JPH09174698A - 不飽和ポリエステル樹脂シートモールディングコンパウンドの成形方法及び成形品 - Google Patents

不飽和ポリエステル樹脂シートモールディングコンパウンドの成形方法及び成形品

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JPH09174698A
JPH09174698A JP7351353A JP35135395A JPH09174698A JP H09174698 A JPH09174698 A JP H09174698A JP 7351353 A JP7351353 A JP 7351353A JP 35135395 A JP35135395 A JP 35135395A JP H09174698 A JPH09174698 A JP H09174698A
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JP
Japan
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molding compound
sheet molding
unsaturated polyester
weight
polyester resin
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Application number
JP7351353A
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English (en)
Inventor
Toshio Nagase
敏夫 永瀬
Atsushi Tsukamoto
淳 塚本
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Zeon Corp
Original Assignee
Nippon Zeon Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】成形を低圧で行うことができ、比重が小さい軽
量化された不飽和ポリエステル樹脂成形品を得ることが
できるシートモールディングコンパウンドの成形方法及
び成形品を提供する。 【解決手段】(A)不飽和ポリエステル樹脂、(B)液
状重合性単量体、(C)繊維強化材、(D)熱可塑性樹
脂粉末からなる増粘剤、(E)中空軽量化材及び(F)
硬化用触媒を含有してなるシートモールディングコンパ
ウンドを型に入れ、40〜160℃に加熱し、低圧で加
圧して成形するシートモールディングコンパウンドの成
形方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、不飽和ポリエステ
ル樹脂シートモールディングコンパウンドの成形方法に
関する。さらに詳しくは、比重の小さい、軽量化された
不飽和ポリエステル樹脂シートモールディングコンパウ
ンドの低圧での成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、不飽和ポリエステル樹脂をベース
としたシートモールディングコンパウンドやバルクモー
ルディングコンパウンドは、強化プラスチック加工業界
において、省力化や量産化、あるいは作業環境の改善な
どの要求を取り入れた機械成形用の新しい工業材料とし
て、着実にその需要を伸ばしてきた。従来のシートモー
ルディングコンパウンドは、不飽和ポリエステル樹脂と
液状重合性単量体の混合物に、充填剤、増粘剤、硬化用
触媒、着色剤、離型剤などを配合した不飽和ポリエステ
ル樹脂組成物を、ドクターブレードでフィルムに塗布
し、その上にガラスロービングを切断して散布し、さら
に不飽和ポリエステル樹脂組成物を塗布したフィルムで
挟み、ローラーで押さえて、含浸、脱泡し、巻き取るこ
とによって製造される。巻き取ったシートモールディン
グコンパウンドを40〜50℃で熟成することにより増
粘し、フィルムを剥離可能な状態としたのちに成形に使
用する。成形は金型を用いた圧縮成形により、成形温度
120〜180℃、成形圧力30〜100kg/cm2の高
温・高圧で行われることが多い。増粘剤としては、一般
には酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物
が使用されるが、酸化マグネシウムのみでは増粘効果が
不十分であるため、充填剤の添加が必須であり、その添
加量も不飽和ポリエステル樹脂100重量部当たり通常
100重量部以上が必要である。充填剤としては、炭酸
カルシウムなどの無機化合物が一般的に使用されるが、
これらの無機化合物は比重が大きいので、多量に添加す
るとシートモールディングコンパウンドもいきおい比重
の大きいものとならざるを得ない。従って、不飽和ポリ
エステル樹脂による成形品は、通常比重が1.60〜1.
80であり、中空粒子の軽量化材を配合したものでも比
重が1.10を超える重いものであった。硬化して得ら
れる成形品は約7〜10%の容積収縮をきたすので、そ
の改良法として熱可塑性樹脂を低収縮化剤として添加す
ることが行われている(特公昭46−14541号公
報、特開平6−32809号公報など)。こうして成形
技術が改善され、シートモールディングコンパウンドは
一層用いられるようになったものの、高圧に耐える金型
が高価であり、また高温・高圧の諸設備も制約となって
少量製品にも広く適用することはできなかった。また、
多量の無機充填剤を含有することから、成形品の比重が
大きく、用途面からの制約を受けていた。シートモール
ディングコンパウンド成形品の軽量化のために、充填剤
の一部をガラスマイクロバルーンなどの中空軽量化材に
置換えて添加することが試みられた。しかし、充填剤の
一部を中空軽量化材に置換えると増粘速度がおそくな
り、熟成に長時間を要し、シートモールディングコンパ
ウンドのべとつきのために成形作業性が低下し、圧縮成
形時にガラス繊維が取り残されるなどの問題が生じる。
特開平6−107936号公報には、微小中空粒子を配
合したシートモールディングコンパウンドの増粘性を改
良するために、飽和ポリエステル及びポリ酢酸ビニル又
はポリメタクリル酸メチルを添加した組成物が提案され
ているが、この組成物においても酸化マグネシウムと充
填剤の添加を省くことはできず、成形にも成形温度15
0℃、成形圧力100kg/cm2のような高温・高圧を必
要とする。また、特開平5−171022号公報及び特
開平5−171023号公報には、増粘剤としてアクリ
ルポリマーを使用し、アクリルポリマーが樹脂組成物の
モノマー成分によって膨潤することにより増粘させ、酸
化マグネシウムなどの金属酸化物増粘剤の添加や、熟成
などの工程を不要とした成形用樹脂組成物が提案されて
いる。しかし、この組成物においても増粘のためには不
飽和ポリエステル樹脂などの量を上回る無機フィラーの
添加も必須であり、加熱圧縮成形も、成形温度80〜1
20℃、成形圧力30〜100kg/cm2のような高温・
高圧で行われる。これらの事情から、シートモールディ
ングコンパウンドを軽量化し、ガラス繊維の添加、含浸
が可能な十分に低い初期粘度を有し、短時間で増粘して
使用可能な状態となり、低温(40〜100℃)、低圧
(0.1〜10kg/cm2)で、さらには減圧下で成形加工
することができる不飽和ポリエステル樹脂成形品の成形
方法が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、比重が小さ
い軽量化されたシートモールディングコンパウンドの真
空、圧空又は圧縮成形を、低圧で行うことによる、不飽
和ポリエステル樹脂成形品の成形方法を提供することを
目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、不飽和ポリエス
テル樹脂に、熱可塑性樹脂粉末と中空軽量化材を配合す
ることにより、シートモールディングコンパウンドへの
無機充填剤添加に頼ることなく、低圧で圧縮成形するこ
とが可能となることを見いだし、この知見に基づいて本
発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、 (1)(A)不飽和ポリエステル樹脂、(B)液状重合
性単量体、(C)繊維強化材、(D)熱可塑性樹脂粉末
からなる増粘剤、(E)中空軽量化材及び(F)硬化用
触媒を含有してなるシートモールディングコンパウンド
を型に入れ、40〜160℃に加熱し、低圧で加圧して
成形するシートモールディングコンパウンドの成形方
法、 (2)(A)不飽和ポリエステル樹脂100重量部当た
り、(B)液状重合性単量体30〜120重量部、
(C)繊維強化材20〜60重量部、(D)増粘剤とし
て熱可塑性樹脂粉末20〜120重量部、(E)中空軽
量化材1〜40重量部及び(F)硬化用触媒0.5〜7
重量部を含有してなるシートモールディングコンパウン
ドを型に入れ、40〜160℃に加熱し、低圧で加圧し
て成形するシートモールディングコンパウンドの成形方
法、 (3)シートモールディングコンパウンドを下型面に設
置し、上型を0.1〜10kg/cm2(ゲージ圧)の圧力で
押し付ける第(1)項又は第(2)項記載のシートモールデ
ィングコンパウンドの成形方法、 (4)シートモールディングコンパウンドを型面に設置
してフィルムで覆い、型面とフィルムの間を−760〜
−50mmHgの減圧とし、大気圧との差圧によりシートモ
ールディングコンパウンドを型面に密着させる第(1)項
又は第(2)項記載のシートモールディングコンパウンド
の成形方法、 (5)シートモールディングコンパウンドを型面に設置
してフィルムで覆い、フィルムに1〜5kg/cm2(ゲー
ジ圧)の空気圧をかけてシートモールディングコンパウ
ンドを型面に密着させる第(1)項又は第(2)項記載のシ
ートモールディングコンパウンドの成形方法、及び、 (6)不飽和ポリエステル樹脂シートモールディングコ
ンパウンドを成形して得られる比重0.80〜1.10の
軽量の不飽和ポリエステル樹脂成形品、を提供するもの
である。さらに、本発明の好ましい態様として、 (7)液状重合性単量体がスチレンであり、熱可塑性樹
脂粉末がスチレンを吸収膨潤するものである第(1)項、
第(2)項、第(3)項、第(4)項又は第(5)項記載のシー
トモールディングコンパウンドの成形方法、 (8)熱可塑性樹脂粉末が、アクリル酸エステル、メタ
クリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物の中から選ば
れた少なくとも1種の単量体単位を50重量%以上含有
する樹脂粉末である第(1)項、第(2)項、第(3)項、第
(4)項、第(5)項又は第(7)項記載のシートモールディ
ングコンパウンドの成形方法、 (9)熱可塑性樹脂粉末が、(a)ガラス転移点が−30
℃以下のアクリル酸エステル系又はメタクリル酸エステ
ル系重合体及び/又はジエン系重合体からなるコア部
と、(b)アクリル酸エステル系又はメタクリル酸エステ
ル系単量体と遊離カルボキシル基を有するラジカル重合
性不飽和カルボン酸単量体とのガラス転移点が70℃以
上の共重合体よりなるシェル層で構成されるコア/シェ
ル型共重合体粒子に、金属カチオンを付加してイオン架
橋させた共重合体樹脂粉末である第(1)項、第(2)項、
第(3)項、第(4)項、第(5)項、第(7)項又は第(8)項
記載のシートモールディングコンパウンドの成形方法、 (10)シートモールディングコンパウンドを2〜10
枚積層して型に入れ、成形温度40〜160℃、成形圧
力0.1〜10kg/cm2(ゲージ圧)で圧縮成形して成形
品を得る第(3)項、第(7)項、第(8)項又は第(9)項記
載のシートモールディングコンパウンドの成形方法、 (11)シートモールディングコンパウンドを2〜10
枚積層して型に入れ、−760〜−50mmHgの減圧で型
面に密着させ、続いて又は同時に40〜160℃に加熱
して成形品を得る第(4)項、第(7)項、第(8)項又は第
(9)項記載のシートモールディングコンパウンドの成形
方法、 (12)シートモールディングコンパウンドを2〜10
枚積層して型に入れ、1〜5kg/cm2(ゲージ圧)の空
気で型面に密着させ、続いて又は同時に40〜160℃
に加熱して成形品を得る第(4)項、第(7)項、第(8)項
又は第(9)項記載のシートモールディングコンパウンド
の成形方法、及び、 (13)第(7)項、第(8)項、第(9)項、第(10)項、
第(11)項又は第(12)項記載の方法により成形された
シートモールディングコンパウンド成形品、を挙げるこ
とができる。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明に使用するシートモールデ
ィングコンパウンドは、(A)不飽和ポリエステル樹
脂、(B)液状重合性単量体、(C)繊維強化材、
(D)熱可塑性樹脂粉末からなる増粘剤、(E)中空軽
量化材及び(F)硬化用触媒を含有する。これら各成分
の含有量の比は、(A)不飽和ポリエステル樹脂100
重量部当たり、(B)液状重合性単量体30〜120重
量部、(C)繊維強化材20〜60重量部、(D)増粘
剤として熱可塑性樹脂粉末20〜120重量部、(E)
中空軽量化材1〜40重量部及び(F)硬化用触媒0.
5〜7重量部であることが好ましい。本発明において、
(A)成分として用いられる不飽和ポリエステル樹脂には
特に制限はなく、従来一般の不飽和ポリエステル樹脂成
形品に慣用されている公知の不飽和ポリエステル樹脂を
使用することができる。不飽和ポリエステル樹脂は、不
飽和多塩基酸又は場合により飽和多塩基酸を含む不飽和
多塩基酸と多価アルコールとから得られるものである。
不飽和多塩基酸としては、例えば、フマル酸、マレイン
酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサ
コン酸、クロロマレイン酸、あるいはこれらのジアルキ
ルエステルなどを挙げることができる。これらの不飽和
多塩基酸はそれぞれ単独で用いることができ、2種以上
を組み合わせて用いることができる。また、不飽和多塩
基酸の一部を置き換える飽和多塩基酸としては、例え
ば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタ
ル酸、ヘット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、アジピン
酸、セバチン酸、アゼライン酸などを挙げることができ
る。これらの飽和多塩基酸はそれぞれ単独で用いること
ができ、2種以上を組み合わせて用いることができる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコー
ル、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジ
プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,
2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−
ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,6−ヘ
キサンジオール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチ
ルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタ
ンジオール、グリセリンモノアリルエーテル、水素化ビ
スフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ
フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシプロ
ポキシフェニル)プロパンなどのジオール類、トリメチ
ロールプロパンなどのトリオール類、ペンタエリスリト
ールなどのテトラオール類などを挙げることができる。
これらの多価アルコールは、それぞれ単独で用いること
ができ、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0006】従来、増粘剤として慣用されてきたアルカ
リ土類金属の酸化物などを使用する場合には、(A)成分
の不飽和ポリエステル樹脂の数平均分子量は約2,50
0以上である必要があったが、本発明に使用する熱可塑
性樹脂粉末を増粘剤とするシートモールディングコンパ
ウンドにおいては、数平均分子量1,000〜2,500
の不飽和ポリエステル樹脂であってもシートモールディ
ングコンパウンドとすることが可能なので、使用できる
分子量範囲が広がった。本発明においては、(A)成分の
不飽和ポリエステル樹脂は、必要に応じて、耐薬品性改
善などのためにエポキシアクリレート樹脂で、あるいは
インサート加工などでの接着性改善などのためにウレタ
ンアクリレート樹脂で一部を置換することができる。こ
のような目的で使用するエポキシアクリレート樹脂とし
ては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビス
フェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポ
キシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などにアクリル酸
やメタクリル酸を付加したものを挙げることができる。
また、ウレタンアクリレート樹脂としては、例えば、特
公昭55−30527号公報、特公昭60−26132
号公報及び特公昭60−26133号公報に開示された
エチレングリコールの両端にトリレンジイソシアネート
を付加し、さらに2−ヒドロキシエチルメタクリレート
を両末端に付加したものなどを挙げることができる。
【0007】本発明において、不飽和ポリエステル樹脂
は、通常(B)成分の液状重合性単量体に溶解した状態で
使用する。(B)成分として用いる液状重合性単量体は、
不飽和ポリエステル樹脂に対して溶解性を有し、ラジカ
ル重合性を有するものであれば特に制限なく使用するこ
とができるが、アクリル酸エステル、メタクリル酸エス
テル、芳香族ビニル化合物及び芳香族カルボン酸のアリ
ルアルコールエステルを特に好適に使用することができ
る。液状重合性単量体は、成形加工時に(A)成分の不飽
和ポリエステル樹脂と架橋反応を起こす。アクリル酸エ
ステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチル
アクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピ
ルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチル
アクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチ
ルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘ
キシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレー
ト、n−オクチルアクリレートなどを挙げることがで
き、メタクリル酸エステルとしては、例えば、メチルメ
タクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメ
タクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチ
ルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シク
ロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタク
リレート、n−オクチルメタクリレート、ジエチレング
リコールジメタクリレート、トリメチロールプロパント
リメタクリレートなどを挙げることができる。また、芳
香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メ
チルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、
α−クロロスチレン、ジクロロスチレン、ジビニルベン
ゼンなどを挙げることができる。芳香族カルボン酸のア
リルアルコールエステルとしては、ジアリルフタレー
ト、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメリテー
トなどを挙げることができる。これらの液状重合性単量
体の中で、芳香族ビニル化合物、特にスチレンを好適に
使用することができる。本発明において、(B)成分の液
状重合性単量体は、1種のみで用いることができ、2種
以上を組み合わせて用いることもできる。その配合量
は、(A)成分の不飽和ポリエステル樹脂100重量部当
たり、30〜120重量部、好ましくは40〜100重
量部である。液状重合性単量体の配合量が、不飽和ポリ
エステル樹脂100重量部当たり30重量部未満である
と、組成物の粘度が高く、シートモールディングコンパ
ウンドの作製が困難となるおそれがある。液状重合性単
量体の配合量が、不飽和ポリエステル樹脂100重量部
当たり120重量部を超えると、最終成形品が脆くなる
傾向がみられる。
【0008】本発明に使用するシートモールディングコ
ンパウンドには、(C)成分として繊維強化材を配合す
る。繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊
維、ポリエステル繊維、フェノール繊維、ポリビニルア
ルコール繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維など、強化
プラスチックの製造に慣用されているものを使用するこ
とができる。これらの繊維強化材の形態としては、例え
ば、チョップドストランド、チョップドストランドマッ
ト、ロービング、織物などを挙げることができる。繊維
強化材としてガラス繊維をチョップドストランドとして
用いるときは、その長さは通常は5〜60mmとすること
が好ましい。繊維強化材は、長さが短い方が成形の際に
成形材料が流動しやすい反面、長さが長い方が成形品の
機械的強度が大きくなる。これらの繊維強化材は、(A)
成分の不飽和ポリエステル樹脂100重量部当たり、2
0〜60重量部、好ましくは30〜50重量部を配合す
る。繊維強化材の配合量が、不飽和ポリエステル樹脂1
00重量部当たり20重量部未満であると、成形品が十
分高い強度を有しないおそれがある。繊維強化材の配合
量が、不飽和ポリエステル樹脂100重量部当たり60
重量部を超えると、成形時のシートモールディングコン
パウンドの流動性が低下するおそれがある。
【0009】本発明に使用するシートモールディングコ
ンパウンドには、(D)成分として熱可塑性樹脂粉末を増
粘剤として配合する。熱可塑性樹脂粉末としては、(B)
成分の液状重合性単量体を吸収して膨潤するものであれ
ば特に制限はないが、アクリル酸エステル、メタクリル
酸エステル及び芳香族ビニル化合物の中から選ばれた少
なくとも1種の単量体単位を50重量%以上含有する熱
可塑性樹脂粉末を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂
粉末の原料単量体として用いられるアクリル酸エステル
としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリ
レート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアク
リレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリ
レート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアク
リレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシル
アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−
オクチルアクリレートなどを挙げることができ、メタク
リル酸エステルとしては、例えば、メチルメタクリレー
ト、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレー
ト、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリ
レート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシル
メタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、
n−オクチルメタクリレートなどを挙げることができ
る。これらの単量体の中で、特にメチルメタクリレート
が好適である。また、芳香族ビニル化合物としては、例
えば、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼ
ン及びこれらの単量体のベンゼン核に、メチル基、エチ
ル基、プロピル基、ブチル基などが置換された単量体、
例えば、ビニルトルエンやイソブチルスチレンなどを挙
げることができる。これらの単量体は1種のみで用いる
ことができ、2種以上を組み合わせて用いることもでき
る。熱可塑性樹脂粉末中のこれらアクリル酸エステル、
メタクリル酸エステル又は芳香族ビニル化合物の単量体
単位の含有量が50重量%未満であると、熱可塑性樹脂
粉末が十分な増粘効果を示さないおそれがある。
【0010】(D)成分である熱可塑性樹脂粉末は、上記
の単量体と共重合可能な他の単量体単位を含有していて
もよく、共重合可能な他の単量体としては、例えば、ア
クリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアン化ビ
ニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ミリスチン
酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビ
ニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、2−エチ
ルプロペン酸、クロトン酸、桂皮酸などの不飽和モノカ
ルボン酸類;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シト
ラコン酸、クロロマレイン酸などの不飽和ジカルボン酸
類;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イ
タコン酸モノブチルなどの不飽和ジカルボン酸のモノエ
ステル類;ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジ
エン、シクロペンタジエンなどの共役ジエン系化合物;
1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリ
デンノルボルネンなどの非共役ジエン系化合物などを挙
げることができる。さらに、熱可塑性樹脂粉末をシート
モールディングコンパウンド作製の過程で増粘剤として
使用する際の溶解性の調整を行うために、熱可塑性樹脂
粉末を構成する重合体を適当に架橋することができる。
架橋構造を与えるための共重合成分としては、例えば、
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシク
ロヘキシル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メ
タ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレ
ート、2−アミノブチル(メタ)アクリレート、(メタ)ア
クリルアミド、N−2−アミノエチル(メタ)アクリルア
ミド、N−2−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、
N−3−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、エチレ
ン基数が1〜14のポリエチレングリコールジメタクリ
レート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、
ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、アリ
ルグリシジルエーテル、トリアリルイソシアヌレートな
どの単量体を挙げることができる。共重合可能な他の単
量体は1種のみで用いることができ、2種以上を組み合
わせて用いることもできる。
【0011】また、本発明に使用するシートモールディ
ングコンパウンドの経時増粘を抑制する目的で、熱可塑
性樹脂粉末粒子表面の重合体間をイオン架橋することが
できる。イオン架橋は、カルボキシル基を表面に有する
熱可塑性樹脂粉末粒子に、金属カチオンを添加してカル
ボキシル基間を架橋することにより形成することができ
る。イオン架橋は、溶媒の熱可塑性樹脂粉末粒子への浸
透を抑える作用がある一方で、共有結合による架橋構造
とは異なり、加熱すると分子運動量の増大により解離す
るので、成形加工時は何らの架橋も存在しない重合体の
挙動をとり、良好な流動性を保つ。(D)成分の熱可塑性
樹脂粉末は、シートモールディングコンパウンドにおい
て増粘剤としての効果を発揮するものであり、(B)成分
である液状重合性単量体との混合により液状重合性単量
体を吸収膨潤して、シートモールディングコンパウンド
を、所定の温度内で制御された良好な加工粘度を呈する
ようにするものである。そのために前述の好適な組成の
選択に加えて、適正な粒子径と粒子表面状態を有するこ
とが好ましい。粒子径については、平均単一粒子径が
0.2〜40μmであることが好ましく、0.5〜15μ
mであることがより好ましい。平均単一粒子径が0.2
μm未満であると、微細すぎて液状重合性単量体の室温
での吸収速度がはやく、粘度が高くなりすぎて繊維強化
材の混合、含浸などが困難になるおそれがある。平均単
一粒子径が40μmを超えると、液状重合性単量体の室
温での吸収速度がおそくなり、疑似硬化が遅くシートモ
ールディングコンパウンドを作製しにくくなるおそれが
ある。ここで、疑似硬化とは、液状成分を吸収し膨潤し
て、ゲル状になる性質をいう。しかし、繊維強化材を不
飽和ポリエステル樹脂100重量部当たり30重量部以
上配合する場合には、低粘度の配合物として繊維強化材
などを均一に配合するために、熱可塑性樹脂粉末は平均
単一粒子径1〜40μmであることが好ましい。繊維強
化材を配合した後はシートモールディングコンパウンド
に適した粘度への上昇を現出するため、0.2〜5μm
程度の小さな粒子径の熱可塑性樹脂粉末をより大きな粒
子径の、例えば、約50μmの粒子径の熱可塑性樹脂粉
末と併用し、それらの平均の粒子径が1〜40μmとな
るようにすることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂
粉末の形状は球形が好ましい。不規則形状のものは配合
すると粘度が高くなるので、少量しか添加できず、少量
では粘着性があって疑似硬化現象を呈さないので、シー
トモールディングコンパウンドを作製しにくい。粒子の
表面状態としては多孔質でなく平滑なものが、同様に粘
度管理の点から好ましい。
【0012】(D)成分である熱可塑性樹脂粉末が備える
べき液状重合性単量体の吸収膨潤性の度合は、シートモ
ールディングコンパウンドが特定の粘度及び貯蔵安定性
を呈する程度が好ましい。すなわち、本発明において
は、(C)成分の繊維強化材添加前の不飽和ポリエステル
樹脂組成物の調製後40℃で24時間経過した時点での
粘度(25℃で測定)が1,000〜50,000Pa・
sで、かつ調製後30℃で30日間経過した時点での粘
度(25℃で測定)が、調製後40℃で24時間経過し
た時点での粘度の5倍以下であることが好ましい。該不
飽和ポリエステル樹脂組成物の調製後40℃で24時間
経過した時点での粘度(25℃で測定)が1,000P
a・s未満であっても、50,000Pa・sを超えても、
シートモールディングコンパウンドの作製が困難となる
おそれがある。また、調製後30℃で30日間経過した
時点での粘度が、調製後40℃で24時間経過した時点
での粘度の5倍を超えると、シートモールディングコン
パウンドの保存安定性が低下し、柔軟性が低下して、取
り扱いや成形が困難となるおそれがある。なお、粘度を
測定する際は、25℃の恒温槽に1時間置いて状態調節
を行ったのち、25℃、相対湿度60%の環境で粘度測
定を行う。本発明において、(D)成分の熱可塑性樹脂粉
末は、重量平均重合度が1,000〜150,000であ
ることが好ましい。重量平均重合度が1,000未満で
あっても、150,000を超えても、適当な粘度挙動
を有するシートモールディングコンパウンドの作製が困
難となるおそれがある。熱可塑性樹脂粉末が、架橋性単
量体を添加して重合したものである場合には、架橋度が
高すぎるとシートモールディングコンパウンド形成の時
間が長びくおそれがある。熱可塑性樹脂粉末の架橋度と
しては、熱可塑性樹脂粉末を溶剤に溶解した際の不溶解
のゲル成分が50重量%以下となる程度であることが好
ましい。
【0013】このような熱可塑性樹脂粉末の製造方法に
ついては特に制限はなく、従来ポリ塩化ビニルやポリメ
チルメタクリレートなどの微細樹脂粉末の製造に用いら
れている方法、例えば、微細懸濁重合法、乳化重合法、
播種乳化重合法、懸濁重合法などを採用することができ
るが、これらの方法の中で、特に粒子径が極微細となら
ずにかつ平均単一粒子径(重量基準)が0.1〜5μm
の球形のものが得られる重合法が好適である。例えば、
微細懸濁重合法として、ラジカル重合開始剤として油溶
性開始剤を用い、重合開始前に単量体油滴の粒径を均質
化処理によって予め液滴径を調節し、均質分散重合させ
る方法などが好適である。(D)成分である熱可塑性樹脂
粉末は、前記の組成の重合体をシェル層に有するコア/
シェル型の構造とすることができる。コア成分が、ガラ
ス転移点が−30℃以下、好ましくは−40℃以下の
(メタ)アクリル酸エステル系重合体及び/又はジエン系
重合体であると、成形品の機械的強度及び弾性率が大き
く向上するので好ましい。このようなコア/シェル型共
重合体の熱可塑性樹脂粉末粒子を製造するには、まず乳
化重合又は微細懸濁重合によりコア部であるガラス転移
点が−30℃以下の重合体からなるゴム状のシードポリ
マー(a)を調製する。ガラス転移点が−30℃以下の重
合体の例としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体
又はジエン系重合体を挙げることができる。本発明にお
いて、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エス
テル又はメタクリル酸エステルを意味するものである。
ガラス転移点が−30℃以下のホモ重合体を与える(メ
タ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、n
−プロピルアクリレート(ホモ重合体のガラス転移点−
52℃)、n−ブチルアクリレート(同−54℃)、n
−オクチルアクリレート(同−65℃)、2−エチルヘ
キシルアクリレート(同−85℃)、n−デシルメタク
リレート(同−65℃)などが挙げられ、これらは1種
を用いることができ、2種以上を組み合わせて用いるこ
とができる。特に、n−ブチルアクリレートと2−エチ
ルヘキシルアクリレートが好ましい。また、ガラス転移
点が−30℃以下のホモ重合体を与えるジエン系単量体
としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−
ペンタジエン、シクロペンタジエンなどの共役ジエン系
化合物;1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン系化
合物などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み
合わせて使用することができるが、これらの中で、特に
ブタジエン及びイソプレンが好適である。本発明におい
ては、前記の(メタ)アクリル酸エステル系又はジエン系
単量体に、所望によりエチレングリコールジ(メタ)アク
リレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレートな
どの架橋性単量体を添加して、一層ゴム弾性を有するコ
ア部を調製することも有効である。
【0014】次に、このようにして得られたガラス転移
点が−30℃以下の重合体をコア部(a)とし、ガラス転
移点が70℃以上の共重合体からなるシェル層(b)を形
成させる。この際用いられるシェル層の原料成分として
は、ホモ重合体がガラス転移点70℃以上を与える単量
体を主に用いることが望ましい。具体的には、例えば、
イソプロピルメタクリレート(ホモ重合体のガラス転移
点81℃)、t−ブチルメタクリレート(同107
℃)、シクロヘキシルメタクリレート(同76℃)、フ
ェニルメタクリレート(同110℃)、メチルメタクリ
レート(同105℃)などの(メタ)アクリル酸エステル
系単量体;スチレン(同100℃)、4−クロロスチレ
ン(同110℃)、2−エチルスチレン(同103℃)
などの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル(同12
5℃)、塩化ビニル(同80℃)などを挙げることがで
きる。これらの単量体は、1種を用いることができ、2
種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中
で、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、特にメチルメ
タクリレートが好適である。シェル層(b)のガラス転移
点は70℃以上であることが好ましく、90℃以上であ
ることがより好ましい。シェル層のガラス転移点が70
℃未満であると、コア/シェル型共重合体からなる熱可
塑性樹脂粉末粒子を重合反応後に乾燥する際、凝集して
塊になりやすい。また、コア部/シェル層の重量比は1
/4〜3/1、好ましくは1/3〜2/1の範囲にある
ことが好ましい。コア部/シェル層の重量比が1/4未
満であると、熱可塑性樹脂粉末のシートモールディング
コンパウンドにおける、増粘剤、低温・低圧成形におけ
る成形性向上剤、補強材などとしての機能が低下するお
それがある。コア部/シェル層の重量比が3/1を超え
ると、シートモールディングコンパウンドの粘度安定性
が低下するおそれがある。本発明においては、架橋剤と
しての金属カチオンが、コア/シェル型共重合体のシェ
ル層に側鎖として導入されたカルボキシル基とカルボキ
シル基との間にイオン架橋を形成させ、これによる三次
元ポリマー構造によって、分散媒である不飽和ポリエス
テル樹脂及び液状重合性単量体による室温での膨潤性を
低下させ、それでいて加熱により不飽和ポリエステル樹
脂及び液状重合性単量体が、コア/シェル型共重合体に
浸透しつつ硬化するので、本来の性能を発揮することが
できる。本発明においては、(D)成分の熱可塑性樹脂粉
末は、(A)成分の不飽和ポリエステル樹脂100重量部
に対し、20〜120重量部、好ましくは25〜100
重量部、さらに好ましくは30〜90重量部の割合で配
合する。熱可塑性樹脂粉末の配合量が、不飽和ポリエス
テル樹脂100重量部当たり20重量部未満であると、
粘度が低く、シートモールディングコンパウンドの作製
が困難となるおそれがある。熱可塑性樹脂粉末の配合量
が、不飽和ポリエステル樹脂100重量部当たり120
重量部を超えると、粘度が高くなりすぎて繊維強化材の
含浸が困難となるおそれがある。
【0015】本発明に用いるシートモールディングコン
パウンドにおいては、(E)成分として中空軽量化材を配
合する。使用する中空軽量化材は、(B)成分の液状重合
性単量体に侵されないものであれば特に制限はなく、例
えば、ガラス、シリカ−アルミナ、アルミナなどの無機
系の中空軽量化材や、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニリ
デン、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂焼成
品、ピッチ、ポリアクリロニトリルなどの有機系の中空
軽量化材などを挙げることができる。中空軽量化材は、
通常直径数μm〜数百μmの中空球状体であり、種々の
市販品の入手が可能である。例えば、無機系中空軽量化
材としては、エコスフェア[Emerson & Cum
ing社]、シラスバルーン[九州工業試験所]、シル
セル[昭和化学工業(株)]、アルミナバブル[昭和電工
(株)]などが、また有機系中空軽量化材としては、フェ
ノールマイクロバルーン[UCC社]、サランマイクロ
スフェア[Dow社]、エコスフェアEP[Emers
on & Cuming社]、エコスフェアVF−0[E
merson & Cuming社]、カーボスフェア
[ゼネラルテクノロジー社]、クレカスフェア[呉羽化
学(株)]、マイクロスフェアーMFL[松本油脂製薬
(株)]などが市販されている。これらの中で、ポリアク
リロニトリルを主成分とし、表面を炭酸カルシウム、タ
ルク、酸化チタンなどの粉体でコーティングしたマイク
ロスフェアーMFLは、粒径が小さく、真比重が小さ
く、液状重合性単量体性に対する耐性に優れているの
で、特に好適に使用することができる。本発明に使用す
るシートモールディングコンパウンドは、成形時の流動
性が特に優れているため、中空軽量化材を多量に配合し
ても平滑な表面を有する硬化成形品を得ることができ、
中空軽量化材の配合により比重が1未満の超軽量化成形
品を得ることができる。(E)成分の中空軽量化材は、
(A)成分の不飽和ポリエステル樹脂100重量部当たり
1〜40重量部を配合し、より好ましくは3〜20重量
部を配合する。中空軽量化材の配合量が、不飽和ポリエ
ステル樹脂100重量部当たり1重量部未満であると、
シートモールディングコンパウンドの軽量化効果が顕著
に現れないおそれがある。中空軽量化材の配合量が、不
飽和ポリエステル樹脂100重量部当たり40重量部を
超えると、粘度が高くなってシートモールディングコン
パウンドの作製が困難となるおそれがある。
【0016】本発明に使用するシートモールディングコ
ンパウンドには、(F)成分として硬化用触媒を配合す
る。硬化用触媒は、加熱により分解してラジカルを発生
し、(A)成分の不飽和ポリエステル樹脂と(B)成分の液
状重合性単量体を架橋、重合して、組成物全体を硬化さ
せる作用を有するものである。硬化用触媒は、シートモ
ールディングコンパウンドの成形に使用する温度に応じ
て適宜選択することができる。成形のための加熱温度が
40〜100℃である場合は、60〜80℃における半
減期が2時間以下である触媒、例えば、ビス(4−t−
ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを使
用し、あるいは、触媒と促進剤を併用して触媒の分解温
度を下げて使用することが好ましい。このような、触媒
と促進剤の組合せとしては、例えば、ケトンパーオキシ
ドとコバルトの有機酸塩、アシルパーオキシドと芳香族
3級アミン、ハイドロパーオキシドとバナジウム塩の組
合せなどを挙げることができる。成形のための加熱温度
が100〜160℃である場合には、通常の高温硬化型
の触媒を使用することが好ましい。このような高温硬化
型触媒としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキ
シド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエー
ト、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキ
シ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチル
パーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、t−
ブチルハイドロパーオキシドなどを挙げることができ
る。硬化用触媒は1種のみで用いることができ、2種以
上を組み合わせて用いることもできる。硬化用触媒の配
合量は、(A)成分の不飽和ポリエステル樹脂100重量
部当たり0.5〜7重量部であり、より好ましくは1〜
5重量部である。硬化用触媒の配合量が、不飽和ポリエ
ステル樹脂100重量部当たり0.5重量部未満である
と、成形時の硬化が不十分になるおそれがある。硬化用
触媒の配合量が、不飽和ポリエステル樹脂100重量部
当たり7重量部を超えると、シートモールディングコン
パウンドの保存安定性が低下するおそれがある。
【0017】本発明に使用するシートモールディングコ
ンパウンドにおいては、本発明の目的が損なわれない範
囲で、従来シートモールディングコンパウンドに慣用さ
れている各種添加剤、例えば、内部離型剤、低収縮化
剤、着色剤、消泡剤、減粘剤などを、必要に応じ配合す
ることができる。その他、本発明に使用するシートモー
ルディングコンパウンドには、通常内部離型剤を配合す
る。使用する内部離型剤には特に制限はなく、不飽和ポ
リエステル樹脂用として公知の内部離型剤、例えば、ス
テアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸亜鉛、ステ
アリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸塩、アルキルリン
酸エステル、ワックスなどを挙げることができる。これ
らの中で、ステアリン酸亜鉛は離型性が良好で、成形品
の表面光沢に優れるので、特に好適に使用することがで
きる。内部離型剤は、(A)成分の不飽和ポリエステル樹
脂100重量部に対し、0.5〜5重量部、好ましくは
1〜3重量部を配合する。低収縮化剤としては、例え
ば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メ
チル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラ
クタム、飽和ポリエステル、スチレン−アクリロニトリ
ル共重合体などの熱可塑性樹脂、ポリブタジエン、ポリ
イソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロ
ニトリル−ブタジエン共重合体などのゴム状重合体など
を挙げることができる。これらの低収縮化剤の添加量
は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対し、通常
4〜10重量部でその目的が達せられる。その点本発明
における増粘剤としての熱可塑性樹脂粉末の使用では、
20〜120重量部用いないと効果が現れないので、著
しく量が相違する。また、前記の熱可塑性樹脂やゴム状
重合体をスチレン、メチルメタクリレート、エチルアク
リレートなどに溶解して液状のものとして用いてもよ
い。本発明に使用するシートモールディングコンパウン
ドにおいては、熱可塑性樹脂粉末を増粘剤として用いる
ので、無機充填剤を必ずしも配合しなくてもシートモー
ルディングコンパウンドを形成することが可能であり、
この結果、シートモールディングコンパウンドの成形時
の流動性がよくなり、さらに成形品の透明性や着色性も
優れたものとなる。しかし、粘度の微調整のためや、コ
スト低減用増量剤として、本発明の効果を損なわない範
囲で充填剤を添加してもよい。そのような場合に添加さ
れる無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭
酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオ
リン、クレー、セライト、アスベスト、バーライト、バ
ライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト石灰石、セッコ
ウ、アルミニウム微粉、アルミナ、ガラス粉、水酸化ア
ルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチ
モン、酸化チタン、二酸化モリブデンなどを挙げること
ができる。これらの無機充填剤は、作業性や得られる成
形品の強度、外観、経済性などを考慮して適宜選ばれる
が、通常炭酸カルシウムや水酸化アルミニウムが用いら
れる。
【0018】本発明に使用するシートモールディングコ
ンパウンドは、従来のシートモールディングコンパウン
ドと同様な方法で調製することができる。すなわち、増
粘剤としてアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物の代
わりに、熱可塑性樹脂粉末を用いる点が異なるのみで、
従来と同様な設備を用い、同様な方法により調製するこ
とができる。本発明に使用するシートモールディングコ
ンパウンドを従来法により調製するには、あらかじめ
(A)成分の不飽和ポリエステル樹脂を(B)成分の液状重
合性単量体に溶解し、これに、例えば、プラネタリーミ
キサー、ニーダー、ディスパーなどの公知の混合機を用
いて、(D)成分の熱可塑性樹脂粉末、(E)成分の中空軽
量化材、(F)成分の硬化用触媒を添加し、十分に撹拌混
合して均一な不飽和ポリエステル樹脂組成物とする。こ
の不飽和ポリエステル樹脂組成物を、2枚の離型フィル
ムの一方又は双方にコーターにより0.3〜3mmの一定
の厚さに塗布し、その上に切断した(C)成分の繊維強化
材を散布してから塗布面を内にして貼合わせ、圧延機に
より圧延し、繊維強化材に不飽和ポリエステル樹脂組成
物を含浸して厚さ0.5〜5mmのシートを得、両面を離
型フィルムで被覆した状態で巻取りローラーにより巻き
取って、シートモールディングコンパウンドを得る。本
発明のシートモールディングコンパウンドの成形方法に
おいては、上述したシートモールディングコンパウンド
を、成形温度40〜160℃で、圧縮成形では成形圧力
0.1〜10kg/cm2(ゲージ圧)で成形することができ
る。成形時間は、通常1〜20分間で成形が可能であ
る。型面にシートモールディングコンパウンドを設置
し、その上を例えばポリプロピレン製のシート又は上型
で閉鎖し、次いで系内を脱気してシートモールディング
コンパウンドを(下)型に密着させ、大気圧と型内の差圧
の力で型にシートモールディングコンパウンドを密着さ
せて形をつくる成形方法(以下、真空成形という。)
は、成形温度40〜160℃、−760〜−50mmHg
(0〜710Torr)の圧力で行うことができる。また、
型面にシートモールディングコンパウンドを設置し、シ
ートモールディングコンパウンドを加圧空気で型面に押
しつけて密着させる圧空成形を、成形温度40〜160
℃、圧力1〜5kg/cm2(ゲージ圧)で行うことができ
る。本発明のシートモールディングコンパウンドの成形
方法によれば、従来の高圧下での大がかりな設備と高価
な金型の制約を解消することができる。本発明のシート
モールディングコンパウンドを用いる上記の各成形方法
での温度は、40〜160℃の範囲から適宜選択される
が、40〜100℃の低温域での成形が、本発明の低温
でも使用できる特徴が活かせるので経済的に有効であ
る。
【0019】シートモールディングコンパウンドを用い
て、上記のような低温・低圧で成形することは、従来は
極めて困難であった。しかし、本発明に用いるシートモ
ールディングコンパウンドは、低温・低圧で軟化して賦
形されるので、従来は可能であったとしてもシートモー
ルディングコンパウンド1枚であったところを、本発明
によれば、シートモールディングコンパウンドを、例え
ば、2〜10枚程度積層することも可能で、厚物の成形
品を得ることができる。本発明に用いるシートモールデ
ィングコンパウンドは、従来のシートモールディングコ
ンパウンド用の増粘剤として慣用されてきたアルカリ土
類金属の酸化物などの代わりに、良好な加工粘度を形成
しうる粒子径と表面状態を有する熱可塑性樹脂粉末を、
中空軽量化材とともに、不飽和ポリエステル樹脂に配合
することにより、樹脂粉末が液状重合性単量体を吸収膨
潤して増粘し、中空軽量化材がシートモールディングコ
ンパウンドの比重低減に寄与するので、比重の大きい無
機充填剤を配合することなく良好な加工粘度が得られ、
数時間の養生で増粘し、疑似硬化することから、シート
モールディングコンパウンドの作製作業が容易であり、
しかも短時間の養生時間で必要なシートモールディング
コンパウンドとしての硬度を有し、かつ離型フィルムの
剥離性の良好なものとなる。本発明に用いるシートモー
ルディングコンパウンドは、低温・低圧成形が可能であ
り、高価な設備や金型を使用することなく、美麗な外観
を有する成形品を得ることが可能である。これにより、
比重が0.80〜1.10、好ましくは0.90〜1.00
の軽量化された不飽和ポリエステル樹脂成形品を得るこ
とができる。従来の不飽和ポリエステル樹脂成形品の比
重は通常1.60〜1.80、軽量化材を配合したもので
も1.10を超えるものであるので、この軽量化の恩恵
は特に大型成形品の重量に大きく反映されると思われ
る。本発明に用いるシートモールディングコンパウンド
の硬度は、長時間保存してもあまり変わらず、低圧成形
でも真空又は圧空成形でも、十分に型形状の再現が可能
であり、また、低温分解型の硬化用触媒を使用した場合
にも、室温でのシートモールディングコンパウンドの長
期保存性が十分なものとなる。なお、低圧成形において
も、ガラス繊維の混入量を減少させるなどの粘度調整を
必要としない。
【0020】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限
定されるものではない。 実施例1 プロピレングリコール/ネオペンチルグリコール/イソ
フタル酸/フマル酸のモル比が15/35/20/30
である数平均分子量3,300のランダム共重合体から
なる不飽和ポリエステル樹脂100重量部を、スチレン
43重量部に加えて均一に溶解し、平均単一粒径(重量
基準)1.9μm、重量平均重合度30,000のポリメ
チルメタクリレート樹脂粉末[日本ゼオン(株)、ゼオン
F−320]29重量部、粒径100μm、真比重0.
13のポリアクリロニトリル系中空微粒子[松本油脂製
薬(株)、マイクロスフェアーMFL]10重量部、ステ
アリン酸亜鉛[堺化学工業(株)、SZ−2000]4重
量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエー
ト[日本油脂(株)、パーキュアO]3重量部及びビス−
4−t−ブチルシクロヘキシルパーオキシジカーボネー
ト[化薬アクゾ(株)、パーカドックス16]1.5重量
部を、室温で混合して不飽和ポリエステル樹脂組成物を
得た。なお、この不飽和ポリエステル樹脂組成物を40
℃で24時間保存した後の粘度を、回転粘度計(HAA
KE社、Rheo Stress RS−100型)を用
いて25℃で測定したところ4,900Pa・sであっ
た。SMCマシーンを用い、離型フィルムとしてのポリ
プロピレンフィルムに上記の不飽和ポリエステル樹脂組
成物を厚さ2mmに塗付し、直径13μmのガラス繊維ロ
ービング[日東紡績(株)]をカット長1インチに切断し
て散布し、さらに不飽和ポリエステル樹脂組成物を厚さ
2mmに塗付したポリプロピレンフィルムで挟んだ。ガラ
ス繊維の散布量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物中の
不飽和ポリエステル樹脂100重量部当たり、43重量
部である。2枚のポリプロピレンフィルムの間のガラス
繊維に不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸し、巻き取
ってシートモールディングコンパウンドを得た。このシ
ートモールディングコンパウンドを40℃で24時間養
生したのち、ポリプロピレンフィルムを剥離したとこ
ろ、シートモールディングコンパウンドは全くべとつか
ず、容易に剥離してフィルムへのシートモールディング
コンパウンド成分の付着は認められなかった。300mm
×300mmの圧縮成形金型を90℃に保ち、300mm×
33mmに切断したシートモールディングコンパウンドを
5枚積層して金型の中央に置き、金型に2kg/cm2の圧
力をかけて10分間圧縮成形を行った。型内にシートモ
ールディングコンパウンドがゆきわたり、良好な形状の
成形品が得られた。この成形品の比重は、0.95であ
った。シートモールディングコンパウンドを25℃で7
日間保存して保存安定性をチェックしたのち、同様に圧
縮成形を行ったが、ポリプロピレンフィルムの剥離性、
圧縮成形性ともに変化なく良好であった。 比較例1 プロピレングリコール/ネオペンチルグリコール/イソ
フタル酸/フマル酸のモル比が15/35/20/30
である数平均分子量3,300のランダム共重合体から
なる不飽和ポリエステル樹脂100重量部を、スチレン
43重量部に加えて均一に溶解し、粒径20μm、真比
重0.13のポリアクリロニトリル系中空微粒子[松本
油脂製薬(株)、マイクロスフェアーMFL]5重量部、
酸化マグネシウム[協和化学(株)、MgO#40]4重
量部、炭酸カルシウム[日東粉化工業(株)、NS−10
0]100重量部、ステアリン酸亜鉛[堺化学工業
(株)、SZ−2000]4重量部、t−ブチルパーオキ
シ−2−エチルヘキサノエート[日本油脂(株)、パーキ
ュアO]3重量部及びビス−4−t−ブチルシクロヘキ
シルパーオキシジカーボネート[化薬アクゾ(株)、パー
カドックス16]1.5重量部を、室温で混合して不飽
和ポリエステル樹脂組成物を得た。なお、この不飽和ポ
リエステル樹脂組成物を40℃で24時間保存した後の
粘度を、実施例1と同様にして測定したところ、6,1
00Pa・sであった。SMCマシーンを用い、離型フ
ィルムとしてのポリプロピレンフィルムに上記の不飽和
ポリエステル樹脂組成物を厚さ2mmに塗付し、直径13
μmのガラス繊維ロービング[日東紡績(株)]をカット
長1インチに切断して散布し、さらに不飽和ポリエステ
ル樹脂組成物を厚さ2mmに塗付したポリプロピレンフィ
ルムで挟んだ。ガラス繊維の散布量は、不飽和ポリエス
テル樹脂組成物中の不飽和ポリエステル樹脂100重量
部当たり、43重量部である。2枚のポリプロピレンフ
ィルムの間のガラス繊維に不飽和ポリエステル樹脂組成
物を含浸し、巻き取ってシートモールディングコンパウ
ンドを得た。このシートモールディングコンパウンドを
40℃で24時間養生したのち、ポリプロピレンフィル
ムを剥離したところ、シートモールディングコンパウン
ドは全くべとつかず、容易に剥離してフィルムへのシー
トモールディングコンパウンド成分の付着は認められな
かった。300mm×300mmの圧縮成形金型を120℃
に保ち、300mm×33mmに切断したシートモールディ
ングコンパウンドを5枚積層して金型の中央に置き、金
型に2kg/cm2の圧力をかけて10分間圧縮成形を試み
た。シートモールディングコンパウンドは型内にゆきわ
たらず、硬化も不十分で成形品は得られなかった。さら
に、金型温度を120℃、金型圧力を30kg/cm2とし
て圧縮成形し、成形品を得た。この成形品の比重は、
1.37であった。シートモールディングコンパウンド
を25℃で7日間保存したところ、全体に硬化し、圧縮
成形に供することはできなかった。 比較例2 比較例1のポリアクリロニトリル系中空微粒子の配合量
を5重量部から15重量部に増加し、炭酸カルシウムを
配合しないこと以外は、比較例1と同じ操作を繰り返し
た。不飽和ポリエステル樹脂組成物を40℃で24時間
保存した後の粘度は、1,900Pa・sであった。シー
トモールディングコンパウンドを40℃で24時間養生
しちのち、ポリプロピレンフィルムを剥離したところ、
剥離しにく、フィルムへシートモールディングコンパウ
ンド成分が付着していた。300mm×300mmの圧縮成
形金型を150℃に保ち、離型フィルムへの付着のため
厚みの不ぞろいのシートモールディングコンパウンドを
300mm×33mmに切断して5枚積層して金型の中央に
置き、金型に2kg/cm2の圧力をかけて10分間圧縮成
形を試みた。シートモールディングコンパウンドは型内
にゆきわたらず、硬化も不十分で成形品は得られなかっ
た。シートモールディングコンパウンドを25℃で7日
間保存したところ、全体に硬化し、圧縮成形に供するこ
とはできなかった。実施例1及び比較例1〜2の結果
を、まとめて第1表に示す。
【0021】
【表1】
【0022】[注] 1)不飽和ポリエステル樹脂:プロピレングリコール/
ネオペンチルグリコール/イソフタル酸/フマル酸=1
5/35/20/30モル%のランダム共重合体、数平
均分子量3,300。 2)ガラス繊維:直径13μm、日東紡績(株)製。 3)熱可塑性樹脂粉末:ゼオンF−320、ポリメチル
メタクリレート樹脂粉末、平均単一粒径1.9μm、重
量平均重合度30,000、日本ゼオン(株)製。 4)中空軽量化材:マイクロスフェアーMFL、主成分
ポリアクリロニトリル、粒径100μm、真比重0.1
3、松本油脂製薬(株)製。 5)酸化マグネシウム:MgO#40、協和化学(株)
製。 6)炭酸カルシウム:NS−100、日東粉化工業(株)
製。 7)ステアリン酸亜鉛:SZ−2000、堺化学工業
(株)製。 8)硬化用触媒1:パーキュアO、t−ブチルパーオキ
シ−2−エチルヘキサノエート、半減期65℃×24時
間、日本油脂(株)製。 9)硬化用触媒2:パーカドックス16、ビス−4−t
−ブチルシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、半
減期40℃×10時間、化薬アクゾ(株)製。 実施例1の本発明のシートモールディングコンパウンド
の成形方法によれば、成形温度90℃、成形圧力2kg/
cm2という低温・低圧の条件で、比重0.98の軽量化シ
ートモールディングコンパウンド成形品が得られる。こ
れに対して、比較例1の充填剤として炭酸カルシウム、
増粘剤として酸化マグネシウムを用いたシートモールデ
ィングコンパウンドは、低温・低圧成形が不可能であ
る。また、比較例1のシートモールディングコンパウン
ド成形品は、高温・高圧にして成形できるものの、比重
が大きく、軽量化されていない。炭酸カルシウムを配合
せず、ポリアクリロニトリル系中空微粒子を多量に配合
し、増粘剤として酸化マグネシウムを用いた比較例2の
シートモールディングコンパウンドは、粘度が低くて離
型フィルムを剥す際に多量に付着するので、成形のため
の取扱いができなかった。 実施例2 実施例1において作製したシートモールディングコンパ
ウンドを用いて、大気圧との差圧を利用して加圧する低
温・低圧成形を行った。図1は、エポキシ樹脂製のバス
タブ様の容器の樹脂型の斜視図であり、図2は、図1の
樹脂型にシートモールディングコンパウンドを充填した
状態を示す断面図である。図1に示すエポキシ樹脂製の
バスタブ様の容器の樹脂型1(内のり、縦200mm、横
300mm、深さ150mmで底部に曲面あり)の内面にシ
リコンワックスを塗付し、その上にシートモールディン
グコンパウンド2を、必要に応じてはさみで切断した断
片も用いて両面の離型フィルムを取り除き、3重に貼り
つけた。その上をポリプロピレンフィルム3で覆い、端
部を図2に示すようにゲル状のゴム系粘着剤4で固定し
た。次いで、ゴム系粘着剤の1箇所に穴をあけ、真空ポ
ンプにつながったシリコーンゴムチューブをさし入れ、
樹脂型内面とポリプロピレンフィルムの間を10Torrの
減圧としてシートモールディングコンパウンドを大気圧
との差圧により加圧し、樹脂型全体を80℃に保った電
気オーブンに入れて30分間加熱した。その後、オーブ
ンから樹脂型を出し、成形品を取り出した。成形品は、
樹脂型内面に忠実に密着した形を再現していた。成形品
の比重は、0.94であった。 実施例3 実施例1において作製したシートモールディングコンパ
ウンドを用いて、空気圧により加圧する低温・低圧成形
を行った。使用した型は、実施例2の場合と同じ図1に
示すエポキシ樹脂製のバスタブ様の容器の樹脂型であ
る。図3は、図1の樹脂型にシートモールディングコン
パウンドを充填した状態を示す断面図である。実施例2
と同様にして、樹脂型1の内面にシリコーンワックスを
塗付したのち、シートモールディングコンパウンド2を
3重に貼りつけ、その上をポリプロピレンフィルム3で
覆った。樹脂型に、バルブ5のついた送気口6を有する
蓋7を固定し、樹脂型を密閉した。次いで、樹脂型全体
を80℃に保った電気オーブンに入れ、送気口より圧縮
空気を送って樹脂型内を3kg/cm2(ゲージ圧)に加圧
し、そのまま30分間加熱を続けた。その後、オーブン
から樹脂型を出し、成形品を取り出した。成形品は、樹
脂型内面に忠実に密着した形を再現していた。成形品の
比重は、0.95であった。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、シートモールディング
コンパウンドを成形温度40〜100℃、成形圧力0.
1〜10kg/cm2(ゲージ圧)のような低温・低圧で成
形することができるので、高価な金型や大がかりな設備
を必要とすることなく、比重の小さい軽量化シートモー
ルディングコンパウンド成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、エポキシ樹脂製のバスタブ様の容器の
樹脂型の斜視図である。
【図2】図2は、図1の樹脂型にシートモールディング
コンパウンドを充填した状態を示す断面図である。
【図3】図3は、図1の樹脂型にシートモールディング
コンパウンドを充填した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 バスタブ様の容器の樹脂型 2 シートモールディングコンパウンド 3 ポリプロピレンフィルム 4 ゴム系粘着剤 5 バルブ 6 送気口 7 蓋

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)不飽和ポリエステル樹脂、(B)液
    状重合性単量体、(C)繊維強化材、(D)熱可塑性樹
    脂粉末からなる増粘剤、(E)中空軽量化材及び(F)
    硬化用触媒を含有してなるシートモールディングコンパ
    ウンドを型に入れ、40〜160℃に加熱し、低圧で加
    圧して成形するシートモールディングコンパウンドの成
    形方法。
  2. 【請求項2】シートモールディングコンパウンドを下型
    面に設置し、上型によりシートモールディングコンパウ
    ンドを0.1〜10kg/cm2(ゲージ圧)の低圧で加圧す
    る請求項1記載のシートモールディングコンパウンドの
    成形方法。
  3. 【請求項3】シートモールディングコンパウンドを型面
    に設置してフィルムで覆い、型面とフィルムの間を−7
    60〜−50mmHgの減圧とし、大気圧との差圧によりシ
    ートモールディングコンパウンドを低圧で加圧する請求
    項1記載のシートモールディングコンパウンドの成形方
    法。
  4. 【請求項4】シートモールディングコンパウンドを型面
    に設置してフィルムで覆い、フィルムに1〜5kg/cm2
    (ゲージ圧)の空気圧をかけてシートモールディングコ
    ンパウンドを低圧で加圧する請求項1記載のシートモー
    ルディングコンパウンドの成形方法。
  5. 【請求項5】不飽和ポリエステル樹脂シートモールディ
    ングコンパウンドを成形して得られる比重0.80〜1.
    10の不飽和ポリエステル樹脂成形品。
JP7351353A 1995-12-26 1995-12-26 不飽和ポリエステル樹脂シートモールディングコンパウンドの成形方法及び成形品 Pending JPH09174698A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6974784B1 (en) 1999-03-16 2005-12-13 Dainippon Ink And Chemicals, Inc. Sheet-form photocurable material
EP2858133A1 (en) 2012-06-04 2015-04-08 Japan U-PICA Company, Ltd Crystalline unsaturated polyester resin composition for led reflector, granular material comprising said composition, led reflector produced by molding said granular material, surface-mount-type light-emitting device, and lighting device and image display device each equipped with said light-emitting device

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6974784B1 (en) 1999-03-16 2005-12-13 Dainippon Ink And Chemicals, Inc. Sheet-form photocurable material
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