JP2000096208A - チタン製ゴルフクラブ部材とその硬化処理方法 - Google Patents

チタン製ゴルフクラブ部材とその硬化処理方法

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JP2000096208A
JP2000096208A JP10269703A JP26970398A JP2000096208A JP 2000096208 A JP2000096208 A JP 2000096208A JP 10269703 A JP10269703 A JP 10269703A JP 26970398 A JP26970398 A JP 26970398A JP 2000096208 A JP2000096208 A JP 2000096208A
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heating
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Masahiro Sato
雅浩 佐藤
Yoshitsugu Shibuya
義継 渋谷
Atsushi Sato
佐藤  惇司
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明のチタン製ゴルフクラブ部材は、ゴル
フボールとの表面反発力を向上し、飛距離向上が可能と
なるチタン製ゴルフクラブ部材を提供することである。 【解決手段】 ゴルフボールとの表面反発力を向上する
第一の窒素固溶硬化層と第二の酸素固溶硬化層を形成し
てなるチタン製ゴルフクラブ部材であり、更には前記第
一の窒素固溶硬化層は表面から20μmの深さに形成さ
れ、前記第二の酸素固溶硬化層は20μmから100μ
mの深さに形成されてなるチタン製ゴルフクラブ部材と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面から任意の深
さが硬化処理されたチタン硬化部材に関するものであ
り、特にチタン製のゴルフクラブに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、チタン材及びチタン合金材は軽
い、錆びないといった特徴を利用して、様々な分野に用
いられている。特に軽量であるという特徴は、ゴルフク
ラブのドライバー等のヘッド材として最適であり、注目
されている。従来のヘッド材には強度、比重等の点でパ
ーシモン(柿材)が用いられ、近年になってCFRP製
やスチール製のヘッド材が用いられてきた。チタン材、
ステンレス鋼材等のメタル素材はヘッド構造が中空構造
となるために、その重量分布がヘッドの外郭にあり、ヘ
ッドの重心周りの慣性モーメントが大きくなる。その効
果により、スイートエリアが広がり、スイートスポット
を外したときでも方向性が安定する。チタン材はステン
レス鋼材と比較して比重が低いために、より大きなヘッ
ド設計が可能となり、更に方向性の安定化が向上する。
また、大型のヘッドになったことで、クラブのシャフト
長さ等を長くしたときに、ボールに当たらないという不
安感が解消するという利点も有し、チタン製のヘッド材
はヘッド素材として最適であり、様々な有効性を示して
きた。
【0003】ゴルフクラブ材として好まれる点は、ゴル
フクラブで打ち出したボールの飛距離が向上し、かつ方
向が安定すること等がある。その点を満足するために
は、シャフト材の設計条件、ヘッド自体の設計条件(ロ
フト角度、重量配分、フェース部の表面粗さ、ソール部
の形状、粗さ等)も重要であるが、ヘッド素材として
は、ゴルフクラブ部材のフェース表面でのゴルフボール
との表面反発力が高い表面を有する素材、すなわち表面
の弾性係数が高い表面を有する素材、ヘッドの大型化が
可能となる素材が要求される。
【0004】しかし、チタン材自体の特性として、ゴル
フボールとのフェース表面での表面反発力に関しては十
分であるといえず、飛距離を向上したいという点で、更
に良い素材が求められていた。また、チタン材自体の表
面硬度は低く、表面に傷が付きやすいという問題点があ
った。例えばフェース面等に傷が多く入ると安定した方
向性が得られない、或いは初期の装飾効果が失われてし
まい、品質的に問題となっていた。
【0005】チタン製ゴルフクラブ部材のフェース表面
でのゴルフボールとの反発力を向上させ、更には傷をつ
きにくくさせるためには、チタン材の表面の弾性係数
(動的特性)を向上すること、すなわち表面の硬さ(静
的特性)を向上させることであり、表面硬化処理が考え
られる。チタン材に対する硬化処理には、チタン材表面
に硬質膜を被覆する方法とチタン材自体を硬化する方法
がある。チタン材表面に硬質膜を被覆する方法としては
電気メッキに代表されるウェットプロセスと真空蒸着、
イオンプレーティング、スパッタリング、プラズマCV
Dなどに代表されるドライプロセスが公知であるが、い
ずれも部材との密着性に難があり膜剥離問題に対しては
完全に解決するまでには至っていない。また、チタン製
ゴルフクラブへの応用を考えた場合、数ミクロン程度の
薄膜では、耐久性という点で信頼性が得られなかった。
【0006】一方、チタン材自体を硬化する方法として
は、ガス酸化、イオン注入、イオン窒化、ガス窒化、ガ
ス浸炭、ガス軟窒化などが知られているが、処理時間が
長く生産性に問題があり、またTiN等の化合物を形成
することによる表面荒れ、変色等を生じて品質上問題と
なっていた。
【0007】上述の方法の中で、チタン材自体を硬化す
る方法は、材質中に拡散した元素が表面から傾斜的な濃
度を持つ特性を有し、膜の剥離等の問題を生じることが
ない。よって、チタン材の表面硬化処理方法として有用
であると考えられているが、上述のように処理時間が長
い、変色、表面荒れに起因する外観品質の劣化の問題が
ある。よって、迅速に100μm程度の硬化層を形成す
ることは困難であり、また表面の変色、表面荒れ等を解
消するということは困難であった。
【0008】イオン窒化等の従来技術の中で、表面荒れ
を小さくするために、イオンスパッタ効果を減少させる
ということは行われてきているが、根本的に材質自体に
拡散した軽元素等が入ることによって生じる大きな表面
荒れ及び変色といった問題を解決することはできなかっ
た。よって、従来のチタン製ゴルフヘッドの技術の中で
は、変色を発生することなく迅速に硬化する表面処理手
法等考えられていなかった。
【0009】チタン材を表面硬化処理する時に大きな表
面荒れ、変色を起こさず、迅速に硬化させる方法につい
て詳細に検討したところ、表面にTiNやTiO2等を
形成せずに固溶状態を維持したまま硬化処理することが
重要であることが判明した。
【0010】すなわち、TiN、TiO2が硬化処理工
程中に一旦形成されると、表面の変色或いは表面荒れが
大きくなり、ゴルフクラブ部材としては品質的に大きな
問題となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】従来技術では、表面が
高硬度で表面反発力が高く、表面の傷が発生しにくいチ
タン製ゴルフクラブ部材は得られず、更には硬化処理後
の大きな表面荒れ、変色の問題、更には迅速に厚い硬化
層を形成するような硬化処理方法は得られなかった。
【0012】本発明の目的は、上記課題を解決して、硬
化処理後も表面荒れ、変色等の劣化がなく、更には迅速
に厚い硬化層を形成するチタン製ゴルフクラブ部材及び
その硬化処理方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のチタン製ゴルフクラブ材、その硬化処理方
法及びその硬化処理装置は、下記記載の構造、方法を採
用する。
【0014】本発明は、ゴルフボールとの表面反発力を
向上する第一の窒素固溶硬化層と第二の酸素固溶硬化層
を形成してなるチタン製ゴルフクラブ部材であり、更に
は前記第一の窒素固溶硬化層は表面から20μmの深さ
に形成され、前記第二の酸素固溶硬化層は20μmから
100μmの深さに形成されてなるチタン製ゴルフクラ
ブ部材とすることにより、表面硬度を著しく高くし、ボ
ールとの反発力を向上するものである。
【0015】また、処理槽内を真空排気する真空排気工
程、Ar、Heといったチタンと不活性な雰囲気下で7
50℃〜850℃の範囲の硬化処理温度まで昇温加熱す
る昇温加熱工程、Ar、Heといった不活性雰囲気下で
前記硬化処理温度で一定に保持する第一加熱安定化工
程、N2、H2Oといった反応性ガス雰囲気下で前記硬
化処理温度で加熱硬化処理する固溶硬化層形成工程、A
r、Heといった不活性雰囲気下で前記硬化処理温度で
一定に保持する第二加熱安定化工程及びチタンを冷却す
るための冷却工程からなるチタン製ゴルフクラブ部材の
硬化処理方法とすることにより、表面荒れ、変色を発生
することなく、迅速に厚い硬化層を得るものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下図面を用いて、本発明のチタ
ン装飾部材の硬化処理方法について説明する。 図1は
本発明の実施形態におけるチタン製ゴルフクラブ部材で
あり、図2は本発明の実施形態におけるチタン製ゴルフ
クラブ部材を硬化する硬化処理工程を示す概念図であ
り、図3は本発明の実施形態におけるチタン製ゴルフク
ラブ部材の表面を硬化する硬化処理装置でヒーター構成
を除いた概念図であり、図4は本発明の実施形態におけ
るチタン製ゴルフクラブ部材の表面を硬化する硬化処理
装置でヒーター構成について示した概念図である。
【0017】図1は本発明の図であり、チタン製ゴルフ
クラブ部材とはフェース部6及びソール部8を含む本体
から構成されているチタン製アイアンやチタン製ドライ
バー等のヘッド材を示すものである。
【0018】図2は本発明の実施形態における処理工程
に関して、横軸に時間、縦軸に温度を示したときの概念
図である。チタン部材を750℃〜850℃まで昇温す
るときに、チタンに不活性な雰囲気とする昇温加熱工程
12は、研磨加工時にチタン表面に発生する加工歪み層
の緩和を目的として行うものである。加工歪み層は研磨
加工時の応力が格子歪みとなって残っている状態で化学
的に不安定な状態である。昇温加熱工程12が酸化性或
いは窒化性雰囲気であると研磨加工後のチタンは、加工
歪み層でのチタンと酸素或いは窒素との反応性が大きい
ために、表面に着色物質である酸化物或いは窒化物が形
成される。これらの着色物質が形成されると外観品質が
低下するために好ましい状態ではない。従って本発明に
おける昇温加熱工程12は、不活性とすることが必要で
あり、この昇温加熱工程により、化合物を形成せず、表
面荒れを発生することなく、迅速に硬化する工程に移行
することが可能となる。
【0019】第一加熱安定化工程14は、チタン材の表
面温度を均一にするための予備的な加熱工程であり、更
に加工歪み層をより安定した状態にする工程である。チ
タン製ゴルフクラブ材は容積が大きく、部位によっては
温度分布を発生してしまう。この工程を行わずに、固溶
硬化層形成工程16に移行すると表面の硬さが不均一と
なり、また場合によっては着色を発生してしまう。よっ
て、第一加熱安定化工程14は、部位による温度分布を
改善し、また加工歪み層を安定した状態に保つため、必
要な工程であり、またチタン材に対して不活性な雰囲気
とする必要性がある。
【0020】固溶硬化層形成工程16は、窒素ガスと窒
素中に含有された水蒸気ガスの混合ガスを処理槽内に導
入して、処理圧力を0.001〜10Torrの範囲内
に調整して処理することを特徴としている。窒素ガスに
対して微量な水蒸気ガスを導入することにより、チタン
製ゴルフクラブ部材24の表面に硬化層を形成する。固
溶硬化層を形成するためには、処理圧力を0.001〜
10Torrの範囲内の減圧下とすることが必要であ
り、それ以下の圧力では反応性が不足し、それ以上の圧
力ではTiN等の化合物を発生する。TiN等の化合物
を形成することなく反応が進行すると、迅速に硬化する
ことが可能となり、この工程により厚い硬化層を得るこ
とができる。
【0021】第二加熱安定化工程18は、処理槽22内
に残存した水蒸気成分ガスを完全に排除するための工程
を示している。すなわち、この後の冷却工程20時に固
溶硬化層形成工程16時のガスが残存していると雰囲気
温度が低いためチタン材内部への拡散が遅く、チタン材
表面にTiNや酸化物を形成してしまう。これらの化合
物は上記と同様、表面荒れ及び外観品質の低下の問題を
引き起こし、チタン製ゴルフクラブ部材として好ましい
状態ではない。また、この工程はチタン内部に拡散した
水素成分を除去するための脱水素の効果も含んでいる。
更には前工程において、結晶粒界で窒化物、酸化物を形
成したときにも、この工程は固溶化させること、すなわ
ち化合物を形成しない状態を安定にする効果があり、表
面荒れ、変色を発生させないためには必要な工程であ
る。
【0022】冷却工程20は、速やかにチタン材を常温
まで冷却させ処理槽22から取り出すための工程であ
る。冷却工程でも、その雰囲気はチタン材に対して不活
性な雰囲気にすることが必須である。
【0023】図3、4は本発明の実施形態におけるチタ
ン製ゴルフクラブ部材の表面を硬化する硬化処理装置で
あり、チタン製ゴルフクラブ部材24は回転ステージ2
8上に設置された複数本の試料固定治具26により配置
する。ガス導入口32等を備えた処理槽22中に、熱遮
蔽板30を設け、熱遮蔽板30の内周側に設けられた加
熱手段38及び補助加熱手段40を設置する。熱遮蔽板
30は均一な温度分布を保つようにする構成となってい
る。そして、加熱手段38及び補助加熱手段40は、試
料固定治具26に配置されたチタン製ゴルフクラブ部材
24の表面を加熱できるようにする。また真空排気装置
36及びガス排気口34を設けて、処理槽22内の真空
排気を可能として減圧下の雰囲気で硬化処理できるよう
な構成とした。
【0024】
【実施例】(実施例1)本発明の第一の実施例について
図1を用いて説明を行う、チタン製ゴルフクラブ部材と
して、JIS二種の純チタン材で成型したチタン製アイ
アンヘッド2を用いた。処理するフェース面6、ソール
面8を含む本体は鏡面研磨が施してあり、表面粗さは、
最大高さRmaxで50nm以下にした。
【0025】まず、真空排気工程10では、処理槽22
内を真空排気装置36により排気し、1×10−5to
rr以下の真空雰囲気とした。ガス導入口32よりアル
ゴン、ヘリウムといった不活性ガスを一定量導入し、導
入ガス量と排気量を調節して処理槽22内を0.25t
orrの圧力の不活性ガス雰囲気とした。そして昇温加
熱工程12で示したように、チタン製ゴルフクラブ部材
24を加熱手段38により加熱し、硬化処理温度700
℃、750℃、800℃、850℃、900℃と変えて
昇温した。第一加熱安定化処理工程14は約10分と
し、固溶硬化層形成工程16においては、ガス導入口3
2から窒素と水蒸気の混合ガスを導入し、導入ガス量と
排気量を調節して約0.25torrの窒素と水蒸気の
雰囲気にした。ここでは、全ての温度について窒素に対
する水蒸気の割合は約30000ppmとした。
【0026】そして、硬化処理温度を一定に保ったま
ま、約5.0時間保持した。その後、処理槽22内を再
び減圧下の不活性ガス雰囲気として、約0.5時間保持
し第二加熱安定化工程18を行った。そして、不活性雰
囲気としたまま冷却工程20を行い、約100℃以下の
温度に到達したら、処理を完了して試料を取り出した。
その後、バレル研磨等による一定時間の表面研磨を施し
た。
【0027】(実施例2)本発明の第二の実施例を図1
を用いて説明する。チタン製ゴルフクラブ部材として、
Ti−6Al−4V材で成形したチタン製ドライバーヘ
ッド材4を用いた。 処理するフェース面6、ソール面
8を含む本体は研磨が施してあり、表面粗さは最大高さ
Rmax値で50nm以下にした。
【0028】まず、真空排気工程10では、処理槽22
内を真空排気装置36により排気し、1×10−5to
rr以下の真空雰囲気とした。ガス導入口32よりアル
ゴン、ヘリウムといった不活性ガスを一定量導入し、導
入ガス量と排気量を調節して処理槽22内を0.25t
orrの圧力の不活性ガス雰囲気とした。そして昇温加
熱工程12で示したようにチタン製ゴルフクラブ部材2
4を加熱手段38により加熱し、硬化処理温度800℃
一定とした。第一加熱安定化処理工程14は約10分と
し、固溶硬化層形成工程16においては、ガス導入口3
2から窒素と水蒸気の混合ガスを導入し、窒素に対する
水蒸気の割合を10000ppm、20000ppm、
30000ppm、40000ppm、50000pp
mとし、導入ガス量と排気量を調節して約0.25to
rrの圧力の窒素と水蒸気の雰囲気にした。そして80
0℃で一定に保ったまま、約5.0時間保持した。その
後、処理槽内22を再び減圧下の不活性ガス雰囲気とし
て、第二加熱安定化工程18を約0.5時間行った。そ
して、不活性雰囲気としたまま冷却工程20を行い、約
100℃以下の温度に到達したら、処理を完了して試料
を取り出した。その後、バレル研磨等による一定時間の
表面研磨を施した。
【0029】(比較例)本発明に対する比較例の実施方
法について図1を用いて説明する。チタン製ゴルフクラ
ブ部材として、Ti−6Al−4V材で成形したチタン
製ドライバーヘッド材4を用いた。処理するフェース面
6、ソール面8を含む本体は研磨が施してあり、表面粗
さは最大高さRmax値で50nm以下にした。
【0030】まず、真空排気工程10では、処理槽22
内を真空排気装置36により排気し、1×10−5to
rr以下の真空雰囲気とした。ガス導入口32より窒素
と水蒸気の混合ガスを導入し、導入ガス量と排気量を調
節して処理槽22内を0.25torrの圧力の不活性
ガス雰囲気とした。なお、ここでは窒素に対する水蒸気
の割合を30000ppmとした。そして昇温加熱工程
12で硬化処理温度800℃一定とし、第一加熱安定化
処理工程14を約10分、固溶硬化層形成工程16を約
5.0時間、第二加熱安定化工程18を約0.5時間行
った。その後、冷却工程20に移行し、約100℃以下
の温度に到達したら、処理を完了して試料を取り出し
た。その後、バレル研磨等による一定時間の表面研磨を
施した。
【0031】上記硬化処理の実施後のチタン製ゴルフク
ラブ部材の評価方法として、耐傷性試験、ビッカース硬
度、測色試験を採用した。耐傷性試験は、砂落とし試験
後の光学顕微鏡による400倍の表面観察結果から表面
傷の発生度合いが30%以下のものに関して合格とし
た。ビッカース硬度は、ビッカース硬さ試験機により、
硬化処理表面から50μm以内の深さのビッカース硬度
がHv500以上あるものに関して合格とした。測色試
験に関しては、測色計により分光反射率から算出したL
*a*b*表色系で、処理する前の基準値に対して処理
後の△Eab値が2以下のものに関して合格とした。総
合評価は、耐傷性試験、ビッカース硬度、測色試験が合
格であるものに関して合格とした。
【0032】
【表1】
【0033】表1は本発明の第一の実施例に相当してい
て、JIS二種純チタン製のゴルフクラブ部材の硬化処
理する前、処理温度700℃〜900℃まで変化させて
本発明の硬化処理を行った後の耐傷性試験、表面硬度、
測色試験について示した表である。表1のaとgより、
従来技術の800℃で処理を行ったガス窒化法では、測
色試験の結果から、表面にTiNを形成したことによる
着色が認められ、不合格であった。また、硬化層の厚さ
が薄く、表面硬度も低いため、耐傷性試験も不合格であ
った。一方、本発明の実施形態における750℃〜85
0℃の温度範囲においては良好な特性を示し、すべて合
格であった。しかし、bの700℃で行った温度の低い
実施結果は硬度が低く、耐傷性試験が不合格であった。
また、fの900℃で行った温度の高い実施結果は硬度
が高く、耐傷性試験は良好であったが、TiN形成によ
る着色により、測色試験は不合格であった。
【0034】
【表2】
【0035】表2は、本発明の第二の実施例及び比較例
に相当していて、Ti−6Al−4V材を用いて、硬化
処理する前、処理温度800℃、窒素に対する水蒸気の
割合を10000ppm、20000ppm、3000
0ppm、40000ppm、50000ppmと変化
させて硬化処理を行った後の耐傷性試験、表面硬度、測
色試験について示した表である。
【0036】表2のj、k、lは本発明の実施形態にお
ける窒素に対する水蒸気の割合を20000ppm〜4
0000ppmとしたときの結果であり、耐傷性試験、
測色試験とも合格であり、良好な特性を示した。一方、
窒素に対する水蒸気の割合を10000ppmとした処
理結果は、表面硬度が低く、耐傷性試験が不合格であっ
た。また、窒素に対する水蒸気の割合を50000pp
mとしたときの処理結果は、表面硬度が高く、耐傷性試
験は合格であったが、測色試験は不合格であった。一方
比較例として行った処理結果は、表面硬度が低く、耐傷
性試験は不合格であり、TiNを形成したことにより、
測色試験も不合格であった。
【0037】表1、2の結果から、処理温度が高いとき
及び窒素に対する水蒸気の割合が高すぎるときは、硬化
処理後の表面に大きな表面荒れ及びTiN形成による着
色を発生するため、適度な温度、割合が必要であると考
えられる。
【0038】比較例の結果が不合格であったのは、表面
にTiNを形成したことにより、有効な硬化層が得られ
なかったものと考えられる。逆に本発明の実施形態が良
好な特性を示したのは、表面にTiN等の化合物を形成
することなく硬化処理することができたため、厚い硬化
層が迅速に形成されたことによるものと考えられる。
【0039】また、比較例において表面にTiNを形成
したことは、昇温加熱工程及び第一、二加熱安定化工
程、冷却工程時にチタンと反応する窒素、水蒸気ガスが
導入されたことによるものであり、処理前研磨により形
成された加工歪み層を安定化させることなく、反応させ
たために、化合物を形成したものと考えられる。
【0040】硬化処理後に研磨を行っているが、表面の
TiN層は硬いため、容易に除去することができず、着
色層が残存したものと考えられる。一方、本発明の実施
形態によるチタン製ゴルフクラブ部材は、表面にTiN
を形成せず、表面荒れも大きくないために、バレル研磨
により、迅速に元の状態の鏡面になったものと考えられ
る。
【0041】上記の評価結果と併せて、処理前のチタン
製ゴルフクラブ部材と本発明のチタン製ゴルフクラブ部
材によるアイアン及びドライバーの試打テストを実施し
た。その結果、本発明の実施形態によるチタン製ゴルフ
クラブは良好な飛距離特性を示し、処理前のチタン製ゴ
ルフクラブ部材を用いたときの試打テストと比較して約
10%〜20%程度の飛距離向上が認められた。これ
は、チタン製ゴルフクラブ部材のフェース面表面の硬度
が向上したことによる表面反発力の上昇がもたらした効
果であると考えられる。
【0042】第一、二の実施例のチタン製ゴルフクラブ
部材としてJIS二種純チタン材、Ti−6Al−4V
材を例にとって説明を行ったが、JIS一種純チタン材
及びJIS三種純チタン材にも適用可能である。また、
JIS規格のチタン合金60種、60E種にも適用可能
である。
【0043】第一、二の実施例の処理面については研磨
した鏡面について説明したが、特に限定せず、ヘアーラ
イン面、ホーニング処理を行ったホーニング面、ショッ
トピーニング面等の表面のいずれも適用可能である。
【0044】本発明の第一、二の実施例においては、昇
温加熱工程、第一加熱安定化工程、第二加熱安定化工
程、冷却工程時において、アルゴン、ヘリウムといった
不活性ガス雰囲気中として説明を行ったが、この工程間
に上述したような酸化性ガスが導入されると表面に化合
物を形成し、表面が荒れたり、変色したりするため、こ
れらのガスが影響を及ぼさない雰囲気であれば良く、高
真空雰囲気であっても良い。
【0045】本発明の第一、二の実施例において、固溶
硬化層形成工程の時間はいずれも5.0時間で説明を行
ったが、特に限定する必要性はない。表面に化合物を形
成しないことと必要硬度及び耐傷性を満たすように時
間、温度条件を設定することである。長時間の処理及び
処理温度の上昇は化合物形成に影響してくるため、多く
とも10時間以内の処理であれば任意の時間でよい。処
理温度もなるべく低温度で処理することが好ましいが、
750℃〜850℃の処理温度であれば任意の温度でよ
い。
【0046】本発明の第一、二の実施例において、すべ
ての工程の処理圧力を0.25torrとして、説明を
行ったが、特に限定する必要性がなく、0.001〜1
0torrの任意の圧力において適用可能である。重要
なことは、窒素に対する水蒸気の割合と同様に、窒素、
水蒸気の分圧が低すぎるとチタンに対する反応料が十分
でなく、圧力を高くしすぎると、チタン表面に過剰な窒
素、酸素成分ガスが発生するためであり、その範囲内に
設定することである。
【0047】また本発明の第一、二の実施例において、
第二加熱安定化工程の時間として0.5時間として説明
を行ったが、特に限定する必要性はなく、冷却工程に入
る前の雰囲気が不活性となっていれば、任意の時間で良
い。
【0048】
【発明の効果】本発明は、ゴルフボールとの表面反発力
を向上する第一の窒素固溶硬化層と第二の酸素固溶硬化
層を形成してなるチタン製ゴルフクラブ部材であり、更
には前記第一の窒素固溶硬化層は表面から20μmの深
さに形成され、前記第二の酸素固溶硬化層は20μmか
ら100μmの深さに形成されてなるチタン製ゴルフク
ラブ部材とすることにより、表面硬度が著しく高くな
り、試打テストにより飛距離の向上も認められた。ま
た、処理槽内を真空排気する真空排気工程、Ar、He
といったチタンと不活性な雰囲気下で750℃〜850
℃の範囲の硬化処理温度まで昇温加熱する昇温加熱工
程、Ar、Heといった不活性雰囲気下で前記硬化処理
温度で一定に保持する第一加熱安定化工程、N2、H2
Oといった反応性ガス雰囲気下で前記硬化処理温度で加
熱硬化処理する固溶硬化層形成工程、Ar、Heといっ
た不活性雰囲気下で前記硬化処理温度で一定に保持する
第二加熱安定化工程及びチタンを冷却するための冷却工
程からなるチタン製ゴルフクラブ部材の硬化処理方法と
することにより、表面荒れ、変色を発生することなく、
迅速に厚い硬化層を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態におけるチタン製ゴルフクラ
ブ部材である。
【図2】本発明の実施形態におけるチタン製ゴルフクラ
ブ部材を硬化する硬化処理工程を示す概念図である。
【図3】本発明の実施形態におけるチタン製ゴルフクラ
ブ部材の表面を硬化する硬化処理装置でヒーター構成を
除いた概念図である。
【図4】本発明の実施形態におけるチタン製ゴルフクラ
ブ部材の表面を硬化する硬化処理装置でヒーター構成に
ついて示した概念図である。
【符号の説明】
2 チタン製アイアンヘッド 4 チタン製ドライバーヘッド 6 フェース部 8 ソール部 10 真空排気工程 12 昇温加熱工程 14 第一加熱安定化工程 16 固溶硬化層形成工程 18 第二加熱安定化工程 20 冷却工程 22 処理槽 24 チタン製ゴルフクラブ部材 26 試料取り出し口 28 試料台 32 ガス導入口 34 ガス排気口 36 加熱電源 38 加熱手段 40 真空排気装置

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面が硬化されたチタン硬化部材に、表
    面反発力を向上するための第一の窒素固溶硬化層と第二
    の酸素固溶硬化層を形成してなることを特徴とするチタ
    ン製ゴルフクラブ部材。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のチタン製ゴルフクラブ部
    材であって、前記第一の窒素固溶硬化層は表面から20
    μmの深さに形成され、前記第二の酸素固溶硬化層は2
    0μmから100μmの深さに形成されてなることを特
    徴とするチタン製ゴルフクラブ部材。
  3. 【請求項3】 チタン製ゴルフクラブ部材の表面を硬化
    する硬化処理方法であって、処理槽内を真空排気する真
    空排気工程、Ar、Heといったチタン製ゴルフクラブ
    部材と不活性な雰囲気下で750℃〜850℃の範囲の
    硬化処理温度まで昇温加熱する昇温加熱工程、Ar、H
    eといった不活性雰囲気下で前記硬化処理温度で一定に
    保持する第一加熱安定化工程、N2、H2Oといった反
    応性ガス雰囲気下で前記硬化処理温度で加熱硬化処理す
    る固溶硬化層形成工程、Ar、Heといった不活性雰囲
    気下で前記硬化処理温度で一定に保持する第二加熱安定
    化工程及びチタン製ゴルフクラブ部材を冷却するための
    冷却工程からなることを特徴とするチタン製ゴルフクラ
    ブ部材の硬化処理方法。
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