JPH1184103A - 反射防止フィルター及びその製造方法 - Google Patents

反射防止フィルター及びその製造方法

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JPH1184103A
JPH1184103A JP9249144A JP24914497A JPH1184103A JP H1184103 A JPH1184103 A JP H1184103A JP 9249144 A JP9249144 A JP 9249144A JP 24914497 A JP24914497 A JP 24914497A JP H1184103 A JPH1184103 A JP H1184103A
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antireflection film
surface side
film
antireflection
compound
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JP9249144A
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Hirofumi Kondo
洋文 近藤
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Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面処理剤等の種類や経過時間に関係なく、
優れた耐汚染性、耐擦傷性、耐加工性を確保する。 【解決手段】 透明基板の一主面側に、表面側に少なく
とも二酸化珪素を含む層を有する反射防止膜を形成し、
上記反射防止膜表面の表面エネルギーの極性項成分γp
を2.0(erg/cm2 )以下とする。なお、上記反
射防止膜の表面側をパーフルオロポリエーテル基を有す
るアルコキシシラン化合物により被覆することが好まし
い。さらに、透明基板の一主面側に、表面側に少なくと
も二酸化珪素を含む層を有する反射防止膜を形成した
後、上記反応防止膜表面にパーフルオロポリエーテルに
対しアルコキシシラン或いはシリコン系潤滑剤を添加し
て塗布することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、反射防止フィルタ
ー及びその製造方法に関する。詳しくは、耐汚染性、耐
擦傷性、耐加工性などに優れ、陰極線管等の表示装置の
前面板として用いて好適な反射防止フィルター及びその
製造方法に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】例えば眼鏡用レンズのような透明材料を
介して物を見ようとする場合に、反射光が強すぎると、
ゴースト、フレアといった反射像が使用者に明瞭に認識
されるといった不都合が生じる。また、ルッキンググラ
ス等においても、反射光が強すぎると、ガラス面上の反
射した光のために内容物が判然としないといった不都合
が生じる。
【0003】そこで、従来より、上記のようなガラスと
いった透明材料の表面に反射汚止のために、上記透明材
料と屈折率が異なる物質よりなる薄膜を真空蒸着法など
により被着形成させて反射防止膜としている。なお、上
記のような真空蒸着法等により形成された反射防止膜は
無機酸化物或いは無機ハロゲン化物により形成されるこ
とが多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような
反射防止膜をガラス表面上に形成した場合、高い表面硬
度を有するものの、手垢、指紋、汗、ヘアーリキッド、
ヘアースプレー等による汚れが目立ちやすく、これらを
除去することも困難である。さらには、このような反射
防止膜においては、当該反射防止膜表面に異物が付着し
てしまった場合、表面のすべりが悪いために、除去され
難く、除去しようとする際に、異物による傷が太くなる
といった不都合が生じる。さらに、このような反射防止
膜においては、水に対する濡れ性が大きいために、雨
滴、水の飛沫が付着すると大きく拡がり易く、眼鏡用レ
ンズ等においては広範囲にわたって物体がゆがんで見え
るなどの不都合が生じる。
【0005】また、特開昭58−46301号公報、特
開昭59−49501号公報、特開昭59−50401
号公報には、最表層膜中にシリカ微粒子などに代表され
る無機物を30重量%以上含有させることにより、硬い
表面硬度が付与された反射防止膜が記載されているが、
このような膜組成から得られる反射防止膜においても、
表面のすべりが悪く、布等との接触による磨耗により傷
が発生し易いなどの問題点を有している。
【0006】そこで、上述のような反射防止膜の不都合
を解消するべく、各種の表面処理剤が提案、市販されて
いるが、ー時的に機能を付与するものであり、永続性が
なく耐久性に乏しいものである。
【0007】また、特開平3−266801号公報にお
いては、フッ素系樹脂層を形成して撥水性を付与する方
法が記載されているが、フッ素系樹脂層を形成すること
により、確かに撥水性は増すものの、摩擦あるいは磨耗
に対して満足する結果が得られていない。
【0008】さらにまた、特願平8−200164号明
細書には、パーフルオロポリエーテル化合物によって反
射防止膜を表面処理することによって耐摩耗性を向上さ
せる、滑り性を向上して耐汚染性を向上させる方法が記
載されている。確かに、この化合物による表面処理は非
常に効果があるが、化学的な安定性、例えば溶剤処理等
でその効果が著しく低減する。これはとりもなおさず、
表面のSiO2 との相互作用に関わると考えられる。
【0009】さらには、特願平8−64089号明細書
には、反射防止膜表面をパーフルオロポリエーテル基を
持つアルコキシシラン化合物で被覆することによって、
耐摩耗性或いは耐汚染性を向上する方法が記載されてい
る。この方法は、SiO2 表面との相互作用を持たせる
ためにアルコキシシラノ基を分子構造中に含み、表面で
強固な結合を持つゆえに、従来不満足であった耐溶剤性
等の問題を克服するものである。しかしながら、これら
の材料も塗布時間とともにその膜の性質は変化するた
め、この方法においては、耐摩耗性及び耐汚染性を長時
間に亘って維持することは困難である。
【0010】そこで本発明は、従来の実状に鑑みて提案
されたものであり、表面処理剤等の種類や経過時間に関
係なく、優れた耐汚染性、耐擦傷性、耐加工性が確保さ
れる反射防止膜を有する反射防止フィルター及びその製
造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
めに本発明者等が鋭意検討した結果、反射防止膜の表面
エネルギーを規定することにより、優れた耐汚染性、耐
擦傷性、耐加工性が確保されることを見出した。
【0012】一般に、表面エネルギーを小さくすること
によって撥水性が得られ、耐水汚染性が向上する。しか
し、上記表面エネルギーは、ファンデルワールス力に起
因する分散項、クーロン静電力に関する極性項、水素結
合力に基づく項、その他金属結合力等の分子間力による
展開がなされる。すなわち、上記のように撥水性を持た
せるといってもどの分子間力を小さくするかで、その特
性に及ぼす影響が大きく異なってくる。
【0013】前述のように、反射防止膜表面をフッ素を
含む化合物で被覆することによって撥水性は改善され
る。しかしながら、フッ素を含む化合物の極性基の種類
によって撥水性は大きく異なり、また同じ化合物を塗布
した場合でも、塗布後の放置時間によってその表面エネ
ルギーに差が生じることがわかっており、化合物とその
撥水性の関係は容易に類推することはできないことが確
認されている。
【0014】特に、反射防止フィルターに使用される反
射防止膜のような厚さ10(nm)程度の薄膜の場合に
は、表面エネルギーの潤滑特性等のトライボロジー特性
への効果は知られていない。
【0015】そこで、本発明は、表面エネルギーをさら
に分析して規定することによって撥水性に優れ且つトラ
イボロジー特性(潤滑特性)に優れ、耐汚染性、耐擦傷
性、耐加工性に優れた反射防止フィルター及びその製造
方法を提供しようとするものである。
【0016】すなわち本発明の反射防止フィルターは、
透明基板の一主面側に、表面側に少なくとも二酸化珪素
を含む層を有する反射防止膜が形成されてなり、上記反
射防止膜表面の表面エネルギーの極性項成分γpが2.
0(erg/cm2 )以下であることを特徴とするもの
である。
【0017】なお、上記表面エネルギーの計算方法はK
aelbleの方法を用いて行った。[J.Adhes
ion, Vol.2,p.66(1970)] 上記反射防止膜の表面エネルギーの極性項成分がγpが
2.0(erg/cm2 )よりも大であると、撥水性が
小さくなり、防汚性が悪くなる。またエタノール払拭等
の耐久性が悪化する。
【0018】上記のような表面エネルギーを得るには、
反射防止膜表面をフッ素系、シリコン系あるいは炭化水
素系の有機化合物で被覆することが望ましく、末端にア
ルコキシル基を持つパーフルオロポリエーテルにより被
覆することがより好ましく、中でも、上記反射防止膜の
表面側が下記化2に示されるパーフルオロポリエーテル
基を有するアルコキシシラン化合物により被覆されてい
ることが好ましい。なお、このとき、上記パーフルオロ
ポリエーテルとして、下記化3〜化5に示すようなもの
が挙げられる。
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】なお、上記化3〜化5中、l、m、n、
k、p、qは1以上の整数を示し、m/lは0.5〜
2.0が好ましい。さらにパーフルオロポリエーテルの
全分子量は500〜10000が好ましく、これより小
さいと耐久性が悪くなり、大きいと溶解性あるいは付着
強度に問題が生じる。
【0024】そして、このとき、被膜中に酸、アルカ
リ、ジケトン、あるいは燐酸エステルが混入されている
と、被膜形成反応が進みやすくさらに好ましい。
【0025】なお、上記のような反射防止膜の表面を被
覆する材料としては、疎水基としては、パーフルオロア
ルキル基、部分フッ素化アルキル基、炭化水素基、シリ
コーンオイル等を有するアルコキシシラン化合物も挙げ
られ、これらを使用する場合には、パーフルオロポリエ
ーテルを持つアルコキシシラン化合物と混合する方法が
効果的である。
【0026】本発明の反射防止フィルターにおいては、
上述のように反射防止膜の表面側に少なくとも二酸化珪
素を含む層が形成されていれば良く、単層或いは多層の
何れでも良い。多層とする場合には、表面側の少なくと
も二酸化珪素を含む層よりも下層となる膜を形成する材
質は、要求される性能、例えば耐熱性、反射防止性、反
射光色、耐久性、表面硬度などによって実験的に定めら
れるものである。
【0027】なお、上記反射防止膜の表面側の少なくと
も二酸化珪素を含む層の厚さであるが、反射防止効果以
外の要求性能によってそれぞれ決められるべきものであ
り、反射防止効果を最大限に発揮させるべく、この表面
側の層の光学的膜厚を対象とする光波長の1/4ないし
はその奇数倍に選択して、極小の反射率すなわち極大の
透過率を与えることが好ましが、実際には反射防止性と
水に対する静止接触角とのバランスおよび表面硬度との
関係から0.1nmから100nmが好ましく、0.5
〜5nmがより好ましい。ここで、光学的膜厚とは披膜
形成材料の屈折率と該被膜の膜厚の積で与えられるもの
である。(光学技術コンタクトVol.9, No.
8,p17(1971))。
【0028】さらに、本発明の反射防止フィルターにお
いては、硬度向上のために、反射防止膜として、特公昭
50−28092号公報、特公昭50−28446号公
報、特公昭50−39449号公報、特公昭51−24
368号公報、特開昭52−112698号公報、特公
昭57−2735号公報に示されるような反射防止膜と
同様の材料を使用して、表面側に少なくとも二酸化珪素
を含む層を有する反射防止膜が形成されてなり、上記反
射防止膜表面の表面エネルギーの極性項成分γpが2.
0(erg/cm2 )以下とされる反射防止膜を形成す
るようにしても良い。
【0029】ところで、上記本発明の反射防止フィルタ
ーを製造する方法としては、透明基板の一主面側に、表
面側に少なくとも二酸化珪素を含む層を有する反射防止
膜を形成した後、上記反応防止膜表面にパーフルオロポ
リエーテルに対しアルコキシシラン或いはシリコン系潤
滑剤を添加して塗布する方法が挙げられる。
【0030】上記反射防止膜を形成する方法としては、
真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング
法などに代表される各種のPVD法(Physical
Vapor Deposition法)がある。これ
らの方法によれば、陰極線管等の前面板となるガラス表
面に対してそのまま被覆形成することも可能である。
【0031】前記PVD法に適した無機物としては、S
iO2 以外に、Al23 ,ZrO2 ,TiO2 ,Ta
25 ,SiO,HfO2 ,ZnO,In23 /Sn
2,TiO,Ti23 ,Y23 ,Sb23 ,M
gO,CeO2 などの無機酸化物が好ましく適用され、
これらにより表面側の少なくとも二酸化珪素を含む層よ
りも下層となる層を形成するようにすればよい。
【0032】なお、このとき、反射防止効果をより顕著
なものとするために、表面側の少なくとも二酸化珪素を
含む層よりも下層となる層として上記表面側の層よりも
屈折率の高い材料よりなる層を一層以上被覆することが
好ましい。これら多層の反射防止膜の膜厚および屈折率
の組合わせに関してもいくつかの提案がなされている。
(光学技術コンタクトVo.9,No.8, p.17
(1971)) また、反応防止膜表面にパーフルオロポリエーテルに対
しアルコキシシラン或いはシリコン系潤滑剤を添加して
塗布する方法としては、通常のコーティング作業で用い
られる方法が適用可能であるが、反射防止効果の均一
性、さらには反射干渉色のコントロールという観点から
スピン塗布、ディッピング塗布、カーテンフロー塗布、
スプレー塗布などが好ましく用いられる。また作業性の
点から紙、布などの材料に液を含浸させて塗布流延させ
る方法も使用される。
【0033】なお、反射防止膜上にパーフルオロポリエ
ーテル、アルコキシシラン、シリコン系潤滑剤以外の前
述したような材料を塗布する場合も同様に塗布すればよ
い。
【0034】そして、これらの有機物含有硬化性物質は
通常揮発性溶媒に希釈して塗布される。溶媒として用い
られるものは、特に限定されないが、使用にあたっては
組成物の安定性、反射防止膜の表面側の少なくとも二酸
化珪素を含有する層に対する濡れ性、揮発性などを考慮
して決められるべきである。前述したような材料におい
てはメタノール、エタノール、イソプロパノール等のア
ルコール系溶剤が好ましく使用される。また、アルコー
ル系溶剤と他の溶剤、例えば炭化水素系溶剤のヘキサン
と混合しても良い。またフッ素化炭素系溶剤を用いると
その表面エネルギーが低いために塗布性が良好になる。
【0035】なお、上記のように塗布を行うにあたって
は、塗布されるべき反射防止膜の表面は清浄化されてい
ることが好ましく、清浄化に際しては界面活性剤による
汚れ除去、さらには有機溶剤による脱脂、フッ素化炭素
による蒸気洗浄などが適用される。また密着性、耐久性
の向上を目的として各種の前処理を施すことも有効な手
段であり、とくに好ましく用いられる方法としては活性
化ガス処理、酸、アルカリなどによる薬品処理などが挙
げられる。
【0036】本発明の反射防止フィルターにおいては、
透明基板の一主面側に、表面側に少なくとも二酸化珪素
を含む層を有する反射防止膜が形成されていることか
ら、十分な表面硬度が得られ、上記反射防止膜表面の表
面エネルギーの極性項成分γpが2.0(erg/cm
2 )以下とされていることから、反射防止膜形成材料に
関係なく、撥水性及び潤滑性が確保される。
【0037】そして、上記本発明の反射防止フィルター
において、上記反射防止膜の表面側を下記化6に示され
るパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラ
ン化合物により被覆するようにすれば、容易に反射防止
膜表面の表面エネルギーの極性項成分γpが2.0(e
rg/cm2 )以下となされる。
【0038】
【化6】
【0039】また、上記のように、反射防止膜の表面側
をパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラ
ン化合物により被覆するようにすれば、耐溶剤性が確保
されるとともに、上記パーフルオロポリエーテル基を有
するアルコキシシラン化合物が潤滑剤として機能するこ
とから、潤滑性が確保される。
【0040】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。本発明に係る反射防止フィルタは、透明基
板の一主面側に、表面側に少なくとも二酸化珪素を含む
層を有する反射防止膜が形成されてなり、上記反射防止
膜表面の表面エネルギーの極性項成分γpが2.0(e
rg/cm2 )以下であることを特徴とするものであ
る。
【0041】なお、上記本発明に係わる反射防止フィル
ターにおいては、上記反射防止膜の表面側が下記化7に
示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキ
シシラン化合物により被覆されていることが好ましい。
【0042】
【化7】
【0043】また、上記本発明に係わる反射防止フィル
ターを製造するには、透明基板の一主面側に、表面側に
少なくとも二酸化珪素を含む層を有する反射防止膜を形
成した後、上記反応防止膜表面にパーフルオロポリエー
テルに対しアルコキシシラン或いはシリコン系潤滑剤を
添加して塗布するようにすれば良い。
【0044】
【実施例】次に、本発明の効果を確認するべく、以下の
ような実験を行った。
【0045】1.サンプルの作成 〔実施例1〕先ず、陰極線管の前面板となるパネル表面
に、スパッタリング法により、厚さ130(nm)のI
TOガラスをまず蒸着し、続けてその上にSiO2 を8
0(nm)の厚さで蒸着して反射防止膜を形成した。
【0046】次に、末端にパーフルオロポリエーテル基
を有するアルコキシシラン化合物含有コーティング組成
物を調製した。すなわち、表1中に化合物1として示す
末端にパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシ
シラン化合物(数平均分子量2000)を0.4重量部
にヘキサン380重量部、アルコール20重量部をそれ
ぞれ添加混合し、均ーな溶液としたのち、さらにメンブ
ランフィルターでろ過を行なってコーテイング組成物を
得た。なお、化合物1中kは、5<k<100である。
【0047】
【表1】
【0048】次に、前述のようにして形成した反射防止
膜の表面に、上述のようにして得たコーテイング組成物
をディップコーティングにより塗布し、表面がパーフル
オロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物に
より被覆され、表面側に少なくとも二酸化珪素を含む層
を有する反射防止膜を有するパネルを製造し、これを実
施例1と称することとする。なお、ディップコーティン
グは、5(cm/min)の引き上げ速度で行うことと
した。
【0049】〔実施例2〜4〕次に、上述の実施例1で
使用した表1中に化合物1として示されるパーフルオロ
ポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物1の代
わりに、表1中化合物2〜4として示すそれぞれの化合
物と化合物1として示されるパーフルオロポリエーテル
基を持つアルコキシシラン化合物を50/50の比率で
混合したものを使用し、後は実施例1と同様にしてパネ
ルを製造した。すなわち、反応防止膜表面にパーフルオ
ロポリエーテルに対しアルコキシシラン或いはシリコン
系潤滑剤を添加して塗布することとなる。このとき、乾
燥条件は、温度26(℃)、湿度60(RH%)とし
た。
【0050】なお、化合物2と化合物1を組み合わせて
使用したものを実施例2、化合物3と化合物1を組み合
わせて使用したものを実施例3、化合物4と化合物1を
組み合わせて使用したものを実施例4とした。このと
き、化合物4中nは整数であり、20<n<200であ
る。
【0051】〔実施例5〕また、実施例1で溶剤として
使用したヘキサン,アルコールの代わりにパーフルオロ
オクタンを使用する以外は実施例1と同様にしてパネル
を製造し、実施例5とした。
【0052】〔比較例1〕さらに、比較のために、実施
例1と同様にして反射防止膜を製造し、その表面に対し
て何も処理しないパネルを製造し、比較例1とした。
【0053】〔比較例2〜8〕次に、比較のために、実
施例1で使用した表1中に化合物1として示されるパー
フルオロポリエーテル基を有するアルコキシシランの代
わりに、表1中化合物2〜8として示すそれぞれの化合
物を使用し、後は実施例1と同様にしてパネルを製造し
た。このとき、乾燥条件は、温度26(℃)、湿度60
(RH%)とした。
【0054】なお、化合物2を使用したものを比較例
2、化合物3を使用したものを比較例3、化合物4を使
用したものを比較例4、化合物5を使用したものを比較
例5、化合物6を使用したものを比較例6、化合物7を
使用したものを比較例7、化合物8を使用したものを比
較例8とした。このとき、化合物5,6中k,mは、
0.5<k/m<2で、分子量Mが500<M<100
00である。
【0055】2.特性の評価 次に、上記実施例1〜5及び比較例1〜8のパネルの特
性を以下のようにして評価した。なお、以下の評価を各
パネルをエタノールで洗浄する前と洗浄した後に行うこ
ととした。
【0056】(a)耐汚染性試験 水道水5(ml)をパネルの反射防止膜表面にしたたら
せ、室温雰囲気下で48時問放置後、布で払拭し、水垢
の残存状態を観察して耐汚染性を評価した。なお、水垢
が除去できている状態を良好とし、除去できなかった状
態を不良として評価した。
【0057】(b)表面すべり性 300(g)の荷重を加えた状態でシャープペンシルの
先端によりパネルの反射防止膜表面を引っかいた時の傷
の発生の度合いにより表面すべり性を評価した。なお、
傷が全く発生していない場合を○、細かい傷が発生して
いる場合を△、著しい傷が発生している場合を×として
評価した。
【0058】(c)耐磨耗性試験 200(g)の荷重を加えた状態でスチールウール#0
000によりパネルの反射防止膜表面を30回擦った後
の傷の発生の有無により耐摩耗性を評価した。なお、傷
が全く発生していない場合を○、細かい傷が発生してい
る場合を△、著しい傷が発生している場合を×として評
価した。
【0059】(d)手垢の付きにくさ 手垢の付きにくさについて、目視で評価し、手垢が付着
するものの目立たない場合を○、手垢が付着するが簡単
に除去できる場合を△、手垢が付着し目立つものを×と
して評価した。
【0060】(e)表面エネルギー 表面エネルギーは、水とヨウ化メチレンの接触角を測定
した後に、前述のKaelbleの方法を用いて分散項
成分(γd)と極性項成分(γp)を計算して求めた。
【0061】(f)接触角 水及びヨウ化メチレンの接触角を測定することによっ
て、潤滑膜の残存率あるいは水あるいは油に対する汚染
性に対する目安となるため、接触角も調査した。
【0062】以上の評価結果を表2及び表3にまとめて
示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】表2及び表3の結果から明らかなように、
エタノール洗浄前において反射防止膜表面の表面エネル
ギーの極性項成分γpが2.0(erg/cm2 )以下
である実施例1〜6においては、エタノール洗浄後も表
面エネルギーの極性項成分γpが2.0(erg/cm
2 )以下であり、エタノール洗浄前後において、耐汚染
性、表面すべり性、耐磨耗性試験、手垢のつきにくさの
何れの項目においても良好な結果が得られた。また、こ
れらにおいては、エタノール洗浄前後において、水及び
ヨウ化エチレンに対する接触角が大きく、このことから
も耐汚染性が良好であることが確認された。
【0066】一方、表2及び表3の結果から明らかなよ
うに、反射防止膜の表面に処理を全く施さなかった比較
例1においては、各項目において良好な結果が得られな
かった。また、反射防止膜の表面を部分フッ素化炭化水
素化合物により処理したものの、エタノール洗浄前後に
おいて反射防止膜表面の表面エネルギーの極性項成分γ
pが2.0(erg/cm2 )よりも大である比較例2
〜8においては、良好な結果が得られている項目もある
が、概してエタノール洗浄後の結果が悪く、化学的安定
性(耐溶剤性)に欠けることが確認された。
【0067】つまり、表面エネルギーの極性項成分γp
が2.0(erg/cm2 )以下の場合には、潤滑剤が
SiO2 表面の極性項成分と反応、若しくは強い相互作
用を起こし、潤滑性能或いは化学的安定性(耐溶剤性)
が供与されることが確認された。
【0068】従って、本発明の反射防止フィルターのよ
うに、表面側に少なくとも二酸化珪素を含む層を有する
反射防止膜が形成され、上記反射防止膜表面の表面エネ
ルギーの極性項成分γpが2.0(erg/cm2 )以
下とされていれば、以下に示すような効果が得られるこ
とが確認された。
【0069】(1)指紋、手垢などによる汚れがつきに
くく、また目立ちにくい。さらに、これらの効果が永続
的に保持される。
【0070】(2)水垢などが付着し、乾操されても容
易に除去することが可能である。
【0071】(3)表面すべり性が良好である。
【0072】(4)ほこりなどの汚れがつきにくく、使
用性が良い。
【0073】(5)磨耗に対する耐久性がある。
【0074】(6)塗布後の乾燥温度を50℃以下の低
温にすることも可能である。
【0075】(7)化学的安定性(耐溶剤性)が良くな
る。
【0076】すなわち、本発明の反射防止フィルターの
ように、透明基板の一主面側に、表面側に少なくとも二
酸化珪素を含む層を有する反射防止膜を形成すれば、十
分な表面硬度が得られ、上記反射防止膜表面の表面エネ
ルギーの極性項成分γpを2.0(erg/cm2 )以
下とすれば、反射防止膜形成材料に関係なく、撥水性及
び潤滑性が確保され、耐汚染性及び耐擦傷性が確保され
ることが確認された。
【0077】そして、上記本発明の反射防止フィルター
において、上記反射防止膜の表面側を前述のようにパー
フルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合
物により被覆するようにすれば、容易に反射防止膜表面
の表面エネルギーの極性項成分γpが2.0(erg/
cm2 )以下となされることが確認された。
【0078】また、上記のように、反射防止膜の表面側
をパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラ
ン化合物により被覆するようにすれば、耐溶剤性が確保
されて耐加工性が確保されるとともに、上記パーフルオ
ロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物が潤
滑剤として機能することから、潤滑性が確保され、耐汚
染性及び耐擦傷性が確保されることが確認された。
【0079】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明の反射防止フィルターにおいては、透明基板の一主面
側に、表面側に少なくとも二酸化珪素を含む層を有する
反射防止膜が形成されていることから、十分な表面硬度
が得られ、上記反射防止膜表面の表面エネルギーの極性
項成分γpが2.0(erg/cm2 )以下とされてい
ることから、反射防止膜形成材料に関係なく、撥水性及
び潤滑性が確保され、耐汚染性及び耐擦傷性が確保され
る。
【0080】そして、上記本発明の反射防止フィルター
において、上記反射防止膜の表面側を下記化8に示され
るパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラ
ン化合物により被覆するようにすれば、容易に反射防止
膜表面の表面エネルギーの極性項成分γpが2.0(e
rg/cm2 )以下となされる。
【0081】
【化8】
【0082】また、上記のように、反射防止膜の表面側
をパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラ
ン化合物により被覆するようにすれば、耐溶剤性が確保
されて耐加工性が確保されるとともに、上記パーフルオ
ロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物が潤
滑剤として機能することから、潤滑性が確保され、耐汚
染性及び耐擦傷性が確保される。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基板の一主面側に、表面側に少なく
    とも二酸化珪素を含む層を有する反射防止膜が形成され
    てなり、 上記反射防止膜表面の表面エネルギーの極性項成分γp
    が2.0(erg/cm2 )以下であることを特徴とす
    る反射防止フィルター。
  2. 【請求項2】 上記反射防止膜の表面側が下記化1に示
    されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシ
    シラン化合物により被覆されていることを特徴とする請
    求項1記載の反射防止フィルター。 【化1】
  3. 【請求項3】 透明基板の一主面側に、表面側に少なく
    とも二酸化珪素を含む層を有する反射防止膜を形成した
    後、上記反応防止膜表面にパーフルオロポリエーテルに
    対しアルコキシシラン或いはシリコン系潤滑剤を添加し
    て塗布することを特徴とする反射防止フィルターの製造
    方法。
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