JPH1171626A - 金色焼結体 - Google Patents

金色焼結体

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JPH1171626A
JPH1171626A JP23313597A JP23313597A JPH1171626A JP H1171626 A JPH1171626 A JP H1171626A JP 23313597 A JP23313597 A JP 23313597A JP 23313597 A JP23313597 A JP 23313597A JP H1171626 A JPH1171626 A JP H1171626A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】装飾用部材として必要な機械的特性を有すると
ともに、人に対して金属アレルギーを起こさず、また、
装飾用部材として好適な装飾性と耐食性、耐スクラッチ
性を備えた金色焼結体を提供する。 【解決手段】Tiの酸窒化物からなる硬質相と、ZrO
2 からなる強化相と、さらにMoを主体とする金属の結
合相とから構成される焼結体であって、該焼結体中の強
化相の割合が11−25重量%、金属の結合相量が8−
22重量%、残部が硬質相および不可避不純物からな
り、前記強化相中のZrO2結晶の内、単斜晶の割合が
3−55%とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、装飾用部材、印
鑑、釣具部品、食器類、事務用品等に用いられる金色焼
結体に関するものであり、特に、人の肌に直接触れて使
用される時計用外装部品、ネクタイピン、イヤリング、
ピアス、指輪、ブレスレット、眼鏡フレーム等におい
て、使用する人がNi、Co、Crによる金属アレルギ
ーを引き起こすことがなく、好適な装飾性および耐スク
ラッチ性を兼ね備えた金色焼結体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば時計用の外装部品などで金
色を呈する部材には、製造の容易さやコストの面からス
テンレス鋼や黄銅などの金属表面に金メッキを施した材
料が使用されていた。しかし、これらの材料にはメッキ
の下地層としてNiが使用されており、また、金色のメ
ッキ層にもAu−Ni合金が使用される場合があった。
【0003】このため、これらの部材が人の肌に直接触
れて使用されるような場合では、汗などによって金属N
iがNiイオンとして溶けだし、皮膚の炎症などの金属
アレルギーを発生させる可能性があった。また、Coや
Crでも同様に金属アレルギーを発生させる可能性があ
る。
【0004】そこで、このような問題を解決するために
Niを用いずにメッキやコーティングを施した装飾部材
が提案されている(特開平8−13132、特開平8−
120481)。しかし、これらの装飾部材ではNiに
よる金属アレルギーには対応できるものの、メッキやコ
ーティング層の硬度が低いため、使用の間に硬質物質と
の接触によって表面にキズを生じ、装飾性が損なわれて
しまうという問題がある。
【0005】一方、金色系の色調を示し、さらに耐スク
ラッチ性を向上させた材料として、周期律表第4a、5
a、6a族の遷移金属の窒化物、例えば窒化チタンや窒
化ジルコニウムの1種以上を主成分とするものや酸窒化
チタンを主成分とするものに、Ni、Co、Crなどの
金属を結合相として添加した焼結合金が提案されてい
る。
【0006】しかしながら、これらの方法によって得ら
れた焼結合金では、結合相として加えた金属成分が、汗
や海水、酸性雨などによって腐食あるいは変色が発生
し、装飾用部材としての使用ができなくなる問題があっ
た。
【0007】
【発明が解決しようとする問題点】さらに、前述したよ
うに結合相に使用しているNiやCo、Crなどの金属
が原因となって、人によっては金属アレルギーを発生し
てしまう問題がある。このため、人に対して金属アレル
ギーを発生することなく、耐スクラッチ性、耐食性に優
れ、さらに従来の材料と同等の色調を示す材料が求めら
れている。
【0008】
【発明の目的】本発明は、上記課題に鑑み成されたもの
で、その目的は、装飾用部材として必要な機械的特性を
有するとともに、人に対して金属アレルギーを起こさ
ず、また、装飾用部材として好適な装飾性と耐食性、耐
スクラッチ性を備えた金色焼結体を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は装飾用部材と
して必要な強度を有し、耐食性に優れ、良好な金色を示
し、かつアレルギーの原因となる金属を含まない材料に
ついて種々の検討を重ねた結果、Tiの酸窒化物(炭酸
窒化物を含む)からなる硬質相と、ZrO2 からなる強
化相と、さらにMoを主体とする金属の結合相とから構
成される焼結体について、強化相における結晶粒子の単
斜晶割合を特定範囲で制御することにより前記目的を達
成できることを知見し、本発明に至った。
【0010】即ち、本発明の金色焼結体は、Tiの酸窒
化物および/または炭酸窒化物からなる硬質相と、Zr
2 からなる強化相と、さらにMoを主体とする金属の
結合相とから構成される焼結体であって、該焼結体中の
強化相の割合が11−25重量%、金属の結合相量が8
−22重量%、残部が硬質相および不可避不純物からな
り、前記強化相中のZrO2 結晶の内、単斜晶の割合が
3−55%であることを特徴とするものである。
【0011】
【作用】本発明の金色焼結体によれば、硬質相と強化
相、結合相とから構成される焼結体において、金色の色
調についてはTiの酸窒化物からなる硬質相が寄与し、
窒素と酸素の割合を変更することで、金色の色調変化を
行うことが可能である。
【0012】ZrO2 からなる強化相は単斜晶の割合が
3−55%である部分安定化ジルコニアで構成されるた
め、正方晶または立方晶の相変化による応力緩和効果に
より焼結体の強度を向上するとともに、耐スクラッチ
性、耐食性を向上させる効果がある。
【0013】また、ZrO2 からなる強化相は原料とし
て直接ジルコニアを用いて添加するよりも、ZrNを焼
結の過程で酸化させZrO2 を生成した方が強度向上の
効果が高くなる。この要因は次のように考えられる。Z
rNからZrO2 を生成させると体積膨張が生じるが、
焼結体中で反応させた場合、生成したZrO2 の体積膨
張によって焼結体の空隙が埋められていくため、破壊源
となる空隙が消滅し強度向上の効果を発揮する。
【0014】さらに、金属の結合相にMoを用いること
でNiに代表されるアレルギー発症金属を含有すること
なく、機械的特性を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の金色焼結体は、Tiの酸
窒化物および/または炭酸窒化物からなる硬質相と、Z
rO2 からなる強化相と、さらにMoを主体とする金属
の結合相とから構成される焼結体であって、該焼結体中
の強化相の割合が11−25重量%、金属の結合相量が
8−22重量%、残部が硬質相および不可避不純物から
なり、前記強化相中のZrO2 結晶の内、単斜晶の割合
が3−55%であることを特徴とするものである。
【0016】ここで、上記のように限定した理由につい
て述べる。
【0017】前記強化相の割合が11%よりも少なくな
ると、強度向上の効果が弱く必要な強度が得られず、ま
た、25%よりも多くなると焼結性が悪くなるために緻
密な焼結体が得られなくなる。また、目的とする色調を
得られなくなる。
【0018】結合相の割合が8%よりも少なくなると、
緻密化の効果が弱くなり、22%よりも多くなると焼結
体の耐スクラッチ性が悪くなる。
【0019】次に強化相の結晶粒子における単斜晶の割
合は、X線回折法により同定した各結晶相のピーク強度
に基づき、R.C.GarvieとP.S.Nicho
lson等による数1の式から算出した。
【0020】
【数1】
【0021】ここで、Imは単斜晶のX線回折ピーク高
さを示し、Ic、Itはそれぞれ立方晶、正方晶のX線
回折ピーク高さを示す。
【0022】この式より算出した強化相の結晶粒子のう
ち、単斜晶の割合が3%未満の場合には前記要求特性が
安定して得られず、再現性に乏しくなる。
【0023】また、その割合が55%を越えると相対的
に、強化相に含まれる正方晶あるいは立方晶の割合が低
下し、応力緩和の向上効果が見られず、焼結体の強度が
低くなる。
【0024】従って、強化相の結晶粒子のうち、単斜晶
の割合は3−55%に特定され、特に強度向上の点から
は8−40%が最適である。
【0025】次に本発明の金色焼結体の製造方法を以下
の例に基づいて説明する。
【0026】まず、原料粉末としては、例えば、硬質相
を形成するためのTiの窒化物粉末、Tiの酸化物粉末
粉末、Tiの酸窒化物粉末、Tiの炭酸窒化物粉末およ
び、金属Ti粉末等を混合し、これに強化相を形成する
ためのZrO2 粉末、ZrN粉末と金属Mo粉末を所定
量混合したものを使用する。
【0027】ここで、Tiの窒化物粉末は化学量論組成
のTiNであっても、また非化学量論組成のTiNであ
ってもよい。さらにTiの酸窒化物粉末、Tiの炭酸窒
化物粉末において酸素と窒素の割合、炭素、酸素と窒素
の割合は目的とする色調によって種々変化させたものを
使用することができる。
【0028】前記硬質相は具体的には、粒径が1〜3μ
mのTiN粉末、および0.5〜2μmのTiO2
末、1〜3μmのZrN粉末、0.5〜1.5μmのM
o粉末のそれぞれを前記組成を満足するように秤量す
る。
【0029】ついで、前記原料粉末にアセトン等の有機
溶媒を加えて混合粉砕した後、公知の有機バインダーを
加え、所望の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水
圧プレス、押し出し成型等により任意の形状に成形後、
非酸化性雰囲気下において所定温度で脱脂した後、前記
強化相中の単斜晶割合を制御する一つの方法として、真
空あるいは非酸化性雰囲気下で1600〜1900℃の
温度で焼成する事が望ましく、焼成時間は成形体の大き
さにもよるが、通常0.5〜5時間が適当である。
【0030】また、熱間静水圧焼成(HIP)において
1000〜2000気圧下で、1500〜1800℃で
処理してもよい。
【0031】そして、前述のようにして作製した焼結体
を、ダイヤモンドペースト等を用いて鏡面研磨する事に
より、光沢のある金色が得られる。
【0032】
【実施例】以下、本発明の金色焼結体を実施例に基づき
詳述する。
【0033】原料粉末として、平均粒径が1.5μmの
TiN粉末および0.8μmのTiO2粉末、および平
均粒径が1.4μmのZrN粉末と同粒径が2μmのMo
粉末を用い、これらを焼結体の硬質相と強化相、結合相
量が表1に示す割合となるように秤量混合し、これをア
セトン等の有機溶媒中、約68時間混合粉砕した後、パ
ラフィンを6重量%加え、2ton/cm2の加圧力で
所望形状に成形した。
【0034】そして、この成形体を非酸化性雰囲気下に
おいて所定温度で脱脂した後、真空度が10−3Tor
r の真空加熱炉において1700〜1900℃の温度
で1時間真空焼成した。このようにして得られた最終焼
結体を平面研削および鏡面研磨して評価用の焼結体を作
製し、抗折強度、ビッカース硬度、耐食性をそれぞれ評
価するとともに、目視により焼結体の色調を確認した。
【0035】前記抗折強度はJISR1601の3点曲
げ試験法に従い、ビッカース硬度はJISZ2244の
試験法に準じて行った。
【0036】また、耐食性の試験は尿素5g、塩化ナト
リウム20g、乳酸15g、酢酸2.5g、塩化アンモ
ニウム15.5gを水に溶かして1リットルとし、アン
モニア水でpH=4.7に調整した溶液を腐食液として
使用して行った。40℃の温度に保持した前記人工汗の
中に、鏡面研磨した焼結体試料の下半分を1週間浸した
後、該試料の研磨面の状態を比較観察することにより研
磨面に変色及び腐食が認められないものを○、わずかで
も変色及び腐食が認められるものを×として表示した。
【0037】さらに、ジメチルグリオキシムのアルコー
ル溶液とアンモニア水をしみ込ませた綿棒で試料表面を
擦ることでNiイオンとの反応による赤色の発色を確認
した。
【0038】
【表1】
【0039】この表から明らかなように、本発明の請求
範囲外である試料11、13は目的とする色調を示さ
ず、試料1−3および11−13は強化相及び結合相の
効果が小さいために強度が低く、比較例の試料14は赤
色の発色が見られ、Niイオンの溶出を確認した。
【0040】これに対して、本発明による焼結体では、
いずれも抗折強度が800MPa以上を示し、また、目
的の色調、耐食性を有していることがわかる。さらに、
赤色の反応も見られず、Niイオンは確認されなかっ
た。
【0041】即ち、試料1は強化相の割合が11%未満
であり且つ結合相(金属相)の割合が8%未満で強度不
足となった。試料2は金属相の割合が8%未満で強度不
足となった。試料3は強化相の割合が11%未満で強度
不足となった。試料11は強化相の割合が25%超過で
強度不足且つ色調不足となった。試料12は結合相(金
属相)の割合が22%超過且つ強化相中の単斜相の割合
が55重量%超過で強度不足となった。試料13は強化
相の割合が25%超過且つ結合相(金属相)の割合が2
2%超過で強度不足且つ色調不足となった。なお、試料
16は金属相からNiの溶出があり不適であった。
【0042】これに対して、本願発明実施例である試料
4〜10は焼結体中の強化相の割合が11−25重量
%、結合相の割合が8−22重量%、強化相中のZrO
2 に含まれる単斜相の割合が55重量%以下であり、結
果も極めて良好であった。
【0043】以上の結果から、焼結体中の強化相の割合
が11−25重量%、結合相の割合が8−22重量%、
強化相中のZrO2 に含まれる単斜相の割合が55重量
%以下が好ましいことが確認された。なお、前述のよう
に、強化相の結晶粒子のうち、単斜晶の割合が3%未満
の場合には物性が安定して得られず、再現性に乏しくな
るので好ましくない。したがって、前記単斜相の割合は
3−55重量%に限定される。
【0044】
【実験例】前記試料6の焼結体により耳飾り用のピアス
を作製した。このピアスを20人を対象に1年間両耳に
装着してもらい、皮膚アレルギーや炎症の有無を確認し
たところこのような問題は一切発現しなかった。
【0045】また同焼結体により時計バンドを作製し、
時計とこのバンドを20人を対象に1年間装着してもら
い、皮膚アレルギーや炎症の有無、および目立つキズの
有無を確信したが、このような問題は一切なかった。
【0046】
【発明の効果】以上詳述したように本発明の金色焼結体
によれば、実用上何等支障のない強度と硬度を有すると
ともに、耐食性に優れ、また、金属アレルギーの原因と
なる金属を使用しないことから、装飾用部材として人に
無害で、かつ長期間にわたり腐食や傷が発生しない金色
装飾品として、例えば、時計ケース、時計バンド、ネッ
クレス、ブレスレット、ボタン等の装飾品や食器類、刃
物、釣り具等の他、建具などの装飾用部材や摺動部材、
事務用品、スポーツ用品などにも利用することができ
る。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Tiの酸窒化物からなる硬質相と、ZrO
    2 からなる強化相と、さらにMoを主体とする金属の結
    合相とから構成される焼結体であって、該焼結体中の強
    化相の割合が11−25重量%、金属の結合相量が8−
    22重量%、残部が硬質相および不可避不純物からな
    り、前記強化相中のZrO2 結晶の内、単斜晶の割合が
    3−55%であることを特徴とする金色焼結体。
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