工程である。冷却工程6は硬
化処理工程4が終了後、ヘリウムもしくはアルゴンに窒
素成分と酸素成分を含むをガスを混合させたガスの供給
を停止し真空排気した後に、ヘリウムもしくはアルゴン
を導入し圧力を大気圧にした常圧雰囲気中で硬化処理工
程4と同一温度で所定時間保持した後に常温まで冷却す
ることを特徴としている。冷却工程6を硬化処理工程4
と同一のガス雰囲気とすると、冷却しながら窒素と酸素
を供給していることになるため、チタンまたはチタン合
金からなる部材の表面から窒素と酸素が拡散しなくなっ
た後も吸着し続け、窒素と酸素の供給過多となり表面で
着色物である窒化チタンなどの窒化物や二酸化チタンな
どの酸化物を形成する。この着色物質である窒化チタン
などの窒化物や二酸化チタンなどの酸化物の形成を防止
するために冷却工程6の雰囲気はヘリウムもしくはアル
ゴン雰囲気とする必要がある。重要なことは冷却工程6
では、窒素成分と酸素成分を含むガス雰囲気としないこ
とである。
【0017】本発明において、チタンおよびチタン合金
からなる硬化部材とは、その表面と内部が硬化処理され
たものでチタンおよびチタン合金製の時計ケ−ス、時計
バンド、ピアス、イアリング、指輪、眼鏡フレ−ムなど
の装飾用品の他にも、処理前の表面状態を維持したまで
硬化処理が可能な部材であれば、前記の装飾用品に限ら
ず適用可能なもの全てを意味するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明においては、チタンおよび
チタン合金からなる部材を処理前の表面状態を維持した
まま硬化処理することが目的であり、これに対しては、
ガス導入口とガス排気口とを備えた真空槽に加熱手段と
トレイとチタンおよびチタン合金からなる部材を配置
し、残留ガスの影響が排除される圧力まで真空排気した
後にヘリウムもしくはアルゴンの常圧雰囲気中でトレイ
上に載置された部材を加熱手段により700〜800℃
まで所定時間加熱し焼鈍処理する加熱工程2と、ヘリウ
ムもしくはアルゴンに窒素成分と酸素成分を含むガスを
混合させたガスを該真空槽内部に導入した常圧雰囲気中
で加熱工程2と同一温度で所定時間保持し部材の表面か
ら内部へ窒素と酸素を拡散、固溶させ硬化層を形成させ
る硬化処理工程4と、ヘリウムもしくはアルゴンに窒素
成分と酸素成分を含むガスを混合させたガスの供給を停
止し真空排気した後に、ヘリウムもしくはアルゴンを導
入し圧力を大気圧した常圧雰囲気中で常温まで冷却する
冷却工程6とからなること特徴とする硬化処理方法を採
用することで、その目的が達成される。
【0019】
【実施例】
(実施例1)本発明の第1の実施例を図4、図5を用い
て説明する。図4はチタンおよびチタン合金からなる部
材を硬化処理するための装置構成を示す模式図で、図5
は硬化処理された部材の構造を示す断面模式図である。
ガス導入口16とガス排気口20と真空ポンプに接続し
たガス排気口24を備えた真空槽12の内部には、基材
支持台であるトレイ10上にチタンおよびチタン合金か
らなる部材8と、チタンおよびチタン合金からなる部材
8を加熱して活性化するための加熱手段としてヒ−タ−
14が配置されている。真空槽12の内部を真空ポンプ
に接続したガス排気口24を通じて真空ポンプ28によ
り、残留ガス雰囲気の影響が排除される1×10- 3
orr以下の圧力まで真空排気した後に真空ポンプに接
続したガス排気口24の電磁弁26を閉じてガス導入口
16のガス導入弁18を開けヘリウムを導入しガス排気
口20のベント弁22を開け真空槽内の圧力を大気圧し
た常圧雰囲気中でヒーター14によりチタンおよびチタ
ン合金からなる部材8を690〜810℃まで30分間
加熱し焼純処理してから、ガス排気口20のベント弁2
2とガス導入口16のガス導入弁18を閉じ真空ポンプ
に接続したガス排気口24の電磁弁26を開け真空ポン
プ28により真空槽内を1×10- 3 Torr以下の圧
力まで真空排気した後に真空ポンプに接続したガス排気
口24の電磁弁26を閉じてガス導入口16のガス導入
弁18を開けヘリウムに亜酸化窒素ガスを混合させたガ
スを導入しガス排気口20のベント弁22を開け真空槽
内の圧力を大気圧に調整した常圧雰囲気中で焼純処理し
たときと同一の温度を保ちながら7時間一定に保持し
て、チタンおよびチタン合金からなる部材8の表面に窒
素36と酸素38を吸着及び拡散させて、チタンおよび
チタン合金からなる部材8の表面から内部へ窒素36と
酸素38を拡散、固溶させ、第1の硬化層32と第2の
硬化層34からなる表面硬化層30を形成した。この
後、ガス排気口20のベント弁22とガス導入口16の
ガス導入弁18を閉じ真空ポンプに接続したガス排気口
24の電磁弁26を開け真空ポンプ28により真空槽内
を1×10- 3Torr以下の圧力まで真空排気した後
に真空ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26を
閉じてガス導入口16のガス導入弁18を開けヘリウム
を導入しガス排気口20のベント弁22を開け真空槽内
の圧力を大気圧にしたヘリウムの常圧雰囲気中で常温ま
で冷却した。
【0020】被硬化処理部材には、鏡面外観を有するJ
IS規格で定義されたチタン第2種材からなる時計ケ−
スを使用し、上記690〜810℃の温度範囲で処理温
度を変化させて処理した。その後に硬さ、表面粗れ、表
面組織の結晶粒の大きさ、着色物質である窒化チタンや
二酸化チタンの形成の有無を測定評価した。硬さはビッ
カ−ス硬度計により測定し、表面から1μmの深さでの
ビッカ−ス硬度Hv=750以上を合格とした。表面粗
れは表面粗さ計を使用して平均表面粗さRaを測定し、
0.4μm以下のものを合格とした。結晶粒Rcの大き
さは表面の結晶組織を電子顕微鏡により測定し、20〜
65μmの範囲内にあるものを合格とした。着色物質で
ある窒化チタンや二酸化チタンの形成の有無はX線入射
角α=0.5°の薄膜X線回折により測定し、窒化チタ
ンや二酸化チタンのピ−クが存在しないものを合格とし
た。これらの測定結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】試料番号a〜dはそれぞれ、690℃から
810℃まで処理温度を変化させて処理したもので、試
料番号eは未処理のチタン第2種材である。
【0023】表1から明らかなように、試料番号a(処
理温度690℃)では処理後の平均表面粗さRa、処理
後の結晶粒の大きさRcともに試料番号eの未処理のチ
タン第2種材とほぼ同等で外観品質は良好であるが、表
面から1.0μmの深さでの硬度がHv=590と低く
充分な厚みを有する硬化層が形成されていない。試料番
号d(処理温度810℃)は表面1.0μmの深さでの
硬度がHv=1240と高いが、処理後の平均表面粗さ
がRa=1.3μmと大きく、また処理後の結晶粒もR
c=80〜250μmに粗大化していて処理後の表面粗
れが顕著に認められ処理前の表面状態を維持した硬化処
理がなされていない。また処理後の表面には二酸化チタ
ンと窒化チタンのピ−クが明らかに認められるので窒素
と酸素が固溶した状態での硬化層が形成されていない。
これらに対し試料番号b(処理温度700℃)では表面
から1.0μmの深さでの硬度がHv=750と高く、
処理後の平均表面粗さはRa=0.25μm、処理後の
結晶粒もRc=30〜50μmと試料番号eの未処理の
チタン第2種材と比較してほとんど変化がなく処理前の
表面状態を維持したままの硬化処理がなされている。ま
た、処理後の表面では二酸化チタンや窒化チタンのピ−
クが認められないことから、窒素と酸素が窒化物、酸化
物を形成せずに固溶した状態で硬化層を形成しているこ
とが明らかである。同様に試料番号c(処理温度800
℃)では表面から1.0μmの深さでの硬度がHv=1
030と高く、処理後の平均表面粗さはRa=0.40
μm、処理後の結晶粒もRc=30〜65μmと試料番
号eの未処理のチタン第2種材と比較してほとんど変化
がなく処理前の表面状態を維持したままの硬化処理がな
されている。また、処理後の表面では二酸化チタンや窒
化チタンのピ−クが認められないことから、窒素と酸素
が窒化物、酸化物を形成せずに固溶した状態で硬化層を
形成していることが明らかである。
【0024】(実施例2)本発明の第2の実施例を図
4、図5を用いて説明する。図4はチタンおよびチタン
合金からなる部材を硬化処理するための装置構成を示す
模式図で、図5は硬化処理された部材の構造を示す断面
模式図である。ガス導入口16とガス排気口20と真空
ポンプに接続したガス排気口24を備えた真空槽12の
内部には、基材支持台であるトレイ10上にチタンおよ
びチタン合金からなる部材8と、チタンおよびチタン合
金からなる部材8を加熱して活性化するための加熱手段
としてヒ−タ−14が配置されている。真空槽12の内
部を真空ポンプに接続したガス排気口24を通じて真空
ポンプ28により、残留ガス雰囲気の影響が排除される
1×10- 3 Torr以下の圧力まで真空排気した後に
真空ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26を閉
じてガス導入口16のガス導入弁18を開けヘリウムを
導入しガス排気口20のベント弁22を開け真空槽内の
圧力を大気圧した常圧雰囲気中でヒーター14によりチ
タンおよびチタン合金からなる部材8を690〜810
℃まで30分間加熱し焼純処理してから、ガス排気口2
0のベント弁22とガス導入口16のガス導入弁18を
閉じ真空ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26
を開け真空ポンプ28により真空槽内を1×10- 3
orr以下の圧力まで真空排気した後に真空ポンプに接
続したガス排気口24の電磁弁26を閉じてガス導入口
16のガス導入弁18を開けヘリウムに亜酸化窒素ガス
と水蒸気を混合させたガスを導入しガス排気口20のベ
ント弁22を開け真空槽内の圧力を大気圧に調整した常
圧雰囲気中で焼純処理したときと同一の温度を保ちなが
ら7時間一定に保持して、チタンおよびチタン合金から
なる部材8の表面に窒素36と酸素38を吸着及び拡散
させて、チタンおよびチタン合金からなる部材8の表面
から内部へ窒素36と酸素38を拡散、固溶させ、第1
の硬化層32と第2の硬化層34からなる表面硬化層3
0を形成した。この後、ガス排気口20のベント弁22
とガス導入口16のガス導入弁18を閉じ真空ポンプに
接続したガス排気口24の電磁弁26を開け真空ポンプ
28により真空槽内を1×10- 3 Torr以下の圧力
まで真空排気した後に真空ポンプに接続したガス排気口
24の電磁弁26を閉じてガス導入口16のガス導入弁
18を開けヘリウムを導入しガス排気口20のベント弁
22を開け真空槽内の圧力を大気圧にしたヘリウムの常
圧雰囲気中で常温まで冷却した。
【0025】本実施例2においても、被硬化処理部材に
は実施例1と同様に鏡面外観を有するJIS規格に定義
されたチタン第2種材からなる時計ケ−スを実施例1と
全く同等な温度条件で処理した後、実施例1と同様に、
硬さ、表面粗れ、表面組織の結晶粒の大きさ、着色物質
である窒化チタンや二酸化チタンの有無を測定した。こ
れらの測定結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】試料番号f〜iはそれぞれ、690℃から
810℃まで処理温度を変化させて処理したもので、試
料番号eは未処理のチタン第2種材である。
【0028】表2から明らかなように、試料番号f(処
理温度690℃)では処理後の平均表面粗さRa、処理
後の結晶粒の大きさRcともに試料番号eの未処理のチ
タン第2種材とほぼ同等で外観品質は良好であるが、表
面から1.0μmの深さでの硬度がHv=580と低く
充分な厚みを有する硬化層が形成されていない。試料番
号i(処理温度810℃)は表面1.0μmの深さでの
硬度がHv=1200と高いが、処理後の平均表面粗さ
がRa=1.2μmと大きく、また処理後の結晶粒もR
c=80〜220μmに粗大化していて処理後の表面粗
れが顕著に認められ処理前の表面状態を維持した硬化処
理がなされていない。また処理後の表面には二酸化チタ
ンと窒化チタンのピ−クが明らかに認められるので窒素
と酸素が固溶した状態での硬化層が形成されていない。
これらに対し試料番号g(処理温度700℃)では表面
から1.0μmの深さでの硬度がHv=760と高く、
処理後の平均表面粗さはRa=0.25μm、処理後の
結晶粒もRc=30〜50μmと試料番号eの未処理の
チタン第2種材と比較してほとんど変化がなく処理前の
表面状態を維持したままの硬化処理がなされている。ま
た、処理後の表面では二酸化チタンや窒化チタンのピ−
クが認められないことから、窒素と酸素が窒化物、酸化
物を形成せずに固溶した状態で硬化層を形成しているこ
とが明らかである。同様に試料番号h(処理温度800
℃)では表面から1.0μmの深さでの硬度がHv=9
80と高く、処理後の平均表面粗さはRa=0.40μ
m、処理後の結晶粒もRc=30〜65μmと試料番号
eの未処理のチタン第2種材と比較してほとんど変化が
なく処理前の表面状態を維持したままの硬化処理がなさ
れている。また、処理後の表面では二酸化チタンや窒化
チタンのピ−クが認められないことから、窒素と酸素が
窒化物、酸化物を形成せずに固溶した状態で硬化層を形
成していることが明らかである。
【0029】(実施例3)本発明の第1の実施例を図
4、図5を用いて説明する。図4はチタンおよびチタン
合金からなる部材を硬化処理するための装置構成を示す
模式図で、図5は硬化処理された部材の構造を示す断面
模式図である。ガス導入口16とガス排気口20と真空
ポンプに接続したガス排気口24を備えた真空槽12の
内部には、基材支持台であるトレイ10上にチタンおよ
びチタン合金からなる部材8と、チタンおよびチタン合
金からなる部材8を加熱して活性化するための加熱手段
としてヒ−タ−14が配置されている。真空槽12の内
部を真空ポンプに接続したガス排気口24を通じて真空
ポンプ28により、残留ガス雰囲気の影響が排除される
1×10- 3 Torr以下の圧力まで真空排気した後に
真空ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26を閉
じてガス導入口16のガス導入弁18を開けヘリウムを
導入しガス排気口20のベント弁22を開け真空槽内の
圧力を大気圧した常圧雰囲気中でヒーター14によりチ
タンおよびチタン合金からなる部材8を690〜810
℃まで30分間加熱し焼純処理してから、ガス排気口2
0のベント弁22とガス導入口16のガス導入弁18を
閉じ真空ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26
を開け真空ポンプ28により真空槽内を1×10- 3
orr以下の圧力まで真空排気した後に真空ポンプに接
続したガス排気口24の電磁弁26を閉じてガス導入口
16のガス導入弁18を開けアルゴンに亜酸化窒素ガス
と酸素ガスを混合させたガスを導入しガス排気口20の
ベント弁22を開け真空槽内の圧力を大気圧に調整した
常圧雰囲気中で焼純処理したときと同一の温度を保ちな
がら7時間一定に保持して、チタンおよびチタン合金か
らなる部材8の表面に窒素36と酸素38を吸着及び拡
散させて、チタンおよびチタン合金からなる部材8の表
面から内部へ窒素36と酸素38を拡散、固溶させ、第
1の硬化層32と第2の硬化層34からなる表面硬化層
30を形成した。この後、ガス排気口20のベント弁2
2とガス導入口16のガス導入弁18を閉じ真空ポンプ
に接続したガス排気口24の電磁弁26を開け真空ポン
プ28により真空槽内を1×10- 3 Torr以下の圧
力まで真空排気した後に真空ポンプに接続したガス排気
口24の電磁弁26を閉じてガス導入口16のガス導入
弁18を開けヘリウムを導入しガス排気口20のベント
弁22を開け真空槽内の圧力を大気圧にしたヘリウムの
常圧雰囲気中で常温まで冷却した。
【0030】本実施例3においても、被硬化処理部材に
は実施例1、実施例2と同様に鏡面外観を有するJIS
規格に定義されたチタン第2種材からなる時計ケ−スを
実施例1、実施例2と全く同等な温度条件で処理した
後、実施例1、実施例2と同様に、硬さ、表面粗れ、表
面組織の結晶粒の大きさ、着色物質である窒化チタンや
二酸化チタンの有無を測定した。これらの測定結果を表
3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】試料番号j〜mはそれぞれ、690℃から
810℃まで処理温度を変化させて処理したもので、試
料番号eは未処理のチタン第2種材である。
【0033】表3から明らかなように、試料番号j(処
理温度690℃)では処理後の平均表面粗さRa、処理
後の結晶粒の大きさRcともに試料番号eの未処理のチ
タン第2種材とほぼ同等で外観品質は良好であるが、表
面から1.0μmの深さでの硬度がHv=560と低く
充分な厚みを有する硬化層が形成されていない。試料番
号m(処理温度810℃)は表面1.0μmの深さでの
硬度がHv=1150と高いが、処理後の平均表面粗さ
がRa=1.0μmと大きく、また処理後の結晶粒もR
c=80〜220μmに粗大化していて処理後の表面粗
れが顕著に認められ処理前の表面状態を維持した硬化処
理がなされていない。また処理後の表面には二酸化チタ
ンと窒化チタンのピ−クが明らかに認められるので窒素
と酸素が固溶した状態での硬化層が形成されていない。
これらに対し試料番号k(処理温度700℃)では表面
から1.0μmの深さでの硬度がHv=750と高く、
処理後の平均表面粗さはRa=0.25μm、処理後の
結晶粒もRc=30〜50μmと試料番号eの未処理の
チタン第2種材と比較してほとんど変化がなく処理前の
表面状態を維持したままの硬化処理がなされている。ま
た、処理後の表面では二酸化チタンや窒化チタンのピ−
クが認められないことから、窒素と酸素が窒化物、酸化
物を形成せずに固溶した状態で硬化層を形成しているこ
とが明らかである。同様に試料番号l(処理温度800
℃)では表面から1.0μmの深さでの硬度がHv=9
80と高く、処理後の平均表面粗さはRa=0.40μ
m、処理後の結晶粒もRc=30〜65μmと試料番号
eの未処理のチタン第2種材と比較してほとんど変化が
なく処理前の表面状態を維持したままの硬化処理がなさ
れている。また、処理後の表面では二酸化チタンや窒化
チタンのピ−クが認められないことから、窒素と酸素が
窒化物、酸化物を形成せずに固溶した状態で硬化層を形
成していることが明らかである。
【0034】(実施例4)本発明の第1の実施例を図
4、図5を用いて説明する。図4はチタンおよびチタン
合金からなる部材を硬化処理するための装置構成を示す
模式図で、図5は硬化処理された部材の構造を示す断面
模式図である。ガス導入口16とガス排気口20と真空
ポンプに接続したガス排気口24を備えた真空槽12の
内部には、基材支持台であるトレイ10上にチタンおよ
びチタン合金からなる部材8と、チタンおよびチタン合
金からなる部材8を加熱して活性化するための加熱手段
としてヒ−タ−14が配置されている。真空槽12の内
部を真空ポンプに接続したガス排気口24を通じて真空
ポンプ28により、残留ガス雰囲気の影響が排除される
1×10- 3 Torr以下の圧力まで真空排気した後に
真空ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26を閉
じてガス導入口16のガス導入弁18を開けヘリウムを
導入しガス排気口20のベント弁22を開け真空槽内の
圧力を大気圧した常圧雰囲気中でヒーター14によりチ
タンおよびチタン合金からなる部材8を690〜810
℃まで30分間加熱し焼純処理してから、ガス排気口2
0のベント弁22とガス導入口16のガス導入弁18を
閉じ真空ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26
を開け真空ポンプ28により真空槽内を1×10- 3
orr以下の圧力まで真空排気した後に真空ポンプに接
続したガス排気口24の電磁弁26を閉じてガス導入口
16のガス導入弁18を開けヘリウムに亜酸化窒素ガス
とアンモニアガスを混合させたガスを導入しガス排気口
20のベント弁22を開け真空槽内の圧力を大気圧に調
整した常圧雰囲気中で焼純処理したときと同一の温度を
保ちながら7時間一定に保持して、チタンおよびチタン
合金からなる部材8の表面に窒素36と酸素38を吸着
及び拡散させて、チタンおよびチタン合金からなる部材
8の表面から内部へ窒素36と酸素38を拡散、固溶さ
せ、第1の硬化層32と第2の硬化層34からなる表面
硬化層30を形成した。この後、ガス排気口20のベン
ト弁22とガス導入口16のガス導入弁18を閉じ真空
ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26を開け真
空ポンプ28により真空槽内を1×10- 3 Torr以
下の圧力まで真空排気した後に真空ポンプに接続したガ
ス排気口24の電磁弁26を閉じてガス導入口16のガ
ス導入弁18を開けヘリウムを導入しガス排気口20の
ベント弁22を開け真空槽内の圧力を大気圧にしたヘリ
ウムの常圧雰囲気中で常温まで冷却した。
【0035】本実施例4においても、被硬化処理部材に
は実施例1、実施例2、実施例3と同様に鏡面外観を有
するJIS規格に定義されたチタン第2種材からなる時
計ケ−スを実施例1、実施例2、実施例3と全く同等な
温度条件で処理した後、実施例1、実施例2、実施例3
と同様に、硬さ、表面粗れ、表面組織の結晶粒の大き
さ、着色物質である窒化チタンや二酸化チタンの有無を
測定した。これらの測定結果を表4に示す。
【0036】
【表4】
【0037】試料番号n〜qはそれぞれ、690℃から
810℃まで処理温度を変化させて処理したもので、試
料番号eは未処理のチタン第2種材である。
【0038】表4から明らかなように、試料番号n(処
理温度690℃)では処理後の平均表面粗さRa、処理
後の結晶粒の大きさRcともに試料番号eの未処理のチ
タン第2種材とほぼ同等で外観品質は良好であるが、表
面から1.0μmの深さでの硬度がHv=570と低く
充分な厚みを有する硬化層が形成されていない。試料番
号q(処理温度810℃)は表面1.0μmの深さでの
硬度がHv=1210と高いが、処理後の平均表面粗さ
がRa=1.2μmと大きく、また処理後の結晶粒もR
c=80〜250μmに粗大化していて処理後の表面粗
れが顕著に認められ処理前の表面状態を維持した硬化処
理がなされていない。また処理後の表面には二酸化チタ
ンと窒化チタンのピ−クが明らかに認められるので窒素
と酸素が固溶した状態での硬化層が形成されていない。
これらに対し試料番号o(処理温度700℃)では表面
から1.0μmの深さでの硬度がHv=770と高く、
処理後の平均表面粗さはRa=0.25μm、処理後の
結晶粒もRc=30〜50μmと試料番号eの未処理の
チタン第2種材と比較してほとんど変化がなく処理前の
表面状態を維持したままの硬化処理がなされている。ま
た、処理後の表面では二酸化チタンや窒化チタンのピ−
クが認められないことから、窒素と酸素が窒化物、酸化
物を形成せずに固溶した状態で硬化層を形成しているこ
とが明らかである。同様に試料番号p(処理温度800
℃)では表面から1.0μmの深さでの硬度がHv=1
210と高く、処理後の平均表面粗さはRa=0.40
μm、処理後の結晶粒もRc=30〜65μmと試料番
号eの未処理のチタン第2種材と比較してほとんど変化
がなく処理前の表面状態を維持したままの硬化処理がな
されている。また、処理後の表面では二酸化チタンや窒
化チタンのピ−クが認められないことから、窒素と酸素
が窒化物、酸化物を形成せずに固溶した状態で硬化層を
形成していることが明らかである。
【0039】(実施例5)本発明の第1の実施例を図
4、図5を用いて説明する。図4はチタンおよびチタン
合金からなる部材を硬化処理するための装置構成を示す
模式図で、図5は硬化処理された部材の構造を示す断面
模式図である。ガス導入口16とガス排気口20と真空
ポンプに接続したガス排気口24を備えた真空槽12の
内部には、基材支持台であるトレイ10上にチタンおよ
びチタン合金からなる部材8と、チタンおよびチタン合
金からなる部材8を加熱して活性化するための加熱手段
としてヒ−タ−14が配置されている。真空槽12の内
部を真空ポンプに接続したガス排気口24を通じて真空
ポンプ28により、残留ガス雰囲気の影響が排除される
1×10- 3 Torr以下の圧力まで真空排気した後に
真空ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26を閉
じてガス導入口16のガス導入弁18を開けヘリウムを
導入しガス排気口20のベント弁22を開け真空槽内の
圧力を大気圧した常圧雰囲気中でヒーター14によりチ
タンおよびチタン合金からなる部材8を690〜810
℃まで30分間加熱し焼純処理してから、ガス排気口2
0のベント弁22とガス導入口16のガス導入弁18を
閉じ真空ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26
を開け真空ポンプ28により真空槽内を1×10- 3
orr以下の圧力まで真空排気した後に真空ポンプに接
続したガス排気口24の電磁弁26を閉じてガス導入口
16のガス導入弁18を開けヘリウムにアンモニアガス
と水蒸気を混合させたガスを導入しガス排気口20のベ
ント弁22を開け真空槽内の圧力を大気圧に調整した常
圧雰囲気中で焼純処理したときと同一の温度を保ちなが
ら7時間一定に保持して、チタンおよびチタン合金から
なる部材8の表面に窒素36と酸素38を吸着及び拡散
させて、チタンおよびチタン合金からなる部材8の表面
から内部へ窒素36と酸素38を拡散、固溶させ、第1
の硬化層32と第2の硬化層34からなる表面硬化層3
0を形成した。この後、ガス排気口20のベント弁22
とガス導入口16のガス導入弁18を閉じ真空ポンプに
接続したガス排気口24の電磁弁26を開け真空ポンプ
28により真空槽内を1×10- 3 Torr以下の圧力
まで真空排気した後に真空ポンプに接続したガス排気口
24の電磁弁26を閉じてガス導入口16のガス導入弁
18を開けヘリウムを導入しガス排気口20のベント弁
22を開け真空槽内の圧力を大気圧にしたヘリウムの常
圧雰囲気中で常温まで冷却した。
【0040】本実施例5においても、被硬化処理部材に
は実施例1、実施例2、実施例3、実施例4と同様に鏡
面外観を有するJIS規格に定義されたチタン第2種材
からなる時計ケ−スを実施例1、実施例2、実施例3、
実施例4と全く同等な温度条件で処理した後、実施例
1、実施例2、実施例3、実施例4と同様に、硬さ、表
面粗れ、表面組織の結晶粒の大きさ、着色物質である窒
化チタンや二酸化チタンの有無を測定した。これらの測
定結果を表5に示す。
【0041】
【表5】
【0042】試料番号r〜uはそれぞれ、690℃から
810℃まで処理温度を変化させて処理したもので、試
料番号eは未処理のチタン第2種材である。
【0043】表5から明らかなように、試料番号r(処
理温度690℃)では処理後の平均表面粗さRa、処理
後の結晶粒の大きさRcともに試料番号eの未処理のチ
タン第2種材とほぼ同等で外観品質は良好であるが、表
面から1.0μmの深さでの硬度がHv=550と低く
充分な厚みを有する硬化層が形成されていない。試料番
号u(処理温度810℃)は表面1.0μmの深さでの
硬度がHv=1170と高いが、処理後の平均表面粗さ
がRa=1.0μmと大きく、また処理後の結晶粒もR
c=70〜200μmに粗大化していて処理後の表面粗
れが顕著に認められ処理前の表面状態を維持した硬化処
理がなされていない。また処理後の表面には二酸化チタ
ンと窒化チタンのピ−クが明らかに認められるので窒素
と酸素が固溶した状態での硬化層が形成されていない。
これらに対し試料番号s(処理温度700℃)では表面
から1.0μmの深さでの硬度がHv=760と高く、
処理後の平均表面粗さはRa=0.25μm、処理後の
結晶粒もRc=30〜50μmと試料番号eの未処理の
チタン第2種材と比較してほとんど変化がなく処理前の
表面状態を維持したままの硬化処理がなされている。ま
た、処理後の表面では二酸化チタンや窒化チタンのピ−
クが認められないことから、窒素と酸素が窒化物、酸化
物を形成せずに固溶した状態で硬化層を形成しているこ
とが明らかである。同様に試料番号t(処理温度800
℃)では表面から1.0μmの深さでの硬度がHv=9
50と高く、処理後の平均表面粗さはRa=0.40μ
m、処理後の結晶粒もRc=30〜65μmと試料番号
eの未処理のチタン第2種材と比較してほとんど変化が
なく処理前の表面状態を維持したままの硬化処理がなさ
れている。また、処理後の表面では二酸化チタンや窒化
チタンのピ−クが認められないことから、窒素と酸素が
窒化物、酸化物を形成せずに固溶した状態で硬化層を形
成していることが明らかである。
【0044】(実施例6)本発明の第1の実施例を図
4、図5を用いて説明する。図4はチタンおよびチタン
合金からなる部材を硬化処理するための装置構成を示す
模式図で、図5は硬化処理された部材の構造を示す断面
模式図である。ガス導入口16とガス排気口20と真空
ポンプに接続したガス排気口24を備えた真空槽12の
内部には、基材支持台であるトレイ10上にチタンおよ
びチタン合金からなる部材8と、チタンおよびチタン合
金からなる部材8を加熱して活性化するための加熱手段
としてヒ−タ−14が配置されている。真空槽12の内
部を真空ポンプに接続したガス排気口24を通じて真空
ポンプ28により、残留ガス雰囲気の影響が排除される
1×10- 3 Torr以下の圧力まで真空排気した後に
真空ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26を閉
じてガス導入口16のガス導入弁18を開けヘリウムを
導入しガス排気口20のベント弁22を開け真空槽内の
圧力を大気圧した常圧雰囲気中でヒーター14によりチ
タンおよびチタン合金からなる部材8を690〜810
℃まで30分間加熱し焼純処理してから、ガス排気口2
0のベント弁22とガス導入口16のガス導入弁18を
閉じ真空ポンプに接続したガス排気口24の電磁弁26
を開け真空ポンプ28により真空槽内を1×10- 3
orr以下の圧力まで真空排気した後に真空ポンプに接
続したガス排気口24の電磁弁26を閉じてガス導入口
16のガス導入弁18を開けアルゴンにアンモニアガス
と酸素ガスを混合させたガスを導入しガス排気口20の
ベント弁22を開け真空槽内の圧力を大気圧に調整した
常圧雰囲気中で焼純処理したときと同一の温度を保ちな
がら7時間一定に保持して、チタンおよびチタン合金か
らなる部材8の表面に窒素36と酸素38を吸着及び拡
散させて、チタンおよびチタン合金からなる部材8の表
面から内部へ窒素36と酸素38を拡散、固溶させ、第
1の硬化層32と第2の硬化層34からなる表面硬化層
30を形成した。この後、ガス排気口20のベント弁2
2とガス導入口16のガス導入弁18を閉じ真空ポンプ
に接続したガス排気口24の電磁弁26を開け真空ポン
プ28により真空槽内を1×10- 3 Torr以下の圧
力まで真空排気した後に真空ポンプに接続したガス排気
口24の電磁弁26を閉じてガス導入口16のガス導入
弁18を開けヘリウムを導入しガス排気口20のベント
弁22を開け真空槽内の圧力を大気圧にしたヘリウムの
常圧雰囲気中で常温まで冷却した。
【0045】本実施例6においても、被硬化処理部材に
は実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5
と同様に鏡面外観を有するJIS規格に定義されたチタ
ン第2種材からなる時計ケ−スを実施例1、実施例2、
実施例3、実施例4、実施例5と全く同等な温度条件で
処理した後、実施例1、実施例2、実施例3、実施例
4、実施例5と同様に、硬さ、表面粗れ、表面組織の結
晶粒の大きさ、着色物質である窒化チタンや二酸化チタ
ンの有無を測定した。これらの測定結果を表6に示す。
【0046】
【表6】
【0047】試料番号v〜yはそれぞれ、690℃から
810℃まで処理温度を変化させて処理したもので、試
料番号eは未処理のチタン第2種材である。
【0048】表6から明らかなように、試料番号v(処
理温度690℃)では処理後の平均表面粗さRa、処理
後の結晶粒の大きさRcともに試料番号eの未処理のチ
タン第2種材とほぼ同等で外観品質は良好であるが、表
面から1.0μmの深さでの硬度がHv=540と低く
充分な厚みを有する硬化層が形成されていない。試料番
号y(処理温度810℃)は表面1.0μmの深さでの
硬度がHv=1240と高いが、処理後の平均表面粗さ
がRa=1.3μmと大きく、また処理後の結晶粒もR
c=80〜250μmに粗大化していて処理後の表面粗
れが顕著に認められ処理前の表面状態を維持した硬化処
理がなされていない。また処理後の表面には二酸化チタ
ンと窒化チタンのピ−クが明らかに認められるので窒素
と酸素が固溶した状態での硬化層が形成されていない。
これらに対し試料番号w(処理温度700℃)では表面
から1.0μmの深さでの硬度がHv=760と高く、
処理後の平均表面粗さはRa=0.25μm、処理後の
結晶粒もRc=30〜50μmと試料番号eの未処理の
チタン第2種材と比較してほとんど変化がなく処理前の
表面状態を維持したままの硬化処理がなされている。ま
た、処理後の表面では二酸化チタンや窒化チタンのピ−
クが認められないことから、窒素と酸素が窒化物、酸化
物を形成せずに固溶した状態で硬化層を形成しているこ
とが明らかである。同様に試料番号x(処理温度800
℃)では表面から1.0μmの深さでの硬度がHv=1
010と高く、処理後の平均表面粗さはRa=0.40
μm、処理後の結晶粒もRc=30〜65μmと試料番
号eの未処理のチタン第2種材と比較してほとんど変化
がなく処理前の表面状態を維持したままの硬化処理がな
されている。また、処理後の表面では二酸化チタンや窒
化チタンのピ−クが認められないことから、窒素と酸素
が窒化物、酸化物を形成せずに固溶した状態で硬化層を
形成していることが明らかである。
【0049】これら実施例1、実施例2、実施例3、実
施例4、実施例5、実施例6の結果から、チタンおよび
チタン合金からなる部材を、ヘリウムもしくはアルゴン
を導入した常圧雰囲気中で加熱手段により700〜80
0℃まで所定時間加熱し焼鈍処理する加熱工程と、ヘリ
ウムもしくはアルゴンに窒素成分と酸素成分を含むガス
を混合させたガスを真空槽内部に導入し圧力を大気圧し
た常圧雰囲気中で加熱工程と同一温度で所定時間保持し
チタンおよびチタン合金からなる部材の表面から内部へ
窒素と酸素を熱拡散により拡散、固溶させ硬化層を形成
させる硬化処理工程と、ヘリウムもしくはアルゴンに窒
素成分と酸素成分を含むガスを混合させたガスの供給を
停止し真空排気した後に、ヘリウムもしくはアルゴンを
導入し圧力を大気圧した常圧雰囲気中で常温まで冷却さ
せる冷却工程からなる3工程を通すことにより、チタン
およびチタン合金からなる部材の表面が処理前の表面状
態を維持したままで、窒素と酸素が化合物を形成せずに
固溶した状態の硬化層を形成させることが可能となっ
た。また、表面硬化層の厚みと表面粗れ防止はガス雰囲
気の温度により制御されることが明らかになった。処理
温度は高温であるほど窒素と酸素の拡散速度が大きく深
い硬化層が得られるが、その一方で結晶粒が粗大化して
表面が粗れること、また810℃以上の温度ではチタン
およびチタン合金からなる部材と窒素と酸素が反応し着
色物質である窒化チタンなどの窒化物や二酸化チタンな
どの酸化物を形成して外観品質を劣化させるため、処理
温度は結晶粒が粗大化せず窒化チタンなどの窒化物や二
酸化チタンなどの酸化物を形成しない800℃以下にす
る必要がある。一方、690℃以下の処理温度では窒素
と酸素が十分に固溶せず表面硬度が上昇しないため70
0℃以上の温度が必要である。
【0050】酸素と窒素が固溶した第1の硬化層はチタ
ンおよびチタン合金からなる部材の表面近傍での著しい
硬さの向上のために必要であり、酸素が固溶した第2の
硬化層は深さ方向への硬さの向上のために必要である。
硬化処理工程の処理温度に関しては、690℃以下の温
度では窒素と酸素が充分に固溶しないため硬化層が形成
されず表面硬度が上昇しないので、700℃以上の温度
が必要である。また、810℃以上の処理温度では窒素
と酸素の拡散速度が大きく深い硬化層が得られるが、そ
の一方で結晶粒が粗大化して表面が粗れ外観品質が劣化
するため、硬化処理工程の処理温度は結晶粒が粗大化し
ない800℃以下とする必要がある。
【0051】本発明の実施例において、実施例1、実施
例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6ともに
被硬化処理部材として時計ケ−スを用いたが、チタンお
よびチタン合金からなる部材とは、時計ケ−スに限ら
ず、その表面と内部が硬化処理されたものでチタンおよ
びチタン合金製の時計ケ−ス、時計バンド、ピアス、イ
アリング、指輪、メガネフレ−ムなどの装飾用品の他に
も、処理前の表面状態を維持したまで硬化処理が可能な
部材であれば、前記の装飾用品に限らず適用可能なもの
全てを意味するものである。
【0052】本発明の実施例の加熱工程において、実施
例1、実施例2、実施例4、実施例5では圧力を大気圧
にしたヘリウムの常圧雰囲気中で、実施例3、実施例6
では圧力を大気圧にしたアルゴンの常圧雰囲気中で加熱
手段により700から800℃まで30分間加熱し焼鈍
処理しているが、焼鈍時間は30分間に限らず、30分
以上2時間以下であれば任意の時間でよい。加熱工程で
の焼鈍処理は熱間鍛造後の研磨加工により、チタンおよ
びチタン合金からなる部材上に生じた加工ひずみ層を緩
和させることを目的として行なうもので、焼鈍温度は7
00〜800℃に限らず550〜800℃の範囲内の温
度であれば任意の温度で焼鈍処理が可能であるが、加熱
工程が終了後直ちに硬化処理工程に移行する必要がある
ため、加熱工程の処理温度と硬化処理工程の温度を同一
にすることが好ましい。従って、加熱工程の処理温度は
700〜800℃とする必要がある。また、加熱工程の
雰囲気はヘリウムの常圧雰囲気、アルゴンの常圧雰囲気
のどちらでも構わない。
【0053】本発明の実施例の硬化処理工程において、
硬化処理工程の処理時間はヘリウムもしくはアルゴンに
窒素成分と酸素成分を含むガスを混合させたガスを導入
して圧力を大気圧にした常圧雰囲気中で、実施例1、実
施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6とも
に加熱工程での温度と同一の温度で7時間保持したが、
硬化処理工程の処理時間が1時間以下では表面から1μ
mの深さでのビッカース硬度Hv=750以上が得られ
ない。また硬化処理工程の処理時間が10時間以上にな
ると表面のビッカース硬度は飽和してしまう。従って、
硬化処理工程の処理時間は1〜10時間の範囲内の任意
の時間でよい。
【0054】本発明の硬化処理工程において、実施例1
ではヘリウムに亜酸化窒素ガスを混合させたガスを、実
施例2ではヘリウムに亜酸化窒素ガスと水蒸気を混合さ
せたガスを、実施例3ではアルゴンに亜酸化窒素ガスと
酸素ガスを混合させたガスを、実施例4ではヘリウムに
亜酸化窒素ガスとアンモニアガスを混合させたガスを、
実施例5ではヘリウムにアンモニアガスと水蒸気を混合
させたガスを、実施例6ではアルゴンにアンモニアガス
と酸素ガスを混合させたガスを用いたが、ヘリウムに代
えてアルゴンを用いてもよく。またアルゴンに代えてヘ
リウムを用いても構わない。
【0055】本発明の実施例の冷却工程において、実施
例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施
例6ともに硬化処理工程が終了後、ヘリウムもしくはア
ルゴンに窒素成分と酸素成分を含むガスを混合させたガ
スの供給を停止し真空排気した後、ヘリウムもしくはア
ルゴンの常圧雰囲気中で硬化処理工程と同一温度で30
分間保持した後、ヒ−タ−による加熱を停止しヘリウム
もしくはアルゴンの常圧雰囲気中で常温まで冷却した
が、硬化処理工程と同一の温度で30分間保持したのは
冷却工程で窒素成分と酸素成分を含むガスを供給しなが
ら冷却すると窒素と酸素が熱拡散しなくなった後も表面
に窒素と酸素が吸着し続け、窒素と酸素が供給過多とな
り表面で着色物である窒化チタンなどの窒化物や二酸化
チタンなどの酸化物を形成するため、加熱手段による加
熱を停止する前に真空槽内から窒素成分と酸素成分を含
むガス雰囲気からヘリウム雰囲気もしくはアルゴン雰囲
気切換えるためである。この硬化処理工程と同一の温度
で保持する時間は30分間以上であれば任意の時間でよ
いが、冷却工程の時間があまり長くなると処理効率が低
下するため、30分以上1時間以下が好ましい。重要な
ことは冷却工程おいては、窒素成分と酸素成分を含むガ
ス雰囲気とせずにヘリウム雰囲気もしくはアルゴン雰囲
気として常温まで冷却することである。
【0056】本発明の実施例の冷却工程において、実施
例1、実施例2、実施例4、実施例5ではヘリウムを導
入した常圧雰囲気中で、実施例3、実施例6ではアルゴ
ンを導入した常圧雰囲気中で常温まで冷却を行なってい
るが、常圧に限らずヘリウムの減圧雰囲気、アルゴンの
減圧雰囲気としても構わない。
【0057】本発明においては、処理前の表面状態を維
持したままで窒化チタンなどの窒化物や二酸化チタンな
どの酸化物を形成させずに、窒素と酸素が固溶した硬化
層を有する硬化部材を得ることが目的であるため、その
硬化処理方法は上記方法に限定することはない。重要な
ことは処理前後で平均表面粗さがほとんど変化すること
なく、さらに結晶粒が粗大化せずに、窒素と酸素が固溶
している構造をとることにある。
【0058】本発明において、被硬化処理部材にはチタ
ンおよびチタン合金を用いたが、チタンとは純チタンを
主体とする金属部材を意味し、JIS規格で定義されて
いるチタン第1種、チタン第2種、チタン第3種などを
いう。またチタン合金とは、純チタンを主体とする金属
にアルミニウム、バナジウム、鉄などを添加した金属部
材をを意味し、JIS規格で定義されているチタン60
種、チタン60E種などをいう。この他にも、各種チタ
ン合金および各種チタン基の金属間化合物がチタン合金
に含まれる。
【0059】
【発明の効果】以上述べてきたように本発明によればチ
タンおよびチタン合金からなる部材に対して、ヘリウム
もしくはアルゴンを導入した常圧雰囲気中で加熱手段に
より700〜800℃まで所定時間加熱し焼鈍処理した
後、ヘリウムもしくはアルゴンに窒素成分と酸素成分を
含むガスを混合させたガスを真空槽内部に導入した常圧
雰囲気中で加熱状態と同一温度を所定時間保持しチタン
およびチタン合金からなる部材の表面から内部へ窒素と
酸素を熱拡散により拡散、固溶させ硬化層を形成させた
後、ヘリウムもしくはアルゴンの常圧雰囲気中で常温ま
で冷却させることにより、チタンおよびチタン合金から
なる部材への硬化処理が可能となった。また、本発明に
よって得られた部材は硬化処理後も硬化処理前の表面状
態が維持されるため装飾性能の高い鏡面外観品質が低下
しないことから、装飾性を高めた実用域の装飾部材を提
供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における硬化処理方法の工程を示す図で
ある。
【図2】本発明における処理温度とビッカ−ス硬度の相
関関係を示す図である。
【図3】本発明における処理温度と表面での窒化物や酸
化物の形成の有無を示す薄膜X線回折によるピ−ク図で
ある。
【図4】本発明の一実施例である部材の硬化処理方法を
説明するための装置構成を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施例である部材の構造を示す断面
模式図である。
【符号の説明】
2 加熱工程 4 硬化処理工程 6 冷却工程 8 チタン硬化部材 10 トレイ 12 真空槽 14 ヒーター 16 ガス導入口 18 ガス導入弁 20 ガス排気口 22 ベント弁 24 真空ポンプに接続したガス排気口 26 電磁弁 28 真空ポンプ 30 表面硬化層 32 第1の硬化層 34 第2の硬化層 36 窒素 38 酸素

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガス導入口とガス排気口とを備えた真空
    槽に加熱手段とトレイとチタンおよびチタン合金からな
    る部材を配置し、真空排気した後にヘリウムもしくはア
    ルゴンを該真空槽内部に導入し圧力を大気圧に調整した
    常圧雰囲気中でトレイ上に載置されたチタンおよびチタ
    ン合金からなる部材を加熱手段により700〜800℃
    まで所定時間加熱し焼純処理する加熱工程と、 ヘリウムもしくはアルゴンの供給の供給を停止し真空排
    気した後にヘリウムもしくはアルゴンに窒素成分と酸素
    成分を含むガスを混合させたガスを導入し圧力を大気圧
    に調整した常圧雰囲気中で加熱工程と同一温度で所定時
    間保持しチタンおよびチタン合金からなる部材の表面か
    ら内部へ窒素と酸素を熱拡散により拡散、固溶させ硬化
    層を形成させる硬化処理工程と、 ヘリウムもしくはアルゴンに窒素成分と酸素成分を含む
    ガスを混合させたガスの供給を停止し真空排気した後に
    ヘリウムもしくはアルゴンを導入し圧力を大気圧に調整
    した常圧雰囲気中で硬化処理工程と同一温度で所定時間
    保持した後に常温まで冷却する冷却工程と、 からなることを特徴とするチタンおよびチタン合金から
    なるチタン硬化部材の硬化処理方法。
  2. 【請求項2】 硬化処理工程の雰囲気は、ヘリウムもし
    くはアルゴンに亜酸化窒素ガスを混合させたガスである
    ことを特徴とする請求項1に記載のチタンおよびチタン
    合金からなる硬化部材の硬化処理方法。
  3. 【請求項3】 硬化処理工程の雰囲気は、ヘリウムもし
    くはアルゴンに亜酸化窒素ガスと水蒸気を混合させたガ
    スであることを特徴とする請求項1に記載のチタンおよ
    びチタン合金からなる硬化部材の硬化処理方法。
  4. 【請求項4】 硬化処理工程の雰囲気は、ヘリウムもし
    くはアルゴンに亜酸化窒素ガスと酸素ガスを混合させた
    ガスであることを特徴とする請求項1に記載のチタンお
    よびチタン合金からなる硬化部材の硬化処理方法。
  5. 【請求項5】 硬化処理工程の雰囲気は、ヘリウムもし
    くはアルゴンに亜酸化窒素ガスとアンモニアガスを混合
    させたガスであることを特徴とする請求項1に記載のチ
    タンおよびチタン合金からなる硬化部材の硬化処理方
    法。
  6. 【請求項6】 硬化処理工程の雰囲気は、ヘリウムもし
    くはアルゴンにアンモニアガスと水蒸気を混合させたガ
    スであることを特徴とする請求項1に記載のチタンおよ
    びチタン合金からなる硬化部材の硬化処理方法。
  7. 【請求項7】 硬化処理工程の雰囲気は、ヘリウムもし
    くはアルゴンにアンモニアガスと酸素ガスを混合させた
    ガスであることを特徴とする請求項1に記載のチタンお
    よびチタン合金からなる硬化部材の硬化処理方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002285358A (ja) * 2001-03-26 2002-10-03 Citizen Watch Co Ltd 硬質層を有する装飾部材及びその製造方法
CN112243464A (zh) * 2018-07-11 2021-01-19 西铁城时计株式会社 金色构件的制造方法及金色构件

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