【発明の詳細な説明】
多官能価有機アルカリ金属開始剤およびその合成、アニオン重合された星形重合
体およびそれらの調製
本発明の分野
本発明は、さまざまな星形重合体の合成に好適な多官能価有機アルカリ金属開
始剤およびその合成、それにより調製されたオレフィンのアニオン重合された星
形重合体並びにそれらの調製方法に関する。より詳細には、本発明は、モノオレ
フィンおよび/またはジエンのアニオン溶液単独重合または共重合のための多官
能価有機アルカリ金属開始剤およびその合成、並びに前記開始剤により開始され
るモノオレフィンおよび/またはジエンを重合させるための重合方法並びにその
重合生成物にも関する。
本発明の背景
近年、アニオン重合技法を使用して星形重合体を合成することがますます強調
されて、その研究範囲は絶えず拡張されており、前記重合体種は日に日に増えて
おり、それらの多くが工業生産を具現化している。包含される分野は、非常に初
期の段階においては、星形エラストマーとカップリングしたスチレンブタジエン
((SB)nR)の星形ブロック共重合体およびカップリングしたスチレンイソ
プレン((SI)mR)の星形ブロック共重合体から出発し、現在、カップリン
グした星形のランダム溶液重合されたポリスチレンブタジエン(S−SBR)、
低いシス−ポリブタジエン(LCBR)、中間のビニルポリブタジエン(MVB
R)、および高いビニルポリブタジエン(HVBR)、並びに最新のスチレンイ
ソプレンブタ
ジエンゴム(S−SIBR)などにまで発展した。
星形重合体をアニオン的に合成する方法は、一般に2種類ある。一方は、その
合成用の多官能価アルカリ金属開始剤、とりわけ多官能価有機リチウム開始剤を
使用するものであるけれども、現在に至るまで、星形重合体の合成のためのアニ
オン方法は、通常は、その開始剤として一官能価アルキルリチウムを使用して、
まず線状重合体を合成し、次に多官能価カップリング剤を添加して、カップリン
グ反応を行い、最終的な生成物を得る合成である。
有機リチウム開始剤はアニオン重合において幅広く使用されており、前記有機
リチウム開始剤は、各々の分子が開始後に含む活性中心の数によって、複数の種
類、すなわち、モノリチウム開始剤、例えばRLi、ジリチウム開始剤、例えば
ナフチルリチウム、および多官能価有機リチウム開始剤(各々の分子が含む活性
中心の数は2を超える)に分類される。
多官能価有機リチウム開始剤は、主に星形重合体の合成において使用されてい
る。線状高重合体と比較して、それらの星形重合体は、それら自身の特徴を有し
ており、例えば線状の溶液重合されたスチレンブタジエンゴムと比較して、星形
の溶液重合されたスチレンブタジエンゴムはタイヤに製造した後に、より良好な
全体としての機械的性質、主として、より低いころがり抵抗、より良好なウェッ
トスキッド抵抗を有しており、それは省エネルギーゴムの一種であり、さらに例
を挙げれば、星形の中間のビニルポリブタジエンは、その線状生成物と比較して
、かなり良好な加工性能およびコールドフロー抵抗を有しており、さらに、熱可
塑性エラストマーに関しては、その星形SBSは、線状SBSと比較して、より
高いムーニー粘度、より良好な引張強さおよびより高い耐熱性を有する。さらに
、特定の末端基を有する星形重合体は、接着剤、液体ゴムなどにお
いて、幅広い用途をも有する。
しかしながら、この開始剤は、出発原料の入手が困難であり、製造技術が複雑
であり、官能価を制御することも、または調節することも容易ではないために、
実際にはあまり使用されておらず、星形ブロック共重合体の合成に使用すること
ができる(例えば、欧州特許第 0,210,016号、米国特許第 4,161,494号、米国特
許第 4,196,153号、米国特許第 172,190号など)けれども、他の星形重合体の合
成にはめったに使用されない。例えば、英国特許第 2,124,228号において、その
開始剤は、ジビニル芳香族炭化水素およびアルキルリチウムの添加により調製さ
れる。
芳香族炭化水素溶媒中でRLiを開始剤として使用して、少量のジビニルベン
ゼン(DVB)を開始し、多官能価有機リチウムを調製する方法は、文献、例え
ば英国特許第 2,124,228号およびHelmut Eschwey,Walther Burchard,Polymer
,vol.16,181,1975 において既に報告されている。その開始剤の官能価は、
RLiの種類(n-BuLi、s-BuLi、t-BuLi)、そのDVB置換基の位
置(p-DVB)およびRLiとDVBとの供給量比によって制御される。
上述の方法において、複数の二重結合を含んでいる他の化合物、例えば多ビニ
ル芳香族炭化水素化合物(1,2,4-トリビニルベンゼン、1,3,5-トリビニルナフタ
レンなど)、多ビニルリン化合物(メチルジビニルリン、トリビニルリンなど)
、多ビニルケイ素(メチルトリビニルケイ素、ジエチルジビニルケイ素など)で
DVBを置き換えることもでき、例えば、それらは米国特許第 4,091,198号にお
いて開示されている。
このように調製された多官能価有機アルカリ金属開始剤が、非極性溶媒中で、
より高い溶解度を有するように、開始剤としてRLi
を使用するのと類似の方法を用居ること、例えば2または3個の二重結合を含む
、はるかに大きな分子量の有機化合物、例えば米国特許第 4,196,153号、欧州特
許第 210,016号における
および米国特許第 4,161,494号における
を用いてDVBを置き換えて、芳香族炭化水素またはアルカン中で多官能価有機
リチウム開始剤を調製することもまた報告されており、理論的に言えば、その官
能価は反応の進行に従って連続的に増加するであろうけれども、報告されている
ものとしては、一般に3である。
上記多官能価有機リチウム開始剤は、RLiを使用して、ジエンおよびDVB
を含んでいる少量の混合物を開始することにより調製することもできる(例えば
、米国特許第 4,091,198号)。
さらに、上記多官能価有機リチウム開始剤は、複数の二重結合を含んでいるオ
リゴマーとRLiを反応させることにより調製することもでき、このようなオリ
ゴマーはポリジエン(D.D.Pat.150,469、D.D.Pat.158,781)であってもよ
く、複数の二重結合を有し、スチレンとDVBとの共重合により形成される「ミ
クロゲル化核」であってもよい(Koji Ishizu,Shinichi Gamoo,Takashi Fukuto
mi,Toshio Kakurai,Polymer J.,Vol.12,399,1980; Yin Rui, Liu Hao,and
Shen Jiacong,The Academic Thesis Photoprint C
ollection of the National High Molecular Polymer Report Conference,124
,1987)。
一方、上記多官能価有機アルカリ金属開始剤は、低分子量活性重合体を使用し
てRLiを置き換えて、DVBなどと反応させることにより形成することもでき
る(Rempp.P.,Iranta.E,Pure Appl. Chem.30,229,1972; Yin Rui,and Sh
en JIacong,The Academic Thesis Photoprint Collection of the National Hi
gh Molecular Polymer Reporting Conference,126,1987)。その開始剤の官能
価は、主に使用される活性重合体の分子量によって影響され、その分子量が小さ
い程、その官能価が高くなり、その官能価の範囲は一般に3〜 100であることが
見出されている。
上記S−SBRは、複数の海外の法人により工業生産に使用されており、彼ら
は基本的に第2の方法、例えば英国特許第 2,160,207号、米国特許第 4,397,994
号、米国特許第 4,519,431号、米国特許第 4,540,719号、米国特許第 4,603,772
号、日本国特許第 82,205,414号など、を用い、そのカップリング剤は、一般に
、複数のハロゲン分子を含んでいる金属ハロゲン化物およびジビニルベンゼンで
ある。ジリチウム開始剤を使用する場合、ゲル形成を避けるためには、カップリ
ング剤として、一般にR2SnX2を使用する(例えば、米国特許第 4,742,174号
)。米国特許第 4,742,174号においては、有機リチウム多官能価開始剤を使用し
て、溶液共重合反応を行い、次にR2SnX2を含んでいる供給物とのカップリン
グ反応を行って、共役ジエンとビニル置換芳香族炭化水素のランダム共重合体を
調製することが紹介されており、それから、その共重合体を少なくとも20%含ん
でいる組成物を生産し、タイヤ性能を改良するのに有用なゴム組成物を提供する
ことができる。
当該分野には、解決すべき以下の問題が存在する。
(1)例えば、RLi+DVBの場合には、その官能価を安定に制御すること
も、または調節することもできず、星形重合体の工業適合性において使用するの
は難しい。
(2)それられ自身の合成が複雑で、それらの純度を保証することができず、
最終的な生成物、例えば
の官能価に影響を及ぼすことがある出発原料もある。
(3)RLiの生産コストがかなり高い。
(4)星形重合体に関しては、その高分子鎖がSn−C結合を含んでいる星形
S−SBRのように、その高分子鎖上にヘテロ原子を含んでいる場合に、その加
工のためのカーボンブラック(強さの改良に好都合である)のより良好な吸収性
および分散性を示すけれども、その開始剤中には、炭素、水素、およびアルカリ
金属以外の他のヘテロ原子がまったく存在しない。
先行技術の上述の欠点のだけのために、現存する星形重合体合成技法には、そ
の開始剤として、多官能価有機リチウムはめったに使用されず、一般にRLiが
使用されている。すなわち、まず活性線状重合体を合成し、次にその中にカップ
リング剤を添加して、カップリング反応を行い、最終的に星形重合体を形成させ
る。このような合成方法には、多くの限界、すなわち、複雑な技術、それらの装
置の低い実効速度(utility rate)、大きな投下資本、それらの装置および重合条
件に対する厳しい要求、大きなエネルギー消費、低いカップリング速度、および
不満足な製品性能が存在する。
上記問題の解決方法を見出すために、本発明は、それらについて
の根本的な研究および多くの試験を行い、ついに打開策が現れるに至り、本発明
は完成した。
本発明の要約
本発明はアニオン重合に使用してさまざまな種類の星形重合体を調製する開始
剤に関し、その開始剤の一般式はMa(RMe)b(上式中、元素MはSn、Ti
、Al、Siおよび/またはB、好ましくはSnおよび/またはSiの群から選
ばれ、Rは8〜 100個、好ましくは20〜60個の炭素原子を含んでいる炭化水素で
あり、Meはアルカリ金属であり、好ましくはNaおよび/またはLiから選ば
れ、aは 0.7〜3、好ましくは1〜3であり、bは 2.5〜 6.5、好ましくは3〜
5である)である。
本発明は、さらに上述の開始剤の調製方法に関し、前記方法が以下の工程
単量体 100gあたりで 0.2〜2モルの使用量の有機アルカリ金属初期開始剤の
存在下、炭化水素溶媒中で、ジエンおよび/またはモノオレフィン単量体の反応
を開始させて、8〜 100個、好ましくは20〜60個の炭素原子を有し、その分子鎖
末端に活性中心を含んでいる炭化水素遊離基を形成させる第1工程、
上記活性中心と反応することができる複数の遊離基を有する化合物MXjまた
はMR’Xj-1を添加して、それらの活性中心と反応させ、結果としてMXjまた
はMR’Xj-1の使用量が
A/B= 1.5〜3、好ましくはA/B= 1.5〜 2.5、
(上式中、Aは第1工程反応において形成された活性中心の数であり、Bは、そ
れらの活性中心と反応することができる、添加したMXjまたはMR’Xj-1中の
遊離基の全数である)
となり、上記多官能価有機アルカリ金属開始剤
Ma(RMe)b
(上式中、MはSn、Ti、Al、Siおよび/またはBの群から選ばれ、
XはF、Clおよび/またはBrから選ばれ、
R’はC1〜C8アルキルであり、
jの値は使用される元素Mの原子価と等価であり、MXjは一般にSnCl4、
TiCl4、AlCl3、BF3、および/またはSiCl4、好ましくはSnCl4
および/またはSiCl4から選ばれ、
MR’Xj-1はSnR’Cl3および/またはSiR’から選ばれ、MR’Xj- 1
は好ましくはSnCH3Cl3および/またはSiCH3Cl3から選ばれる)
を形成させる第2工程、
を含んでいる。
本発明は、アニオン多官能価有機アルカリ金属開始剤の存在下、アニオン溶液
重合で、モノオレフィンおよび/またはジエン単量体出発原料を重合することに
より形成される、アニオン的に重合された星形重合体にも関し、前記星形重合体
は、その開始剤の核から放射状に広がっている複数の高分子鎖の腕からなる放射
状分子構造を有しており、前記分子鎖の腕は使用した単量体から形成されており
、前記開始剤が一般式Ma(RMe)b(元素MはSn、Ti、Al、Siおよび
/またはBの群から選ばれ、Rは8〜 100個、好ましくは20〜60個の炭素原子を
有する炭化水素基であり、Meはアルカリ金属、好ましくはNaおよび/または
Liであり、aは 0.7〜3、好ましくは1〜3であり、bは 2.5〜 6.5、好まし
くは3〜5である)を有する化合物である。
本発明は、さらに星形重合体の調製方法に関し、前記方法は、以
下の工程
多官能価有機アルカリ金属開始剤の存在下、炭化水素溶媒中で、アニオン溶液
重合により、モノオレフィンおよび/またはジエンを重合すること、
を含んでおり、
前記開始剤は、下記一般式
Ma(RMe)b
(上式中、元素MはSn、Ti、Al、Siおよび/またはBの群から選ばれ、
Rは8〜 100個、好ましくは20〜60個の炭素原子を有する炭化水素基であり、M
eはアルカリ金属、好ましくはNaおよび/またはLiであり、aは 0.7〜3、
好ましくは1〜3であり、bは 2.5〜 6.5、好ましくは3〜5である)
を有する化合物である。
本明細書から、本発明の目的は、さまざまな星形重合体の合成に使用され、低
いコスト、単純な技法、より低いエネルギー消費およびより良好な製品性能を特
徴とし、炭素、水素、およびアルカリ金属以外のヘテロ原子を含んでいる新規な
多官能価有機アルカリ金属開始剤を提供することであるということを理解するこ
とができる。
本発明のもう1つの目的は、上述の多官能価有機アルカリ金属開始剤の合成方
法を提供することであり、結果として、その合成が単純な技術のものであり、そ
の官能価を希望に応じて好都合に調節することができるという特徴を生ずる。
本発明のさらなる目的は、前記多官能価有機アルカリ金属開始剤を使用するこ
とによるアニオン重合の実行方法を提供すること、およびこの方法から得られる
重合生成物を提供することである。
本発明の他の目的は、以下の説明を参照することにより、容易に表され、理解
されることができる。
図面の簡単な説明
図1は本発明に準じて合成した星形重合体のGPC分子量分布を示している。
図2〜図6は、それぞれ、SHELL、JSR(日本合成ゴム株式会社)、旭
化成工業株式会社、および日本ゼオン株式会社により生産されているカップリン
グしたS−SBRの分子量分布のGPCチャートを示している。
本発明の詳細な説明
アニオン重合分野において、線状重合体の生産のための合成技術は成熟してお
り、例えば、その重合反応は、開始剤としてナフタレンナトリウム、ナフタレン
リチウム、またはアルキルリチウムなどを使用することにより開始され、スチレ
ンなどを重合させる。しかしながら、それらの線状重合体生成物は、より高い性
能の要求よりも低い性能を有しており、より良好な性能を有する星形重合体が代
りに使用されるべきである。
「星形重合体」という用語は、本明細書を通して、その分子中の開始剤の核か
ら放射状に広がっている複数の高分子鎖の腕からなる放射状分子構造を有する重
合体を意味する。上記星形重合体と上記線状重合体との構造における違いは、そ
れら自身の特徴の違いを生じさせる。
例えば、線状のS−SBR(溶液重合されたスチレンブタジエンゴム)は、そ
の分子鎖末端および前記ゴムにおける低分子物質は容易に加硫されないので、加
硫ゴム中に、自由に動くことができる大きな側基を形成し、従って、そのタイヤ
のころがり抵抗が増大する。それらにおける比較により、その星形S−SBRの
分子鎖末端が化学結合でいっしょに結合されており、加硫後には、その大きな分
子ネットワーク中で自由に動くことができる分子鎖末端の数が大幅に減少するた
めに、そのころがり抵抗がより低くなる。一方、その星形S−SBRは、1,2-構
造の含有率が高いので、それゆえに、優れたウェットスキッド抵抗を保ち、線状
S−SBRと比較して、「省エネルギーゴム」であることがわかる。
一方、アニオン法で合成されたポリブタジエン(LCBR、MVBR、HVB
R)は、線状生成物よりも、かなり良好な加工性能およびコールドフロー抵抗を
有する星形構造の生成物を有し、それらもまた同様に、ころがり抵抗が低く、ウ
ェットスキッド抵抗が良好な「省エネルギーゴム」である。さらに、それらは他
の性質もいくつか有する。例えば、星形LCBRは、HIPSの合成に使用され
る際に、高いMLと低い溶液粘度との最適な調和を具現化することができ、それ
らからの生成物は、ABSを置き換えることができる高光沢HIPS(high imp
act polystyrene)である。
当該分野において新たに開発された「インテグラルゴム(integral rubber)
」S−SIBRという観点から見ても、星形構造は、線状構造より良好な特徴を
有する。
熱可塑性エラストマーSBSおよびSISという観点から見ると、星形構造は
、線状構造の生成物より良好なムーニー粘度、引張強さ、および耐熱性をも有す
る。
なおそのうえ、特定の末端基を有する上記星形重合体は、接着剤、液状ゴムな
どに関する幅広い用途をも有する。
星形重合体の調製は、線状重合体のそれよりも、より複雑である。一方の方法
は、開始剤として一官能価のアルキルリチウムを使用して、まず線状重合体を合
成し、次に多官能価カップリング剤を添加して、カップリング反応を行い、最終
的な生成物を得ることを含んでおり、他方の方法は、多官能価有機アルカリ金属
開始剤、とり
わけ多官能価有機リチウム開始剤を使用して、星形重合体を合成するための単量
体を直接開始するというものである。比較によると、前者の方法の方が比較的よ
り成熟しているけれども、ほとんどのカップリング反応は、十分に行うのは容易
ではないので、その生成物は構造的に完全な星形重合体ではなく、その性能は十
分には改良されず、その生産方法は、より低い効率およびより大きなエネルギー
消費を有する。後者の方法は問題、例えば、その開始剤の出発原料が入手しにく
く、その官能価の制御または調節が容易ではなく、従ってゲルを形成しがちであ
り、その調製方法が複雑であるなどの問題を有しており、実際にはあまり使用さ
れておらず、それらの少数のみが星形ブロック共重合体の合成に用いられ、非常
に少数が他の星形重合体の合成に使用されている。
2つの現存するアニオン重合方法のこれらの上述の問題を解決するために、本
発明は、前記技術分野において、多年にわたる研究および大量の実験を行い、幅
広い用途と、カップリング工程をまったく必要とせずに上記官能価を制御および
調節し、結果として上記星形重合体を円滑かつ安定で非常に有効に合成し、優れ
た性能を有する完全に新規な星形重合体を製造することができる合成方法とを有
する開始剤を与える本発明を、ついに完成した。
それゆえに、本発明にかかる1つの特徴は、上記アニオン重合において幅広く
使用されるのに好適な開始剤を提供することである。アニオン重合によるさまざ
まな星形重合体の調製に使用されるべき本発明の開始剤は、ヘテロ原子Mおよび
炭化水素アルカリ金属部(RMe)からなる下記一般式
Ma(RMe)b
(上式中、ヘテロ原子MはSn、Ti、Al、Siおよび/またはBの群から選
ばれる元素であり、Rはモノオレフィンおよび/また
はジエン間の反応により形成され、8〜 100個、好ましくは20〜60個の炭素原子
を有する炭化水素であり、Meはアルカリ金属、好ましくはナトリウムおよび/
またはリチウムであり、aは 0.7〜3、好ましくは1〜3であり、bは 2.5〜 6
.5、好ましくは3〜5である)
を有する化合物である。
本発明によれば、前記開始剤は以下の反応式に基づく2つの工程で合成される
。
上式中、ArHは縮合環芳香族炭化水素、ナフタレン、アントラセン、フェナ
ントレンなどを表す。
本発明のもう1つの特徴は、前記開始剤のための2工程合成方法を提供するこ
とである。前記合成方法は、
単量体 100gあたりで 0.2〜2モル、好ましくは 0.5〜 1.5モルの量で上記有
機アルカリ金属を上記開始剤として使用して、炭化水素溶媒中で、ジエンおよび
/またはモノオレフィン単量体を開始させて、その分子鎖末端に活性中心を有す
る炭化水素を形成させる第1工程、
(前記活性中心と反応することができる)複数の遊離基を有する化合物MXj
または化合物MR’Xj-1を添加して、その活性中心と反応させ、MXjまたはM
R’Xj-1の使用量を、A/B= 1.5〜3、好ましくは 1.5〜 2.5(上式中、A
は第1工程反応において形成された活性中心の数であり、Bは、それらの活性中
心と反応す
ることができる、MXjまたはMR’Xj-1中の遊離基の全数であり、上式中、M
はSn、Ti、Al、Siおよび/またはBの群から選ばれ、XはF、Clおよ
び/またはBrから選ばれ、jの値は使用される元素Mの原子価と等価であり、
R’はC1〜C8アルキルである)とする第2工程、
を含んでいる。最終的に形成される反応生成物は、上記多官能価有機アルカリ金
属開始剤Ma(RMe)bである。
上述の反応式(1)において、上記有機アルカリ金属初期開始剤[ArH]-
Me+は、その場で合成しても、または既製の種を使用してもよく、本発明にお
いては、既製の種、例えばナフタレンリチウム、ナフタレンナトリウム、アント
ラセンリチウム、アントラセンナトリウムなどを使用するのが好ましく、その有
機アルカリ金属開始剤としては、ナフタレンリチウムおよびナフタレンナトリウ
ムがとりわけ好ましい。
前記反応において、使用される単量体は、ジエンおよび/またはモノオレフィ
ンを含んでおり、ジエンはブタジエン、イソプレンおよびそれらの誘導体であっ
てもよく、モノオレフィンはビニル化合物単量体、例えばスチレン、α−メチル
スチレンなど、およびアクリレート、メタクリレートなどであってもよい。原則
として、これらのモノオレフィンおよびジエンは、それらについての厳しい制限
はまったく有しておらず、非常に幅広い選択範囲を有しており、前記選択は、当
業者にとってはまったく難しいものではない。同様に、それらの単量体の使用量
の範囲も、ほとんどのアニオン重合におけるものに似通ったものである。一般に
、それらの単量体の含有率は、その反応系の全重量に対して、約1〜10%、好ま
しくは約2〜8%である。
希望する炭化水素の分子量および最終的な重合体の希望する微細
構造に応じて、上記有機アルカリ金属開始剤の使用量を制御することができる。
その開始剤の使用量が多い場合、形成される炭化水素の分子量は低く、その開始
剤の使用量が少ない場合は、形成される炭化水素の分子量は高い。本発明におい
ては、その有機アルカリ金属初期開始剤の使用量は、単量体 100gに対して、そ
の中のアルカリ金属の含有量が約 0.2〜2モル、好ましくは約 0.5〜 1.5モルで
ある。
前記反応式(1)の合成反応は典型的なアニオン化学反応であり、そこで使用
される溶媒は、このような反応におけるさまざまな従来の溶媒、例えば炭化水素
溶媒などであってもよく、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、ペ
ンタン、ヘプタン、ナフサ油(沸点65〜 110℃)などを包含している。それらは
、個々に使用しても、またはそれらの2種もしくは複数の混合溶媒として使用し
てもよい。それらの使用量は、一般に、その反応系の90〜99重量%、好ましくは
92〜98%である。
前記反応は一般に不可逆的であり、好適な温度および圧力、例えば5〜50℃お
よび標準圧力において、非常に短い時間、例えば15〜30分で完了させる、すなわ
ち炭化水素溶媒中で、ジエンおよび/またはモノオレフィン単量体を開始させ、
反応させて、その分子鎖末端に活性中心を有する低分子量低重合体を形成させる
ことができる。当然のこととして、前記反応時間継続期間についての厳しい制限
はまったく無く、それは、数時間、または数日間さえ続けることができ、その反
応系は未だ活性である。さらに、上記第1工程反応と第2のものとの間には明ら
かな境界線も無く、それら2つは同じ反応条件下で進行することができる。
上記第2工程反応は、上記第1工程反応において得られた反応傾注に、MXj
または化合物MR’Xj-1または他のヘテロ原子ハロ
ゲン化物またはそれらのハロゲン化アルキルを添加することによって行う。そこ
で、MはSn、Ti、Al、Siおよび/またはBなどを表し、XはF、Cl、
Brおよび/またはIであり、R’は1〜8個の炭素原子を有するアルキルであ
り、前記反応体は、上記活性中心と反応することができる遊離基を3〜4個含ん
でいるヘテロ原子含有化合物であり、それは、例えばSnCl4、TiCl4、A
lCl3、BF3、SiCl4、SnBr4、好ましくはSnCl4および/または
SiCl4、並びにSnR’Cl3および/またはSiR’Cl3、好ましくはS
nCH3Cl3、SiCH3Cl3、もっとも好ましくはSnCl4であってもよい
。それらの供給は一度に行ってもよく、数回にわたって添加しても、またはある
時間の間に連続的に供給してもよく、個々に供給してもよく、溶媒などと混合し
て供給してもよい。その反応時間は 0.5〜2時間であるけれども、それについて
の厳しい制限はまったく無い。
それらの使用量は、その最終的な開始剤のa、bなどの値に応じて、比例的に
および化学量論的に決定することができ、すなわち、結果として、A/B= 1.5
〜3となる(上式中、Aは第1工程反応において形成された活性中心の数であり
、Bは、その活性中心と反応することができる、MXjまたはMR’Xj-1中に添
加されている遊離基の全数である)。一般に、単量体 100gあたりの前記ヘテロ
原子化合物の使用量は 0.017〜0.44モル、好ましくは0.02〜0.44モルであり、そ
れにより、a= 0.7〜3、b= 2.5〜 6.5という制御要求を満足することができ
る。それゆえに、上記ヘテロ原子Mの数(a値)および上記活性アルカリ金属の
官能価(b値)、およびそれらの種類を、反応体Mの種類を変え、それらの反応
体間の比率を制御することによって、都合よく調節することができると言うこと
ができる。本発明においては、前記多官能価、b値は、一般に3
〜5に制御される。
本発明の1つの態様によれば、本発明にかかる調製は、有機アルカリ金属開始
剤としてナフタレン路値ウムが使用され、単量体がブタジエンであり、溶媒がベ
ンゼンであり、第1工程が 0.5〜2時間にわたって、5〜50℃において行われ、
続いてヘテロ原子化合物SnCl4が添加され、その反応がさらに 0.5〜2時間
にわたって、5〜50℃において継続し、その反応の終了後、その反応生成物が、
窒素雰囲気下で、使用可能な状態で保たれるという条件下で完了される。前記反
応生成物はSna(R”Li)b(上式中、aは1〜3であり、bは 2.5〜 6.5で
あり、R”は30〜50個の炭素原子を有する炭化水素である)である。
本発明によれば、上記有機アルカリ金属開始剤の官能価(b値)は上記反応系
の第1工程において形成された活性中心数のA値と、第2工程において添加され
る、その活性中心と反応することができるヘテロ原子遊離基の全数としてのB値
との間の比率を制御することにより調節することができる。例えば、有機リチウ
ムおよびSnCl4が使用される態様においては、それら2つの値は以下の対応
関係を有する(表1)。
本発明にかかる開始剤の活性アルカリ金属の官能価の計算方法においては、膜
浸透圧法を使用して、合成した多官能価有機アルカリ金属開始剤の分子量を決定
し、以下の式に基づいて計算を行う。
(上式中、[Me]は反応終了後の、その系における活性アルカリ
金属の残基の全数であり、Wは単量体供給量であり、Mn(測定値)は測定され
る開始剤の数平均分子量である)
本発明のもう1つの特徴は、上述の本発明の多官能価有機アルカリ金属開始剤
を使用して、アニオン溶液重合においてジエンおよび/またはモノオレフィンを
開始させることにより調製される星形重合体を提供することであり、前記星形重
合体は、その開始剤の核から放射状に広がっている複数の高分子鎖の腕からなる
放射状分子構造を有しており、前記分子鎖の腕は、使用した単量体から形成され
、前記開始剤は一般式Ma(RMe)b(上式中、元素MはSn、Ti、Al、S
iおよび/またはBの群から選ばれ、Rは8〜 100個、好ましくは20〜60個の炭
素原子を有する炭化水素基であり、Meはアルカリ金属、好ましくはNaおよび
/またはLiであり、aは 0.7〜3、好ましくは1〜3であり、bは 2.5〜 6.5
、好ましくは 2.5〜 6.5である)を有する多官能価有機アルカリ金属開始剤であ
り、前記単量体はジエンおよび/またはモノオレフィンである。
本発明に準じて行われるアニオン重合反応において使用される単量体は、ジエ
ン、例えばブタジエン、イソプレン、ペンタジエンおよびそれらの同族体などで
あってもよく、それは、モノオレフィン、例えばスチレン、α−メチルスチレン
およびそれらの同族体などを包含しているビニル芳香族炭化水素であってもよい
。共重合反応を行って、共重合体を生産する場合は、さまざまな単量体すべての
間の比率を任意に調節することができ、例えば反応単量体の 0.1〜99.9重量%の
範囲、とりわけ10%〜90%の範囲において任意に変化させて調節するのが一般的
である。それゆえに、本発明の星形重合体は、本質的に、アニオン重合可能な如
何なる単量体の合成生成物にもすることができ、さまざまな継続時間で、その合
成反応におけるさまざまな単量体を変化させることにより、さまざまな性能を有
するさまざまな生成物を合成することができ、それにより分子設計を実現するこ
とができ、最終生成物の性能を希望通りに変化させるための合成制御手段をも得
ることができる。
より重要なことには、本発明の多官能価アルカリ金属開始剤を使用するので、
上記星形重合体の合成は、アニオン重合反応によって、直接的に完成することが
でき、先行技術が有するような、その次のカップリング工程を有する必要が無い
。この1工程合成方法により生産された重合生成物の重要かつ顕著な特徴の1つ
は、GPCにより表される前記重合生成物の分子量分布が、図1に示されている
ような均一な単一ピークを示すということにある。しかしながら、さまざまな種
類のカップリングした星形重合体についての分子量分布に対応するGPCチャー
トは、すべて、本発明の星形重合体により示されるような均一で単一ピークを示
すことができず、多様な分布を示し、それは、その次のカップリング工程から得
られる分子量の極度に大きな違いの重要な兆候であるということがわかる。図2
〜6において示されているように、それらは、それぞれS−1215(SHEL
L)、SL−552(JSR)、1204(旭化成工業株式会社)並びにNS−
110およびNS−114(日本ゼオン株式会社)についての分子量分布のGP
Cチャートであり、それらのすべてが、非常に明らかな多様性を示している。当
然のこととして、その次の処理、例えば2バッチまたはそれ以上のブレンドなど
が本発明の重合体生成物の多様な分布を生ずることもあるけれども、直接重合さ
れた本発明の生成物についての分子量分布は、GPCによって示されているよう
な単一ピークのみを生じるであろう。
上記説明から、本発明の開始剤を使用して、アニオン重合技術によって、さま
ざまな単量体をさまざまな処方比率において使用して、さまざまな単量体から、
さまざまな性能の非常にさまざまな重合
生成物を生産することができ、それらを星形単独重合体、例えばLCBR、MV
BR、HVBRなどとしたり、または星形共重合体、例えば(SB)nR、(S
I)nR、S−SBR、HIPSおよび部分的に極性単量体(例えばMMA)セ
グメントを有する星形ポリマーとしたり、または開発されつつある一連のさまざ
まな既知もしくは未知の星形重合体生成物、例えば国際的に新規に開発された「
インテグラルゴム」(S−SIBR)などとすることもできる。
本発明に準じて合成された星形重合体については、各々の重合体分子中に、平
均で 2.5〜 6.5個の高分子鎖の腕が存在し、それらは開始剤の官能価によって調
節することができる。さらに、上記多官能価有機アルカリ金属開始剤は、それ自
身が、ヘテロ原子、例えばSn、Ti、Al、SiおよびBを含んでいるので、
対応する星形重合体もまた同じヘテロ原子を含んでいる。ゴムタイプの星形重合
体(例えばLCBR、MVBR、、HVBR、S−SBR、S−SIBRなど)
に関しては、その中へのヘテロ原子の導入は、その中でのカーボンブラックの均
質な分布に好ましく、従って、それらの生成物の全体としての機械的性質を改良
することができる。このような改良は、ヘテロ原子をまったく含んでいない開始
系を使用して合成される重合体にとっては、到達が容易ではない。このような製
品性能の改良および生産技術の単純化は、優れた経済的恩恵および産業上の利用
可能性を生ずる。
本発明のもう1つの重要な特徴は、本発明の多官能価有機アルカリ金属開始剤
の存在下での星形重合体の調製方法である。前記方法は、多官能価有機アルカリ
金属開始剤の存在下、炭化水素溶媒中で、アニオン溶液重合により、モノオレフ
ィンおよび/またはジエンを重合すること、を含んでいる。前記開始剤は、一般
式Ma(RMe)b(上式中、ヘテロ原子MはSn、Ti、Al、Si、および
/またはBの群から選ばれ、Rはモノオレフィンおよび/またはジエンの反応に
より形成され、8〜 100個、好ましくは20〜60個の炭素原子を有する炭化水素で
あり、Meはアルカリ金属、好ましくはナトリウムおよび/またはリチウムであ
り、aは 0.7〜3、好ましくは1〜3であり、bは 2.5〜 6.5、好ましくは3〜
5である)を有する化合物である。
星形重合体の調製のための本発明の方法において、前記多官能価有機アルカリ
金属開始剤は、その重合反応系において、その活性アルカリ金属のミリモルに基
づいて、単量体 100gあたりで約 0.5〜10ミリモル(好ましくは約 0.7〜6ミリ
モル)の範囲の量において使用した。その反応温度は5〜 100℃、好ましくは10
〜90℃の間である。その反応圧力は一般に標準圧力〜0.5MPaである。その反応時
間は厳しく限定されず、一般に 0.5時間〜8時間の間である。最後に、、従来の
技法に準じて、少量のアルコールをその中に添加し、それらの活性中心を失活さ
せ、その反応を停止する。
上記に示されているように、それらの単量体は、アニオン重合に使用すること
ができる如何なる単量体をも選ぶことができ、それらは、ジエン、例えばブタジ
エン、イソプレン、ペンタジエンおよびそれらの同族体などであってもよく、そ
れらは、モノオレフィン、例えばビニル芳香族炭化水素(スチレン、α−メチル
スチレンおよびそれらの同族体など)、アクリル単量体、例えばアクリレート、
メタクリレートなどであってもよく、すべて、本発明の重合方法のための単量体
として使用することができる。なおそのうえ、共重合反応を行って、共重合体生
成物を生産する場合は、さまざまな単量体すべての比率を調節することができ、
例えば、それらの反応単量体の全重量は 0.1〜99.9重量%の範囲、好ましくは10
%〜90%の範囲において任意に変化させることができ、それはより一般的に使用
される調節範囲である。前記単量体の選択は当業者にとって非常に容易である。
同様に、それらの単量体の使用量の範囲は、ほとんどのアニオン重合におけるも
のに近くもあり、すなわち、その反応系の全重量に対する単量体含有率は約5〜
20%、好ましくは8〜15%である。
本発明の方法において使用する溶媒は、アニオン重合分野において使用するこ
とができる如何なる溶媒または混合溶媒であってもよい。一般に、炭化水素溶媒
、例えばシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ナフサ油(沸点65〜
110℃)、ベンゼン、トルエンなど、またはそれらの混合溶媒を、本発明の重合
方法の溶媒として使用する。前記溶媒の量の範囲は、一般に、その反応系の全重
量に対して約80〜95重量%、好ましくは85〜92%である。
前記重合方法において、最終生成物の要求を満たすために、他の助剤、例えば
、ジグリム(2G)、トリグリム(3G)、ジメトキシエタン(DME)、ヘキ
サメチルリン酸トリアミド(HMPTA)、テトラメチルエチレンジアミン(T
MEDA)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン(DOX)、トリエチ
ルアミンおよび他のエーテルまたはアミン化合物のようなルイス塩基調節剤、使
用することができる。それらの使用量は当業者によく知られており、さまざまな
要求に基づいて、それらを決定するのは非常に容易であり、さらなる制限をそれ
に与える必要は無い。
本発明の態様において、前記アニオン重合は、以下のように行われる。その中
に上記反応体を添加する前に、その反応器を高温でベークし、窒素ガスで3回ま
たはそれ以上パージし、次に、その単量体溶液および(任意の)計量したルイス
塩基調節剤をその中に添加し、最終的に多官能価有機アルカリ金属開始剤を計量
して添加する。2〜5時間にわたって、40〜90℃および標準圧力において、窒素
雰囲気による保護下で、その反応を行う。次に、その中にメータノーるを添加す
ることによって、水蒸気の処理下で、その溶媒を蒸発させる。脱水および乾燥の
後、上記星形重合体が実際に得られる。
本発明は新たに開発されたアニオン重合多官能価有機アルカリ金属開始剤を使
用するので、その合成技法は追加のカップリング剤を必要とせず、生産フローを
単純化し、従って、それらの設備はより単純であり、エネルギー消費は押さえら
れる。同時に、本発明の上述の開始剤は、多くのさまざまな単量体の合成反応に
好適であることがあり、特別な設備投資をすることなく、いつでも、さまざまな
生成物の生産に変更することができ、それは機動性および柔軟性を有する。さら
に、カップリング工程が無いので、重合生成物の性能が改良される。前記カップ
リング反応は、高分子鎖と低分子カップリング剤との間で起こり、その高分子系
の高い粘度から生ずる立体障害およびそれらの分子鎖の巻き付きは、両方共、そ
のカップリング効果に影響を及ぼす(一般に約50%)。本発明はカップリング工
程をまったく必要とせず、それらの星形重合体を1工程重合により導くことがで
き、それらの分子量分布は比較的均一で、線状高分子は本質的にまったく存在し
ない。ゆえに、それらの機械的性質および動的機械的性質は、両方共、全体とし
て、総体的に改良され、以下の実施例において行われている性能比較からも、同
じ結論を導くことができる。
今ここに、実施例と関連して、本発明は明確に説明される。しかしながら、本
発明は、そのような実施例によっては、決して限定されないということが理解さ
れるべきである。その中に含まれている関連特性試験およびそれらの測定方法は
、「300%引っ張り強さ」、「破断点引張強さ」および「破断点伸び」(中国測
定規格(Chinese Measuring Standard)のGB528に準じて測定される)、「シ
ョアーA硬度」(GB531−83に準じて測定される)並びにTg(動的粘弾
性計で測定される)を包含している。実施例1
30mLのベンゼン、 1.2gのブタジエン、および12mLの初期開始剤ナフタレンリ
チウムを、電磁気的に攪拌されている清浄な 100mLの重合フラスコ中に添加し、
1時間にわたって、20℃において反応を行った。次に、その中に1.44ミリモルの
四塩化スズを添加し、さらに1時間にわたって、20℃において反応を続け、次に
停止した。その生成物である多官能価有機リチウム開始剤が得られ、その官能価
は平均で 3.8であった。各々の分子は平均で1個のスズ原子を含んでいた。実施例2
実験装置は実施例1におけるものと同一とした。その中に30mLのナフサ油(沸
点65〜 110℃)、 1.8gのイソプレン、 3.5ミリモルの初期開始剤ナフタレンリ
チウムを添加し、1時間にわたって、20℃において、反応を行った。次に、その
中に 0.6ミリモルの四塩化スズを添加し、さらに1時間にわたって、20℃におい
て反応を続け、次に停止した。その生成物の官能価は平均で 6.5であった。各々
の分子は平均で 2.6個のスズ原子を含んでいた。実施例3
実験装置は実施例1におけるものと同一とした。その中に30mLのシクロヘキサ
ン、 1.8gのイソプレン、および8ミリモルの初期開始剤ナフタレンナトリウム
を添加し、1時間にわたって、25℃において、反応を行った。次に、その中に 0
.9ミリモルの四塩化ケイ素溶液を添加し、さらに1時間にわたって、25℃におい
て反応を続け、次に停止した。得られた多官能価有機ナトリウム開始剤は 2.5の
平均官能価を有していた。各々の分子は平均で 0.7個のケイ素原子を含んでいた
。実施例4
実験装置は実施例1におけるものと同一とした。その中に30mLのシクロヘキサ
ン、 2.4gのスチレン、および12ミリモルの初期開始剤ナフタレンリチウムを添
加し、1時間にわたって、25℃において、反応を行った。次に、その中に2ミリ
モルのSiCH3Cl3を添加し、1時間にわたって反応を続け、次に停止した。
得られた多官能価有機リチウム開始剤は 2.9の平均官能価を有していた。各々の
分子は平均で1個のケイ素原子を含んでいた。実施例5
4,000mLのシクロヘキサン、 400gのブタジエン、 100gのスチレン、25mLの
テトラヒドロフラン、および 240mLの実施例1において合成した多官能価有機リ
チウム開始剤を、清浄な10リットルのステンレス鋼容器中に添加し、50℃におい
て、4時間にわたって、典型的なアニオン重合反応を行った。次に、その中に 0
.7gの2,6-ジ -t-ブチル -4-メチルフェノールを含んでいる10mLのメタノールを
添加し、その反応を停止した。その溶媒を、90℃において、脱イオン水によって
抜き取った。その生成物を恒量まで乾燥した。その生成物の全重量は 500グラム
であった。
得られた重合体は、45%の1,2-構造、平均で 3.8本の腕および 302,000の数平
均分子量、並びに1.81のMw /Mn 比を有するブタジエン−スチレンの星形ラン
ダム共重合体であった。実施例6〜8
1,140mLのシクロヘキサン、 112gのブタジエン、28gのスチレン、および 6.
6mLのテトラヒドロフランを、窒素ガスでパージした後に、清浄な2リットルの
ステンレス鋼容器中に添加したものを3
つ用意し、次に、それらの各々の中に、それぞれ異なる3種の多官能価有機リチ
ウム開始剤(それらの平均官能価は表2に示されている)を2mLずつ添加した。
50℃、標準圧力下での、2時間にわたる反応の後に、1gの2,6-ジ -t-ブチル -
4-メチルフェノールを含んでいる10mLのメタノール溶液を添加し、その反応を停
止した。その生成物を、90℃において、脱イオン水中に添加し、その溶媒を蒸発
させ、乾燥した。そのようにして、星形S−SBRを得た。その生成物の全重量
は 140グラムであった。
実施例9
清浄な2リットルのステンレス鋼容器中に、窒素ガスでパージした後に、 1,1
40mLのシクロヘキサン、53gのブタジエン、53gのイソプレン、35gのスチレン
、および2mLのテトラヒドロフラン、および12mLの実施例1において調製した多
官能価有機リチウム開始剤
(平均官能価 3.8)を添加した。標準圧力下、50℃において、4時間にわたって
反応を行った。その生成物の後処理は実施例5のものと同一とした。
得られた生成物は 130gの星形S−SBRであった。その分子量は 290,000で
あり、分子量分布は1.46であり、平均の腕数は 3.8であった。その性能は表3に
示されている。
実施例10
清浄な2リットルのステンレス鋼容器中に、窒素ガスでパージした後に、 1,1
00mLのシクロヘキサン、80gのブタジエン、16mLの実施例1において調製した多
官能価有機リチウム開始剤を添加し、標準圧力下、80℃において、2時間にわた
って重合させた。次に、その中に43gのスチレンを添加し、さらに2時間にわた
って反応を続け、次に、メタノールを添加して、その反応を停止した。その生成
物の後処理は実施例5のものと同一とした。得られた生成物は星形ブロック共重
合体(SB)nRであった。得られた生成物の全重量は 123gであった。その分
子量は 170,000であった。その1,2-構造の含有率は19%であった。その分子量分
布は1.17であった。平均の腕数は 3.8であった。実施例11
清浄な2リットルのステンレス鋼容器中に、窒素ガスでパージし
た後に、 1,100mLのシクロヘキサン、 100gのイソプレン、16mLの実施例1にお
いて調製した多官能価有機リチウム開始剤(平均官能価 3.8)を添加し、標準圧
力下、50℃において、2時間にわたって重合した。次に、その中に18gのスチレ
ンを添加し、さらに2時間にわたって反応を続け、次に、メタノールを添加して
、その反応を停止した。その生成物の後処理は実施例1のものと同一とした。得
られた生成物は星形ブロック共重合体(SI)nRであった。得られた生成物の
全重量は 118gであった。その分子量は 160,000であった。その3,4-構造の含有
率は25%であった。その分子量分布は1.36であった。平均の腕数は 3.7であった
。実施例12
清浄な2リットルのステンレス鋼容器中に、窒素ガスでパージした後に、 920
mLのシクロヘキサン、 110gのブタジエン、12mLの実施例1において調製した多
官能価有機リチウム開始剤(平均官能価 3.8)を添加した。標準圧力下、80℃に
おいて、2時間にわたって反応を行った。その生成物の後処理は実施例5のもの
と同一とした。得られた生成物は星形ポリブタジエンであった。得られた生成物
の全重量は 110gであった。その1,2-構造の含有率は16%であった。そのシス−
1,4-構造の含有率は35%であった。そのトランス−1,4-構造の含有率は49%であ
った。その分子量は 270,000であった。その分子量分布は 1.4であった。平均の
腕数は 3.8であった。実施例13〜15
清浄な2リットルのステンレス鋼容器中に、 920mLのナフサ油(沸点65〜 110
℃)、 110gのブタジエン、ルイス塩基、および12mLの実施例1において調製し
た多官能価有機リチウム開始剤(平均官能価 3.8)を添加した。そのルイス塩基
の種類および量は表4に示されている。表4に列挙されているような温度におい
て、標準圧力
下、2時間にわたって反応を行い、次に停止した。その生成物の後処理は実施例
1のものと同一とした。得られた生成物は星形ポリブタジエンであった。
実施例16
星形重合体の性能を先行技術と比較するための例として、上記実施例5におい
て調製した本発明のSn−SBR星形重合体を選び、
並びに線状S−SBRおよびE−SBR−1500との比較を行った。
上記実験結果は下記表5に列挙されており、下表中、0℃におけるtgδはウェ
ットスキッド抵抗を表しており、その値が高いほど、ウェットスキッド抵抗が良
好である。50℃におけるtgδはころがり抵抗を表しており、その値が低いほど、
ころがり抵抗が低い。分子量分布の比較に関して、本発明の星形重合体は、線状
重合体(アニオン重合)の狭い分布に比べて、より幅広い分布を有しており、本
発明のコールドフロー特性および加工性能の方が、はるかに良好であるというこ
とがわかるということを示している。
本実施例においては、実施例6において調製したSn−SBR星形重合体につ
いての分子量分布測定を行った。膜浸透圧法を使用して分子量を測定した。GP
Cを使用して分子量分布を測定した(テトラヒドロフランを溶媒とした。10mg/
10mL)。
GPCにより表されている最終的な結果は添付した図1に示されている。
同時に、以下の市販製品を選び、比較例において使用した。
そのGPCチャートは添付した図2に示されている。
GPCチャートは添付した図3に示されている。
R。そのGPCチャートは添付した図4に示されている。
:カップリングS−SBR。そのGPCチャートは添付した図5お
よび6に示されている。
産業上の利用可能性
先行技術と比較すると、本発明の多官能価有機アルカリ金属開始剤は、それら
の出発原料が容易に入手可能で、低価格であり、その合成技術が単純であり、そ
の官能価の調節がより便利であるので、より良好な産業上の利用可能性を有する
。本発明の開始剤は、星形重合体、例えばスチレン−ブタジエンの星形ランダム
共重合体(省エネルギーな溶液重合されたスチレンブタジエンゴム)、スチレン
−イソプレンの星形ランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンの星
形ランダム三元共重合体、星形の中間のビニルポリブタジエン、星形の高いビニ
ルポリブタジエン、星形の中間のシス−ポリイソプレンまたは3,4-および1,2-ポ
リイソプレン、星形(SI)nRまたは(SB)nR(熱可塑性エラストマー)、
K樹脂、並びに特定の末端基(−OH、−COOH、−X、−NR2(RはHま
たはアルキル)などであってもよい)を有する星形重合体(機能的エラストマー
)に適用することができる。伝統的な技術(まず重合し、次にカップリングする
)と比較すると、本発明の多官能価有機アルカリ金属を使用して上述のさまざま
な種類の重合体を合成する方法は、かなりの利点、例えば、より低い製造コスト
、より少ない設備需要、より単純な生産フローなどを有する。
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フロントページの続き
(72)発明者 チァン,シンイン
中華人民共和国,ペキン 100029,チァオ
ヤン ディストリクト,ペイサンホアント
ンルゥ ナンバー 15
(72)発明者 チン,コアンタイ
中華人民共和国,ペキン 100029,チァオ
ヤン ディストリクト,ペイサンホアント
ンルゥ ナンバー 15
(72)発明者 チャオ,スゥホォ
中華人民共和国,ペキン 100029,チァオ
ヤン ディストリクト,ペイサンホアント
ンルゥ ナンバー 15