JPH111722A - 回転構造体及びその表面改質方法 - Google Patents

回転構造体及びその表面改質方法

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JPH111722A
JPH111722A JP33096497A JP33096497A JPH111722A JP H111722 A JPH111722 A JP H111722A JP 33096497 A JP33096497 A JP 33096497A JP 33096497 A JP33096497 A JP 33096497A JP H111722 A JPH111722 A JP H111722A
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side wall
wall sealing
energy beam
sealing surface
density energy
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JP33096497A
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Inventor
Michio Maruki
三千男 丸木
Takao Taniguchi
孝男 谷口
Koji Obayashi
巧治 大林
Takeshi Yokoyama
剛 横山
Takahiro Yasuda
貴弘 安田
Toyoji Negi
豊二 根木
Akira Murata
彰 村田
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Aisin AW Co Ltd
Original Assignee
Aisin AW Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性に優れたシール溝を有する回転構造
体,及びシール溝の耐摩耗性を容易に向上させることが
できる表面改質方法を提供すること。 【解決手段】 円筒状支持部材の外周面に設けたシール
リングを遊嵌するシール溝における側壁シール面を改質
する方法である。高密度エネルギービームを側壁シール
面311の形状に沿って相対的に移動させながら側壁シ
ール面311に照射する。照射部分の表層のみを融点以
上に加熱して溶融部となし,次いで溶融部を急冷凝固さ
せて表面硬化層72を上記側壁シール面311に形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,シール溝の耐摩耗性に優れた回
転構造体及びその表面改質方法に関する。
【0002】
【従来技術】例えば,自動車の自動変速機においては,
後述する図1,図2に示すごとく,そのケース内に多板
クラッチ,多板ブレーキ等を係脱させる油圧サーボが設
けられている。油圧サーボのシリンダを構成するドラム
2は,センターサポート3に対してシールリング4を介
して装着されている。
【0003】そして,ドラム2,センターサポート3,
シールリング4は,一種の回転構造体9(図18)を構
成している。即ち,ドラム2はセンターサポート3の周
囲を回転する回転体であり,一方,センターサポート3
は固定された円筒状の支持体である。なお,センターサ
ポート3は,鋼あるいはアルミニウム合金等の金属によ
り構成されている。
【0004】また,図18に示すごとく,上記シールリ
ング4は,センターサポート3の外周面に設けられた3
つのシール溝31に遊嵌されている。また,センターサ
ポート3には,作動油5を供給するための油溝34が2
箇所設けられている。
【0005】そして,油圧サーボを作動する場合には,
センターサポート3の油溝34からまずドラム2とセン
ターサポート3との間に作動油5を供給する。このと
き,シールリング4は,作動油5の供給圧力によってド
ラム2の内周壁29に押しつけられると共に,シール溝
31の側壁シール面311,314等に押しつけられ
る。また,このときドラム2は回転しており,これに伴
ってシールリング4も回転する。そのため,シール溝3
1の側壁シール面311,314等は,シールリング4
が摺動する摺動面となる。
【0006】従来より,上記回転構造体9においては,
上記摺動面となるセンターサポート3の側壁シール面3
11等の摩耗を防ぐべく,種々の対策を講じてきた。例
えば,センターサポート3の材料自体を高硬度材料とす
る対策や,焼入れ処理等の熱処理によってセンターサポ
ート3全体を硬化させる対策等が講じられてきた。
【0007】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記回転構造
体における従来の耐摩耗性対策においては次の問題があ
る。即ち,センターサポート3の材料自体を高硬度化し
た場合には,上記のシール溝31や油溝34の加工性が
悪化し,生産効率が低下してしまう。また,センターサ
ポート3を加工性の良い材料を用いて成形し,次いで全
体を熱処理する方法においては,余分な部分にも熱処理
する必要があり,熱歪によりセンターサポートの形状精
度が低下してしまったり,必要以上の熱処理時間,コス
トをかけなければならない。また,量産時における熱処
理のサイクルタイムが長くなってしまう。
【0008】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてな
されたもので,耐摩耗性に優れたシール溝を有する回転
構造体,及びシール溝の耐摩耗性を容易に向上させるこ
とができる表面改質方法を提供しようとするものであ
る。
【0009】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,円筒状支持部材
の外周面に設けたシールリングを遊嵌するシール溝にお
ける側壁シール面を改質する方法であって,高密度エネ
ルギービームを上記側壁シール面の形状に沿って相対的
に移動させながら照射し,照射部分の表層のみを融点以
上に加熱して溶融部となし,次いで該溶融部を急冷凝固
させて表面硬化層を上記側壁シール面に形成することを
特徴とする表面改質方法にある。
【0010】本発明において最も注目すべきことは,上
記表面硬化層は,高密度エネルギービームの照射によっ
て表層のみに溶融部を形成し,これを急冷凝固させてな
ることである。
【0011】上記円筒状支持部材としては,例えば鋼,
アルミニウム合金等の金属素材を用いる。そのため,上
記高密度エネルギービームの出力,相対的な移動速度等
は,素材の材質に合わせて,高密度エネルギービームの
照射部分における表層のみを溶融させるよう調整する。
また,上記高密度エネルギービームとしては,例えばレ
ーザービーム,電子ビーム等の高密度エネルギーがあ
る。本発明では,これらを総称して高密度エネルギービ
ームという。
【0012】次に,本発明の作用につき説明する。本発
明においては,高密度エネルギービームの照射によって
上記側壁シール面を加熱する。そのため,高密度エネル
ギービームの照射部分は,その表層だけが非常に急速に
加熱され,極めて短時間に上記溶融部に形成される。即
ち,高密度エネルギービームによる加熱は,その投入エ
ネルギーが非常に大きいため,円筒状支持部材の内部に
熱伝導する速度よりも速い速度で極表層のみを加熱,溶
融させることができる。
【0013】また,本発明においては,上記溶融部を側
壁シール面の表層のみに形成する。そのため,溶融部形
成時には,溶融金属の流動に伴って周囲のガスを巻き込
むということがなく,また,表面が波打つこともない。
したがって,ブローホールや表面の凹凸等の品質異常を
伴うこともない。また,極表層のみが溶融状態にあるた
め,溶融前よりも平坦になるというレベリング効果を得
ることもできる。
【0014】次に,上記溶融部は,高密度エネルギービ
ームが通り過ぎて加熱が終了した直後に,急速に自己放
冷される。即ち,上記のごとく溶融部は表層のみであ
り,その周囲の部材内部は十分に低温状態に維持されて
いる。それ故,高温状態の溶融部は,その周囲への熱伝
導によって急速に冷却される。
【0015】そして,上記溶融部は,上記の急速な冷却
によって,高硬度の表面硬化層として凝固する。例えば
円筒状支持部材が鋼製の場合にはマルテンサイトの形成
により,アルミニウム合金製の場合には組織の微細化又
は析出硬化によって高硬度化された表面硬化層が得られ
る。
【0016】このように硬化された表面硬化層の形成に
より,円筒状支持部材のシール溝における側壁シール面
表面は,耐摩耗性にも優れた表面に改質される。したが
って,本発明によれば,シール溝の耐摩耗性を容易に向
上させることができる表面改質方法を提供することがで
きる。
【0017】次に,請求項2の発明のように,上記高密
度エネルギービームは,上記側壁シール面の形状に沿っ
て相対的に回転移動させながら,かつ,その回転半径を
徐々に変化させながら上記側壁シール面に螺旋状に照射
することが好ましい。即ち,本発明においては,上記高
密度エネルギービームの照射を上記のごとく螺旋状に行
う。ここで,螺旋状に高密度エネルギービームを照射す
るとは,照射軌跡が重なり合うことがないよう徐々にず
らして高密度エネルギービームを周回させることを意味
する。そのため,円状の表面硬化層を複数列形成する場
合においても,いわゆる一筆書きの動作で1工程におい
て行うことができる。それ故,径の異なる同心円状の表
面硬化層を複数個別個に形成する場合に比べて処理工程
を削減することができ,表面処理の合理化を図ることが
できる。
【0018】また,上記螺旋状の高密度エネルギービー
ムの照射は,その照射開始点及び照射終了点がラップす
ることがない。そのため,得られた表面硬化層に再度高
密度エネルギービームが照射されてその硬化効果が低下
するという問題を発生させることもない。
【0019】次に,請求項3の発明のように,上記溶融
部の深さは100μm未満であることが好ましい。10
0μmを超える場合には,上記溶融部における溶融金属
の流動により周囲のガスを巻き込んでブローホールを形
成したり,表面硬化層の表面が波打って凹凸が発生する
おそれがある。一方,上記溶融部の深さは20μm以上
であることが好ましい。20μm未満の場合には,得ら
れる表面硬化層が薄すぎて表面硬化効果が低いという問
題がある。
【0020】また,請求項4の発明のように,上記高密
度エネルギービームによる上記加熱の時間は,0.5m
sec以下(5/10000秒以下)であることが好ま
しい。これにより,上記溶融部の深さを容易に100μ
m以下に制御することができる。それ故,上記のごと
く,ブローホールや表面の凹凸を防止することができ,
高い品質を維持しつつ表面改質を図ることができる。ま
た,照射時間の短縮は熱処理時間に直接的に影響し,処
理の高効率化を図ることもできる。
【0021】また,請求項5の発明のように,上記高密
度エネルギービームは,上記高密度エネルギービーム
は,上記側壁シール面の形状に沿って円状又は楕円状に
複数回周回移動させながら照射し,かつ,第2周回目以
降の高密度エネルギービームの照射は,第1周回目の照
射により形成された上記溶融部が凝固する前に行うこと
が好ましい。
【0022】即ち,高密度エネルギービームと側壁シー
ル面との相対的な周回移動を非常に高速とすることによ
り,円状又は楕円状の照射部分全体を溶融部分となす。
これにより,側壁シール面に対してはあたかも円状又は
楕円状の熱源を投入した状態となり,高密度エネルギー
ビーム照射開始点と終了点の境界をなくすことができ
る。それ故,溶融部が冷却されて形成される表面硬化層
も境界部の凹凸がないきれいな仕上がりにすることがで
きると共に,凝固後の再溶融・再凝固による硬度低下も
ない。
【0023】また,請求項6の発明のように,上記高密
度エネルギービームは,その相対的な移動方向と90度
をなす方向に所定距離だけ揺動させながら照射すること
もできる。これにより,高密度エネルギービームの径よ
りも広い所定幅を有する表面硬化層を容易に形成するこ
とがでる。即ち,線状ではなく,面状の表面硬化層を容
易に得ることができる。
【0024】また,請求項7の発明のように,上記高密
度エネルギービームは,上記側壁シール面の形状に沿っ
て円状又は楕円状に複数回周回移動させながら照射し,
かつ,第2周回目以降の高密度エネルギービームの照射
は,その照射により形成される溶融部が1つ前の周回目
の照射により形成された溶融部と部分的にラップした状
態で形成されるように行うこともできる。即ち,高密度
エネルギービームの半径方向の移動を,形成される溶融
部の幅寸法よりも小さくすることもできる。これによっ
ても面状の表面硬化層を容易に得ることができる。
【0025】次に,耐摩耗性に優れる回転構造体として
は,次の発明がある。即ち,請求項8の発明のように,
円筒状支持部材と,該円筒状支持部材の外周面に設けた
シール溝に遊嵌したシールリングと,該シールリングの
周囲に配設された回転体とを有する回転構造体におい
て,上記シール溝における上記シールリングとの摺動部
となる側壁シール面には,該側壁シール面の形状に沿っ
て表面硬化層が形成されており,かつ,該表面硬化層
は,高密度エネルギービームの照射によって上記側壁シ
ール面の表層のみを融点以上に加熱して溶融部となし,
次いで該溶融部を急冷凝固させて形成してあることを特
徴とする回転構造体がある。
【0026】次に,本発明にかかる回転構造体の作用に
つき説明する。本発明の回転構造体においては,上記高
密度エネルギービームの照射によって溶融・再凝固して
なる上記表面硬化層を側壁シール面に設けてある。この
表面硬化層は,上述したごとく,急冷効果によって非常
に高硬度化されている。そのため,上記側壁シール面
は,耐摩耗性に優れ,回転構造体の耐久性を向上させ
る。
【0027】また,上記表面硬化層は,上記のごとく高
密度エネルギービームの照射により形成されている。そ
のため,必要部分のみを硬化させることができ,しかも
他の部分への熱影響による歪み発生等の不具合を回避す
ることができる。それ故,上記円筒状支持部材は高い寸
法精度に維持することができる。
【0028】次に,請求項9の発明のように,上記表面
硬化層は,上記シールリングの回転方向に沿って徐々に
内径方向に縮径する螺旋形状に設けられていることが好
ましい。即ち,上記表面硬化層は,上記のごとく螺旋状
に形成することが好ましい。これにより,高密度エネル
ギービームの照射がラップすることによる硬度低下等の
不具合部分がなく,略均一な硬度分布の側壁シール面を
得ることができる。それ故,側壁シール面は,シールリ
ングとの摺動によっても偏摩耗することがない。
【0029】また,上記螺旋形状は,上記の縮径形状で
あることが好ましい。これにより,シール溝の側壁シー
ル面とシールリングとの摺動面においては,これらの間
に浸入する作動油等の液体を,シール溝の内径方向に誘
導する作用を発揮させることができ,シール性の向上を
図ることができる。
【0030】即ち,上記表面硬化層は,素材の表面に見
られるような微妙な凹凸が著しく減少して非常に滑らか
な表面状態に仕上がる。そのため,その周囲の未処理部
分と表面粗さに差が生じ,この表面粗さの差が樋のごと
き作用を発揮して作動油等を一定方向に導き,上記のご
とくシール性を向上させる。
【0031】また,請求項10の発明のように,上記表
面硬化層は,上記シールリングの回転方向に沿って徐々
に外径方向に拡径する螺旋形状に設けることもできる。
この場合には,上記と同様の螺旋形状による効果が得ら
れると共に,上記の樋の効果が逆方向に作用し,摺動面
への作動油等の供給を促すことがでる。それ故,摺動面
の潤滑効果を高め,側壁シール面の耐摩耗性を更に向上
させることができる。このように,螺旋の描き方によっ
て異なった作用が得られるため,回転構造体の個々の特
性に合わせて螺旋方向を選択することが好ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】
実施形態例1 本発明の実施形態例にかかる回転構造体及びその表面改
質方法につき,図1〜図9を用いて説明する。本例は,
図1〜図3に示すごとく,自動車の自動変速機10にお
ける回転構造体1を例にとったものである。即ち,本例
の回転構造体1は,図1,図2に示すごとく,円筒状支
持部材としてのセンターサポート3と,その外周面に設
けたシール溝31に遊嵌したシールリング4と,シール
リング4の周囲に配設された回転体としてのドラム2を
有する。
【0033】図3,図5に示すごとく,シール溝31に
おけるシールリング4との摺動部となる側壁シール面3
11〜314には,その形状に沿って螺旋状に表面硬化
層72が形成されている。かつ,表面硬化層72は,図
6に示すごとく,高密度エネルギービーム6の照射によ
って側壁シール面311〜314の表層のみを融点以上
に加熱して溶融部71となし,次いで溶融部71を急冷
凝固させて形成してある。
【0034】以下,これを詳説する。まず,センターサ
ポート3のシール溝31に表面硬化層22を形成して表
面改質する方法について説明する。なお,センターサポ
ート3は,アルミニウム合金(ADC12)を用いて形
成したものである。センターサポート3には,図3に示
すごとく,2つの油溝34を挟んで3つのシール溝31
が形成されている。そのうち,シールリング4の回転に
伴ってこれと摺動する面は,4つの側壁シール面311
〜314である。
【0035】これらの側壁シール面311〜314の表
面改質処理を行う前に,本例においてはシール溝31全
体にショットブラスト処理を施した。後述するレーザー
ビーム6の吸収性を向上させるための処理である。次い
で,図4〜図9に示すごとく,レーザービーム6を用い
て側壁シール面311〜314の表面改質を行った。
【0036】具体的には,図4,図8に示すごとく,セ
ンターサポート3をその軸を中心として回転可能にセッ
トし,レーザービーム装置から発射するレーザービーム
6を照射することにより行う。図4に示すごとく,セン
ターサポート3の先端側のシール溝31の側壁シール面
311を表面改質する場合には,レーザービーム6を反
射するための反射ミラー69を用いて行う。
【0037】処理条件は,センターサポート3の回転数
を100回転/分とすることによりレーザービーム6の
相対的な回転の周速を15m/分とした。また,レーザ
ービーム6の出力は200Wとした。そして,レーザー
ビーム6は,その照射位置をセンターサポート3の半径
方向に徐々にずらしながら照射した。
【0038】即ち,図5に示すごとく,レーザービーム
6を側壁シール面311の形状に沿って相対的に回転移
動させながら,かつ,その回転半径を徐々に減少させな
がら側壁シール面311に螺旋状に照射した。これによ
り,レーザービーム6の照射開始点61から徐々にに縮
径した螺旋形状の表面硬化層72が側壁シール面311
上に形成される。このとき,図6に示すごとく,レーザ
ービーム6の照射部分70は,その表層のみが融点以上
に加熱されて溶融部71となり,次いで溶融部71が急
冷凝固されて螺旋状の表面硬化層72となる。
【0039】得られた表面硬化層72は,図7に示すご
とく,深さDが約50μm,幅約300μmの断面形状
となり,レーザービーム6の照射位置がずれた分だけ間
隔を開けて3重に形成された。また,センターサポート
3の中央のシール溝31における側壁シール面312を
表面改質する場合については,上記の側壁シール面31
1の場合と同様に行った。
【0040】次に,センターサポート3の後端側のシー
ル溝31における側壁シール面314を表面改質する場
合には,図8に示すごとく,反射ミラーを用いることな
く直接レーザービーム6を側壁シール面314に照射し
て行った。その他の条件は側壁シール面311の処理の
場合と同様とした。これにより,図9に示すごとく,側
壁シール面314においても,上記と同様の螺旋状の表
面硬化層72が形成された。また,センターサポート3
の中央のシール溝31における側壁シール面313を表
面改質する場合については,上記の側壁シール面314
の場合と同様に行った。
【0041】以上の一連の処理により形成された螺旋状
の表面硬化層72は,上記のごとく溶融部71が急冷に
よって微細化されると共に過飽和固溶体となって形成さ
れる。そのため,表面硬化層72は,微細化による硬化
と析出硬化とによって母材よりも高硬度の層となる。こ
れにより,側壁シール面311は,この表面硬化層72
の形成によって,処理前に比べて耐摩耗性が格段に向上
する。
【0042】また,上記表面硬化層72は,前記図5に
示すごとく,各側壁シール面311等の円形状に沿っ
て,約3周分の螺旋形状に設けてある。そのため,各側
壁シール面311等の表面改質処理は,レーザービーム
6をいわゆる一筆書きの一動作により相対移動させるこ
とにより行うことができる。そのため,円状の表面硬化
層を複数個別個に形成する場合に比べて処理工程の合理
化を図ることができる。
【0043】また,レーザービーム6を螺旋状に照射し
ているため,図5に示すごとく,その照射開始部分61
と照射終了部分62とがラップしない。そのため,得ら
れた表面硬化層72は,いずれの場所においても均一な
硬度状態に形成することができる。また,ラップした場
合に見られる微妙な凹凸も発生しない。そのため,側壁
シール面311〜314は,形状,硬度の両面において
均一な状態で表面改質され,偏摩耗することなく優れた
耐摩耗性を発揮する。
【0044】このように,本例においては,センターサ
ポート3のシール溝31の側壁シール面311〜314
が耐摩耗性に優れた表面に改質される。そのため,図3
に示すごとく,油溝34から作動油5を供給させた際に
シールリング6と側壁シール面311〜314との摺動
がなされた際においても,側壁シール面が優れた耐摩耗
性を発揮する。それ故,回転構造体1の耐久性は向上
し,ひいては自動変速機10全体の耐久性をこれまで以
上に向上させることができる。
【0045】実施形態例2 本例においては,図10,図11に示すごとく,実施形
態例1において得られた表面硬化層72の硬度及び平坦
性を定量的に評価した。まず,表面硬化層72の硬度の
評価は,図10に示すごとく,センターサポート3の表
面硬化層72形成部分における,表面からの距離に対す
る断面硬度の推移を測定して行った。また,比較のた
め,表面硬化層72を形成していない部分についても同
様に断面硬度の測定を行った。
【0046】測定結果を図10に示す。同図は,横軸に
表面からの深さ方向の距離(mm)を,縦軸に硬度(H
v)をとった。同図より知られるごとく,表面硬化層7
2を形成した部分の硬度分布E2は,比較部分の硬度分
布C2に比べて,極表層部分において急激な硬度向上が
見られる。この結果から,実施形態例1における表面硬
化層72は,耐摩耗性の向上に大きく貢献することがわ
かる。
【0047】次に,表面硬化層72の平坦性の評価は,
表面粗さの測定により行った。その測定結果の一例を図
11に示す。同図は,横軸に測定距離を50倍でとり,
縦軸に表面粗さを100倍でとったものである。同図よ
り知られるごとく,表面硬化層72形成部分E3は,他
の部分と比べて凹凸が少なくなり,非常に平滑な面にな
っていることが分かる。
【0048】これらの結果から,実施形態例1の表面改
質方法により形成された表面硬化層72は,高硬度であ
りかつ優れた平坦性を有しており,耐摩耗性向上に効果
を発揮し得ることが定量的にも明確となった。なお,こ
の平坦性の向上によって,上記表面硬化層72はあたか
も樋のごとき効果を発揮する。それ故,表面硬化層72
を形成する螺旋方向を回転構造体1の特性に合わせて選
択することにより,シール溝31における潤滑特性の向
上あるいはシール性の向上等を図ることもできる。
【0049】実施形態例3 本例においては,図12,図13に示すごとく,実施形
態例1と同様の方法により,側壁シール面314に実施
形態例1と同様の形態の表面硬化層72を形成した別例
である。
【0050】即ち,本例においては,処理条件を次のよ
うに変更した。まず,センターサポート3の回転数は2
000回転/分とすることによりレーザービーム6の相
対的な回転の周速を300m/分とした。また,レーザ
ービーム6の出力は900Wとした。そして,図13に
示すごとく,レーザービーム6は,その照射位置をセン
ターサポート3の半径方向に0.5m/分の速度で徐々
にずらしながら照射した。その他は実施形態例1と同様
である。
【0051】これにより,本例においては,図12に示
すごとく,レーザービーム6の照射開始点61から徐々
に拡径した螺旋形状の表面硬化層72が側壁シール面3
14上に形成された。表面硬化層72の各部の幅は約3
00μm,深さは50μmであった。この表面硬化層7
2は,実施形態例1の場合と同様に,側壁シール面31
4の耐摩耗性向上に寄与し,ひいては回転構造体1の耐
久性を向上させることができる。その他は実施形態例1
と同様である。
【0052】実施形態例4 本例においては,図14,図15に示すごとく,実施形
態例1における回転構造体1の側壁シール面314に面
状の表面硬化層74を形成した具体例である。即ち,図
15に示すごとく,レーザービーム6は,側壁シール面
314の形状に沿って円状に複数回周回移動させながら
照射し,かつ,第2周回目以降のレーザービーム6の照
射は,その照射により形成される溶融部が1つ前の周回
目の照射により形成された溶融部と部分的にラップした
状態で形成されるように行った。
【0053】具体的には,実施形態例3におけるレーザ
ービーム6の半径方向の移動速度を0.5→0.2m/
分の速度に落とした。その他の処理条件は実施形態例3
と同様とした。この結果,図14より知られるごとく,
幅広い面状の表面硬化層74がドーナツ状に形成され
た。表面硬化層74の幅は約2mm,深さは50μmで
あった。この面状の表面硬化層74は,側壁シール面3
14の大部分を占めるため,さらに十分な耐久性を発揮
する。その他は実施形態例1,3と同様の効果が得られ
る。
【0054】実施形態例5 本例は,図16,図17に示すごとく,レーザービーム
6をその相対的な移動方向と90度をなす方向に所定距
離だけ揺動させながら照射することによって,実施形態
例1における回転構造体1の側壁シール面314に面状
の表面硬化層74を形成した具体例である。
【0055】レーザービーム6の照射条件は,まず,セ
ンターサポート3の回転数は3000回転/分とするこ
とによりレーザービーム6の相対的な回転の周速を47
0m/分とした。また,レーザービーム6の出力は1.
8Wとした。そして,レーザービーム6は,その照射位
置をセンターサポート3の半径方向に80Hzの周波数
で2mm幅だけ揺動させながら照射した。その他は実施
形態例1と同様である。
【0056】この条件により得られた表面硬化層74
は,図16に示すごとく,実施形態例4と同様に幅広の
ドーナツ状となった。また,表面硬化層74の幅は約2
mm,深さは50μmであった。本例の場合には,レー
ザービーム6の揺動幅を調整することによって,容易に
面状の表面硬化層74を形成することができる。その他
は実施形態例1,3,4と同様の効果が得られる。
【0057】
【発明の効果】上記のごとく,本発明によれば,耐摩耗
性に優れたシール溝を有する回転構造体,及びシール溝
の耐摩耗性を容易に向上させることができる表面改質方
法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,自動変速機の全体構成
を示す説明図。
【図2】実施形態例1の回転構造体の構成を示す説明
図。
【図3】実施形態例1の回転構造体における摺動部を示
す説明図。
【図4】実施形態例1における,センターサポートへの
レーザービームの照射状態を示す説明図。
【図5】実施形態例1における,レーザービームの照射
軌跡を示す説明図。
【図6】実施形態例1における,表面硬化層の形成過程
を示す説明図。
【図7】実施形態例1における,形成された表面硬化層
を断面から見た説明図。
【図8】実施形態例1における,レーザービームの照射
軌跡を示す説明図。
【図9】実施形態例1における,形成された表面硬化層
を断面から見た説明図。
【図10】実施形態例2における,表面硬化層の硬度の
測定結果を示す説明図。
【図11】実施形態例2における,表面硬化層の表面粗
さの測定結果を示す説明図。
【図12】実施形態例3における,表面硬化層の形状を
示す説明図。
【図13】実施形態例3における,レーザービームの移
動と溶融部の形成状態を示す説明図。
【図14】実施形態例4における,表面硬化層の形状を
示す説明図。
【図15】実施形態例4における,レーザービームの移
動と溶融部の形成状態を示す説明図。
【図16】実施形態例5における,表面硬化層の形状を
示す説明図。
【図17】実施形態例5における,レーザービームの移
動と溶融部の形成状態を示す説明図。
【図18】従来例における,回転構造体における摺動部
を示す説明図。
【符号の説明】
1...回転構造体, 10...自動変速機, 2...ドラム, 3...センターサポート, 31...シール溝, 311〜314...側壁シール面, 34...油溝, 4...シールリング, 5...作動油, 6...レーザービーム, 72,74...表面硬化層,
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 横山 剛 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エイ・ダブリュ株式会社内 (72)発明者 安田 貴弘 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エイ・ダブリュ株式会社内 (72)発明者 根木 豊二 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エイ・ダブリュ株式会社内 (72)発明者 村田 彰 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エイ・ダブリュ株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円筒状支持部材の外周面に設けたシール
    リングを遊嵌するシール溝における側壁シール面を改質
    する方法であって,高密度エネルギービームを上記側壁
    シール面の形状に沿って相対的に移動させながら照射
    し,照射部分の表層のみを融点以上に加熱して溶融部と
    なし,次いで該溶融部を急冷凝固させて表面硬化層を上
    記側壁シール面に形成することを特徴とする表面改質方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記高密度エネルギ
    ービームは,上記側壁シール面の形状に沿って相対的に
    回転移動させながら,かつ,その回転半径を徐々に変化
    させながら上記側壁シール面に螺旋状に照射することを
    特徴とする表面改質方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において,上記溶融部の
    深さは100μm未満であることを特徴とする表面改質
    方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項において,
    上記高密度エネルギービームによる上記加熱の時間は,
    0.5msec以下であることを特徴とする表面改質方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項において,
    上記高密度エネルギービームは,上記側壁シール面の形
    状に沿って円状又は楕円状に複数回周回移動させながら
    照射し,かつ,第2周回目以降の高密度エネルギービー
    ムの照射は,第1周回目の照射により形成された上記溶
    融部が凝固する前に行うことを特徴とする表面改質方
    法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項において,
    上記高密度エネルギービームは,その相対的な移動方向
    と90度をなす方向に所定距離だけ揺動させながら照射
    することを特徴とする表面改質方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項において,
    上記高密度エネルギービームは,上記側壁シール面の形
    状に沿って円状又は楕円状に複数回周回移動させながら
    照射し,かつ,第2周回目以降の高密度エネルギービー
    ムの照射は,その照射により形成される溶融部が1つ前
    の周回目の照射により形成された溶融部と部分的にラッ
    プした状態で形成されるように行うことを特徴とする表
    面改質方法。
  8. 【請求項8】 円筒状支持部材と,該円筒状支持部材の
    外周面に設けたシール溝に遊嵌したシールリングと,該
    シールリングの周囲に配設された回転体とを有する回転
    構造体において,上記シール溝における上記シールリン
    グとの摺動部となる側壁シール面には,該側壁シール面
    の形状に沿って表面硬化層が形成されており,かつ,該
    表面硬化層は,高密度エネルギービームの照射によって
    上記側壁シール面の表層のみを融点以上に加熱して溶融
    部となし,次いで該溶融部を急冷凝固させて形成してあ
    ることを特徴とする回転構造体。
  9. 【請求項9】 請求項8において,上記表面硬化層は,
    上記シールリングの回転方向に沿って徐々に内径方向に
    縮径する螺旋形状に設けられていることを特徴とする回
    転構造体。
  10. 【請求項10】 請求項8において,上記表面硬化層
    は,上記シールリングの回転方向に沿って徐々に外径方
    向に拡径する螺旋形状に設けられていることを特徴とす
    る回転構造体。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102006059885A1 (de) * 2006-12-19 2008-06-26 Volkswagen Ag Bauteil, insbesondere für den Kraftfahrzeugbereich
DE19942386B4 (de) * 1999-09-04 2013-10-02 Pro-Beam Systems Gmbh Verfahren zur Randschichtbehandlung von Oberflächen mittels Energiestrahl
US9086448B2 (en) 2011-10-21 2015-07-21 Peking University Method for predicting reliable lifetime of SOI mosfet device
JP2020110850A (ja) * 2019-01-08 2020-07-27 本田技研工業株式会社 表面改質方法、鋳造用金型の製造方法及び鋳造用金型

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