JP2000030870A - 有機el素子 - Google Patents

有機el素子

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JP2000030870A
JP2000030870A JP10214848A JP21484898A JP2000030870A JP 2000030870 A JP2000030870 A JP 2000030870A JP 10214848 A JP10214848 A JP 10214848A JP 21484898 A JP21484898 A JP 21484898A JP 2000030870 A JP2000030870 A JP 2000030870A
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layer
organic
hole injection
electrode
oxide
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JP10214848A
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Michio Arai
三千男 荒井
Etsuo Mihashi
悦央 三橋
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TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 有機材料と無機材料の有するメリットを併せ
持ち、長寿命で、効率が改善され、動作電圧が低く、コ
ントラスト比や視認性を向上させ、低コスト化を実現可
能な有機EL素子を提供する。 【解決手段】 基板1上にホール注入電極2と、電子注
入電極3と、これらの電極間に少なくとも発光機能に関
与する1種以上の有機層5とを有し、前記ホール注入電
極2と前記有機層5との間に無機絶縁性ホール注入層4
を有し、前記無機絶縁性ホール注入層は、シリコンおよ
び/またはゲルマニウムの酸化物および窒化物を主成分
とし、かつ可視光領域の光透過率が20〜70%である
有機EL素子とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機EL(電界発
光)素子に関し、詳しくは、有機化合物の薄膜に電界を
印加して光を放出する素子に用いられる無機/有機接合
構造と、これに加えられた視認性の改善のための構造に
関する。
【0002】
【従来の技術】一般に有機EL素子は、ガラス基板上に
ITOなどの透明電極を形成し、その上に有機アミン系
のホール輸送層、電子導電性を示しかつ強い発光を示す
たとえばAlq3 材からなる有機発光層を積層し、さら
に、MgAgなどの仕事関数の小さい電極を形成した構
造の基本素子としている。
【0003】これまでに報告されている素子構造として
は、ホール注入電極及び電子注入電極の間に1層または
複数層の有機化合物層が挟まれた構造となっており、有
機化合物層としては、2層構造あるいは3層構造があ
る。
【0004】2層構造の例としては、ホール注入電極と
電子注入電極の間にホール輸送層と発光層が形成された
構造または、ホール注入電極と電子注入電極の間に発光
層と電子輸送層が形成された構造がある。3層構造の例
としては、ホール注入電極と電子注入電極の間にホール
輸送層と発光層と電子輸送層とが形成された構造があ
る。また、単一層に全ての役割を持たせた単層構造も高
分子や混合系で報告されている。
【0005】図3および図4に、有機EL素子の代表的
な構造を示す。
【0006】図3では基板11上に設けられたホール注
入電極12と電子注入電極13の間に有機化合物である
ホール輸送層14と発光層15が形成されている。この
場合、発光層15は、電子輸送層の機能も果たしてい
る。
【0007】図4では、基板11上に設けられたホール
注入電極12と電子注入電極13の間に有機化合物であ
るホール輸送層14と発光層15と電子輸送層16が形
成されている。
【0008】このような有機EL素子を用いてディスプ
レイ等を構成する場合、画質の向上を図ることが一つの
大きな課題となる。画質を左右する要素として、発光輝
度、発光波長等、直接発光機能に関わるものの他にコン
トラストや見やすさといった間接的な内容のものがあ
る。コントラストや見やすさを向上させる試みも種々な
されており、防眩フィルターを設けたり、ブラックマト
リクスと称する黒色フィルター層を設けるなどの工夫も
なされている。
【0009】しかしながら、これら防眩フィルターやブ
ラックマトリクス等をディスプレイに取り付けたり、直
接形成したりするのは工程的に困難な作業が伴う。ま
た、これらを用いたディスプレイでもコントラストや見
やすさを向上させるための要請は強く、素子のさらなる
改善が望まれていた。素子単体である程度のコントラス
ト比や見やすさを備えたものであれば、使用目的によっ
ては防眩フィルターやブラックマトリクス等を用いるこ
となくそのまま使用することができ、工程数が減少し、
困難な作業を行うことなくディスプレイを製造すること
ができ、製造コストを削減することができる。
【0010】さらに、これら有機EL素子においては、
共通して、信頼性が問題となっている。すなわち、有機
EL素子は、原理的にホール注入電極と、電子注入電極
とを有し、これら電極間から効率よくホール・電子を注
入輸送するための有機層を必要とする。しかしながら、
これらの材料は、製造時にダメージを受けやすく、電極
との親和性にも問題がある。また、有機薄膜の劣化もL
ED、LDに較べると著しく大きいという問題を有して
いる。
【0011】また、有機材料は比較的高価なものが多
く、低コストの有機EL素子応用製品を提供するため
に、その一部の構成膜を安価な無機材料で置き換えるこ
とのメリットは大きい。
【0012】また、今まで以上に発光効率を改善し、低
駆動電圧で、より消費電流の少ない素子の開発が望まれ
ている。
【0013】このような問題を解決するために、有機材
料と無機半導体材料のそれぞれのメリットを利用する方
法が考えられている。すなわち、有機ホール輸送層を無
機p型半導体に置き換えた有機/無機半導体接合であ
る。このような検討は、特許第2636341号、特開
平2−139893号公報、特開平2−207488号
公報、特開平6−119973号公報で検討されている
が、発光特性や基本素子の信頼性で素子従来の有機EL
を越える特性を得ることが不可能であった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、コン
トラスト比や視認性を向上させ、低コスト化を実現しう
る有機EL素子を提供することである。
【0015】また、有機材料と無機材料の有するメリッ
トを併せ持ち、長寿命で、効率が改善され、動作電圧が
低く、低コストな有機EL素子を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(3)のいずれかの構成により達成される。 (1) 基板上にホール注入電極と、電子注入電極と、
これらの電極間に少なくとも発光機能に関与する1種以
上の有機層とを有し、前記ホール注入電極と前記有機層
との間に無機絶縁性ホール注入層を有し、前記無機絶縁
性ホール注入層は、シリコンおよび/またはゲルマニウ
ムの酸化物、または酸化物および窒化物、または酸化物
および炭化物を主成分とし、かつ可視光領域の光透過率
が20〜70%である有機EL素子。 (2) 前記無機絶縁性ホール注入層は、シリコンおよ
び/またはゲルマニウムの酸化物、または酸化物および
窒化物、または酸化物および炭化物に対して酸化第1鉄
を、FeOに換算して、5〜40 mol%含有する上記
(1)の有機EL素子。 (3) 前記無機絶縁性ホール注入層の膜厚が0.5〜
20nmである上記(1)〜(3)のいずれかの有機EL
素子。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の有機EL素子は、基板上
にホール注入電極と、電子注入電極と、これらの電極間
に少なくとも発光機能に関与する1種以上の有機層とを
有し、前記ホール注入電極と前記有機層との間に無機絶
縁性ホール注入層を有し、前記無機絶縁性ホール注入層
は、シリコンおよび/またはゲルマニウムの酸化物、ま
たは酸化物および窒化物、または酸化物および炭化物を
主成分とし、かつ可視光領域の光透過率が20〜70%
である。
【0018】ここで、光透過率とは、可視光領域、特に
波長400〜700nmにおける光透過率、好ましくは有
機EL素子の発光光の光透過率をいう。
【0019】このように、無機絶縁性ホール注入層を光
透過率が20〜70%、好ましくは30〜60%とする
ことにより、外部から視認可能な領域を黒色ないし暗色
とすることとなり、コントラスト比が向上したり、見や
すくなったりする。光透過率が大きすぎるとコントラス
ト比を向上させる効果が薄れたり、見やすさを向上させ
る効果が得難くなってくる。コントラスト比が小さすぎ
ると、発光を取り出すことが困難になったり、取り出し
効率が極端に低下してくる。
【0020】光透過率を低下させ、上記範囲とする手法
は特に限定されるものではなく、種々の光規制手段を用
いることができる。なかでも、前記無機絶縁性ホール注
入層を黒化させることが好ましく、特に、黒色材料を混
入させて黒化する手法が光り透過率を制御する上でも好
ましい。混入する黒色の材料としては、酸化第1鉄や、
炭素等が挙げられるが、酸化第1鉄(FeO)が好まし
い。酸化第1鉄の混合量としては、上記主成分FeOに
換算して、FeOを5〜40 mol%、特に20〜30 m
ol%含有することが好ましい。
【0021】無機絶縁性ホール注入層は、シリコンおよ
び/またはゲルマニウムの酸化物および窒化物を主成分
とする。また、好ましくは上記主成分を(Si1-x
x)Oyと表したとき、 0≦x≦1 1≦y≦1.99、より好ましくは1.6≦y≦1.9
である。
【0022】また、好ましくは、上記主成分を(Si
1-xGex)Ovzと表したとき、 0≦x≦1 0.2≦v≦1.9、より好ましくは0.7≦v≦1.
3、0.1≦z≦1.1、より好ましくは0.4≦z≦
0.8である。
【0023】v+zは1.1〜1.9、特に1.3〜
1.7が好ましい。
【0024】また、好ましくは、上記主成分を(Si
1-xGex)Owqと表したとき、 0≦x≦1 0.2≦w≦1.9、より好ましくは0.7≦w≦1.
3、0.1≦q≦1.1、より好ましくは0.4≦q≦
0.8である。w+qは1.1〜1.9、特に1.3〜
1.7が好ましい。
【0025】なお、主成分は、酸化物、または酸化物お
よび窒化物であることが好ましい。炭化物を主成分に有
する場合、酸化第1鉄の含有量は少なくてもよい。
【0026】無機絶縁性のホール注入層の組成は、化学
分析で調べればよい。無機絶縁性ホール注入層を酸素プ
ア、窒素プアな上記の組成にし、酸素空位、窒素空位を
生成させることにより、高いホール注入機能、電子注入
機能が得られる。しかも、ホール注入層をこのような組
成とすることにより、ホールと再結合することなく発光
層からホール注入層へ流れる電子が界面でブロックされ
るので、発光効率がさらに向上する。また、電子注入層
をこのような組成とすることにより、電子と再結合する
ことなく発光層から電子注入層へ流れるホールが界面で
ブロックされるので、発光効率がさらに向上する。本発
明の有機EL素子は、従来の有機ホール注入層、有機電
子注入層を有する素子と同等の輝度が得られる。
【0027】また、本発明の有機EL素子は、有機のホ
ール注入層に代えて無機のホール注入層を、有機の電子
注入層に代えて無機の電子注入層を設けることにより、
耐熱性、耐候性が向上し、素子の長寿命化を図れる。ま
た、比較的高価な有機物質ではなく、安価で入手しやす
い無機材料を用いているので、製造が容易となり、製造
コストを低減することができる。さらには、従来問題の
あった無機材料である電極との接続性も良好になる。こ
のため、リーク電流の発生やダークスポットの発生を抑
えることができる。
【0028】無機絶縁性ホール注入層は、通常、アモル
ファス状態である。
【0029】無機絶縁性ホール注入層は、Fe、Ni、
Cu、RuおよびSnのいずれか1種以上を含有しても
よい。中でも、Sn、Ni、Cuを含有することが好ま
しい。含有量は10at%以下、好ましくは0.1〜10
at%、特に0.5〜5at%であることが好ましい。含有
量がこれ以上になるとホール注入機能が低下してくる。
2種以上を併用する場合、合計の含有量は上記の範囲に
することが好ましい。
【0030】無機絶縁性ホール注入層には、他に、H
や、スパッタガスに用いるNe、Ar、Kr、Xe等を
合計10at%以下含有していてもよい。
【0031】なお、ホール注入層および/または電子注
入層全体の平均値としてこのような組成であれば、膜厚
方向に濃度勾配をもっていてもよい。
【0032】無機絶縁性ホール注入層の厚さは、0.5
〜20nm、特に1〜10nmであることが好ましい。ホー
ル注入層がこれより薄くても厚くても、ホール注入が十
分には行われなくて輝度が低下してくる。
【0033】また、このような無機絶縁性ホール注入層
と発光層とを交互に2層以上積層することも好ましい。
このような構成にすることによって、それぞれのホール
注入層で電子がブロッキングされ、電子注入層でホール
がブロッキングされるために、さらに発光効率が向上
し、輝度が向上する。この場合、発光層は、0.2〜1
0nm、特に1nm以下であることが好ましい。ホール注入
層、電子注入層の膜厚は上記の範囲でよい。
【0034】無機絶縁性ホール注入層は、プラズマCV
D法、スパッタ法で成膜することができるが、RFスパ
ッタ法で成膜することが好ましい。
【0035】スパッタ法では、ターゲットとしては、通
常、ホール注入層および電子注入層の組成と同じものを
用いる。成膜されるホール注入層および電子注入層の組
成はターゲットとほぼ同じものが得られる。その際、光
透過率を調整する側に酸化第1鉄(FeO)を所定量混
入する。
【0036】スパッタ時のスパッタガスの圧力は、0.
5〜5Paの範囲が好ましい。また、成膜中にスパッタガ
スの圧力を、前記範囲内で変化させることにより、濃度
勾配を有するホール注入層および電子注入層を容易に得
ることができる。
【0037】スパッタガスには、通常のスパッタ装置に
使用される不活性ガスが使用できる。中でも、Ar、K
r、Xeのいずれか、あるいは、これらの少なくとも1
種以上のガスを含む混合ガスを用いることが好ましい。
【0038】また、反応性スパッタを行ってもよく、反
応性ガスとしては、酸化物を形成する場合、O2 、CO
等が挙げられ、窒化物を形成する場合、N2 、NH3
NO、NO2 、N2 O等が挙げられる。これらの反応性
ガスは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよ
い。
【0039】スパッタ法としては、RF電源を用いた高
周波スパッタ法を用いても、DCスパッタ法を用いても
よいが、RFスパッタ法が好ましい。成膜レートは0.
5〜10nm/minの範囲が好ましい。
【0040】なお、無機絶縁性ホール注入層を積層する
際、有機層等がアッシングされ、ダメージを受ける恐れ
がある場合、無機ホール注入層を2層に分けて積層する
とよい。すなわち、最初に酸素を加えることなく薄く積
層し、さらに酸素を加えて厚く積層する。この場合、酸
素を加えないときの膜厚は全体の1/5〜1/2程度と
する。このとき、酸素を加えないで成膜した酸素欠乏層
は通常の酸素含有量の60〜90%程度が好ましい。ま
た、酸素を加えて成膜した酸化層は通常の酸化物として
の化学量論組成で存在するが、これから多少偏倚してい
てもよい。したがって、酸素欠乏層と酸化層との酸素含
有量の差は、好ましくは10%以上、特に20%以上で
ある。
【0041】スパッタ法としてはRF電源を用いた高周
波スパッタ法や、DCスパッタ法等が使用できるが、特
にRFスパッタが好ましい。スパッタ装置の電力として
は、好ましくはRFスパッタで0.1〜10W/cm2
範囲が好ましく、成膜レートは0.5〜10nm/min 、
特に1〜5nm/min の範囲が好ましい。
【0042】成膜時の基板温度としては、室温(25
℃)〜150℃程度である。
【0043】電子注入電極材料は、低仕事関数の物質が
好ましく、例えば、K、Li、Na、Mg、La、C
e、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Z
n、Zr等の金属元素単体、または安定性を向上させる
ためにそれらを含む2成分、3成分の合金系を用いるこ
とが好ましい。合金系としては、例えばAg・Mg(A
g:0.1〜50at%)、Al・Li(Li:0.01
〜12at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)、
Al・Ca(Ca:0.01〜20at%)等が挙げられ
る。また、低抵抗の半導体たとえばZnO、ITO、G
aNなどが好ましい。電子注入電極層にはこれらの材料
からなる薄膜、それらの2種類以上の多層薄膜が用いら
れる。低抵抗の半導体電極では、電子注入電極として用
いることと同時にホール注入電極としても機能しうるた
め、基本素子構造の多層化が可能となる。
【0044】電子注入電極薄膜の厚さは、電子注入を十
分行える一定以上の厚さとすれば良く、0.1nm以上、
好ましくは0.5nm以上、特に1nm以上とすればよい。
また、その上限値には特に制限はないが、通常膜厚は1
〜500nm程度とすればよい。電子注入電極の上には、
さらに補助電極(保護電極)を設けてもよい。
【0045】補助電極の厚さは、電子注入効率を確保
し、水分や酸素あるいは有機溶媒の進入を防止するた
め、一定以上の厚さとすればよく、好ましくは50nm以
上、さらには100nm以上、特に100〜1000nmの
範囲が好ましい。補助電極層が薄すぎると、その効果が
得られず、また、補助電極層の段差被覆性が低くなって
しまい、端子電極との接続が十分ではなくなる。一方、
補助電極層が厚すぎると、補助電極層の応力が大きくな
るため、ダークスポットの成長速度が速くなってしま
う。
【0046】補助電極は、組み合わせる電子注入電極の
材質により最適な材質を選択して用いればよい。例え
ば、電子注入効率を確保することを重視するのであれば
Al等の低抵抗の金属を用いればよく、封止性を重視す
る場合には、TiN等の金属化合物を用いてもよい。
【0047】電子注入電極と補助電極とを併せた全体の
厚さとしては、特に制限はないが、通常100〜100
0nm程度とすればよい。
【0048】ホール注入電極材料は、無機絶縁性ホール
注入層へホールを効率よく注入することのできるものが
好ましく、仕事関数4.5eV〜5.5eVの物質が好まし
い。具体的には、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、
亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、酸化インジウム
(In23 )、酸化スズ(SnO2 )および酸化亜鉛
(ZnO)のいずれかを主組成としたものが好ましい。
これらの酸化物はその化学量論組成から多少偏倚してい
てもよい。In23 に対するSnO2 の混合比は、1
〜20wt%、さらには5〜12wt%が好ましい。また、
IZOでのIn23 に対するZnO2 の混合比は、通
常、12〜32wt%程度である。
【0049】ホール注入電極は、仕事関数を調整するた
め、酸化シリコン(SiO2 )を含有していてもよい。
酸化シリコン(SiO2 )の含有量は、ITOに対する
SiO2 の mol比で0.5〜10%程度が好ましい。S
iO2 を含有することにより、ITOの仕事関数が増大
する。
【0050】ホール注入電極は、蒸着法等によっても形
成できるが、スパッタ法により形成することが好まし
い。ITO、IZO電極の形成にスパッタ法を用いる場
合、好ましくはIn2 3 にSnO2 やZnOをドープ
したターゲットを用いる。スパッタ法によりITO透明
電極を成膜した場合、蒸着により成膜したものよりも発
光輝度の経時変化が少ない。スパッタ法としてはDCス
パッタが好ましく、その投入電力としては、0.1〜4
W/cm2 の範囲が好ましい。特にDCスパッタ装置の電
力としては、好ましくは0.1〜10W/cm2、特に
0.2〜5W/cm2の範囲が好ましい。また、成膜レー
トは2〜100nm/min 、特に5〜50nm/min の範囲
が好ましい。
【0051】電極の厚さは、50〜500nm、特に50
〜300nmの範囲が好ましい。また、その上限は特に制
限はないが、あまり厚いと透過率の低下や剥離などの心
配が生じる。厚さが薄すぎると、十分な効果が得られ
ず、製造時の膜強度等の点でも問題がある。
【0052】本発明の有機EL素子は、例えば図1に示
すように、基板1/ホール注入電極2/無機絶縁性ホー
ル注入層4/発光層5/電子注入輸送層6/電子注入電
極3とが順次積層された構成とするとよい。また、例え
ば図2に示すように、基板1/電子注入電極3/電子注
入輸送層6/発光層5/無機絶縁性ホール注入層4/ホ
ール注入電極2と、通常の積層構成とは逆に積層された
構成とすることもできる。逆積層とすることにより、基
板と反対側からの光取り出しも容易になる。
【0053】この場合、無機絶縁性ホール注入層は、有
機層へのダメージを防止するため、上記2層構造とすれ
ばよい。図1、2において、ホール注入電極2と電子注
入電極6の間には、駆動電源Eが接続されている。な
お、上記発光層5は、広義の発光層を表し、ホール注入
輸送層、狭義の発光層、ホール輸送層等を含む。
【0054】また、上記発明の素子は、電極層/無機物
層(無機絶縁性ホール注入層)および発光層/電極層/
無機物層および発光層/電極層/無機物層および発光層
/電極層・・・と多段に重ねてもよい。このような素子
構造により、発光色の色調調整や多色化を行うことがで
きる。この場合、光取り出し側の電極近くの無機絶縁性
ホール注入層の光透過率を調整すればよい。
【0055】発光層は、少なくとも発光機能に関与する
1種類、または2種類以上の有機化合物薄膜の積層膜か
らなる。
【0056】発光層は、ホール(正孔)および電子の注
入機能、それらの輸送機能、ホールと電子の再結合によ
り励起子を生成させる機能を有する。発光層には、比較
的電子的にニュートラルな化合物を用いることで、電子
とホールを容易かつバランスよく注入・輸送することが
できる。
【0057】発光層は、必要により、狭義の発光層の
他、さらに有機材料のホール輸送層を設けたり、有機材
料の電子注入輸送層等を有していても良い。
【0058】必要により設けられるホール輸送層は、無
機ホール注入層からのホールの注入を容易にする機能、
ホールを安定に輸送する機能および電子を妨げる機能を
有するものであり、電子注入輸送層は、電子注入電極か
らの電子の注入を容易にする機能、電子を安定に輸送す
る機能およびホールを妨げる機能を有するものである。
これらの層は、発光層に注入されるホールや電子を増大
・閉じこめさせ、再結合領域を最適化させ、発光効率を
改善する。
【0059】発光層の厚さ、ホール輸送層の厚さおよび
電子注入輸送層の厚さは、特に制限されるものではな
く、形成方法によっても異なるが、通常5〜500nm程
度、特に10〜300nmとすることが好ましい。
【0060】ホール輸送層の厚さおよび電子注入輸送層
の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光層の
厚さと同程度または1/10〜10倍程度とすればよ
い。電子の注入層と輸送層とを分ける場合は、注入層は
1nm以上、輸送層は1nm以上とするのが好ましい。この
ときの注入層、輸送層の厚さの上限は、通常、注入層で
500nm程度、輸送層で500nm程度である。このよう
な膜厚については、注入輸送層を2層設けるときも同じ
である。
【0061】有機EL素子の発光層には、発光機能を有
する化合物である蛍光性物質を含有させる。このような
蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−26469
2号公報に開示されているような化合物、例えばキナク
リドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物から選択
される少なくとも1種が挙げられる。また、トリス(8
−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノールま
たはその誘導体を配位子とする金属錯体色素などのキノ
リン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アントラセ
ン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体
等が挙げられる。さらには、特開平8−12600号公
報(特願平6−110569号)に記載のフェニルアン
トラセン誘導体、特開平8−12969号公報(特願平
6−114456号)に記載のテトラアリールエテン誘
導体等を用いることができる。
【0062】また、それ自体で発光が可能なホスト物質
と組み合わせて使用することが好ましく、ドーパントと
しての使用が好ましい。このような場合の発光層におけ
る化合物の含有量は0.01〜10wt% 、さらには0.
1〜5wt% であることが好ましい。ホスト物質と組み合
わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長特
性を変化させることができ、長波長に移行した発光が可
能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上す
る。
【0063】ホスト物質としては、キノリノラト錯体が
好ましく、さらには8−キノリノールまたはその誘導体
を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このよう
なアルミニウム錯体としては、特開昭63−26469
2号、特開平3−255190号、特開平5−7073
3号、特開平5−258859号、特開平6−2158
74号等に開示されているものを挙げることができる。
【0064】具体的には、まず、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネ
シウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜
鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、
トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−
8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−
キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キ
ノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−
8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜
鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メ
タン]等がある。
【0065】また、8−キノリノールまたはその誘導体
のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であって
もよく、このようなものとしては、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III)
、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−
クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(メタークレゾラト)アルミニウム
(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ
−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル
−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノ
ラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノ
ラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キ
ノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメ
チルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラ
ト)(2,4,6−トリフェニルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,
3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナ
フトラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)
(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,
4−ジメチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8
−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−エチ
ル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キ
ノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウ
ム(III) 、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリ
ノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノ
リノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III) 等が
ある。
【0066】このほか、ビス(2−メチル−8−キノリ
ノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス
(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム
(III) −μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キ
ノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(4−エチル−
2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −
μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノ
リノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4
−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オ
キソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(5−シアノ−2−メチル−
8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−
ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−5−トリフルオ
ロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ
−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル
−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 等であっても
よい。
【0067】このほかのホスト物質としては、特開平8
−12600号公報(特願平6−110569号)に記
載のフェニルアントラセン誘導体や特開平8−1296
9号公報(特願平6−114456号)に記載のテトラ
アリールエテン誘導体なども好ましい。
【0068】発光層は電子注入輸送層を兼ねたものであ
ってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム等を使用することが好ましい。これら
の蛍光性物質を蒸着すればよい。
【0069】また、発光層は、必要に応じて、少なくと
も1種のホール注入輸送性化合物と少なくとも1種の電
子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ましく、
さらにはこの混合層中にドーパントを含有させることが
好ましい。このような混合層における化合物の含有量
は、0.01〜20wt% 、さらには0.1〜15wt% と
することが好ましい。
【0070】混合層では、キャリアのホッピング伝導パ
スができるため、各キャリアは極性的に有利な物質中を
移動し、逆の極性のキャリア注入は起こりにくくなるた
め、有機化合物がダメージを受けにくくなり、素子寿命
がのびるという利点がある。また、前述のドーパントを
このような混合層に含有させることにより、混合層自体
のもつ発光波長特性を変化させることができ、発光波長
を長波長に移行させることができるとともに、発光強度
を高め、素子の安定性を向上させることもできる。
【0071】混合層に用いられるホール注入輸送性化合
物および電子注入輸送性化合物は、各々、後述のホール
輸送層用の化合物および電子注入輸送層用の化合物の中
から選択すればよい。なかでも、ホール輸送層用の化合
物としては、強い蛍光を持ったアミン誘導体、例えばホ
ール輸送材料であるトリフェニルジアミン誘導体、さら
にはスチリルアミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン
誘導体を用いるのが好ましい。
【0072】電子注入輸送性の化合物としては、キノリ
ン誘導体、さらには8−キノリノールないしその誘導体
を配位子とする金属錯体、特にトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム(Alq3 )を用いることが好まし
い。また、上記のフェニルアントラセン誘導体、テトラ
アリールエテン誘導体を用いるのも好ましい。
【0073】ホール輸送層用の化合物としては、強い蛍
光を持ったアミン誘導体、例えば上記のホール輸送材料
であるトリフェニルジアミン誘導体、さらにはスチリル
アミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン誘導体を用い
るのが好ましい。
【0074】この場合の混合比は、それぞれのキャリア
移動度とキャリア濃度によるが、一般的には、ホール注
入輸送性化合物の化合物/電子注入輸送機能を有する化
合物の重量比が、1/99〜99/1、さらに好ましく
は10/90〜90/10、特に好ましくは20/80
〜80/20程度となるようにすることが好ましい。
【0075】また、混合層の厚さは、分子層一層に相当
する厚み以上で、有機化合物層の膜厚未満とすることが
好ましい。具体的には1〜85nmとすることが好まし
く、さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすること
が好ましい。
【0076】また、混合層の形成方法としては、異なる
蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸
発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同
じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもでき
る。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ま
しいが、場合によっては、化合物が島状に存在するもの
であってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質
を蒸着するか、あるいは、樹脂バインダー中に分散させ
てコーティングすることにより、発光層を所定の厚さに
形成する。
【0077】ホール輸送層には、例えば、特開昭63−
295695号公報、特開平2−191694号公報、
特開平3−792号公報、特開平5−234681号公
報、特開平5−239455号公報、特開平5−299
174号公報、特開平7−126225号公報、特開平
7−126226号公報、特開平8−100172号公
報、EP0650955A1等に記載されている各種有
機化合物を用いることができる。例えば、テトラアリー
ルベンジシン化合物(トリアリールジアミンないしトリ
フェニルジアミン:TPD)、芳香族三級アミン、ヒド
ラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導
体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジア
ゾール誘導体、ポリチオフェン等である。これらの化合
物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよ
い。2種以上を併用するときは、別層にして積層した
り、混合したりすればよい。
【0078】必要に応じて設けられる電子注入輸送層に
は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq
3 )等の8−キノリノールまたはその誘導体を配位子と
する有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾ
ール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミ
ジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘
導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることがで
きる。電子注入輸送層は発光層を兼ねたものであっても
よく、このような場合はトリス(8−キノリノラト)ア
ルミニウム等を使用することが好ましい。電子注入輸送
層の形成は、発光層と同様に、蒸着等によればよい。
【0079】電子注入輸送層を電子注入層と電子輸送層
とに分けて積層する場合には、電子注入輸送層用の化合
物の中から好ましい組み合わせを選択して用いることが
できる。このとき、電子注入電極側から電子親和力の値
の大きい化合物の順に積層することが好ましい。このよ
うな積層順については、電子注入輸送層を2層以上設け
るときも同様である。
【0080】ホール輸送層、発光層および電子注入輸送
層の形成には、均質な薄膜が形成できることから、真空
蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場
合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm 以下
の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μm を超え
ていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高く
しなければならなくなり、ホールの注入効率も著しく低
下する。
【0081】真空蒸着の条件は特に限定されないが、1
-4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/
sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続し
て各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形
成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げる
ため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低く
したり、ダークスポットの発生・成長を抑制したりする
ことができる。
【0082】これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場
合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化
合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着する
ことが好ましい。
【0083】さらに、素子の有機層や電極の酸化を防ぐ
ために、素子上を封止板等により封止することが好まし
い。封止板は、湿気の侵入を防ぐために、接着性樹脂層
を用いて、封止板を接着し密封する。封止ガスは、A
r、He、N2 等の不活性ガス等が好ましい。また、こ
の封止ガスの水分含有量は、100ppm 以下、より好ま
しくは10ppm 以下、特には1ppm 以下であることが好
ましい。この水分含有量に下限値は特にないが、通常
0.1ppm 程度である。
【0084】封止板の材料としては、好ましくは平板状
であって、ガラスや石英、樹脂等の透明ないし半透明材
料が挙げられるが、特にガラスが好ましい。このような
ガラス材として、コストの面からアルカリガラスが好ま
しいが、この他、ソーダ石灰ガラス、鉛アルカリガラ
ス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカ
ガラス等のガラス組成のものも好ましい。特に、ソーダ
ガラスで、表面処理の無いガラス材が安価に使用でき、
好ましい。封止板としては、ガラス板以外にも、金属
板、プラスチック板等を用いることもできる。
【0085】封止板は、スペーサーを用いて高さを調整
し、所望の高さに保持してもよい。スペーサーの材料と
しては、樹脂ビーズ、シリカビーズ、ガラスビーズ、ガ
ラスファイバー等が挙げられ、特にガラスビーズ等が好
ましい。スペーサーは、通常、粒径の揃った粒状物であ
るが、その形状は特に限定されるものではなく、スペー
サーとしての機能に支障のないものであれば種々の形状
であってもよい。その大きさとしては、円換算の直径が
1〜20μm 、より好ましくは1〜10μm 、特に2〜
8μm が好ましい。このような直径のものは、粒長10
0μm 以下程度であることが好ましく、その下限は特に
規制されるものではないが、通常直径と同程度以上であ
る。
【0086】なお、封止板に凹部を形成した場合には、
スペーサーは使用しても、使用しなくてもよい。使用す
る場合の好ましい大きさとしては、前記範囲でよいが、
特に2〜8μm の範囲が好ましい。
【0087】スペーサーは、予め封止用接着剤中に混入
されていても、接着時に混入してもよい。封止用接着剤
中におけるスペーサーの含有量は、好ましくは0.01
〜30wt%、より好ましくは0.1〜5wt%である。
【0088】接着剤としては、安定した接着強度が保
て、気密性が良好なものであれば特に限定されるもので
はないが、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ
樹脂接着剤を用いることが好ましい。
【0089】本発明において、有機EL構造体を形成す
る基板としては、非晶質基板たとえばガラス、石英な
ど、結晶基板たとえば、Si、GaAs、ZnSe、Z
nS、GaP、InPなどがあげられ、またこれらの結
晶基板に結晶質、非晶質あるいは金属のバッファ層を形
成した基板も用いることができる。また金属基板として
は、Mo、Al、Pt、Ir、Au、Pdなどを用いる
ことができ、好ましくはガラス基板が用いられる。基板
は、通常光取り出し側となるため、上記電極と同様な光
透過性を有することが好ましい。
【0090】さらに、本発明素子を、平面上に多数並べ
てもよい。平面上に並べられたそれぞれの素子の発光色
を変えて、カラーのディスプレーにすることができる。
【0091】基板に色フィルター膜や蛍光性物質を含む
色変換膜、あるいは誘電体反射膜を用いて発光色をコン
トロールしてもよい。
【0092】色フィルター膜には、液晶ディスプレイ等
で用いられているカラーフィルターを用いれば良いが、
有機EL素子の発光する光に合わせてカラーフィルター
の特性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すれば
よい。
【0093】また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収
するような短波長の外光をカットできるカラーフィルタ
ーを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向
上する。
【0094】また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用
いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0095】蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を
吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させること
で、発光色の色変換を行うものであるが、組成として
は、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成
される。
【0096】蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高
いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いこ
とが望ましい。実際には、レーザー色素などが適してお
り、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン
系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロシアニ
ン等も含む)ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素
系化合物・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・ク
マリン系化合物等を用いればよい。
【0097】バインダーは、基本的に蛍光を消光しない
ような材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷
等で微細なパターニングが出来るようなものが好まし
い。また、基板上にホール注入電極と接する状態で形成
される場合、ホール注入電極(ITO、IZO)の成膜
時にダメージを受けないような材料が好ましい。
【0098】光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りな
い場合に用いるが、必要のない場合は用いなくても良
い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しな
いような材料を選べば良い。
【0099】本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動
型、パルス駆動型のEL素子として用いられるが、交流
駆動とすることもできる。印加電圧は、通常、2〜30
V 程度とされる。
【0100】
【実施例】次に、実施例を示し、本発明をより具体的に
説明する。 <実施例1>コーニング社製7059ガラス基板上に、
スパッタ法でITO透明電極薄膜を100nmの厚さに成
膜し、パターニングした。このITO透明電極が形成さ
れたガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを
用いて超音波洗浄し、煮沸エタノール中から引き上げて
乾燥し、UV/O3 洗浄した。
【0101】次いで、ターゲットとして、SiO1.0
0.6に酸化第1鉄(FeO)を25 mol%混合したもの
を用い、RFスパッタ法により、無機絶縁性ホール注入
層を成膜速度1nm/minで、2nmの厚さに成膜した。こ
のときのスパッタガスはAr100sccmで、動作圧は
0.5Paとした。また、投入電力は周波数13.56MH
zで100Wとした。
【0102】次に、槽内を1×10-4Pa以下まで減圧
し、N,N,N’,N’−テトラキス(m−ビフェニ
ル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(T
PD)と、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム
(Alq3 )と、ルブレンとを、全体の蒸着速度0.2
nm/secとして40nmの厚さに蒸着し、発光層とした。T
PD:Alq3 =1:1(重量比)、この混合物に対し
てルブレンを0.5mol%とした。
【0103】次いで、トリス(8−キノリノラト)アル
ミニウム(Alq3 )を蒸着速度0.2nm/secとして1
0nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0104】そして、減圧を保ったまま、AlLiを蒸
着速度0.2nm/minで、5nmの厚さに蒸着し、電子注
入電極とした。
【0105】さらに、減圧を保ったまま、Alターゲッ
トを用いたDCスパッタ法により、スパッタ圧力0.3
PaにてAl配線電極を200nmの厚さに成膜した。この
とき、スパッタガスにはArを用い、投入電力は500
W、ターゲットの大きさは4インチ径、基板とターゲッ
トの距離は90mmとした。
【0106】最後にガラス封止板を貼り合わせ、有機E
L素子とした。
【0107】また、比較サンプルとして、無機絶縁性ホ
ール注入層にFeOを混合しないサンプルを作製した。
【0108】SiO1.00.6/FeO混合薄膜を蛍光X
線分析により組成分析した結果、主成分組成は、ターゲ
ットと同じであった。また、SiO1.00.6に対するF
eOの mol比が、25%であった。この無機ホール注入
層の可視光領域の光透過率を測定したところ、50%で
あった。
【0109】得られた有機ELディスプレイに大気中で
直流電圧を印加し、200cd/m2の輝度の蛍光灯の照明
下で、10mA/cm2 の定電流密度で連続駆動させた。表
示面全体でのコントラスト比を調べたところ、比較サン
プルでは1:10しか得られなかったものが、本発明サ
ンプルでは1:50と優れた結果が得られた。
【0110】<実施例2>実施例1において、無機絶縁
性ホール注入層の主成分の組成を、SiO1.00 .6
ら、SiO1.7、GeO1.00.6、Si0.5Ge0.51.0
0.6、SiO1.00.6に代えても、実施例1と同等の
効果が得られた。
【0111】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、有機材料
と無機材料の有するメリットを併せ持ち、長寿命で、効
率が改善され、動作電圧が低く、低コストな有機EL素
子を提供することができる。
【0112】また、コントラスト比や視認性を向上さ
せ、低コスト化を実現しうる有機EL素子を提供するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL素子の構成例を示した概略断
面図である。
【図2】本発明の有機EL素子の他の構成例を示した概
略断面図である。
【図3】ホール輸送層を有する2層構造の有機EL素子
の断面図である。
【図4】ホール輸送層と電子輸送層を有する3層構造の
有機EL素子の断面図である。
【符号の説明】
1 基板 2 ホール注入電極 3 電子注入電極 4 無機絶縁性ホール注入層 5 発光層(有機層) 6 電子注入輸送層 11 基板 12 ホール注入電極 13 電子注入電極 14 ホール輸送層 15 発光層(有機層) 16 電子輸送層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上にホール注入電極と、電子注入電
    極と、これらの電極間に少なくとも発光機能に関与する
    1種以上の有機層とを有し、 前記ホール注入電極と前記有機層との間に無機絶縁性ホ
    ール注入層を有し、 前記無機絶縁性ホール注入層は、シリコンおよび/また
    はゲルマニウムの酸化物、または酸化物および窒化物、
    または酸化物および炭化物を主成分とし、かつ可視光領
    域の光透過率が20〜70%である有機EL素子。
  2. 【請求項2】 前記無機絶縁性ホール注入層は、シリコ
    ンおよび/またはゲルマニウムの酸化物、または酸化物
    および窒化物、または酸化物および炭化物に対して酸化
    第1鉄を、 FeOに換算して、5〜40 mol%含有する請求項1の
    有機EL素子。
  3. 【請求項3】 前記無機絶縁性ホール注入層の膜厚が
    0.5〜20nmである請求項1〜3のいずれかの有機E
    L素子。
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