JPH11329746A - 有機el素子 - Google Patents

有機el素子

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JPH11329746A
JPH11329746A JP10132771A JP13277198A JPH11329746A JP H11329746 A JPH11329746 A JP H11329746A JP 10132771 A JP10132771 A JP 10132771A JP 13277198 A JP13277198 A JP 13277198A JP H11329746 A JPH11329746 A JP H11329746A
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JP
Japan
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injection electrode
electron injection
sputtering
layer
film
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Withdrawn
Application number
JP10132771A
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English (en)
Inventor
Kenji Nakatani
賢司 中谷
Isamu Kobori
勇 小堀
Masami Mori
匡見 森
Kazuhisa Daihisa
和寿 大久
Michio Arai
三千男 荒井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】有機層界面での密着性、電子注入効率が良好
で、発光特性を向上させ、有機層へのダメージも少な
く、ダークスポットの発生を抑制し、性能劣化の少ない
電子注入電極を有する有機EL素子を実現する。 【解決手段】 ホール注入電極22と電子注入電極25
と、これらの電極間に1種以上の有機層23,24とを
有し、前記電子注入電極25は、スパッタ法で成膜さ
れ、かつLiを0.4〜14at%含有するAlLi合金
である有機EL素子とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機化合物を用い
た有機EL素子とその製造方法に関し、さらに詳細に
は、電子注入電極とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、有機EL素子が盛んに研究されて
いる。これは、錫ドープ酸化インジウム(ITO)など
の透明電極(ホール注入電極)上にトリフェニルジアミ
ン(TPD)などのホール輸送材料を蒸着により薄膜と
し、さらにアルミキノリノール錯体(Alq3 )などの
蛍光物質を発光層として積層し、さらにMgなどの仕事
関数の小さな金属電極(電子注入電極)を形成した基本
構成を有する素子で、10V前後の電圧で数100から
数10000cd/m2ときわめて高い輝度が得られること
で注目されている。
【0003】このような有機EL素子の電子注入電極と
して用いられる材料は、発光層や電子注入輸送層等へ電
子を多く注入するものが有効であると考えられている。
換言すれば、仕事関数の小さい材料ほど電子注入電極と
して適していると言える。仕事関数の小さい材料として
は種々のものがあるが、有機EL素子の電子注入電極と
して用いられるものとしては、例えば特開平2−155
95号公報には、アルカリ金属以外の複数の金属からな
り、かつこれらの金属の少なくとも1種の金属の仕事関
数が、4eV未満である電子注入電極として、例えばMg
Agが開示されている。
【0004】また、仕事関数の小さいものとしてはアル
カリ金属が好ましく、米国特許第3173050号、同
3382394号明細書には、アルカリ金属として、例
えばNaKが記載されている。しかし、アルカリ金属を
用いたものは、活性が高く、化学的に不安定であり、安
全性、信頼性の点でMgAg等を用いた電子注入電極に
比べ劣っている。
【0005】アルカリ金属を用いた電子注入電極の、安
定性を高める試みとして、例えば、特開昭60−165
771号公報、特開平4−212287号公報、特開平
5−121172号公報、特開平5−159882号公
報に記載されているAlLi合金を用いた電子注入電極
が知られている。これらの公報に記載されているAlL
i合金のLiの濃度とその製造方法を挙げると、(1)
特開昭60−165771号公報では、Li濃度が3.
6〜99.8at%(1〜99wt%)、好ましくは29.
5〜79.1at%(10〜50wt%)であり、その実施
例には15.8〜79.1at%(4.8〜50wt%)の
範囲のAlLi合金が記載されている。また、これらの
AlLi合金は全て蒸着法にて成膜されている。(2)
特開平4−212287号公報では、6at%以上、好ま
しくは6〜30at%であり、その実施例にはLi濃度が
28at%のAlLi合金が記載されている。また、これ
らのAlLi合金は抵抗加熱共蒸着や電子ビーム蒸着、
スパッタで成膜できる旨記載されているが、実施例では
蒸着法のみ用いている。(3)特開平5−121172
号公報では、0.0377〜0.38at%(0.01〜
0.1:100wt比)、実施例では、0.060〜0.
31at%(0.016〜0.08:100wt比)のAl
Li合金を、抵抗加熱蒸着あるいは電子ビーム蒸着にて
形成する点が、また好ましくは、15.9at%以下(5
0以下:1000wt比)、その実施例には29.5〜6
1.8at%(10〜30wt%)のAlLi合金を成膜す
る点が記載されている。(4)特開平5−159882
号公報には、Li濃度が5〜90at%、実施例にはLi
濃度が16〜60at%のAlLi合金を、Li源は抵抗
加熱蒸着、他方を電子ビーム蒸着を用いた2元蒸着で成
膜する点について記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記(1)、
(3)および(4)のAlLi合金電極は、真空蒸着で
のみ成膜されている。(2)のAlLi合金電極は、ス
パッタ法についての記載はあるものの、実施例は真空蒸
着法で行われており、スパッタ法についての具体的記載
もない。
【0007】真空蒸着法を用いる場合、リチウム単独で
は化学的安定性、成膜性および密着性の点で劣るため、
AlLi合金をLi蒸着源として用いている。しかし、
互いの金属の蒸気圧が異なるため、Alとの2元蒸着
(共蒸着)が必要となる。2元蒸着を用いた場合、組成
の制御が容易ではなく、また、最適な組成を毎回安定し
て得ることは困難である。従って、実際に得られるLi
濃度は、16〜79at%の比較的高濃度側に偏り、また
一定しない。Li濃度が高くなると、化学的に不安定と
なり、その結果、成膜性や密着性等が悪化し、素子特性
を劣化させる要因となる。また、品質も一定しない。一
方、単一の蒸着源から蒸着を行うこととすると、Liの
濃度は0.38at%以下の低いものとなり、合金として
の仕事関数が高くなり、電子注入効率が低下し、実用的
な特性を有する素子を得ることが困難である。
【0008】また、真空蒸着法により成膜された電子注
入電極は、膜としての緻密さが低く、有機層界面との密
着性が悪いため、発光効率が低下したり、電極が剥離し
てダークスポットが発生する等、EL素子の特性や寿
命、表示品質を低下させる要因となっていた。
【0009】さらに、Liのように仕事関数の小さい材
料は酸素や水分に対して反応性が高く、また材料の供給
や追加の作業は通常大気中で行われるため、材料表面に
は酸化物が形成されている。高品位の電子注入電極を形
成するためには、この酸化膜を除去してから蒸着を行う
ことが好ましいが、酸化物は金属単体よりも蒸発温度が
低かったり、あるいは蒸気圧が高いことはほとんど無く
酸化膜を除去することは困難であリ、純粋な金属膜から
なる高品位の電子注入電極を形成することは容易ではな
い。また、これらの酸化物材料による蒸着膜が電子注入
電極と有機層界面や、電極内部に形成された場合には、
仕事関数や電気伝導性が金属単体と異なるため、所望の
EL特性が得られない。さらに、実用的に見ると、材料
の交換や追加が短期間で必要となったり、大面積にした
場合には組成制御や膜厚、膜質の均一性に問題が生じる
こと、成膜レートを上げた場合には組成制御や、膜質の
再現性、膜質の均一性に問題が生じる等生産性の点でも
種々の問題を生じていた。
【0010】本発明の目的は、電子注入電極と有機層界
面での成膜性、密着性を改善し、高輝度、高効率、長寿
命、高表示品質の有機EL素子を実現することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】以上のような目的は、以
下の(1)〜(4)の構成により達成される。 (1) ホール注入電極と電子注入電極と、これらの電
極間に1種以上の有機層とを有し、前記電子注入電極
は、スパッタ法で成膜され、かつLiを0.4〜14at
%含有するAlLi合金である有機EL素子。 (2) AlLi合金をターゲットとし、スパッタ法に
て上記(1)の電子注入電極を成膜する有機EL素子の
製造方法。 (3) 前記スパッタ法は、成膜ガス圧力を0.1〜5
Paの範囲で変化させ、成膜される電子注入電極のLi濃
度を0.4〜14at%の範囲で変化させる上記(1)ま
たは(2)の有機EL素子の製造方法。 (4) 前記スパッタ法がDCスパッタ法である上記
(1)〜(3)のいずれかの有機EL素子の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的構成につい
て詳細に説明する。本発明の有機EL素子は、ホール注
入電極と電子注入電極と、これらの電極間に1種以上の
有機層とを有し、前記電子注入電極は、スパッタ法で成
膜され、かつLiを0.4〜14at%含有するAlLi
合金である。
【0013】スパッタ法を用いることにより、成膜され
た電子注入電極膜は、蒸着の場合と比較して、スパッタ
される原子や原子団が比較的高い運動エネルギーを有す
るため、表面マイグレーション効果が働き、有機層界面
での密着性が向上する。また、プレスパッタを行うこと
で、真空中で表面酸化物層を除去したり、逆スパッタに
より有機層界面に吸着した水分や酸素を除去できるの
で、クリーンな電極−有機層界面や電極を形成でき、そ
の結果、高品位で安定した有機EL素子ができる。さら
に、蒸気圧の大きく異なる材料の混合物をターゲットと
して用いても、生成する膜とターゲットとの組成のズレ
は少なく、蒸着法のように蒸気圧等による使用材料の制
限もない。また、蒸着法に比較して材料を長時間供給す
る必要がなく、膜厚や膜質の均一性に優れ、生産性の点
で有利である。
【0014】スパッタ法により形成された電子注入電極
は緻密な膜なので、粗な蒸着膜に比較して膜中への水分
の進入が非常に少なく、化学的安定性が高く、長寿命の
有機EL素子が得られる。
【0015】電子注入電極を構成するAlLi合金のL
i含有量は、0.4〜14at%、好ましくは0.4〜
6.5(ただし6.5を含まない)at%、より好ましく
は、0.4〜5(ただし5を含まない)at%、さらには
0.4〜4.5at%、またさらには0.4〜4at%、特
に0.4〜3at%の範囲、あるいは好ましくは6.5〜
14at%、より好ましくは7〜12at%の範囲が好まし
い。Li元素の量が多すぎると成膜された電子注入電極
の安定性が低下し、少なすぎると本発明の効果が得られ
ない。また、発光輝度の安定性を高めるためにはLi濃
度を高めに設定することが好ましく、逆に駆動電圧の安
定性を高めるためにはLi濃度を低めに設定することが
好ましい。
【0016】また、Li含有量は0.8〜12at%が好
ましい。この場合駆動電圧の安定性、すなわち電圧上昇
の点では、0.8〜2.8at%、特に1.5〜2.5at
%が好ましい。そして、輝度の点では3.2〜12at%
が好ましく、輝度が高く、駆動電圧と電圧上昇が低く抑
えられる点では、特に3.5〜10at%、さらには3.
5〜9at%が好ましい。
【0017】さらに、AlおよびLiに加えて、添加物
あるいは不可避成分としてCu、Mg、Zr、Fe、S
i、O等の1種または2種以上を、それぞれ5wt%以下
含有していてもよい。
【0018】形成される電子注入電極は、有機層に接す
る界面にLi元素が多く、その反対側の面にAl元素が
多くなるように、膜厚方向にLiの濃度が変化する濃度
勾配を有する構造としてもよい。このような濃度勾配を
持たせることで、電子注入機能が必要な有機層界面に、
高濃度で低仕事関数のLi元素を存在させ、外気等との
接触の恐れの多い反対側の面に反応活性の高いLi元素
を低濃度で存在させることができ、高い電子注入効率を
保持しつつ、安定性を高めた電子注入電極を実現でき
る。
【0019】電子注入電極中にLi元素の濃度勾配を持
たせるには、好ましくは後述するように、スパッタ圧力
をコントロールすることにより容易に実現できるが、そ
の他に例えば、AlLi合金スパッタターゲットと、A
l金属ターゲットとを同時に使用し、それぞれの成膜レ
ートをコントロールしてもよい。また、このような連続
的な濃度勾配を持たせる以外、例えば非連続的(段階
的)に、Li元素の混合比を変えた膜を成膜してもよ
い。
【0020】スパッタ時のスパッタガスの圧力は、好ま
しくは0.1〜5Paの範囲が好ましく、この範囲でスパ
ッタガスの圧力を調節することにより、前記範囲のLi
濃度のAlLi合金を容易に得ることができる。また、
成膜中にスパッタガスの圧力を、前記範囲内で変化させ
ることにより、上記Li濃度勾配を有する電子注入電極
を容易に得ることができる。
【0021】スパッタガスは、通常のスパッタ装置に使
用される不活性ガスや、反応性スパッタではこれに加え
てN2 、H2 、O2 、C24 、NH3 等の反応性ガス
が使用可能である。
【0022】スパッタ法としてはRF電源を用いた高周
波スパッタ法等も可能であるが、成膜レートの制御が容
易であり、有機EL素子構造体へのダメージを少なくす
るためにはDCスパッタ法、より好ましくはパルスDC
スパッタ法を用いることが好ましい。DCスパッタ装置
の電力としては、好ましくは0.1〜10W/cm2、特
に0.5〜7W/cm2の範囲である。また、成膜レート
は0.1〜100nm/min 、特に1〜30nm/min の範
囲が好ましい。
【0023】スパッタ法により成膜した薄膜には、上記
スパッタガス(不活性ガス)が混入する場合が多い。こ
のとき薄膜中に混入するガスの原子量としては、使用す
るガスや、成膜する薄膜の構成元素により異なるが、不
活性ガスの場合、通常、0.01〜20at%程度であ
る。従って、これらのスパッタガスの存在によりスパッ
タ法にて成膜されたことが確認できる。これらのスパッ
タガス元素の存在は、加熱によるガス放出、EPMA
(electron probe microanalysis)等により確認するこ
とができる。
【0024】本発明に用いられるDCスパッタ装置は、
好ましくはマグネトロンDCスパッタ装置であることが
好ましく、磁場強度としては、ターゲット上の磁束密度
Bが、好ましくはB=500〜2000Gauss 、特に8
00〜1500Gauss 程度が好ましい。ターゲット上の
磁束密度は大きいほど好ましく、磁束密度を大きくして
磁場強度を強くすると、ターゲット付近に電子を閉じこ
めるような電極構造をとることによって、プラズマ中の
スパッタガスの陰極ターゲットに衝突するイオン数が増
加し、プラズマ密度が大きくなる。プラズマ密度が大き
くなると、プラズマ中で粒子同士の衝突頻度が増し、運
動エネルギーの一部が失われ、スパッタされた粒子が基
板上に穏やかに堆積することになる。ターゲット上に磁
場を得る方法としては、特に限定されるものではない
が、ターゲットの裏面側、特に冷却部内に磁石を配置す
ることが好ましい。このような磁場を与える磁石とし
て、例えば、Fe−Nd−B、Sm−Co、フェライ
ト、アルニコ等が挙げられ、中でもFe−Nd−B、S
m−Coが大きな磁束密度が得られ好ましい。ターゲッ
ト上の磁界の方向は、通常、ターゲットの外周側から上
方に出た磁界が曲げられ、中心部に収束するよう磁石が
配置されることが好ましい。
【0025】なお、磁場強度、バイアス電圧とも上記範
囲の中で、使用環境、装置の規模等に合わせて最適な値
に調整することが好ましい。
【0026】電子注入電極薄膜の厚さは、電子注入を十
分行える一定以上の厚さとすれば良く、0.5nm以上、
好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上とすれば
よい。また、その上限値には特に制限はないが、通常膜
厚は3〜500nm程度とすればよい。
【0027】本発明の有機EL素子は、前述のような反
応性スパッタを利用して、保護膜として電子注入電極の
構成材料の酸化物、窒化物あるいは炭化物の1種以上を
設けてもよい。この場合、保護膜の原材料は、通常は電
子注入電極材料と同一組成とするが、それと組成比の異
なるものであっても、あるいはその材料成分中の1種以
上を欠くものであっても良い。このように、電子注入電
極と同一材料等を用いることにより、電子注入電極との
連続成膜が可能となる。
【0028】このような酸化物のO量、窒化物のN量あ
るいは炭化物のC量は、この化学量論組成から偏倚して
いても良く、それらの組成の0.5〜2倍の範囲であれ
ばよい。
【0029】ターゲットとしては好ましくは電子注入電
極と同一材料のものを用い、反応性ガスとしては、酸化
物を形成する場合、O2 、CO等が挙げられ、窒化物を
形成する場合、N2 、NH3 、NO、NO2 、N2 O等
が挙げられ、炭化物を形成する場合、CH4 、C2
2 、C24 等が挙げられる。これらの反応性ガスは単
独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
【0030】保護膜の厚さは、水分や酸素あるいは有機
溶媒の進入を防止するため、一定以上の厚さとすればよ
く、好ましくは50nm以上、さらに100nm以上、特に
100〜1000nmの範囲が好ましい。
【0031】電子注入電極と保護膜とを併せた全体の厚
さとしては、特に制限はないが、通常100〜1000
nm程度とすればよい。
【0032】このような保護膜を設けることにより、電
子注入電極の酸化等がさらに防止され、有機EL素子を
長期間安定に駆動することができる。
【0033】本発明で製造される有機EL発光素子は、
基板上にホール注入電極と、その上に電子注入電極を有
するこれらの電極に挟まれて、それぞれ少なくとも1層
の電荷輸送層および発光層を有し、さらに最上層として
保護層を有する。なお、電荷輸送層は省略可能である。
そして、電子注入電極は、前述のとおり、スパッタ法で
成膜される仕事関数の小さい金属、化合物または合金で
構成され、ホール注入電極は、錫ドープ酸化インジウム
(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、Z
nO、SnO2 、In23 等をスパッタ法で成膜した
構成からなる。
【0034】本発明により製造される有機EL発光素子
の構成例を図1に示す。図1に示されるEL素子は、基
板21上に、ホール注入電極22、ホール注入・輸送層
23、発光および電子注入輸送層24、電子注入電極2
5、保護層26を順次有する。
【0035】本発明の有機EL素子は、図示例に限ら
ず、種々の構成とすることができ、例えば発光層を単独
で設け、この発光層と電子注入電極との間に電子注入輸
送層を介在させた構造とすることもできる。また、必要
に応じ、ホール注入・輸送層23と発光層とを混合して
も良い。
【0036】電子注入電極は前述のように成膜し、発光
層等の有機物層は真空蒸着等により、ホール注入電極は
蒸着やスパッタ等により成膜することができるが、これ
らの膜のそれぞれは、必要に応じてマスク蒸着または膜
形成後にエッチングなどの方法によってパターニングで
き、これによって、所望の発光パターンを得ることがで
きる。さらには、基板が薄膜トランジスタ(TFT)で
あって、そのパターンに応じて各膜を形成することでそ
のまま表示および駆動パターンとすることもできる。
【0037】ホール注入電極としては、好ましくは波長
350nm〜800nm、より好ましくは発光した光の透過
率が80%以上、特に90%以上となるような材料およ
び厚さを決定することが好ましい。具体的には、酸化物
透明導電薄膜が好ましく、例えば、錫ドープ酸化インジ
ウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZ
O)、酸化インジウム(In23 )、酸化スズ(Sn
2 )および酸化亜鉛(ZnO)のいずれかを主組成と
したものが好ましい。これらの酸化物はその化学量論組
成から多少偏倚していてもよい。ITOでは、通常In
23 とSnO2 とを化学量論組成で含有するが、酸素
量は多少これから偏倚していてもよい。In23 に対
しSnO2 の混合比は、1〜20wt%が好ましく、さら
には5〜12wt%が好ましい。In23 に対しZnO
の混合比は、12〜32wt%が好ましい。
【0038】ホール注入電極を成膜するにはスパッタ法
が好ましい。スパッタ法としてはRF電源を用いた高周
波スパッタ法等も可能であるが、成膜するホール注入電
極の膜物性の制御のし易さや、成膜面の平滑度等を考慮
するとDCスパッタ法を用いることが好ましい。
【0039】電極成膜後に、SiOX 等の無機材料、テ
フロン等の有機材料等を用いた保護膜を形成してもよ
い。保護膜は透明でも不透明であってもよく、保護膜の
厚さは50〜1200nm程度とする。保護膜は前記した
反応性スパッタ法の他に、一般的なスパッタ法、蒸着法
等により形成すればよい。
【0040】さらに、素子の有機層や電極の酸化を防ぐ
ために素子上に封止層を形成することが好ましい。封止
層は、湿気の侵入を防ぐために市販の低吸湿性の光硬化
性接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、架
橋エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤シート等の接着
性樹脂層を用いて、ガラス板等の封止板を接着し密封す
る。ガラス板以外にも金属板、プラスチック板等を用い
ることもできる。
【0041】次に、本発明のEL素子に設けられる有機
物層について述べる。
【0042】発光層は、ホール(正孔)および電子の注
入機能、それらの輸送機能、ホールと電子の再結合によ
り励起子を生成させる機能を有する。発光層には比較的
電子的にニュートラルな化合物を用いることが好まし
い。
【0043】ホール注入輸送層は、ホール注入電極から
のホールの注入を容易にする機能、ホールを安定に輸送
する機能および電子を妨げる機能を有し、電子注入輸送
層は、電子注入電極からの電子の注入を容易にする機
能、電子を安定に輸送する機能およびホールを妨げる機
能を有するものであり、これらの層は、発光層に注入さ
れるホールや電子を増大・閉じこめさせ、再結合領域を
最適化させ、発光効率を改善する。
【0044】発光層の厚さ、ホール注入輸送層の厚さお
よび電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、形成方法
によっても異なるが、通常、5〜500nm程度、特に1
0〜300nmとすることが好ましい。
【0045】ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入輸
送層の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光
層の厚さと同程度もしくは1/10〜10倍程度とすれ
ばよい。ホールもしくは電子の、各々の注入層と輸送層
を分ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は1nm以上
とするのが好ましい。このときの注入層、輸送層の厚さ
の上限は、通常、注入層で500nm程度、輸送層で50
0nm程度である。このような膜厚については注入輸送層
を2層設けるときも同じである。
【0046】本発明の有機EL素子の発光層には発光機
能を有する化合物である蛍光性物質を含有させる。この
ような蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−26
4692号公報に開示されているような化合物、例えば
キナクリドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物か
ら選択される少なくとも1種が挙げられる。また、トリ
ス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノ
ールないしその誘導体を配位子とする金属錯体色素など
のキノリン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アント
ラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘
導体等が挙げられる。さらには、特願平6−11056
9号のフェニルアントラセン誘導体、特願平6−114
456号のテトラアリールエテン誘導体等を用いること
ができる。
【0047】また、それ自体で発光が可能なホスト物質
と組み合わせて使用することが好ましく、ドーパントと
しての使用が好ましい。このような場合の発光層におけ
る化合物の含有量は0.01〜10wt% 、さらには0.
1〜5wt% であることが好ましい。ホスト物質と組み合
わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長特
性を変化させることができ、長波長に移行した発光が可
能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上す
る。
【0048】ホスト物質としては、キノリノラト錯体が
好ましく、さらには8−キノリノールないしその誘導体
を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このよう
なアルミニウム錯体としては、特開昭63−26469
2号、特開平3−255190号、特開平5−7073
3号、特開平5−258859号、特開平6−2158
74号等に開示されているものを挙げることができる。
【0049】具体的には、まず、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネ
シウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜
鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、
トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−
8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−
キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キ
ノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−
8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜
鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メ
タン]、等がある。
【0050】また、8−キノリノールないしその誘導体
のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であって
もよく、このようなものとしては、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III)
、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−
クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(メタークレゾラト)アルミニウム
(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ
−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル
−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノ
ラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノ
ラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キ
ノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメ
チルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラ
ト)(2,4,6−トリフェニルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,
3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナ
フトラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)
(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,
4−ジメチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8
−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−エチ
ル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キ
ノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウ
ム(III) 、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリ
ノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノ
リノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III) 等が
ある。
【0051】このほか、ビス(2−メチル−8−キノリ
ノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス
(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム
(III) −μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キ
ノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(4−エチル−
2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −
μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノ
リノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4
−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オ
キソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(5−シアノ−2−メチル−
8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−
ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−5−トリフルオ
ロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ
−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル
−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 等であっても
よい。
【0052】このほかのホスト物質としては、特願平6
−110569号に記載のフェニルアントラセン誘導体
や特願平6−114456号に記載のテトラアリールエ
テン誘導体なども好ましい。
【0053】発光層は電子注入輸送層を兼ねたものであ
ってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム等を使用することが好ましい。これら
の蛍光性物質を蒸着すればよい。
【0054】また、必要に応じて発光層は、少なくとも
一種以上のホール注入輸送性化合物と少なくとも1種以
上の電子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ま
しく、この混合層中にドーパントを含有させることが好
ましい。このような混合層における化合物の含有量は、
0.01〜20wt% 、さらには0.1〜15wt% とする
ことが好ましい。
【0055】混合層では、キャリアのホッピング伝導パ
スができるため、各キャリアは極性的に優勢な物質中を
移動し、逆の極性のキャリア注入は起こり難くなり、有
機化合物がダメージを受け難くなり、素子寿命がのびる
という利点があるが、前述のドーパントをこのような混
合層に含有させることにより、混合層自体のもつ発光波
長特性を変化させることができ、発光波長を長波長に移
行させることができるとともに、発光強度を高め、かつ
素子の安定性を向上させることができる。
【0056】混合層に用いられるホール注入輸送性化合
物および電子注入輸送性化合物は、各々、後述のホール
注入輸送層用の化合物および電子注入輸送層用の化合物
の中から選択すればよい。なかでも、ホール注入輸送層
用の化合物としては、強い蛍光を持ったアミン誘導体、
例えばホール輸送材料であるトリフェニルジアミン誘導
体、さらにはスチリルアミン誘導体、芳香族縮合環を持
つアミン誘導体を用いるのが好ましい。
【0057】電子注入輸送性の化合物としては、キノリ
ン誘導体、さらには8−キノリノールないしその誘導体
を配位子とする金属錯体、特にトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム(Alq3 )を用いることが好まし
い。また、上記のフェニルアントラセン誘導体、テトラ
アリールエテン誘導体を用いるのも好ましい。
【0058】ホール注入輸送層用の化合物としては、強
い蛍光を持ったアミン誘導体、例えば上記のホール輸送
材料であるトリフェニルジアミン誘導体、さらにはスチ
リルアミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン誘導体を
用いるのが好ましい。
【0059】この場合の混合比は、それぞれのキャリア
移動度とキャリア濃度を考慮する事で決定するが、一般
的には、ホール注入輸送性化合物の化合物/電子注入輸
送機能を有する化合物の重量比が、1/99〜99/
1、さらには10/90〜90/10、特には20/8
0〜80/20程度)となるようにすることが好まし
い。
【0060】また、混合層の厚さは、分子層一層に相当
する厚みから、有機化合物層の膜厚未満とすることが好
ましく、具体的には1〜85nmとすることが好ましく、
さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすることが好
ましい。
【0061】また、混合層の形成方法としては、異なる
蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸
発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同
じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもでき
る。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ま
しいが、場合によっては、化合物が島状に存在するもの
であってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質
を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させて
コーティングすることにより、発光層を所定の厚さに形
成する。
【0062】また、ホール注入輸送層には、例えば、特
開昭63−295695号公報、特開平2−19169
4号公報、特開平3−792号公報、特開平5−234
681号公報、特開平5−239455号公報、特開平
5−299174号公報、特開平7−126225号公
報、特開平7−126226号公報、特開平8−100
172号公報、EP0650955A1等に記載されて
いる各種有機化合物を用いることができる。例えば、テ
トラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミン
ないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級ア
ミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリア
ゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有する
オキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等である。こ
れらの化合物は2種以上を併用してもよく、併用すると
きは別層にして積層したり、混合したりすればよい。
【0063】ホール注入輸送層をホール注入層とホール
輸送層とに分けて設層する場合は、ホール注入輸送層用
の化合物のなかから好ましい組合せを選択して用いるこ
とができる。このとき、ホール注入電極(ITO等)側
からイオン化ポテンシャルの小さい化合物の層の順に積
層することが好ましい。またホール注入電極表面には薄
膜性の良好な化合物を用いることが好ましい。このよう
な積層順については、ホール注入輸送層を2層以上設け
るときも同様である。このような積層順とすることによ
って、駆動電圧が低下し、電流リークの発生やダークス
ポットの発生・成長を防ぐことができる。また、素子化
する場合、蒸着を用いているので1〜10nm程度の薄い
膜も、均一かつピンホールフリーとすることができるた
め、ホール注入層にイオン化ポテンシャルが小さく、可
視部に吸収をもつような化合物を用いても、発光色の色
調変化や再吸収による効率の低下を防ぐことができる。
ホール注入輸送層は、発光層等と同様に上記の化合物を
蒸着することにより形成することができる。
【0064】また、必要に応じて設けられる電子注入輸
送層には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム
(Alq3 )等の8−キノリノールなしいその誘導体を
配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキ
サジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導
体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニ
ルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用い
ることができる。電子注入輸送層は発光層を兼ねたもの
であってもよく、このような場合はトリス(8−キノリ
ノラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。電
子注入輸送層の形成は発光層と同様に蒸着等によればよ
い。
【0065】電子注入輸送層を電子注入層と電子輸送層
とに分けて積層する場合には、電子注入輸送層用の化合
物の中から好ましい組み合わせを選択して用いることが
できる。このとき、電子注入電極側から電子親和力の値
の大きい化合物の順に積層することが好ましい。このよ
うな積層順については電子注入輸送層を2層以上設ける
ときも同様である。
【0066】基板材料としては、基板側から発光した光
を取り出す構成の場合、ガラスや石英、樹脂等の透明な
いし半透明材料を用いる。また、基板に色フィルター膜
や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を
用いて発光色をコントロールしてもよい。また、前記逆
積層の場合には、基板は透明でも不透明であってもよ
く、不透明である場合にはセラミックス等を使用しても
よい。
【0067】色変換膜には、液晶ディスプレイ等で用い
られているカラーフィルターを用いれば良いが、有機E
Lの発光する光に合わせてカラーフィルターの特性を調
整し、取り出し効率・色純度を最適化すればよい。
【0068】また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収
するような短波長の外光をカットできるカラーフィルタ
ーを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向
上する。
【0069】また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用
いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0070】蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を
吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させること
で、発光色の色変換を行うものであるが、組成として
は、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成
される。
【0071】蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高
いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いこ
とが望ましい。実際には、レーザー色素などが適してお
り、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン
系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロ等も含
む)ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素系化合物
・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・クマリン系
化合物等を用いればよい。
【0072】バインダーは基本的に蛍光を消光しないよ
うな材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷等
で微細なパターニングが出来るようなものが好ましい。
また、ITOの成膜時にダメージを受けないような材料
が好ましい。
【0073】光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りな
い場合に用いるが、必要の無い場合は用いなくても良
い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しな
いような材料を選べば良い。
【0074】ホール注入輸送層、発光層および電子注入
輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから真
空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた
場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm 以
下の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μm を超
えていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高
くしなければならなくなり、電荷の注入効率も著しく低
下する。
【0075】真空蒸着の条件は特に限定されないが、1
-4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/
sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続し
て各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形
成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げる
ため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低く
したり、ダークスポットの成長・発生を抑えたりするこ
とができる。
【0076】これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場
合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化
合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着する
ことが好ましい。
【0077】本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動
型、パルス駆動型のEL素子として用いられるが、交流
駆動とすることもできる。印加電圧は、通常、2〜30
V 程度とされる。
【0078】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を比較例ととも
に示し、本発明をさらに詳細に説明する。 <実施例1>Siウエハー上にDCスパッタ法にて、A
lLi合金として、Li濃度がLi:4.2at%のサン
プルAと、Li:8.0at%のサンプルBとをそれぞれ
ターゲットとし、300nmの厚さにAlLi合金膜を成
膜した。このときのスパッタ圧力と成膜レートは表1の
ようにした。また、スパッタガスにはArを用い、投入
電力は100W、ターゲットの大きさは4インチ径、基
板とターゲットとの距離は90mmとした。
【0079】
【表1】
【0080】ICPにより膜組成を調べたところ、表1
のようであった。表1から明らかなように、スパッタ圧
力を変化させることで、一つのターゲット組成に対し
て、成膜される電子注入電極のLi濃度を制御できるこ
とが確認された。
【0081】<実施例2>スパッタ法にて作製した厚さ
100nmのパターニングITO透明電極(ホール注入電
極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタ
ノールを用いて超音波洗浄し、次いで煮沸エタノール中
から引き上げて乾燥し、表面をUV/O3洗浄した後、
真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、槽内を1×1
-4Pa以下まで減圧した。4,4’,4”−トリス
(−N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミ
ノ)トリフェニルアミン(以下、m−MTDATA)を
蒸着速度0.2nm/sec 、で40nmの厚さに蒸着し、ホ
ール注入層とし、次いで減圧状態を保ったまま、N,
N’−ジフェニル−N,N’−m−トリル−4,4’−
ジアミノ−1,1’−ビフェニル(以下、TPD)を、
蒸着速度0.2nm/sec で35nmの厚さに蒸着し、ホー
ル輸送層とした。さらに、減圧を保ったまま、Alq3
を蒸着速度0.2nm/sec 、で50nmの厚さに蒸着し
て、発光・電子注入輸送層とした。次いで減圧を保った
まま、このEL素子構造体基板を真空蒸着装置からスパ
ッタ装置に移し、スパッタガスにはArを用い、投入電
力は100W、DCスパッタ法にて、200nmの厚さに
Li濃度が7.3at%のAlLi合金膜を成膜した。ま
た、スパッタ時の圧力1.0Paで、スパッタガスにはA
rを用い、投入電力は100W、ターゲットの大きさは
4インチ径、基板とターゲットの距離は90mmとした。
【0082】得られた有機EL素子に乾燥アルゴン雰囲
気中で直流電圧を印加したところ、最高輝度として、1
4V 、825mA/cm2 で38000cd/mm2 であった。
10mA/cm2 での定電流連続駆動では、初期は6.6V
、560cd/mm2 、輝度の半減時間は650時間で、
その間の駆動電圧の上昇は1.5V であった。また、大
きさが100μm を超えるダークスポットの発生および
成長は、200時間まで認められなかった。結果を表2
にサンプルNo. 4として示す。
【0083】<実施例3>実施例2において、成膜され
るAlLi合金膜のLi濃度を0.81at%,2.2at
%,5.2at%,10.4at%,11.4at%とした他
は実施例2と同様にして、それぞれ電子注入電極を成膜
し、有機EL素子の各サンプルを得た。
【0084】得られた各サンプルについて、定電流密度
で連続駆動し電圧、発光輝度を測定した。発光した光
は、すべて緑色(発光極大波長λmax =530nm)発光
であった。また、輝度半減時間およびその間の駆動電圧
の上昇、100μm を超えるダークスポットの発生およ
び成長時間を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0085】<比較例1>電子注入電極を真空共蒸着に
て形成したMgAg(速度比10:1)とした以外は、
実施例2と同様にして素子を作製し、評価したところ、
最高輝度は15V、500mA/cm2 で18000cd/mm2
であった。10mA/cm2 での定電流連続駆動では、初
期は6.9V 、470cd/mm2 、輝度の半減時間は40
0時間で、その間の駆動電圧の上昇は2.6V であっ
た。また大きさが100μm を超えるダークスポットの
発生および成長が96時間で認められた。結果を表2に
示す。
【0086】<比較例2>電子注入電極を真空共蒸着に
て形成したAlLi(Li濃度28at%)とした以外
は、実施例2と同様にして素子を作製し評価したとこ
ろ、初期は7.4V 、470cd/mm2 、輝度の半減時間
は300時間で、その間の駆動電圧の上昇は3.6V で
あった。また大きさが100μm を超えるダークスポッ
トの発生および成長が48時間で認められた。結果を表
2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】表2から明らかなように、本発明のサンプ
ルは、発光輝度、輝度半減時間、電圧上昇、ダークスポ
ットの発生において、比較例より優れた特性を示してい
る。
【0089】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、有機層界
面での密着性、電子注入効率が良好で、発光特性を向上
させ、有機層へのダメージも少なく、ダークスポットの
発生を抑制し、性能劣化の少ない電子注入電極を有する
有機EL素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機EL素子の構成例を示す概念図である。
【符号の説明】
21 基板 22 ホール注入電極 23 ホール注入・輸送層 24 発光および電子注入輸送層 25 電子注入電極 26 保護層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大久 和寿 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 荒井 三千男 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホール注入電極と電子注入電極と、これ
    らの電極間に1種以上の有機層とを有し、 前記電子注入電極は、スパッタ法で成膜され、かつLi
    を0.4〜14at%含有するAlLi合金である有機E
    L素子。
  2. 【請求項2】 AlLi合金をターゲットとし、 スパッタ法にて請求項1の電子注入電極を成膜する有機
    EL素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記スパッタ法は、成膜ガス圧力を0.
    1〜5Paの範囲で変化させ、 成膜される電子注入電極のLi濃度を0.4〜14at%
    の範囲で変化させる請求項1または2の有機EL素子の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 前記スパッタ法がDCスパッタ法である
    請求項1〜3のいずれかの有機EL素子の製造方法。
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