JPH1181950A - ドライサンプ式4サイクルエンジン - Google Patents

ドライサンプ式4サイクルエンジン

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JPH1181950A
JPH1181950A JP24234397A JP24234397A JPH1181950A JP H1181950 A JPH1181950 A JP H1181950A JP 24234397 A JP24234397 A JP 24234397A JP 24234397 A JP24234397 A JP 24234397A JP H1181950 A JPH1181950 A JP H1181950A
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lubricating oil
engine
tank
dry sump
crankcase
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ドライサンプ方式のメリットを享受できるほ
か、エンジンの高さを下げられ、コンパクト化、軽量化
が図れるドライサンプ式4サイクルエンジンを提供す
る。 【解決手段】 エンジン10下部のクランクケース底部
13aを潤滑油受けに構成するとともに、クランクケー
ス底部13aの片側に沿って軸方向に平行に潤滑油溜ま
り部27を設け、エンジン10本体の有する壁に一体的
に形成されたタンク基体部15Aとこれに取り付けられ
るタンクカバー15Bとから潤滑油タンク15を形成
し、潤滑油溜まり部27は当該溜まり部27に集まった
潤滑油を潤滑油タンク15へ移送するスカベンジングポ
ンプP1に接続するとともに、潤滑油タンク15は当該
タンク15内の潤滑油をエンジン10の潤滑必要部に供
給するフィードポンプP2に接続した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、小型滑走艇や自動
車などに使用される4サイクルエンジンに関し、詳しく
は、エンジン本体とは別体の潤滑油タンクに貯留する潤
滑油をフィードポンプで潤滑の必要箇所へ供給するドラ
イサンプ方式の潤滑システムを備えた4サイクルエンジ
ンに関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、水上を滑走する小型滑走艇に
は、推進用のエンジンとして小型、軽量の利点をもつ2
サイクル式のものが搭載されている。小型滑走艇はスポ
ーツ性に富む乗り物である関係で、エンジンは小型で高
出力の2サイクルエンジンが採用されている。
【0003】近年、騒音レベルが比較的低く、また排気
ガス状態が良好な4サイクルエンジンが小型滑走艇に搭
載され始めている。そして、4サイクルエンジンの場合
には特にエンジン内の潤滑が重要になるが、オイルパン
が不要であるためにエンジンの位置を下げることができ
る、エンジンの高さ寸法を小さくすることができる、運
転走行の際に油面変化の影響を受けにくいため、ポンプ
により常に適正な量の潤滑油をエンジンの各部に圧送す
ることができる、傾斜時にも潤滑油タンク内の潤滑油量
はほとんど変化しないなどのメリットに鑑み、ドライサ
ンプ方式の潤滑システムを採用しようとする試みが行わ
れつつある。
【0004】その試みの幾つかは、特開平7−2375
86号や特開平7−237587号の公開特許公報に開
示されており、前者ではエンジン潤滑用オイルタンクを
吸気管の下方に配置するとともに、該オイルタンクをエ
ンジン下部に設けられたオイルパンにオイルポンプを介
して連通させており、後者ではエンジン潤滑用オイルタ
ンクを船体長手方向に延在するエンジン出力軸とインペ
ラ軸とを連結するカップリングの上方に配置し、エンジ
ン下部に設けられたオイルパンにオイルポンプを介して
連通させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来のドライ
サンプ方式のエンジン潤滑システムでは、クランクケー
スと別体にオイルタンクを設けており、それ自体重量増
大を招いたりエンジン剛性を低下させる他、ポンプ(ク
ランクケースからタンクへ潤滑油を送るスカベンジング
ポンプや、タンクからエンジン各部へ潤滑油を送るフィ
ードポンプ)とオイルタンクとを接続する外部配管が必
要となって配管が繁雑になり、管路抵抗が大きくなって
メカニカルロスを増大し、油圧上昇レスポンスを低下さ
せ、更にタンク取り付けスペースや取り付け部品を必要
とし、製造コスト上昇及び重量増加の要因となる等の課
題がある。
【0006】本発明は、そのような課題に鑑み提案する
もので、特に小型滑走艇のエンジンに好適で、ドライサ
ンプ方式のメリットを享受できるほか、エンジンの高さ
を下げられ、コンパクト化、軽量化が図れるとともに、
オイルタンクとポンプ間の配管の簡略化によってメカニ
カルロスを低下し、油圧上昇レスポンスを高め、スペー
ス節減が図れるドライサンプ式4サイクルエンジンを提
供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の請求項1記載の4サイクルエンジンは、エンジン本
体下部のクランクケース底部を潤滑油受けに構成すると
ともに、前記クランクケース底部の片側に沿って軸方向
に平行に潤滑油溜まり部を設け、前記エンジン本体の有
する壁に一体的に形成されたタンク基体部とこれに取り
付けられるタンクカバーとから潤滑油タンク(オイルタ
ンク)を形成し、前記潤滑油溜まり部は当該溜まり部に
集まった潤滑油を前記潤滑油タンクへ移送するスカベン
ジングポンプに接続するとともに、前記潤滑油タンクは
当該タンク内の潤滑油をエンジンの潤滑必要部に供給す
るフィードポンプに接続している。
【0008】この4サイクルエンジンは、クランクケー
ス内に潤滑油を溜めるのではなく別に潤滑油タンクを有
するドライサンプ方式を採用しているため、次のような
メリットを有する。(a)クランクシャフト等の回転体
が潤滑油面に接することによる出力低下や、潤滑油のか
きあげによるオイルミストの飛散を抑制できる。(b)オ
イルパンが不要であるためにエンジンの位置を下げるこ
とができ、特に小型滑走艇に搭載する場合に船体の低重
心化を図ることができる。(c)エンジンの高さ寸法を小
さくすることができる。(d)運転走行の際にも油面変化
の影響を受けないため、ポンプのエア噛み込み無しに適
正な量の潤滑油をエンジンの各部に圧送することができ
る。(e)掻き上げにともなう潤滑油の撹拌が無いので、
油温上昇を抑制できる。(f)傾斜時にも潤滑油タンク内
の潤滑油量はほとんど変化しない。
【0009】ドライサンプ方式に加えて、クランクケー
ス底部の片側に寄せて潤滑油溜まり部を設けたので、ク
ランクケース底部の中央部に例えば潤滑油を溜めるため
のスペースなどが不要で、クランク軸を最大限低い位置
に下げることができるから、エンジンの全体高さをより
一層低く抑えられるとともに、エンジン本体の重心も一
層低くなる。つまり、上記した(b)・(c)の利点が一層
強調されることになる。また、潤滑油タンク(の基体
部)をエンジン本体(シリンダヘッド・シリンダブロッ
ク・クランクケースなどのエンジン主要部)の壁と一体
的に形成したので、コンパクトになって小型化され、ま
た外部配管を設ける必要がないため、構造が簡略化され
る。
【0010】請求項2記載のように、前記潤滑油溜まり
部を、前記クランクケース底部近傍を横切るように回転
するクランク軸のバランスウエイトの回転方向端部側に
設けると、クランクケース底部の潤滑油受けに落下して
滞留する潤滑油を、クランク軸のバランスウエイトが潤
滑油溜まり部へ掻き寄せるので、潤滑油が効率よく溜ま
り部へ集められて溜まる。
【0011】請求項3記載のように、前記潤滑油溜まり
部に、シリンダヘッド内に連通する潤滑油通路と、前記
シリンダヘッド上のカムシャフト室にカムチェーン室を
介して連通する潤滑油通路とをそれぞれ接続することが
好ましい。この構成により、クランクケース底部の潤滑
油受けに落下する潤滑油を、クランク軸のバランスウエ
イトが潤滑油溜まり部へ掻き寄せて集めるだけでなく、
シリンダヘッド上のカムシャフト室内の潤滑部およびカ
ムチェーン室内の潤滑部からの潤滑油が潤滑油溜まり部
へ流入するとともに、シリンダヘッド内の潤滑部からの
潤滑油も潤滑油通路を通って集められる。
【0012】請求項4記載のように、前記潤滑油溜まり
部は、長溝状で、クランクケース底部の端部に軸方向に
間隔をあけて設けられたリブ(仕切り壁)とそれらのリ
ブをエンジンの軸方向と平行に貫通する連通孔とを備
え、前記潤滑油溜まり部を覆うように傾斜板を前記リブ
間に跨がって取り付け、その傾斜板には前記バランスウ
エイトで掻き上げる潤滑油の取入れ口を軸方向に間隔を
あけて設けることが望ましい。
【0013】この請求項4記載の構成により、潤滑油溜
まり部に集められた潤滑油は上方が傾斜板で塞がれてい
るため、エンジンの傾斜や振動等があっても溜まり部内
の潤滑油が漏れ出しにくい。一方、運転時にクランクケ
ース底部の潤滑油受けに落下した潤滑油は、クランク軸
の回転に伴って回転するバランスウエイトによって潤滑
油溜まり部側へ掻き上げられ、傾斜板の潤滑油取入れ口
から潤滑油溜まり部内に送り込まれる。
【0014】請求項5記載のように、エンジン本体のシ
リンダブロックとクランクケースとの境目付近に軸方向
と平行に潤滑油通路(メインギャラリ)を設け、前記潤
滑油タンク内の潤滑油を前記フィードポンプによって前
記潤滑油通路に圧送したのち、エンジンの潤滑必要部に
供給すると、潤滑油タンク内の潤滑油をいったんエンジ
ン本体のほぼ中間の高さの潤滑油通路まで圧送したの
ち、そこからシリンダライナ部やエンジン本体上方のカ
ムシャフトやクランクピン部などに供給するから、エン
ジン本体の最下位置からエンジン内の各所に潤滑油を供
給するのに比べて供給力の圧損が少なく効率よくかつ十
分に供給できるとともに、潤滑油通路はエンジン本体の
軸方向に沿って連続しているから、エンジンの気筒数が
増えても各所に満遍なく潤滑油を供給できる。
【0015】請求項6記載のように、前記エンジン本体
の前記潤滑油通路近傍にこれと平行に直管状のオイルク
ーラを取り付け、前記潤滑油タンクからの潤滑油を前記
オイルクーラを経由して前記潤滑油通路に圧送すると、
エンジン内で温度の上昇した潤滑油を冷却してエンジン
内に戻し循環させることができ、またオイルクーラは直
管状でエンジン本体の軸方向に沿って取り付けられてい
るので、取付スペースが小さくて済む。
【0016】請求項7記載のように、潤滑油タンクの上
部から吸気系にブリーザーパイプによって連通させる
と、潤滑油タンク内に侵入したブローバイガスおよび潤
滑油内に噛み込んだエアを潤滑油中から分離し、吸気系
を経由して燃焼させられる。
【0017】請求項8記載のように、前記エンジンは、
小型滑走艇に搭載し推進手段を駆動するために使用する
ことが好ましい。
【0018】請求項8に記載のように、小型滑走艇に4
サイクルエンジンを搭載する場合には、小型滑走艇がス
ポーツ性に富む乗り物であるうえ、スペース上の都合か
ら小さな内燃機関に大きな出力を発揮させる必要もある
ことから、上記(a)〜(f)のメリットはいずれも小型滑
走艇にとって好都合である。特に(b)・(c)のように船
体の低重心化を図ることができる。また、ドライサンプ
方式であるため転倒時にも燃焼室への潤滑油の流入が起
こりにくく、エンジンの再始動性を高めることができ
る。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明にかかるドライサンプ式4
サイクルエンジンを小型滑走艇のエンジンとして採用し
た場合の実施の形態につき、添付図を参照にして以下に
詳細に説明する。
【0020】図1は実施例の四気筒4サイクルエンジン
を搭載した小型滑走艇を示す側面図で、一部透視して示
しており、図2は図1のA−A線に沿った断面図、図3
は図1の4サイクルエンジンを拡大して示す左側面図、
図4は図3のB−B線拡大断面図、図5はシリンダヘッ
ドを取り外した状態のエンジン本体を示す右側面図、図
6は図5のエンジン本体の平面図、図7は図3のC−C
線拡大断面図、図8はジェネレータカバーの背面図、同
D−D線断面図および同E−E線断面図である。
【0021】図1によって、まず小型滑走艇1について
概説する。小型滑走艇1は、海岸や湖岸の近くで滑走す
る水上の乗り物で、船底ハル2の上にデッキ3やシート
4、ハンドル5などを取り付けて一人〜数人が搭乗でき
るようになっている。下部後方にある水ジェットポンプ
7のインペラ7Aにて加圧、噴出される水ジェットによ
り推進され、水面上を滑走することができる。インペラ
7Aはエンジン10により駆動されるが、そのエンジン
10は、船体の長さ方向のほぼ中央のエンジンルーム8
内に搭載されている。エンジン10の出力は弾性継手
(図示せず)を介してインペラ軸9へ伝えられ、そのイ
ンペラ軸9がインペラ7Aを回転させる。
【0022】エンジン10は、四気筒4サイクルエンジ
ンで、図2・図4によってその構成を概説する。エンジ
ン10は、シリンダヘッド11を上部に有し、それより
下にシリンダブロック12やクランクケース13、潤滑
油タンク(以下オイルタンクと称する)15を備えてい
る。シリンダヘッド11の内部には、吸気通路16と排
気通路17が形成されており、各通路16、17を開閉
するバルブとともにそれらのための動弁機構18等が組
み込まれている。吸気通路16の上流側には、図3のよ
うに各気筒ごとに吸気マニホールド19が接続され、各
吸気マニホールド19の上流端は共通の吸気ボックス2
0に接続されている。一方、排気通路17の下流側には
排気マニホールド21および排気管集合部21Aを介し
て水マフラ22(図1)が接続されている。また、シリ
ンダブロック12の内部のシリンダライナ12A内には
上下に摺動可能なようにピストン23が配置され、それ
らとシリンダヘッド11にて囲まれた空間が燃焼室24
となっている。ピストン23はコンロッド26を介して
クランク軸25に連接されており、そのクランク軸25
は軸受(図示は省略)を介してクランクケース13によ
り支えられている。
【0023】クランクケース13について、オイルタン
ク15とともに図4に基づいて説明する。クランクケー
ス13は、クランク軸25が内部で回転する空間を区画
した軸線方向に長い略長円筒形状で、その略平坦状の底
部13aが潤滑油受け(以下オイル受けという)に形成
され、潤滑に供されてクランク軸25の軸受等から潤滑
油が底部13a上に落下する。シリンダブロック12お
よびクランクケース13の一側壁と一体に、オイルタン
ク15の筺体状の基体部15Aが形成され、この基体部
15Aは一側面が開口し、この側面開口に対をなす筺体
状のオイルタンクカバー15Bが被せられてボルト止め
される。したがって、本例では、図6のようにオイルタ
ンク15は基体部15Aとタンクカバー15Bから構成
される。
【0024】クランクケース13の底部13aにおい
て、一側方(オイルタンク15側)に潤滑油溜まり部
(以下、オイル溜まり部という)27が形成される。こ
のオイル溜まり部27は、エンジン10の軸方向に平行
な連続する長溝27aを備え、この長溝27aの所定間
隔(気筒間)ごとにリブ状の仕切り壁(リブともいう)
27bが設けられ、また各リブ27bを貫通する貫通孔
27cが長溝27aの長手方向に沿って穿設されてい
る。長溝27aの上端開口には、断面が円弧状に湾曲し
た薄い傾斜板27dが被せられ、ボルト27fにより取
り付けられている。傾斜板27dの幅方向のほぼ中間位
置に、上向きに傾斜した潤滑油取入れ口27eがプレス
機により打ち抜きにより成形されている。潤滑油取入れ
口27eは各気筒ごとのバランスウエイト25cに対応
して、エンジン10本体の軸方向に間隔をあけて設けら
れ、底部13aを横切るように反時計方向(図4)に回
転するバランスウエイト25cによって掻き上げられる
潤滑油が、取入れ口27eからオイル溜まり部27内に
流入する。
【0025】また、クランクケース13の底部13aの
反対側に連通孔29がエンジン10の軸方向に平行に穿
設され、この連通孔29とオイル溜まり部27とが横方
向に貫通する複数本(本例では2本)の横孔28で接続
されている。オイル溜まり部27の一端が、エンジン1
0本体の一端部(船首側)に上下方向にわたって設けら
れたカムチェーン室31の下端部に連通している(図示
せず)。またシリンダブロック12の上端には、図6に
も示すように3つの導入孔35が穿設され、シリンダブ
ロック12の上端部でエンジン10の軸方向に形成され
た縦孔36にそれぞれ連通している。この縦孔36は垂
直方向に穿設された2本の潤滑油落下孔37により、連
通孔29にそれぞれ連通している。さらに、シリンダブ
ロック12とクランクケース13との境目付近に、潤滑
油通路(メインギャラリ)38がエンジン10のほぼ全
長にわたり軸方向に穿設されている。このメインギャラ
リ38に、フランジ39a付き開口39が所定間隔をあ
けて2箇所に設けられているが、これらの開口39には
直管状で二重管構造のオイルクーラ40(図2)の潤滑
油流入口と流出口が接続されるとともに、フランジ39
aにオイルクーラ40(図2)が取り付けられる。
【0026】図3・図4においてオイル溜まり部27に
集まった潤滑油は、そこに配置されたストレーナ(図示
せず)を通して比較的大きな異物が除去されてから、ス
カベンジングポンプP1によってクランクケース13等
に形成された油路等を通ってオイルタンク15に送られ
る。オイルタンク15内の潤滑油は、ファインストレー
ナ(図示は省略)を通ったのちフィードポンプP2(図
上、ポンプP1と同じ位置にある)によって圧送され、
逆止弁(図示せず)および図8に示すようにジェネレー
タカバー41に一体に形成された潤滑油通路41aを通
り、ジェネレータカバー41に装着されたカートリッジ
フィルター42に入り、一体に形成された別の潤滑油通
路41bを通り、さらにオイルクーラ40(図7)に圧
送されて冷却されたのち、シリンダブロック12の下端
部のメインギャラリ38へ送られる。そして、メインギ
ャラリ38から図4のように略L形の噴射ノズル43に
よりピストン23の頂部裏面に噴射したり、クランク軸
25の軸受に圧送したり、カムシャフトの軸受部(図示
せず)等の潤滑の必要な各部へ供給される。
【0027】一方、上記のようにしてエンジン10内の
カムチェーン34、スプロケット33等に供給された潤
滑油は、カムチェーン室31の下端部へ落下し、一端か
らオイル溜まり部27に流入する。図5のようにシリン
ダヘッド11(図4)内の潤滑油は3つの導入孔35か
ら縦孔36に流入したのち、2本の潤滑油落下孔37か
ら連通孔29に流入し横孔28を通してオイル溜まり部
27に流入する。シリンダライナ12A摺動面などから
潤滑油がクランクケース13の底部13a上に落下する
が、図4に示すように底部13a上の潤滑油はクランク
軸25のバランスウエイト25cによって掻き上げら
れ、取入れ口27eからオイル溜まり部27内に流入す
る。このようにしてオイル溜まり部27に集められた潤
滑油は、次の〜の順序でエンジン10の各部へ供給
される。すなわち、オイル溜め部27→第1フィル
ター(図示せず)→スカベジングポンプP1→オイル
タンク15→第2フィルター(図示せず)→フィード
ポンプP2→逆止弁(図示せず)→ジェネレータカバ
ー通路41a→ジェネレータカバー41の第3フィルタ
ー42→エンジン側オイルクーラ40→エンジン1
0本体のメインギャラリ38→エンジン10内の各部
→クランクケース底部13a→オイル溜め部27。
【0028】なお、上記のポンプP1、P2は、図7に
示すクランク軸25に取り付けられた駆動スプロケット
44によってチェーン45を介して駆動され従動スプロ
ケット46の回転で作動する二連式トロコイドポンプと
して構成されている。勿論、トロコイドポンプ以外に、
内接ギアポンプ、外接ギアポンプなど他の形式のポンプ
も使用される。また、オイルタンク15内の上部にはブ
リーザ通路(図示せず)が設けられ、図3に示すように
タンクカバー15Bの上面に接続されたブリーザパイプ
47により吸気ボックス20やシリンダヘッド11に連
通させている。
【0029】続いて、クランク軸25・ポンプ駆動軸4
8・スタータモータ49の駆動軸50などの配置につい
て説明する。図7に示すように、クランクケース13の
中心部でエンジン10本体の中心軸線上にクランク軸2
5が位置し、このクランク軸25よりやや低い位置で潤
滑油タンク15寄りに所定間隔をあけてポンプ駆動軸4
8が配置されている。また、ポンプ駆動軸48の上方で
エンジン10本体寄りに、スタータモータ駆動軸50が
配置され、クランク軸25・ポンプ駆動軸48・スター
タモータ駆動軸50はそれぞれほぼ等間隔に配置され、
これらの3軸を結ぶと略正三角形が形成される。さら
に、シリンダヘッド11上方のカムシャフト室31A内
には、中心軸線を挟んで2本のカムシャフト32が配置
されている。各カムシャフト32のスプロケット33と
クランク軸25のスプロケット間にカムチェーン34が
掛け渡され、またポンプ駆動軸50のスプロケット46
とクランク軸25のスプロケット44間にチェーン45
が掛け渡されている。
【0030】スタータモータ49は図3に示すようにク
ランクケース13の端部壁にねじ込まれて取り付けら
れ、図7に示すようにスタータモータ49の駆動軸50
の周囲に形成された小径ギヤ50Aが、大径の中間ギヤ
51に噛合し、この中間ギヤ51と共通の支軸上で一体
的に回転する小径の中間ギヤ52にクランク軸25のリ
ングギヤ53が噛合している。スタータモータ49の回
転は回転力が数十倍に増大されてクランク軸25に伝達
され、クランク軸25を回転させてエンジン10を始動
する。エンジン10の始動後は、リングギヤ53がワン
ウエイクラッチ(図示せず)を介して空転し中間ギヤ5
2には回転力が伝達されない。
【0031】上記のようにして本実施例にかかる小型滑
走艇の4サイクルエンジンが構成される。この4サイク
ルエンジンは、図2のように直立状態でエンジンルーム
8内に設置されるが、クランク軸25の位置がクランク
ケース13の底部13a付近と非常に低い。これは、ド
ライサンプ式の潤滑油システムを採用し、オイルパンを
無くしたことと、オイル溜め部27をクランクケース1
3の底部13aの片側に寄せたことによって、クランク
軸25を最大限に低い位置に下げられたからである。ま
た、オイルタンク15をエンジン10片側の、シリンダ
ブロック12からクランクケース13にかけて一体に形
成し、エンジン10の低い位置に設け、エンジン10を
挟んでオイルタンク15の反対側のかなり低い位置に下
げて排気マニホールド21および同集合部21Aを設け
たことで、エンジン10全体の重心が最大限に低くなる
とともに、デッドスペースがなくなった。また、エンジ
ン10本体の全体高さを低く抑えられたので、吸気ボッ
クス20などの吸気系機器をエンジン10本体の上方に
配置でき、また吸気マニホールド19を排気マニホール
ド21と反対側の空間を利用しJ字状に屈曲させて配置
したことで、ここでもデッドスペースをなくすることが
でき、略正方形の枠内に収まり、小型滑走艇1の狭いエ
ンジンルーム8内に収容できる。
【0032】以上に本発明の4サイクルエンジンの一例
を説明したが、下記のように実施することもできる。
【0033】 小型滑走艇用エンジンに限らず、自動
車のエンジンにも適用できる。
【0034】 エンジンのカムシャフト形式はSOH
Cでもよい。
【0035】 エンジンの気筒数は4気筒に限らず、
2気筒、6気筒などいずれの気筒でもよい。
【0036】
【発明の効果】以上の説明から明らかのように、本発明
のドライサンプ式4サイクルエンジンには、次のような
効果がある。
【0037】(1) 請求項1記載の発明では、ドライサ
ンプ方式のメリット、すなわちa)クランクシャフト等の
回転体が潤滑油面に接することによる出力低下や、潤滑
油のかきあげによるオイルミストの飛散を抑制でき、b)
オイルパンが不要であるためにエンジンの位置を下げる
ことができ、小型滑走艇に搭載する場合に船体の低重心
化を図れ、c)エンジンの高さ寸法を小さくでき、d)運転
時の際にも油面変化の影響を受けないため、ポンプのエ
ア噛み込み無しに適正な量の潤滑油をエンジンの各部に
圧送でき、e)掻き上げにともなう潤滑油の撹拌が無いの
で、油温上昇を抑制でき、f)傾斜時にも潤滑油タンク内
の潤滑油量はほとんど変化しない。
【0038】また、ドライサンプ方式をとったのに加え
て、クランクケース底部の片側に寄せて潤滑油溜まり部
を設けたので、クランク軸を最大限低い位置に下げるこ
とができるので、エンジンの全体高さをより一層低く抑
えられるとともに、エンジン本体の重心も一層低くでき
る。
【0039】さらに、潤滑油タンク(の基体部)をエン
ジン本体の壁と一体的に形成したので、コンパクトにな
って小型化および軽量化が図られ、また外部配管を設け
る必要がないため、構造を簡略化できる。
【0040】(2) 請求項2記載の発明では、潤滑油が
効率よく潤滑油溜まり部へ回収し、エンジン内の各部へ
供給できる。
【0041】(3) 請求項3記載の発明では、クランク
ケース底部上に落下する潤滑油だけでなく、カムシャフ
ト室内の潤滑部およびカムチェーン室内の潤滑部ならび
にシリンダヘッド内の潤滑部からの潤滑油も効率よく潤
滑油溜まり部へ収集できる。
【0042】(4) 請求項4記載の発明では、潤滑油
溜まり部に集められた潤滑油がエンジンの傾斜や振動等
の影響を受けても漏れ出しにくい。また、運転時にクラ
ンクケース底部の潤滑油受けに落下した潤滑油を、クラ
ンク軸の回転に伴って回転するバランスウエイトによっ
て掻き上げて、傾斜板の潤滑油取入れ口から潤滑油溜ま
り部内に送り込むことができる。
【0043】(5) 請求項5記載の発明では、エンジン
本体の最下位置からエンジン内の各所に潤滑油を供給す
るのに比べて供給力の圧損が少なく効率よくかつ十分に
供給できるとともに、エンジンの気筒数が増えても各所
に満遍なく潤滑油を供給できる。
【0044】(6) 請求項6記載の発明では、エンジン
内で温度の上昇した潤滑油を冷却してエンジン内に戻し
循環させることができ、またオイルクーラは直管状でエ
ンジン本体の軸方向に沿って取り付けているので、取付
スペースが小さくて済む。
【0045】(7) 請求項7記載の発明では、潤滑油タ
ンク内に侵入したブローバイガスおよび潤滑油内に噛み
込まれたエアを潤滑油中から分離し、吸気系を経由して
燃焼させることができる。
【0046】(8) 請求項8記載の発明では、小型滑走
艇がスポーツ性に富む乗り物であるうえ、スペース上の
都合から小さな内燃機関に大きな出力を発揮させる必要
もあることから、ドライサンプ式潤滑システムを採用し
ているため、コンパクトながら大きな出力を発揮しやす
い点や、船体の低重心化を可能にし得る点、転倒時に燃
焼室への潤滑油の流入を防いで再始動を容易にする点な
ど、小型滑走艇の特性に適した多くの利点をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかる四気筒4サイクルエン
ジンを搭載した小型滑走艇を示す側面図で、一部透視し
て示している。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図1の4サイクルエンジンを拡大して示す左側
面図である。
【図4】図3のB−B線拡大断面図である。
【図5】シリンダヘッドを取り外した状態のエンジン本
体を示す右側面図である。
【図6】図5のエンジン本体の平面図である。
【図7】図7は図3のC−C線拡大断面図である。
【図8】図8(a)はジェネレータカバーの背面図および
カートリッジフィルター(ストレーナ)装着部の斜視
図、図8(b)は同D−D線断面図、図8(c)は同E−E
線断面図である。
【符号の説明】
1 小型滑走艇 10 エンジン 11 シリンダヘッド 12 シリンダブロック 13 クランクケース 15 潤滑油タンク(オイルタンク) 25 クランク軸 27 潤滑油溜まり部(オイル溜まり部) 27a長溝 27b仕切り壁(リブ) 27c貫通孔 27d傾斜板 27e潤滑油取入れ口 28 横孔 29 連通孔 38 潤滑油通路(メインギャラリ) 40 オイルクーラ 41 ジェネレータカバー 41a 潤滑油通路 P1 スカベンジングポンプ P2 フィードポンプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F01M 11/06 F01M 11/06 Z F02B 67/00 F02B 67/00 N

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジン本体下部のクランクケース底部
    を潤滑油受けに構成するとともに、前記クランクケース
    底部の片側に沿って軸方向に平行に潤滑油溜まり部を設
    け、 前記エンジン本体の有する壁に一体的に形成されたタン
    ク基体部とこれに取り付けられるタンクカバーとから潤
    滑油タンクを形成し、前記潤滑油溜まり部は当該溜まり
    部に集まった潤滑油を前記潤滑油タンクへ移送するスカ
    ベンジングポンプに接続するとともに、前記潤滑油タン
    クは当該タンク内の潤滑油をエンジンの潤滑必要部に供
    給するフィードポンプに接続したことを特徴とするドラ
    イサンプ式4サイクルエンジン。
  2. 【請求項2】 前記潤滑油溜まり部を、前記クランクケ
    ース底部近傍を横切るように回転するクランク軸のバラ
    ンスウエイトの回転方向端部側に設けた請求項1記載の
    ドライサンプ式4サイクルエンジン。
  3. 【請求項3】 前記潤滑油溜まり部に、シリンダヘッド
    内に連通する潤滑油通路と、前記シリンダヘッド上のカ
    ムシャフト室にカムチェーン室を介して連通する潤滑油
    通路とをそれぞれ接続した請求項2記載のドライサンプ
    式4サイクルエンジン。
  4. 【請求項4】 前記潤滑油溜まり部は、長溝状で、クラ
    ンクケース底部の端部に軸方向に間隔をあけて設けられ
    たリブとそれらのリブをエンジンの軸方向と平行に貫通
    する貫通孔とを備え、前記潤滑油溜まり部を覆うように
    傾斜板を前記リブ間に跨がって取り付け、その傾斜板に
    は前記バランスウエイトで掻き上げる潤滑油の取入れ口
    を軸方向に間隔をあけて設けた請求項2記載のドライサ
    ンプ式4サイクルエンジン。
  5. 【請求項5】 エンジン本体のシリンダブロックとクラ
    ンクケースとの境目付近に軸方向と平行に潤滑油通路を
    設け、前記潤滑油タンク内の潤滑油を前記フィードポン
    プによって前記潤滑油通路に圧送したのち、エンジンの
    潤滑必要部に供給する請求項1〜4のいずれかに記載の
    ドライサンプ式4サイクルエンジン。
  6. 【請求項6】 前記エンジン本体の前記潤滑油通路近傍
    にこれと平行に直管状のオイルクーラを取り付け、前記
    潤滑油タンクからの潤滑油を前記オイルクーラを経由し
    て前記潤滑油通路に圧送する請求項5記載のドライサン
    プ式4サイクルエンジン。
  7. 【請求項7】 前記潤滑油タンクの上部から吸気系にブ
    リーザーパイプによって連通している請求項1〜6のい
    ずれかに記載のドライサンプ式4サイクルエンジン。
  8. 【請求項8】 前記エンジンを、小型滑走艇に搭載し推
    進手段を駆動するために使用する請求項1〜7のいずれ
    かに記載のドライサンプ式4サイクルエンジン。
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US6912987B2 (en) 2002-03-29 2005-07-05 Fuji Jukogyo Kabushiki Kaisha Drysump lubrication type engine
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