JPH116011A - 凹凸面を有する金属部材及びその製造方法 - Google Patents

凹凸面を有する金属部材及びその製造方法

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JPH116011A
JPH116011A JP9173023A JP17302397A JPH116011A JP H116011 A JPH116011 A JP H116011A JP 9173023 A JP9173023 A JP 9173023A JP 17302397 A JP17302397 A JP 17302397A JP H116011 A JPH116011 A JP H116011A
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uneven surface
uneven
energy beam
density energy
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JP9173023A
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English (en)
Inventor
Michio Maruki
三千男 丸木
Takao Taniguchi
孝男 谷口
Keizo Kobayashi
啓三 小林
Koji Obayashi
巧治 大林
Osamu Suzuki
修 鈴木
Hiroyasu Kondo
広康 近藤
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Aisin AW Co Ltd
Original Assignee
Aisin AW Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 任意のパターンの凹凸形状を有する高硬度の
凹凸面を,任意の場所に形成してなる,凹凸面を有する
金属部材及びその製造方法を提供すること。 【解決手段】 高密度エネルギービーム11を金属部材
2に照射し,金属部材2の表層のみを融点以上に加熱し
て溶融部21となし,次いで溶融部21を急冷凝固させ
て硬化させると共にその表面形状を変化させた表面処理
部22を形成する。かつ,高密度エネルギービーム11
は,金属部材2に対して相対的に移動させながら照射
し,表面処理部22を所定量ずらして設けることによ
り,凹凸形状の凹凸面20を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,高硬度の凹凸面を有する金属部
材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】例えば図19に示すごとく,自動車の自動
変速機の構成部品であるワンウェイクラッチのアウター
レースサブアッセンブリ9は,アウターレース91とブ
レーキハブ92とをロールかしめにより結合させて構成
してある。即ち,図21に示すごとく,アウターレース
91の係合突起910の外周面にローレット加工により
溝形状の凹凸面911を予め形成しておき,該凹凸面9
11をブレーキハブ92の内周部921に対面させて,
ロールかしめする。
【0003】具体的には,図20に示すごとく,ロール
かしめ機8のセット台81上にアウターレース91とブ
レーキハブ92とを組み合わせた状態でセットする。次
いで,かしめローラ82を備えたかしめヘッド83を回
転させながら下降させることにより,上記アウターレー
ス91の係合突起910を外方へかしめる。これによ
り,図22に示すごとく,アウターレース91の係合突
起910の凹凸面911がブレーキハブ92の内周部9
21に食い込んだ状態で両者が結合する。この結合状態
においては,両者の空回りを防止するため凹凸面911
が不可欠である。
【0004】また,その他の機械部品においても,摩擦
係数の向上,潤滑油の保持性の向上等を目的として,所
望部分に凹凸形状を有する凹凸面を形成する場合があ
る。この場合の凹凸面の形成は,通常は,上記のローレ
ット加工,ショットブラスト等の機械的加工手段が利用
されている。
【0005】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の凹
凸面を有する金属部材及びその製造方法においては次の
問題がある。即ち,上記ローレット加工による凹凸面の
形成においては,ローレット加工用の治具を加工面に当
接するためのスペースが必要である。そのため,十分に
前面が開放された面以外には,凹凸面を形成することが
できない。また,非常に細かいピッチの凹凸形状を形成
することは困難である。
【0006】また,上記ショットブラストによれば,い
わゆる梨地状の凹凸形状を有する凹凸面しか形成するこ
とができない。また,凹凸面の形成位置を特定位置に限
定することが困難であり,ショットを当てない部分にマ
スキングをする等の余分な工程も必要となる。
【0007】また,上記ローレット加工やショットブラ
スト等は,その加工面をある程度加工硬化させるもの
の,十分な硬度向上を図ることは困難である。そのた
め,高硬度の凹凸面を得ようとした場合には,凹凸面形
成後に焼き入れ処理を施すことが必要となる。しかしな
がら,この場合には,凹凸面に焼き入れ歪みを発生させ
てしまう。
【0008】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてな
されたもので,任意のパターンの凹凸形状を有する高硬
度の凹凸面を,任意の場所に形成してなる,凹凸面を有
する金属部材及びその製造方法を提供しようとするもの
である。
【0009】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,高密度エネルギ
ービームを金属部材に照射し,該金属部材の表層のみを
融点以上に加熱して溶融部となし,次いで該溶融部を急
冷凝固させて硬化させると共にその表面形状を変化させ
た表面処理部を形成し,かつ,上記高密度エネルギービ
ームは,上記金属部材に対して相対的に移動させながら
照射し,上記表面処理部を所定量ずらして設けることに
より,凹凸形状を有する凹凸面を形成することを特徴と
する凹凸面を有する金属部材の製造方法にある。
【0010】本発明において注目すべきことは,上記表
面処理部を所定量ずらして設けることにより上記凹凸面
を形成することである。そして,さらに重要な点は,上
記表面処理部は上記高密度エネルギービームの照射によ
り形成することである。なお,上記所定量は,得ようと
する凹凸形状のパターンに応じて任意に設定する。
【0011】また,上記高密度エネルギービームとして
は,例えばレーザービーム,電子ビーム等の高密度エネ
ルギービームがある。また,上記金属部材としては,
鋼,アルミニウム合金等の種々の金属材料からなる部材
を適用することができる。
【0012】次に,本発明の作用につき説明する。本発
明においては,上記表面処理部を形成するに当たり上記
高密度エネルギービームを金属部材に照射する。この高
密度エネルギービームは,周知のごとく非常に大きなエ
ネルギーを投入することができるので,金属部材の表層
のみを非常に急速に加熱し,きわめて短時間に上記溶融
部を形成することができる。またそのため,溶融部の周
囲への熱影響を小さくすることができ,従来の通常の焼
き入れ処理等に伴う熱歪みの発生を抑制することができ
る。
【0013】次いで,上記高密度エネルギービームの照
射を終えた上記溶融部は,急速に自己放冷される。即
ち,上記溶融部は,金属部材の表層のみに形成されてい
る。そのため,溶融部の熱は,その周囲の金属部材への
熱伝導により急速に放出され,溶融部は急速に冷却され
る。
【0014】この溶融部の急冷は,得られる表面処理部
の硬化をもたらす。即ち,例えば後述する鋼や熱処理型
アルミニウム合金等のような焼き入れ効果が得られる材
料においては,上記表面処理部の著しい硬化現象が得ら
れる。また,焼き入れ効果が得られない材料においても
組織の微細化等による硬化現象が得られる。
【0015】また,上記表面処理部は,上記のごとく金
属部材の表層を一旦溶融状態にした後再凝固させて形成
する。そのため,得られる表面処理部の表面形状は,処
理前の金属部材の表面形状と異なる形状に変化させるこ
とができる。それ故,上記表面処理部は,その周囲との
表面形状の違いによって,凹凸形状を構成する。
【0016】また,得られる表面処理部の表面形状は,
高密度エネルギービームの照射条件,即ち投入エネルギ
ー,照射時間等を変化させることによって制御すること
ができる。具体的には,後述する図3に示すごとく,高
密度エネルギービームの照射条件の調整によって,例え
ばビーム照射部分の中央が凹状で,その両側が凸状であ
る形状(図3(a))や,単純にビーム照射部分の中央
が凸状である形状(図3(b))に変化させることがで
きる。また,単に表面粗さを平坦化させることにより周
囲と凹凸を構成することもできる(図3(c))。
【0017】そして,本発明においては,上記高密度エ
ネルギービームにより得られる上記表面処理部を,所定
量ずらして設ける。即ち,高密度エネルギービームを金
属部材に対して相対的に移動させ,その照射位置を所定
量ずらして移動させる。これにより,表面処理部は,そ
の周囲における高密度エネルギービームを照射していな
い未照射部と共に凹凸形状を構成する。
【0018】また,表面処理部の形成位置は,高密度エ
ネルギービームの照射パターンによって容易に調整する
ことができる。そのため,凹凸面の凹凸形状パターン
は,容易に所望のパターンに調整することができる。ま
た,表面処理部の形成は,高密度エネルギービームを照
射できる面であれば可能であり,従来の機械的手段によ
る場合のように凹凸面の形成場所が制限されるというこ
とが少ない。
【0019】このように,本発明においては,上記高密
度エネルギービームを利用することにより,非常に容易
に高硬度の凹凸面を形成することができ,かつ,その凹
凸形状のパターンも容易に制御することができる。それ
故,本発明によれば,任意のパターンの凹凸形状を有す
る高硬度の凹凸面を,任意の場所に形成してなる,凹凸
面を有する金属部材の製造方法を提供することができ
る。
【0020】次に,請求項2の発明のように,上記金属
部材は鋼部材であり,かつ上記表面処理部は,上記溶融
部をマルテンサイト変態領域まで急冷凝固させてマルテ
ンサイト組織とすることが好ましい。即ち,鋼部材は周
知のごとくオーステナイト組織から急冷することにより
マルテンサイト組織を形成し,著しい硬化現象を得るこ
とができる。そのため,上記金属部材として鋼部材を用
いた場合には,溶融部をマルテンサイト変態領域まで急
冷することにより,オーステナイト組織を経てマルテン
サイト変態が行われ,容易に表面処理部を硬化させるこ
とができる。
【0021】また,請求項3の発明のように,上記高密
度エネルギービームの移動は,該高密度エネルギービー
ムのビーム発生源と上記金属部材との相対移動と,上記
高密度エネルギービームの揺動との組み合わせにより制
御することが好ましい。これにより,規則性のある高密
度エネルギービームの相対移動を容易に行うことがで
き,凹凸面の凹凸形状パターンの制御を容易に行うこと
ができる。
【0022】また,請求項4の発明のように,上記金属
部材の相対移動速度及び上記高密度エネルギービームの
揺動の周波数は,上記凹凸面の所望の摩擦係数に応じ
て,制御することが好ましい。即ち,上記凹凸面の摩擦
係数は,上記金属部材の相対移動速度または上記高密度
エネルギービームの揺動の周波数との間に相関関係を見
出すことができる。そのため,予めその相関関係を求め
ておくことにより,上記相対移動速度または上記揺動の
周波数の一方または双方を制御することにより,得られ
る凹凸面の摩擦係数を容易に制御することができる。
【0023】次に,上記優れた製造方法により得られる
金属部材としては次の発明がある。即ち,請求項5の発
明にように,凹凸形状の凹凸面を有する金属部材におい
て,上記凹凸面は,高密度エネルギービームの照射によ
り,上記金属部材の表層のみを融点以上に加熱して溶融
部となし,次いで該溶融部を急冷凝固させて硬化させる
と共にその表面形状を変化させた表面処理部を,所定量
ずらして設けることにより形成してなることを特徴とす
る凹凸面を有する金属部材がある。
【0024】本発明の金属部材においては,上記のごと
く,高密度エネルギービームの照射により上記表面処理
部を形成することにより上記凹凸面を設けてある。その
ため,該凹凸面は,高硬度な状態でかつ任意のパターン
で得られる。それ故,凹凸面を後述するような種々の機
能部位として用いることができ,金属部材としての機能
を向上させることができる。
【0025】また,請求項6の発明のように,上記金属
部材は鋼部材であり,かつ,上記表面処理部はマルテン
サイト組織であることが好ましい。この場合には,上記
表面処理部により構成される凹凸面を著しく高硬度にす
ることができ,金属部材の種々の機能をさらに向上させ
ることができる。
【0026】また,請求項7の発明のように,上記金属
部材における上記凹凸面は,機械的締結部とすることが
できる。この場合には,上記高硬度の凹凸面によって,
締結する相手部材との結合力を向上させることができ
る。例えば上記金属部材が回転部材である場合には,相
手部材との空回り等を防止することができる。
【0027】また,請求項8の発明のように,上記金属
部材における上記凹凸面は,摩擦接触部とすることもで
きる。即ち,例えばクラッチの摩擦材等との接触部とす
ることができる。この場合には,上記凹凸面の凹凸形状
による摩擦係数特性の向上及びその硬度向上により,摩
擦接触状態を従来以上に良好にすることができる。
【0028】また,請求項9の発明のように,上記金属
部材における上記凹凸面は,軸受け部とすることもでき
る。この場合には,上記凹凸面の凹凸によって潤滑油の
保有量を増加させることができ,また,凹凸面の高硬度
化と相俟って耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
実施形態例1 本発明の実施形態例にかかる凹凸面を有する金属部材の
製造方法につき,図1〜図3を用いて説明する。本例の
凹凸面を有する金属部材の製造方法においては,図1
(a)に示すごとく,まず高密度エネルギービームとし
ての電子ビーム11を,金属部材としての鋼部材2に照
射し,鋼部材2の表層のみを融点以上に加熱して溶融部
21となす。
【0030】このときの電子ビーム11は,ビーム発生
源1から発射された電子ビーム10を偏向レンズ112
により最適な揺動パターンとなるよう調整されたもので
ある。次いで,図1(a)(b)に示すごとく,電子ビ
ーム11と鋼部材2とが相対的に移動することにより,
溶融部21を急冷凝固させて硬化させると共にその表面
形状を変化させた表面処理部22を形成する。
【0031】また,電子ビーム11は,図2に示すごと
く,鋼部材2に対してジグザグ状に相対的に移動させな
がら照射する。そして表面処理部22を所定量ずらして
設けることにより,凹凸形状の凹凸面20を形成する。
即ち,電子ビーム11の照射は,図2に示すごとく,鋼
部材2を電子ビーム11のビーム発生源1に対して相対
的に一定方向(矢印B)に移動させると共に,電子ビー
ム11の照射方向を一定の周期で揺動させる。これによ
り,電子ビーム11の照射位置は,図2に示すごとく,
鋼部材2の表面にジグザグに移動する。
【0032】このとき,各電子ビーム11の照射部分
は,上記のごとく溶融部21が順次急冷凝固されて,図
1(c)に示すごとき断面形状の表面処理部22が順次
形成される。表面処理部22は,同図に示すごとく,電
子ビーム11の照射部分の中央部が凹み,その両側が突
出した凹凸形状となった。したがって,この表面処理部
22により構成される凹凸面20は,上記の凹凸形状を
ジグザグパターンに配置したものとなる。
【0033】また,凹凸面20は,従来のローレット加
工やショットブラスト等により加工された場合に比べて
非常に高硬度に仕上げることができる。即ち,表面処理
部22は,鋼部材2の表層のみに形成された溶融部21
を急冷凝固させて設ける。そのため,溶融部21は溶融
状態からオーステナイト組織を経てマルテンサイト領域
まで急冷され,マルテンサイト組織となる。それ故,表
面処理部22により構成される各凹凸部分は非常に高硬
度の状態で得ることができる。
【0034】したがって,本例の製造方法によれば,例
えばジグザグパターン等の任意のパターンの凹凸形状か
らなる高硬度の凹凸面を有する金属部材を容易に製造す
ることができる。なお,本例においては,図1(c),
図3(a)に示すごとく,電子ビーム照射部分の中央が
凹状で,その両側が凸状である形状の表面処理部22を
形成する例を示したが,電子ビーム11の出力,相対移
動速度等の照射条件を変更することにより,単純にビー
ム照射部分の中央が凸状である形状(図3(b))や,
単に表面粗さを平坦化させた形状(図3(c))にする
こともできる。
【0035】実施形態例2 本例は,図4,図5に示すごとく,実施形態例1の製造
方法を,自動車用自動変速機の構成部品であるアウター
レース91に適用した具体例である。このアウターレー
ス91は,従来例にも示したごとく,ワンウェイクラッ
チのアウターレースサブアッセンブリ9(図19)を構
成する部品であって,ブレーキハブ92とロールかしめ
により結合されて用いられる。本例は,かしめ部分,即
ち機械的締結部に相当する係合突起910の外周面に,
凹凸面20を有するアウターレース91を製造する具体
例である。なおこのアウターレース91は材質S45C
よりなる鋼部材である。
【0036】まず,アウターレース91に凹凸面20を
形成するに当たっては,図5に示すごとく,アウターレ
ース91を矢印C方向に回転させながら,電子ビームを
係合突起910の外周面に照射する。このとき,電子ビ
ームは,アウターレース91の回転軸と平行な方向に揺
動させながら照射する。その結果,図5に示すごとく,
電子ビームの照射軌跡15はジグザグ状となる。
【0037】上記ジグザグ状の照射軌跡15は,前述し
た図2と同様に,そのまま表面処理部22となり,係合
突起910の外周面はジグザグ状の表面処理部22を有
する凹凸面20となる。なお,本例においては,アウタ
ーレース91の係合突起910の外周面の周速を10m
/分とし,電子ビーム出力は600W,電子ビームの揺
動周波数は200Hzとした。その他は実施形態例1と
同様である。
【0038】次に,本例においては,得られた凹凸面2
0の表面形状を的確に把握すべく,定量的な測定を試み
た。具体的には,粗さ計を用いて,凹凸面20の中央部
分D(図5)の表面粗さを測定した。測定結果を図6,
図7に示す。図6は,電子ビームを照射する前,即ち凹
凸面20を設ける前の上記D部の表面粗さチャートであ
り,一方図7は,凹凸面20形成後の表面粗さチャート
である。いずれも横軸に測定距離,縦軸に面粗さ(凹凸
高さ)をとったものである。
【0039】図6,図7より知られるごとく,電子ビー
ム照射後においては,凹凸面20において規則性のある
凹凸形状がきれいに形成されていることがわかる。ま
た,表面粗さはRz1.70(図6)からRz67.8
にまで増加した。また,凹凸面20における凸部の高さ
は約30μmを超えるものとなり,アウターレース91
に必要な凹凸面20として十分に機能しうるものとなっ
た。また,図7におけるE部が電子ビームの照射位置,
即ち表面処理部の中心部分である。
【0040】次に,図8に示すごとく本例においては,
凹凸面20の高硬度化についても定量的に測定した。具
体的には,凹凸面20の縦断面の試料を作製し,その断
面のビッカース硬さを,表面からの距離を順次ずらして
測定した。その結果を図8に示す。同図は,横軸に表面
からの距離(mm)を,縦軸に硬度分布(Hv)をとっ
た。
【0041】同図より知られるごとく,凹凸面20は,
その表面硬度がビッカース硬さHvが約750にまで達
しており,非常に高硬度となっていることがわかった。
また参考に,従来のローレット加工により設けた凹凸面
の表面硬度は,同じ材質のS45Cにおいて約Hv24
0である。このことからも本例の方法により凹凸面20
を設けた場合には,非常に高硬度に仕上げることができ
ることがわかる。
【0042】以上のように,本例においては,アウター
レース91の凹凸面20を適度な凹凸形状を有し,かつ
非常に高硬度に仕上げることができる。そのため,従来
のローレット加工による場合に比べて,ブレーキハブ9
2(図19)とのかしめによる結合力を向上させること
ができる。
【0043】また,凹凸面20の形成を上記電子ビーム
の照射により行うため,従来のローレット加工の場合よ
りも非常に高い製造能率を得ることができる。それ故,
工程合理化によるアウターレース91のコストダウンを
図ることもできる。その他は,実施形態例1と同様の効
果が得られる。
【0044】実施形態例3 本例は,図9〜図15に示すごとく,実施形態例1と同
様の製造方法により形成することができる凹凸面20の
凹凸形状のパターンを具体的に示すものである。即ち,
実施形態例1の製造方法により得られる凹凸面20は,
金属部材2の移動と電子ビーム11の揺動との組み合わ
せにより,凹凸形状のパターンを調整することができ
る。
【0045】例えば,図9,図10に示す凹凸面20
は,いずれも実施形態例1と同様の手順を用いたもので
あり,それぞれ電子ビーム11の揺動周波数を変更した
ものである。図9のものは揺動周波数を比較的高くし,
図10のものは揺動周波数を比較的低くしたものであ
る。
【0046】また,電子ビーム2の揺動のパターンを格
子状,円弧状等に変更すると共に,その揺動周波数を調
整することにより,細かい格子模様のパターン(図1
1),粗い格子模様のパターン(図12),横長の格子
模様のパターン(図13),楕円形状を連ねたパターン
(図14)等の種々のパターンを有する凹凸面20を得
ることができる。
【0047】また,図15に示すごとく,電子ビーム2
の出力を適宜オンオフすることにより,多数の点状の表
面処理部22を散点させたドットパターンの凹凸面20
を得ることもできる。なお,各凹凸面20における各表
面処理部22の凹凸形状は,前述した図3に示すごと
く,電子ビーム2の出力等によって種々の形状をとるこ
とができる。
【0048】実施形態例4 本例は,図16,図17に示すごとく,自動車用自動変
速機の構成部品であるロックアップクラッチピストン4
1,及びその前面に摩擦材42を介して配設したフロン
トカバー43に関する具体例である。ロックアップクラ
ッチピストン41は,その前面に摩擦材42が貼付けら
れている。またロックアップクラッチピストン41は,
所定のタイミングにおいてフロントカバー43方向へ油
圧により押圧される。これにより,ロックアップクラッ
チピストン41とフロントカバー43とは摩擦材42を
介して係合状態となり,一体的に回転するよう構成され
ている。なお,符号45はスプリングである。
【0049】このロックアップクラッチピストン41に
おいては,上記摩擦材42との接着強度の向上が技術課
題の一つとされている。また,フロントカバー43にお
いては,摩擦材42の摩擦特性の向上,即ち摩擦係数の
向上及び耐摩耗性の向上が技術課題の一つとされてい
る。本例においては,上記の技術課題の解決を図るため
に,ロックアップクラッチピストン41とフロントカバ
ー43に対して実施形態例1に示した製造方法を適用し
た。
【0050】具体的には,ロックアップクラッチピスト
ン41の摩擦材接着面410には,実施形態例3の図1
3に示した横長の格子状パターンの凹凸面20を設け
た。一方,フロントカバー43の摩擦接触面430に
は,実施形態例3の図11に示した細かい格子状パター
ンの凹凸面20を設けた。
【0051】その結果,ロックアップクラッチピストン
41と摩擦材42との接着力は,接着剤との接触面積の
向上等により従来よりも向上した。また,フロントカバ
ー43の摩擦接触面430は,面粗度の向上により摩擦
係数の増加が得られたと共に,表面硬度の向上により耐
摩耗性の向上が得られた。
【0052】このように,本例においては,実施形態例
1に示した製造方法を用いることにより,金属部材にお
ける接着部分の接着性の向上や,摩擦接触部の摩擦性能
の向上をも図ることができることがわかる。その他は,
実施形態例1と同様の効果が得られる。
【0053】実施形態例5 本例は,図18に示すごとく,自動車用自動変速機の構
成部品である軸部材51とボス部材53との間に設けた
ブッシュ52に関するものである。円筒状の軸部材51
は,フランジ部531を有するボス部材53の内孔53
0内に,2つのブッシュ52を介して回動可能に配設さ
れている。したがって,ブッシュ52は,軸部材51と
摺動する軸受け部材である。
【0054】そして,本例においては,図18に示すご
とく,このブッシュ52の内面に対して,ドットパター
ン(図15)の表面処理部22を有する凹凸面20を設
けた。その結果,ブッシュ52の内面は,凹凸面20の
形成による硬度の向上と,ドットパターンの凹凸による
潤滑油の保持量が従来よりも増加した。そのため,ブッ
シュ52は,摺動抵抗の低下と優れた耐久性を発揮しう
る。その他は,実施形態例1と同様の効果が得られる。
【0055】
【発明の効果】上述のごとく,本発明によれば,任意の
パターンの凹凸形状を有する高硬度の凹凸面を,任意の
場所に形成してなる,凹凸面を有する金属部材及びその
製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,表面処理部の形成過程
を示す,(a)側面図,(b)平面図,(c)A−A先
矢視断面図。
【図2】実施形態例1における,凹凸面の形成過程を示
す説明図。
【図3】実施形態例1における,表面処理部の各種の断
面形状を示す説明図。
【図4】実施形態例2における,アウターレースの断面
図。
【図5】実施形態例2における,凹凸面の形成手順を示
す説明図。
【図6】実施形態例2における,凹凸面形成前の表面粗
さを示す説明図。
【図7】実施形態例2における,凹凸面形成後の表面粗
さを示す説明図。
【図8】実施形態例2における,凹凸面の深さ方向にお
ける硬度分布を示す説明図。
【図9】実施形態例3における,細かいジグザグパター
ンの凹凸面を示す説明図。
【図10】実施形態例3における,粗いジグザグパター
ンの凹凸面を示す説明図。
【図11】実施形態例3における,細かい格子状パター
ンの凹凸面を示す説明図。
【図12】実施形態例3における,粗い格子状パターン
の凹凸面を示す説明図。
【図13】実施形態例3における,横長の格子状パター
ンの凹凸面を示す説明図。
【図14】実施形態例3における,円弧状パターンの凹
凸面を示す説明図。
【図15】実施形態例3における,ドットパターンの凹
凸面を示す説明図。
【図16】実施形態例4における,ロックアップクラッ
チピストンとフロントカバーの構造を示す説明図。
【図17】実施形態例4における,ロックアップクラッ
チピストンとフロントカバーの係合状態を示す説明図。
【図18】実施形態例5における,ブッシュの内面を示
す説明図。
【図19】従来例における,ワンウェイクラッチのアウ
ターレースサブアッセンブリを示す,(a)平面図,
(b)断面図。
【図20】従来例における,アウターレースのロールか
しめ工程を示す説明図。
【図21】従来例における,ロールかしめ前におけるア
ウターレースとブレーキハブとの係合部を示す説明図。
【図22】従来例における,ロールかしめ後におけるア
ウターレースとブレーキハブとの係合部を示す説明図。
【符号の説明】
11...電子ビーム(高密度エネルギービーム), 2...鋼部材(金属部材), 20...凹凸面, 21...溶融部, 22...表面処理部, 41...ロックアップクラッチピストン, 410...摩擦材接着面, 42...摩擦部材, 43...フロントカバー, 430...摩擦接触面, 51...軸部材 52...ブッシュ, 53...ボス部材, 9...ワンウェイクラッチのアウターレースサブアッ
センブリ, 91...アウターレース, 910...係合突起, 92...ブレーキハブ,
フロントページの続き (72)発明者 大林 巧治 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エイ・ダブリュ株式会社内 (72)発明者 鈴木 修 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エイ・ダブリュ株式会社内 (72)発明者 近藤 広康 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エイ・ダブリュ株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高密度エネルギービームを金属部材に照
    射し,該金属部材の表層のみを融点以上に加熱して溶融
    部となし,次いで該溶融部を急冷凝固させて硬化させる
    と共にその表面形状を変化させた表面処理部を形成し,
    かつ,上記高密度エネルギービームは,上記金属部材に
    対して相対的に移動させながら照射し,上記表面処理部
    を所定量ずらして設けることにより,凹凸形状を有する
    凹凸面を形成することを特徴とする凹凸面を有する金属
    部材の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記金属部材は鋼部
    材であり,かつ上記表面処理部は,上記溶融部をマルテ
    ンサイト変態領域まで急冷凝固させてマルテンサイト組
    織とすることを特徴とする凹凸面を有する金属部材の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において,上記高密度エ
    ネルギービームの移動は,該高密度エネルギービームの
    ビーム発生源と上記金属部材との相対移動と,上記高密
    度エネルギービームの揺動との組み合わせにより制御す
    ることを特徴とする凹凸面を有する金属部材の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項3において,上記金属部材の相対
    移動速度及び上記高密度エネルギービームの揺動の周波
    数は,上記凹凸面の所望の摩擦係数に応じて制御するこ
    とを特徴とする凹凸面を有する金属部材の製造方法。
  5. 【請求項5】 凹凸形状の凹凸面を有する金属部材にお
    いて,上記凹凸面は,高密度エネルギービームの照射に
    より,上記金属部材の表層のみを融点以上に加熱して溶
    融部となし,次いで該溶融部を急冷凝固させて硬化させ
    ると共にその表面形状を変化させた表面処理部を,所定
    量ずらして設けることにより形成してなることを特徴と
    する凹凸面を有する金属部材。
  6. 【請求項6】 請求項5において,上記金属部材は鋼部
    材であり,かつ,上記表面処理部はマルテンサイト組織
    であることを特徴とする凹凸面を有する金属部材。
  7. 【請求項7】 請求項5又は6において,上記金属部材
    における上記凹凸面は,機械的締結部であることを特徴
    とする凹凸面を有する金属部材。
  8. 【請求項8】 請求項5又は6において,上記金属部材
    における上記凹凸面は,摩擦接触部であることを特徴と
    する凹凸面を有する金属部材。
  9. 【請求項9】 請求項5又は6において,上記金属部材
    における上記凹凸面は,軸受け部であることを特徴とす
    る凹凸面を有する金属部材。
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