JP2001118675A - 有機el素子 - Google Patents

有機el素子

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JP2001118675A
JP2001118675A JP29927699A JP29927699A JP2001118675A JP 2001118675 A JP2001118675 A JP 2001118675A JP 29927699 A JP29927699 A JP 29927699A JP 29927699 A JP29927699 A JP 29927699A JP 2001118675 A JP2001118675 A JP 2001118675A
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organic
sealing film
layer
sealing
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Michio Arai
三千男 荒井
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TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 膜内の応力が小さく、ダークスポットなどの
発生を防止し、封止用の特別な構造体を用いることなく
比較的容易に成膜でき、しかも封止効果の高い封止膜を
有する有機EL素子を提供する。 【解決手段】 基板と、少なくともこの基板上に形成さ
れたホール注入電極と、発光機能に関与する有機層と、
電子注入電極とを有し、前記電子注入電極は基板と反対
側に封止膜を有し、この封止膜は窒化ケイ素、炭化ケイ
素、酸化炭化ケイ素または酸化窒化ケイ素のいずれかで
あり、この封止膜中にはさらに燐をP換算で0〜10
(ただし0を含まない)at%含有する構成の有機EL素
子とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機化合物を用い
た有機EL素子に関し、さらに詳細には、発光層に電子
を供給する電子注入電極上に封止膜を設けた有機EL素
子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】有機EL素子は、ホール注入電極上にト
リフェニルジアミン(TPD)などのホール輸送材料を
蒸着により薄膜とし、その上にアルミキノリノール錯体
(Alq3 )などの蛍光物質を発光層として積層し、さ
らにMgなどの仕事関数の小さな金属電極(電子注入電
極)を形成した基本構成を有する素子で、10V前後の
電圧で数100から数10000cd/m2ときわめて高い
輝度が得られることで注目されている。
【0003】ところで、有機EL素子は水分や、腐食性
ガス等により劣化することが知られている。例えば、水
分の影響により、発光層と電極層との間で剥離が生じた
り、構成材料が変質してしまったりして、ダークスポッ
トと称する非発光領域が生じたり、発光面積が縮小した
りして所定の品位の発光が維持できなくなってしまう。
【0004】また、有機EL素子の電子注入電極として
用いられる材料は、発光層や電子注入輸送層等へ電子を
多く注入するものが有効であると考えられている。換言
すれば、仕事関数の小さい材料ほど電子注入電極として
適していると言える。仕事関数の小さい材料としては種
々のものがあるが、有機EL素子の電子注入電極として
用いられるものとしては、例えば特開平2−15595
号公報には、アルカリ金属以外の複数の金属からなり、
かつこれらの金属の少なくとも1種の金属の仕事関数
が、4eV未満である電子注入電極として、例えばMgA
gが開示されている。
【0005】また、仕事関数の小さいものとしてはアル
カリ金属が好ましく、米国特許第3173050号、同
3382394号明細書には、アルカリ金属として、例
えばNaKが記載されている。しかし、アルカリ金属を
用いたものは、活性が高く、化学的に不安定であり、安
全性、信頼性の点でMgAg等を用いた電子注入電極に
比べ劣っている。
【0006】上記のような低仕事関数の金属、合金等を
安定に用いるため、膜封止を行う検討もされている。し
かし、十分な封止を行うためには、ガラス封止等では不
十分なため、高価で手間のかかるテフロンやSiO2
の封止膜を用いなければならなかった。また、このよう
な膜封止を行う場合、電子注入電極が酸化により腐食さ
れるのを防止するため、電子注入電極形成後速やかに行
う必要がある。このため、膜封止専用の装置を用意しな
ければ対応できないという問題があった。
【0007】この問題を解決するための方法として、例
えば、特開平5−36475号公報、同5−89959
号公報、同7−169567号公報等に記載されている
ように、有機EL積層構造体部分を被う気密ケース、封
止層等を基板上に密着固定して外部と遮断する技術が知
られている。
【0008】酸化を防止するための検討としては、例え
ば特開平4−233194号公報に記載されているよう
なMg・AlにAlのキャップ層を設けたものや、電子
注入電極物質よりもさらに仕事関数の低いアルカリ土
類、希土類金属等によるキャップ層を設ける試み等もな
されている。しかし、このキャップ層はダークスポット
の出現を防止することを目的とするもので、主に陰極
(電子注入電極)と有機エレクトロルミネッセンス媒体
界面等での湿分の吸収を行うものであり、有機EL素子
全体を保護する封止膜としては不十分である。
【0009】封止効果の高い封止膜として、窒化ケイ
素、炭化ケイ素等を封止膜材料として用いる検討もなさ
れているが、これらの材料で形成された封止膜は、内部
応力が大きく、電極の剥離等が生じたり、連続駆動によ
りダークスポットと呼ばれる非発光領域が生じ、発光領
域が減少してしまう等といった問題を生じていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、膜内
の応力が小さく、ダークスポットなどの発生を防止し、
封止用の特別な構造体を用いることなく比較的容易に成
膜でき、しかも封止効果の高い封止膜を有する有機EL
素子を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(5)の本発明により達成される。 (1) 基板と、少なくともこの基板上に形成されたホ
ール注入電極と、発光機能に関与する有機層と、電子注
入電極とを有し、前記電子注入電極は基板と反対側に封
止膜を有し、この封止膜は窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸
化炭化ケイ素または酸化窒化ケイ素のいずれかを主成分
とし、この封止膜中にはさらに燐をP換算で0〜10
(ただし0を含まない)at%含有する有機EL素子。 (2) 前記封止膜は、燐をP換算で0.01〜10at
%含有する上記(1)の有機EL素子。 (3) さらに水素を30at%以下含有する上記(1)
または(2)の有機EL素子。 (4) 前記封止膜は、プラズマCVD法により形成さ
れている上記(1)〜(3)のいずれかの有機EL素
子。 (5) さらに樹脂封止構造体を有する上記(1)〜
(4)のいずれかの有機EL素子。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の有機EL素子は、基板
と、少なくともこの基板上に形成されたホール注入電極
と、発光機能に関与する有機層と、電子注入電極とを有
し、前記電子注入電極は基板と反対側に封止膜を有し、
この封止膜は窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化炭化ケイ素
または酸化窒化ケイ素のいずれかであり、この封止膜中
にはさらに燐をP換算で0at%を超え10at%以下含有
するものである。
【0013】このように、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸
化炭化ケイ素または酸化窒化ケイ素のいずれかからな
り、燐をP換算で0at%を超え10at%以下含有する封
止膜を電子注入電極上に形成することにより、高い封止
効果が得られるとともに、内部応力の増大も抑制され
て、剥離等の不良が生じ難くなる。そして、ガラス封止
板を用いなくても高い封止効果が得られるため、樹脂等
の封止剤を用いることができ、応用範囲が広がる。
【0014】すなわち、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化
炭化ケイ素または酸化窒化ケイ素は緻密な膜を形成する
ことから封止膜としては優れているが、膜内の応力が大
きく、封止膜自身や、封止膜が形成されている電極と有
機層界面との間などで剥離現象を生じやすい。特に、時
間の経過とともに剥離現象が進行し、シュリンク率が増
大する。そこで、炭化ケイ素膜中に酸素を導入すること
で、緻密で封止効果に優れた膜特性を維持しつつ、内部
応力を緩和して、剥離、シュリンクを抑制する。
【0015】封止膜は、窒化ケイ素(SiN)、炭化ケ
イ素(SiC)、酸化炭化ケイ素(SiOC)または酸
化窒化ケイ素(SiON)のいずれかを主成分とし、こ
れに燐をP換算で0at%を超え10at%以下含有するも
のである。封止膜中における、窒化ケイ素(SiN)、
炭化ケイ素(SiC)、酸化炭化ケイ素(SiOC)ま
たは酸化窒化ケイ素(SiON)は、化学量論組成で存
在する必要はなく、窒化ケイ素(SiN)、炭化ケイ素
(SiC)、酸化炭化ケイ素(SiOC)または酸化窒
化ケイ素(SiON)炭化ケイ素膜形成時にP源となる
ガスを導入して、上記組成範囲に形成されたものであれ
ばよい。
【0016】具体的には、ケイ素源として、ターゲット
であればSiを用い、原料ガスとしてはシラン、ジシラ
ン、TEOS(テトラエトキシシラン)などを用いる。
酸素源としてO2等を、窒素源としては、N2、NH3
を、炭素および酸素源としては、CO2 ,CO等を、酸
素炭素源としてCO2 ,CO等を、酸素窒素源として、
NO、NO2 、N2O等を用いる。そして、この炭化ケ
イ素膜の成膜原料導入時に、さらに酸素源としてO2
を導入する。また、ケイ素源、炭素源、酸素源としてT
EOS(テトラエトキシシラン)を導入するとよい。こ
れにより、ステップカバレージがさらに良好になる。
【0017】封止膜の主成分の具体的な組成としては、 SiNx と表したとき、 x=0.1〜1.2 であり、SiCy と表したとき、 y=0.1〜1.2 であり、 SiOaj と表したとき、 a=0.1〜1.2 j=0.1〜1.2 であり、 SiObk と表したとき、 b=0.1〜1.2 k=0.1〜1.2 であることが好ましい。これらの窒化物、炭化物、酸化
窒化物、酸化炭化物の存在は、SIMS等により確認す
ることができる。
【0018】本発明の封止膜は、上記主成分に加えて燐
をP換算で、0〜10(ただし0を含まない)at%、好
ましくは0.01〜10at%、特に0.1〜5at%含有
する。燐を含有することにより封止膜中の応力が緩和さ
れる。燐は、下記のCVD法、あるいはスパッタ法にお
いても燐源となる原料ガスを用いることで膜中に混入さ
せることができる。
【0019】封止膜にはさらに水素を好ましくは30at
%以下、より好ましくは5〜15at%含有していてもよ
い。水素を含有することにより封止膜中の応力が緩和さ
れる。水素は、下記のCVD方を用いる際に膜中に混入
されるが、スパッタ法においても水素ガス、あるいは水
素を含有するガスを用いることで膜中に混入させること
ができる。
【0020】成膜方法としては、プラズマCVD法、ス
パッタ法等を用いることができるが、特にプラズマCV
D法が好ましい。CVD法を用いることにより、ステッ
プカバレージがさらに良好となり、封止効果をより高め
ることができる。
【0021】プラズマCVD法を用いた場合に成膜条件
としては、 成膜時の圧力:10〜100Pa、 投入電力(RF:13.56MHz):50〜500W、 成膜時の温度:80〜150℃ 程度である。
【0022】成膜される封止膜の膜厚としては、100
nm〜1μm 、特に200nm〜500nm程度が好ましい。
封止膜内の内部応力は、通常引張応力であり、好ましく
は5×109 dyn/cm2 以下、特に5×108 dyn/cm2
以下が好ましい。なお、その下限は、引張と圧縮応力の
均衡点の0である。
【0023】本発明における電子注入電極は、仕事関数
が4eV以下の金属、合金または金属間化合物から構成さ
れる。材料の仕事関数が4eVを超えると、電子の注入効
率が低下し、ひいては発光効率も低下する。仕事関数が
4eV以下の電子注入電極膜の構成金属としては、例え
ば、Li、Na、K等のアルカリ金属、Mg、Ca、S
r、Ba等のアルカリ土類金属、La、Ce等の希土類
金属や、Al、In、Ag、Sn、Zn、Zr等が挙げ
られる。仕事関数が4eV以下の金属を含有する電子注入
電極の構成合金としては、例えばAg・Mg(Ag:1
〜20at%)、Al・Li(Li:0.5〜12at
%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)、Al・C
a(Ca:5〜20at%)等が挙げられる。これらは単
独で、あるいは2種以上の組み合わせとして存在しても
よく、これらを2種以上組み合わせた場合の混合比は任
意である。
【0024】この電子注入電極は蒸着法等によっても形
成できるが、好ましくはスパッタ法、さらにはDCスパ
ッタ法により形成することが好ましい。DCスパッタ装
置の電力としては、好ましくは0.1〜10W/cm2
特に0.5〜7W/cm2の範囲が好ましい。成膜レート
としては、好ましくは0.1〜100nm/min 、特に1
〜30nm/min が好ましい。
【0025】スパッタガスとしては特に限定するもので
はなく、Ar、He、Ne、Kr、Xe等の不活性ガ
ス、あるいはこれらの混合ガスを用いればよい。このよ
うなスパッタガスのスパッタ時における圧力としては、
通常0.1〜20Pa程度でよい。
【0026】このような電子注入電極の厚さは、電子注
入を十分行える一定以上の厚さとすればよく、1nm以
上、好ましくは3nm以上とすればよい。また、その上限
値には特に制限はないが、通常膜厚は3〜500nm程度
とすればよい。
【0027】本発明の有機EL素子は、電子注入電極
上、つまり有機層と反対側に補助電極層を設けてもよ
い。この補助電極は、電子注入電極の膜抵抗が高い場
合、あるいは最低限電子注入機能を有する程度の膜厚と
した場合等にはこれを補うため、また、単純マトリクス
の配線電極として用いた場合、電圧降下が少なく、輝度
ムラが防止でき、さらに、TFT等を用いたアクティブ
マトリクスタイプのディスプレイに応用した場合、高速
化が可能である。
【0028】補助電極が必要な電子注入電極の膜抵抗
は、ディスプレイの大きさや補助電極の材質にもよる
が、通常0.2Ω/□以上、特に0.5Ω/□以上とな
った場合であり、その上限は特に規制されるものではな
いが通常数100Ω/□程度である。また、そのような
電子注入電極の厚みとしては、ディスプレイの大きさや
補助電極の材質にもよるが、通常300nm以下、特に2
00nm以下となった場合に必要になってくる。
【0029】補助電極を配線電極として機能させる場
合、好ましい比抵抗としては500μΩ・cm以下、より
好ましくは50μΩ・cm、特に30μΩ・cm以下、さら
には10μΩ・cm以下である。その下限値としては特に
制限されるものではないが、Alの比抵抗である3〜4
μΩ・cm程度が挙げられる。このような比抵抗を有する
補助電極としては、AlまたはAlおよび遷移金属の合
金が好ましく挙げられる。この場合、Al・遷移金属合
金の遷移金属の含有量は、好ましくは5at%、より好ま
しくは2at%、特に1at%以下が好ましく、Al単体を
用いたものが最も好ましい。また、Al補助電極と組み
合わせる電子注入電極としては、特に限定されるもので
はないが、Al・Li合金が好ましい。
【0030】補助電極の厚さは、電子注入効率を確保
し、水分や酸素あるいは有機溶媒の進入を防止するた
め、一定以上の厚さとすればよく、好ましくは50nm以
上、さらに100nm以上、特に100〜1000nmの範
囲が好ましい。補助電極層が薄すぎると、所望の効果が
得られず、また、補助電極層の段差被覆性が低くなって
しまい、端子電極との接続が十分ではなくなる。一方、
補助電極層が厚すぎると、補助電極層の応力が大きくな
るため、ダークスポットの成長速度が高くなってしま
う。なお、配線電極として機能させる場合の厚さは、電
子注入電極の膜厚が薄いために膜抵抗が高く、これを補
う場合には、通常100〜500nm 程度、その他の配
線電極として機能される場合には100〜300nm程度
である。
【0031】このような封止膜の厚さは、水分や酸素あ
るいは有機溶媒の進入を防止するため、一定以上の厚さ
とすればよく、好ましくは5nm以上、さらに5〜200
nm、特に10〜100nmの範囲が好ましい。
【0032】電子注入電極、および必要により補助電極
とを併せた全体の厚さとしては、特に制限はないが、通
常100〜1000nm程度とすればよい。
【0033】スパッタ装置は、DCスパッタ装置が好ま
しい。また、スパッタガスとしては特に限定するもので
はなく、Ar、He、Ne、Kr、Xe等の不活性ガ
ス、あるいはこれらの混合ガスを用いればよい。このよ
うなスパッタガス、反応性ガスのスパッタ時における流
量は、好ましくは1〜20sccm、より好ましくは1〜1
0sccm、特に2〜5sccmが好ましい。その他のスパッタ
条件は、上記の電子注入電極の場合と同様である。
【0034】本発明で製造される有機EL素子は、基板
上にホール注入電極と、その上に電子注入電極を有する
これらの電極に挟まれて、それぞれ少なくとも1層の電
荷注入輸送層および発光層を有し、さらに最上層として
封止膜を有する。なお、電荷注入輸送層は省略可能であ
る。
【0035】本発明により製造される有機EL発光素子
の構成例を第1図に示す。第1図に示されるEL素子
は、基板21上に、ホール注入電極22、ホール注入輸
送層23、発光および電子注入輸送層24、電子注入電
極25、封止膜26を順次有する。また、必要により電
子注入電極25上に補助電極を有していてもよいし、電
子注入輸送層を別途設けてもよい。
【0036】本発明の有機EL素子は、図示例に限ら
ず、種々の構成とすることができ、例えば発光層を単独
で設け、この発光層と電子注入電極との間に電子注入輸
送層を介在させた構造とすることもできる。また、必要
に応じ、ホール注入・輸送層と発光層とを混合しても良
い。
【0037】電子注入電極や封止膜は前述のように成膜
し、発光層等の有機物層は真空蒸着等により、ホール注
入電極は蒸着やスパッタ等により成膜することができる
が、これらの膜のそれぞれは、必要に応じてマスク蒸着
または膜形成後にエッチングなどの方法によってパター
ニングでき、これによって、所望の発光パターンを得る
ことができる。さらには、基板が薄膜トランジスタ(T
FT)であって、そのパターンに応じて各膜を形成し、
そのまま表示および駆動パターンとすることもできる。
【0038】ホール注入電極としては、好ましくは発光
した光の透過率が50%以上、特に60%以上となるよ
うな材料および厚さを決定することが好ましい。具体的
には、酸化物透明導電薄膜が好ましく、例えば、錫ドー
プ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウ
ム(IZO)、酸化インジウム(In23)、酸化スズ
(SnO2)および酸化亜鉛(ZnO)のいずれかを主
組成としたものが好ましい。これらの酸化物はその化学
量論組成から多少偏倚していてもよい。ITOでは、通
常In23とSnO2とを化学量論組成で含有するが、
酸素量は多少これから偏倚していてもよい。In23
対しSnO2の混合比は、1〜20wt%が好ましく、さ
らには5〜12wt%が好ましい。In23に対しZnO
の混合比は、12〜32wt%が好ましい。
【0039】ホール注入電極を成膜するにはスパッタ法
が好ましい。スパッタ法としてはRF電源を用いた高周
波スパッタ法等も可能であるが、成膜するホール注入電
極の膜物性の制御のし易さや、成膜面の平滑度等を考慮
するとDCスパッタ法を用いることが好ましい。
【0040】DCスパッタ装置の電力としては、好まし
くは0.1〜10W/cm2、特に0.5〜7W/cm2の範
囲である。また、成膜レートはマグネットなどの装置の
条件にもよるが、好ましくは5〜100nm/min 、特に
10〜50nm/min の範囲が好ましい。スパッタ時の成
膜条件としては、電極形成で通常使用されているガス
圧、例えば、0.1〜0.5Pa、基板−ターゲット間距
離4〜10cmの範囲とすればよい。
【0041】スパッタガスは、通常のスパッタ装置に使
用される不活性ガスや、反応性スパッタではこれに加え
てN2,H2,O2,C24,NH3等の反応性ガスが使用
可能であるが、好ましくはAr、Kr、Xeのいずれ
か、あるいはこれらの少なくとも1種以上のガスを含む
混合ガスを用いることが好ましい。これらのガスは不活
性ガスであり、かつ、比較的原子量が大きいため好まし
く、特にAr、Kr、Xe単体が好ましい。Ar、K
r、Xeガスを用いることにより、スパッタされた原子
が基板まで到達する途中、上記ガスと衝突を繰り返し、
運動エネルギーを減少させて、基板に到着する。この事
からスパッタされた原子の持つ運動エネルギーが有機E
L構造体に与える物理的ダメージが少なくなる。また、
Ar、Kr、Xeの少なくとも1種以上のガスを含む混
合ガスを用いても良く、この様な混合ガスを用いる場
合、Ar、Kr、Xeの分圧の合計は50%以上として
主スパッタガスとして用いる。このようにAr、Kr、
Xeの少なくとも1種と任意のガスを組み合わせた混合
ガスを用いることにより、本発明の効果を維持したま
ま、反応性スパッタを行うこともできる。
【0042】本発明の封止膜により十分な保護、封止効
果が得られるが、さらに封止膜上に必要に応じて保護膜
を形成してもよい。保護膜はSiOX等の無機材料、テ
フロン等の有機材料等を用いて形成することができる。
保護膜は透明でも不透明であってもよく、保護膜の厚さ
は50〜1200nm程度とする。保護膜は前記した反応
性スパッタ法の他に、一般的なスパッタ法、蒸着法等に
より形成すればよい。
【0043】さらに、素子の有機層や電極の酸化を防ぐ
ために素子上に封止板ないし封止層を設けることが好ま
しい。封止板ないし封止層は、湿気の侵入を防ぐために
市販の低吸湿性の光硬化性接着剤、エポキシ系接着剤、
シリコーン系接着剤、架橋エチレン−酢酸ビニル共重合
体接着剤シート等の接着性樹脂層を用いて、アクリル、
塩化ビニール等の樹脂板、ガラス板等の封止板を接着し
密封する。特に、本発明の封止膜を有する有機EL素子
は、ガラス板以外に、上記のような樹脂板を用いること
が可能であり、さらには塩化ビニール、PET(ポリエ
チレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、ポ
リイミド等の樹脂フィルムも用いることができる。この
ような薄膜フィルムを用いることで、有機EL素子を屈
曲させて配置したり、素子を応用した表示装置をさらに
薄型にすることができ、有機EL素子の応用範囲が広が
る。
【0044】次に、本発明のEL素子に設けられる有機
物層について述べる。この有機層には発光層が含まれ
る。発光層は、少なくとも発光機能に関与する1種類、
または2種類以上の有機化合物薄膜の積層膜からなる。
【0045】発光層は、ホール(正孔)および電子の注
入機能、それらの輸送機能、ホールと電子の再結合によ
り励起子を生成させる機能を有する。発光層には、比較
的電子的にニュートラルな化合物を用いることで、電子
とホールを容易かつバランスよく注入・輸送することが
できる。
【0046】発光層は、必要により、狭義の発光層の
他、さらにホール注入輸送層、電子注入輸送層等を有し
ていても良い。
【0047】ホール注入輸送層は、ホール注入電極から
のホールの注入を容易にする機能、ホールを安定に輸送
する機能および電子を妨げる機能を有するものであり、
電子注入輸送層は、電子注入電極からの電子の注入を容
易にする機能、電子を安定に輸送する機能およびホール
を妨げる機能を有するものである。これらの層は、発光
層に注入されるホールや電子を増大・閉じこめさせ、再
結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。
【0048】発光層の厚さ、ホール注入輸送層の厚さお
よび電子注入輸送層の厚さは、特に制限されるものでは
なく、形成方法によっても異なるが、通常5〜500nm
程度、特に10〜300nmとすることが好ましい。
【0049】ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入輸
送層の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光
層の厚さと同程度または1/10〜10倍程度とすれば
よい。ホール/電子の注入層と輸送層とを分ける場合
は、注入層は1nm以上、輸送層は1nm以上とするのが好
ましい。このときの注入層、輸送層の厚さの上限は、通
常、注入層で500nm程度、輸送層で500nm程度であ
る。このような膜厚については、注入輸送層を2層設け
るときも同じである。
【0050】有機EL素子の発光層には、発光機能を有
する化合物である蛍光性物質を含有させる。このような
蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−26469
2号公報に開示されているような化合物、例えばキナク
リドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物から選択
される少なくとも1種が挙げられる。また、トリス(8
−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノールま
たはその誘導体を配位子とする金属錯体色素などのキノ
リン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アントラセ
ン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体
等が挙げられる。さらには、特開平8−12600号公
報(特願平6−110569号)に記載のフェニルアン
トラセン誘導体、特開平8−12969号公報(特願平
6−114456号)に記載のテトラアリールエテン誘
導体等を用いることができる。
【0051】また、それ自体で発光が可能なホスト物質
と組み合わせて使用することも好ましく、ドーパントと
しての使用も好ましい。このような場合の発光層におけ
る化合物の含有量は0.01〜10体積% 、さらには
0.1〜5体積% であることが好ましい。ホスト物質と
組み合わせて使用することによって、ホスト物質の発光
波長特性を変化させることができ、長波長に移行した発
光が可能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向
上する。
【0052】ホスト物質としては、キノリノラト錯体が
好ましく、さらには8−キノリノールまたはその誘導体
を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このよう
なアルミニウム錯体としては、特開昭63−26469
2号、特開平3−255190号、特開平5−7077
3号、特開平5−258859号、特開平6−2158
74号等に開示されているものを挙げることができる。
【0053】具体的には、まず、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネ
シウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜
鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、
トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−
8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−
キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キ
ノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−
8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜
鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メ
タン]等がある。
【0054】また、8−キノリノールまたはその誘導体
のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であって
もよく、このようなものとしては、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III)
、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−
クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(メタークレゾラト)アルミニウム
(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ
−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル
−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノ
ラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノ
ラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キ
ノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメ
チルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラ
ト)(2,4,6−トリフェニルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,
3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナ
フトラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)
(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,
4−ジメチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8
−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−エチ
ル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キ
ノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウ
ム(III) 、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリ
ノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノ
リノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III) 等が
ある。
【0055】このほか、ビス(2−メチル−8−キノリ
ノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス
(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム
(III) −μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キ
ノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(4−エチル−
2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −
μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノ
リノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4
−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オ
キソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(5−シアノ−2−メチル−
8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−
ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−5−トリフルオ
ロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ
−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル
−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 等であっても
よい。
【0056】このほかのホスト物質としては、特開平8
−12600号公報に記載のフェニルアントラセン誘導
体や特開平8−12969号公報に記載のテトラアリー
ルエテン誘導体なども好ましい。
【0057】発光層は電子輸送層を兼ねたものであって
もよく、このような場合はトリス(8−キノリノラト)
アルミニウム等を使用することが好ましい。これらの蛍
光性物質を蒸着すればよい。
【0058】また、発光層は、必要に応じて、少なくと
も1種のホール注入輸送性化合物と少なくとも1種の電
子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ましく、
さらにはこの混合層中にドーパントを含有させることが
好ましい。このような混合層における化合物の含有量
は、0.01〜20体積% 、さらには0.1〜15体積
% とすることが好ましい。
【0059】混合層では、キャリアのホッピング伝導パ
スができるため、各キャリアは極性的に有利な物質中を
移動し、逆の極性のキャリア注入は起こりにくくなるた
め、有機化合物がダメージを受けにくくなり、素子寿命
がのびるという利点がある。また、前述のドーパントを
このような混合層に含有させることにより、混合層自体
のもつ発光波長特性を変化させることができ、発光波長
を長波長に移行させることができるとともに、発光強度
を高め、素子の安定性を向上させることもできる。
【0060】混合層に用いられるホール注入輸送性化合
物および電子注入輸送性化合物は、各々、後述のホール
注入輸送性化合物および電子注入輸送性化合物の中から
選択すればよい。
【0061】電子注入輸送性の化合物としては、キノリ
ン誘導体、さらには8−キノリノールないしその誘導体
を配位子とする金属錯体、特にトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム(Alq3 )を用いることが好まし
い。また、上記のフェニルアントラセン誘導体、テトラ
アリールエテン誘導体を用いるのも好ましい。
【0062】ホール注入輸送層用の化合物としては、強
い蛍光を持ったアミン誘導体、例えばトリフェニルジア
ミン誘導体、さらにはスチリルアミン誘導体、芳香族縮
合環を持つアミン誘導体を用いるのが好ましい。
【0063】この場合の混合比は、それぞれのキャリア
移動度とキャリア濃度によるが、一般的には、ホール注
入輸送性化合物/電子注入輸送性化合物の重量比が、1
/99〜99/1、さらに好ましくは10/90〜90
/10、特に好ましくは20/80〜80/20程度と
なるようにすることが好ましい。
【0064】また、混合層の厚さは、分子層一層に相当
する厚み以上で、有機化合物層の膜厚未満とすることが
好ましい。具体的には1〜100nmとすることが好まし
く、さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすること
が好ましい。
【0065】また、混合層の形成方法としては、異なる
蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸
発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同
じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもでき
る。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ま
しいが、場合によっては、化合物が島状に存在するもの
であってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質
を蒸着するか、あるいは、樹脂バインダー中に分散させ
てコーティングすることにより、発光層を所定の厚さに
形成する。
【0066】ホール注入輸送性化合物としては、例え
ば、特開昭63−295695号公報、特開平2−19
1694号公報、特開平3−792号公報、特開平5−
234681号公報、特開平5−239455号公報、
特開平5−299174号公報、特開平7−12622
5号公報、特開平7−126226号公報、特開平8−
100172号公報、EP0650955A1等に記載
されている各種有機化合物を用いることができる。例え
ば、テトラアリールベンジシン化合物(トリアリールジ
アミンないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族
三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、
トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を
有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等であ
る。これらの化合物は、1種のみを用いても、2種以上
を併用してもよい。2種以上を併用するときは、別層に
して積層したり、混合したりすればよい。
【0067】電子注入輸送性化合物は、トリス(8−キ
ノリノラト)アルミニウム(Alq3 )等の8−キノリ
ノールまたはその誘導体を配位子とする有機金属錯体な
どのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレ
ン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキ
サリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フ
ルオレン誘導体等を用いることができる。
【0068】発光層およびホール注入輸送層、電子注入
輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから、
真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用い
た場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.2μm
、特に0.1μm 以下の均質な薄膜が得られる。結晶
粒径が0.2μm 、特に0.1μm を超えていると、不
均一な発光となり、素子の駆動電圧を高くしなければな
らなくなり、電荷の注入効率も著しく低下する。
【0069】真空蒸着の条件は特に限定されないが、1
-4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/
sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続し
て各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形
成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げる
ため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低く
したり、ダークスポットの発生・成長を抑制したりする
ことができる。
【0070】これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場
合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化
合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着する
ことが好ましい。
【0071】基板材料としては、基板側から発光した光
を取り出す構成の場合、ガラスや石英、樹脂等の透明な
いし半透明材料を用いる。また、基板に色フィルター膜
や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を
用いて発光色をコントロールしてもよい。また、前記逆
積層の場合には、基板は透明でも不透明であってもよ
く、不透明である場合にはセラミックス等を使用しても
よい。
【0072】カラーフィルター膜には、液晶ディスプレ
イ等で用いられているカラーフィルターを用いれば良い
が、有機ELの発光する光に合わせてカラーフィルター
の特性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すれば
よい。
【0073】また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収
するような短波長の外光をカットできるカラーフィルタ
ーを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向
上する。
【0074】また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用
いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0075】蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を
吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させること
で、発光色の色変換を行うものであるが、組成として
は、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成
される。
【0076】蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高
いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いこ
とが望ましい。実際には、レーザー色素などが適してお
り、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン
系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロ等も含
む)ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素系化合物
・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・クマリン系
化合物等を用いればよい。
【0077】バインダーは基本的に蛍光を消光しないよ
うな材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷等
で微細なパターニングが出来るようなものが好ましい。
また、ITOの成膜時にダメージを受けないような材料
が好ましい。
【0078】光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りな
い場合に用いるが、必要の無い場合は用いなくても良
い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しな
いような材料を選べば良い。
【0079】本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動
型のEL素子として用いられるが、交流駆動またはパル
ス駆動とすることもできる。印加電圧は、通常、2〜2
0V程度とされる。
【0080】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を比較例ととも
に示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0081】<実施例1>ガラス基板としてコーニング
社製商品名7059基板を中性洗剤を用いてスクラブ洗
浄した。
【0082】この基板上をスパッタ装置の基板ホルダー
に固定して、槽内を減圧した。次いで、ITOターゲッ
トを用いDCマグネトロンスパッタリング法により、膜
厚100nmのITOホール注入電極を形成した。
【0083】所望にパターニングされたITO基板を、
中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄
し、煮沸エタノール中から引き上げて乾燥した。次い
で、表面をUV/O3 洗浄した後、真空蒸着装置の基板
ホルダーに固定して、槽内を1×10-4Pa以下まで減圧
した。
【0084】次いで、蒸着法により、4,4’,4”−
トリス(−N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル
アミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)を蒸
着速度0.1nm/secで55nmの厚さに蒸着してホール
注入層を形成し、N,N’−ジフェニル−N,N’−m
−トリル−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル
(TPD)を蒸着速度0.1nm/secで20nmの厚さに
蒸着してホール輸送層を形成した。
【0085】減圧を保ったまま、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム(Alq3 )を、蒸着速度0.1nm
/secとして50nmの厚さに蒸着し、発光層とした。
【0086】さらに、減圧を保ったまま、スパッタ装置
に移し、スパッタ法にてAlLi(Li:6at%)を1
nmの厚さに成膜し、続けてAlを200nmの厚さに成膜
して電子注入電極とした。
【0087】次いで、減圧状態を保ったまま、プラズマ
CVD装置に移し、SiN封止膜を、100nmの膜厚に
成膜した。このときの成膜条件としては、 N2 :15SCCM SiH4 :10SCCM PH3 :0.5SCCM Ar:100SCCM 成膜温度:100℃ 成膜時の圧力:50Pa 投入電力:RF100W とした。成膜されたサンプル1の封止膜の組成は、Si
0.8 にPが1at%含有するものであった。
【0088】最後にガラス封止板を配置することなく有
機EL素子を得た。
【0089】さらに比較サンプル1として、封止膜形成
時の条件を以下のものとした以外は上記と同様にして封
止膜を形成した素子(比較サンプル)も作製した。 N2 :15SCCM SiH4 :10SCCM Ar:100SCCM 成膜温度:100℃ 成膜時の圧力:50Pa 投入電力:RF100W 成膜された比較サンプルの膜組成は、SiN0.9 であっ
た。
【0090】得られた有機EL素子を、大気中85℃の
条件下、200時間保存した後、10mA/cm2 の一定電
流密度で駆動し、ダークスポットの発生、およびシュリ
ンクについて評価した。
【0091】その結果、本発明のサンプル1は、ダーク
スポットの発生、シュリンクのいずれも発見できなかっ
たが、比較サンプル1は、60μm 以上のシュリンクが
確認された。
【0092】<実施例2>実施例1において封止膜の成
膜条件として、 SiH4 :20SCCM CH4 :15SCCM PH3 :1SCCM Ar:100SCCM 成膜温度:100℃ 成膜時の圧力:50Pa 投入電力:RF100W とした以外は実施例1と同様にして有機EL素子を得
た。成膜されたサンプル2の封止膜の組成は、SiC
0.7 にPが2at%含有するものであった。
【0093】さらに比較サンプル2として、封止膜形成
時の条件を以下のものとした以外は上記と同様にして封
止膜を形成した素子(比較サンプル)も作製した。 SiH4 :20SCCM CH4 :15SCCM Ar:100SCCM 成膜温度:100℃ 成膜時の圧力:50Pa 投入電力:RF100W 成膜された比較サンプルの膜組成は、SiC0.75 であ
った。
【0094】得られた有機EL素子を、大気中85℃の
条件下、200時間保存した後、10mA/cm2 の一定電
流密度で駆動し、ダークスポットの発生、およびシュリ
ンクについて評価した。
【0095】その結果、本発明のサンプル2は、ダーク
スポットの発生、シュリンクのいずれも発見できなかっ
たが、比較サンプル2は、50μm 以上のシュリンクが
確認された。
【0096】<実施例3>実施例1において封止膜とし
て、SiOC封止膜を、100nmの膜厚に成膜した。こ
のときの成膜条件としては、 TEOS:10SCCM P(OCH34 :1SCCM Ar:100SCCM 成膜温度:100℃ 成膜時の圧力:50Pa 投入電力:RF100W とした。成膜されたサンプル3の封止膜の組成は、Si
0.80.4 にPが2at%含有するものであった。
【0097】さらに比較サンプル3として、封止膜形成
時の条件を以下のものとした以外は上記と同様にして封
止膜を形成した素子(比較サンプル)も作製した。 TEOS:10SCCM Ar:100SCCM 成膜温度:100℃ 成膜時の圧力:50Pa 投入電力:RF100W 成膜された比較サンプルの膜組成は、SiO0.80.4
であった。
【0098】得られた有機EL素子を、大気中85℃の
条件下、200時間保存した後、10mA/cm2 の一定電
流密度で駆動し、ダークスポットの発生、およびシュリ
ンクについて評価した。
【0099】その結果、本発明のサンプル3は、ダーク
スポットの発生、シュリンクのいずれも発見できなかっ
たが、比較サンプルは、60μm 以上のシュリンクが確
認された。
【0100】<実施例4>実施例1において、封止膜を
成膜する際にSiON封止膜を、100nmの膜厚に成膜
した。このときの成膜条件としては、 SiH4 :20SCCM N2O :10SCCM N2 :100SCCM PH3 :1SCCM 成膜温度:100℃ 成膜時の圧力:50Pa 投入電力:RF100W とした。上記以外は実施例1と同様にして有機EL素子
を得た。成膜されたサンプル4の封止膜の組成は、Si
0.50.5 であった。また、この封止膜中には水素が
10at%混入されていた。
【0101】さらに比較サンプル4として、封止膜形成
時の条件を以下のものとした以外は上記と同様にして封
止膜を形成した素子(比較サンプル)も作製した。 SiH4 :20SCCM N2O :10SCCM N2 :100SCCM Ar:100SCCM 成膜温度:100℃ 成膜時の圧力:50Pa 投入電力:RF100W
【0102】得られた有機EL素子を、大気中85℃の
条件下、200時間保存した後、10mA/cm2 の一定電
流密度で駆動し、ダークスポットの発生、およびシュリ
ンクについて評価した。
【0103】その結果、本発明のサンプル4は、ダーク
スポットの発生、シュリンクのいずれも発見できなかっ
たが、比較サンプル4は、60μm 以上のシュリンクが
確認された。
【0104】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、膜内の応
力が小さく、ダークスポットなどの発生を防止し、封止
用の特別な構造体を用いることなく比較的容易に成膜で
き、しかも封止効果の高い封止膜を有する有機EL素子
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL素子の基本構成を示した概略
断面図である。
【符号の説明】
21 基板 22 ホール注入電極 23 ホール注入輸送層 24 電子注入発光層 25 電子注入電極 26 封止膜

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板と、少なくともこの基板上に形成さ
    れたホール注入電極と、発光機能に関与する有機層と、
    電子注入電極とを有し、 前記電子注入電極は基板と反対側に封止膜を有し、この
    封止膜は窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化炭化ケイ素また
    は酸化窒化ケイ素のいずれかを主成分とし、 この封止膜中にはさらに燐をP換算で0〜10(ただし
    0を含まない)at%含有する有機EL素子。
  2. 【請求項2】 前記封止膜は、燐をP換算で0.01〜
    10at%含有する請求項1の有機EL素子。
  3. 【請求項3】 さらに水素を30at%以下含有する請求
    項1または2の有機EL素子。
  4. 【請求項4】 前記封止膜は、プラズマCVD法により
    形成されている請求項1〜3のいずれかの有機EL素
    子。
  5. 【請求項5】 さらに樹脂封止構造体を有する請求項1
    〜4のいずれかの有機EL素子。
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