JP3124743B2 - ドライサンプ式エンジン - Google Patents

ドライサンプ式エンジン

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JP3124743B2
JP3124743B2 JP09242342A JP24234297A JP3124743B2 JP 3124743 B2 JP3124743 B2 JP 3124743B2 JP 09242342 A JP09242342 A JP 09242342A JP 24234297 A JP24234297 A JP 24234297A JP 3124743 B2 JP3124743 B2 JP 3124743B2
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裕一 河本
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Kawasaki Jukogyo KK
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ドライサンプ式の
エンジンに関するもので、とくに、大きく傾く可能性の
あるエンジンとして好適なものである。
【0002】
【従来の技術】小型滑走艇は、一人〜数人を乗せて水上
を滑走する小型の乗り物である。活発な動きをすること
が可能でスポーツ性が高く、主としてレジャーのために
使用される。そのような機能および使用目的から、推進
用のエンジンとしては、小型・軽量であることのほか、
船体が大きく(たとえば180°)傾いたときにも燃焼
室に潤滑油が流入しないことが求められる。
【0003】船体がどんなに傾いても燃焼室に潤滑油が
流入しないようにするには、混合気中に潤滑油を混ぜる
潤滑方式をとるか、または、いわゆるドライサンプ方式
の潤滑システムを採用するのがよい。前者の方式は2サ
イクルエンジンの場合に限って採用され得るが、後者の
場合にはそのような制限がないため、近年、小型滑走艇
にドライサンプ式のエンジンを搭載しようとする試みが
なされている。
【0004】ドライサンプ式エンジンとは、クランクケ
ースの底部(またはオイルパン)に潤滑油を溜めるので
はなく、クランクケース以外の空間である専用の潤滑油
タンク内に潤滑油を溜める方式のものである。エンジン
内の各部を潤滑したのちクランクケースの底部に集まる
潤滑油を、ポンプ(スカベンジングポンプ)で吸い出し
て当該潤滑油タンク内へ送り、さらにそのタンクからは
別のポンプ(フィードポンプ)によってエンジン内の各
部へ潤滑油を送る。クランクケースの底部には潤滑油を
溜めないので、船体がいかに傾いても燃焼室に潤滑油が
流入することはないのである。
【0005】小型滑走艇にドライサンプ式エンジンを搭
載することは、たとえば特開平7−237586号公報
や特開平7−237587号公報に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】潤滑油タンクには、温
度変化等による内部圧力の変動を極力低減するために、
ブリーザーが設けられるのが一般的である。とくに、小
型滑走艇に搭載されるなど動きの激しい状況で使用され
る潤滑油タンクについては、潤滑油をこぼさない目的で
タンク本体がほとんど密閉構造とされることから、ブリ
ーザーは不可欠である。
【0007】ブリーザーのうちには、潤滑油タンク内の
気体から油分を除去するためのブリーザー室を同タンク
に連通させて設け、パイプ等によってそのブリーザー室
をエンジンの吸気系に接続するのが普通である。上記の
気体をブリーザー室で減圧したり壁面等に衝突させたり
することによって油分を除去し(つまり、潤滑油の減少
を防ぐ目的で油気分離をし)、気体のみを吸気系に送る
のである。
【0008】そのようなブリーザーが潤滑油タンクに設
けられる以上、大きく傾いて停止したときのエンジンの
再始動特性を良くするためには、エンジンをドライサン
プ式にしてクランクケースから燃焼室への潤滑油の流入
をなくすだけでは足りない。タンク内の潤滑油がブリー
ザー室や上記のパイプ等を通って吸気系に流入すること
を防止しなければ、吸気系を経て結局は燃焼室内に潤滑
油が流入し、その後すぐにはエンジンの再始動ができな
くなるからである。このような課題は、小型滑走艇に搭
載されるエンジンのみに関するものではなく、油面変動
があるエンジンに一般的に共通する。
【0009】本発明の主な目的は、姿勢が大きく傾く可
能性のあるエンジンにおいてブリーザーの構成等にも工
夫を施すことにより、燃焼室への潤滑油の流入を防止
し、もって、傾いて停止した後のエンジンの再始動特性
を良好にすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載したドラ
イサンプ式エンジンは、クランクケース内の潤滑油をポ
ンプ(スカベンジングポンプ)で吸い出して専用の潤滑
油タンク内に溜めるドライサンプ式エンジンであって、
下記a)〜c)の特徴を有するものである。すなわち、 a) 同タンクの上方に、同タンクの室内(潤滑油を溜め
る空間内)に通じる第一のブリーザー室と、吸気系に通
じる第二のブリーザー室とを設けたうえ、 b) 潤滑油を同タンクへ戻す戻し通路を第二のブリーザ
ー室の底部に接続し、 c) 両ブリーザー室の間を、同タンクの底部に近いレベ
ル(厳密に言うなら、180°傾いたときの同タンク内
の潤滑油面よりも上方になるレベル)を経由する(した
がっていわばUターン型の経路をもつ)通路のみによっ
てつないだ。
【0011】請求項1のこのエンジンが正立姿勢で運転
される場合、つぎのような作用がある。すなわち、潤滑
油タンク内の気体(油分を含む)が、a)のように上方に
ある第一のブリーザー室に流入し、同室からc)の通路を
経て第二のブリーザー室へ至り、それらブリーザー室に
て油分を除去された気体分のみが吸気系に入る。各ブリ
ーザー室での油分の除去は、同室内の容積空間に気体を
流入・膨張させて圧力を急激に低下させたり、その気体
を壁面や仕切板に衝突させたりすることによって行われ
る。気体から分離された油分は、第二のブリーザー室か
らb)の戻し通路を経て潤滑油タンクに戻る(第一のブリ
ーザー室から潤滑油タンクに一部が戻ることもある)。
【0012】一方、姿勢が大きく(たとえば180°)
傾いた場合、このエンジンでは、エンジン本体と潤滑油
のポンプ(スカベンジングやフィードポンプ)を自動停
止させることにさえすれば、潤滑油が吸気系に入ること
がつぎの作用によって防止される。上記a)のように第一
のブリーザー室が潤滑油タンクと通じているため、ま
ず、その第一のブリーザー室内には同タンク内の潤滑油
が流入する。しかし、第一のブリーザー室は上記c)のと
おり、同タンクの底部付近を経由する通路のみによって
第二のブリーザー室につながっているため、傾いた状態
では潤滑油が第二のブリーザー室にまで流入することは
なく、したがって潤滑油が吸気系に至ることもない。正
立姿勢でタンクの底部に近いUターン部分のレベルは、
180°近く傾いた状態では油面よりも上方に位置して
いて潤滑油がそれを越えることはできないため、そのc)
の通路を経て第二のブリーザー室以降にまで潤滑油が達
することはないからである。なお、その後にエンジンを
正立状態に起こすと、起こす際にc)の通路内(Uターン
する最低部の付近)にわずかの潤滑油が残ることがある
が、そのような潤滑油は、エンジンの再始動後に第二の
ブリーザー室内に入ったうえその底面を流れてb)の戻し
通路に入り潤滑油タンク内へ戻るため、やはり吸気系に
流入することはない。
【0013】つまりこのエンジンでは、ブリーザー室な
どを通って潤滑油が吸気系に流入することが防止され
る。クランクケース内に潤滑油を溜めないドライサンプ
式のエンジンでもあることから、この請求項1のエンジ
ンでは、姿勢が大きく傾いた場合、エンジン本体ととも
にポンプを停止させてエンジン内への新たな潤滑油の供
給を停止させる限り、燃焼室内に潤滑油が流入すること
は防止され、したがって姿勢を復元したのちすぐにエン
ジンを再始動することが可能である。
【0014】請求項2のドライサンプ式エンジンは、上
記の潤滑油タンクを、エンジン本体と一体にその側方に
形成したことを特徴とする。「エンジン本体と一体に」
というのは、潤滑油タンクとしての空間をエンジン本体
に付けて離れぬように設けたことをいい、エンジン本体
と一体の部品のみで潤滑油タンクを形成することのみを
さすのではない。
【0015】このように構成したエンジンでは、まず、
エンジン本体と潤滑油タンクとをそれぞれ別に設置する
必要がないので、潤滑油タンクを含むエンジンの全体を
コンパクトに形成できるなど種々の利点がある。たとえ
ば、タンクを独立させて設置する必要がないため、固定
用の部材や接続配管類など必要部品の数が減少するほ
か、タンクの設置や固定ならびに配管接続等のための手
間が少ない分だけエンジン全体の組み立てが容易にな
る。固定用部材や接続配管を不要または少数にできるう
え、エンジンと潤滑油タンクとの間で壁面の一部を共有
できるため、全体を軽量化できることにもなる。エンジ
ン本体と潤滑油タンクやポンプ等との間の油路を短縮す
ることができるので、潤滑油の圧力損失を低減し、油圧
上昇レスポンスを高めることも可能である。
【0016】請求項3のドライサンプ式エンジンは、上
記の戻し通路をクランクケース内に開口させたことを特
徴とする。
【0017】前記b)のように第二のブリーザー室に接続
した戻し通路がこの請求項3のようにクランクケース内
に開口しておれば、ブリーザー室において気体から分離
された油分が当該戻し通路を通ってスムーズにクランク
ケース内に流れ込む。そうしてクランクケース内に入っ
た油分は、エンジン各部を潤滑した他の潤滑油とともに
クランクケースの底部に集まり、前記したポンプ(スカ
ベンジングポンプ)で吸い出されて潤滑油タンクへ送ら
れることになる。
【0018】戻し通路が、直接タンク内に潤滑油を戻す
のでなく上記の開口によって一旦クランクケース内に潤
滑油を戻すのは、その方が潤滑油の流れがスムーズだか
らであるが、その理由はつぎのとおりである。すなわ
ち、まずドライサンプ式のエンジンでは、クランクケー
ス内の潤滑油を上記のポンプが気体ごと吸い出してタン
ク内に送り込むのが普通であるため、一般にクランクケ
ース内は負圧になり潤滑油タンク内は正圧になる。前述
のようにタンクには別のポンプ(フィードポンプ)が接
続されており内部の潤滑油をエンジン各部へ送っている
が、そのポンプはタンクより気体までも吸い出すことは
ないため、タンク内は正圧になりがちなのである。した
がって、もし戻し通路を直接タンク内に開口させていれ
ば、タンク内の圧力が第二のブリーザー室内の圧力を上
回る結果、気体から分離された油分が逆にそのブリーザ
ー室内に押し戻される場合があり、潤滑油を安定的にタ
ンクへ戻すことが難しくなる。それに対し、戻し通路を
請求項3のとおりクランクケース内に開口させている
と、上記のように負圧になるクランクケース内へ、ブリ
ーザー室の底部から潤滑油がスムーズに引き出されるこ
とになる。
【0019】請求項4のドライサンプ式エンジンは、上
記の戻し通路の開口にパイプを接続し、そのパイプの先
端を、クランクケース内に設けられた潤滑油の溜まる凹
部(油溜まり)の内側に下向きに挿入したことを特徴と
する。クランクケース内の当該凹部は、たとえば、主軸
受の支持部として形成された厚肉のリブやその周辺に形
成することができる。
【0020】戻し通路に接続したパイプの先端をこのよ
うにクランクケース内の油溜まりに挿入しておくと、ク
ランクケースの内部に多少の圧力変動があっても潤滑油
がブリーザー室に戻されることがない。上記構成のもと
では、そのパイプを通って潤滑油がブリーザー室に逆流
するためには、油溜まり内の潤滑油(パイプの先端より
も上に溜まっているもの)が下からパイプ内に充満して
ブリーザーの高さ位置に達する必要があるからである。
つまり、第二のブリーザー室に対するクランクケース内
の圧力がそのパイプの高さ寸法に相当するヘッド(液
柱)以上の正圧にならない限り、潤滑油がブリーザー室
に戻ることがないのである。
【0021】請求項5のドライサンプ式エンジンは、小
型滑走艇に搭載したことを特徴とする。小型滑走艇に
は、その推進手段を駆動するために当該エンジンを搭載
するのが普通だが、他の物の駆動源として搭載するのも
よい。
【0022】以上のようなドライサンプ式エンジンは、
請求項1について述べたように、姿勢が大きく傾いた場
合にも燃焼室内に潤滑油が流入することがないため、姿
勢を元に戻したのちすぐに再始動することができる。し
たがって請求項1〜4のエンジンは、刈払機やバギー車
など姿勢の大きく傾く可能性のある機器・装置に使用す
るのに好適である。この請求項5のようにそのエンジン
を小型滑走艇に搭載した場合にも、船体が大きく傾いて
も不都合がなく好ましい。
【0023】小型滑走艇に搭載するこのエンジンは、そ
のほか、ドライサンプ式のものであるためにつぎのよう
な利点もある。すなわち、1)オイルパンが不要なのでエ
ンジンの位置を下げることができ、船体の低重心化を図
ることができる、2)エンジンの高さ寸法を小さくするこ
とができ、船体のコンパクト化が可能である、3)クラン
クシャフト等の回転体が潤滑油面に接することによる出
力低下や、潤滑油のかきあげによるオイルミストの飛散
を抑制できる、4)急加速、急減速、急旋回、波間走行等
の際にも油面変化の影響を受けないため、ポンプのエア
噛み込み無しに適正な量の潤滑油をエンジンの各部に圧
送することができる、5)かきあげにともなう潤滑油の撹
拌が無いので油温上昇を抑制できる−などである。こ
れらは、スペース的な制限があり、また低重心化をはか
る必要のある小型滑走艇のエンジンとしていずれも好ま
しい利点である。
【0024】
【発明の実施の形態】発明の実施についての一形態を図
1〜図6に紹介する。図1はドライサンプ式エンジン1
0のシリンダブロック12およびクランクケース13に
ついての側面図であって、タンクカバーを外してオイル
タンク(潤滑油タンク)40等の内部を示した図であ
る。図2は、図1におけるII−II断面図であってタンク
カバー42を付けて示した図、図3は、図1におけるII
I−III断面図であってやはりタンクカバー42を付けて
示した図である。図4は、図1と同じ向きから、タンク
カバー42を付けた状態でそのエンジン10の全体を示
す側面図である。図5は、図4におけるV−V断面(小
型滑走艇の後方から見たもの)によってそのエンジン1
0と吸・排気系の機器、および小型滑走艇の船底2など
とを示す横断面図。そして図6は、そのエンジン10を
搭載した小型滑走艇1につき、一部を透視して示した全
体側面図である。
【0025】図6に示す小型滑走艇1は海岸や湖岸の近
くの水上を滑走する乗り物であり、船底ハル2の上にデ
ッキ3やシート4、ハンドル5などを取り付けて一人〜
数人が搭乗できるようになっている。下部後方にある水
ジェットポンプのインペラ7にて加圧、噴出される水ジ
ェットにより推進され、水面上を滑走することができ
る。インペラ7はエンジン10により駆動されるが、そ
のエンジン10は、船体の長さ方向のほぼ中央のエンジ
ンルーム8内に搭載されている。エンジン10の出力は
弾性継手(図示せず)を介してインペラ軸9へ伝えら
れ、そのインペラ軸9がインペラ7を回転させる。
【0026】エンジン10は4気筒4サイクルのもので
あり、図5のようにシリンダヘッド11を上部に有し、
それより下にシリンダブロック12やクランクケース1
3、オイルタンク40等を備えている。潤滑油を、クラ
ンクケース13の底部にではなくオイルタンク40に溜
めるという、いわゆるドライサンプ式のエンジンであ
る。シリンダヘッド11の内部には吸気通路16と排気
通路17が形成されており、各通路16、17を開閉す
るバルブとともにそれらのための動弁機構18が組み込
まれている。吸気通路16の各上流側には吸気マニホー
ルド19が接続され、そのさらに上流には共通の吸気ボ
ックス20が接続されている。一方、排気通路17の下
流側には排気マニホールド21を介して排気管集合部2
1Aおよび水マフラ22(図6)が接続されている。ま
た、シリンダブロック12の内部には上下に摺動可能な
ようにピストン23が配置され、それらとシリンダヘッ
ド11にて囲まれた空間が燃焼室24となっている。ピ
ストン23はコンロッドを介してクランク軸25に連接
されており、そのクランク軸25は軸受(主軸受。図示
は省略)を介してクランクケース13内に支えられてい
る。
【0027】図5のように、クランクケース13の底部
13aはやや平坦に形成されてオイル受け(潤滑油受
け)となっている。クランク軸25の軸受など各部に供
給された潤滑油は、その底部13a上に落下する。底部
13aの一側方(オイルタンク40の側)にはオイル溜
まり部27が形成されている。オイル溜まり部27は、
クランク軸25の軸心と平行に連続していて、クランク
ウェブ25cと軸長方向位置が一致する部分(つまりク
ランク軸25のうち軸受の間の部分の外側)において上
向きにクランクケース13内に開口している。上端に傾
斜面を有するその開口には、斜め下向きに開いた潤滑油
取入れ口27bを有する薄板製のフタ27aが被せられ
ている。底部13aを横切るように図5上で反時計回り
に回転するクランク軸25のクランクウェブ25cが底
部13a付近の潤滑油を図中の右向きに掻き上げるのに
対し、その取入れ口27bが潤滑油を取り入れてオイル
溜まり部27内に流入させるのである。
【0028】また、クランクケース13の底部13aに
は、オイル溜まり部27と反対側にも連通孔29がエン
ジン10の軸方向に設けられている。この連通孔29
は、図5の動弁機構18におけるカムやその駆動軸など
を潤滑した潤滑油を上方から流し込む経路である。連通
孔29内の潤滑油は、数箇所に設けられた横孔28を通
って上記のオイル溜まり部27に集められる。なお、カ
ムチェーン側の潤滑については、オイル溜まり部27の
一端部が、エンジン10本体の一端部(船首側)に上下
方向にわたって設けられたカムチェーン室の下端部に連
通している(図示せず)。
【0029】オイル溜まり部27に入った潤滑油は、一
次ストレーナ(図示せず)を経由したうえスカベンジン
グポンプ(図示せず。図4におけるP1部分の内部にあ
る)によりオイルタンク40に送られる。オイルタンク
40内の潤滑油は、二次ストレーナ(図示せず)を通っ
たのちフィードポンプ(図示せず。図4のP2部分の内
部にある)によって圧送され、フィルターやオイルクー
ラ(いずれも図示せず)を経たうえ、図5に示すシリン
ダブロック12内のメインギャラリ38へ送られる。メ
インギャラリ38内の潤滑油は、噴射ノズル39を経て
ピストン頂部裏面に噴射され、またクランク軸25の軸
受や動弁機構18に圧送されるなどエンジン10内の各
部に供給される。こうしてエンジン10の潤滑に用いら
れた潤滑油は、各供給先からオイル溜まり部27に戻っ
てオイルタンク40に入り、再び各部に供給される。
【0030】このエンジン10のオイルタンク40は、
図4および図5のとおり、エンジン本体の側方(図5の
右方。小型滑走艇の進行方向の右方に相当する)に同本
体と一体的に形成されている。すなわち図5のように、
エンジン10のシリンダブロック12およびクランクケ
ース13と一体に、一側面が開口したタンク基体部41
が形成され、その外側の平坦な接合面41aに接合面4
2aを重ねてオイルタンクカバー42が被せられること
により、オイルタンク40としての閉空間が形成されて
いる。接合面41a・42aの間にはガスケット(図示
せず)が装着され、カバー42は基体部41に対してボ
ルト43により締結されている。オイルタンク40の内
部には、図1のように潤滑油面の変動(波立ち)を抑制
するための傾斜板44(一部に切欠き44aを有する)
が設けられており、通常はその傾斜板44の下端部付近
に油面が位置するように潤滑油が貯留されている。
【0031】オイルタンク40の上部には、図1に示す
ようにブリーザー50が一体的に形成されている。すな
わち、タンク基体部41のうちに形成された仕切り壁5
1と、タンクカバー42のうちに形成された仕切り壁5
2(タンクカバー42と仕切り壁52については図2ま
たは図3を参照。以下も同じ)とが、基体部41とカバ
ー42との接合と同時に接合されることによってブリー
ザー50を構成するようになっている。
【0032】一般にブリーザー50は、オイルタンク4
0内の空間と吸気系とを接続するものとして構成され、
密閉状態のタンク40において温度変化等にともなう内
部圧力の変動を防止することなどを目的とするものであ
る。このブリーザー50は、吸気系に送る気体中から潤
滑油分を十分に除去して潤滑油の目減りを防ぐととも
に、船体が大きく傾いた場合にブリーザー50を経ては
潤滑油を吸気系に流入させないように、下記a)〜c)のよ
うに構成されている。
【0033】a) 仕切り壁51・52によって、図1の
ように二つのブリーザー室54・56が形成されてお
り、第1ブリーザー室54が隙間53を介してオイルタ
ンク40の室内に通じている一方、第2ブリーザー室5
6はパイプ57を介して吸気系(図4の吸気ボックス2
0)に接続されている。図1において、両ブリーザー室
54・56を囲むタンク基体部41および仕切り壁51
上の接合面41aのうちにハッチングを施した箇所は、
タンクカバー42および仕切り壁52上の接合面42a
が密に接合されていて気体および潤滑油が横切ることの
ない部分であり、それ以外の箇所は、隙間があって気体
や潤滑油が仕切り壁51を横切る部分である。両ブリー
ザー室54・56は、図のように仕切り壁51・52
(接合面41a上のハッチングを付した部分)によって
区切られた容積空間であるが、とくに第2ブリーザー室
56は、仕切り壁51・52の壁面により迷路のように
入り組んだ空間に形成されている。第2ブリーザー室5
6は、図4のようにパイプ59によってシリンダヘッド
11の内部空間にも接続されている。パイプ59による
この接続は、前述したスカベンジングポンプの作用で負
圧になるエンジン10内の空間について、圧力が過剰に
低下しないようにするためである。
【0034】b) 図1のように第2ブリーザー室56の
端にある最低位置には、潤滑油をオイルタンク40へ戻
すための戻し通路58が設けられている。戻し通路58
は図3のように、第2ブリーザー室56に開口する水平
部分58aと、シリンダブロック12内を通ってクラン
クケース13内の空間に開口する鉛直部分58b、鉛直
部分58bの先に装着された継手58c、およびそれに
接続されたチューブ58dとからなる。水平部分58a
は接合面41aの側からの機械加工(ドリル)により形
成された穴であり、鉛直部分58bはシリンダブロック
12の下面の側から機械加工された穴である。そしてチ
ューブ58dの先端は、クランクケース13におけるク
ランク軸25の支持用リブ13mに形成された油溜まり
13nの内側に、下向きに挿入されている。戻し通路5
8の先が油溜まり13nの中に入れられているのは、ク
ランクケース13内に多少の圧力変動があっても当該通
路58を経て潤滑油が第2ブリーザー室56内へ逆戻り
しないようにされたものである。
【0035】c) 両ブリーザー室54・56の間は、図
1および図2のようにオイルタンク40の底部に近いレ
ベルを経由するUターン型の通路55のみによってつな
がっている。図2に示すとおりこの通路55は、第1・
第2の各ブリーザー室54・56にそれぞれ開口する水
平部分55a・55eと、シリンダブロック12および
クランクケース13を上下に通る鉛直部分55b・55
d、ならびに両鉛直部分55b・55dを底部付近でつ
なぐ水平部分55cとからなる。水平部分55a・55
e・55cはいずれも接合面41aの側からドリルにて
機械加工された穴であり、鉛直部分55b・55dはい
ずれも、シリンダブロック12の下面およびクランクケ
ース13の上面の側からドリルにて機械加工された穴で
ある。水平部分55cのうち接合面41a上の開口は、
タンクカバー42の壁(金属部分)にて塞がれている。
通路55の最低部であるその水平部分55cの高さは、
船体とともにエンジン10が180°傾いたとき同タン
ク内の潤滑油面よりも上方になるレベルになるよう設定
されている。また図1のように、第2ブリーザー室56
内での水平部分55eの開口と、パイプ57へ至る同室
56内の通孔とは、図1のように水平方向に位置をずら
せて設けられている。隙間53の位置も、通路55の二
つの開口から同様に離れた位置に設けられている。な
お、両ブリーザー室54・56は、以上に示した以外の
経路によっては外部の空間ともオイルタンク40内の空
間ともつながっておらず、相互間の連通もない。
【0036】このようなブリーザー50を有するエンジ
ン10には、つぎのような作用がある。まず、通常の運
転状態では、図1に示すオイルタンク40内の気体(オ
イルミストを含む)が、エンジンのブリージング作用に
より隙間53を通って第1ブリーザー室54に流入し、
同室54から通路55を経て第2ブリーザー室56へ至
り、それらブリーザー室54・56にて油分を除去され
た気体分のみがパイプ57等を経て吸気系などに送られ
る。各ブリーザー室54・56での油分の除去は、容積
空間である各室内に気体が流入し膨張したときの気体の
圧力変化や、仕切り壁51・52への気体の衝突等によ
って行われる。とくに第2ブリーザー室56には迷路の
ように入り組んだ状態に仕切り壁51・52が形成され
ているので、それらへの気体の衝突は頻繁である。そう
して気体から分離された油分は、第2ブリーザー室56
から戻し通路58を経て、図3に示すクランクケース1
3内の油溜まり13nに入る。油溜まり13nに入った
潤滑油は、そこから溢れて前述のオイル溜まり部27に
流入し、スカベンジングポンプで吸い出されてオイルタ
ンク40内へ戻される。
【0037】一方、小型滑走艇1(図6)とともに姿勢
が180°程度傾いた場合、このエンジン10では、図
1のUターン型通路55の作用によって吸気系への潤滑
油の流入が防止される。そのように傾いた場合、オイル
タンク40内の潤滑油が隙間53を経て第1ブリーザー
室54に流入するが、同室54は、そのように大きく傾
いた状態では油面よりも上方にUターン部分を有する当
該通路55のみによって第2ブリーザー室56につなが
っているため、その状態では潤滑油が第2ブリーザー室
56や吸気系にまで流入することはないのである。エン
ジン10は、ドライサンプ式のものであってクランクケ
ース13内には潤滑油を溜めていないという特徴もある
ため、90°近く傾いた時点でスカベンジングやフィー
ドポンプを含めてエンジン10を自動停止させるようス
イッチ類を装備しておけば、図5の燃焼室24内に潤滑
油が流入することは防止される。したがって、図6の小
型滑走艇1が姿勢を復元したのちは、すぐにエンジン1
0を再始動することが可能である。姿勢復元の際に図2
の通路55内にわずかの潤滑油が残る可能性があるが、
そのような潤滑油は、エンジン10の再始動後に第2ブ
リーザー室56内を通り、図3の戻し通路58を経てオ
イルタンク40内へ戻るため、やはり吸気系に流入する
ことはない。
【0038】このエンジン10は、図5のように正立状
態でエンジンルーム8内に設置されるが、ドライサンプ
式であってオイルパンがなく、またオイル溜め部27が
クランクケース13の底部13aの片側に寄せてあるた
めに、クランク軸25がクランクケース23内の低い位
置に設けられている。また、オイルタンク40がエンジ
ン10の本体と一体に、その片側の低い位置に形成され
るとともに、排気マニホールド21がオイルタンク40
とは反対側の低位置に設けられている。これらの点によ
り、エンジン10においては全体の重心が極めて低くな
っている。エンジン10の高さが低く抑えられたため
に、エンジン6本体の上方に吸気ボックス20などの吸
気系機器が配置されるなど、必要な機器が小型滑走艇1
の狭いエンジンルーム8内にコンパクトに収容されるこ
とにもなった。
【0039】
【発明の効果】請求項1に記載したドライサンプ式エン
ジンは、姿勢が大きく(180°程度に)傾いた場合に
も燃焼室内に潤滑油が流入することがないため、姿勢を
復元したのちすぐにエンジンを再始動することが可能で
ある。
【0040】請求項2のエンジンは、エンジン本体と潤
滑油タンクとをそれぞれ別に設置する必要がないので、
エンジンの全体をコンパクトに形成できるほか、必要部
品の数が減少する、組み立てが容易になる、軽量化でき
る、潤滑油の圧力損失を低下できる等のメリットがあ
る。
【0041】請求項3のエンジンは、ブリーザー室にお
いて気体から分離された油分が当該戻し通路を通ってス
ムーズにクランクケース内に流れ込み、潤滑油タンクへ
送られる。戻し通路がこのように一旦クランクケース内
に潤滑油を戻すことから、潤滑油の流れがスムーズであ
る。
【0042】請求項4のエンジンは、クランクケースの
内部に多少の圧力変動があっても潤滑油がブリーザー室
に戻されることがないので、潤滑油の流れはさらにスム
ーズである。
【0043】請求項5のエンジンは、小型滑走艇の活発
な航走を可能にするうえ、同滑走艇の低重心化・コンパ
クト化等を実現してその航走性能の向上を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施についての一形態を示す図で、ドラ
イサンプ式エンジン10のシリンダブロック12および
クランクケース13についての側面図である。ただし、
タンクカバーを外した状態でオイルタンク40の内部を
示している。
【図2】図1におけるII−II断面図であって、タンクカ
バー42を付けた状態の図である。
【図3】図1におけるIII−III断面図であって、やはり
タンクカバー42を付けた状態の図である。
【図4】図1と同じ向きから、タンクカバー42を付け
た状態でそのエンジン10の全体を示す側面図である。
【図5】図4におけるV−V断面(小型滑走艇の後方か
ら見たもの)によってそのエンジン10と吸・排気系の
機器、および小型滑走艇の船底2などとを示す横断面図
である。
【図6】エンジン10を搭載した小型滑走艇1につき、
一部を透視して示した全体側面図である。
【符号の説明】
1 小型滑走艇 10 エンジン 13 クランクケース 40 オイルタンク(潤滑油タンク) 50 ブリーザー 54 第1ブリーザー室 55 (Uターン型の)通路 56 第2ブリーザー室 57 パイプ 58 戻し通路

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クランクケース内の潤滑油をポンプで吸
    い出して専用の潤滑油タンク内に溜めるドライサンプ式
    エンジンであって、 同タンクの上方に、同タンクの室内に通じる第一のブリ
    ーザー室と吸気系に通じる第二のブリーザー室とを備
    え、潤滑油を同タンクへ戻す戻し通路が第二のブリーザ
    ー室の底部に接続されているほか、両ブリーザー室間
    が、同タンクの底部に近いレベルを経由する通路のみに
    よってつながっていることを特徴とするドライサンプ式
    エンジン。
  2. 【請求項2】 上記の潤滑油タンクが、エンジン本体と
    一体にその側方に形成されていることを特徴とする請求
    項1に記載のドライサンプ式エンジン。
  3. 【請求項3】 上記の戻し通路がクランクケース内に開
    口していることを特徴とする請求項1または2に記載の
    ドライサンプ式エンジン。
  4. 【請求項4】 上記の戻し通路の開口にパイプが接続さ
    れ、そのパイプの先端が、クランクケース内に設けられ
    た潤滑油の溜まる凹部の内側に下向きに挿入されている
    ことを特徴とする請求項3に記載のドライサンプ式エン
    ジン。
  5. 【請求項5】 小型滑走艇に搭載されていることを特徴
    とする請求項1〜4のいずれかに記載のドライサンプ式
    エンジン。
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