JPH0941125A - 金属表面硬化方法 - Google Patents

金属表面硬化方法

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JPH0941125A
JPH0941125A JP7212883A JP21288395A JPH0941125A JP H0941125 A JPH0941125 A JP H0941125A JP 7212883 A JP7212883 A JP 7212883A JP 21288395 A JP21288395 A JP 21288395A JP H0941125 A JPH0941125 A JP H0941125A
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layer
coating film
carbon
treated
steel
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JP7212883A
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Yuichi Yashiro
勇一 八城
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Hitachi Seiki Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Seiki Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 通常の表面焼入れでは鉄系金属母材の材質に
制約されるので硬い表面層を形成することが困難であ
り、窒化や浸炭などの表面処理では時間が長くかかって
いた。 【解決手段】 炭素を含む塗布剤2を炭素鋼1に塗布し
て塗膜3を形成し、塗膜3の表面4にレーザ光5を照射
して塗膜3と炭素鋼1の表面部とを溶融させたのち急冷
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素鋼など鉄系金
属の表面を硬化する金属表面硬化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】金属表面硬化方法は、鉄系金属の表面に
特別の処理を施して表面硬さを改善することにより、耐
摩耗性などの性質を改善する方法であり、例えば表面焼
入れ,浸炭及び窒化などの方法がある。高周波焼入れや
火炎焼入れなど通常の表面焼入れは、高周波誘導加熱,
酸素アセチレンの炎又はレーザビームなどによって、鋼
材の表皮のみを加熱してオーステナイト化したのち急冷
して、表面層のオーステナイト組織を変態させてマルテ
ンサイト組織にすることにより、表面層を硬くしてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記表面焼入れにより
鋼材の表面層は硬化するが、その硬さは鋼材即ち鉄系金
属母材の材質によって自ずから決まってしまう。母材が
機械構造用炭素綱(例えば、JISG4501で規定さ
れているS50C)の場合には、表面層の硬さとしては
ビッカース硬さ(HV)で約700乃至800になる。
耐摩耗性を改善するためには表面層は硬ければ硬いほど
良いのであるが、上述のように母材の材質によって硬さ
の上限が決まるので、通常の表面焼入れにより表面層を
もっと硬くするためには、母材を炭素含有量の多い高級
な材質に変える必要がある。しかしながら、表面焼入れ
の場合に、表面硬さを改善するためにのみ母材全体を別
の高級な材質にするのは無駄が大きい。
【0004】一方、上述の浸炭や窒化などの金属表面硬
化方法では、鋼材全体を炉の中で長時間(例えば数時
間)加熱する必要があるので、エネルギーの消費量が多
くなり、表面処理時間も極めて長くかかる。このよう
に、通常の表面焼入れでは鉄系金属母材の材質に制約さ
れるので硬い表面層を形成することが困難であり、窒化
や浸炭などの表面処理では、時間が長くかかり処理作業
も煩雑であった。なお、特開平7−32172号公報及
び特開平7−32173号公報には、レーザ光を用いた
金属表面処理の技術が開示されているが、いずれもクラ
ッド層を形成するための技術である。
【0005】本発明は、斯かる課題を解決するためにな
されたもので、鉄系金属母材の材質に制約されないで通
常の表面焼入れより硬い表面層を短時間で形成すること
ができる金属表面硬化方法を提供することを目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
め、本発明に係る金属表面硬化方法は、炭素を含む塗布
剤を鉄系金属の被処理物に塗布して塗膜を形成し、この
塗膜の表面にレーザ光を照射して前記塗膜と前記被処理
物の表面部とを溶融させたのち急冷する。具体的には、
前記レーザ光により前記塗膜と前記被処理物表面部とを
溶融することにより前記塗布剤中の前記炭素を前記被処
理物表面部に溶け込ませたのち急冷して、セメンタイト
組織を含むマルテンサイト組織の表面層を形成する。
【0007】好ましくは、前記表面層は、表面側に位置
しマルテンサイト組織中にセメンタイト組織が析出した
第1層と、この第1層と母材との間に位置するマルテン
サイト組織の第2層とにより構成されている。また、前
記塗布剤は炭素質物質とバインダーと界面活性剤と水と
を混合した塗料であり、前記塗膜の厚みは略20μmで
あることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明について図1乃至図
9を参照して説明する。図1は本発明に係る金属表面硬
化方法の実施状況を示す斜視図である。鉄系金属の被処
理物としては、炭素鋼,鋳鉄,鋳鋼,又はステンレス鋼
など合金鋼があるが、本実施形態では炭素鋼1を例にと
って説明する。本発明においては、炭素(C)を含む塗
布剤2を炭素鋼1の表面に塗布して塗膜3を形成し、こ
の塗膜3の表面4にレーザ光5を照射して塗膜3と炭素
鋼1の表面部とを溶融させたのち急冷する。
【0009】炭素鋼における共析組成は炭素含有量0.
8%であるが、炭素鋼1としては、炭素の含有量が共析
組成より低い鋼即ち亜共析鋼であってもよい。また、被
処理物は鉄系金属であれば他の材料であってもよい。塗
布剤2は、スプレー又は刷毛により炭素鋼1の表面に塗
布されてコーティングされる。
【0010】図示しないレーザ発振器により発生し塗膜
表面4に照射されるレーザ光5は、平行光線束でもよい
が、レンズ(図示せず)を用いて集光される収束光線束
であってもよい。レーザ光5が図示するような収束光線
束の場合には、レンズの焦点の位置を塗膜表面4からず
らして任意のスポット径で照射するのが好ましい。レー
ザ光5は、所定の送り速度Vで移動して、表面処理すべ
き箇所を照射するように制御される。本発明の方法で
は、レーザ光5により塗膜3と炭素鋼(被処理物)1の
表面部とを溶融することにより塗布剤2中の炭素を炭素
鋼表面部に溶け込ませたのち急冷して、硬くて微細なセ
メンタイト組織を含むマルテンサイト組織の表面層6を
形成している。
【0011】図2は、本発明による方法で表面層6が硬
化された炭素鋼1の拡大断面図である。上述のように、
レーザ光5により加熱された塗膜3と炭素鋼表面部とが
溶融して、塗布剤2中の炭素が炭素鋼表面部に溶融混入
することによって、表面層6は変質した変質層になって
おり、二層構造をなしている。即ち、表面層6は、表面
7側に位置しマルテンサイト組織中にセメンタイト組織
が析出した第1層8と、第1層8と炭素鋼母材9との間
に位置するマルテンサイト組織の第2層10とにより構
成されている。
【0012】次に、本発明による表面硬化処理の手順
乃至を説明する。 まず最初に、炭素含有量が共析組成(即ち、炭素含
有量0.8%)より低い亜共析鋼である炭素鋼(例え
ば、JISG4501で規定されているS45C)1の
表面全体に塗布剤2をスプレー等により塗布して塗膜3
を形成する。塗膜3の厚みは略20μmであることが好
ましい。実際には、少なくとも金属光沢が見えなくなっ
て炭素鋼表面の全体が黒色で覆われる程度にむらなく塗
布する。これは、塗膜3が薄すぎると炭素鋼1表面の金
属光沢によりレーザ光5の大部分が反射して光エネルギ
ーが熱に変わらず、厚すぎるとレーザ光5の光エネルギ
ーの大部分が塗膜3のみの加熱に使用されて炭素鋼表面
部の加熱が不十分になるからである。なお、塗布剤2は
炭素質物質とバインダーと界面活性剤と水とを混合した
塗料であるのが好ましいが、塗布剤2は炭素を含有して
いるものであればよく、炭素質物質のみ(例えば、黒鉛
のみ)により構成されていてもよい。炭素鋼母材9の組
織は、初析フェライトとパーライトの二相の混在したも
のになっており、炭素鋼S45Cの場合にはそのビッカ
ース硬さ(HV)は約270である。
【0013】 次いで、自然放置又は温風を用いて、
塗膜3の水分や揮発成分などを蒸発させて塗膜3を十分
に乾燥させる。
【0014】 次に、レーザ発振器をオンする。例え
ば、このレーザ発振器の出力は連続600Wであり、レ
ーザ光5は、焦点距離633mmのレンズで集光後焦点を
外しスポット径6mmの状態で塗膜表面4に照射される。
レーザ光5の送り速度Vは約1,000mm/min であ
り、帯状に移動する。なお、レーザ光5の強さや照射面
での形状は任意に調整,変更できる。また、レーザ発振
器を高出力のものにして塗膜表面4の全面に一度に照射
してもよい。この場合には、レーザ光5を移動させる必
要がなく瞬間的に照射ができるので、表面処理時間が短
くなる。
【0015】このようにして塗膜表面4にレーザ光5を
照射して、塗膜3と炭素鋼1の表面部とを加熱して溶融
させる。これにより、表面層6では、パーライト組織が
変態してオーステナイト組織に変わるが、第1層8及び
第2層10の両方の層でこの変態現象が起きる。また、
炭素鋼母材9が溶融して生じた第1層8では、塗膜3に
含まれる炭素が炭素鋼母材中に溶融混入して、第1層8
の炭素濃度が増加する。なお、第2層10は、溶融され
ないがレーザ光5により加熱されるのでオーステナイト
化される。
【0016】 こうして加熱された表面層6を急冷す
る。この急冷のためには、冷却水や液体窒素等を用いて
もよいが必ずしも積極的に急冷処理しなくてもよい。現
実には、レーザ光5が通り過ぎた部分が、常温の大気中
への放熱及び母材9への熱伝導により急速に冷却され
る。
【0017】 表面層6は急冷されることにより凝固
して硬化する。レーザ光5が通り過ぎて冷却された部分
の表面7には塗膜3の残留はほとんど認められず、金属
光沢をなす金属面になっている。塗膜3に含まれる炭素
の大部分は第1層8に溶融混入し、残りの炭素は火花と
して飛び散ったり空気中の酸素と反応して二酸化炭素に
なる。このようにして、表面硬化処理の手順乃至が
終了する。
【0018】その結果、第2層10においては、通常の
表面焼入れと同様の変化が起き、オーステナイト組織が
変態してマルテンサイト組織に変わる。これにより、第
2層10は硬くなり、その硬度は従来の表面焼入れと同
様に約HV700乃至800にまで上昇する。一方、炭
素の含有量が多くなった第1層8においては、前記急冷
によってオーステナイト組織が変態してマルテンサイト
組織に変わるとともに、炭化物であるセメンタイト(F
3 C)の組織が析出する。このセメンタイトは、変態
によって生じる組織ではなく、炭素を6.67%含む炭
化鉄であり、斜方晶性の結晶構造を有する非常に硬くて
微細な組織である。このセメンタイトは鉄に炭素が結合
してできた化合物であり、その硬度は約HV1,000
乃至2,000である。
【0019】このようにしてできた第1層8は白色を呈
する白色層になっており、硬いマルテンサイトの組織中
に更に硬いセメンタイトが多く析出した構造をなしてい
る。炭素鋼の共析組成は炭素含有量0.8%であるの
で、6.67%の炭素を含むセメンタイトは過共析鋼に
なっており、前記急冷処理によりセメンタイトは硬く微
細な状態でマルテンサイト組織中に析出している。
【0020】第1層8の炭素濃度は表面7に近いほど高
くなっているので、炭素濃度が高い表面7側に多くのセ
メンタイトが析出しており、その結果、硬度も高くなっ
ている。例えば、表面7に近い部分の硬度は約HV90
0以上ある。従来の表面焼入れはセメンタイトの組織を
作り出すものではなかったので、硬さの限界が約HV7
00乃至800であるのに対して、本発明による第1層
8にはセメンタイト組織ができたので、約HV900以
上の硬い表面層6が形成されることになる。これは、高
周波誘導加熱,酸素アセチレンの炎又はレーザビームを
用いた従来の表面焼入れによるマルテンサイト変態では
出し得ない硬さであり、窒化に匹敵する硬さを実現して
いる。このように、上述の乃至の手順により、炭素
鋼1の表面層6を短時間で硬い性質に改善することがで
きる。
【0021】本発明に係る方法では、被処理物は鉄系金
属であればどのような材質のものでもよいので、鉄系金
属母材の材質に制約されないで、通常の表面焼入れより
硬い表面層を簡単な処理作業により短時間で形成するこ
とができる。
【0022】また、従来の表面焼入れの場合には、炭素
含有量の少ない炭素鋼(例えば、JISG4501で規
定されているS10C)では表面層が硬くならず、その
ため、一定以上の炭素含有量(例えば、0.45%以
上)の炭素鋼(例えば、JISG4501で規定されて
いるS45C乃至S58C)でないと焼入れの効果が得
られなかった。これに対して、本発明では、炭素含有量
の大小に拘らず、通常の表面焼入れでは得られないよう
な表面硬さが得られるので、優れた耐摩耗性,耐蝕性及
び耐熱性を実現できる。
【0023】また、従来のガス窒化では一般的に約50
乃至100時間の加熱処理が必要であるのに対して、本
発明によれば数秒乃至数分間の処理で済むので、少ない
エネルギー消費で短時間に窒化と同様の表面硬さを実現
できる。また、金属光沢をなす金属表面にレーザ光5を
照射した場合には大部分の光が反射するので光エネルギ
ーが熱に変わらず表面を溶融することはできないが、本
発明では炭素を含む黒色の塗布剤を炭素鋼表面に塗布し
て塗膜を形成するので、レーザ光は殆ど反射することな
く照射面に吸収される。したがって、レーザ光の光エネ
ルギーの大部分が熱に変わって、塗膜3と炭素鋼表面部
とを溶融させることができる。
【0024】通常の表面焼入れの場合には、表面硬さを
改善するためにのみ母材全体を別の高級な材質にするの
は無駄が大きくなるという課題があった。また、窒化処
理の場合にその効果を十分に発揮するためには、一般的
な炭素鋼では不可能であり、アルミニウム(Al),ク
ロム(Cr)及びモリブデン(Mo)を含む特殊合金鋼
を用いる必要があった。これに対して、本発明では、こ
のような高級な材質の母材や特殊合金鋼を使用しなくて
も、通常の炭素鋼で通常の表面焼入れ以上の窒化処理並
の硬さを実現できる。
【0025】窒化や浸炭の場合には被処理物を炉の中で
長時間加熱するので部分的な表面処理は困難であった。
そのため、窒化において部分的な硬化処理をするために
は、硬化させない部分に予めメッキ等の処理をしておく
必要があり準備作業が煩雑であった。これに対して、本
発明では移動が自在なレーザ光5を用いて表面処理して
いるので、硬化処理が必要な部分のみにレーザ光5を照
射して表面硬化させればよいので、部分的な硬化が容易
にできる。
【0026】また、ガス窒化や浸炭処理では被処理物全
体を長時間加熱しているので、表面処理したのちの製品
の熱変形が大きくなるという課題があった。これに対し
て、本発明ではレーザ光5による部分加熱で処理してお
り、必要以上の加熱をしないので、表面硬化処理された
製品の熱変形が極めて少ない。
【0027】
【実施例】以下、本発明者が行った一実施例を図3乃至
図9に基づいて説明する。図3は本発明の金属表面硬化
方法により表面層が硬化されたテストピースを示す部分
断面図、図4は図3に示すテストピースのIV部の断面組
織顕微鏡写真(金属組織写真)、図5は図4の表面層部
分を更に拡大した断面組織顕微鏡写真(金属組織写真)
である。図4及び図5はそれぞれ100倍及び400倍
に拡大している。
【0028】図3に示すように、被処理物としてのテス
トピース20の母材23は、機械構造用炭素鋼(JIS
G4501で規定されているS45C)である。前記塗
布剤2をテストピース20の表面に塗布して略20μm
の厚みの塗膜を形成し、この塗膜の表面の所定部分にレ
ーザ光5を照射して塗膜とテストピース20の表面部と
を溶融させたのち急冷している。即ち、前記乃至の
手順と同様の手順で表面硬化処理している。これによ
り、テストピース20には三日月状の表面層22が形成
され、表面層22は、白色の第1層と、この第1層と母
材23との間に位置する第2層とにより構成される。
【0029】図4及び図5に示すように、表面層22の
深さは表面21から約550μmであり、その極く表面
部に約62.5μmの厚みを有する白色の第1層が観察
される。この第1層においては、溶融した炭素鋼母材が
凝固するので溶融凝固組織が生じており、溶融金属が凝
固する際に通常見られる結晶即ち樹枝状晶(デンドライ
ト)が見られる。第1層では、灰色の前記デンドライト
状又は針状を呈している箇所と白色部とが混在してい
る。なお、母材の材質や、溶融温度など熱処理の条件等
を変えることによって、表面層22の深さや第1層の厚
み等を任意に変えることができる。第1層より深い位置
にある第2層は針状のマルテンサイト組織を呈してい
る。第2層より内方の母材23はパーライト+フェライ
ト組織を呈している。
【0030】塗布剤2の物性としては、(a)レーザ光
の吸収率がよいこと、(b)被処理物に対して塗布性が
よいこと、即ち、塗布後の被膜が均一で乾燥性がよいこ
と、(c)被処理物の表面と塗膜との密着性がよいこ
と、(d)熱処理後に、被処理物から塗膜を除去しやす
いこと、(e)被処理物表面を腐食させないこと、
(f)大気汚染を引き起こさないこと、等の物性が求め
られる。塗布剤2としては、炭素質物質とバインダーと
界面活性剤と水とを混合した塗料が好ましく、前記炭素
質物質としては、黒鉛,コークス,カーボンブラック等
がある。
【0031】界面活性剤は、一種以上の界面活性剤でア
セチレン結合を有しているのが好ましい。このアセチレ
ン結合を有する界面活性剤が、0.001乃至10重量
パーセントの範囲で含まれておれば、塗布性,密着性及
び除去性が特によい。アセチレン結合を有する界面活性
剤としては、アセチレングリコール系やアセチレンアル
コール系の非イオン界面活性剤がよく、この場合は、高
極性を持つアセチレン結合の部分に隣接する炭素に水酸
基が結合しているものがよい。水溶性のバインダーは、
炭素質物質と界面活性剤とを接着させるために含まれて
いる。好ましいバインダーとしては、有機物質では、メ
チルセルロース,エチルセルロース,ポリアセタール,
カルボキシルメチルセルロース,ポリビニールアルコー
ル,カセイン,澱粉,小麦粉等があり、無機物質では、
珪酸ソーダ,燐酸ソーダ等がある。なお、水は純水でも
水道水でもよい。斯かる構成の塗布剤を使用すれば、濡
れ性を発揮し、被処理物の表面に均一に塗布され、乾燥
性がよく、レーザ照射時に塗膜が剥離することのない密
着性を有し、しかも、レーザ照射後の塗膜の除去が容易
であり、高い吸収率が得られる。また、被処理物の表面
を腐食させることがなく大気汚染も少ない。
【0032】図6はテストピース20における硬さ,炭
素濃度及び窒素濃度を示すグラフ、図7は図6の炭素分
析の実測データを含む断面組織顕微鏡写真(金属組織写
真)、図8は図6の窒素分析の実測データを含む断面組
織顕微鏡写真(金属組織写真)、及び図9はテストピー
ス表面層22の第1層におけるX線回折法による分析結
果を示すグラフである。図7及び図8では500倍に拡
大している。
【0033】図6の横軸はテストピース表面21からの
距離を示しており、縦軸は硬さ(HV),及び炭素濃
度,窒素濃度を示している。第1層および第2層からな
る表面層と母材との境界を線L1 で示し、第1層と第2
層との境界を線L2 で示している。ビッカース硬さ試験
により得られた硬さの実測データHから分かるように、
第1層における表面近くの硬さは約HV940になって
おり、表面から深くなるに従って徐々に硬さが低下し、
表面から約60μmの箇所(線L2 で示す箇所)から再
び硬さが約HV750にまで上昇し、その後漸次硬さが
低下し、母材の硬さはHV270前後で推移している。
第1層において、表面21から遠ざかると硬さが低下す
る傾向があるが、これは炭素濃度が次第に低くなるため
と残留オーステナイトの存在によるためであると推測さ
れる。
【0034】図6の曲線Cに示す炭素濃度および図7に
示すように、第1層では表面近くの炭素濃度が高く、表
面から深くなるに従って漸次減少しており、第2層及び
母材では略同一の炭素濃度になっている。したがって、
塗布剤に含まれる炭素が第1層に溶け込んでおり、その
結果、第1層の炭素濃度が高くなっていることが分か
る。一方、図6の曲線Nに示す窒素濃度及び図8に示す
実測データに示すように、第1層及び第2層の窒素濃度
は母材と同一になっており、表面層の窒素濃度は高くな
っていない。このことから、表面層の硬度の上昇原因が
窒化によるものではないことが確認できる。
【0035】図9(A)乃至(D)に示すデータは、表
面層の第1層にセメンタイトの結晶が析出しているか否
かを確認するためのものである。即ち、第1層内で濃度
の高い炭素は固溶しているのか又はセメンタイトの形で
析出しているのかの確認を行うための分析をした。図9
の(A)乃至(D)の横軸は回折角度である。図9
(A)はX線強度を測定したデータであり、図9(B)
はそれぞれのピーク値を直線で表したデータである。図
9(C)は常温の鉄(Fe)の存在を示しており、第1
層にマルテンサイト組織があることが分かる。図9
(D)はセメンタイト(Fe3 C)が第1層から検出さ
れたことを示しており、このグラフにより第1層でセメ
ンタイトが析出していることが分かる。このように、第
1層が、マルテンサイト組織中にセメンタイト組織が析
出した構造を有しているので、従来の表面焼入れでは実
現できなかった硬い表面層を形成することができる。
【0036】また、本発明では通常の窒化及び浸炭に比
べて短時間で同等又はこれ以上の硬度を得ることができ
る。また、母材の材質に制約がないので、安価な炭素鋼
や鋳鉄や鋳鋼などを母材として使用することができる。
なお、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0037】
【発明の効果】本発明は、上述のように構成したので、
鉄系金属母材の材質に制約されないで通常の表面焼入れ
より硬い表面層を短時間で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1乃至図9は本発明を示す図で、図1は本発
明の金属表面硬化方法の実施状況を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る方法で表面層が硬化された炭素鋼
の拡大断面図である。
【図3】図3乃至図9は本発明に係る一実施例を示す図
で、図3は表面層が硬化されたテストピースを示す部分
断面図である。
【図4】図3に示すテストピースのIV部の断面組織顕微
鏡写真(金属組織写真)である。
【図5】図4の表面層部分をさらに拡大した断面組織顕
微鏡写真(金属組織写真)である。
【図6】テストピースにおける硬さ,炭素濃度及び窒素
濃度を示すグラフである。
【図7】図6の炭素分析の実測データを含む断面組織顕
微鏡写真(金属組織写真)である。
【図8】図6の窒素分析の実測データを含む断面組織顕
微鏡写真(金属組織写真)である。
【図9】テストピース表面層の第1層におけるX線回折
法による分析結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 炭素鋼(鉄系金属の被処理物) 2 塗布剤 3 塗膜 4 塗膜の表面 5 レーザ光 6,22 表面層 7,21 表面 8 第1層 9,23 母材 10 第2層 20 テストピース(被処理物)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素を含む塗布剤を鉄系金属の被処理物
    に塗布して塗膜を形成し、 この塗膜の表面にレーザ光を照射して前記塗膜と前記被
    処理物の表面部とを溶融させたのち急冷することを特徴
    とする金属表面硬化方法。
  2. 【請求項2】 前記レーザ光により前記塗膜と前記被処
    理物表面部とを溶融することにより前記塗布剤中の前記
    炭素を前記被処理物表面部に溶け込ませたのち急冷し
    て、セメンタイト組織を含むマルテンサイト組織の表面
    層を形成することを特徴とする請求項1に記載の金属表
    面硬化方法。
  3. 【請求項3】 前記表面層は、表面側に位置しマルテン
    サイト組織中にセメンタイト組織が析出した第1層と、
    この第1層と母材との間に位置するマルテンサイト組織
    の第2層とにより構成されたことを特徴とする請求項2
    に記載の金属表面硬化方法。
  4. 【請求項4】 前記塗布剤は炭素質物質とバインダーと
    界面活性剤と水とを混合した塗料であり、前記塗膜の厚
    みは略20μmであることを特徴とする請求項1,2又
    は3に記載の金属表面硬化方法。
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