JPH1143596A - 照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び該組成物の成形方法 - Google Patents

照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び該組成物の成形方法

Info

Publication number
JPH1143596A
JPH1143596A JP9215843A JP21584397A JPH1143596A JP H1143596 A JPH1143596 A JP H1143596A JP 9215843 A JP9215843 A JP 9215843A JP 21584397 A JP21584397 A JP 21584397A JP H1143596 A JPH1143596 A JP H1143596A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
weight
unsaturated polyester
polyester resin
parts
resin composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP9215843A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3893605B2 (ja
Inventor
Toshio Nagase
敏夫 永瀬
Atsushi Tsukamoto
淳 塚本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Zeon Corp
Original Assignee
Nippon Zeon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Zeon Co Ltd filed Critical Nippon Zeon Co Ltd
Priority to JP21584397A priority Critical patent/JP3893605B2/ja
Publication of JPH1143596A publication Critical patent/JPH1143596A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3893605B2 publication Critical patent/JP3893605B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Reinforced Plastic Materials (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Macromonomer-Based Addition Polymer (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】多量の無機充填剤の配合を必要とせず、繊維強
化材添加後に加温により短時間で増粘し、熟成工程が不
要で短時間で照射線硬化による成形加工に供することが
でき、しかも貯蔵安定性に優れ、流動性と型形状追随性
の良好な照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物、
その製造方法及びその成形方法を提供する。 【解決手段】(A)不飽和ポリエステル樹脂100重量
部、(B)液状重合性単量体25〜60重量部、(C)熱可
塑性樹脂粉末からなる増粘剤5〜30重量部、(D)光重
合開始剤0.5〜10重量部及び(E)繊維強化材20〜
70重量部を含有することを特徴とする照射線硬化型不
飽和ポリエステル樹脂組成物、(A)〜(E)成分を含有す
る組成物を、40〜80℃に加温することを特徴とする
該照射線硬化型組成物の製造方法、並びに、該照射線硬
化型組成物を60〜80℃の成形型に密着させて形をつ
くったのち、紫外線を照射して硬化することを特徴とす
る成形方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、照射線硬化型不飽
和ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法に関する。
さらに詳しくは、本発明は、加温に伴う増粘作用の高い
熱可塑性樹脂粉末を含有する不飽和ポリエステル樹脂組
成物を、加温により短時間で増粘して使用可能な状態と
なり、しかも貯蔵安定性に優れた照射線硬化型不飽和ポ
リエステル樹脂組成物、その製造方法及びその成形方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、不飽和ポリエステル樹脂をベース
としたシートモールディングコンパウンドやバルクモー
ルディングコンパウンドは、強化プラスチック加工業界
において、省力化や量産化、あるいは作業環境の改善な
どの要求を取り入れた機械成形用の新しい工業材料とし
て、着実にその需要を伸ばしてきた。従来のシートモー
ルディングコンパウンドやバルクモールディングコンパ
ウンドは、不飽和ポリエステル樹脂と液状重合性単量体
の混合物に、充填剤、増粘剤、硬化用触媒、着色剤、内
部離型剤などを配合した不飽和ポリエステル樹脂組成物
に、ガラス繊維などの繊維強化材を添加し、40〜50
℃で熟成することにより増粘したのちに成形に使用す
る。成形は金型を用いた圧縮成形により、成形温度12
0〜180℃、成形圧力30〜100kg/cm2の高温高
圧で行われることが多い。増粘剤としては、一般には酸
化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物が使用
される。酸化マグネシウムは、不飽和ポリエステル樹脂
が有する遊離のカルボキシル基間に架橋を生ぜしめて増
粘するものであるが、その架橋反応は緩慢であるため、
酸化マグネシウムは不飽和ポリエステル樹脂配合物を混
合する初期段階から添加し、さらに繊維強化材添加後に
架橋反応による増粘を促進するために、40℃程度の温
度に加温して1〜3日間熟成することが必要である。さ
らに、酸化マグネシウムのような増粘剤のみでは増粘効
果が不十分であるため、炭酸カルシウムなどの充填剤の
添加が必須であり、その添加量も不飽和ポリエステル樹
脂100重量部当たり通常100重量部以上が必要であ
る。近年、新規な高性能の光重合開始剤が開発されるに
伴って、工程の合理化や省エネルギーの観点から、熱硬
化に代わって照射線硬化による成形加工が求められるよ
うになってきた。しかし、従来の多量の充填剤を配合し
た不飽和ポリエステル樹脂組成物は本質的に不透明であ
り、照射線硬化を利用した成形を効率的に行うことは不
可能であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、多量の無機
充填剤の配合を必要とせず、繊維強化材添加後に加温に
より短時間で増粘し、熟成工程が不要で短時間で照射線
硬化による成形加工に供することができ、しかも貯蔵安
定性に優れ、流動性と型形状追随性の良好な照射線硬化
型不飽和ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及びそ
の成形方法を提供することを目的としてなされたもので
ある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、加温により不飽
和ポリエステル樹脂を急速に増粘することができる熱可
塑性樹脂粉末を増粘剤として不飽和ポリエステル樹脂に
添加し、光重合開始剤と繊維強化材を添加したのち、4
0〜80℃に加温することにより、短時間で増粘するこ
とができ、この不飽和ポリエステル樹脂組成物はほぼ透
明で光透過性があり、放射線を照射して硬化することに
より容易に成形加工し得ることを見いだし、この知見に
基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明
は、(1)(A)不飽和ポリエステル樹脂100重量
部、(B)液状重合性単量体25〜60重量部、(C)
熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤5〜30重量部、
(D)光重合開始剤0.5〜10重量部、及び、(E)
繊維強化材20〜70重量部を含有することを特徴とす
る照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物、(2)
熱可塑性樹脂粉末が、アクリル酸エステル、メタクリル
酸エステル及び芳香族ビニル化合物の中から選ばれた少
なくとも1種の単量体単位を50重量%以上有し、かつ
カルボキシル基又はエポキシ基含有単量体単位を1〜2
0重量%有するものである第(1)項記載の照射線硬化型
不飽和ポリエステル樹脂組成物、(3)(A)不飽和ポ
リエステル樹脂100重量部当たり、(B)液状重合性
単量体25〜60重量部、(C)熱可塑性樹脂粉末から
なる増粘剤5〜30重量部、(D)光重合開始剤0.5
〜10重量部、及び、(E)繊維強化材20〜70重量
部を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物を、40〜
80℃に加温することを特徴とする照射線硬化型不飽和
ポリエステル樹脂組成物の製造方法、及び、(4)
(A)不飽和ポリエステル樹脂100重量部、(B)液
状重合性単量体25〜60重量部、(C)熱可塑性樹脂
粉末からなる増粘剤5〜30重量部、(D)光重合開始
剤0.5〜10重量部、及び、(E)繊維強化材20〜
70重量部を含有してなる不飽和ポリエステル樹脂組成
物を、温度60〜80℃の成形型に無圧〜2kg/cm
2(ゲージ圧)で密着させて形をつくったのち、紫外線
を照射して硬化することを特徴とする不飽和ポリエステ
ル樹脂組成物の成形方法、を提供するものである。さら
に、本発明の好ましい態様として、(5)熱可塑性樹脂
粉末が、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及
び芳香族ビニル化合物の中から選ばれた少なくとも1種
の単量体単位を50重量%以上有し、かつカルボキシル
基又はエポキシ基含有単量体単位を1〜20重量%有す
るものである第(3)項記載の照射線硬化型不飽和ポリエ
ステル樹脂組成物の製造方法、(6)熱可塑性樹脂粉末
において、カルボキシル基又はエポキシ基含有単量体の
存在比率が、粒子表層に5〜40重量%、粒子内部に6
0〜95重量%である第(2)項記載の照射線硬化型不飽
和ポリエステル樹脂組成物、及び、(7)熱可塑性樹脂
粉末において、カルボキシル基又はエポキシ基含有単量
体の存在比率が、粒子表層に5〜40重量%、粒子内部
に60〜95重量%である第(5)項記載の照射線硬化型
不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法、を挙げるこ
とができる。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の照射線硬化型不飽和ポリ
エステル樹脂組成物は、(A)不飽和ポリエステル樹脂1
00重量部当たり、(B)液状重合性単量体25〜60重
量部、(C)熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤5〜30重
量部、(D)光重合開始剤0.5〜10重量部、及び、
(E)繊維強化材20〜70重量部を含有する。本発明
において、(A)成分として用いられる不飽和ポリエステ
ル樹脂には特に制限はなく、従来一般の不飽和ポリエス
テル樹脂成形品に慣用されている公知の不飽和ポリエス
テル樹脂を使用することが可能で、シートモールディン
グコンパウンド用、ハンドレイアップ用、スプレーアッ
プ用などの不飽和ポリエステル樹脂を使用することがで
きる。不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和多塩基酸又は
場合により飽和多塩基酸を含む不飽和多塩基酸と多価ア
ルコールから得ることができる。不飽和多塩基酸として
は、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、
イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロロマレイ
ン酸、あるいはこれらのアルキルエステルなどを挙げる
ことができる。これらの不飽和多塩基酸は1種を単独で
用いることができ、あるいは2種以上を組み合わせて用
いることもできる。また、不飽和多塩基酸の一部を置き
換える飽和多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘット酸、ヘ
キサヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバチン酸、ア
ゼライン酸などを挙げることができる。これらの飽和多
塩基酸は1種を単独で用いることができ、あるいは2種
以上を組み合わせて用いることもできる。多価アルコー
ルとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレン
グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリ
コール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオ
ール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオー
ル、1,2−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオー
ル、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコー
ル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオー
ル、グリセリンモノアリルエーテル、水素化ビスフェノ
ールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニ
ル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシプロポキシ
フェニル)プロパンなどのジオール類;トリメチロール
プロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトールな
どのテトラオール類などを挙げることができる。これら
の多価アルコールは、1種を単独で用いることができ、
あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0006】従来、増粘剤として慣用されてきたアルカ
リ土類金属の酸化物などを使用する場合には、(A)成分
の不飽和ポリエステル樹脂の数平均分子量は約2,50
0以上である必要があったが、本発明の熱可塑性樹脂粉
末からなる増粘剤を用いる照射線硬化型不飽和ポリエス
テル樹脂組成物においては、数平均分子量1,000〜
2,500の不飽和ポリエステル樹脂も使用可能である
ので、広い範囲の分子量の不飽和ポリエステル樹脂を使
用することができる。本発明においては、(A)成分の不
飽和ポリエステル樹脂は、必要に応じて、耐薬品性改善
などのためにエポキシアクリレート樹脂で、あるいはイ
ンサート加工などでの接着性改善などのためにウレタン
アクリレート樹脂で一部を置換することができる。この
ような目的で使用するエポキシアクリレート樹脂として
は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフ
ェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキ
シ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などにアクリル酸や
メタクリル酸を付加したものを挙げることができる。ま
た、ウレタンアクリレート樹脂としては、例えば、特公
昭55−30527号公報、特公昭60−26132号
公報、特公昭60−26133号公報などに開示された
エチレングリコールの両端にトリレンジイソシアネート
を付加し、さらに2−ヒドロキシエチルメタクリレート
を両末端に付加したものなどを挙げることができる。
【0007】本発明において、不飽和ポリエステル樹脂
は、通常(B)成分の液状重合性単量体に溶解した状態で
使用する。(B)成分として用いる液状重合性単量体は、
不飽和ポリエステル樹脂に対して溶解性を有し、ラジカ
ル重合性を有するものであれば特に制限なく使用するこ
とができるが、アクリル酸エステル、メタクリル酸エス
テル、芳香族ビニル化合物及び芳香族カルボン酸のアリ
ルアルコールエステルを好適に使用することができる。
液状重合性単量体は、成形加工時に(A)成分の不飽和ポ
リエステル樹脂と架橋反応を起こす。アクリル酸エステ
ルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアク
リレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルア
クリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアク
リレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアク
リレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシル
アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−
オクチルアクリレートなどを挙げることができる。メタ
クリル酸エステルとしては、例えば、メチルメタクリレ
ート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレ
ート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタク
リレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシ
ルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレー
ト、n−オクチルメタクリレート、ジエチレングリコー
ルジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタ
クリレートなどを挙げることができる。また、芳香族ビ
ニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルス
チレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、α−ク
ロロスチレン、ジクロロスチレン、ジビニルベンゼンな
どを挙げることができる。芳香族カルボン酸のアリルア
ルコールエステルとしては、ジアリルフタレート、ジア
リルイソフタレート、トリアリルトリメリテートなどを
挙げることができる。これらの液状重合性単量体の中
で、スチレンを特に好適に使用することができる。本発
明において、(B)成分の液状重合性単量体は、1種を単
独で用いることができ、あるいは2種以上を組み合わせ
て用いることもできる。その配合量は、(A)成分の不飽
和ポリエステル樹脂100重量部当たり、25〜60重
量部、好ましくは30〜50重量部である。液状重合性
単量体の配合量が、不飽和ポリエステル樹脂100重量
部当たり25重量部未満であると、組成物の粘度が高
く、組成物の均一な混合が困難となり、あるいは繊維強
化材の折損が激しくなるおそれがある。液状重合性単量
体の配合量が、不飽和ポリエステル樹脂100重量部当
たり60重量部を超えると、硬化した成形品が脆くなる
おそれがある。
【0008】本発明においては、(C)成分として熱可塑
性樹脂粉末からなる増粘剤を配合する。熱可塑性樹脂粉
末としては、液状重合性単量体を吸収して膨潤するもの
であれば特に制限はないが、アクリル酸エステル、メタ
クリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物の中から選ば
れた少なくとも1種の単量体単位を50重量%以上有
し、かつカルボキシル基又はエポキシ基含有単量体単位
を1〜20重量%有する熱可塑性樹脂粉末であることが
好ましい。熱可塑性樹脂粉末の原料単量体として用いら
れるアクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアク
リレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレ
ート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレ
ート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレ
ート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレ
ート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシ
ルアクリレート、n−オクチルアクリレートなどを挙げ
ることができる。メタクリル酸エステルとしては、例え
ば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n
−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレー
ト、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリ
レート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘ
キシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレートな
どを挙げることができる。これらの単量体の中で、特に
メチルメタクリレートを好適に使用することができる。
また、芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレ
ン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン及びこれら
の単量体のベンゼン核に、メチル基、エチル基、プロピ
ル基、ブチル基などが置換された単量体、例えば、ビニ
ルトルエンやイソブチルスチレンなどを挙げることがで
きる。これらの単量体は1種を単独で用いることがで
き、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもでき
る。熱可塑性樹脂粉末中のこれらの単量体単位の含有量
が50重量%未満であると、熱可塑性樹脂粉末が十分な
増粘効果を示さないおそれがある。
【0009】(C)成分の熱可塑性樹脂粉末の共単量体と
して用いることができるカルボキシル基含有単量体とし
ては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−エチル
アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和モノカ
ルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラ
コン酸、クロロマレイン酸などの不飽和ジカルボン酸や
その無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエ
チル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フ
マル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸
モノエチル、イタコン酸モノブチルなどの不飽和ジカル
ボン酸のモノエステルやその誘導体などを挙げることが
できる。これらの中で、アクリル酸、メタクリル酸、マ
レイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸を特に好適に使
用することができる。これらのカルボキシル基含有単量
体は、1種を単独で用いることができ、あるいは2種以
上を組み合わせて用いることもできる。また、(C)成分
の熱可塑性樹脂粉末の共単量体として用いることができ
るエポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル
メタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジル
−p−ビニルベンゾエート、メチルグリシジルイタコネ
ート、エチルグリシジルマレエート、グリシジルビニル
スルホネート、グリシジル(メタ)アリルスルホネートな
どの不飽和酸のグリシジルエステル類;アリルグリシジ
ルエーテル、メタリルグリシジルエーテルなどの不飽和
アルコールのグリシジルエーテル類;ブタジエンモノオ
キシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、5,6−
エポキシヘキセン、2−メチル−5,6−エポキシヘキ
センなどのエポキシドオレフィン類などを挙げることが
できる。これらの中で、グリシジルメタクリレート及び
グリシジルアクリレートを特に好適に使用することがで
きる。これらのエポキシ基含有単量体は、1種を単独で
用いることができ、あるいは2種以上を組み合わせて用
いることもできる。
【0010】本発明において、(C)成分の熱可塑性樹脂
粉末は、カルボキシル基含有単量体単位又はエポキシ基
含有単量体単位を1〜20重量%含有することが好まし
く、かつカルボキシル基又はエポキシ基含有単量体単位
が、熱可塑性樹脂粉末の粒子の表面において内部におけ
るよりも濃度大になるよう傾斜的に形成されていること
がより好ましい。カルボキシル基又はエポキシ基を有す
る単量体単位の量が1重量%未満であると、(E)成分の
繊維強化材添加前の不飽和ポリエステル樹脂組成物の室
温での増粘速度が大きくなりすぎるおそれがある。ま
た、カルボキシル基含有単量体単位又はエポキシ基含有
単量体単位の量が20重量%を超えると、所望の粘度を
達成するまでの、40〜80℃での加熱時間が30分間
以上必要となり、一部硬化が進行して貯蔵安定性が顕著
に悪化するおそれがある。本発明において、(C)成分で
ある熱可塑性樹脂粉末は、アクリル酸エステル、メタク
リル酸エステル又は芳香族ビニル化合物、及び、カルボ
キシル基又はエポキシ基含有単量体と共重合可能な他の
単量体単位を有していてもよい。共重合可能な他の単量
体としては、例えば、アクリロニトリルやメタクリロニ
トリルなどのシアン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオ
ン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、オレイン酸ビニル、
安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ブタジエン、
イソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエ
ンなどの共役ジエン系化合物;1,4−ヘキサジエン、
ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどの
非共役ジエン系化合物などを挙げることができる。ま
た、共重合可能な単量体としては、反応性が実質上等し
い2個以上の二重結合を有する架橋性単量体を単量体全
体の0.1〜2重量%添加してもよい。そのような架橋
性単量体としては、例えば、エチレングリコールジアク
リレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチ
レングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジ
メタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレー
ト、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメ
チロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプ
ロパントリメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリ
レート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オリゴオ
キシエチレンジアクリレート、オリゴオキシエチレンジ
メタクリレート、さらにはジビニルベンゼンなどの芳香
族ジビニル単量体、トリアリルトリメリテート、トリア
リルイソシアヌレートなどを挙げることができる。
【0011】本発明においては、(C)成分の熱可塑性樹
脂粉末は温度依存性の高い増粘剤としての作用を有する
もので、(B)成分の液状重合性単量体との混合により、
不飽和ポリエステル樹脂組成物を、35℃以下の所定の
温度内で制御された良好な加工粘度を呈するようにする
ものである。そのためには前述の好適な組成の選択に加
えて、適性な構造及び粒径を有することが好ましい。す
なわち、カルボキシル基又はエポキシ基を有する(メタ)
アクリル酸系単量体単位が、熱可塑性樹脂粉末の粒子の
表面層に高い濃度勾配をもって形成されるものが好まし
く、かつ熱可塑性樹脂粉末の平均単一粒径(重量基準)
が0.1〜5.0μmであることが好ましく、0.2〜3.
0μmであることがより好ましい。カルボキシル基又は
エポキシ基を有する単量体単位が、熱可塑性樹脂粉末の
粒子の表面が内部より高い濃度になるよう形成されてい
ると、照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物を調
製する際の好適な増粘パターンを容易に得ることができ
る。平均単一粒径が0.1μm未満であると、微細すぎ
て(B)成分である液状重合性単量体の室温での吸収速度
が速く、粘度が高くなりすぎて室温での低粘度の維持が
困難となるおそれがある。平均単一粒径が5.0μmを
超えると、液状重合性単量体の吸収速度が遅くなり、疑
似硬化が遅く、照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組
成物の調製に時間がかかるおそれがある。ここで、疑似
硬化とは、熱可塑性樹脂が液状重合性単量体を吸収して
膨潤し、ゲル状になる性質を指す。また、熱可塑性樹脂
粉末の粒子の形状は球形であることが好ましく、不規則
形状のものや多孔質のものを配合すると、不飽和ポリエ
ステル樹脂組成物の配合直後の室温での粘度が高くなる
おそれがある。粒子の表面状態としては多孔質でなく平
滑なものが、同様に粘度管理の関係でも好ましい。
【0012】本発明においては、(C)成分である熱可塑
性樹脂粉末を増粘剤として使用することにより、不飽和
ポリエステル樹脂組成物は繊維強化材添加前は低粘度で
あり、繊維強化材の添加後に40〜80℃に加温するこ
とにより初めて急速に増粘し、照射線硬化型不飽和ポリ
エステル樹脂組成物の粘度は良好な経時安定性を示す。
すなわち、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分
からなる不飽和ポリエステル樹脂組成物は、調製直後の
粘度(25℃で測定)が1〜5Pa・sであり、1〜2
時間後でほとんど増粘しない内に繊維強化材を添加して
配合するが、調製後25℃で3時間経過すると粘度(2
5℃で測定)は10Pa・s弱であり、調製後60℃で
30分間経過すると粘度(25℃で測定)は1×103
〜5×104Pa・sである。さらに、本発明の照射線
硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物は、80日間以上
25℃以下の暗所で保存しても硬化することがない。な
お、粘度を測定する際は、繊維強化材添加前の、また、
時としてさらに光重合開始剤添加前の試料を25℃の恒
温室に1時間置いてから、25℃、相対湿度60%の環
境にて測定する。図1は、本発明に用いる繊維強化材を
添加していない不飽和ポリエステル樹脂組成物の増粘挙
動を示す増粘曲線である。熱可塑性樹脂粉末として、メ
チルメタクリレート95重量%、メタクリル酸5重量%
で平均単一粒径1.8μmの共重合体(実施例1で使用
の熱可塑性樹脂粉末A)を配合した不飽和ポリエステル
樹脂組成物も、増粘剤として酸化マグネシウムを配合し
た不飽和ポリエステル樹脂組成物も、室温で増粘した場
合はほぼ10時間後頃から増粘が始まり、約2日後に増
粘が完了する。しかし、熱可塑性樹脂粉末からなる増粘
剤を配合した不飽和ポリエステル樹脂組成物は、40〜
80℃に加温することにより急速に粘度が上昇して増粘
を完了し、しかもその後室温(15〜35℃)に放冷す
ることにより長期間硬化に至ることなく安定な状態を保
つ。加温が40℃未満の低い温度であると、不飽和ポリ
エステル樹脂組成物の増粘速度が小さすぎ、逆に80℃
を超える高い温度であると、(B)成分の液状重合性単量
体が揮散する虞れがある。室温で、(A)成分、(B)成
分、(C)成分及び(D)成分を混合したときの不飽和ポリ
エステル樹脂組成物の粘度が1〜5Pa・sであり、繊
維強化材を添加するときの粘度が好ましくは15Pa・
s以下であり、その後60℃に保つことによって数10
分間で増粘して1×103〜5×104Pa・sとなり、
さらに室温で保存すれば、3カ月以上経過後もほぼ同じ
粘度を維持し、良好な保存安定性を示す。
【0013】本発明において、(C)成分である熱可塑性
樹脂粉末は、溶液比粘度法による重量平均分子量が1×
105〜1.5×107の範囲にあることが好ましい。こ
こに、溶液比粘度法とは、試料樹脂0.2gをテトラヒ
ドロフラン50mlに溶解した溶液の35℃の粘度の同温
度の溶媒粘度に対する比を求め、前もって重量平均分子
量既知の各種標準ポリスチレンで求めた比粘度−重量平
均分子量の関係から、試料樹脂の平均分子量を知る方法
である。また、熱可塑性樹脂粉末がエポキシ基含有共重
合体である場合や、架橋性単量体を共重合している場合
には、架橋度が高すぎるとシートモールディングコンパ
ウンドの増粘に高温を要する傾向があるために、架橋度
としては、熱可塑性樹脂粉末を溶剤に溶解した際の不溶
解のゲル成分が50重量%以下となる程度であることが
好ましい。本発明において、(C)成分である熱可塑性樹
脂粉末の製造方法については特に制限はなく、従来ポリ
メチルメタクリレートなどの微細樹脂粉末の製造に用い
られている方法、例えば、微細懸濁重合法、乳化重合
法、播種乳化重合法などを採用することができる。これ
らの方法の中で、特に粒径が極微細とならずにかつ球形
のものが得られる重合法が好適である。 例えば、微細懸濁重合法としては、ラジカル重合開始剤
として油溶性開始剤を用い、重合開始前に単量体油滴の
粒径を均質化処理によってあらかじめ液滴径を調節し、
均質分散重合させる方法などが好適である。油溶性のラ
ジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオ
キサイド、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパー
オキサイド、ジラウロイルパーオキサイドなどのジアシ
ルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカー
ボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネー
ト、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート
などのパーオキシジカーボネート類;t−ブチルパーオ
キシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエー
トなどのパーオキシエステル類;あるいはアセチルシク
ロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジサクシニック
アシッドパーオキサイドなどの有機過酸化物;さらに
は、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−ア
ゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2'−アゾビス
ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などを使用す
ることができる。これらの開始剤は、1種を単独で用い
ることができ、あるいは2種以上を組み合わせて用いる
こともできる。その使用量は、単量体の種類と量及び仕
込方式などによって適宜選択することができるが、通常
使用単量体100重量部当たり、0.001〜5.0重量
部の範囲で使用することが好ましい。
【0014】微細懸濁重合法においては、通常、界面活
性剤や分散剤が用いられる。界面活性剤としては、例え
ば、ラウリル硫酸エステルナトリウム、ミリスチル硫酸
エステルナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベン
ゼンスルホン酸カリウムなどのアルキルアリールスルホ
ン酸塩類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘ
キシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸
エステル塩類;ラウリン酸アンモニウム、ステアリン酸
カリウムなどの脂肪酸塩類;ポリオキシエチレンアルキ
ル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリ
ール硫酸エステル塩類;さらにはドデシルジフェニルエ
ーテルジスルフォン酸ナトリウムなどのアニオン性界面
活性剤類;ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチ
レンソルビタンモノステアレートなどのソルビタンエス
テル類;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリ
オキシエチレンアルキルフェニルエーテル類などのノニ
オン性界面活性剤類;セチルピリジニウムクロライド、
セチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどのカチオ
ン性界面活性剤などを挙げることができる。また、分散
剤としてはポリビニルアルコール、メチルセルロース、
ポリビニルピロリドンなどを挙げることができる。これ
らの界面活性剤や分散剤は、1種を単独で用いることが
でき、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもで
きる。その使用量は、通常使用単量体100重量部当た
り、0.05〜5重量部、好ましくは0.2〜4重量部の
範囲で適宜選択することができる。
【0015】例えば、微細懸濁重合法の場合には、まず
水性媒体中に、油溶性開始剤、単量体、界面活性剤及び
必要に応じて用いられる高級脂肪酸類や高級アルコール
類などの重合助剤、その他の添加剤を加えてプレミック
スし、ホモジナイザーにより均質化処理して、油滴の粒
径調節を行う。ホモジナイザーとしては、例えば、コロ
イドミル、振動撹拌機、二段式高圧ポンプ、ノズルやオ
リフィスからの高圧噴出、超音波撹拌などを挙げること
ができる。さらに、油滴の粒径の調節は、均質化処理時
の剪断力の制御、重合中の撹拌条件、反応装置の形式、
界面活性剤や添加剤の量などにより影響されるが、これ
らは簡単な予備実験により、適当な条件を選択すること
ができる。このようにして全仕込み単量体の80〜98
重量%の単量体を含む均質化処理液を重合缶に送り、ゆ
っくりと撹拌しながら昇温し、通常30〜80℃の範囲
の温度において重合を行う。重合転化率が70〜90%
に達したときに、カルボキシル基又はエポキシ基を有す
る単量体を初期仕込みより高濃度に含有する残余の全単
量体混合物を重合缶に追添加することにより、カルボキ
シル基又はエポキシ基を有する単量体単位が、粒子の表
面層に高い濃度勾配をもって形成された熱可塑性樹脂粉
末を得ることができる。このようにして、平均単一粒径
が0.1〜5.0μmの熱可塑性樹脂粉末の粒子が均質に
分散した乳化液又は懸濁液を得ることができる。熱可塑
性樹脂の重量平均分子量は、反応温度や重合度調節剤に
より所望の値に調節することができる。得られた乳化液
又は懸濁液は、噴霧乾燥にかけて熱可塑性樹脂粉末を得
ることができ、あるいは、熱可塑性樹脂粒子を凝集した
のち、ろ過により液漿を分離し、乾燥、粉砕することに
より熱可塑性樹脂粉末を得ることができる。
【0016】本発明においては、熱可塑性樹脂粉末の、
カルボキシル基又はエポキシ基を有する(メタ)アクリル
酸系単量体単位の存在比率が、粒子表面層に5〜40重
量%、粒子内部に60〜95重量%、セラム層(粒子
外)に0〜30重量%の割合で分布することが好まし
い。これにより、濃度上は粒子表面に多く存在する形に
なる。ただし、エポキシ基含有単量体の場合は、カルボ
キシル基含有単量体に比して著しく親油性であり、重合
反応の過程で水層に溶ける量が少ないので、セラム層の
存在は事実上殆ど無視できる。カルボキシル基又はエポ
キシ基の分布は、電位差滴定法又は中和滴定法により測
定することができる。カルボキシル基の測定の場合は、
樹脂粉末粒子を先ず水に分散させてから樹脂粒子をろ取
し、水相に遊離したセラム層におけるカルボキシル基の
存在分として電位差滴定する。次いでろ取した樹脂粒子
を再び水に分散させた状態で電位差滴定して、粒子表面
層に存在するカルボキシル基量とする。仕込み単量体単
位に基づくカルボキシル基量と、この両測定で求められ
るカルボキシル基量との差に相当するカルボキシル基が
粒子内部に存在することになる。エポキシ基の測定の場
合は、エポキシ基含有重合体がセラム層に存在しないと
見なせるので、樹脂粉末粒子を水に分散させて中和滴定
で求められるエポキシ基が粒子表面に存在するとするこ
とができる。熱可塑性樹脂粉末を噴霧乾燥により得た場
合は、セラム層(粒子外)のカルボキシル基又はエポキ
シ基を有する単量体単位が比較的多く、樹脂粒子の凝集
により液漿を分離した場合はセラム層(粒子外)のカル
ボキシル基又はエポキシ基を有する単量体単位が比較的
少ない。
【0017】本発明においては、(C)成分の熱可塑性樹
脂粉末は、平均単一粒径の異なる2種以上の熱可塑性樹
脂粉末を混合することができ、その場合はそれらの総合
の重量基準の平均値が0.1〜5.0μmになるように、
比率と量を調整することができる。本発明においては、
(C)成分の熱可塑性樹脂粉末は、(A)成分の不飽和ポリ
エステル樹脂100重量部に対し、5〜30重量部、好
ましくは8〜18重量部、より好ましくは10〜15重
量部を配合する。熱可塑性樹脂粉末の配合量が不飽和ポ
リエステル樹脂100重量部当たり5重量部未満である
と、増粘効果が弱く、80℃以下の加温条件では成形可
能な状態に増粘した不飽和ポリエステル樹脂組成物の作
製が困難になるおそれがある。熱可塑性樹脂粉末の配合
量が不飽和ポリエステル樹脂100重量部当たり30重
量部を超えると、得られた不飽和ポリエステル樹脂組成
物を最終的に紫外線照射により成形した硬化物の熱変形
温度が低下するおそれがある。(C)成分の熱可塑性樹脂
粉末を添加することにより、加温増粘性が向上し、短時
間で安定した増粘を行うことが可能となる。
【0018】本発明方法において、(C)成分である熱可
塑性樹脂粉末は、カルボキシル基含有単量体単位又はエ
ポキシ基含有単量体単位を1〜20重量%含有する重合
体をシェル層に有するコア/シェル型の構造とすること
ができる。コア成分が、ガラス転移点が−30℃以下、
好ましくは−40℃以下の(メタ)アクリル酸エステル系
重合体及び/又はジエン系重合体であると、成形品の機
械的強度及び弾性率が大きく向上するので好ましい。こ
のようなコア/シェル型共重合体の樹脂粒子を製造する
には、まず乳化重合又は微細懸濁重合によりコア部(a)
となるガラス転移点が−30℃以下の重合体からなるゴ
ム状のシードポリマーを調製する。ガラス転移点が−3
0℃以下の重合体の例としては、(メタ)アクリル酸エス
テル系重合体又はジエン系重合体を挙げることができ
る。本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとは、
アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味す
るものである。ガラス転移点が−30℃以下のホモポリ
マーを与える(メタ)アクリル酸エステル系単量体として
は、例えば、n−プロピルアクリレート(ホモポリマー
のガラス転移点−52℃)、n−ブチルアクリレート
(同−54℃)、n−オクチルアクリレート(同−65
℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(同−85
℃)、n−デシルメタクリレート(同−65℃)などを
挙げることができる。これらの単量体は1種を単独で用
いることができ、あるいは2種以上を組み合わせて用い
ることもできる。これらの中で、特にn−ブチルアクリ
レートと2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
また、ガラス転移点が−30℃以下のホモポリマーを与
えるジエン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イ
ソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン
などの共役ジエン系化合物;1,4−ヘキサジエンなど
の非共役ジエン系化合物などを挙げることができる。こ
れらの単量体は1種を単独で用いることができ、あるい
は2種以上を組み合わせて用いることもできる。これら
の中で、特にブタジエン及びイソプレンが好適である。
【0019】本発明においては、前記の(メタ)アクリル
酸エステル系又はジエン系単量体に、所望によりエチレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコー
ルジ(メタ)アクリレートなどの架橋性単量体を添加し
て、一層ゴム弾性を有するコア部を調製することも有効
である。次に、このようにして得られたガラス転移点が
−30℃以下の重合体をコア部(a)とし、ガラス転移点
が70℃以上の共重合体からなるシェル層(b)を形成さ
せる。この際用いられるシェル層の原料成分としては、
ホモポリマーがガラス転移点70℃以上を与える単量体
を主に用いることが好ましい。具体的には、例えば、イ
ソプロピルメタクリレート(ホモポリマーのガラス転移
点81℃)、t−ブチルメタクリレート(同107
℃)、シクロヘキシルメタクリレート(同76℃)、フ
ェニルメタクリレート(同110℃)、メチルメタクリ
レート(同105℃)などの(メタ)アクリル酸エステル
系単量体;スチレン(同100℃)、4−クロロスチレ
ン(同110℃)、2−エチルスチレン(同103℃)
などの芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル(同1
25℃)、塩化ビニル(同80℃)などを挙げることが
できる。これらの単量体は1種を単独で用いることがで
き、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもでき
る。これらの中で、(メタ)アクリル酸エステル系単量
体、特にメチルメタクリレートが好適である。シェル層
(b)のガラス転移点は70℃以上であることが好まし
く、90℃以上であることがより好ましい。シェル層の
ガラス転移点が70℃未満であると、コア/シェル型共
重合体からなる樹脂粒子を重合反応後に乾燥する際、凝
集して塊になりやすい。
【0020】コア部/シェル層の重量比は1/4〜3/
1、好ましくは1/3〜2/1の範囲にあることが好ま
しい。コア部/シェル層の重量比が1/4未満である
と、熱可塑性樹脂粉末の不飽和ポリエステル樹脂組成物
における、増粘剤、低温低圧成形における成形性向上
剤、補強材などとしての機能が不足するおそれがある。
コア部/シェル層の重量比が3/1を超えると、不飽和
ポリエステル樹脂組成物の粘度安定性が低下するおそれ
がある。本発明においては、熱可塑性樹脂粉末からなる
増粘剤を配合した後の室温での可使時間を長く維持する
ために、熱可塑性樹脂粉末粒子表面の重合体間をイオン
架橋することができる。イオン架橋は、カルボキシル基
を含有する重合体を表面に有する熱可塑性樹脂粉末粒子
に、例えば、金属カチオンの水溶液を添加して乾燥する
ことにより、カルボキシル基間を架橋して形成すること
ができる。金属カチオンを架橋剤とするイオン架橋は、
コア/シェル型共重合体のシェル層に側鎖として導入さ
れたカルボキシル基2個の間にイオン架橋を形成させ、
これによる三次元ポリマー構造によって、分散媒である
不飽和ポリエステル樹脂及び液状重合性単量体による室
温での膨潤性を低下させ、熱可塑性樹脂粉末粒子への浸
透を抑える作用がある。一方、共有結合による架橋構造
とは異なり、加熱すると分子運動の増大により解離する
ので、成形加工時は何らの架橋も存在しない重合体の挙
動をとり、良好な流動性を保ち、かつ加熱により不飽和
ポリエステル樹脂及び液状重合性単量体が、コア/シェ
ル型共重合体に浸透しつつ硬化するので、本来の物性を
発揮することができる。
【0021】本発明において、不飽和ポリエステル樹脂
組成物には、(D)成分として光重合開始剤を配合する。
光重合開始剤は、紫外線などの照射により分解してラジ
カルを発生し、(A)成分の不飽和ポリエステル樹脂と
(B)成分の液状重合性単量体を重合、架橋して、組成物
全体を硬化させる作用を有する。(D)成分として用いる
光重合開始剤には特に制限はなく、例えば、ベンゾイン
エチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベン
ゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエ
ーテル系;2,2−ジエトキシアセトフェノン、4'−フ
ェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン等のアセト
フェノン系;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェ
ノン、4'−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチ
ルプロピオフェノン、4'−ドデシル−2−ヒドロキシ
−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン
系;2−エチルアントラキノン、2−クロロアントラキ
ノン等のアントラキノン系;さらに、2,2−ジメトキ
シ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシク
ロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4−(メチル
チオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、
その他、チオキサントン系光重合開始剤などを挙げるこ
とができる。これら光重合開始剤は、1種を単独で使用
することができ、あるいは2種以上を組み合わせて使用
することもできる。本発明において、(D)成分である光
重合開始剤の配合量は、(A)成分である不飽和ポリエス
テル樹脂100重量部当たり、0.5〜10重量部であ
り、好ましくは1〜3重量部である。光重合開始剤の配
合量が、不飽和ポリエステル樹脂100重量部当たり
0.5重量部未満であると、必要とする紫外線の照射量
が多くなり、あるいは、重合反応が完結しない事態が起
きるおそれがある。光重合開始剤の配合量が、不飽和ポ
リエステル樹脂100重量部当たり10重量部を超える
と、硬化成形品に混在するため物性を低下させる。本発
明においては、光増感剤を併用することができる。光増
感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミンな
どのアミン化合物;o−トリルチオ尿素などの尿素類;
ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジル
イソチウロニウム−p−トルエンスルフォネートなどの
イオウ化合物;N,N−ジ置換−p−アミノベンゾニト
リル化合物などのニトリル類;トリ−n−ブチルホスフ
ィンなどのリン化合物、N−ニトロソヒドロキシルアミ
ン誘導体などのその他の窒素化合物などを挙げることが
できる。
【0022】本発明において、不飽和ポリエステル樹脂
組成物に、(E)成分として繊維強化材を配合する。使用
する繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊
維、ポリエステル繊維、フェノール繊維、ポリビニルア
ルコール繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維など、強化
プラスチックの製造に慣用されているものを使用するこ
とができる。これらの繊維強化材の形態としては、例え
ば、チョップドストランド、チョップドストランドマッ
ト、ロービングなどを挙げることができる。繊維強化材
としてガラス繊維をチョップドストランドとして用いる
ときは、その長さは通常は5〜60mmとすることが好ま
しく、10〜25mmとすることが更に好ましい。繊維強
化材は、長さが短い方が成形の際に成形材料が流動しや
すい反面、長さが長い方が成形品の機械的強度が大きく
なる。これらの繊維強化材は、(A)成分の不飽和ポリエ
ステル樹脂100重量部当たり、20〜70重量部、好
ましくは30〜50重量部を配合する。繊維強化材の配
合量が、不飽和ポリエステル樹脂100重量部当たり2
0重量部未満であると、成形品の強度が不足するおそれ
がある。繊維強化材の配合量が、不飽和ポリエステル樹
脂100重量部当たり70重量部を超えると、成形時の
不飽和ポリエステル樹脂組成物の流動性が不足するおそ
れがある。
【0023】本発明において、(A)成分、(B)成分、
(C)成分、(D)成分及び(E)成分を配合する方法には特
に制限はなく、例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分
及び(D)成分を配合した不飽和ポリエステル樹脂組成物
に、公知の方法により(E)成分の繊維強化材を添加して
シートモールディングコンパウンドを製造し、また、
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分
を同時にニーダー等で混合してバルクモールディングコ
ンパウンドを製造することができる。シートモールディ
ングコンパウンドを製造する場合は、(A)成分、(B)成
分、(C)成分及び(D)成分を含有する不飽和ポリエステ
ル樹脂組成物を、室温で離型フィルムに塗布する。不飽
和ポリエステル樹脂組成物は、あらかじめ(A)成分の不
飽和ポリエステル樹脂を(B)成分の液状重合性単量体に
溶解し、これに、例えば、プラネタリーミキサー、ニー
ダー、ディスパーなどの公知の混合機を用いて、(C)成
分の熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤と(D)成分の光重
合開始剤を添加し、十分に撹拌混合し均一化して調製す
ることができる。この不飽和ポリエステル樹脂組成物
を、2枚の離型フィルムの一方又は双方に、例えば、コ
ーターなどにより0.3〜3mmの一定の厚さに塗布し、
その上に(E)成分の繊維強化材を添加したのち塗布面を
内にして貼り合わせ、増粘のため、40〜80℃に加温
しながら圧延機により圧延し、繊維強化材に不飽和ポリ
エステル樹脂組成物を含浸して厚さ0.5〜5mmのシー
トとして、シートモールディングコンパウンドに含まれ
る不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度の増加を加速し
て3,000Pa・s以上としたのち、室温(15〜35
℃)に冷却し、両面を離型フィルムで被覆した状態で巻
取りロールにより巻き取るか、あるいは、シートカット
するなどによりシートモールディングコンパウンドを得
ることができる。
【0024】図2は、シートモールディングコンパウン
ドの製造方法の一態様を示す説明図である。混合機1に
おいて、不飽和ポリエステル樹脂を液状重合性単量体に
溶解し、熱可塑性樹脂粉末及び硬化用触媒を加えて不飽
和ポリエステル樹脂組成物2とする。この不飽和ポリエ
ステル樹脂組成物をSMCマシーンのコーターバンクに
移し、2枚の離型フィルム3にコーター4により一定の
厚さに塗布し、一方の塗布した不飽和ポリエステル樹脂
組成物の上に、繊維強化材5をチョッパー6により切断
して散布する。次いで、もう1枚の不飽和ポリエステル
樹脂組成物を塗布した離型フィルムを塗布面を内にして
貼り合わせ、加温された圧延ロール7を有する圧延機に
より、不飽和ポリエステル樹脂組成物を繊維強化材へ含
浸させ、オーブン8の中を通して40〜80℃に加温
し、繊維強化材を含んだ混合物を増粘させ、空冷機9に
より室温に冷却したのち、シートモールディングコンパ
ウンドを両面を離型フィルムで被覆した状態で巻き取り
ロール10により巻き取る。
【0025】バルクモールディングコンパウンドを製造
する場合は、あらかじめ(A)成分の不飽和ポリエステル
樹脂を(B)成分の液状重合性単量体に溶解し、これにミ
キサーを用いて(D)成分の光重合開始剤と、必要に応じ
て添加する内部離型剤、着色剤、消泡剤などを加えて均
一に混合する。次いで、この不飽和ポリエステル樹脂混
合物を混合機に移し、無機充填剤を配合する場合は、混
練しながら少しずつ無機充填剤を加えて均一に混ざるよ
うにする。さらに、(C)成分の熱可塑性樹脂粉末からな
る増粘剤を同様に少しずつ加えて均一に混合し、最後に
(E)成分の繊維強化材をまんべんなく加え、繊維強化材
が濡れて均一に分散するために必要な時間混練する。そ
の後、40〜80℃に加温して増粘し、さらに室温(1
5〜35℃)に冷却して、バルクモールディングコンパ
ウンドを得る。本発明の照射線硬化型不飽和ポリエステ
ル樹脂組成物をバルクモールディングコンパウンドとす
る場合は、従来のバルクモールディングコンパウンドの
ように増粘剤としてアルカリ土類金属の酸化物又は水酸
化物を用いて多量の無機充填剤を配合することがないの
で、増粘前の不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が低
く、ニーダーなどの強力な混合機械は必要とせず、簡便
な混合機を用いて、短時間に繊維強化材の破損なく製造
することができる。
【0026】本発明においては、本発明の目的が損なわ
れない範囲で各種の添加剤、例えば、内部離型剤、低収
縮化剤、着色剤、消泡剤、減粘剤、重合禁止剤、光増感
剤などを、必要に応じて配合することができる。本発明
において、不飽和ポリエステル樹脂組成物には、通常内
部離型剤を配合する。使用する内部離型剤は、不飽和ポ
リエステル樹脂組成物の透明性を害さないものであるこ
とが好ましい。このような例は、アルカン酸系、アルキ
ルリン酸エステル系、アルキルホスファイト系、ワック
ス系などが挙げられる。内部離型剤の配合量は、(A)成
分の不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.
1〜5重量部であることが好ましく、0.5〜1重量部
であることがより好ましい。低収縮化剤としては、例え
ば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリ
レート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロ
ラクタム、飽和ポリエステル、スチレン−アクリロニト
リル共重合体などの熱可塑性樹脂;ポリブタジエン、ポ
リイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリ
ロニトリル−ブタジエン共重合体などのゴム状重合体な
どを挙げることができる。低収縮化剤は、通常(B)成分
の液状重合性単量体に溶解して用いられる。低収縮化剤
の添加量は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部当た
り、通常4〜10重量部でその目的が達せられる。
【0027】本発明の照射線硬化型不飽和ポリエステル
樹脂組成物は、熱可塑性樹脂粉末を増粘剤として用いる
ので、無機充填剤を配合する必要がなく、その結果、加
温することにより容易に流動して型形状に追随する。例
えば、室温で約5,000Pa・sの粘度を有する本発明
の照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物は、80
℃に加温することにより即座に10〜50Pa・sの粘
度まで低下し、自重で流動する程度となる。本発明にお
いて、(C)成分の熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤とし
て、平均単一粒径が0.5〜1μmで重量平均分子量が
数千以下のポリメチルメタクリレートのホモポリマーの
樹脂粒子を用いる場合でも、(A)成分、(B)成分及び
(D)成分からなる不飽和ポリエステル樹脂混合物100
重量部に対して5〜30重量部の添加では、不飽和ポリ
エステル樹脂組成物の粘度は、室温でも増粘速度が大き
いので、ラインミキサーによる混合などにより、迅速に
混合して繊維強化材の添加工程に移すことにより、混合
開始から繊維強化材の添加までを1時間以内に行うこと
が好ましい。
【0028】本発明の照射線硬化型不飽和ポリエステル
樹脂組成物は、成形時における粘度の温度依存性が特に
高いために、放射線の照射に先立って加温することによ
り、優れた流動性と型形状追随性を得ることができる。
例えば、本発明の照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂
組成物は、型温度60〜80℃で、成形圧力を無圧〜2
kg/cm2(ゲージ圧)で成形することができる。例え
ば、シートモールディングコンパウンドの場合、型面に
載置し、その上をポリプロピレン製の透明なフィルム、
シートなどで閉鎖し、次いで系内を脱気してシートモー
ルディングコンパウンドを型に密着させ、大気圧と型内
の差圧の力で型にシートモールディングコンパウンドを
密着させて形をつくったのち紫外線を照射する成形方法
は、型温度60〜80℃、−760〜−50mmHg(0〜
710Torr)の圧力で行うことができる。また、型面に
シートモールディングコンパウンドを設置し、シートモ
ールディングコンパウンドを透明なフィルムまたはシー
トを介して加圧空気で型面に押しつけて密着させる圧空
成形を、型温度60〜80℃、圧力0.1〜2kg/cm
2(ゲージ圧)で行うことができる。本発明の照射線硬
化型不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いれば、従来の
高圧下での大がかりな設備と高価な金型の制約を解消す
ることができ、例えば、貯槽、容器、配管などの破損箇
所に本発明の照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成
物を貼付、充填などして紫外線を照射することにより、
破損箇所の補修をすることができる。本発明の組成物の
硬化に用いる放射線は、紫外線及び電子線、α線、β
線、γ線のような電離性放射線をいう。本発明におい
て、紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、
高圧水銀灯、超高圧水銀灯等を挙げることができる。紫
外線を照射する雰囲気としては、窒素ガス、炭酸ガス等
の不活性ガス雰囲気あるいは酸素濃度を低下させた雰囲
気が好ましいが、通常の空気雰囲気でも照射線硬化性組
成物を硬化することができる。照射雰囲気温度として
は、常温でも、積極的に加温して硬化反応に熱を利用し
てもよく、通常10〜200℃の範囲で硬化することが
できる。
【0029】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限
定されるものではない。なお、粘度の測定は、分取した
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分からなる不
飽和ポリエステル樹脂組成物のサンプルを、25℃恒温
槽で5時間保存後と、さらに60℃恒温槽で30分間保
存後の2回について、いずれも回転粘度計(HAAKE
社、Rheo Stress RS−100型)を用いて
25℃において測定した。 実施例1 プロピレングリコール/ネオペンチルグリコール/イソ
フタル酸/フマル酸のモル比が15/35/20/30
である数平均分子量3,300のランダム共重合体から
なる不飽和ポリエステル樹脂100重量部を、スチレン
40重量部に加えて均一に溶解し、この溶液に、平均単
一粒径(重量基準)1.9μmのメチルメタクリレート
95重量%とメタクリル酸5重量%の共重合体である熱
可塑性樹脂粉末Aからなる増粘剤12重量部、2,2−
ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン[チバガイギ
ー社、イルガキュア651]2重量部及びINT−EQ
6[Axel Plastics Research L
aboratories,Inc.]1重量部を添加
し、室温で混合して不飽和ポリエステル樹脂組成物を得
た。SMCマシーンを用い、離型フィルムとしての厚さ
40μmのポリプロピレンフィルムに、上記の不飽和ポ
リエステル樹脂組成物を厚さ2mmに塗布し、その上に直
径13μmのガラス繊維ロービング[日東紡績(株)]を
カット長2インチに切断して散布し、さらに不飽和ポリ
エステル樹脂組成物を厚さ2mmに塗布したもう一方のポ
リプロピレンフィルムで不飽和ポリエステル樹脂組成物
側を内にして挟んだ。ガラス繊維の散布量は、不飽和ポ
リエステル樹脂組成物中の不飽和ポリエステル樹脂10
0重量部当たり35重量部である。60℃に加温した圧
延ロールとオーブンを20分間かけて通すことにより、
2枚のポリプロピレンフィルムの間のガラス繊維に不飽
和ポリエステル樹脂組成物を含浸するとともに、熱可塑
性樹脂粉末からなる増粘剤にスチレンを吸収膨潤せし
め、不飽和ポリエステル樹脂組成物を増粘し、25℃に
冷却したのち、シートモールディングコンパウンドを巻
き取った。巻き取ったまま25℃に放置したシートモー
ルディングコンパウンドから、1時間後に離型フィルム
を剥離したところ、離型フィルムは容易に剥離して、フ
ィルムにシートモールディングコンパウンドの成分の付
着は認められなかった。シートモールディングコンパウ
ンドは、半透明感のあるシートであった。ベルトコンベ
アのベルト上面から100mm離れてメタルハライドラン
プが位置するよう紫外線照射装置[ウシオ電機(株)、U
VC−253型]を設置し、ベルト上に300mm×30
0mmに切断し、離型フィルムを取り除いた上記のシート
モールディングコンパウンドを置き、ベルト速度1m/
分で送ってシートモールディングコンパウンドに紫外線
を照射し、次いでシートモールディングコンパウンドを
裏返して同様に紫外線を照射し、さらに同様にして表面
及び裏面に紫外線を各1回ずつ照射した。波長300〜
400nmの積算紫外線量は、4回の照射の合計で4,
000mJ/cm2である。この4回の紫外線照射により、
シートモールディングコンパウンドは全体にわたって均
一に硬化し、成形品の色はレモンイエロー色となった。
JIS K 7203にしたがってこの成形品の曲げ試験
を行ったところ、曲げ強さは3.1N/mm2、曲げ弾性率
は220N/mm2であった。シートモールディングコン
パウンドを25℃で暗所に2ケ月間保存して貯蔵安定性
をチェックしたのち、同様に紫外線を照射して成形を行
ったが、離型フィルムの剥離性、紫外線硬化性ともに、
2ケ月前と変化なく良好であった。シートモールディン
グコンパウンドの作製に用いた不飽和ポリエステル樹脂
100重量部、スチレン40重量部、熱可塑性樹脂粉末
Aからなる増粘剤12重量部、2,2−ジメトキシ−2
−フェニルアセトフェノン2重量部及びINT−EQ
6、1重量部よりなる不飽和ポリエステル樹脂組成物の
粘度を測定したところ、25℃で5時間保存後13Pa
・sであり、さらに60℃で30分間加温した後は3,2
00Pa・sであった。 実施例2 熱可塑性樹脂粉末Aからなる増粘剤の代わりに、メチル
メタクリレート90重量%、スチレン5重量%及びグリ
シジルメタクリレート5重量%の共重合体である平均単
一粒径(重量基準)1.8μmの熱可塑性樹脂粉末Bか
らなる増粘剤12重量部を用い、2,2−ジメトキシ−
2−フェニルアセトフェノンの代わりに1−ヒドロキシ
シクロヘキシルフェニルケトン[チバガイギー社、イル
ガキュア184]2重量部を用いた以外は、実施例1と
同じ操作を繰り返した。巻き取ったまま25℃に放置し
たシートモールディングコンパウンドから、1時間後に
離型フィルムを剥離したところ、離型フィルムは容易に
剥離して、フィルムにシートモールディングコンパウン
ドの成分の付着は認められなかった。シートモールディ
ングコンパウンドは、半透明感のあるシートであった。
紫外線照射による硬化を行ったところ、4回の紫外線照
射により、シートモールディングコンパウンドは全体に
わたって均一に硬化し、成形品の色は淡いレモンイエロ
ー色となった。この成形品の曲げ強さは3.0N/mm2
曲げ弾性率は200N/mm2であった。シートモールデ
ィングコンパウンドを25℃で暗所に2ケ月間保存して
貯蔵安定性をチェックしたのち、同様に成形を行った
が、離型フィルムの剥離性、紫外線硬化性ともに、2ケ
月前と変化なく良好であった。シートモールディングコ
ンパウンドの作製に用いた不飽和ポリエステル樹脂10
0重量部、スチレン40重量部、熱可塑性樹脂粉末Bか
らなる増粘剤12重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシ
ルフェニルケトン2重量部及びINT−EQ6、1重量
部よりなる不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度を測定
したところ、25℃で5時間保存後15Pa・sであ
り、さらに60℃で30分間加温したのちは3,400
Pa・sであった。 実施例3 熱可塑性樹脂粉末Aの代わりに、平均単一粒径(重量基
準)1.8μmのメチルメタクリレート系共重合体であ
る熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤[日本ゼオン(株)、
F−303]12重量部を用い、2,2−ジメトキシ−
2−フェニルアセトフェノンの代わりに1−ヒドロキシ
シクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの等重
量混合物[チバガイギー社、イルガキュア500]2重
量部を用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返し
た。巻き取ったまま25℃に放置したシートモールディ
ングコンパウンドから、1時間後に離型フィルムを剥離
したところ、離型フィルムは容易に剥離して、フィルム
にシートモールディングコンパウンドの成分の付着は認
められなかった。シートモールディングコンパウンド
は、半透明感のあるシートであった。紫外線照射による
硬化を行ったところ、4回の紫外線照射により、シート
モールディングコンパウンドは全体にわたって均一に硬
化し、成形品の色は淡いレモンイエロー色となった。こ
の成形品の曲げ強さは3.2N/mm2、曲げ弾性率は23
0N/mm2であった。シートモールディングコンパウン
ドを25℃で暗所に2ケ月間保存して貯蔵安定性をチェ
ックしたのち、同様に成形を行ったが、離型フィルムの
剥離性、紫外線硬化性ともに、2ケ月前と変化なく良好
であった。シートモールディングコンパウンドの作製に
用いた不飽和ポリエステル樹脂100重量部、スチレン
40重量部、増粘剤[F−303]12重量部、1−ヒ
ドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノ
ンの等重量混合物2重量部及びINT−EQ6、1重量
部よりなる不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度を測定
したところ、25℃で5時間保存後12Pa・sであ
り、さらに60℃で30分間加温したのちは3,200
Pa・sであった。 実施例4 熱可塑性樹脂粉末Aの代わりに、平均単一粒径(重量基
準)1.8μmのメチルメタクリレート系共重合体であ
る熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤[日本ゼオン(株)、
F−303]8重量部及びメチルメタクリレート95重
量%とスチレン5重量%の共重合体粉末3重量部を用
い、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン
の代わりに2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−
2−モルフォリノ−1−プロパノン[チバガイギー社、
イルガキュア907]2重量部及びチオキサントン1重
量部を用い、更に塗布厚さを2mmとした以外は、実施例
1と同じ操作を繰り返した。巻き取ったまま25℃に放
置したシートモールディングコンパウンドから、1時間
後に離型フィルムを剥離したところ、離型フィルムは容
易に剥離して、フィルムにシートモールディングコンパ
ウンドの成分の付着は認められなかった。シートモール
ディングコンパウンドは、半透明感のある褐色のシート
であった。紫外線照射による硬化を行ったところ、4回
の紫外線照射により、シートモールディングコンパウン
ドは全体にわたって均一に硬化し、成形品の色は褐色で
あった。この成形品の曲げ強さは3.1N/mm2、曲げ弾
性率は190N/mm2であった。シートモールディング
コンパウンドを25℃で暗所に2ケ月間保存して貯蔵安
定性をチェックしたのち、同様に成形を行ったが、離型
フィルムの剥離性、紫外線硬化性ともに、2ケ月前と変
化なく良好であった。シートモールディングコンパウン
ドの作製に用いた不飽和ポリエステル樹脂100重量
部、スチレン40重量部、増粘剤[F−303]8重量
部、メチルメタクリレートとスチレンの共重合体粉末3
重量部、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2
−モルフォリノ−1−プロパノン2重量部、チオキサン
トン1重量部及びINT−EQ6、1重量部よりなる不
飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度を測定したところ、
25℃で5時間保存後86Pa・sであり、さらに60
℃で30分間加温したのちは4,300Pa・sであっ
た。離型フィルム上に塗布した不飽和ポリエステル樹脂
組成物の塗布量が多い時には、増粘する前に外側に流動
する場合がある。このような場合には、本例の如く、増
粘速度を上げ、かつ他の性能に影響を与えないシートモ
ールディングコンパウンドの製造方法が可能である。 実施例5 プロピレングリコール/ネオペンチルグリコール/イソ
フタル酸/フマル酸のモル比が15/35/20/30
である数平均分子量3,300のランダム共重合体から
なる不飽和ポリエステル樹脂100重量部を、スチレン
40重量部に加えて均一に溶解し、この溶液に、2,2
−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン[チバガイ
ギー社、イルガキュア651]2重量部及びINT−E
Q6[APRL社]1重量部を添加して混合し、不飽和
ポリエステル樹脂混合物を得た。 この不飽和ポリエステル樹脂混合物を簡易混合機に移
し、平均単一粒径(重量基準)1.9μmのメチルメタ
クリレート95重量%とメタクリル酸5重量%の共重合
体である熱可塑性樹脂粉末Aからなる増粘剤12重量部
を添加して混合し、さらに、直径13μm、カット長6
mmのロービングガラスチョップ[日東紡績(株)]43重
量部を加えて混練し、ガラス繊維を均一に分散させてバ
ルクモールディングコンパウンドを得た。このバルクモ
ールディングコンパウンドを、無延伸ポリプロピレンフ
ィルムで包装し、60℃の恒温室中に20分間置いて増
粘したのち、25℃に放置した。25℃に放置したバル
クモールディングコンパウンドから、1時間後に無延伸
ポリプロピレンフィルムを剥離したところ、フィルムは
容易に剥離して、フィルムにバルクモールディングコン
パウンドの成分の付着は認められなかった。バルクモー
ルディングコンパウンドは、乳白色で半透明感を有して
いた。このバルクモールディングコンパウンドを、直径
200mm、厚さ6mmの円板状とした。ベルトコンベアの
ベルト上面から100mm離れてメタルハライドランプが
位置するよう紫外線照射装置[ウシオ電機(株)、UVC
−253型]を設置し、ベルト上に上記の円板状のバル
クモールディングコンパウンドを置き、ベルト速度1m
/分で送って円板状のバルクモールディングコンパウン
ドに紫外線を照射し、次いで円板状のバルクモールディ
ングコンパウンドを裏返して同様に紫外線を照射し、さ
らに同様にして表面及び裏面に紫外線を各1回ずつ照射
した。波長300〜400nmの積算紫外線量は、4回
の照射の合計で4,000mJ/cm2である。この4回の紫
外線照射により、円板状のバルクモールディングコンパ
ウンドは全体にわたって均一に硬化し、成形品の色はレ
モンイエロー色となった。JIS K 7203にしたが
ってこの成形品の曲げ試験を行ったところ、曲げ強さは
1.9N/mm2、曲げ弾性率は110N/mm2であった。
バルクモールディングコンパウンドを25℃で暗所に2
ケ月間保存して貯蔵安定性をチェックしたのち、同様に
紫外線を照射して成形を行ったが、無延伸ポリプロピレ
ンフィルムの剥離性、紫外線硬化性ともに、2ケ月前と
変化なく良好であった。 比較例1 プロピレングリコール/ネオペンチルグリコール/イソ
フタル酸/フマル酸のモル比が15/35/20/30
である数平均分子量3,300のランダム共重合体から
なる不飽和ポリエステル樹脂100重量部を、スチレン
40重量部に加えて均一に溶解し、この溶液に、2,2
−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン[チバガイ
ギー社、イルガキュア651]2重量部、INT−EQ
6[APRL社]1重量部及び酸化マグネシウム[協和
化学(株)、MgO#40]4重量部を添加し、室温で混
合して不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。SMCマ
シーンを用い、離型フィルムとしてのポリプロピレンフ
ィルムに上記の不飽和ポリエステル樹脂組成物を厚さ1
mmに塗布し、その上に直径13μmのガラス繊維ロービ
ング[日東紡績(株)]をカット長2インチに切断して散
布し、さらに不飽和ポリエステル樹脂組成物を厚さ1mm
に塗布したポリプロピレンフィルムで挟んだ。ガラス繊
維の散布量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物中の不飽
和ポリエステル樹脂100重量部当たり35重量部であ
る。実施例1と同様にして、60℃に加温した圧延ロー
ル及びオーブンを経由し、室温まで冷却したのち、シー
トモールディングコンパウンドを巻き取った。巻き取っ
たまま25℃に放置したシートモールディングコンパウ
ンドから、1時間後に離型フィルムを剥離しようと試み
たが、離型フィルムを剥離することができなかった。さ
らに、シートモールディングコンパウンドの作製から2
5℃で10時間保存後及び3日間保存後に、シートモー
ルディングコンパウンドから離型フィルムを剥離しよう
と試みたが、いずれの場合も離型フィルムを剥離するこ
とができなかった。シートモールディングコンパウンド
の作製に用いた不飽和ポリエステル樹脂100重量部、
スチレン40重量部、2,2−ジメトキシ−2−フェニ
ルアセトフェノン2重量部、INT−EQ6、1重量部
及び酸化マグネシウム4重量部よりなる不飽和ポリエス
テル樹脂組成物の粘度を測定したところ、25℃で5時
間保存後4Pa・sであり、さらに60℃で30分間加
温してのちは5Pa・sであった。 比較例2 プロピレングリコール/ネオペンチルグリコール/イソ
フタル酸/フマル酸のモル比が15/35/20/30
である数平均分子量3,300のランダム共重合体から
なる不飽和ポリエステル樹脂100重量部を、スチレン
40重量部に加えて均一に溶解し、この溶液に、2,2
−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン[チバガイ
ギー社、イルガキュア651]2重量部、INT−EQ
6[APRL社]1重量部、炭酸カルシウム[日東粉化
工業(株)、NS−100]160重量部及び酸化マグネ
シウム[協和化学(株)、MgO#40]4重量部を添加
し、室温で混合して不飽和ポリエステル樹脂組成物を得
た。この不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて比較例
1と同様にしてシートモールディングコンパウンドを作
製し、巻き取ったまま25℃に放置したシートモールデ
ィングコンパウンドから、1時間後に離型フィルムを剥
離しようと試みたが、離型フィルムを剥離することがで
きなかった。また、シートモールディングコンパウンド
の作製から25℃で10時間保存したのちに、離型フィ
ルムを剥離しようと試みたが、なお離型フィルムを剥離
することができなかった。さらに、シートモールディン
グコンパウンドの作製から25℃で3日間保存後に離型
フィルムを剥離したところ、離型フィルムを剥離するこ
とができ、フィルムにシートモールディングコンパウン
ドの成分の付着は認められなかった。シートモールディ
ングコンパウンドは、不透明な白色のシートであった。
このシートモールディングコンパウンドを300mm×3
00mmに切断し、実施例1と同様にして、表裏各2回の
紫外線照射を行ったが、シートは硬化しなかった。シー
トモールディングコンパウンドの作製に用いた不飽和ポ
リエステル樹脂100重量部、スチレン40重量部、
2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン2重
量部、INT−EQ6、1重量部、炭酸カルシウム16
0重量部及び酸化マグネシウム4重量部よりなる不飽和
ポリエステル樹脂組成物の粘度を測定したところ、25
℃で5時間保存後260Pa・sであり、さらに60℃
で30分間加温したのちは280Pa・sであった。実
施例1〜5及び比較例1〜2の結果を、まとめて第1表
に示す。
【0030】
【表1】
【0031】[注] 1)不飽和ポリエステル樹脂:プロピレングリコール/
ネオペンチルグリコール/イソフタル酸/フマル酸=1
5/35/20/30(モル比)のランダム共重合体、
数平均分子量3,300。 2)熱可塑性樹脂粉末A:メチルメタクリレート/メタ
クリル酸=95/5(重量比)の共重合体、平均単一粒
径1.9μm。 3)熱可塑性樹脂粉末B:メチルメタクリレート/スチ
レン/グリシジルメタクリレート=90/5/5(重量
比)の共重合体、平均単一粒径1.8μm。 4)熱可塑性樹脂粉末F−303:メチルメタクリレー
ト系共重合体、日本ゼオン(株)製。 5)光重合開始剤:実施例1、実施例5、比較例1、比
較例2;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェ
ノン[チバガイギー社、イルガキュア651]、実施例
2;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[チ
バガイギー社、イルガキュア184]、実施例3;1−
ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェ
ノンの等重量混合物[チバガイギー社、イルガキュア5
00]、実施例4;2−メチル−[4−(メチルチオ)フ
ェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン[チバガ
イギー社、イルガキュア907]とチオキサントン併
用。 6)ガラス繊維:直径13μm、日東紡績(株)製。但
し、実施例1〜4及び比較例1〜2では2インチ長、実
施例5では6mm長。 7)アルカン酸系離型剤:INT−EQ6[Axel
Plastics Research Laborato
ries,Inc.]製。 8)酸化マグネシウム:MgO#40、協和化学(株)
製。 9)炭酸カルシウム:NS−100、日東粉化工業(株)
製。 第1表の結果から、熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤を
含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物を用い、加温に
より増粘させたのち、冷却して巻き取った本発明のシー
トモールディングコンパウンドは、巻き取り1時間後に
はすでに使用可能の状態であり、紫外線照射により硬化
して良好な成形性を示し、さらに2ケ月保存後も全く変
わらない優れた貯蔵安定性を有することが分かる。ま
た、熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤を含有する不飽和
ポリエステル樹脂組成物を用い、加温により増粘させた
のち、冷却して得たバルクモールディングコンパウンド
も、同様に増粘が速く短時間で使用可能な状態となり、
良好な紫外線硬化性と貯蔵安定性を有することが分か
る。これに対して、熱可塑性樹脂粉末の代わりに従来の
増粘剤である酸化マグネシウムを用いた比較例1のシー
トモールディングコンパウンドは、増粘性が不十分で、
3日間後でも離型フィルムを剥離することができず、使
用可能な状態とはならない。酸化マグネシウムを増粘剤
とし、さらに無機充填剤として多量の炭酸カルシウムを
配合した比較例2のシートモールディングコンパウンド
も、増粘速度が遅く、10時間後では離型フィルムを剥
離することができず、使用可能な状態とはならない。3
日後にようやく離型フィルムの剥離が可能となるが、こ
のシートモールディングコンパウンドは、光重合開始剤
を含有するにもかかわらず、不透明で紫外線照射によっ
ては硬化しない。
【0032】
【発明の効果】本発明の照射線硬化型不飽和ポリエステ
ル樹脂組成物は、熱可塑性樹脂からなる増粘剤の急速な
増粘作用により、製造工程中の短時間の加温により成形
加工が可能な状態まで増粘し、工程の最後で冷却するこ
とにより、長期間にわたる良好な貯蔵安定性が得られ、
透明性を有して紫外線照射により容易に硬化することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の増粘
曲線である。
【図2】図2は、シートモールディングコンパウンドの
製造方法の一態様を示す説明図である。
【符号の説明】
1 混合機 2 不飽和ポリエステル樹脂組成物 3 離型フィルム 4 コーター 5 繊維強化材 6 チョッパー 7 圧延ロール 8 オーブン 9 空冷機 10 巻き取りロール

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)不飽和ポリエステル樹脂100重量
    部、(B)液状重合性単量体25〜60重量部、(C)
    熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤5〜30重量部、
    (D)光重合開始剤0.5〜10重量部、及び、(E)
    繊維強化材20〜70重量部を含有することを特徴とす
    る照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物。
  2. 【請求項2】熱可塑性樹脂粉末が、アクリル酸エステ
    ル、メタクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物の中
    から選ばれた少なくとも1種の単量体単位を50重量%
    以上有し、かつカルボキシル基又はエポキシ基含有単量
    体単位を1〜20重量%有するものである請求項1記載
    の照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物。
  3. 【請求項3】(A)不飽和ポリエステル樹脂100重量
    部当たり、(B)液状重合性単量体25〜60重量部、
    (C)熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤5〜30重量
    部、(D)光重合開始剤0.5〜10重量部、及び、
    (E)繊維強化材20〜70重量部を含有する不飽和ポ
    リエステル樹脂組成物を、40〜80℃に加温すること
    を特徴とする照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成
    物の製造方法。
  4. 【請求項4】(A)不飽和ポリエステル樹脂100重量
    部、(B)液状重合性単量体25〜60重量部、(C)
    熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤5〜30重量部、
    (D)光重合開始剤0.5〜10重量部、及び、(E)
    繊維強化材20〜70重量部を含有してなる不飽和ポリ
    エステル樹脂組成物を、温度60〜80℃の成形型に無
    圧〜2kg/cm2(ゲージ圧)で密着させて形をつくった
    のち、紫外線を照射して硬化することを特徴とする不飽
    和ポリエステル樹脂組成物の成形方法。
JP21584397A 1997-07-25 1997-07-25 照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物及び該組成物の成形方法 Expired - Fee Related JP3893605B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP21584397A JP3893605B2 (ja) 1997-07-25 1997-07-25 照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物及び該組成物の成形方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP21584397A JP3893605B2 (ja) 1997-07-25 1997-07-25 照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物及び該組成物の成形方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1143596A true JPH1143596A (ja) 1999-02-16
JP3893605B2 JP3893605B2 (ja) 2007-03-14

Family

ID=16679197

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP21584397A Expired - Fee Related JP3893605B2 (ja) 1997-07-25 1997-07-25 照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物及び該組成物の成形方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3893605B2 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001139700A (ja) * 1999-08-31 2001-05-22 Dainippon Ink & Chem Inc 光硬化性樹脂コンパウンドおよびその硬化法
WO2002057373A1 (fr) * 2001-01-22 2002-07-25 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho Composition de resine de photocomposition, stratifies metalliques comportant des couches faites de la composition, elements metalliques produits a partir des stratifies et comportant des couches de protection, et procede de production de ceux-ci
JP2007291179A (ja) * 2006-04-21 2007-11-08 Toa Grout Kogyo Co Ltd 硬化性樹脂組成物、ライニング材及び管状ライニング材
JP2015054873A (ja) * 2013-09-10 2015-03-23 サンコーテクノ株式会社 プリプレグシート、プリプレグシートの製造方法および積層体
WO2019017254A1 (ja) * 2017-07-20 2019-01-24 三菱ケミカル株式会社 シートモールディングコンパウンド、繊維強化複合材料、および繊維強化複合材料の製造方法
JPWO2022025097A1 (ja) * 2020-07-31 2022-02-03
WO2023017852A1 (ja) * 2021-08-13 2023-02-16 昭和電工株式会社 樹脂組成物及びライニング材用材料

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001139700A (ja) * 1999-08-31 2001-05-22 Dainippon Ink & Chem Inc 光硬化性樹脂コンパウンドおよびその硬化法
JP4608750B2 (ja) * 1999-08-31 2011-01-12 Dic株式会社 光硬化性樹脂コンパウンドおよびその硬化法
WO2002057373A1 (fr) * 2001-01-22 2002-07-25 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho Composition de resine de photocomposition, stratifies metalliques comportant des couches faites de la composition, elements metalliques produits a partir des stratifies et comportant des couches de protection, et procede de production de ceux-ci
US6927243B2 (en) 2001-01-22 2005-08-09 Kobe Steel, Ltd. Photosetting resin composition, metal laminates having layers made from the composition, metal members made from the laminates and having high-hardness protecting layers and process for production thereof
JP2007291179A (ja) * 2006-04-21 2007-11-08 Toa Grout Kogyo Co Ltd 硬化性樹脂組成物、ライニング材及び管状ライニング材
JP2015054873A (ja) * 2013-09-10 2015-03-23 サンコーテクノ株式会社 プリプレグシート、プリプレグシートの製造方法および積層体
WO2019017254A1 (ja) * 2017-07-20 2019-01-24 三菱ケミカル株式会社 シートモールディングコンパウンド、繊維強化複合材料、および繊維強化複合材料の製造方法
JPWO2022025097A1 (ja) * 2020-07-31 2022-02-03
WO2022025097A1 (ja) * 2020-07-31 2022-02-03 昭和電工株式会社 樹脂組成物、管渠補修材および管渠補修方法
WO2023017852A1 (ja) * 2021-08-13 2023-02-16 昭和電工株式会社 樹脂組成物及びライニング材用材料

Also Published As

Publication number Publication date
JP3893605B2 (ja) 2007-03-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5972272A (en) Unsaturated polyester resin composition and process for molding the composition
US20040030081A1 (en) Light diffusing films
JP2762389B2 (ja) 光学的立体造形用樹脂組成物
JP3893605B2 (ja) 照射線硬化型不飽和ポリエステル樹脂組成物及び該組成物の成形方法
JPH0726060A (ja) 光学的立体造形用樹脂組成物
JPH09316111A (ja) 光硬化性樹脂組成物および樹脂製型の製造方法
JPH03114711A (ja) 合成樹脂の注型方法
JPH1121440A (ja) シートモールディングコンパウンド及びその製造方法
JP2004238597A (ja) 耐熱性に優れる光硬化性樹脂組成物
JPH10279819A (ja) 光学的立体造形用樹脂組成物
JPH09183122A (ja) シートモールディングコンパウンドの製造方法
JP4727441B2 (ja) 黒色ビニルエステル樹脂成形材料
JP3244130B2 (ja) 人工大理石用樹脂組成物および該組成物からの成形方法
JP2000334874A (ja) 常温硬化性シート状材料及びその硬化方法
JPH09188771A (ja) バルクモールディングコンパウンド
JPH09188772A (ja) バルクモールディングコンパウンド及びそれを用いた成形方法
JPH09176331A (ja) 不飽和ポリエステル樹脂高強度シートモールディングコンパウンド及びその成形方法
JPS6139331B2 (ja)
JPH09188770A (ja) シートモールディングコンパウンド
JP2003175515A (ja) 補強方法
JPH02305808A (ja) 袈橋高分子微粒子を含む重合性組成物並びにその製造方法及びその硬化方法
JP3226965B2 (ja) 樹脂組成物及びその製造方法
JP2002265615A (ja) 樹脂複合体の製造法
JPH0995519A (ja) 不飽和ポリエステル樹脂の成形方法
JPH09174698A (ja) 不飽和ポリエステル樹脂シートモールディングコンパウンドの成形方法及び成形品

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040409

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20051110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20051115

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060116

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060207

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20060116

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060404

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20061120

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20061203

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091222

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091222

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101222

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101222

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111222

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111222

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121222

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121222

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131222

Year of fee payment: 7

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131222

Year of fee payment: 7

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees