JPH1180036A - 不斉相間移動触媒を用いる光学活性化合物の製造方法 - Google Patents

不斉相間移動触媒を用いる光学活性化合物の製造方法

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JPH1180036A
JPH1180036A JP9240093A JP24009397A JPH1180036A JP H1180036 A JPH1180036 A JP H1180036A JP 9240093 A JP9240093 A JP 9240093A JP 24009397 A JP24009397 A JP 24009397A JP H1180036 A JPH1180036 A JP H1180036A
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JP
Japan
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aryl
optically active
cycloalkyl
aralkyl
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JP9240093A
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Hide Arai
秀 荒井
Takayuki Shioiri
孝之 塩入
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Nagase and Co Ltd
Original Assignee
Nagase and Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 調製が容易な不斉相間移動触媒を用いて、光
学活性化合物を製造するための方法を提供すること。 【解決手段】 本発明は、不斉相間移動触媒として、以
下のシンコニニウム塩(I): 【化1】 の触媒量の存在下、過酸化水素を酸化剤として用い、水
酸化アルカリ金属塩を含む水相と有機相との不均一混合
溶媒系で、α,β−不飽和ケトンを不斉エポキシ化し、
光学活性α,β−エポキシケトンを得る工程を包含す
る、光学活性カルボニル化合物の製造方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、天然アルカロイド
の誘導体である不斉相間移動触媒を用いた光学活性化合
物の製造方法、特に光学活性カルボニル化合物の製造方
法に関する。より詳細には、本発明は、不斉相間移動触
媒として、天然アルカロイドのシンコニンの橋頭位の窒
素原子を修飾して得られる4級アンモニウム塩(シンコ
ニニウム塩)を用いて、各種の光学活性化合物、例え
ば、光学活性α,β−エポキシケトン、光学活性α−ク
ロロ−β−ヒドロキシケトン、および光学活性α,β−
不飽和エステルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光学活性化合物は、その分子内に不斉中
心(例えば、結合している原子または原子団が四つとも
異なる炭素原子)を有し、そして不斉中心に関して鏡像
関係にある異性体(光学異性体)が存在する。鏡像関係
にある1対の光学異性体は、分光学的性質が異なるだけ
でなく、毒性または薬理活性などの生物学的活性も異な
る場合がある。従って、光学活性化合物は、例えば、液
晶などの機能性分子、または医薬品または農薬などの生
理活性物質の原料または合成中間体として重要である。
そのため、所望の光学活性化合物(すなわち、光学異性
体の一方)を、光学活性でない物質から、効率よく直接
得ることが求められている。
【0003】光学活性化合物は、光学活性な化合物を出
発原料とすれば、一方の光学異性体を優先的に合成する
ことができる。光学活性化合物は、反応を不斉環境下で
行う不斉合成反応によっても合成され得る。不斉合成反
応の一形態として、光学活性な触媒を用いるものが挙げ
られる。不斉合成反応に用いられる光学活性触媒(不斉
反応触媒)は、例えば、反応中間体と立体的な相互作用
することによって一方の光学異性体への変換を容易にす
る。
【0004】所望の光学活性体を得るための不斉合成反
応の研究において、種々の有機金属錯体が開発され、そ
して利用されている。しかし、このような不斉有機金属
錯体を用いる反応の多くは、高い化学収率および不斉収
率を達成するために、均一反応系において、高温、高圧
など過酷な反応条件を必要とする。また、このような有
機金属錯体触媒は、一般に埋蔵量の少ない高価な貴金属
を使用するために高価である。
【0005】光学活性な有機金属錯体触媒を調製する代
わりに、天然に存在している光学活性化合物をそのま
ま、あるいは修飾して、触媒として不斉合成反応に用い
ることが考えられる。自然界には、種々の光学活性化合
物(例えば、植物塩基であるアルカロイド)が存在して
いる。そのような天然物およびその誘導体を用いた不斉
合成反応としては、以下のものが知られている。
【0006】J.C. Hummelanらは、光学活性なエポキシ
化合物の合成における使用を報告している(J.C. Humme
lenら、Tetrahedron Lett. 1089-1092, 1978)。
【0007】M.J. O'Donnellらは、不斉アルキル化反応
を用いるα−アミノ酸誘導体の合成における使用を報告
している(M.J. O'Donnellら、J. Am. Chem. Soc., 11
1, 2353-2357, 1989)。
【0008】C.M. GasparskiおよびM.J. Millerは、不
斉アルドール縮合反応を用いるβ-ヒドロキシ-α-アミ
ノ酸の合成における使用を報告している(C.M. Gaspars
kiおよびM.J. Miller, Tetrahedron, 47(29), 5367-537
8, 1991)。
【0009】しかし、これらの反応で得られる光学活性
化合物の化学収率および光学純度は、必ずしも満足でき
るものではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来
の課題を解決するものであり、その目的とするところ
は、容易に入手し得る光学活性化合物を触媒として、穏
和な条件下で、簡便な反応により光学活性カルボニル化
合物を効率よく合成する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の光学活性カルボ
ニル化合物の製造方法は、1つの実施態様において、以
下のシンコニニウム塩(I):
【0012】
【化9】
【0013】の触媒量の存在下、過酸化水素を酸化剤と
して用い、水酸化アルカリ金属塩を含む水相と有機相と
の不均一混合溶媒系で、α,β−不飽和ケトン(II)の
不斉エポキシ化反応を行う工程を包含する:
【0014】
【化10】
【0015】ここで、R1は、直鎖状または分岐状アル
キル、シクロアルキル置換の直鎖状または分岐状アルキ
ル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラル
キル、置換アラルキル、アルケニル、あるいは置換アル
ケニルであり;R2は、アリールまたは置換アリールで
あり;該置換アリール、置換アラルキル、および置換ア
ルケニル上の置換基は、ハロゲン、低級アルキル、アリ
ール、低級アルコキシ、またはニトロである。
【0016】他の実施態様において、本発明の光学活性
カルボニル化合物の製造方法は、以下のシンコニニウム
塩(I):
【0017】
【化11】
【0018】の触媒量の存在下、水酸化アルカリ金属塩
と有機相との不均一反応系で、アルデヒド(IV)とクロ
ロケトン(V)との間で不斉ダルツェンス反応を行う工
程を包含する:
【0019】
【化12】
【0020】ここで、R3は、直鎖状または分岐状アル
キル、シクロアルキル置換の直鎖状または分岐状アルキ
ル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラル
キル、置換アラルキル、アルケニル、あるいは置換アル
ケニルであり;R4は、アリール、または置換アリール
であり;該置換アリール、置換アラルキル、および置換
アルケニル上の置換基は、ハロゲン、低級アルキル、ア
リール、低級アルコキシ、またはニトロである。
【0021】さらに、他の実施態様において、本発明の
光学活性カルボニル化合物の製造方法は、以下のシンコ
ニニウム塩(I):
【0022】
【化13】
【0023】の触媒量の存在下、水酸化アルカリ金属塩
と有機相との不均一反応系で、アルデヒド(VII)とク
ロロケトン(VIII)との間で不斉アルドール反応を行う
工程を包含する:
【0024】
【化14】
【0025】ここで、R5は、直鎖状もしくは分岐状ア
ルキル、シクロアルキル置換の直鎖状または分岐状アル
キル、あるいはシクロアルキルであり;R6およびR
7は、直鎖状もしくは分岐状アルキル、シクロアルキル
置換の直鎖状もしくは分岐状アルキル、シクロアルキ
ル、アリール、置換アリール、アラルキル、または置換
アラルキルであるか、あるいはR6およびR7のアルキル
およびアラルキルまたは置換アラルキルは互いに環を形
成し;該置換アリールおよび置換アラルキル上の置換基
は、ハロゲン、低級アルキル、アリール、低級アルコキ
シ、またはニトロである。
【0026】さらに、他の実施態様において、本発明の
光学活性カルボニル化合物の製造方法は、以下のシンコ
ニニウム塩(I):
【0027】
【化15】
【0028】の触媒量の存在下、水酸化アルカリ金属塩
との不均一反応系で、プロキラルなケトン(X)とホス
ホノアセタート(XI)とを縮合させる不斉ホーナー・エ
モンズ反応を行う工程を包含する:
【0029】
【化16】
【0030】ここで、R8は、直鎖状または分岐状アル
キル、シクロアルキル置換の直鎖状または分岐状アルキ
ル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヒドロ
キシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アリールスルホニ
ルオキシ、あるいは置換アリールスルホニルオキシであ
り;R9およびR10は、低級アルキルまたは置換低級ア
ルキルであり;該置換アリール、置換アルコキシ、置換
アリールスルホニルオキシ、および置換低級アルキル上
の置換基は、ハロゲン、低級アルキル、アリール、低級
アルコキシ、またはニトロであり;nは1から4の整数
を表わす。
【0031】本発明の方法において使用される水酸化ア
ルカリ金属塩は、好ましくは、水酸化リチウム、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、およ
び水酸化セシウムからなる群より選択される。
【0032】本発明の方法において使用される有機相
は、好ましくは、ジブチルエーテル、ヘキサン、ベンゼ
ン、クロロホルム、および塩化メチレンからなる群から
選択される有機溶媒で形成される。
【0033】
【発明の実施の形態】本明細書中で使用する「相間移動
触媒」は、水相と有機相との両方の相に可溶な触媒であ
る。
【0034】本明細書中で使用する「有機相」は、本発
明の方法が実施される反応条件下で水相と均一相を形成
しない有機溶媒の相をいう。
【0035】本明細書中で使用する「光学活性」は、特
定の波長の光(例えば、ナトリウムD線として知られて
いる589nm)に対する旋光能を有することをいう。光学
活性化合物は、それらが互いに鏡像関係にある光学異性
体が存在する。光学活性物質は、その分子内に少なくと
も1個の不斉炭素原子(すなわち、結合している原子ま
たは原子団の空間配置が異なる)が存在する。あるい
は、不斉炭素原子が存在しない場合、多重結合(例え
ば、二重結合)および/または環構造により原子または
原子団の空間配置が固定されることによって、化合物は
光学活性になり得る。
【0036】光学活性化合物は、光学純度またはエナン
チオマー過剰率(%ee)により評価される。光学純度
は、十分に精製された一方の光学異性体の旋光度と、得
られた化合物の旋光度との比として表される。エナンチ
オマー過剰率は、光学異性体の存在量(または生成量)
の差として、
【0037】
【数1】
【0038】で表される。光学異性体の等量混合物が得
られる場合、その光学純度は0%であり、エナンチオマ
ー過剰率は0%eeである。
【0039】本発明の方法において使用される不斉相間
移動触媒としては、以下の式で示されるシンコニニウム
塩(I)が挙げられる。
【0040】
【化17】
【0041】このシンコニニウム塩は、天然アルカロイ
ドとして安価に入手可能な光学活性なシンコニン(キナ
アルカロイドの1つ)に由来する4級アンモニウム塩で
ある。本発明において使用されるシンコニニウム塩
(I)は、シンコニンの橋頭位の窒素に、置換基を有し
得るベンジルを結合させることによって得られる。この
置換基としては、ハロゲン(フルオロ、クロロ、ブロ
モ、ヨード)、アルキル(例えば、メチル、エチル、ま
たはプロピル)、ハロゲン化アルキル(例えば、トリフ
ルオロメチル、トリフルオロエチル)、アルコキシ(例
えば、メトキシ、エトキシ、またはプロポキシ)、ニト
ロ、シアノ、ヒドロキシルなどが挙げられる。好ましく
は、ハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、あるい
はアルコキシである。さらに好ましくは、ブロモ、ヨー
ド、トリフルオロメチル、またはメトキシである。これ
らの置換基の位置は、どの位置でも可能であるが、特に
好ましいは、例えば、フェニル基の4位の位置である。
【0042】本発明において使用されるシンコニニウム
塩は、例えば、シンコニンと置換基基を有し得るベンジ
ルハロゲン化物を適切な溶媒(例えば、テトラヒドロフ
ラン)中で、還流下で反応させることによって得ること
ができる。例えば、ベンジルハロゲン化物として4-ヨ
ードベンジルブロミドを用いることよって、本発明の方
法において使用されるシンコニニウム塩の1つであるN-
(4-ヨードベンジル)シンコニニウムブロミドが得られ
る。必要であれば、さらに、適切な溶媒系(例えば、メ
タノール/アセトン混合系)からの再結晶によって精製
することができる。種々の置換基を有するベンジルハロ
ゲン化物を用いて、同様の反応を行うことによって、対
応するシンコニニウム塩が得られる。
【0043】シンコニンの異性体であるシンコニジンも
また、同様の処理によって4級アンモニウム塩に変換す
ることができる。この4級アンモニウム塩も、シンコニ
ニウム塩と同様に、不斉相間移動触媒として、本発明の
光学活性カルボニル化合物の製造方法において使用する
ことができる。
【0044】本発明の方法において、出発物質として用
いられる化合物は、プロキラルなカルボニル化合物であ
る。本発明の方法においては、この光学不活性なカルボ
ニル化合物を、上記のシンコニニウム塩の存在下で、反
応させることにより光学活性なカルボニル化合物が得ら
れる。このような反応として、光学不活性なα,β−不
飽和ケトンの不斉エポキシ化反応、光学不活性なクロロ
ケトンとアルデヒドとの不斉ダルツェンス反応、光学不
活性なクロロケトンとアルデヒドとの不斉アルドール反
応、および環状ケトンとホスホノアセタートとの不斉ホ
ーナー・エモンズ反応が挙げられる。不斉エポキシ化反
応および不斉ダルツェンス反応によって光学活性α,β
−エポキシケトンが得られ、不斉アルドール反応によっ
て光学活性α−クロロ−β−ヒドロキシケトンが得ら
れ、そして不斉ホーナー・エモンズ反応によって光学活
性なα,β−不飽和エステルが得られる。
【0045】以下に、本発明の方法に包含される上記の
それぞれの反応について説明する。
【0046】本発明の第1の方法による光学不活性な
α,β−不飽和ケトン(II)の不斉エポキシ化反応は次
式により示される:
【0047】
【化18】
【0048】ここで、R1は、炭素数1〜20を有す
る、直鎖状または分岐状アルキル、シクロアルキル置換
の直鎖状または分岐状アルキル、シクロアルキル、アリ
ール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、ア
ルケニル、あるいは置換アルケニルであり;R2は、炭
素数4〜20を有する、アリールまたは置換アリールで
ある。R1およびR2のアリール、アラルキル、およびア
ルケニル上の置換基としては、例えば、炭素数1〜5を
有する低級アルキル、炭素数5〜6を有するアリール、
炭素数1〜5を有する低級アルコキシ、ハロゲン、また
はニトロ、あるいはこれらの組み合わせである。
【0049】好ましいα,β−不飽和ケトン(II)とし
ては、3-メチルカルコンが挙げられる。
【0050】上記の不斉エポキシ化反応は、上記のシン
コニニウム塩(I)の存在下、水相と有機相との不均一
溶媒系で行われる。水相には、酸化剤としての過酸化水
素および水酸化アルカリ金属塩が含まれる。有機相に
は、α,β−不飽和ケトン(II)が含まれる。
【0051】上記の不斉エポキシ化反応において使用さ
れるシンコニニウム塩は、α,β−不飽和ケトン1モル
に対して、0.01〜0.25モル、好ましくは0.02〜0.10モル
の範囲で使用され得る。
【0052】上記の不斉エポキシ化反応において使用さ
れる水酸化アルカリ金属塩は、好ましくは、水酸化リチ
ウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビ
ジウム、および水酸化セシウムからなる群より選択され
る。より好ましくは、水酸化リチウムが使用される。そ
の使用量は、α,β−不飽和ケトン1モルに対して、1
〜10モル、好ましくは2〜5モルの範囲であり得る。
【0053】上記の不斉エポキシ化反応において使用さ
れる酸化剤である過酸化水素は、通常、過酸化水素水と
して用いられる。その使用量は、α,β−不飽和ケトン
1モルに対して、1.5〜20モル、好ましくは2〜10
モルの範囲であり得る。
【0054】上記の不斉エポキシ化反応において用いら
れる有機溶媒としては、反応条件下で水相と混和しない
任意の有機溶媒を用いることができる。このような有機
溶媒として、例えば、脂肪族または芳香族炭化水素、ハ
ロゲン化炭化水素、あるいは脂肪族エーテルが用いられ
る。脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキ
サン、ヘプタン、およびオクタンが挙げられる。芳香族
炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、およ
びキシレンが挙げられる。ハロゲン化炭化水素として
は、例えば、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレ
ン、塩化エチル、ジクロロエタン、およびクロロベンゼ
ンが挙げられる。脂肪族エーテルとしては、ジエチルエ
ーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチ
ルプロピルエーテル、エチルブチルエーテルが挙げられ
る。これらは、単独で使用してもよく、あるいは混合し
て使用してもよい。好ましい有機溶媒としては、例え
ば、ジブチルエーテル、ヘキサン、ベンゼン、クロロホ
ルム、または塩化メチレンが使用され得る。さらに好ま
しくは、ジブチルエーテルが用いられ得る。上記有機溶
媒は、反応時に水相が存在するような量である限り、任
意の割合で使用され得る。好ましくは、有機溶媒は、反
応系において、水相:有機相が、容量比で、1:1〜
1:10、好ましくは1:1〜1:5の割合となるよう
に用いられ得る。
【0055】上記の不斉エポキシ化反応は、不均一混合
溶媒系が維持され、かつ使用される試薬が安定である限
り、任意の温度で行うことができる。好ましくは、−2
0℃〜50℃、さらに好ましくはー10℃〜25℃の範
囲、例示的には4℃であり得る。反応時間は、代表的に
は、0.5〜120時間までの時間、好ましくは1〜72時間
までの時間であり得る。
【0056】しかし、反応収率および光学純度は、使用
する基質およびその濃度、反応温度などの反応条件に依
存するため、上記にとらわれる必要はない。
【0057】本発明の第2の方法によるアルデヒド(I
V)とクロロケトン(V)との不斉ダルツェンス反応は次
式により示される:
【0058】
【化19】
【0059】ここで、R3は、炭素数2〜20を有す
る、直鎖状または分岐状アルキル、シクロアルキル置換
の直鎖状または分岐状アルキル、シクロアルキル、アリ
ール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、ア
ルケニル、あるいは置換アルケニルであり;R4は、炭
素数5〜20を有する、アリール、または置換アリール
である。R3およびR4の置換アリール、置換アラルキ
ル、および置換アルケニル上の置換基は、ハロゲン、炭
素数1〜5を有する低級アルキル、炭素数1〜5を有す
るアリール、炭素数1〜5を有する低級アルコキシ、ま
たはニトロである。
【0060】好ましくは、アルデヒド(IV)として、イ
ソブチルアルデヒドが挙げられ、クロロケトン(V)と
して、フェナシルクロリドが挙げられる。
【0061】上記の不斉ダルツェンス反応は、上記のシ
ンコニニウム塩(I)の存在下、固相と有機相との不均
一系で行われる。固相は水酸化アルカリ金属塩であり、
有機相にはアルデヒド(IV)とクロロケトン(V)が含
まれる。
【0062】上記の不斉ダルツェンス反応において使用
されるシンコニニウム塩は、クロロケトン1モルに対し
て、0.02〜0.5モル、好ましくは0.05〜0.2モルの範囲で
使用され得る。
【0063】上記の不斉ダルツェンス反応において使用
される水酸化アルカリ金属塩は、好ましくは、水酸化リ
チウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ル
ビジウム、および水酸化セシウムからなる群より選択さ
れる。より好ましくは、水酸化リチウムが使用される。
その使用量は、クロロケトン1モルに対して、0.02〜0.
5モル、好ましくは0.05〜0.2モルの範囲であり得る。
【0064】上記の不斉ダルツェンス反応において、ア
ルデヒドは、クロロケトン1モルに対して、1.0〜3.0モ
ル、好ましくは1.2〜2.5モルの範囲で用いることができ
る。
【0065】上記の不斉ダルツェンス反応において用い
られる有機溶媒は、上記の第1の反応に用いたものと同
様である。その使用量は、クロロケトンに対して、5〜
200(v/w)の比率で用いられる。
【0066】上記の不斉ダルツェンス反応は、不均一系
が維持され、かつ使用される試薬が安定である限り、任
意の温度で行うことができる。好ましくは、−20℃〜
50℃、さらに好ましくは−10℃〜25℃の範囲、例
示的には4℃であり得る。反応時間は、代表的には、
0.5〜120時間までの時間、好ましくは1〜84時間
までの時間であり得る。
【0067】しかし、反応収率および光学純度は、使用
する基質およびその濃度、反応温度などの反応条件に依
存するため、上記にとらわれる必要はない。
【0068】本発明の第3の方法によるアルデヒド(VI
I)とクロロケトン(VIII)との不斉アルドール反応は
次式により示される:
【0069】
【化20】
【0070】ここで、R5は、炭素数2〜20を有す
る、直鎖状もしくは分岐状アルキル、シクロアルキル置
換の直鎖状または分岐状アルキル、あるいはシクロアル
キルであり;R6およびR7は、炭素数2〜20を有す
る、直鎖状もしくは分岐状アルキル、シクロアルキル置
換の直鎖状もしくは分岐状アルキル、シクロアルキル、
アリール、置換アリール、アラルキル、または置換アラ
ルキルであるか、あるいはR6およびR7のアルキルおよ
びアラルキルまたは置換アラルキルは互いに環を形成
し;該置換アリールおよび置換アラルキル上の置換基
は、ハロゲン、炭素数1〜5を有する低級アルキル、炭
素数1〜5を有するアリール、炭素数1〜5を有する低
級アルコキシ、またはニトロである。
【0071】好ましくは、アルデヒド(VII)として、
イソブチルアルデヒドが挙げられ、クロロケトン(VII
I)として、2-クロロ-1-テトラロンが挙げられる。
【0072】上記の不斉アルドール反応は、上記のシン
コニニウム塩(I)の存在下、固相と有機相との不均一
系で行われる。固相は水酸化アルカリ金属塩であり、有
機相にはアルデヒド(VII)とクロロケトン(VIII)が
含まれる。
【0073】上記の不斉アルドール反応において使用さ
れるシンコニニウム塩は、クロロケトン1モルに対し
て、0.01〜0.5モル、好ましくは0.05〜0.2モルの範囲で
使用され得る。
【0074】上記の不斉アルドール反応において使用さ
れる水酸化アルカリ金属塩は、好ましくは、水酸化リチ
ウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビ
ジウム、および水酸化セシウムからなる群より選択され
る。より好ましくは、水酸化リチウムが使用される。そ
の使用量は、クロロケトン1モルに対して、0.02〜0.5
モル、好ましくは0.05〜0.25モルの範囲であり得る。
【0075】上記の不斉アルドール反応において、アル
デヒドは、クロロケトン1モルに対して、1.5〜5モ
ル、好ましくは1.5〜2.5モルの範囲で用いることができ
る。
【0076】上記の不斉アルドール反応において用いら
れる有機溶媒は、上記の第1の方法で用いたものと同様
である。好ましくは、ヘキサンが用いられ得る。有機溶
媒量は、クロロケトンに対して、5〜100(v/w)の
比率で用いられる。
【0077】上記の不斉アルドール反応は、不均一系が
維持され、かつ使用される試薬が安定である限り、任意
の温度で行うことができる。好ましくは、−10℃〜5
0℃、さらに好ましくは−5℃〜30℃の範囲、例示的
には室温であり得る。反応時間は、代表的には、0.5〜
84時間までの時間、好ましくは1〜72時間までの時
間であり得る。
【0078】しかし、反応収率および光学純度は、使用
する基質およびその濃度、反応温度などの反応条件に依
存するため、上記にとらわれる必要はない。
【0079】本発明の第4の方法によるプロキラルなケ
トン(X)とホスホノアセタート(XI)との不斉ホーナ
ー・エモンズ反応は次式により示される:
【0080】
【化21】
【0081】ここで、R8は、炭素数1〜20を有す
る、直鎖状または分岐状アルキル、シクロアルキル置換
の直鎖状または分岐状アルキル、シクロアルキル、アリ
ール、置換アリール、ヒドロキシ、アルコキシ、置換ア
ルコキシ、アリールスルホニルオキシ、あるいは置換ア
リールスルホニルオキシであり;R9およびR10は、炭
素数1〜5を有する、低級アルキルまたは置換低級アル
キルであり;該置換アリール、置換アルコキシ、置換ア
リールスルホニルオキシ、および置換低級アルキル上の
置換基は、ハロゲン、炭素数1〜5を有する低級アルキ
ル、炭素数5〜20を有するアリール、炭素数1〜5を
有する低級アルコキシ、またはニトロであり;nは1か
ら4の整数を表わす。
【0082】好ましくは、プロキラルなケトン(X)と
して、4-tert-ブチルシクロヘキサノンが挙げられ、ホ
スホノアセタート(XI)として、トリエチルホスホノア
セタート、トリメチルホスホノアセタートが挙げられ
る。
【0083】上記の不斉ホーナー・エモンズ反応は、上
記のシンコニニウム塩(I)の存在下、固相と有機相と
の不均一系で行われる。固相は水酸化アルカリ金属塩で
あり、有機相にはプロキラルなケトン(X)とホスホノ
アセタート(XI)が含まれる。
【0084】上記の不斉ホーナー・エモンズ反応におい
て使用されるシンコニニウム塩は、プロキラルなケトン
1モルに対して、0.01〜0.5モル、好ましくは0.1〜0.2
モルの範囲で使用され得る。
【0085】上記の不斉ホーナー・エモンズ反応におい
て使用される水酸化アルカリ金属塩は、好ましくは、水
酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水
酸化ルビジウム、および水酸化セシウムからなる群より
選択される。より好ましくは、水酸化ルビジウムが使用
される。その使用量は、プロキラルなケトン1モルに対
して、1.5〜20モル、好ましくは2〜8モルの範囲で
あり得る。
【0086】上記の不斉ホーナー・エモンズ反応におい
て、ホスホノアセタートは、プロキラルなケトン1モル
に対して、1.5〜5モル、好ましくは1.8〜3モルの範囲
で用いることができる。
【0087】上記の不斉ホーナー・エモンズ反応におい
て用いられる有機溶媒は、上記の第1の方法で用いたも
のと同様である。好ましくは、ベンゼンが用いられ得
る。その有機溶媒量は、プロキラルなケトンに対して、
5〜100(v/w)の比率で用いられる。
【0088】上記の不斉ホーナー・エモンズ反応は、不
均一系が維持され、かつ使用される試薬が安定である限
り、任意の温度で行うことができる。好ましくは、−1
0℃〜50℃、さらに好ましくは0℃〜30℃の範囲で
あり得る。反応時間は、代表的には、0.5〜192時間まで
の時間、好ましくは4〜168時間までの時間であり得
る。
【0089】しかし、反応収率および光学純度は、使用
する基質およびその濃度、反応温度などの反応条件に依
存するため、上記にとらわれる必要はない。
【0090】光学活性カルボニル化合物を得るための本
発明の製造方法は、光学活性な天然アルカロイドの誘導
体、すなわちシンコニニウム塩(シンコニンの4級アン
モニウム塩)を相間移動触媒として使用する。この相関
移動触媒を使用することにより、光学活性カルボニル化
合物を、水酸化アルカリ金属塩(水相または固相)と有
機相との不均一系下での不斉合成反応により効率よく合
成することができ、さらに反応生成物を得るための後処
理も容易に行うことができる。より詳細には、本発明の
方法に従って、α,β-不飽和ケトンの不斉エポキシ化反
応、不斉ダルツェンス反応、不斉アルドール反応、不斉
ホーナー・エモンズ反応によって光学活性カルボニル化
合物が、出発原料として光学不活性な化合物から効率よ
く得られる。
【0091】本発明の方法により、種々の光学活性カル
ボニル化合物が、以下の実施例によって示されるよう
に、比較的低温から室温の範囲、例えば、4℃という非
常に穏和な反応条件下で、十分な化学収率および光学収
率で得られる。
【0092】後述の表1に示されるように、本発明の方
法によって、同じ光学活性触媒を用いても、基質の置換
基の位置によって立体配置が逆転した光学活性化合物を
得ることができる。このように、得られた光学活性カル
ボニル化合物の立体配置が基質に依存して変化すること
は、予想し得ない結果であった。
【0093】
【実施例】本発明の実施例を以下に示す。これらは例示
目的のみのために示されるものあって、本発明はこれら
に限定されない。
【0094】<製造例>以下に、本発明において使用さ
れる相間移動触媒のシンコニニウム塩の合成法を、N-(4
-ヨードベンジル)シンコニニウムブロミドを例として記
載する。
【0095】シンコニン(1.47g、5.0mmol)を室温下で
テトラヒドロフラン(25ml)中に懸濁し、4-ヨードベン
ジルブロミド(1.48g、5.0mmol)を添加した。攪拌下
で、133時間加熱還流した後、固体をろ取しベンゼン(3
0ml)で洗浄した。固体をメタノール-アセトンから再結
晶することにより、目的とするN-(4-ヨードベンジル)シ
ンコニニウムブロミドを白色結晶物質として得た(498m
g、化学収率17%)。
【0096】<実施例1>本実施例では、シンコニニウ
ム塩の存在下で、以下に示されるα,β−不飽和ケトン
の不斉エポキシ化反応よる光学活性なα,β−エポキシ
ケトンの合成を示す。
【0097】
【化22】
【0098】3-メチルカルコン((II)式において、
1=3-CH3-Ph、R2=Ph)(111.0mg、0.5mmol)とN-(4
-ヨードベンジル)シンコニニウムブロミド(14.8mg、0.
025mmol)を室温下ジブチルエーテル(1.5ml)に懸濁
し、30%過酸化水素水(0.5ml)を加えた。4℃で2
0分間攪拌した後、無水水酸化リチウム(36mg、1.5mmo
l)を加え、さらに64時間攪拌した。1N塩酸(3.0m
l)を加えて反応を停止させた後、酢酸エチルで抽出(2
0ml×3)し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、
ろ過、溶媒留去を順次行うことによって粗生成物を得
た。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー
(ヘキサン:ジエチルエーテル=9:1)で分離精製す
ることにより、目的とするエポキシ体を白色固体物質と
して得た(123.4mg、化学収率:100%、光学純度:92
%)。光学純度の測定は、高速液体クロマトグラフィー
を用いて行った(使用カラム:CHIRALPAK AD(ダイセル
化学工業)、移動相:ヘキサン/イソプロパノール=5
0/1、流速:1ml/分)。旋光度:[α]D=194.7de
g(c=1.000、CH2Cl2)。分子量(HRMS):238.0995
(実測値)、238.0994(計算値、C16H14O2)。1H-NMR
(CDCl3):2.39ppm(3H)、4.05ppm(1H)、4.30ppm(1H)、
7.19〜7.33ppm(4H)、7.47〜7.52ppm(2H)、7.59〜7.65pp
m(1H)、8.00〜8.03ppm(2H)。
【0099】(II)式の化合物として、表1に示すR1
よびR2を有する化合物を用い、同様に反応を行った。
これにより対応する光学活性エポキシケトン(III)を
得た。これらの反応の条件およびその反応結果を表1に
示す。
【0100】
【表1】
【0101】表1において、以下の略号を使用した。R
1およびR2の欄において、Ph=フェニル、Me=メチル、
naph=ナフチル、t-Bu=t-ブチル、i-Pr=i-プロピル、
chx=シクロヘキシルである。触媒の欄において、4-I=
N-(4-ヨードベンジル)シンコニニウムブロミド、4-Br=
N-(4-ブロモベンジル)シンコニニウムブロミド、4-C
F3:N-(4-トリフルオロメチルベンジル)シンコニニウム
ブロミドである。有機相の欄において、nBu2O=ジn-ブ
チルエーテルである。%eeの欄において、「-」はエポキ
シ環の立体配置が逆であることを示す。
【0102】上記の3-メチルカルコンの不斉エポキシ化
反応において、その光学活性エポキシドが、100%の化
学収率および92%eeのエナンチオマー過剰率で得られ
た。このことは、上記のエナンチオマー過剰率の定義式
より、一方の光学異性体が96%の化学収率で優先的に
生成していることを示す。
【0103】<実施例2>本実施例では、シンコニニウ
ム塩の存在下、以下に示されるアルデヒドおよび芳香族
ケトンとの不斉ダルツェンス反応よる光学活性なα,β
−エポキシケトンの合成を示す。
【0104】
【化23】
【0105】フェナシルクロリド((V)式において、
4=Ph)(154.5mg、1.0mmol)、イソブチルアルデヒ
ド((IV)式において、R3=i-Pr)(0.14ml、1.5mmo
l)をジブチルエーテル(10ml)に溶解し、N-(4-トリ
フルオロメチルベンジル)シンコニニウムブロミド(53.
4mg、0.1mmol)を室温下で添加した。4℃で20分間撹
拌した後、水酸化リチウム1水和物(84mg、2.0mmol)
を加え、さらに72時間撹拌した。その後、1N塩酸
(3.0ml)を加え反応を停止させた後、ジエチルエーテ
ルで抽出(20ml×3)し、得られた有機層を飽和食塩水
で洗浄し、ろ過、溶媒留去を順次行うことによって粗生
成物を得た。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラ
フィー(ヘキサン:ジエチルエーテル=15:1)で分
離精製することにより目的とする縮合生成物を無色油状
物質として得た(142.7mg、化学収率:75%、光学純
度:69%)。光学純度の測定は、高速液体クロマトグ
ラフィーを用いて行った(使用カラム:CHIRALCEL OD
(ダイセル化学工業)、移動相:ヘキサン/イソプロパ
ノール=50/1、流速:1ml/分)。旋光度:[α]
D=-1.8deg(c=5.1、CHCl3)。元素分析:C=75.46%、
H=7.28%(実測値);C=75.76%、H=7.42%(計算値、C
12H14O2)。マススペクトル(m/z):190(M+)、147、
105。1H-NMR(CDCl3):1.07ppm(3H)、1.11ppm(3H)、1.
72〜1.84ppm(1H)、2.97ppm(1H)、4.07ppm(1H)、7.47〜
7.56ppm(2H)、7.58〜7.66ppm(1H)、8.02ppm(2H)。
【0106】(IV)式および(V)式の化合物として、表
2に示すR3およびR4を有する化合物を用い、同様に反
応を行った。これにより対応する光学活性エポキシケト
ン(VI)を得た。これらの反応の条件およびその反応結
果を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】表2において、以下の略号を使用した。R
3およびR4の欄において、Ph=フェニル、Et:エチル、
t-Bu=t-ブチル、n-Pr:n-プロピル、i-Pr=i-プロピ
ル、n-Pen:n-ペンチル、chx=シクロヘキシルである。
触媒の欄において、4-CF3:N-(4-トリフルオロメチルベ
ンジル)シンコニニウムブロミドである。有機相の欄に
おいて、nBu2O=ジn-ブチルエーテルである。
【0109】<実施例3>本実施例では、シンコニニウ
ム塩の存在下、以下に示されるアルデヒドおよびクロロ
ケトンとの不斉アルドール反応よる光学活性なα-クロ
ロ-β−ヒドロキシケトンの合成を示す。
【0110】
【化24】
【0111】2-クロロ-1-テトラロン(115.7mg、0.59
mmol)、イソブチルアルデヒド(0.11ml、1.2mmol)を
ヘキサン(3.0ml)に溶解し、N-(4-トリフルオロメチル
ベンジル)シンコニニウムブロミド(31.2mg、0.06mmo
l)および水酸化リチウム(53.4mg、0.06mmol)を室温
下で順次加え67時間攪拌した。その後、1N塩酸(3.
0ml)を加え反応を停止させた後、ジエチルエーテルで
抽出(20ml×3)し、得られた有機層を飽和食塩水で洗
浄し、ろ過および溶媒留去を順次行うことによって粗生
成物を得た。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラ
フィー(ヘキサン:ジエチルエーテル=5:1)で分離
精製することにより目的とする縮合生成物を無色油状物
質として得た(158mg、化学収率:78%、光学純度:
62%)。光学純度の測定は、高速液体クロマトグラフ
ィーを用いて行った(使用カラム:CHIRALCEL OD(ダイ
セル化学工業)(2本連結する)、移動相:ヘキサン/
イソプロパノール=20/1、流速:1ml/分)。1H-N
MR(CDCl3):1.03ppm(3H)、1.18ppm(3H)、1.64〜1.76p
pm(1H)、2.14ppm(1H)、2.43〜2.56ppm(1H)、3.00ppm(1
H)、3.15ppm(1H)、7.26〜7.41ppm(2H)、7.53ppm(1H)、
8.08ppm(1H)。
【0112】<実施例4>本実施例では、シンコニニウ
ム塩の存在下、以下に示されるプロキラルなケトンとホ
スホノアセテートとの不斉ホーナー・エモンズ反応よる
光学活性なα,β−不飽和エステルの合成を示す。
【0113】
【化25】
【0114】4-tert-ブチルシクロヘキサノン((X)式
において、R8=t-Bu、n=2)(100mg、0.65mmol)を
ベンゼン(3.2ml)に溶解し、N-(4-メトキシベンジル)
シンコニニウムブロミド(58.5mg、0.12mmol)を室温下
で添加した。トリエチルホスホノアセテート((XI)式
において、R9=R10=Et)(0.26ml、1.29mmol)、次
いで水酸化ルビジウム1水和物(390.5mg、3.24mmol)
を加え、165時間撹拌した。濃塩酸を加えてpHを3に
調整した後、エタノール(10ml)を加え、60℃で96
時間撹拌した。反応液をろ過し、その後、溶媒を減圧留
去した後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジエ
チルエーテル=2:1)で分離精製することにより、目
的物を無色油状物質として得た(125.5mg、化学収率:
86%、光学収率:46%)。光学純度の測定は、高速
液体クロマトグラフィーを用いて上記と同様に行った。
【0115】(X)式および(XI)式の化合物として、表
3に示すR8〜R10を有する化合物を用い、同様に反応
を行った。これにより対応する光学活性エステル(XI
I)を得た。これらの反応の条件およびその反応結果を
表3に示す。
【0116】
【表3】
【0117】表3において、以下の略号を使用した。R
8〜R10の欄において、 Ph=フェニル、Et=エチル、OB
u=ブトキシ、OTs=トシルである。触媒の欄において、
NBzC=N-ベンジルシンコニニウムクロリド、4-CF3=N-
(4-トリフルオロメチルベンジル)シンコニニウムブロミ
ド、4-CF3 A=N-(4-トリフルオロメチルベンジル)シンコ
ニニウムブロミド(水酸化カリウム使用)である。
【0118】以上の実施例から明らかなように、シンコ
ニニウム塩(シンコニンの4級アンモニウム塩)を相間
移動触媒として使用することにより、光学活性化合物
を、水酸化アルカリ金属塩(液相または固相)と有機相
との不均一条件下で、温和な条件下での不斉反応により
効率よく合成することができ、さらに反応生成物を得る
ための後処理も容易に行うことができる。
【0119】
【発明の効果】本発明によれば、不斉相間移動触媒とし
て天然アルカロイド由来のシンコニニウム塩を用い、水
酸化アルカリ金属塩(液相または固相)と有機相との不
均一系において、光学活性カルボニル化合物が簡便かつ
有利に得られ得る。光学活性カルボニル化合物として
は、光学活性なα,β−エポキシケトン、α−クロロ−
β−ヒドロキシケトン、およびα,β−不飽和エステル
が挙げられ、これらの化合物は、穏和な反応条件下で、
高い化学収率および高い光学収率(エナンチオマー過剰
率)で得られる。これらの化合物は、例えば、医薬品ま
たは農薬などの生理活性物質、あるいは液晶などの機能
性分子の原料または合成中間体として重要である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07C 67/00 C07C 67/00 69/608 69/608 C07D 303/32 C07D 303/32 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 C07M 7:00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下のシンコニニウム塩(I): 【化1】 の触媒量の存在下、過酸化水素を酸化剤として用い、水
    酸化アルカリ金属塩を含む水相と有機相との不均一混合
    溶媒系で、α,β−不飽和ケトン(II)を不斉エポキシ
    化し、光学活性α,β−エポキシケトン(III)を得る工
    程を包含する、光学活性カルボニル化合物の製造方法: 【化2】 ここで、R1は、直鎖状または分岐状アルキル、シクロ
    アルキル置換の直鎖状または分岐状アルキル、シクロア
    ルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換ア
    ラルキル、アルケニル、あるいは置換アルケニルであ
    り;R2は、アリールまたは置換アリールであり;該置
    換アリール、置換アラルキル、および置換アルケニル上
    の置換基は、ハロゲン、低級アルキル、アリール、低級
    アルコキシ、またはニトロである。
  2. 【請求項2】 以下のシンコニニウム塩(I): 【化3】 の触媒量の存在下、水酸化アルカリ金属塩と有機相との
    不均一反応系で、アルデヒド(IV)とクロルケトン
    (V)との間で不斉ダルツェンス反応を行い、光学活性
    α,β−エポキシケトン(VI)を得る工程を包含する、
    光学活性カルボニル化合物の製造方法: 【化4】 ここで、R3は、直鎖状または分岐状アルキル、シクロ
    アルキル置換の直鎖状または分岐状アルキル、シクロア
    ルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換ア
    ラルキル、アルケニル、あるいは置換アルケニルであ
    り;R4は、アリール、または置換アリールであり;該
    置換アリール、置換アラルキル、および置換アルケニル
    上の置換基は、ハロゲン、低級アルキル、アリール、低
    級アルコキシ、またはニトロである。
  3. 【請求項3】 以下のシンコニニウム塩(I): 【化5】 の触媒量の存在下、水酸化アルカリ金属塩と有機相との
    不均一反応系で、アルデヒド(VII)とクロロケトン(V
    III)との間で不斉アルドール反応を行い、光学活性α
    −クロロ−β−ヒドロキシケトン(IX)を得る工程を包
    含する、光学活性カルボニル化合物の製造方法: 【化6】 ここで、R5は、直鎖状もしくは分岐状アルキル、シク
    ロアルキル置換の直鎖状または分岐状アルキル、あるい
    はシクロアルキルであり;R6およびR7は、直鎖状もし
    くは分岐状アルキル、シクロアルキル置換の直鎖状もし
    くは分岐状アルキル、シクロアルキル、アリール、置換
    アリール、アラルキル、または置換アラルキルである
    か、あるいはR6およびR7のアルキルおよびアラルキル
    または置換アラルキルは互いに環を形成し;該置換アリ
    ールおよび置換アラルキル上の置換基は、ハロゲン、低
    級アルキル、アリール、低級アルコキシ、またはニトロ
    である。
  4. 【請求項4】 以下のシンコニニウム塩(I): 【化7】 の触媒量の存在下、水酸化アルカリ金属塩と有機相との
    不均一反応系で、プロキラルなケトン(X)とホスホノ
    アセタート(XI)とを縮合させる不斉ホーナー・エモン
    ズ反応を行い、光学活性α,β−不飽和エステル(XII)
    を得る工程を包含する、光学活性カルボニル化合物の製
    造方法: 【化8】 ここで、R8は、直鎖状または分岐状アルキル、シクロ
    アルキル置換の直鎖状または分岐状アルキル、シクロア
    ルキル、アリール、置換アリール、ヒドロキシ、アルコ
    キシ、置換アルコキシ、アリールスルホニルオキシ、あ
    るいは置換アリールスルホニルオキシであり;R9およ
    びR10は、低級アルキルまたは置換低級アルキルであ
    り;該置換アリール、置換アルコキシ、置換アリールス
    ルホニルオキシ、および置換低級アルキル上の置換基
    は、ハロゲン、低級アルキル、アリール、低級アルコキ
    シ、またはニトロであり;nは1から4の整数を表わ
    す。
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