JPH1140352A - 有機el素子およびその製造方法 - Google Patents

有機el素子およびその製造方法

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JPH1140352A
JPH1140352A JP9202412A JP20241297A JPH1140352A JP H1140352 A JPH1140352 A JP H1140352A JP 9202412 A JP9202412 A JP 9202412A JP 20241297 A JP20241297 A JP 20241297A JP H1140352 A JPH1140352 A JP H1140352A
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organic
layer
glass transition
electrode
aluminum
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JP9202412A
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English (en)
Inventor
Hiroyuki Endo
広行 遠藤
Osamu Onizuka
理 鬼塚
Koji Yasukawa
浩司 安川
Akira Ebisawa
晃 海老沢
Hiroshi Someya
拓 染谷
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TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長寿命、高輝度、高効率、高表示品質の有機
EL素子を実現する。 【解決手段】 ホール注入電極と、電子注入電極と、こ
れらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、
前記有機層成膜後に、この有機層の構成材料中最も低い
ガラス転移温度±20℃の温度範囲で加熱処理された有
機EL素子とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機化合物を用い
た有機EL素子に関し、さらに詳細には、発光層等を有
する有機層の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、有機EL素子が盛んに研究されて
いる。これは、ホール注入電極上にトリフェニルジアミ
ン(TPD)などのホール輸送材料を蒸着により薄膜と
し、さらにアルミキノリノール錯体(Alq3)などの
蛍光物質を発光層として積層し、さらにMgなどの仕事
関数の小さな金属電極(電子注入電極)を形成した基本
構成を有する素子で、10V前後の電圧で数100から
数10,000cd/m2ときわめて高い輝度が得られるこ
とで注目されている。
【0003】ところで、有機EL素子は初期特性として
優れた発光特性を発揮しても、時間の経過と共に素子が
劣化し、優れた発光特性を長期間に渡り維持することが
困難であった。このため、素子の劣化をいかに防止する
かが重要な課題であり、従来より種々の方向からの検討
がなされている。
【0004】素子を劣化させる要因としては、反応性の
高い電子注入電極と大気や水分との反応による劣化や、
この電子注入電極と有機層との膜界面での劣化、あるい
はホール注入電極と有機層界面での劣化や有機層自体の
劣化等種々の原因が挙げられ、これらの総合的な物性の
改善が素子寿命や発光特性を改善する上で重要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、長寿
命、高輝度、高効率、高表示品質の有機EL素子を実現
することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、有機EL
素子の物性の改善について研究を重ねた結果、有機層を
成膜した後に、有機層構成材料のガラス転移温度に近い
温度で加熱処理を行うことが、有機EL素子の長寿命化
を図る上で極めて有効であることを見出し本発明に至っ
た。
【0007】なお、特開平5−182764号公報に
は、真空蒸着により有機化合物層を形成し、これを50
℃以上、その有機化合物の融点以下の温度で加熱処理し
て発光層を形成し、この発光層が加熱処理により生じた
微結晶凝集構造を有している旨記載されている。しかし
ながら、同公報の実施例で検討されている加熱処理温度
は、180〜200℃および120℃のみであり、これ
らの温度以外での加熱処理に対する検討はなされていな
い。また、50℃以上で有機化合物の融点以下の温度で
加熱処理した場合の作用効果が不明瞭であり、この温度
帯域の全域で目的とする効果を奏するかは疑問である。
さらに、微結晶凝集構造に関する記述が曖昧であるた
め、いかなる条件で生じ、いかなるものか特定すること
は困難であるが、本発明者等の検討では有機物層が結晶
化しないアモルファス状態の方が良好な結果が得られて
いる。特に、融点近くまで加熱した場合、有機層のアモ
ルファス状態が崩れ、結晶化してしまうため必要な機能
を発揮することができなくなってしまう。
【0008】すなわち、上記目的は、以下の(1)〜
(4)の構成により達成される。 (1) ホール注入電極と、電子注入電極と、これらの
電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、前記有
機層成膜後に、この有機層の構成材料中最も低いガラス
転移温度Tgに対し±20℃の温度範囲で加熱処理され
た有機EL素子。 (2) 前記有機層構成材料の中で最も低いガラス転移
温度Tgからこれより20℃高い温度までの範囲で加熱
処理された上記(1)の有機EL素子。 (3) 少なくとも基板上にホール注入電極と有機層を
成膜した後、この有機層の構成材料中最も低いガラス転
移温度Tgに対し±20℃の温度範囲で、10分〜5時
間加熱処理を行う有機EL素子の製造方法。 (4) 少なくとも基板上にホール注入電極と有機層を
成膜した後、この有機層の構成材料の中で最も低いガラ
ス転移温度Tgからこれより20℃高い温度までの範囲
で、10分〜5時間加熱処理を行う上記(3)の有機E
L素子の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的構成につい
て詳細に説明する。本発明の有機EL素子は、ホール注
入電極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けられ
た1種以上の有機層とを有し、前記有機層成膜後に、こ
の有機層の構成材料のガラス転移温度±20℃の温度範
囲で加熱処理されたものである。
【0010】ガラス転移点Tgに近い温度で処理するこ
とにより、有機層界面の物性が改善され、素子寿命が飛
躍的に延び、発光特性も改善される。ガラス転移点−2
0℃未満の温度であると加熱処理の効果が得られない。
また、ガラス転移点+20℃より高い温度で処理した場
合、有機層が軟化し、膜界面の物性が変質する。
【0011】有機層は、ホール注入層、ホール輸送層、
発光層、電子輸送層、電子注入層、あるいはこれらの混
合層等から構成され、これらは必要に応じて種々の態様
をとることができる。すなわち、電子輸送層を省略した
り、ホール注入層とホール輸送層を、ホール注入・輸送
層とする等してもよい。そして、これら有機層を構成す
る各有機材料のガラス転移温度Tgに対する加熱処理温
度は、各構成材料それぞれのガラス転移温度Tgの内最
も低いガラス転移温度Tgに、20℃を加えた温度を超
えない温度であって、かつこの最も低いガラス転移温度
Tgから、20℃を減じた温度より低くない温度であ
る。また、好ましくは前記最も低いガラス転移温度から
これより20℃高い温度までの範囲の温度である。
【0012】また、輝度の半減時間等、有機EL素子の
長寿命化を図る上で、ホール輸送性材料、ホール注入材
料、あるいはこれらの材料を用いた有機層間や有機層と
ホール注入電極間の界面等の影響が大きく、有機EL素
子の構成や使用する有機材料によってはこれらの材料の
ガラス転移温度を基準としてもよい。
【0013】加熱処理の時間としては、好ましくは10
分〜5時間、より好ましくは20分〜3時間、特に30
分〜2時間の範囲が好ましい。加熱処理時の雰囲気とし
ては大気中が好ましく、蒸着装置等で有機層等を成膜し
た際に加熱処理を行うような場合には、所定の真空度に
減圧した成膜室の雰囲気中であってもよい。
【0014】次に、前記有機層についてさらに詳細に説
明する。
【0015】発光層は、ホール(正孔)および電子の注
入機能、それらの輸送機能、ホールと電子の再結合によ
り励起子を生成させる機能を有する。発光層には比較的
電子的にニュートラルな化合物を用いることが好まし
い。
【0016】ホール注入輸送層は、陽電極からのホール
の注入を容易にする機能、ホールを安定に輸送する機能
および電子を妨げる機能を有し、電子注入輸送層は、陰
電極からの電子の注入を容易にする機能、電子を安定に
輸送する機能およびホールを妨げる機能を有するもので
あり、これらの層は、発光層に注入されるホールや電子
を増大・閉じこめさせ、再結合領域を最適化させ、発光
効率を改善する。
【0017】発光層の厚さ、ホール注入輸送層の厚さお
よび電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、形成方法
によっても異なるが、通常、5〜500nm程度、特に1
0〜300nmとすることが好ましい。
【0018】ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入輸
送層の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光
層の厚さと同程度もしくは1/10〜10倍程度とすれ
ばよい。ホールもしくは電子の、各々の注入層と輸送層
を分ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は1nm以上
とするのが好ましい。このときの注入層、輸送層の厚さ
の上限は、通常、注入層で500nm程度、輸送層で50
0nm程度である。このような膜厚については注入輸送層
を2層設けるときも同じである。
【0019】本発明の有機EL素子の発光層には発光機
能を有する化合物である蛍光性物質を含有させる。この
ような蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−26
4692号公報に開示されているような化合物、例えば
キナクリドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物か
ら選択される少なくとも1種が挙げられる。また、トリ
ス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノ
ールないしその誘導体を配位子とする金属錯体色素など
のキノリン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アント
ラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘
導体等が挙げられる。さらには、特願平6−11056
9号のフェニルアントラセン誘導体、特願平6−114
456号のテトラアリールエテン誘導体等を用いること
ができる。
【0020】また、それ自体で発光が可能なホスト物質
と組み合わせて使用することが好ましく、ドーパントと
しての使用が好ましい。このような場合の発光層におけ
る化合物の含有量は0.01〜10wt% 、さらには0.
1〜5wt% であることが好ましい。ホスト物質と組み合
わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長特
性を変化させることができ、長波長に移行した発光が可
能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上す
る。これらの蛍光性物質がドーパントとして使用され、
含有量が5wt%以下である場合には、熱処理の際におけ
るこの蛍光性物質に関するガラス転移温度Tgは考慮し
なくてもよい。
【0021】ホスト物質としては、キノリノラト錯体が
好ましく、さらには8−キノリノールないしその誘導体
を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このよう
なアルミニウム錯体としては、特開昭63−26469
2号、特開平3−255190号、特開平5−7073
3号、特開平5−258859号、特開平6−2158
74号等に開示されているものを挙げることができる。
【0022】具体的には、まず、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネ
シウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜
鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、
トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−
8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−
キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キ
ノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−
8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜
鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メ
タン]、等がある。
【0023】また、8−キノリノールないしその誘導体
のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であって
もよく、このようなものとしては、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III)
、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−
クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(メタークレゾラト)アルミニウム
(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ
−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル
−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノ
ラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノ
ラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キ
ノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメ
チルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラ
ト)(2,4,6−トリフェニルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,
3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナ
フトラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)
(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,
4−ジメチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8
−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−エチ
ル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キ
ノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウ
ム(III) 、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリ
ノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノ
リノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III) 等が
ある。
【0024】このほか、ビス(2−メチル−8−キノリ
ノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス
(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム
(III) −μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キ
ノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(4−エチル−
2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −
μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノ
リノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4
−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オ
キソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(5−シアノ−2−メチル−
8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−
ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−5−トリフルオ
ロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ
−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル
−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 等であっても
よい。これらの物質のガラス転移温度Tgは、具体的に
特定することが困難である場合が多いが、好ましくは9
0〜130℃程度のものが好ましい。
【0025】このほかのホスト物質としては、特願平6
−110569号に記載のフェニルアントラセン誘導体
や特願平6−114456号に記載のテトラアリールエ
テン誘導体なども好ましい。これらの物質のガラス転移
温度Tgは60〜150℃程度であり、好ましくは90
〜130℃程度のものが好ましい。
【0026】発光層は電子注入輸送層を兼ねたものであ
ってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム等を使用することが好ましい。これら
の蛍光性物質を蒸着すればよい。これらの物質のガラス
転移温度Tgは60〜150℃程度であり、好ましくは
90〜130℃程度のものが好ましい。但し、トリス
(8−キノリノラト)アルミニウムは、ガラス転移温度
Tgが不明であるが、100℃程度までは安定である
(以下、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムに関
しては同じである)。
【0027】また、必要に応じて発光層は、少なくとも
一種以上のホール注入輸送性化合物と少なくとも1種以
上の電子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ま
しく、この混合層中にドーパントを含有させることが好
ましい。このような混合層における化合物の含有量は、
0.01〜20wt% 、さらには0.1〜15wt% とする
ことが好ましい。
【0028】混合層では、キャリアのホッピング伝導パ
スができるため、各キャリアは極性的に優勢な物質中を
移動し、逆の極性のキャリア注入は起こり難くなり、有
機化合物がダメージを受け難くなり、素子寿命がのびる
という利点があるが、前述のドーパントをこのような混
合層に含有させることにより、混合層自体のもつ発光波
長特性を変化させることができ、発光波長を長波長に移
行させることができるとともに、発光強度を高め、かつ
素子の安定性を向上させることができる。
【0029】混合層に用いられるホール注入輸送性化合
物および電子注入輸送性化合物は、各々、後述のホール
注入輸送層用の化合物および電子注入輸送層用の化合物
の中から選択すればよい。なかでも、ホール注入輸送層
用の化合物としては、強い蛍光を持ったアミン誘導体、
例えばホール輸送材料であるトリフェニルジアミン誘導
体、さらにはスチリルアミン誘導体、芳香族縮合環を持
つアミン誘導体を用いるのが好ましい。これらの物質の
ガラス転移温度Tgは60〜150℃程度であり、好ま
しくは90〜130℃程度のものが好ましい。
【0030】電子注入輸送性の化合物としては、キノリ
ン誘導体、さらには8−キノリノールないしその誘導体
を配位子とする金属錯体、特にトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム(Alq3)を用いることが好まし
い。また、上記のフェニルアントラセン誘導体、テトラ
アリールエテン誘導体を用いるのも好ましい。これらの
物質のガラス転移温度Tgは60〜150℃程度であ
り、好ましくは90〜130℃程度のものが好ましい。
【0031】ホール注入輸送層用の化合物としては、強
い蛍光を持ったアミン誘導体、例えば上記のホール輸送
材料であるトリフェニルジアミン誘導体、さらにはスチ
リルアミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン誘導体を
用いるのが好ましい。これらの物質のガラス転移温度T
gは60〜150℃程度であり、好ましくは90〜13
0℃程度のものが好ましい。
【0032】この場合の混合比は、それぞれのキャリア
移動度とキャリア濃度を考慮する事で決定するが、一般
的には、ホール注入輸送性化合物の化合物/電子注入輸
送機能を有する化合物の重量比が、1/99〜99/
1、さらには10/90〜90/10、特には20/8
0〜80/20程度となるようにすることが好ましい。
【0033】また、混合層の厚さは、分子層一層に相当
する厚みから、有機化合物層の膜厚未満とすることが好
ましく、具体的には1〜85nmとすることが好ましく、
さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすることが好
ましい。
【0034】また、混合層の形成方法としては、異なる
蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸
発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同
じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもでき
る。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ま
しいが、場合によっては、化合物が島状に存在するもの
であってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質
を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させて
コーティングすることにより、発光層を所定の厚さに形
成する。
【0035】また、ホール注入輸送層には、例えば、特
開昭63−295695号公報、特開平2−19169
4号公報、特開平3−792号公報、特開平5−234
681号公報、特開平5−239455号公報、特開平
5−299174号公報、特開平7−126225号公
報、特開平7−126226号公報、特開平8−100
172号公報、EP0650955A1等に記載されて
いる各種有機化合物を用いることができる。例えば、テ
トラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミン
ないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級ア
ミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリア
ゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有する
オキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等である。こ
れらの化合物は2種以上を併用してもよく、併用すると
きは別層にして積層したり、混合したりすればよい。こ
れらの物質のガラス転移温度Tgは60〜150℃程度
であり、好ましくは90〜130℃程度のものが好まし
い。
【0036】ホール注入輸送層をホール注入層とホール
輸送層とに分けて設層する場合は、ホール注入輸送層用
の化合物のなかから好ましい組合せを選択して用いるこ
とができる。このとき、陽電極(ITO等)側からイオ
ン化ポテンシャルの小さい化合物の層の順に積層するこ
とが好ましい。また陽電極表面には薄膜性の良好な化合
物を用いることが好ましい。このような積層順について
は、ホール注入輸送層を2層以上設けるときも同様であ
る。このような積層順とすることによって、駆動電圧が
低下し、電流リークの発生やダークスポットの発生・成
長を防ぐことができる。また、素子化する場合、蒸着を
用いているので1〜10nm程度の薄い膜も、均一かつピ
ンホールフリーとすることができるため、ホール注入層
にイオン化ポテンシャルが小さく、可視部に吸収をもつ
ような化合物を用いても、発光色の色調変化や再吸収に
よる効率の低下を防ぐことができる。ホール注入輸送層
は、発光層等と同様に上記の化合物を蒸着することによ
り形成することができる。
【0037】また、必要に応じて設けられる電子注入輸
送層には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム
(Alq3)等の8−キノリノールなしいその誘導体を
配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキ
サジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導
体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニ
ルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用い
ることができる。電子注入輸送層は発光層を兼ねたもの
であってもよく、このような場合はトリス(8−キノリ
ノラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。電
子注入輸送層の形成は発光層と同様に蒸着等によればよ
い。これらの物質のガラス転移温度Tgは60〜150
℃程度であり、好ましくは90〜130℃程度のものが
好ましい。
【0038】電子注入輸送層を電子注入層と電子輸送相
とに分けて積層する場合には、電子注入輸送層用の化合
物の中から好ましい組み合わせを選択して用いることが
できる。このとき、電子注入電極側から電子親和力の値
の大きい化合物の順に積層することが好ましい。このよ
うな積層順については電子注入輸送層を2層以上設ける
ときも同様である。
【0039】ホール注入輸送層、発光層および電子注入
輸送層等の有機層の形成には、均質な薄膜が形成できる
ことから真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着
法を用いた場合、アモルファス状態または結晶粒径が
0.1μm 以下の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が
0.1μm を超えていると、不均一な発光となり、素子
の駆動電圧を高くしなければならなくなり、電荷の注入
効率も著しく低下する。
【0040】真空蒸着の条件は特に限定されないが、1
-4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/
sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続し
て各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形
成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げる
ため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低く
したり、ダークスポットの成長・発生を抑えたりするこ
とができる。
【0041】これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場
合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化
合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着する
ことが好ましい。
【0042】本発明の有機EL発光素子は、基板上にホ
ール注入電極と、その上に電子注入電極を有するこれら
の電極に挟まれて、それぞれ少なくとも1層の電荷輸送
層および発光層を有し、さらに最上層として保護電極を
有する。なお、電荷輸送層は省略可能である。そして、
電子注入電極は、蒸着、スパッタ法等、好ましくはスパ
ッタ法で成膜される仕事関数の小さい金属、化合物また
は合金で構成され、ホール注入電極は、好ましくは後述
のように透明あるいは半透明の電極とする。
【0043】成膜される電子注入電極の構成材料として
は、電子注入を効果的に行う低仕事関数の物質が好まし
く、例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、C
a、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn、Z
r、Cs、Er、Eu、Ga、Hf、Nd、Rb、S
c、Sm、Ta、Y、Yb等の金属元素単体、あるい
は、BaO、BaS、CaO、HfC、LaB6、Mg
O、MoC、NbC、PbS、SrO、TaC、Th
C、ThO2、ThS、TiC、TiN、UC、UN、
UO2、W2C、Y23、ZrC、ZrN、ZrO2等の
化合物を用いると良い。または安定性を向上させるため
には、金属元素を含む2成分、3成分の合金系を用いる
ことが好ましい。合金系としては、例えばAl・Ca
(Ca:5〜20at%)、Al・In(In:1〜10
at%)、Al・Li(Li:0.1〜20at%未満)、
Al・R〔RはY,Scを含む希土類元素を表す〕等の
アルミニウム系合金やIn・Mg(Mg:50〜80at
%)等が好ましい。これらの中でも、特にAl単体やA
l・Li(Li:0.4〜6.5(ただし6.5を含ま
ず)at%)または(Li:6.5〜14at%)、Al・
R(R:0.1〜25、特に0.5〜20at%)等のア
ルミニウム系合金が圧縮応力が発生しにくく好ましい。
したがって、スパッタターゲットとしては、通常このよ
うな電子注入電極の構成金属、合金を用いる。これらの
仕事関数は4.5以下であり、特に仕事関数が4.0以
下の金属、合金が好ましい。
【0044】電子注入電極の成膜にスパッタ法を用いる
ことにより、成膜された電子注入電極膜は、蒸着の場合
と比較して、スパッタされる原子や原子団が比較的高い
運動エネルギーを有するため、表面マイグレーション効
果が働き、有機層界面での密着性が向上する。また、プ
レスパッタを行うことで、真空中で表面酸化物層を除去
したり、逆スパッタにより有機層界面に吸着した水分や
酸素を除去できるので、クリーンな電極−有機層界面や
電極を形成でき、その結果、高品位で安定した有機EL
素子ができる。ターゲットとしては前記組成範囲の合金
や、金属単独でも良く、これらに加えて添加成分のター
ゲットを用いても良い。さらに、蒸気圧の大きく異なる
材料の混合物をターゲットとして用いても、生成する膜
とターゲットとの組成のズレは少なく、蒸着法のように
蒸気圧等による使用材料の制限もない。また、蒸着法に
比較して材料を長時間供給する必要がなく、膜厚や膜質
の均一性に優れ、生産性の点で有利である。
【0045】スパッタ法により形成された電子注入電極
は緻密な膜なので、粗な蒸着膜に比較して膜中への水分
の進入が非常に少なく、化学的安定性が高く、長寿命の
有機EL素子が得られる。
【0046】スパッタ時のスパッタガスの圧力は、好ま
しくは0.1〜5Paの範囲が好ましく、この範囲でスパ
ッタガスの圧力を調節することにより、前記範囲のLi
濃度のAlLi合金を容易に得ることができる。また、
成膜中にスパッタガスの圧力を、前記範囲内で変化させ
ることにより、上記Li濃度勾配を有する電子注入電極
を容易に得ることができる。また、成膜ガス圧力と基板
ターゲット間距離の積が20〜65Pa・cmを満たす成膜
条件にすることが好ましい。
【0047】スパッタガスは、通常のスパッタ装置に使
用される不活性ガスや、反応性スパッタではこれに加え
てN2、H2、O2、C24、NH3等の反応性ガスが使用
可能である。
【0048】スパッタ法としてはRF電源を用いた高周
波スパッタ法等も可能であるが、成膜レートの制御が容
易であり、有機EL素子構造体へのダメージを少なくす
るためにはDCスパッタ法を用いることが好ましい。D
Cスパッタ装置の電力としては、好ましくは0.1〜1
0W/cm2、特に0.5〜7W/cm2の範囲である。ま
た、成膜レートは5〜100nm/min 、特に10〜50
nm/min の範囲が好ましい。
【0049】電子注入電極薄膜の厚さは、電子注入を十
分行える一定以上の厚さとすれば良く、1nm以上、好ま
しくは3nm以上とすればよい。また、その上限値には特
に制限はないが、通常膜厚は3〜500nm程度とすれば
よい。
【0050】本発明の有機EL素子は、電子注入電極
上、つまり有機層と反対側に保護電極を設けてもよい。
保護電極を設けることにより、電子注入電極が外気や水
分等から保護され、構成薄膜の劣化が防止され、電子注
入効率が安定し、素子寿命が飛躍的に向上する。また、
この保護電極は、非常に低抵抗であり、電子注入電極の
抵抗が高い場合には配線電極としての機能も有する。こ
の保護電極は、Al、Alおよび遷移金属(ただしTi
を除く)、Tiまたは窒化チタン(TiN)のいずれか
1種または2種以上を含有し、これらを単独で用いた場
合、それぞれ保護電極中に少なくとも、Al:90〜1
00at%、Ti:90〜100at%、TiN:90〜1
00 mol%程度含有されていることが好ましい。また、
2種以上用いるときの混合比は任意であるが、AlとT
iの混合では、Tiの含有量は10at%以下が好まし
い。また、これらを単独で含有する層を積層してもよ
い。特にAl、Alおよび遷移金属は、後述の配線電極
として用いた場合、良好な効果が得られ、TiNは耐腐
食性が高く、封止膜としての効果が大きい。TiNは、
その化学量論組成から10%程度偏倚していてもよい。
さらに、Alおよび遷移金属の合金は、遷移金属、特に
Mg,Sc,Nb,Zr,Hf,Nd,Ta,Cu,S
i,Cr,Mo,Mn,Ni,Pd,Pt,W等を、好
ましくはこれらの総計が10at%以下、特に5at%以
下、特に2at%以下含有していてもよい。遷移金属の含
有量は少ないほど、配線材として機能させた場合の薄膜
抵抗は下げられる。
【0051】保護電極の厚さは、電子注入効率を確保
し、水分や酸素あるいは有機溶媒の進入を防止するた
め、一定以上の厚さとすればよく、好ましくは50nm以
上、さらに100nm以上、特に100〜1000nmの範
囲が好ましい。保護電極層が薄すぎると、本発明の効果
が得られず、また、保護電極層の段差被覆性が低くなっ
てしまい、端子電極との接続が十分ではなくなる。一
方、保護電極層が厚すぎると、保護電極層の応力が大き
くなるため、ダークスポットの成長速度が高くなってし
まう。なお、配線電極として機能させる場合の厚さは、
電子注入電極の膜厚が薄いために膜抵抗が高く、これを
補う場合には、通常100〜500nm 程度、その他の
配線電極として機能される場合には100〜300nm程
度である。
【0052】電子注入電極と保護電極とを併せた全体の
厚さとしては、特に制限はないが、通常100〜100
0nm程度とすればよい。
【0053】ホール注入電極としては、通常、ホール注
入電極側から発光光を取り出す構成のため、錫ドープ酸
化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム
(IZO)、SnO2 、In23 等を用いた透明電極
が好ましく、中でもITO、IZOが好ましい。
【0054】ITOでは、通常In2 3 とSnOとを
化学量論組成で含有するが、O量は多少これから偏倚し
ていてもよい。InOX ・SnOY とすると、Xは1.
0〜2.0、Yは0.8〜1.2の範囲が好ましい。I
2 3 に対しSnO2の混合比は、モル%で1〜20
%が好ましく、さらには5〜12%が好ましい。
【0055】このようなホール注入電極の厚さは、電荷
注入を十分行える一定以上の厚さを有すれば良く、好ま
しくは50〜500nm、さらには50〜300nmの範囲
が好ましい。また、その上限は特に制限はないが、あま
り厚いと剥離などの心配が生じる。厚さが薄すぎると、
製造時の膜強度や電子輸送能力の点で問題がある。
【0056】ホール注入電極層は蒸着法等によっても形
成できるが、好ましくはスパッタ法により形成すること
が好ましい。ITOを用いた電極の形成にスパッタ法を
用いる場合、好ましくはIn2 3 にSnO2をドープ
したターゲットを用いたDCスパッタ、あるいはRFス
パッタ法により形成することが好ましい。スパッタ法に
よりITO透明電極を成膜した場合、蒸着により成膜し
たものより発光輝度の経時変化が少ない。その投入電力
としては、好ましくは0.1〜4W/cm2 の範囲が好ま
しい。特にDCスパッタ装置の電力としては、好ましく
は0.1〜10W/cm2、特に0.5〜7W/cm2の範囲
である。また、成膜レートは5〜100nm/min 、特に
10〜50nm/min の範囲が好ましい。
【0057】スパッタガスとしては特に限定するもので
はなく、Ar、He、Ne、Kr、Xe等の不活性ガ
ス、あるいはこれらの混合ガスを用いればよい。このよ
うなスパッタガスのスパッタ時における圧力としては、
通常0.1〜20Pa程度でよい。
【0058】ホール注入電極、電子注入電極は前述のよ
うに成膜し、発光層等の有機物層は真空蒸着等により成
膜することができるが、これらの膜のそれぞれは、必要
に応じてマスク蒸着または膜形成後にエッチングなどの
方法によってパターニングでき、これによって、所望の
発光パターンを得ることができる。さらには、基板が薄
膜トランジスタ(TFT)であって、そのパターンに応
じて各膜を形成することでそのまま表示および駆動パタ
ーンとすることもできる。
【0059】電極成膜後に、前記保護電極に加えて、S
iOX 等の無機材料、テフロン、塩素を含むフッ化炭素
重合体等の有機材料等を用いた保護膜を形成してもよ
い。保護膜は透明でも不透明であってもよく、保護膜の
厚さは50〜1200nm程度とする。保護膜は前記した
反応性スパッタ法の他に、一般的なスパッタ法、蒸着法
等により形成すればよい。
【0060】さらに、素子の有機層や電極の酸化を防ぐ
ために素子上に封止層を形成することが好ましい。封止
層は、湿気の侵入を防ぐために市販の低吸湿性の光硬化
性接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、架
橋エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤シート等の接着
性樹脂層を用いて、ガラス板等の封止板を接着し密封す
る。ガラス板以外にも金属板、プラスチック板等を用い
ることもできる。
【0061】基板材料としては、ガラスや石英、樹脂等
の透明ないし半透明材料を用いる。また、基板に色フィ
ルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体
反射膜を用いて発光色をコントロールしてもよい。
【0062】色フィルター膜には、液晶ディスプレイ等
で用いられているカラーフィルターを用いれば良いが、
有機ELの発光する光に合わせてカラーフィルターの特
性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すればよ
い。
【0063】また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収
するような短波長の外光をカットできるカラーフィルタ
ーを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向
上する。
【0064】また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用
いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0065】蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を
吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させること
で、発光色の色変換を行うものであるが、組成として
は、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成
される。
【0066】蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高
いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いこ
とが望ましい。実際には、レーザー色素などが適してお
り、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン
系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロ等も含
む)ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素系化合物
・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・クマリン系
化合物等を用いればよい。
【0067】バインダーは基本的に蛍光を消光しないよ
うな材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷等
で微細なパターニングが出来るようなものが好ましい。
また、ITOの成膜時にダメージを受けないような材料
が好ましい。
【0068】光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りな
い場合に用いるが、必要の無い場合は用いなくても良
い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しな
いような材料を選べば良い。
【0069】本発明により製造される有機EL発光素子
の構成例を図1に示す。図1に示されるEL素子は、基
板21上に、ホール注入電極22、ホール注入層23、
ホール輸送層24、発光層25、電子注入層26、電子
注入電極27、保護電極28を順次有する。図示例に限
らず、種々の構成とすることができる。
【0070】本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動
型のEL素子として用いられるが、交流駆動またはパル
ス駆動とすることもできる。印加電圧は、通常、2〜2
0V程度とされる。
【0071】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を比較例ととも
に示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0072】<実施例1>ガラス基板上に、スパッタ法
にてITO透明電極(ホール注入電極)を100nm製膜
した。得られたITO透明電極をパターニングし、次い
で中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄
し、煮沸エタノール中から引き上げて乾燥した。次い
で、表面をUV/O3 洗浄した後、真空蒸着装置の基板
ホルダーに固定して、槽内を1×10-4Pa以下まで減圧
した。4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフ
ェニルアミノ)フェニルアミン(MTDATA:Tg=
76℃)を蒸着速度0.2nm/sec.で40nmの厚さに蒸
着し、ホール注入層とし、次いで減圧状態を保ったま
ま、N,N,N’,N’−テトラキス(3−ビフェニ
ル)−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル(T
PD:Tg=95℃)を蒸着速度0.2nm/sec.で15
nmの厚さに蒸着し、ホール輸送層とした。さらに、減圧
を保ったまま、トリス(8−キノリノラト)アルミニウ
ム(Alq3 :Tg=〜100℃)〔注:Alq3 は1
00℃まで安定で顕著なガラス転移点を示さない〕およ
び上記N,N,N’,N’−テトラキス(3−ビフェニ
ル)−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル(T
PD:Tg=95℃)をそれぞれ蒸着速度0.2nm/se
c.で1:1の共蒸着(2元蒸着)により混合層として4
0nm成膜し、発光層とした。さらに、トリス(8−キノ
リノラト)アルミニウム(Alq3 :Tg=〜100
℃)を蒸着速度0.2nm/sec.で30nmの厚さに蒸着し
て、電子注入層とした。次いで減圧を保ったまま、この
EL素子構造体が成膜された基板を真空蒸着装置からス
パッタ装置に移し、MgAg合金ターゲットを用い、ス
パッタ圧力1.0PaにてMgAg電子注入電極(Ag濃
度:5at%)を200nmの厚さに成膜した。その際スパ
ッタガスにはArを用い、投入電力は100W、ターゲ
ットの大きさは4インチ径、基板とターゲットの距離は
90mmとした。さらに、減圧を保ったまま、このEL素
子基板を他のスパッタ装置に移し、Alターゲットを用
いたDCスパッタ法により、スパッタ圧力0.3Paにて
Al保護電極を200nmの厚さに成膜した。この時スパ
ッタガスにはArを用い、投入電力は500W、ターゲ
ットの大きさは4インチ径、基板とターゲットの距離は
90mmとした。最後に、接着剤を用いてガラス封止板を
接着し、密封した後、この有機EL素子に大気雰囲気中
にて85℃で、1時間の加熱処理を施した(最低ガラス
転移温度:Tg=76℃)。
【0073】得られた有機EL素子に、大気雰囲気中で
直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で連続駆
動させた。初期には、7.5V 、500cd/m2 の緑色
(発光極大波長λmax =530nm)の発光が観測され
た。輝度の半減時間は5400時間で、その間の駆動電
圧の上昇は2.9Vであった。この間、大きさが50μ
m を超えるダークスポットの発生および成長は確認され
なかった。
【0074】<実施例2>実施例1において、ホール注
入層として4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニ
ルフェニルアミノ)フェニルアミン(MTDATA)の
代わりにN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス〔N−
フェニル−N4−トリル(4−アミノフェニル)〕(T
g=107℃)を用いた他は実施例1と同様にして有機
EL素子を得た。さらに、この有機EL素子に大気雰囲
気中にて85℃で、1時間の加熱処理を施した(最低ガ
ラス転移温度:Tg=95℃)。
【0075】得られた有機EL素子に、大気雰囲気中で
直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で連続駆
動させた。初期には、6.6V 、470cd/m2 の緑色
(発光極大波長λmax =530nm)の発光が観測され
た。輝度の半減時間は7300時間で、その間の駆動電
圧の上昇は2.5Vであった。この間、大きさが50μ
m を超えるダークスポットの発生および成長は確認され
なかった。
【0076】<実施例3>実施例2において、加熱処理
を100℃で1時間行った他は実施例2と同様にして有
機EL素子を得た。
【0077】得られた有機EL素子に、大気雰囲気中で
直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で連続駆
動させた。初期には、6.7V 、470cd/m2 の緑色
(発光極大波長λmax =530nm)の発光が観測され
た。輝度の半減時間は10000時間で、その間の駆動
電圧の上昇は2.3Vであった。この間、大きさが50
μm を超えるダークスポットの発生および成長は確認さ
れなかった。
【0078】<比較例1>実施例1において、加熱処理
を行わない他は実施例1と同様にして有機EL素子を得
た。
【0079】得られた有機EL素子に、大気雰囲気中で
直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で連続駆
動させた。初期には、8.0V 、470cd/m2 の緑色
(発光極大波長λmax =530nm)の発光が観測され
た。輝度の半減時間は2500時間で、その間の駆動電
圧の上昇は3.3Vであった。
【0080】<比較例2>実施例1において、加熱処理
を100℃で1時間行った他は実施例1と同様にして有
機EL素子を得た。
【0081】得られた有機EL素子に、大気雰囲気中で
直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で連続駆
動させたところ、発光ムラが発生し、正確な輝度測定が
困難であった。
【0082】<比較例3>実施例2において、加熱処理
を行わない他は実施例2と同様にして有機EL素子を得
た。
【0083】得られた有機EL素子に、大気雰囲気中で
直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で連続駆
動させた。初期には、6.5V 、460cd/m2 の緑色
(発光極大波長λmax =530nm)の発光が観測され
た。輝度の半減時間は4800時間で、その間の駆動電
圧の上昇は2.9Vであった。
【0084】<比較例4>実施例2において、加熱処理
を130℃で1時間行った他は実施例2と同様にして有
機EL素子を得た。
【0085】得られた有機EL素子に、大気雰囲気中で
直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で連続駆
動させたところ、発光ムラが発生し、正確な輝度測定が
困難であった。
【0086】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、長寿命、
高輝度、高効率、高表示品質の有機EL素子を実現でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機EL素子の構成例を示す概念図である。
【符号の説明】
21 基板 22 ホール注入電極 23 ホール注入層 24 ホール輸送層 25 発光層 26 電子注入層 27 電子注入電極 28 保護電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 海老沢 晃 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 染谷 拓 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホール注入電極と、電子注入電極と、こ
    れらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、 前記有機層成膜後に、この有機層の構成材料中最も低い
    ガラス転移温度Tgに対し±20℃の温度範囲で加熱処
    理された有機EL素子。
  2. 【請求項2】 前記有機層構成材料の中で最も低いガラ
    ス転移温度Tgからこれより20℃高い温度までの範囲
    で加熱処理された請求項1の有機EL素子。
  3. 【請求項3】 少なくとも基板上にホール注入電極と有
    機層を成膜した後、この有機層の構成材料中最も低いガ
    ラス転移温度Tgに対し±20℃の温度範囲で、10分
    〜5時間加熱処理を行う有機EL素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 少なくとも基板上にホール注入電極と有
    機層を成膜した後、この有機層の構成材料の中で最も低
    いガラス転移温度Tgからこれより20℃高い温度まで
    の範囲で、10分〜5時間加熱処理を行う請求項3の有
    機EL素子の製造方法。
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