JP2001107134A - 硬化処理装置 - Google Patents

硬化処理装置

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JP2001107134A
JP2001107134A JP29062199A JP29062199A JP2001107134A JP 2001107134 A JP2001107134 A JP 2001107134A JP 29062199 A JP29062199 A JP 29062199A JP 29062199 A JP29062199 A JP 29062199A JP 2001107134 A JP2001107134 A JP 2001107134A
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titanium
hardening
wall
concentration
curing
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JP29062199A
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Yoshitsugu Shibuya
義継 渋谷
Masahiro Sato
雅浩 佐藤
Seiichi Hiroe
誠一 廣江
Atsushi Sato
佐藤  惇司
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Citizen Watch Co Ltd
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Citizen Watch Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面粗れがなく、均一な厚みを有する表面硬
化層を安定的に形成するためのバッチ式の硬化処理装置
を提供すること。 【解決手段】 ガス導入口とガス排気口とを備えた真空
装置本体の内部に加熱手段とチタンおよびチタン合金か
らなる部材が載置されたトレイを配設した硬化処理室を
配設し、真空装置本体の外壁または内壁と硬化処理室の
外壁または内壁に50℃の温水を循環させた硬化処理装
置、あるいは真空装置本体の内壁と硬化処理室の内壁ま
たは外壁にシ−スヒ−タ−を配置し真空槽装置本体の内
壁と硬化処理室の外壁及び硬化処理室の内壁を加熱する
硬化処理装置を採用することにより、表面粗れのない、
均一な厚みを有する表面硬化層が安定的に形成される硬
化処理装置が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チタンおよびチタ
ン合金からなり、その表面と内部が硬化処理されたチタ
ン硬化部材の硬化処理装置に関するものであり、特に装
飾用品として用いられるチタンおよびチタン合金製の時
計ケース、時計バンド、ピアス、イヤリング、指輪、メ
ガネフレームなどの効果処理を実現する硬化処理装置に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、チタン、チタン合金はメタルアレ
ルギーを起こしにくい、人に優しい金属として注目され
ている。時計、眼鏡、宝飾などに代表される装飾部材に
ついても上記のコンセプトは広く支持されているが、一
方で使用中のキズ発生などによる外観品質の低下が大き
な問題として指摘されている。これは主に、部材自身の
表面硬度の低さに起因するものであり、解決を目指して
種々の表面硬化処理方法が試みられている。
【0003】表面硬化処理方法には、大きく分けて金属
部材表面に硬質膜を被履する方法と金属部材自身を硬化
する方法がある。金属部材表面に硬質膜を被履くする方
法としては電気メッキに代表されるウェットプロセス、
真空蒸着・イオンプレーティング・スパッタリング・プ
ラズマCVDなどに代表されるドライプロセスが公知で
あるが、いずれも部材との密着性に難点があり膜剥離問
題に対しては完全に解決するまでには至っていない。一
方、金属部材自身を硬化する方法としてはイオン注入、
イオン窒化、ガス窒化、浸炭などが知られているが、処
理時間が長く生産性に難点があること、処理温度が高い
ため結晶粒が粗大化して表面が粗れ外観品質が劣るなど
の問題がある。
【0004】これらを解決するためにチタンおよびチタ
ン合金に窒素や酸素の化合物を形成させずに熱拡散によ
り、窒素と酸素をチタンおよびチタン合金の内部に拡
散、固溶させて表面粗れを生じさせずにチタン地金色の
まま硬化処理することが可能であることを見出した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】窒素と酸素をチタンお
よびチタン合金の内部に拡散、固溶させるための反応ガ
スとして窒素と水蒸気の混合ガスを使用しているが、均
一な厚みを有する硬化層を形成し、かつ表面に窒化物や
酸化物などの化合物を形成させないためには水蒸気の正
確な濃度制御が重要である。例えば、混合ガス中の水蒸
気濃度が0.3%(3000ppm)以下と低い場合に
はチタンおよびチタン合金からなる部材内部に拡散、固
溶する窒素と酸素の量が少ないために充分な表面硬度が
得られない。逆に、水蒸気濃度が5%(50000pp
m)以上と高い場合には窒素と酸素の供給量が過剰とな
り、チタンおよびチタン合金からなる部材内部に拡散、
固溶するとともに、表面でも着色物質である窒化チタン
や2酸化チタンを形成して表面粗れが発生し外観品質が
低下するという問題点がある。このため窒素に対しての
水蒸気の混合濃度を正確に制御する必要がある。
【0006】しかしながら、バッチ式の真空装置で表面
硬化処理を行う場合、真空装置の開閉時に大気中の水分
が真空装置内部や硬化処理室内部に吸着し結露するため
に、4重極質量分析計を用いて水蒸気の濃度を正確に制
御した反応ガスを導入しても結露した分が増分され結果
的に水蒸気の濃度が正確に制御できなくなるという欠点
があった。
【0007】この問題に対しては、バッチ式の真空装置
の使用を止めインライン式を採用すればよいが、硬化処
理温度が700〜800℃と高温であるので、チタンお
よびチタン合金からなる部材を硬化処理室に搬送するた
めの搬送機構が複雑となり作業効率が低下する。またバ
ッチ式に比べ、インライン式の真空装置は高価であるた
め処理コストがアップするなど新たな課題が発生するの
でインライン式の採用は好ましくない。
【0008】本発明の目的は、上記問題に鑑み、チタン
およびチタン合金からなる部材に、窒化物や酸化物など
の着色物質を形成させることをなく、表面粗れがない、
均一な厚みを有する表面硬化層を安定的に形成するため
のバッチ式の硬化処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明において、上記の
課題を解決するために種々検討した結果、以下のような
バッチ式硬化処理装置を採用することにより、水蒸気の
濃度を正確に制御しチタンおよびチタン合金からなる部
材に窒化物や酸化物などの着色物質を形成させることを
なく、表面粗れがない、均一な厚みを有する表面硬化層
を安定的に形成させることが可能であることを見出し
た。すなわち、ガス導入口とガス排気口とを備えた真空
装置本体の内部に加熱手段とチタンおよびチタン合金か
らなる部材が載置されたトレイを配設した硬化処理室を
配設し、真空装置本体の外壁または内壁と硬化処理室の
外壁または内壁に50℃の温水を循環させた硬化処理装
置、あるいは真空装置本体の内壁と硬化処理室の内壁ま
たは外壁にシ−スヒ−タ−を配置し真空槽装置本体の内
壁と硬化処理室の外壁及び硬化処理室の内壁を加熱する
硬化処理装置を採用することにより真空装置の開閉時で
も大気中の水分が吸着結露しない硬化処理装置を達成す
ることが可能となる。
【0010】本構成の硬化処理装置を採用することによ
り、真空装置の開閉時に大気中の水分が吸着結露する現
象が起こらなくなり、硬化処理プロセス中に硬化処理室
内部に導入する窒素と水蒸気からなる混合ガス中の水蒸
気濃度が正確に制御されるため、チタンおよびチタン合
金からなる部材に対し、窒化物や酸化物などの着色物質
の形成がなく、表面粗れのない、均一な厚みを有する表
面硬化層が安定的に形成される。
【0011】図1に本硬化処理における硬化処理装置の
装置構成を示す模式図を示す。ガス導入口14とガス排
気口18を備えた真空装置本体2の内部には硬化処理室
4が配置され、硬化処理室4の内側には基材支持台であ
るトレイ8上にチタンおよびチタン合金からなる部材1
0と、チタンおよびチタン合金からなる部材10を加熱
して活性化するための手段としてヒ−タ−12が交互に
配設され、真空ポンプ24により真空装置本体2の内部
を真空排気できるような構成となっている。真空装置本
体2の外壁と硬化処理室4の外壁には50℃の温水を流
す循環水用パイプが配置され50℃の温水が循環してい
る。また、ガス導入口14から導入する窒素と水蒸気の
混合ガスの水蒸気濃度を測定するための4重極質量分析
計22が差動排気ポンプ20を通じて配置されている。
【0012】本装置を用いた具体的な硬化処理方法を以
下に説明する。真空装置本体2の内部をガス排気口18
を通じて真空ポンプ24により、残留ガス雰囲気の影響
が排除される圧力まで真空排気した後にヒ−タ−12に
よりチタンおよびチタン合金からなる部材10を700
〜800℃の温度まで所定時間加熱してから、ガス導入
口14のガス導入弁16を開け窒素と水蒸気の混合ガス
を導入した減圧雰囲気中で加熱したときと同一の温度を
所定時間保持し、チタンおよびチタン合金からなる部材
10の表面に窒素と酸素を吸着及び拡散させて、チタン
およびチタン合金からなる部材10の表面から内部へ窒
素と酸素を拡散、固溶させ表面硬化層をする。このとき
に4重極質量分析計22で水蒸気濃度が所定の濃度とな
っているかどうかを測定する。この後、ガス導入口14
のガス導入弁16を閉じ、ガス排気口18を通じて真空
ポンプ24により真空装置本体2の内部を真空排気し、
ガス導入口14のガス導入弁16を開け不活性ガスを導
入した減圧雰囲気中で硬化処理したときと同一の温度を
所定時間保持した後、ヒ−タ−12による加熱を停止し
減圧不活性ガス雰囲気中で常温まで冷却した。
【0013】ここで本発明において、チタンおよびチタ
ン合金からなる部材とは、チタンおよびチタン合金製の
時計ケース、時計バンド、ピアス、イヤリング、指輪、
メガネフレームなど装飾用品に適用可能なもの全てを意
味するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明においては、チタンおよび
チタン合金からなる部材に、窒化物や酸化物などの着色
物質を形成させることをなく、表面粗れがない、均一な
厚みを有する表面硬化層を安定的に形成するためのバッ
チ式の硬化処理装置を提供することが目的であり、これ
に対しては、真空装置と硬化処理室の外壁または内壁に
50℃の温水を循環させるか、または真空装置と硬化処
理室の内壁にシ−スヒ−タ−を配置し真空装置と硬化処
理室の内壁を加熱することを特徴とする硬化処理装置を
採用することにより、真空装置の開閉時でも大気中の水
分が吸着結露しない装置構成が達成される。
【0015】
【実施例】(実施例1)本発明の実施例を図1を用いて
説明する。50℃の温水を流す循環水用パイプ6には常
時50℃の温水が供給されている。真空装置本体2の内
部と硬化処理室4の内部を真空ポンプ24により所定の
圧力まで真空排気した後に、ヒ−タ−12によりトレイ
8上に置かれたチタンおよびチタン合金からなる部材1
0を730℃まで所定時間加熱してから、窒素に所望量
の水蒸気を混合させたガスを導入した雰囲気中で730
℃で所定時間保持した後、一度真空排気してから、ヘリ
ウムを導入した雰囲気中で730℃で所定時間保持した
後、加熱を停止し常温まで冷却した。また、水蒸気の濃
度は差動排気ポンプ20を通じて配置されている4重極
質量分析計22により測定した。
【0016】チタンおよびチタン合金からなる部材に
は、鏡面外観を有するJIS規格で定義されたチタン第
2種材からなる時計ケースを使用した。その後に硬さ、
表面粗れ、表面での窒化チタンまたは二酸化チタンの有
無、真空装置内の水蒸気濃度を測定評価した。硬さはビ
ッカース硬度計により測定し、表面から1μmの深さで
のビッカース硬度Hv=750以上を合格とした。表面
粗れは表面粗さ計を使用し平均表面粗さRaを測定し、
0.4μm以下を合格とした。表面での窒化チタンまた
は二酸化チタンの有無はX線入射角α=0.5°の薄膜X
線回折により測定し、窒化チタンまたは二酸化チタンの
ピ−クが存在しないものを合格とした。真空装置内の水
蒸気濃度は、導入した水蒸気濃度±5%以内を合格とし
た。これらの測定結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】試料番号a〜cはそれぞれ、真空装置内に
導入する水蒸気の濃度を5000〜10000ppmと
変化させて処理したものである。
【0019】表1から明らかなように、試料番号a、
b、cはいずれも表面から1.0μmの深さでのビッカ
−ス硬度がHv=820〜900となっていて表面硬化
層が形成されている。硬化処理後の平均表面粗さはRa
=0.3〜0.4μmで、これは未硬化処理の純チタン
第2種材と比較してほとんど変化がなく処理前の表面状
態を維持したままの硬化処理がなされている。薄膜X線
回折による測定では、いずれも処理後の表面に窒化チタ
ンや二酸化チタンのピ−クが認められず窒素と酸素が窒
化物、酸化物を形成せずに固溶した状態で硬化層を形成
していることが明らかである。また水蒸気濃度は真空装
置内に導入した濃度(理論濃度)に対し、4重極質量分
析計で測定した濃度(実測濃度)は順にそれぞれ、52
45ppmで+4.89%、8181ppmで+2.2
7%、9754ppmで−2.46%であり±5%の範
囲内にあり、これらは全て合格である。真空装置内に導
入された水蒸気の理論濃度と実測濃度がほぼ等しいこと
から、真空装置の開閉時には大気中の水分を吸着結露す
る現象が起きておらず、硬化処理プロセス中に硬化処理
室内部に導入する水蒸気濃度が正確に制御されているこ
とが明らかである。
【0020】(比較例1)本発明に対する第1の比較例
を図1を用いて説明する。50℃の温水を流す循環水用
パイプ6には実施例1とは異なり、常時15℃の循環冷
却水が供給されている。その他は全て実施例1と同様な
装置構成、同様な硬化処理条件で硬化処理を行った。ま
た、水蒸気濃度も実施例1と同様に測定した。
【0021】チタンおよびチタン合金からなる部材に
は、実施例1と同様に鏡面外観を有するJIS規格で定
義されたチタン第2種材からなる時計ケースを使用し実
施例1と全く同等な水蒸気濃度のガスを導入して処理し
た後、実施例1と同様に硬さ、表面粗れ、表面での窒化
チタンまたは二酸化チタンの有無、真空装置内の水蒸気
濃度を測定し、実施例1と同一の基準で評価した。これ
らの測定結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】試料番号d〜fはそれぞれ、真空装置内に
導入する水蒸気の濃度を5000〜10000ppmと
変化させて処理したものである。
【0024】表2から明らかなように、試料番号d、
e、fはいずれも表面から1.0μmの深さでのビッカ
−ス硬度がHv=1090〜1230となっていて表面
硬化層が形成されている。しかし薄膜X線回折による測
定では、いずれも処理後の表面に窒化チタンや二酸化チ
タンのピ−クが認められ窒素と酸素が窒化物や酸化物を
形成した状態で硬化層を形成していることが明らかで、
表面に窒化物や酸化物を形成しているために結晶粒界が
粗大化し平均表面粗さRaもこれに伴ってRa=0.9
〜1.2μmに増加し、顕著な表面粗れが認められる。
また水蒸気濃度は真空装置内に導入した濃度(理論濃
度)に対し、4重極質量分析計で測定した濃度(実測濃
度)はそれぞれ、11119ppmで+122.38
%、13984ppmで+74.8%、16322pp
mで+63.22%であり許容範囲である±5%を大幅
に超過した値となっている。従って、これらは全て不合
格である。4重極質量分析計で測定した濃度はいずれも
真空装置内に導入された水蒸気の理論濃度に比べ、平均
で6100ppm程度高い値となっていて、真空装置の
開閉時に、大気中の水分が約6100ppm程度、吸着
され結露している。すなわち、硬化処理プロセス中に硬
化処理室内部に導入される水蒸気濃度が正確に制御され
ていないことが明らかである。
【0025】(実施例2)本発明の第2の実施例を硬化
処理装置の装置構成を示す模式図である図2を用いて説
明する。ガス導入口38とガス排気口42を備えた真空
装置本体26の内部には硬化処理室28が配置され、硬
化処理室28の内側には基材支持台であるトレイ32上
にチタンおよびチタン合金からなる部材36と、チタン
およびチタン合金からなる部材36を加熱して活性化す
るための手段としてヒ−タ−34が交互に配設され、真
空ポンプ48により真空装置本体26の内部を真空排気
できるような構成となっている。また、真空装置本体2
6の内壁と硬化処理室28の内壁にはシ−スヒ−タ−3
0が配置され、真空装置本体26の内壁と硬化処理室2
8の外壁及び硬化処理室28の内壁を加熱できるように
なっている。シ−スヒ−タ−30は常時ON状態とし、
真空装置本体26の内壁と硬化処理室28の外壁及び硬
化処理室28の内壁が常時約100℃程度まで加熱され
た状態となっている。その他は全て実施例1と同様な装
置構成、同様な硬化処理条件で硬化処理を行った。ま
た、水蒸気の濃度も実施例1と同様に測定した。
【0026】チタンおよびチタン合金からなる部材に
は、鏡面外観を有するJIS規格で定義されたチタン第
1種材からなる時計バンドを使用し実施例1と全く同等
な水蒸気濃度のガスを導入して処理した後、実施例1と
同様に硬さ、表面粗れ、表面での窒化チタンまたは二酸
化チタンの有無、真空装置内の水蒸気濃度を測定し、実
施例1と同一の基準で評価した。これらの測定結果を表
3に示す。
【0027】
【表3】
【0028】試料番号g〜iはそれぞれ、真空装置内に
導入する水蒸気の濃度を5000〜10000ppmと
変化させて処理したものである。
【0029】表3から明らかなように、試料番号g、
h、iはいずれも表面から1.0μmの深さでのビッカ
−ス硬度がHv=820〜910となっていて表面硬化
層が形成されている。硬化処理後の平均表面粗さはRa
=0.3〜0.4μmで、これは未硬化処理の純チタン
第1種材と比較してほとんど変化がなく処理前の表面状
態を維持したままの硬化処理がなされている。薄膜X線
回折による測定では、いずれも処理後の表面に窒化チタ
ンや二酸化チタンのピ−クが認められず窒素と酸素が窒
化物、酸化物を形成せずに固溶した状態で硬化層を形成
していることが明らかである。また水蒸気濃度は真空装
置内に導入した濃度(理論濃度)に対し、4重極質量分
析計で測定した濃度(実測濃度)は順にそれぞれ、51
39ppmで+2.78%、8123ppmで+1.5
4%、9953ppmで−0.47%であり±5%の範
囲内にあり、これらは全て合格である。真空装置内に導
入された水蒸気の理論濃度と実測濃度がほぼ等しいこと
から、真空装置の開閉時には大気中の水分を吸着結露す
る現象が起きておらず、硬化処理プロセス中に硬化処理
室内部に導入する水蒸気濃度が正確に制御されているこ
とが明らかである。
【0030】(比較例2)本発明に対する第2の比較例
を図2を用いて説明する。実施例2とは異なり、シ−ス
ヒ−タ−30は常時OFF状態で、真空装置本体26の
内壁と硬化処理室28の外壁及び硬化処理室28の内壁
は常時加熱されない状態となっている。その他は全て実
施例2と同様な装置構成、同様な硬化処理条件で硬化処
理を行った。また、水蒸気の濃度も実施例2と同様に測
定した。
【0031】チタンおよびチタン合金からなる部材に
は、実施例2と同様に鏡面外観を有するJIS規格で定
義されたチタン第1種材からなる時計バンドを使用し実
施例2と全く同等な水蒸気濃度のガスを導入して処理し
た後、実施例2と同様に硬さ、表面粗れ、表面での窒化
チタンまたは二酸化チタンの有無、真空装置内の水蒸気
濃度を測定し、実施例2と同一の基準で評価した。これ
らの測定結果を表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】試料番号j〜lはそれぞれ、真空装置内に
導入する水蒸気の濃度を5000〜10000ppmと
変化させて処理したものである。
【0034】表4から明らかなように、試料番号j、
k、lはいずれも表面から1.0μmの深さでのビッカ
−ス硬度がHv=1110〜1250となっていて表面
硬化層が形成されている。しかし薄膜X線回折による測
定では、いずれも処理後の表面に窒化チタンや二酸化チ
タンのピ−クが認められ窒素と酸素が窒化物や酸化物を
形成した状態で硬化層を形成していることが明らかであ
る。また、表面に窒化物や酸化物を形成しているために
結晶粒界が粗大化し平均表面粗さRaもこれに伴ってR
a=1.0〜1.2μmに増加し、顕著な表面粗れが認
められる。また水蒸気濃度は真空装置内に導入した濃度
(理論濃度)に対し、4重極質量分析計で測定した濃度
(実測濃度)はそれぞれ順に、13468ppmで+1
69.36%、16693ppmで+108.66%、
18352ppmで+83.52%であり許容範囲であ
る±5%を大幅に超過した値となっている。従って、こ
れらは全て不合格である。4重極質量分析計で測定した
濃度はいずれも真空装置内に導入された水蒸気の理論濃
度に比べ、平均で8500ppm程度高い値となってい
て、真空装置の開閉時に、大気中の水分が約8500p
pm程度、吸着され結露している。すなわち、硬化処理
プロセス中に硬化処理室内部に導入される水蒸気濃度が
正確に制御されていないことが明らかである。
【0035】以上、実施例1、実施例2の結果から、ガ
ス導入口とガス排気口とを備えた真空装置本体の内部に
加熱手段とチタンおよびチタン合金からなる部材が載置
されたトレイを配設した硬化処理室を配設し、真空装置
本体の外壁または内壁と硬化処理室の外壁または内壁に
50℃の温水を循環させた硬化処理装置、あるいは真空
装置本体の内壁と硬化処理室の内壁にシ−スヒ−タ−を
配置し装置本体の内壁と硬化処理室の内壁及び外壁を加
熱する構造の硬化処理装置を採用することで真空装置の
開閉時でも大気中の水分が吸着結露しない硬化処理装置
が達成される。
【0036】本構成の硬化処理装置を採用することによ
り、真空装置の開閉時に大気中の水分が吸着結露する現
象が起こらなくなり、硬化処理プロセス中に硬化処理室
内部に導入する窒素と水蒸気からなる混合ガス中の水蒸
気濃度が正確に制御されるため、チタンおよびチタン合
金からなる部材に対し、窒化物や酸化物などの着色物質
の形成がなく、表面粗れのない、均一な厚みを有する表
面硬化層の形成が可能となった。
【0037】硬化処理温度に関しては、700℃以下の
温度では窒素と酸素が充分に固溶しないため硬化層が形
成されずに表面硬度が上昇しないことから700℃以上
の温度が必要である。一方、800℃以上の処理温度で
は窒素と酸素の拡散速度が大きく深い硬化層が得られる
が、その一方で窒化物、酸化物を形成してしまい結晶粒
が粗大化して表面が粗れ外観品質が劣化するため、硬化
処理温度は窒化物、酸化物が粗大化しない800℃以下
とする必要がある。
【0038】本発明の実施例1において、真空装置本体
の外壁と硬化処理室の外壁に50℃の温水を循環させた
が、温水の温度は50℃に限定する必要はなく、真空装
置の開閉時に空気中の水分が吸着結露しない温度であれ
ば良く、具体的には常温より20℃程度高い温度であれ
ば任意の温度でも良い。
【0039】本発明の実施例2において、シ−スヒ−タ
−により真空装置本体の内壁と硬化処理室の外壁及び内
壁が常時約100℃程度まで加熱された状態としたが、
加熱温度は100℃に限定する必要はなく、真空装置の
開閉時に空気中の水分が吸着結露しない温度であれば良
く、具体的には常温より20℃程度高い温度であれば任
意の温度でも良い。
【0040】本発明において、被硬化処理部材にはチタ
ンおよびチタン合金を用いたが、チタンおよびチタン合
金とは純チタンを主体とする金属部材を意味し、JIS
規格で定義されているチタン第1種、チタン第2種、チ
タン第3種などをいう。またチタン合金とは、純チタン
を主体とする金属にアルミニウム、バナジウム、鉄など
を添加した金属部材を意味し、JIS規格で定義されて
いるチタン60種、チタン60E種などをいう。この他
にも各種チタン合金および各種チタン基の金属間化合物
がチタン合金に含まれる。
【0041】
【発明の効果】以上述べてきたように本発明によれば、
真空装置の内部に硬化処理室を配置し、真空装置本体の
外壁または内壁と硬化処理室の外壁または内壁に50℃
の温水を循環させた硬化処理装置、あるいは真空装置本
体の内壁と硬化処理室の内壁にシ−スヒ−タ−を配置し
装置本体の内壁と硬化処理室の内壁及び外壁を加熱する
構造の硬化処理装置を採用することで真空装置の開閉時
でも大気中の水分が吸着結露しない硬化処理装置が達成
され、硬化処理プロセス中に硬化処理室内部に導入する
窒素と水蒸気からなる混合ガス中の水蒸気濃度が正確に
制御されるため、チタンおよびチタン合金からなる部材
に対し、窒化物や酸化物などの着色物質の形成がなく、
表面粗れのない、均一な厚みを有する表面硬化層を安定
的に形成することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である部材の硬化処理装置を示
す模式図である。
【図2】本発明の実施例である部材の硬化処理装置を示
す模式図である。
【符号の説明】
2 真空装置本体 4 硬化処理室 6 50℃の温水を流す循環水用パイプ 8 トレイ 10 チタンおよびチタン合金からなる部材 12 ヒ−タ− 14 ガス導入口 16 ガス導入弁 18 ガス排気口 20 差動排気ポンプ 22 4重極質量分析計 24 真空ポンプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 惇司 埼玉県所沢市大字下富字武野840番地 シ チズン時計株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4K034 AA05 BA01 CA06 GA01 GA08 GA18

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガス導入口とガス排気口を備えた真空装
    置内部に加熱手段とチタンおよびチタン合金からなる部
    材が載置されたトレイを配設した硬化処理室を配設し、
    真空装置と硬化処理室の外壁または内壁に50℃の温水
    を循環させたことを特徴とする硬化処理装置。
  2. 【請求項2】 ガス導入口とガス排気口を備えた真空装
    置内部に加熱手段とチタンおよびチタン合金からなる部
    材が載置されたトレイを配設した硬化処理室を配設し、
    真空装置と硬化処理室の内壁にシ−スヒ−タ−を配置し
    てシ−スヒ−タ−により真空装置の外壁と硬化処理室の
    外壁及び内壁を加熱することを特徴とする硬化処理装
    置。
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