JP4631122B2 - 有機el素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL(電界発光)素子に関し、詳しくは、有機化合物の薄膜に電界を印加して光を放出する素子に用いられる無機/有機接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に有機EL素子は、ガラス基板上にITOなどの透明電極を形成し、その上に有機アミン系のホール輸送層、電子導電性を示しかつ強い発光を示すたとえばAlq3 材からなる有機発光層を積層し、さらに、MgAgなどの仕事関数の小さい電極を形成した構造の基本素子としている。
【0003】
これまでに報告されている素子構造としては、ホール注入電極及び電子注入電極の間に1層または複数層の有機化合物層が挟まれた構造となっており、有機化合物層としては、2層構造あるいは3層構造がある。
【0004】
2層構造の例としては、ホール注入電極と電子注入電極の間にホール輸送層と発光層が形成された構造または、ホール注入電極と電子注入電極の間に発光層と電子輸送層が形成された構造がある。3層構造の例としては、ホール注入電極と電子注入電極の間にホール輸送層と発光層と電子輸送層とが形成された構造がある。また、単一層に全ての役割を持たせた単層構造も高分子や混合系で報告されている。
【0005】
図2および図3に、有機EL素子の代表的な構造を示す。
【0006】
図2では基板11上に設けられたホール注入電極12と電子注入電極13の間に有機化合物であるホール輸送層14と発光層15が形成されている。この場合、発光層15は、電子輸送層の機能も果たしている。
【0007】
図3では、基板11上に設けられたホール注入電極12と電子注入電極13の間に有機化合物であるホール輸送層14と発光層15と電子輸送層16が形成されている。
【0008】
これら有機EL素子においては、共通して、信頼性が問題となっている。すなわち、有機EL素子は、原理的にホール注入電極と、電子注入電極とを有し、これら電極間から効率よくホール・電子を注入輸送するための有機層を必要とする。しかしながら、これらの材料は、製造時にダメージを受けやすく、電極との親和性にも問題がある。また、電子注入用の電子注入電極に仕事関数の低い金属を用いる必要がある。そのため、材料としてMgAg、AlLiなどを用いらざるを得ない。しかし、これらの材料は酸化し易く、安定性に欠け、有機EL素子の寿命を律したり、信頼性の問題を招く大きな要因となっている。さらに、有機薄膜の劣化もLED、LDに較べると著しく大きいという問題を有している。
【0009】
また、有機材料は比較的高価なものが多く、低コストの有機EL素子応用製品を提供するために、その一部の構成膜を安価な無機材料で置き換えることのメリットは大きい。
【0010】
さらに、今まで以上に発光効率を改善し、より低い駆動電圧で、より消費電流の少ない素子の開発も望まれている。
【0011】
このような問題を解決するために、有機材料と無機半導体材料のそれぞれのメリットを利用する方法が考えられている。すなわち、有機ホール輸送層を無機p型半導体に置き換えた有機/無機半導体接合である。このような検討は、特許第2636341号、特開平2−139893号公報、特開平2−207488号公報、特開平6−119973号公報で検討されているが、発光特性や基本素子の信頼性で素子従来の有機ELを越える特性を得ることが不可能であった。
【0012】
また、赤色と青色等といった複数の発光色や、広い発光波長帯域を得るために、発光層を2層以上にしてそれぞれ発光極大波長の異なる蛍光物質を用いる試みもなされている。しかしながら、下地となるホール注入輸送層や、電子注入輸送層が有機物質からなる薄膜層である場合、これらの膜を蒸着法等により成膜した後に、さらに2層以上の発光層を所定の膜厚に成膜し、さらに必要により有機物質からなるホール注入輸送層や、電子注入輸送層を成膜することとなり、各有機層の膜厚管理や、ドーピング量の調整等、製造作業が困難であるばかりか、それぞれの膜界面での物性安定させ、期待した通りの機能を果たさせることが困難であった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の有機物質を用いたホール注入輸送層や、電子注入輸送層を有する素子と同等かそれ以上の性能を有し、長寿命で、耐候性を備え、安定性が高く、高効率で、しかも安価な有機EL素子を実現することである。
【0014】
また、発光層を2層以上とした場合にも、製造が容易で、膜界面での物性が安定した有機EL素子を実現することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的は下記の構成により達成される。
(1) 基板と、この基板上に形成されたホール注入電極と電子注入電極と、これらの電極間に設けられた有機物質を含有する発光層とを有し、
この発光層と電子注入電極の間には、無機電子注入輸送層を有し、
前記発光層とホール注入電極との間には無機ホール注入輸送層を有し、
前記発光層は、前記無機電子注入輸送層または無機ホール注入輸送層とそれぞれ接する界面を有する第1の発光層と第2の発光層とを有し、
前記無機電子注入輸送層は、ホールをブロックするとともに電子を搬送するための導電パスを有する高抵抗の無機電子注入輸送層であり、
前記無機ホール注入輸送層は、電子をブロックするとともにホールを搬送するための導通パスを有する高抵抗の無機ホール注入輸送層であり、
前記第1の発光層および第2の発光層は、含有するホスト材料のバンドギャップが2.8eV以上であり、
前記高抵抗の無機電子注入輸送層は、第1成分として仕事関数4eV以下であって、アルカリ金属元素、およびアルカリ土類金属元素、およびランタノイド系元素から選択される1種以上の酸化物と、
第2成分として仕事関数3〜5eVの金属の1種以上とを含有し、
前記第2成分は、Zn,Sn,V,Ru,SmおよびInから選択される1種以上である有機EL素子。
(2) 前記ホスト材料は、フェニルアントラセン誘導体、またはテトラアリールジアミン誘導体である上記(1)の有機EL素子。
(3) 前記第1の発光層および第2の発光層は、それぞれ異なったドーパントがドーピングされている上記(1)または(2)の有機EL素子。
(4) 前記第1の発光層および第2の発光層から得られた発光が合成されて白色光として放出される上記(1)〜(3)のいずれかの有機EL素子。
(5) 前記第1の発光層は無機電子注入輸送層と界面を接し、かつホスト材料に青色蛍光物質がドーピングされている上記(1)〜(4)のいずれかの有機EL素子。
) 前記アルカリ金属元素は、Li,Na,K,Rb,CsおよびFrの1種以上であり、アルカリ土類金属元素は、Mg,CaおよびSrの1種以上であり、ランタノイド系元素はLaおよびCeから選択される1種以上を有する上記(1)〜(5)のいずれかの有機EL素子。
) 前記高抵抗の無機電子注入輸送層は、その抵抗率が1〜1×1011Ω・cmである上記(1)〜()のいずれかの有機EL素子。
) 前記高抵抗の無機電子注入輸送層は、第2成分を全成分に対して、0.2〜40 mol%含有する上記()〜()のいずれかの有機EL素子。
【0016】
) 前記高抵抗の無機電子注入輸送層の膜厚は、0.2〜30nmである上記(1)〜()のいずれかの有機EL素子。
10) 前記高抵抗の無機ホール注入輸送層は、抵抗率が1〜1×1011Ω・cmである上記(1)〜()のいずれかの有機EL素子。
11) 前記高抵抗の無機ホール注入輸送層は、金属および/または金属の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物および硼化物のいずれか1種以上を含有する上記(1)〜(10)のいずれかの有機EL素子。
12) 前記高抵抗の無機ホール注入輸送層は、シリコンおよび/またはゲルマニウムの酸化物を主成分とし、この主成分を(Si1−xGe)Oと表したとき
0≦x≦1、
1.7≦y≦2.2
であり、
さらに、仕事関数4.5eV以上の金属および/または金属の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物および硼化物のいずれか1種以上を含有する上記(1)〜(11)のいずれかの有機EL素子。
13) 前記金属は、Au,Cu、Fe、Ni、Ru、Sn,Cr,Ir,Nb,Pt,W,Mo,Ta,PdおよびCoのいずれか1種以上である上記(12)の有機EL素子。
14) 前記金属および/または金属の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物および硼化物の含有量は、0.2〜40 mol%である上記(12)または(13)のいずれかの有機EL素子。
15) 前記高抵抗の無機ホール注入輸送層の膜厚は、0.2〜100nmである上記(1)〜(14)のいずれかの有機EL素子。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の有機EL素子は、基板と、この基板上に形成されたホール注入電極と電子注入電極と、これらの電極間に設けられた有機物質を含有する発光層とを有し、この発光層と電子注入電極の間には、無機電子注入輸送層を有し、前記発光層とホール注入電極との間には無機ホール注入輸送層を有し、前期発光層は、前記無機電子注入輸送層または無機ホール注入輸送層とそれぞれ接する界面を有する第1の発光層と第2の発光層とを有し、前記無機電子注入輸送層は、ホールをブロックするとともに電子を搬送するための導電パスを有し、前記無機ホール注入輸送層は、電子をブロックするとともにホールを搬送するための導通パスを有し、前記第1の発光層および第2の発光層は、含有するホスト材料のバンドギャップが2.8eV以上である。
【0018】
このように、無機材料からなる無機電子注入輸送層、無機ホール注入輸送層を設け、これらの間に発光層を配置することで、無機材料の有するメリットと、有機材料の有するメリットとを併せもった有機EL素子とすることができる。すなわち、発光層と電子注入輸送層、ホール注入輸送層との界面での物性が安定し、製造が容易になる。また、従来の有機ホール注入層、有機電子注入層を有する素子と同等かそれ以上の輝度が得られ、しかも、耐熱性、耐候性が高いので従来のものよりも寿命が長く、リークやダークスポットの発生も少ない。また、比較的高価な有機物質ではなく、安価で入手しやすい無機材料を用いているので、製造が容易となり、製造コストを低減することができる。
【0019】
無機ホール注入輸送層は、ホール注入電極からのホールの注入を容易にする機能、ホールを安定に輸送する機能および電子を妨げる機能を有するものであり、無機電子注入輸送層は、陰電極からの電子の注入を容易にする機能、電子を安定に輸送する機能およびホールを妨げる機能を有するものである。これらの層は、発光層に注入されるホールや電子を増大・閉じこめさせ、再結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。
【0020】
すなわち、無機電子注入輸送層を、ホールをブロックし、電子を搬送するための導通パスを有する高抵抗の無機電子注入輸送層とすることにより、特別に電子注入機能を有する電極を形成する必要がなく、比較的安定性が高く、導電率の良好な金属電極を用いることができる。そして、無機電子注入輸送層の電子注入輸送効率が向上すると共に、素子の寿命が延びることになる。また、無機ホール注入輸送層を、ホールをブロックし、電子を搬送するための導通パスを有する高抵抗の無機ホール注入輸送層とすることにより、ホール注入電極から発光層側の有機層へ効率よくホールを注入することができる。しかも、有機層からホール注入電極への電子の移動を抑制することができ、発光層でのホールと電子との再結合を効率よく行わせることができる。
【0021】
特に、発光層を2層構造とした場合、それぞれの発光層と、無機電子注入輸送層、無機ホール注入輸送層と接する界面が安定し、発光層の物性が安定するとともに、発光層の形成自体が容易となり、量産工程においても製造が容易となり、しかも安定した特性と品質を維持することができる。
【0022】
2つの発光層には、バンドギャップ2.8eV以上、好ましくは2.8〜3.1eVのホスト物質が含有されている。ホスト物質は、好ましくは2つの発光層にそれぞれ異なったものを用いる。本発明では、ホスト物質として、フェニルアントラセン誘導体、テトラアリールジアミン誘導体を用いることが望ましい。
【0023】
2つの発光層には、好ましくは上記ホスト物質のほか、ドーパントを有する。
ドーパントとしては、2つの発光層でそれぞれ異なった発光波長が得られるよう、異なった化合物であることが望ましい。また、例えば、青色−黄色等のように、2つの発光層での発光を組み合わせることにより、白色が得られるような化合物を用いるとよい。この場合、好ましくは短波長側の発光を得る発光層を電子注入電極側(基板側にホール注入電極があり、基板側より光り取り出しを行う通常の積層構成)に配置する。
【0024】
本発明におけるフェニルアントラセン誘導体は、下記式(A)で表されるものが好ましい。
式(A)
101 −L−A102
〔式(A)において、A101 およびA102 は、各々モノフェニルアントリル基またはジフェニルアントリル基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。Lは単結合または二価の連結基を表す。〕
【0025】
上記式(A)、好ましくは下記化1、化2に示される化合物を発光層に含有することにより、緑〜青色の発光が10000cdm-2 程度、あるいはそれ以上の高輝度で安定して得られる。また、耐熱性・耐久性が高く、素子電流密度も1000mAcm-2程度でも安定した駆動が可能である。
【0026】
【化1】
Figure 0004631122
【0027】
【化2】
Figure 0004631122
【0028】
上記化合物の蒸着膜は安定なアモルファス状態なので、薄膜の膜物性が良好となりムラがなく均一な発光が可能である。また、大気下で一年以上安定であり結晶化を起こさない。
【0029】
また、クロロホルム溶液でスピンコートしても安定なアモルファス状態の薄膜を形成することが可能である。また、上記化合物を用いることにより、低駆動電圧で効率よく発光し、その発光極大波長は、400〜700nm程度である。
【0030】
式(A)について説明すると、A101 およびA102 は、各々モノフェニルアントリル基またはジフェニルアントリル基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
【0031】
101 、A102 で表されるモノフェニルアントリル基またはジフェニルアントリル基は、無置換でも置換基を有するものであってもよく、置換基を有する場合の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。これらの置換基については後述する。また、このような置換基の置換位置は特に限定されないが、アントラセン環ではなく、アントラセン環に結合したフェニル基であることが好ましい。
【0032】
また、アントラセン環におけるフェニル基の結合位置はアントラセン環の9位、10位であることが好ましい。
【0033】
式(A)において、Lは単結合または二価の基を表すが、Lで表される二価の基としてはアルキレン基等が介在してもよいアリーレン基が好ましい。このようなアリーレン基については後述する。
【0034】
式(A)で示されるフェニルアントラセン誘導体のなかでも、化1、化2で示されるものが好ましい。化1について説明すると、化1において、M1 およびM2 は、各々アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基または複素環基を表す。
【0035】
1 、M2 で表されるアルキル基としては、直鎖状でも分岐を有するものであってもよく、炭素数1〜10、さらには1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基が好ましい。特に、炭素数1〜4の無置換のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、(n−,i−,s−,t−)ブチル基等が挙げられる。
【0036】
1 、M2 で表されるシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0037】
1 、M2 で表されるアリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、さらにはフェニル基、トリル基等の置換基を有するものであってもよい。具体的には、フェニル基、(o−,m−,p−)トリル基、ピレニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、フェニルアントリル基、トリルアントリル基等が挙げられる。
【0038】
1 、M2 で表されるアルケニル基としては、総炭素数6〜50のものが好ましく、無置換のものであってもよいが置換基を有するものであってもよく、置換基を有する方が好ましい。このときの置換基としては、フェニル基等のアリール基が好ましい。具体的には、トリフェニルビニル基、トリトリルビニル基、トリビフェニルビニル基等が挙げられる。
【0039】
1 、M2 で表されるアルコキシ基としては、アルキル基部分の炭素数が1〜6のものが好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、さらに置換されていてもよい。
【0040】
1 、M2 で表されるアリーロキシ基としては、フェノキシ基等が挙げられる。
【0041】
1 、M2 で表されるアミノ基は、無置換でも置換基を有するものであってもよいが、置換基を有することが好ましく、この場合の置換基としてはアルキル基(メチル基、エチル基等)、アリール基(フェニル基等)などが挙げられる。具体的にはジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ(m−トリル)アミノ基等が挙げられる。
【0042】
1 、M2 で表される複素環基としては、ビピリジル基、ピリミジル基、キノリル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、オキサジアゾイル基等が挙げられる。これらは、メチル基、フェニル基等の置換基を有していてもよい。
【0043】
化1において、q1およびq2は、各々、0または1〜5の整数を表し、特に、0または1であることが好ましい。q1およびq2が、各々、1〜5の整数、特に1または2であるとき、M1 およびM2 は、各々、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基であることが好ましい。
【0044】
化1において、M1 とM2 とは同一でも異なるものであってもよく、M1 とM2 とが各々複数存在するとき、M1 同士、M2 同士は各々同一でも異なるものであってもよく、M1 同士あるいはM2 同士は結合してベンゼン環等の環を形成してもよく、環を形成する場合も好ましい。
【0045】
化1において、L1 は単結合またはアリーレン基を表す。L1 で表されるアリーレン基としては、無置換であることが好ましく、具体的にはフェニレン基、ビフェニレン基、アントリレン基等の通常のアリーレン基の他、2個ないしそれ以上のアリーレン基が直接連結したものが挙げられる。L1 としては、単結合、p−フェニレン基、4,4′−ビフェニレン基等が好ましい。
【0046】
また、L1 で表されるアリーレン基は、2個ないしそれ以上のアリーレン基がアルキレン基、−O−、−S−または−NR−が介在して連結するものであってもよい。ここで、Rはアルキル基またはアリール基を表す。アルキル基としてはメチル基、エチル基等が挙げられ、アリール基としてはフェニル基等が挙げられる。なかでも、アリール基が好ましく、上記のフェニル基のほか、A101 、A102 であってもよく、さらにはフェニル基にA101 またはA102 が置換したものであってもよい。
【0047】
また、アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基等が好ましい。このようなアリーレン基の具体例を以下に示す。
【0048】
【化3】
Figure 0004631122
【0049】
次に、化2について説明すると、化2において、M3 およびM4 は化1におけるM1 およびM2 と、またq3およびq4は化1におけるq1およびq2と、さらにL2 は化1におけるL1 とそれぞれ同義であり、好ましいものも同様である。
【0050】
化2において、M3 とM4 とは同一でも異なるものであってもよく、M3 とM4 が各々複数存在するとき、M3 同士、M4 同士は、各々同一でも異なるものであってもよく、M3 同士あるいはM4 同士は結合してベンゼン環等の環を形成してもよく、環を形成する場合も好ましい。
【0051】
化1、化2で表される化合物を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、化4、化6、化8、化10、化12、化14、化16では一般式を示し、化5、化7、化9、化11、化13、化15、化17、化18で、各々対応する具体例をM11〜M15、M21〜M25あるいはM31〜M35、M41〜M45の組合せで示している。
【0052】
【化4】
Figure 0004631122
【0053】
【化5】
Figure 0004631122
【0054】
【化6】
Figure 0004631122
【0055】
【化7】
Figure 0004631122
【0056】
【化8】
Figure 0004631122
【0057】
【化9】
Figure 0004631122
【0058】
【化10】
Figure 0004631122
【0059】
【化11】
Figure 0004631122
【0060】
【化12】
Figure 0004631122
【0061】
【化13】
Figure 0004631122
【0062】
【化14】
Figure 0004631122
【0063】
【化15】
Figure 0004631122
【0064】
【化16】
Figure 0004631122
【0065】
【化17】
Figure 0004631122
【0066】
【化18】
Figure 0004631122
【0067】
【化19】
Figure 0004631122
【0068】
【化20】
Figure 0004631122
【0069】
【化21】
Figure 0004631122
【0070】
【化22】
Figure 0004631122
【0071】
本発明に用いるフェニルアントラセン誘導体は、
(1)ハロゲン化ジフェニルアントラセン化合物を、Ni(cod)2 〔cod:1,5−シクロオクタジエン〕でカップリング、もしくはジハロゲン化アリールをグリニャール化しNiCl2 (dppe)[dppe:ジフェニルフォスフィノエタン]、NiCl2 (dppp)〔dppp:ジフェニルフォスフィノプロパン〕、などのNi錯体などを用いてクロスカップリングする方法、
(2)アントラキノン、ベンゾキノン、フェニルアンスロンもしくはビアントロンとグリニャール化したアリールもしくはリチオ化したアリールとの反応および還元によりクロスカップリングする方法、
等により得られる。
【0072】
このようにして得られた化合物は、元素分析、質量分析、赤外吸収スペクトル、 1Hまたは13C核磁気共鳴吸収(NMR)スペクトルなどによって同定することができる。
【0073】
フェニルアントラセン誘導体は、400〜2000程度、さらには400〜1000程度の分子量をもち、200〜500℃の高融点を有し、80〜250℃、さらには100〜250℃、よりさらには130〜250℃、特に150〜250℃のガラス転移温度(Tg)を示す。従って、通常の真空蒸着等により透明で室温以上でも安定なアモルファス状態の平滑で良好な膜を形成し、しかもその良好な膜の状態が長期間に渡って維持される。
【0074】
フェニルアントラセン誘導体は、比較的ニュートラルな化合物なので、発光層に用いると好ましい結果を得ることができる。また、組み合わせる発光層、電子注入輸送層やホール注入輸送層のキャリア移動度やキャリア密度(イオン化ポテンシャル・電子親和力により決まる)を考慮しながら、膜厚をコントロールすることで、再結合領域・発光領域を自由に設計することが可能であり、発光色の設計や、両電極の干渉効果による発光輝度・発光スペクトルの制御や、発光の空間分布の制御を可能にできる。
【0075】
本発明に用いるテトラアリールジアミン誘導体は、融点やガラス転移温度が高く、その蒸着等により成膜される薄膜は、透明で室温以上でも安定なアモルファス状態を形成し、長期間に渡って平滑で良好な膜質を示す。
【0076】
従ってバインダー樹脂を用いることなく、それ自体で薄膜化することができる。
【0077】
この効果は、以下のことに起因していると考えられる。
【0078】
▲1▼ 分子量を増して高融点にしたこと。
▲2▼ 立体障害のあるフェニル基のようなバルキーな置換基を導入して分子間の重なりを最適化していること。
▲3▼ 分子の取り得るコンフォーメーション数が多く、分子の再配列が妨げられていること。
【0079】
また、分子中にN−フェニル基等のホール注入輸送単位を多く含み、R1 〜R4 にフェニル基を導入してビフェニル基にすることでπ共役系が広がり、キャリア移動に有利になり、ホール注入輸送能にも非常に優れる。
【0080】
従って、下記化23で表されるテトラアリールジアミン誘導体を用いることにより、ムラのない均一な面発光が可能であり、高輝度が長時間に渡って安定して得られる。波長によっても異なるが100〜100000cd/m2 程度、あるいはそれ以上の高輝度が安定して得られる。なお、本発明の有機EL素子の発光極大波長は、350〜700nm程度である。
【0081】
また、耐熱性・耐久性が高く、素子電流密度が1A/cm2 程度以上でも安定した駆動が可能である。
【0082】
さらには、テトラアリールジアミン誘導体を発光層に用いることによりエネルギーレベルが最適になり、界面においてキャリアが効果的にブロッキングされるため、安定したキャリアの再結合および発光が起こる。特に、このホール注入輸送機能を有する発光層と接する電子注入輸送層とのイオン化ポテンシャルIpの差が最適化されて、界面におけるキャリアブロッキング効果が高まり、極性的に劣勢あるいは不安定なキャリアの注入はより起こりにくくなるので、各層の有機化合物がダメージを受けにくくなり、キャリア再結合領域や発光領域で、キャリアや励起子の失活ポイントを生じにくくなる。その結果、安定した発光が得られ、寿命が大幅に向上する。
【0083】
また、テトラアリールジアミン誘導体を含有する発光層に蛍光性物質をドープする構成では、ホール注入輸送層と接する発光層と接する電子注入輸送層とのイオン化ポテンシャルIpの差が最適化されて、界面におけるキャリアブロッキング効果が高まり、極性的に劣勢あるいは不安定なキャリアの注入は起こりにくくなるので、発光層の有機化合物がダメージを受けにくくなり、キャリア再結合領域や発光領域で、キャリアや励起子の失活ポイントを生じにくくなる。また、特に蛍光性物質としてルブレンをドープする場合、ルブレンはバイボーラーな輸送性を有しており、ルブレンでもキャリア再結合が起こるので、その分さらに有機化合物が受けるダメージは少なくなる。また、さらにルブレンがキャリア再結合領域近傍に存在するため、励起子からルブレンへのエネルギー移動が起こり、非放射的失活が少なくなり、その結果、安定した発光が得られ、寿命が大幅に向上する。
【0084】
本発明に用いるテトラアリールジアミン誘導体は、下記の化23で示される構造を有するものが好ましい。
【0085】
【化23】
Figure 0004631122
【0086】
化23について説明すると、化23において、R1 〜R4 は、それぞれアリール基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、R1 〜R4 のうちの少なくとも1個はアリール基である。r1〜r4は、それぞれ0または1〜5の整数であり、r1〜r4は同時に0になることはない。従って、r1+r2+r3+r4は1以上の整数であり、少なくとも1つのアリール基が存在する条件を満たす数である。R5 およびR6 は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。
【0087】
1 〜R4 で表されるアリール基としては、単環もしくは多環のものであってよく、縮合環や環集合も含まれる。総炭素数は6〜20のものが好ましく、置換基を有していてもよい。この場合の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0088】
1 〜R4 で表されるアリール基の具体例としては、フェニル基、(o−,m−,p−)トリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニリル基、フェニルアントリル基、トリルアントリル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましく、アリール基、特にフェニル基の結合位置は3位(Nの結合位置に対してメタ位)または4位(Nの結合位置に対してパラ位)であることが好ましい。
【0089】
1 〜R4 で表されるアルキル基としては、直鎖状でも分岐を有するものであってもよく、炭素数1〜10のものが好ましく、置換基を有していてもよい。この場合の置換基としてはアリール基と同様のものが挙げられる。
【0090】
1 〜R4 で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、(n−,i−,s−,t−)ブチル基等が挙げられる。
【0091】
1 〜R4 で表されるアルコキシ基としては、アルキル部分の炭素数1〜6のものが好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基はさらに置換されていてもよい。
【0092】
1 〜R4 で表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−(t−ブチル)フェノキシ基等が挙げられる。
【0093】
1 〜R4 で表されるアミノ基としては、無置換でも置換基を有するものであってもよいが、置換基を有するものが好ましく、具体的にはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−トリルアミノ基、N−フェニル−N−ナフチルアミノ基、N−フェニル−N−ビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−アントリルアミノ基、N−フェニル−N−ピレニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジアントリルアミノ基、ジピレニルアミノ基等が挙げられる。
【0094】
1 〜R4 で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0095】
1 〜R4 のうちの少なくとも1個はアリール基であるが、特にR1 〜R4 として1分子中にアリール基が2〜4個存在することが好ましく、r1〜r4のなかの2〜4個が1以上の整数であることが好ましい。特に、アリール基は分子中に総計で2〜4個存在し、より好ましくはr1〜r4のなかの2〜4個が1であり、さらにはr1〜r4が1であり、含まれるR1 〜R4 のすべてがアリール基であることが好ましい。すなわち、分子中のR1 〜R4 が置換していてもよい4個のベンゼン環には総計で2〜4個のアリール基が存在し、2〜4個のアリール基の結合するベンゼン環は4個のベンゼン環のなかで同一でも異なるものであってもよいが、特に2〜4個のアリール基がそれぞれ異なるベンゼン環に結合することが好ましい。そして、さらに少なくとも2個がNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合していることがより好ましい。また、この際アリール基としては少なくとも1個がフェニル基であることが好ましく、すなわちアリール基とベンゼン環が一緒になってN原子に対し4−または3−ビフェニリル基を形成することが好ましい。特に2〜4個が4−または3−ビフェニリル基であることが好ましい。4−または3−ビフェニリル基は一方のみでも両者が混在していてもよい。また、フェニル基以外のアリール基としては、特に(1−,2−)ナフチル基、(1−,2−,9−)アントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基などが好ましく、フェニル基以外のアリール基も特にNの結合位置に対しパラ位またはメタ位に結合することが好ましい。これらのアリール基もフェニル基と混在していてもよい。
【0096】
化23において、R5 、R6 で表されるアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子としてはR1 〜R4 のところで挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0097】
r5、r6は、ともに0であることが好ましく、2つのアリールアミノ基を連結するビフェニレン基は無置換のものが好ましい。
【0098】
なお、r1〜r4が2以上の整数のとき、各R1 〜R4 同士は各々同一でも異なるものであってもよい。また、r5、r6が2以上の整数のとき、R5 同士、R6 同士は同一でも異なるものであってもよい。
【0099】
化23の化合物のなかでも、下記の化24または化25で表される化合物が好ましい。
【0100】
【化24】
Figure 0004631122
【0101】
【化25】
Figure 0004631122
【0102】
まず、化24について説明すると、化24において、A1 〜A4 は、それぞれNの結合位置に対してパラ位(4位)またはメタ位(3位)に結合するフェニル基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。これらのフェニル基はさらに置換基を有していてもよく、この場合の置換基としてはR1 〜R4 で表されるアリール基のところで挙げた置換基と同様のものを挙げることができる。R7 〜R10はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としては化23のR1 〜R4 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0103】
r7〜r10はそれぞれ0または1〜4の整数であり、r7〜r10は0であることが好ましい。
【0104】
また、化24において、R5 、R6 、r5およびr6は化23のものと同義であり、r5=r6=0であることが好ましい。
【0105】
なお、化24において、r7〜r10が各々2以上の整数であるとき、各R7 〜R10同士は同一でも異なるものであってもよい。
【0106】
次に、化25について説明すると、化25において、ArはNの結合位置のパラ位またはメタ位に結合するアリール基を表す。アリール基としては、化23のR1 〜R4 で表されるアリール基のところで例示したものと同様のものを挙げることができ、特にフェニル基が好ましい。この場合、アリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としてはR1 〜R4 のところで例示したものを挙げることができる。置換基としてはアミノ基が好ましい。ただし、アミノ基は、場合によっては環化して複素環基となっていてもよい。具体的にはR1 〜R4 で表されるアミノ基のなかから選択することができる。Z1 、Z2 およびZ3 は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
これらの具体例としては化23のR1 〜R4 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。ただし、Z1 、Z2 およびZ3 のうちの少なくとも1個はNの結合位置のパラ位またはメタ位に結合するアリール基を表すが、Ar、Z1 〜Z3 のすべてが同時にNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するフェニル基となることはなく、4個のベンゼン環の2〜3個がパラ位またはメタ位にそれぞれ1個のアリール基を有することが好ましい。従って、Z1 〜Z2 のうちの1個または2個がこのようなアリール基であることが好ましい。アリール基としては、(1−,2−)ナフチル基、(1−,2−,9−)アントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基等も好ましいが、フェニル基が最も好ましい。
【0107】
また、Z1 〜Z3 で表される上記アリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはR1 〜R4 のところで例示したものを挙げることができる。特に、置換基としてはアミノ基が好ましい。具体的には、R1 〜R4 で表されるアミノ基から選択することができる。s1〜s3は、それぞれ0または1〜5の整数であるが、これらは同時に0になることはなく、その和は1以上の整数である。s1〜s3は、それぞれ0または1であることが好ましく、さらにはs1〜s3の1個または2個が1であり、残りが0であるような組合せが好ましく、この場合s1〜s3が1であるときに含まれるZ1 〜Z3 は、Nの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するアリール基、特にフェニル基であることが好ましい。
【0108】
なお、化25において、s1〜s3が2以上の整数のとき、各Z1 〜Z3 同士は各々同一でも異なるものであってもよい。また、化25のR0 およびr0は化24のR7 およびr7と各々同義であり、化25のR5 、R6 、r5およびr6は化25のものと各々同義であり、好ましいものも同様である。
【0109】
化24の化合物のなかでも、下記化26〜化31で表される化合物が好ましい。
【0110】
【化26】
Figure 0004631122
【0111】
【化27】
Figure 0004631122
【0112】
【化28】
Figure 0004631122
【0113】
【化29】
Figure 0004631122
【0114】
【化30】
Figure 0004631122
【0115】
【化31】
Figure 0004631122
【0116】
化26〜化31の各々において、R11〜R14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としてはR1 〜R4 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0117】
r11〜r14はそれぞれ0または1〜5の整数であり、r11〜r14は、化26〜化31のいずれにおいても0であることが好ましい。
【0118】
なお、r11〜r14が各々2以上の整数であるとき、各R11〜R14同士は同一でも異なるものであってもよい。
【0119】
化26〜化31の各々において、R5 〜R10およびr5〜r10は、それぞれ化5のものと同義であり、好ましいものも同様である。
【0120】
一方、化25の化合物のなかでも下記化32〜化37で表される化合物が好ましい。
【0121】
【化32】
Figure 0004631122
【0122】
【化33】
Figure 0004631122
【0123】
【化34】
Figure 0004631122
【0124】
【化35】
Figure 0004631122
【0125】
【化36】
Figure 0004631122
【0126】
【化37】
Figure 0004631122
【0127】
化32〜化37の各々に示されるAr1 〜Ar6 はそれぞれアリール基を表し、化32のAr1 とAr2 、化33のAr1 とAr3 、化34のAr1 とAr2 とAr3 、化35のAr4 とAr5 、化36のAr4 とAr6 、化37のAr4 とAr5 とAr6 とは、それぞれ同一でも異なるものであってもよい。アリール基の具体例としては化23のR1 〜R4 のところのものと同様のものを挙げることができ、フェニル基が特に好ましい。
【0128】
化32〜化37のR15、化32、化34、化35、化37のR16、化33、化34、化36、化37のR20は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、化32、化35のR15とR16、化33、化36のR15とR20、化34、化37のR15とR16とR20とはそれぞれ同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としては化23のR1 〜R4 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0129】
化32〜化37のr15、化32、化34、化35、化37のr16、化33、化34、化36、化37のr20は、0または1〜4の整数であるが、r15、r16、r20は0であることが好ましい。
【0130】
化32、化35のR17、化32〜化37のR18、化33、化36のR19は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、化32、化35のR17とR18、化33、化36のR18とR19とはそれぞれ同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としては化23のR1 〜R4 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0131】
化32、化35のr17、化32〜化37のr18、化33、化36のr19は、0または1〜5の整数であるが、r17、r18、r19は0であることが好ましい。
【0132】
なお、化32〜化37において、r15、r16、r20が2以上の整数であるとき、R15同士、R16同士、R20同士は各々同一でも異なるものであってもよく、r17、r18、r19が2以上の整数であるとき、R17同士、R18同士、R19同士は各々同一でも異なるものであってもよい。
【0133】
化32〜化37の各々において、R5 、R6 、r5およびr6は化4のものと同義であり、r5=r6=0であることが好ましい。
【0134】
以下に、化23の化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、化38、化44、化49、化54、化60、化65、化71、化77、化85、化91、化97、化102は一般式であり、化39〜43、化45〜48、化50〜53、化55〜59、化61〜64、化66〜70、化72〜76、化78〜84、化86〜89、化92〜96、化98〜101、化103〜107にR1 等の組合せで具体例を示している。この表示において、Ar1 〜Ar6 を除いて、すべてHのときはHで示しており、置換基が存在するときは置換基のみを示すものとし、他のものはHであることを意味している。
【0135】
【化38】
Figure 0004631122
【0136】
【化39】
Figure 0004631122
【0137】
【化40】
Figure 0004631122
【0138】
【化41】
Figure 0004631122
【0139】
【化42】
Figure 0004631122
【0140】
【化43】
Figure 0004631122
【0141】
【化44】
Figure 0004631122
【0142】
【化45】
Figure 0004631122
【0143】
【化46】
Figure 0004631122
【0144】
【化47】
Figure 0004631122
【0145】
【化48】
Figure 0004631122
【0146】
【化49】
Figure 0004631122
【0147】
【化50】
Figure 0004631122
【0148】
【化51】
Figure 0004631122
【0149】
【化52】
Figure 0004631122
【0150】
【化53】
Figure 0004631122
【0151】
【化54】
Figure 0004631122
【0152】
【化55】
Figure 0004631122
【0153】
【化56】
Figure 0004631122
【0154】
【化57】
Figure 0004631122
【0155】
【化58】
Figure 0004631122
【0156】
【化59】
Figure 0004631122
【0157】
【化60】
Figure 0004631122
【0158】
【化61】
Figure 0004631122
【0159】
【化62】
Figure 0004631122
【0160】
【化63】
Figure 0004631122
【0161】
【化64】
Figure 0004631122
【0162】
【化65】
Figure 0004631122
【0163】
【化66】
Figure 0004631122
【0164】
【化67】
Figure 0004631122
【0165】
【化68】
Figure 0004631122
【0166】
【化69】
Figure 0004631122
【0167】
【化70】
Figure 0004631122
【0168】
【化71】
Figure 0004631122
【0169】
【化72】
Figure 0004631122
【0170】
【化73】
Figure 0004631122
【0171】
【化74】
Figure 0004631122
【0172】
【化75】
Figure 0004631122
【0173】
【化76】
Figure 0004631122
【0174】
【化77】
Figure 0004631122
【0175】
【化78】
Figure 0004631122
【0176】
【化79】
Figure 0004631122
【0177】
【化80】
Figure 0004631122
【0178】
【化81】
Figure 0004631122
【0179】
【化82】
Figure 0004631122
【0180】
【化83】
Figure 0004631122
【0181】
【化84】
Figure 0004631122
【0182】
【化85】
Figure 0004631122
【0183】
【化86】
Figure 0004631122
【0184】
【化87】
Figure 0004631122
【0185】
【化88】
Figure 0004631122
【0186】
【化89】
Figure 0004631122
【0187】
【化90】
Figure 0004631122
【0188】
【化91】
Figure 0004631122
【0189】
【化92】
Figure 0004631122
【0190】
【化93】
Figure 0004631122
【0191】
【化94】
Figure 0004631122
【0192】
【化95】
Figure 0004631122
【0193】
【化96】
Figure 0004631122
【0194】
【化97】
Figure 0004631122
【0195】
【化98】
Figure 0004631122
【0196】
【化99】
Figure 0004631122
【0197】
【化100】
Figure 0004631122
【0198】
【化101】
Figure 0004631122
【0199】
【化102】
Figure 0004631122
【0200】
【化103】
Figure 0004631122
【0201】
【化104】
Figure 0004631122
【0202】
【化105】
Figure 0004631122
【0203】
【化106】
Figure 0004631122
【0204】
【化107】
Figure 0004631122
【0205】
【化108】
Figure 0004631122
【0206】
【化109】
Figure 0004631122
【0207】
上記テトラアリールジアミン誘導体は、Jean Piccard, Herr. Chim. Acta., 7, 789(1924) 、Jean Piccard, J. Am. Chem. Soc., 48, 2878(1926) 等に記載の方法に従って、あるいは準じて合成することができる。具体的には、目的とする化合物に応じ、ジ(ビフェニル)アミン化合物とジヨードビフェニル化合物、あるいはN,N’−ジフェニルベンジン化合物とヨードビフェニル化合物、などの組合せで、銅の存在下で加熱すること(ウルマン反応)によって得られる。
【0208】
上記テトラアリールジアミン誘導体は、質量分析、赤外吸収スペクトル(IR)、 1H核磁気共鳴スペクトル(NMR)等によって同定することができる。
【0209】
これらのテトラアリールジアミン誘導体は、640〜2000程度の分子量をもち、190〜300℃の高融点を有し、80〜200℃の高ガラス転移温度を示し、通常の真空蒸着等により透明で室温以上でも安定なアモルファス状態を形成し、平滑で良好な膜として得られ、しかもそれが長期間に渡って維持される。
なお、本発明の化合物のなかには融点を示さず、高温においてもアモルファス状態を呈するものもある。従ってバインダー樹脂を用いることなく、それ自体で薄膜化することができる。
【0210】
テトラアリールジアミン誘導体は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0211】
本発明の発光層のいずれかには、上記ホスト物質のほか、他の蛍光性物質をドーパントとして有するとよい。ドーパントとしては、好ましくは以下のスチリルアミン系化合物およびクマリン系化合物が挙げられる。また、欧州特許公開0281381号公報に示される化合物等を用いてもよい。これらの化合物を用いることにより、青色、または青緑色の発光が得られる。
【0212】
(ア)一般式(I)で表されるスチリルアミン系化合物。
【0213】
【化110】
Figure 0004631122
【0214】
上記一般式(I)において、A1 〜A12は、それぞれ独立に水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜10のアルキル基,炭素数1〜10のアルコキシ基,炭素数6〜18のアリールオキシ基,フェニル基,アミノ基,置換アミノ基,水酸基または下記一般式(II)
【0215】
【化111】
Figure 0004631122
【0216】
で表される芳香環に置換基を有していてもよいスチリル基を示す。
【0217】
炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,t−ブチル基,イソペンチル基,t−ペンチル基,ネオペンチル基,n−ヘキシル基,イソヘキシル基などが、炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基,エトキシ基,n−プロポキシ基,イソプロポキシ基,n−ブチルオキシ基,イソブチルオキシ基,sec−ブチルオキシ基,イソペンチルオキシ基,t−ペンチルオキシ基,n−ヘキシルオキシ基などが、炭素数6〜18のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基やナフチルオキシ基などが挙げられる。また、置換アミノ基としては、例えばジメチルアミノ基,メチルアミノ基,アニリノ基,ジフェニルアミノ基などが挙げられる。さらに、上記一般式(II)で表されるスチリル基としては、例えばN,N−ビス(フェニル)−4−アミノスチリル基,N,N−ビス(トリル)−4−アミノスチリル基などが挙げられる。
【0218】
また、A1 〜A12は、その中の隣接する2つがたがいに結合して飽和若しくは不飽和の5員環または6員環を形成してもよい。Z1 ,Z2 およびEは、それぞれ独立に水素原子,炭素数1〜10のアルキル基,置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基,置換基を有する若しくは有しない炭素数7〜20のアラルキル基又は隣接するベンゼン環に結合する結合手を示す。前記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,ネオペンチル基,n−ヘキシル基,イソヘキシル基などが、前記炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基,ナフチル基,タ−フェニル基,アントラニル基,ピレニル基,ペリレニル基などが、前記炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えばベンジル基やフェネチル基などが挙げれらる。
【0219】
Arは、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリーレン基,炭素数4〜20の2価の芳香族性複素環式基又は置換基を有する若しくは有しない2価のトリアリールアミノ基を示す。ここで、炭素数6〜20のアリーレン基としては、例えばフェニレン基,ビフェニレン基,ナフタレンジイル基,ターフェニレンジイル基,クオーターフェニレンジイル基,アントラセンジイル基,ピレンジイル基,ペリレンジイル基などが挙げられ、炭素数4〜20の芳香族性複素環式基としては、例えばチオフェンジイル基,ビチオフェンジイル基,ピリジンジイル基,ピラジンジイル基,キノリンジイル基,キノキサリンジイル基,カルバゾールジイル基,ターチオフェンジイル基などが挙げれらる。前記置換基としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,t−ブチル基,イソペンチル基,t−ペンチル基,ネオペンチル基,n−ヘキシル基,イソヘキシル基などの炭素数1〜10のアルキル基,メトキシ基,エトキシ基,n−プロポキシ基,イソプロポキシ基,n−ブチルオキシ基,イソブチルオキシ基,sec−ブチルオキシ基,イソペンチルオキシ基,t−ペンチルオキシ基,n−ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基,フェノキシ基,ナフチルオキシ基などの炭素数6〜18のアリールオキシ基,フェニル基,アミノ基,シアノ基,ニトロ基,水酸基又はハロゲン原子が挙げられ、これらの置換基は単一でも複数置換されていてもよい。さらに、点線1,2および3は、それぞれ連結することにより複素環構造をとりうることを示し、例えば、点線1または2の場合では、下記一般式(III)
【0220】
【化112】
Figure 0004631122
【0221】
で表されるアクリジン環構造、あるいは、下記一般式(IV)
【0222】
【化113】
Figure 0004631122
【0223】
で表されるカルバゾール環構造をとりうることを示す。なお、一般式(III)および(IV)におけるA1 〜A12,Z1 及びZ2 は上記と同じである。また、A1 およびA7 が上記一般式(II)で表されるスチリル基である場合、例えば、一般式(V)
【0224】
【化114】
Figure 0004631122
【0225】
〔式中、A2 〜A6 ,A8 〜A12,Z1 ,Z2 およびEは上記と同じである。〕で表される構造をとりうる。なお、A1 ,A7 に対応するN−置換アミノスチリル基の芳香環には、前述した置換基の中から選ばれた適当な置換基が1個以上導入されていてもよい。nは0,1又は2を示し、nが0の場合は、一般式(I)の化合物は、下記一般式(VI)
【0226】
【化115】
Figure 0004631122
【0227】
で表され、nが1の場合、一般式(I)の化合物は、下記一般式(VII)
【0228】
【化116】
Figure 0004631122
【0229】
で表され、nが2の場合、一般式(I)の化合物は、下記一般式(VIII)
【0230】
【化117】
Figure 0004631122
【0231】
で表される。なお、一般式(VI),(VII)及び(VIII) において、A1 〜A12,Z1 ,Z2 ,Ar,点線1および点線2は上記と同じである。また、一般式(VIII) において、2つのArはたがいに同一でも異なっていてもよい。本発明の有機EL素子においては、前記の電子供与性スチリル化合物の中から選ばれた少なくとも二種を組み合わせて、特に発光層また正孔輸送層へ含有させるのが望ましい。二種以上組み合わせるときの混合比は、組み合わせる材料、要求される素子特性などにより、好ましい量比とすればよい。
【0232】
また、同一有機層へドープする場合には、上記組み合わせの化合物を、上記比率にてホストに対し、それぞれ蒸着速度の割合から、10重量%以下、特にそれぞれ1〜5重量%の割合でドープするのが望ましい。上記一般式(VI)〜(VIII) のスチリルアミン化合物は、蛍光増白剤として知られているものが多く、その製造方法については、例えば“Bulletin”第35巻,第135ページ(1962年)や、“Synthesis”第341ページ(1982年)などに記載されている。以下、一般式(VI)〜(VIII) のスチリルアミン化合物の具体的な製造方法について説明する。
【0233】
(1)一般式(VI)で表されるスチリルアミン化合物の製法 一般式(IX)
【0234】
【化118】
Figure 0004631122
【0235】
〔式中、A1 〜A6 ,Z1 および点線1は上記と同じであり、Aは炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。〕で表されるホスホン酸エステルと、一般式(X)
【0236】
【化119】
Figure 0004631122
【0237】
〔式中、A7 〜A12,Z2 および点線2は上記と同じである。〕で表されるアルデヒドとをカップリングさせることにより、一般式(VI)で表されるスチリルアミン化合物が得られる。
【0238】
(2)一般式(VII)で表されるスチリルアミン化合物の製法 一般式(XI)
【0239】
【化120】
Figure 0004631122
【0240】
〔式中、Ar及びAは上記と同じである。〕で表されるホスホン酸エステルと、上記一般式(X)または一般式(XII)
【0241】
【化121】
Figure 0004631122
【0242】
〔式中、A1 〜A6 ,Z1 および点線1は上記と同じである。〕で表されるアルデヒドとをカップリングさせることにより、一般式(VII)で表されるスチリルアミン化合物が得られる。また、一般式(XIII) OHC−Ar−CHO ・・・(XIII) 〔式中、Arは上記と同じである。〕で表されるアルデヒドと、上記一般式(IX)又は一般式(XIV)
【0243】
【化122】
Figure 0004631122
【0244】
〔式中、A7 〜A12,Z2 ,点線2およびAは上記と同じである。〕で表されるホスホン酸エステルとをカップリングさせることによっても、一般式(VII)で表されるスチリルアミン化合物が得られる。
【0245】
(3)一般式(VIII) で表されるスチリルアミン化合物の製法 一般式(XV)
【0246】
【化123】
Figure 0004631122
【0247】
〔式中、ArおよびAは上記と同じである。〕で表されるホスホン酸エステルと、上記一般式(X)又は一般式(XII)で表されるアルデヒドとをカップリングさせることにより、一般式(VIII) で表されるスチリルアミン化合物が得られる。
また、一般式(XVI) OHC−Ar−CH=CH−Ar−CHO ・・・ (XVI) 〔式中、Arは上記と同じである。〕で表されるアルデヒドと、上記一般式(IX) 又は(XIV) で表されるホスホン酸エステルとをカップリングさせることによっても、一般式(VIII) で表されるスチリルアミン化合物が得られる。その他、種々の方法が知られているが、上記したようなWittig反応を用いる方法が有利である。
【0248】
前記製造方法においては、通常反応溶媒が用いられる。該反応溶媒としては、炭化水素類,アルコール類,エーテル類が好ましく、具体的には、メタノール;エタノール;イソプロパノール;ブタノール;2−メトキシエタノール;1,2−ジメトキシエタン;ビス(2−メトキシエチル)エーテル;ジオキサン;テトラヒドロフラン;トルエン;キシレン;ジメチルスルホキシド;N,N−ジメチルホルムアミド;N−メチルピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。特に、テトラヒドロフラン及びジメチルスルホキシドが好適である。また、縮合剤として、例えば水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,ナトリウムアミド,水素化ナトリウム,n−ブチルリチウム,ナトリウムメチラート,カリウムt−ブトキシドなどが好ましく用いられ、特にn−ブチルリチウム及びカリウムt−ブトキシドが好適である。反応温度は、使用する原料の種類などにより異なり、一概に定めることはできないが、通常は0〜100℃の範囲、好ましくは0℃〜室温の範囲で選ばれる。上記一般式(I)〔一般式(VI),(VII),(VIII)〕で表されるスチリルアミン化合物の具体例としては、以下に示す化合物を挙げることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0249】
一般式(VI)で表されるスチリルアミン化合物の例
【0250】
【化124】
Figure 0004631122
【0251】
【化125】
Figure 0004631122
【0252】
【化126】
Figure 0004631122
【0253】
一般式(VII) で表されるスチリルアミン化合物の例
【0254】
【化127】
Figure 0004631122
【0255】
【化128】
Figure 0004631122
【0256】
【化129】
Figure 0004631122
【0257】
一般式(VIII)で表されるスチリルアミン化合物の例
【0258】
【化130】
Figure 0004631122
【0259】
【化131】
Figure 0004631122
【0260】
(イ)一般式(B)で表されるクマリン系化合物
【0261】
【化132】
Figure 0004631122
(式中T1 ,T2 ,T3 ,T4 ,T5 ,T6 は各々に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、T7 は水素原子,素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を示し、Xは−S−,
【0262】
【化133】
Figure 0004631122
【0263】
を示し、Yは水素原子または、
【0264】
【化134】
Figure 0004631122
【0265】
を示す。T8 ,T9 は各々水素原子,メチル基,エチル基,あるいはフェニル基であり、T4 ,T5 ,T6 とT8 ,T9 は互いに結合し、飽和6員環を形成してもよい。さらにT1 ,T2 ,T3 は互いに結合し、飽和6員環を形成してもよい。)
【0266】
具体的には以下の化合物が挙げられる。
【0267】
【化135】
Figure 0004631122
【0268】
【化136】
Figure 0004631122
【0269】
【化137】
Figure 0004631122
【0270】
このような蛍光性物質の含有量は、ホスト物質である化合物の10モル%以下とすることが好ましい。
【0271】
クマリン系化合物は、式(C)で示されるクマリン誘導体も好ましい。
【0272】
【化138】
Figure 0004631122
【0273】
式(C)について説明すると、式(C)中、D1 、D2 、D3 およびD4 は各々水素原子またはアルキル基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
1 〜D4 で表されるアルキル基としては、炭素数1〜6のものが好ましく、直鎖状であっても分岐を有するものであってもよく、場合によっては環状であってもよい。また置換基を有していてもよい。D1 〜D4 で表されるアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、(n−,i−,s−,t−)ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。D1 〜D4 で表されるアルキル基の総炭素数は1〜6であることが好ましい。
【0274】
1 〜D4 としてはメチル基等が好ましく、D1 〜D4 は通常同一である。
【0275】
Zはイミダゾール環中の2個の炭素原子とともにベンゼン環またはナフタレン環を形成するのに必要な原子群を表し、これらのベンゼン環、ナフタレン環はさらに置換基を有していてもよく、これらの置換基の具体例については後述する。
Zで形成される環がナフタレン環である場合、イミダゾール環を含むベンゾイミダゾール環を基礎成分と考えたとき、このベンゾイミダゾール環におけるベンゼン環の縮合位置はいずれであってもよく、ベンゾイミダゾール環の4,5位、5,6位、6,7位のいずれであってもよい(下記構造式参照)。
【0276】
【化139】
Figure 0004631122
【0277】
式(C)で示される化合物のなかでも、下記式(Ia)で示される化合物が好ましい。
【0278】
【化140】
Figure 0004631122
【0279】
式(Ia)中、D1 〜D4 は式(C)におけるものと同義のものであり、D5 、D6 、D7 およびD8 は各々水素原子、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、ブチル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基等)、アリール基(例えばフェニル基、(o−,m−,p−)トリル基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、置換アミノ基(例えばジフェニルアミノ基等)、複素環基(例えばピリジル基、チエニル基等)等を表す。D5 〜D8 は水素原子、アリール基等であることが好ましい。
【0280】
また、D5 とD6 、D6 とD7 またはD7 とD8 は、各々互いに結合してベンゼン環を形成してもよく、このようにベンゼン環を形成することも場合によっては好ましい。こうして形成されるベンゼン環はさらに置換基を有していてもよく、この場合の置換基としてはD5 〜D8 で表される置換基と同様のものが挙げられる。
【0281】
以下に式(C)で示されるクマリン誘導体の具体的化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。化合物例は式(Ia)中のD1 〜D8 の組合せで示している。また、Phはフェニル基を表わす。
【0282】
【化141】
Figure 0004631122
【0283】
式(C)で表されるクマリン誘導体は西独特許公開2253538号[Ger.Offen.2253538(Ger.Appl.1972)W.Mach,D.Augart,H.Scheuermann ]等に記載の方法で合成することができる。
【0284】
また、いずれかの発光層には、下記式(1)で表される基本骨格を有するルブレン誘導体等の緑〜赤色蛍光物質を含有することが好ましい。また、上記ホスト物質との組み合わせでは、テトラアリールジアミン誘導体と組み合わせることが好ましい。
【0285】
【化142】
Figure 0004631122
【0286】
発光層に式(1)で表されるルブレン誘導体を含有させことにより、特に長波長域に極大発光波長をもつ有機EL素子が得られる。特に、式(1)の化合物は、発光層において、それ自体で発光機能を有するホスト物質のドーパントとして、あるいは電子注入輸送性化合物と正孔注入輸送性化合物とで形成された発光機能を有する混合層のドーパントとして使用することによって、青〜赤色の発光、特に長波長発光が可能であり、しかも十分な輝度が得られ、発光性能が持続する。
【0287】
式(1)中、Q1 〜Q4 はそれぞれ非置換、または置換基を有するアルキル基、アリール基、アミノ基、複素環基およびアルケニル基のいずれかを表す。また、好ましくはアリール基、アミノ基、複素環基およびアルケニル基のいずれかである。
【0288】
1 〜Q4 で表されるアリール基としては、単環もしくは多環のものであって良く、縮合環や環集合も含まれる。総炭素数は、6〜30のものが好ましく、置換基を有していても良い。
【0289】
1 〜Q4 で表されるアリール基としては、好ましくはフェニル基、(o−,m−,p−)トリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基、(1−、および2−)ナフチル基、アントリル基、(o−,m−,p−)ビフェニリル基、ターフェニル基、フェナントリル基等である。
【0290】
1 〜Q4 で表されるアミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等いずれでも良い。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族、および/または1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスジフェニリルアミノ基、ビスナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0291】
1 〜Q4 で表される複素環基としては、ヘテロ原子としてO,N,Sを含有する5員または6員環の芳香族複素環基、および炭素数2〜20の縮合多環芳香複素環基等が挙げられる。
【0292】
1 〜Q4 で表されるアルケニル基としては、少なくとも置換基の1つにフェニル基を有する(1−、および2−)フェニルアルケニル基、(1,2−、および2,2−)ジフェニルアルケニル基、(1,2,2−)トリフェニルアルケニル基等が好ましいが、非置換のものであっても良い。
【0293】
芳香族複素環基および縮合多環芳香複素環基としては、例えばチエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基等が挙げられる。
【0294】
1 〜Q4 が置換基を有する場合、これらの置換基のうちの少なくとも2つがアリール基、アミノ基、複素環基、アルケニル基およびアリーロキシ基のいずれかであることが好ましい。アリール基、アミノ基、複素環基およびアルケニル基については上記R1 〜R4 と同様である。
【0295】
1 〜Q4 の置換基となるアリーロキシ基としては、総炭素数6〜18のアリール基を有するものが好ましく、具体的には(o−,m−,p−)フェノキシ基等である。
【0296】
これら置換基の2種以上が縮合環を形成していてもよい。また、さらに置換されていても良く、その場合の好ましい置換基としては上記と同様である。
【0297】
1 〜Q4 が置換基を有する場合、少なくともその2種以上が上記置換基を有することが好ましい。その置換位置としては特に限定されるものではなく、メタ、パラ、オルト位のいずれでも良い。また、Q1 とQ4 、Q2 とQ3 はそれぞれ同じものであることが好ましいが異なっていてもよい。
【0298】
また、Q1 〜Q8 のうちの少なくとも5種以上、より好ましくは6種以上が非置換または置換基を有するアルキル基、アリール基、アミノ基、アルケニル基または複素環基であることが好ましい。
【0299】
5 ,Q6 ,Q7 およびQ8 は、それぞれ水素または置換基を有していても良いアルキル基、アリール基、アミノ基およびアルケニル基のいずれかを表す。
【0300】
5 ,Q6 ,Q7 およびQ8 で表されるアルキル基としては、炭素数が1〜6のものが好ましく、直鎖状であっても分岐を有していても良い。アルキル基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、(n,i)プロピル基、(n,i,sec,tert)−ブチル基、(n,i,neo,tert)−ペンチル基等が挙げられる。
【0301】
5 ,Q6 ,Q7 およびQ8 で表されるアリール基、アミノ基、アルケニル基としては、上記Q1 〜Q4 の場合と同様である。また、Q5 とQ6 、Q7 とQ8 は、それぞれ同じものであることが好ましいが、異なっていても良い。
【0302】
また、Q1 〜Q8 のうちの5種以上が非置換または置換基を有するアルキル基、アリール基、アミノ基、アルケニル基および複素環基でなくてもよい。但し、その場合にはQ1 〜Q4 が全てフェニル基であって、Q5 ,Q6 ,Q7 およびQ8 が水素であるものは含まないことが好ましい。
【0303】
また、発光層に含有されるルブレン誘導体は、さらに下記の式(2)で表される基本骨格を有するものが好ましい。
【0304】
【化143】
Figure 0004631122
【0305】
上記式(2)中、Q11〜Q13、Q21〜Q23、Q31〜Q33およびQ41〜Q43は水素、アリール基、アミノ基、複素環基、アリーロキシ基およびアルケニル基のいずれかである。また、これらのうちの少なくとも1群中にはアリール基、アミノ基、複素環基およびアリーロキシ基のいずれかを置換基として有することが好ましい。これらの2種以上が縮合環を形成していてもよい。あるいは、これらの全てが水素である場合にはQ5 ,Q6 ,Q7 およびQ8 のいずれかにはアルキル基、またはアリール基を有することが好ましい。
【0306】
アリール基、アミノ基、複素環基およびアリーロキシ基の好ましい態様としては上記Q1 〜Q4 と同様である。また。Q11〜Q13とQ41〜Q43、Q21〜Q23とQ31〜Q33は、それぞれ同じであることが好ましいが異なっていてもよい。
【0307】
11〜Q13、Q21〜Q23、Q31〜Q33およびQ41〜Q43の置換基となるアミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等いずれでも良い。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族、および/または1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基等が挙げられる。
【0308】
形成される縮合環としては、例えばインデン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、isoキノリン、キノクサリン、フェナジン、アクリジン、インドール、カルバゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、アクリドン、ベンズイミダゾール、クマリン、フラボン等を挙げることができる。
【0309】
本発明における特に好ましいルブレン誘導体の具体例を以下のIB−1〜271に示す。但し、各置換基Q1 〜Q8 をQ10〜Q80 として表した。なお、下記具体例のほか、Q1 〜Q4 がフェニル基であって、Q5 〜Q8 すべて水素であるルブレンも特に好ましい化合物である。
【0310】
【表1】
Figure 0004631122
【0311】
【表2】
Figure 0004631122
【0312】
【表3】
Figure 0004631122
【0313】
【表4】
Figure 0004631122
【0314】
【表5】
Figure 0004631122
【0315】
【表6】
Figure 0004631122
【0316】
【表7】
Figure 0004631122
【0317】
【表8】
Figure 0004631122
【0318】
【表9】
Figure 0004631122
【0319】
【表10】
Figure 0004631122
【0320】
【表11】
Figure 0004631122
【0321】
【表12】
Figure 0004631122
【0322】
【表13】
Figure 0004631122
【0323】
【表14】
Figure 0004631122
【0324】
【表15】
Figure 0004631122
【0325】
【表16】
Figure 0004631122
【0326】
【表17】
Figure 0004631122
【0327】
【表18】
Figure 0004631122
【0328】
【表19】
Figure 0004631122
【0329】
【表20】
Figure 0004631122
【0330】
【表21】
Figure 0004631122
【0331】
【表22】
Figure 0004631122
【0332】
【表23】
Figure 0004631122
【0333】
【表24】
Figure 0004631122
【0334】
【表25】
Figure 0004631122
【0335】
【表26】
Figure 0004631122
【0336】
【表27】
Figure 0004631122
【0337】
【表28】
Figure 0004631122
【0338】
【表29】
Figure 0004631122
【0339】
【表30】
Figure 0004631122
【0340】
【表31】
Figure 0004631122
【0341】
【表32】
Figure 0004631122
【0342】
【表33】
Figure 0004631122
【0343】
【表34】
Figure 0004631122
【0344】
【表35】
Figure 0004631122
【0345】
また、本発明に用いる好ましいルブレン誘導体の具体例としては、以下のIIB−1〜84およびIIIB−1〜60に示す化合物であっても良い。但し、各置換基Q1 〜Q8 をQ10〜Q80 として表した。
【0346】
【表36】
Figure 0004631122
【0347】
【表37】
Figure 0004631122
【0348】
【表38】
Figure 0004631122
【0349】
【表39】
Figure 0004631122
【0350】
【表40】
Figure 0004631122
【0351】
【表41】
Figure 0004631122
【0352】
【表42】
Figure 0004631122
【0353】
【表43】
Figure 0004631122
【0354】
【表44】
Figure 0004631122
【0355】
【表45】
Figure 0004631122
【0356】
【表46】
Figure 0004631122
【0357】
【表47】
Figure 0004631122
【0358】
【表48】
Figure 0004631122
【0359】
【表49】
Figure 0004631122
【0360】
【表50】
Figure 0004631122
【0361】
【表51】
Figure 0004631122
【0362】
【表52】
Figure 0004631122
【0363】
【表53】
Figure 0004631122
【0364】
【表54】
Figure 0004631122
【0365】
【表55】
Figure 0004631122
【0366】
【表56】
Figure 0004631122
【0367】
【表57】
Figure 0004631122
【0368】
【表58】
Figure 0004631122
【0369】
【表59】
Figure 0004631122
【0370】
【表60】
Figure 0004631122
【0371】
【表61】
Figure 0004631122
【0372】
【表62】
Figure 0004631122
【0373】
さらに、本発明に用いるルブレン誘導体は以下のIVB−1〜390に示す化合物であってもよい。但し、各置換基Q1 〜Q8 をQ10〜Q80 として表した。
【0374】
【表63】
Figure 0004631122
【0375】
【表64】
Figure 0004631122
【0376】
【表65】
Figure 0004631122
【0377】
【表66】
Figure 0004631122
【0378】
【表67】
Figure 0004631122
【0379】
【表68】
Figure 0004631122
【0380】
【表69】
Figure 0004631122
【0381】
【表70】
Figure 0004631122
【0382】
【表71】
Figure 0004631122
【0383】
【表72】
Figure 0004631122
【0384】
【表73】
Figure 0004631122
【0385】
【表74】
Figure 0004631122
【0386】
【表75】
Figure 0004631122
【0387】
【表76】
Figure 0004631122
【0388】
【表77】
Figure 0004631122
【0389】
【表78】
Figure 0004631122
【0390】
【表79】
Figure 0004631122
【0391】
【表80】
Figure 0004631122
【0392】
【表81】
Figure 0004631122
【0393】
【表82】
Figure 0004631122
【0394】
【表83】
Figure 0004631122
【0395】
【表84】
Figure 0004631122
【0396】
【表85】
Figure 0004631122
【0397】
【表86】
Figure 0004631122
【0398】
【表87】
Figure 0004631122
【0399】
【表88】
Figure 0004631122
【0400】
【表89】
Figure 0004631122
【0401】
【表90】
Figure 0004631122
【0402】
【表91】
Figure 0004631122
【0403】
【表92】
Figure 0004631122
【0404】
【表93】
Figure 0004631122
【0405】
【表94】
Figure 0004631122
【0406】
【表95】
Figure 0004631122
【0407】
【表96】
Figure 0004631122
【0408】
【表97】
Figure 0004631122
【0409】
【表98】
Figure 0004631122
【0410】
【表99】
Figure 0004631122
【0411】
【表100】
Figure 0004631122
【0412】
【表101】
Figure 0004631122
【0413】
【表102】
Figure 0004631122
【0414】
【表103】
Figure 0004631122
【0415】
【表104】
Figure 0004631122
【0416】
【表105】
Figure 0004631122
【0417】
【表106】
Figure 0004631122
【0418】
【表107】
Figure 0004631122
【0419】
【表108】
Figure 0004631122
【0420】
【表109】
Figure 0004631122
【0421】
本発明に用いるルブレン誘導体を得るには、例えば、ジフェニルテトラセンキノン等を用いて合成することができる。以下に代表的な合成スキームを示す。
【0422】
【化144】
Figure 0004631122
【0423】
【化145】
Figure 0004631122
【0424】
【化146】
Figure 0004631122
【0425】
【化147】
Figure 0004631122
【0426】
【化148】
Figure 0004631122
【0427】
上記ルブレン誘導体を含有する発光層は、ホール(正孔)および電子の注入機能、それらの輸送機能、ホールと電子の再結合により励起子を生成させる機能を有する。発光層は本発明の化合物の他、比較的電子的にニュートラルな化合物を用いることで、電子とホールを容易かつバランスよく注入・輸送することができる。
【0428】
本発明におけるルブレン誘導体は、上記ホスト物質と組み合わせて、ドーパントとして使用する。発光層におけるルブレン誘導体の含有量は0.01〜10質量%、さらには0.1〜5質量%であることが好ましい。ホスト物質と組み合わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長特性を変化させることができ、長波長に移行した発光が可能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上する。
【0429】
本発明の発光層には、通常の有機EL素子に用いられている各種有機化合物、例えば、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報、特開平3−792号公報等に記載されている各種有機化合物をともに用いることができる。例えば、ホール注入輸送性化合物としては、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体等を用いることができ、また、電子注入輸送性化合物としては、アルミキノリノールなどの有機金属錯体誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体等を用いることができる。
【0430】
本発明では、発光層を電子注入輸送性化合物とホール注入輸送性化合物との混合層とすることが好ましい。そして、このような混合層にフェニルアントラセン誘導体を含有させる。この化合物は、通常、蛍光性物質として含有されるため、より具体的には、フェニルアントラセン誘導体が電子注入輸送性化合物であるとき、他のホール注入輸送性化合物をさらに添加することが好ましく、本発明のフェニルアントラセン誘導体がホール注入輸送性化合物であるときは、他の電子注入輸送性化合物をさらに添加することが好ましい。上記の混合層における電子注入輸送性化合物とホール注入輸送性化合物との混合比は、重量比で、電子注入輸送性化合物:ホール注入輸送性化合物が60:40〜40:60であることが好ましく、特には50:50程度であることが好ましい。
【0431】
この混合に供する電子注入輸送性化合物は、上記の電子注入輸送層用の化合物のなかから、またホール注入輸送性化合物は、上記のホール注入輸送層用の化合物のなかから選択して用いることができる。また、場合によっては本発明の化合物から選択して用いてもよい。さらに、混合層において、電子注入輸送性化合物、ホール注入輸送性化合物は各々1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
また、混合層には発光強度を高めるために、フェニルアントラセン誘導体や他の蛍光性物質をドープして用いてもよい。
【0432】
さらに、他の電子注入輸送性化合物および他のホール注入輸送性化合物の混合層とし、このような混合層に上記化合物をドープして用いてもよい。
【0433】
このような混合層をEL素子に適用することによって、素子の安定性が向上する。
【0434】
混合層では、キャリアのホッピング伝導パスができるため、各キャリアは極性的に優勢な物質中を移動し、逆の極性のキャリア注入は起こり難くなり、有機化合物がダメージを受け難くなり、素子寿命がのびるという利点があるが、前述のドーパントをこのような混合層に含有させることにより、混合層自体のもつ発光波長特性を変化させることができ、発光波長を長波長に移行させることができるとともに、発光強度を高め、かつ素子の安定性を向上させることができる。特に、上記ルブレン誘導体は電子注入、ホール注入ともに安定でありドーパントとして2質量%程度ドープするだけで飛躍的に発光寿命を延ばすことができる。
【0435】
また、ドーパントのキャリアトラップ性が、電子側もしくはホール側に偏っている場合、再結合を向上させるためキャリアトラップ性の異なる2種以上のドーパントを用いて再結合確率を向上させてもよい。キャリアトラップ性の異なるドーパントを用いることで、発光層でのホールと電子の再結合確率が向上し、発光効率、発光輝度が向上する。特に好ましい組み合わせは、ホスト材料に対して、電子トラップ性の高いドーパントと、ホスト材料に対して、ホールトラップ性の高いドーパントとの組み合わせである。
【0436】
ホール注入輸送性の化合物としては、強い蛍光を持ったアミン誘導体、例えば上記のホール輸送材料であるトリフェニルジアミン誘導体、さらにはスチリルアミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン誘導体を用いるのが好ましい。
【0437】
この場合の混合比は、それぞれのキャリア移動度とキャリア濃度を考慮する事で決定するが、一般的には、ホール注入輸送性化合物の重量比が、1/99〜99/1、さらには10/90〜90/10、特には20/80〜80/20程度)となるようにすることが好ましい。
【0438】
また、混合層の厚さは、分子層一層に相当する厚みから、有機化合物層の膜厚未満とすることが好ましく、具体的には1〜85nmとすることが好ましく、さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすることが好ましい。
【0439】
発光層の形成には、均質な薄膜が形成できることから、真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.2μm 以下の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.2μm を超えていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高くしなければならなくなり、ホールの注入効率も著しく低下する。
【0440】
真空蒸着の条件は特に限定されないが、10-4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続して各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げるため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低くしたり、ダークスポットの発生・成長を抑制したりすることができる。
【0441】
また、混合層の形成方法としては、異なる蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもできる。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ましいが、場合によっては、化合物が島状に存在するものであってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させてコーティングすることにより、第2の発光層を所定の厚さに形成する。
【0442】
本発明の有機EL素子は、上記発光層と、一方の電極である陰電極との間に、無機電子注入輸送層、特に高抵抗の無機電子注入輸送層を有する。
【0443】
このように、電子の導通パスを有し、ホールをブロックできる無機電子注入輸送層を有機層と電子注入電極(陰極)の間に配置することで、発光層へ電子を効率よく注入することができ、発光効率が向上するとともに駆動電圧が低下する。
【0444】
また、好ましくは高抵抗の無機電子注入輸送層の第2成分を、全成分に対して0.2〜40 mol%含有させて導電パスを形成することにより、電子注入電極から発光層側の有機層へ効率よく電子を注入することができる。しかも、有機層から電子注入電極へのホールの移動を抑制することができ、発光層でのホールと電子との再結合を効率よく行わせることができる。また、無機材料の有するメリットと、有機材料の有するメリットとを併せもった有機EL素子とすることができる。本発明の有機EL素子は、従来の有機電子注入層を有する素子と同等かそれ以上の輝度が得られ、しかも、耐熱性、耐候性が高いので従来のものよりも寿命が長く、リークやダークスポットの発生も少ない。また、比較的高価な有機物質ばかりではなく、安価で入手しやすく製造が容易な無機材料も用いることで、製造コストを低減することもできる。
【0445】
高抵抗の無機電子注入輸送層は、その抵抗率が好ましくは1〜1×1011Ω・cm、特に1×103 〜1×108 Ω・cmである。高抵抗の無機電子注入輸送層の抵抗率を上記範囲とすることにより、高い電子ブロック性を維持したまま電子注入効率を飛躍的に向上させることができる。高抵抗の無機電子注入輸送層の抵抗率は、シート抵抗と膜厚からも求めることができる。
【0446】
高抵抗の無機電子注入輸送層は、好ましくは第1成分として仕事関数4eV以下、より好ましくは1〜4eVであって、
好ましくはLi,Na,K,Rb,CsおよびFrから選択される1種以上のアルカリ金属元素、または、
好ましくはMg,CaおよびSrから選択される1種以上のアルカリ土類金属元素、または、
好ましくはLaおよびCeから選択される1種以上のランタノイド系元素のいずれかの酸化物を含有する。これらのなかでも、特に酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化セリウムが好ましい。これらを混合して用いる場合の混合比は任意である。また、これらの混合物中には酸化リチウムがLi2O換算で、50 mol%以上含有されていることが好ましい。
【0447】
高抵抗の無機電子注入輸送層は、さらに第2成分としてZn,Sn,V,Ru,SmおよびInから選択される1種以上の元素を含有する。この場合の第2成分の含有量は、好ましくは0.2〜40 mol%、より好ましくは1〜20 mol%である。含有量がこれより少ないと電子注入機能が低下し、含有量がこれを超えるとホールブロック機能が低下してくる。2種以上を併用する場合、合計の含有量は上記の範囲にすることが好ましい。第2成分は金属元素の状態でも、酸化物の状態であってもよい。
【0448】
高抵抗である第1成分中に導電性(低抵抗)の第2成分を含有させることにより、絶縁性物質中に導電物質が島状に存在するようになり、電子注入のためのホッピングパスが形成されるものと考えられる。
【0449】
上記第1成分の酸化物は通常化学量論組成(stoichiometric composition)であるが、これから多少偏倚して非化学量論的組成(non-stoichiometry)となっていてもよい。また、第2成分も、通常、酸化物として存在するが、この酸化物も同様である。
【0450】
高抵抗の無機電子注入輸送層には、他に、不純物として、Hやスパッタガスに用いるNe、Ar、Kr、Xe等を合計5at%以下含有していてもよい。
【0451】
なお、高抵抗の無機電子注入輸送層全体の平均値としてこのような組成であれば、均一でなくてもよく、膜厚方向に濃度勾配を有する構造としてもよい。
【0452】
高抵抗の無機電子注入輸送層は、通常、非晶質状態である。
【0453】
高抵抗の無機電子注入輸送層の膜厚としては、好ましくは0.2〜30nm、特に0.2〜20nm程度が好ましい。電子注入層がこれより薄くても厚くても、電子注入層としての機能を十分に発揮できなくなくなってくる。
【0454】
上記の高抵抗の無機電子注入輸送層の製造方法としては、スパッタ法、蒸着法などの各種の物理的または化学的な薄膜形成方法などが考えられるが、スパッタ法が好ましい。なかでも、上記第1成分と第2成分のターゲットを別個にスパッタする多元スパッタが好ましい。多元スパッタにすることで、それぞれのターゲットに好適なスパッタ法を用いることができる。また、1元スパッタとする場合には、第1成分と第2成分の混合ターゲットを用いてもよい。
【0455】
高抵抗の無機電子注入輸送層をスパッタ法で形成する場合、スパッタ時のスパッタガスの圧力は、0.1〜1Paの範囲が好ましい。スパッタガスは、通常のスパッタ装置に使用される不活性ガス、例えばAr,Ne,Xe,Kr等が使用できる。また、必要によりN2 を用いてもよい。スパッタ時の雰囲気としては、上記スパッタガスに加えO2 を1〜99%程度混合して反応性スパッタを行ってもよい。
【0456】
スパッタ法としてはRF電源を用いた高周波スパッタ法や、DCスパッタ法等が使用できる。スパッタ装置の電力としては、好ましくはRFスパッタで0.1〜10W/cm2 の範囲が好ましく、成膜レートは0.5〜10nm/min 、特に1〜5nm/min の範囲が好ましい。
【0457】
成膜時の基板温度としては、室温(25℃)〜150℃程度である。
【0458】
無機電子注入輸送層は、無機絶縁性電子注入輸送層であってもよい。
【0459】
無機絶縁性電子注入輸送層は、主成分として酸化リチウム(Li2O)、酸化ルビジウム(Rb2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化セシウム(Cs2O)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化マグネシウム(MgO)、および酸化カルシウム(CaO)の1種または2種以上を含有する。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよく、2種以上を用いる場合の混合比は任意である。また、これらのなかでは酸化ストロンチウムが最も好ましく、次いで酸化マグネシウム、酸化カルシウム、さらに酸化リチウム(Li2O)の順で好ましく、次いで酸化ルビジウム(Rb2O)、次いで酸化カリウム(K2O)、および酸化ナトリウム(Na2O)が好ましい。これらを混合して用いる場合には、これらのなかで酸化ストロンチウムが40 mol%以上、または酸化リチウムと酸化ルビジウムの総計が40 mol%以上、特に50 mol%以上含有されていることが好ましい。
【0460】
無機絶縁性電子注入輸送層は、好ましくは安定剤として酸化シリコン(SiO2)、および/または酸化ゲルマニウム(GeO2)を含有する。これらはいずれか一方を用いてもよいし、両者を混合して用いてもよく、その際の混合比は任意である。
【0461】
上記の各酸化物は、通常、化学量論的組成(stoichiometric composition)で存在するが、これから多少偏倚し、非化学量論的組成(non-stoichiometry)となっていてもよい。
【0462】
また、本発明の無機絶縁性電子注入輸送層は、好ましくは上記各構成成分が全成分に対して、SrO、MgO、CaO、Li2O、Rb2O、K2O、Na2O、Cs2O、SiO2、GeO2に換算して、
主成分:80〜99 mol%、より好ましくは90〜95 mol%、
安定剤: 1〜20 mol%、より好ましくは 5〜10 mol%、
含有する。
【0463】
無機絶縁性電子注入輸送層の膜厚としては、好ましくは0.1〜2nm、より好ましくは0.3〜0.8nmである。
【0464】
さらに、本発明の有機EL素子は、上記発光層と、一対の電極との間に、無機ホール注入輸送層、特に高抵抗の無機ホール注入輸送層を有する。
【0465】
このように、ホールの導通パスを有し、電子をブロックできる高抵抗の無機ホール注入輸送層を有機層とホール注入電極の間に配置することで、発光層へホールを効率よく注入することができ、さらに発光効率が向上するとともに駆動電圧も低下する。
【0466】
また、好ましくは高抵抗の無機ホール注入輸送層の主成分としてシリコンや、ゲルマニウム等の金属または半金属の酸化物を用い、これに仕事関数4.5eV以上、好ましくは4.5〜6eVの金属や、半金属および/またはこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硼化物のいずれか1種以上を含有させて導電パスを形成することにより、ホール注入電極から発光層側の有機層へ効率よくホールを注入することができる。しかも、有機層からホール注入電極への電子の移動を抑制することができ、発光層でのホールと電子との再結合を効率よく行わせることができる。また、無機材料の有するメリットと、有機材料の有するメリットとを併せもった有機EL素子とすることができる。本発明の有機EL素子は、従来の有機ホール注入層を有する素子と同等かそれ以上の輝度が得られ、しかも、耐熱性、耐候性が高いので従来のものよりも寿命が長く、リークやダークスポットの発生も少ない。また、比較的高価な有機物質ばかりではなく、安価で入手しやすく製造が容易な無機材料も用いることで、製造コストを低減することもできる。
【0467】
高抵抗の無機ホール注入輸送層は、その抵抗率が好ましくは1〜1×1011Ω・cm、特に1×103〜1×108Ω・cmである。高抵抗の無機ホール注入輸送層の抵抗率を上記範囲とすることにより、高い電子ブロック性を維持したままホール注入効率を飛躍的に向上させることができる。高抵抗の無機ホール注入輸送層の抵抗率は、シート抵抗と膜厚からも求めることができる。この場合、シート抵抗は4端子法等により測定することができる。
【0468】
主成分の材料は、シリコン、ゲルマニウムの酸化物であり、好ましくは
(Si1-xGex)Oyにおいて
0≦x≦1、
1.7≦y≦2.2、好ましくは1.7≦y≦1.99
である。高抵抗の無機ホール注入輸送層の主成分は、酸化ケイ素でも酸化ゲルマニウムでもよく、それらの混合薄膜でもよい。yがこれより大きくても小さくてもホール注入機能は低下してくる傾向がある。組成は、例えばラザフォード後方散乱、化学分析等で調べればよい。
【0469】
高抵抗の無機ホール注入輸送層は、さらに主成分に加え、仕事関数4.5eV以上の金属(半金属を含む)の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物および硼化物を含有することが好ましい。仕事関数4.5eV以上、好ましくは4.5〜6eVの金属は、好ましくはAu,Cu、Fe、Ni、Ru、Sn,Cr,Ir,Nb,Pt,W,Mo,Ta,PdおよびCoのいずれか1種また2種以上である。これらは一般に金属としてあるいは酸化物の形で存在する。また、これらの炭化物、窒化物、ケイ化物、硼化物であってもよい。これらを混合して用いる場合の混合比は任意である。これらの含有量は好ましくは0.2〜40 mol%、より好ましくは1〜20 mol%である。含有量がこれより少ないとホール注入機能が低下し、含有量がこれを超えると電子ブロック機能が低下してくる。2種以上を併用する場合、合計の含有量は上記の範囲にすることが好ましい。
【0470】
上記金属または金属(半金属を含む)の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物および硼化物は、通常、高抵抗の無機ホール注入輸送層中に分散している。分散粒子の粒径としては、通常、1〜5nm程度である。この導体である分散粒子同士との間で高抵抗の主成分を介してホールを搬送するためのホッピングパスが形成されるものと考えられる。
【0471】
高抵抗の無機ホール注入輸送層には、他に、不純物として、Hやスパッタガスに用いるNe、Ar、Kr、Xe等を合計5at%以下含有していてもよい。
【0472】
なお、高抵抗の無機ホール注入輸送層全体の平均値としてこのような組成であれば、均一でなくてもよく、膜厚方向に濃度勾配を有する構造としてもよい。
【0473】
高抵抗の無機ホール注入輸送層は、通常、非晶質状態である。
【0474】
高抵抗の無機ホール注入輸送層の膜厚としては、好ましくは0.3〜100nm、より好ましくは1〜100nm、特に5〜30nm程度が好ましい。高抵抗の無機ホール注入輸送層がこれより薄くても厚くても、ホール注入層としての機能を十分に発揮できなくなくなってくる。
【0475】
上記の高抵抗の無機ホール注入輸送層の製造方法としては、スパッタ法、蒸着法などの各種の物理的または化学的な薄膜形成方法などが考えられるが、スパッタ法が好ましい。なかでも、上記主成分と金属または金属酸化物等のターゲットを別個にスパッタする多元スパッタが好ましい。多元スパッタにすることで、それぞれのターゲットに好適なスパッタ法を用いることができる。また、1元スパッタとする場合には、主成分のターゲット上に上記金属または金属酸化物等の小片を配置し、両者の面積比を適当に調整することにより、組成を調整してもよい。
【0476】
高抵抗の無機ホール注入輸送層をスパッタ法で形成する場合、上記無機電子注入輸送層と同様である。
【0477】
また、無機ホール注入輸送層は無機絶縁性ホール注入輸送層であってもよい。
無機絶縁性ホール注入輸送層は、シリコンおよび/またはゲルマニウムの酸化物を主成分とする。
【0478】
また、主成分の平均組成、
好ましくはラザフォード後方散乱により得られる主成分の平均組成を、
(Si1-xGex)Oyと表したとき
Figure 0004631122
である。
【0479】
このように、無機絶縁性ホール注入輸送層の主成分である酸化物を上記組成範囲とすることにより、ホール注入電極から発光層側の有機層へ効率よくホールを注入することができる。しかも、有機層からホール注入電極への電子の移動を抑制することができ、発光層でのホールと電子との再結合を効率よく行わせることができる。また、ホール注入輸送を目的としているため、逆バイアスをかけると発光しない。特に、時分割駆動方式など、高い発光輝度が要求されるディスプレイに効果的に応用でき、無機材料の有するメリットと、有機材料の有するメリットとを併せもった有機EL素子とすることができる。本発明の有機EL素子は、従来の有機ホール注入層を有する素子と同等の輝度が得られ、しかも、耐熱性、耐候性が高いので従来のものよりも寿命が長く、リークやダークスポットの発生も少ない。また、比較的高価な有機物質ではなく、安価で入手しやすい無機材料を用いているので、製造が容易となり、製造コストを低減することができる。
【0480】
酸素の含有量を表すyは、上記組成範囲となっていればよく、1.7以上であって1.99以下である。yがこれより大きくても、yがこれより小さくてもホール注入能が低下し、輝度が低下してくる。また、好ましくは1.85以上であって1.98以下である。
【0481】
無機絶縁性ホール注入輸送層は、酸化ケイ素でも酸化ゲルマニウムでもよく、それらの混合薄膜でもよい。これらの組成比を表すxは、0≦x≦1である。また、好ましくはxは0.4以下、より好ましくは0.3以下、特に0.2以下であることが好ましい。
【0482】
あるいは、xは好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、特に0.8以上であってもよい。
【0483】
上記酸素の含有量は、ラザフォード後方散乱により得られた膜中の平均組成であるが、これと同等な精度を有する測定方法であれば上記測定法に限定されるものではない。
【0484】
無機絶縁性ホール注入輸送層は、好ましくはさらにCu、Fe、Ni、Ru、SnおよびAuのいずれか1種以上を含有する。中でも、Cu、Ni、Sn、特にNiを含有することが好ましい。これらの元素の含有量は好ましくは10at%以下、より好ましくは0.05〜10at%、さらには0.1〜10at%、特に0.5〜5at%である。含有量がこれを超えるとホール注入機能が低下してくる。
2種以上を併用する場合、合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0485】
無機絶縁性ホール注入輸送層には、他に、不純物として、スパッタガスに用いるNe、Ar、Kr、Xe等を好ましくは合計10at%以下、より好ましくは0.01〜2質量%、特に0.05〜1.5質量%程度含有していてもよい。これらの元素は1種でも2種以上を含有していてもよく、これらを2種以上用いる場合の混合比は任意である。
【0486】
これらの元素はスパッタガスとして使用され、無機絶縁性ホール注入輸送層成膜時に混入する。これらの元素の含有量が多くなるとトラップ効果が極端に低下し、所望の性能が得られない。
【0487】
スパッタガスの含有量は、成膜時の圧力と、スパッタガスと酸素の流量比、成膜レート等により、特に成膜時の圧力で決められる。スパッタガスの含有量を上記範囲とするためには、高真空側で成膜した方が好ましく、具体的には、1Pa以下、特に0.1〜1Paの範囲が好ましい。
【0488】
なお、ホール注入層全体の平均値としてこのような組成であれば、均一でなくてもよく、膜厚方向に濃度勾配を有する構造としてもよい。この場合は、有機層(発光層)界面側が酸素プアであることが好ましい。
【0489】
無機絶縁性ホール注入輸送層は、通常、非晶質状態である。
【0490】
無機絶縁性ホール注入輸送層の膜厚としては、特に制限はないが、0.05〜10nm、特に1〜5nm程度が好ましい。ホール注入層がこれより薄くても厚くても、ホール注入を十分には行えなくなってくる。
【0491】
上記の無機絶縁性電子注入輸送層、無機絶縁性ホール注入輸送層の製造方法としては、スパッタ法、EB蒸着法などの各種の物理的または化学的な薄膜形成方法などが可能であるが、スパッタ法が好ましい。その際の条件等は上記無機電子注入輸送層と同様である。なお、本発明においては、高抵抗の無機電子注入輸送層および高抵抗の無機ホール注入輸送層を用いることが望ましい。
【0492】
無機電子注入輸送層の上(発光層と反対側:所謂逆積層のときには下側になる)には、陰電極を有する。陰電極は、下記の無機絶縁性電子注入輸送層との組み合わせでは、低仕事関数で電子注入性を有している必要がないため、特に限定される必要はなく、通常の金属を用いることができる。なかでも、導電率や扱い易さの点で、Al,Ag,In,Ti,Cu,Au,Mo,W,Pt,PdおよびNi、特にAl,Agから選択される1種または2種等の金属元素が好ましい。
【0493】
これら陰電極薄膜の厚さは、電子を無機絶縁性電子注入輸送層に与えることのできる一定以上の厚さとすれば良く、50nm以上、好ましくは100nm以上とすればよい。また、その上限値には特に制限はないが、通常膜厚は50〜500nm程度とすればよい。なお、陰電極側から発光光を取り出す場合には、膜厚は50〜300nm程度が好ましい。
【0494】
本発明の有機EL素子は、上記無機電子注入輸送層との組み合わせにおいて、陰電極として上記金属元素を用いることが好ましいが、必要に応じて下記のものを用いてもよい。例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Sn、Zn、Zr等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分、3成分の合金系、例えばAg・Mg(Ag:0.1〜50at%)、Al・Li(Li:0.01〜14at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)、Al・Ca(Ca:0.01〜20at%)等が挙げられる。
【0495】
上記陰電極薄膜の厚さは、電子注入を十分行える一定以上の厚さとすれば良く、0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上、特に1nm以上とすればよい。また、その上限値には特に制限はないが、通常膜厚は1〜500nm程度とすればよい。
陰電極の上には、さらに補助電極(保護電極)を設けてもよい。
【0496】
補助電極の厚さは、電子注入効率を確保し、水分や酸素あるいは有機溶媒の進入を防止するため、一定以上の厚さとすればよく、好ましくは50nm以上、さらには100nm以上、特に100〜500nmの範囲が好ましい。補助電極層が薄すぎると、その効果が得られず、また、補助電極層の段差被覆性が低くなってしまい、端子電極との接続が十分ではなくなる。一方、補助電極層が厚すぎると、補助電極層の応力が大きくなるため、ダークスポットの成長速度が速くなってしまう等といった弊害が生じてくる。
【0497】
補助電極は、組み合わせる陰電極の材質により最適な材質を選択して用いればよい。例えば、電子注入効率を確保することを重視するのであればAl等の低抵抗の金属を用いればよく、封止性を重視する場合には、TiN等の金属化合物を用いてもよい。
【0498】
陰電極と補助電極とを併せた全体の厚さとしては、特に制限はないが、通常50〜500nm程度とすればよい。
【0499】
ホール注入電極材料は、ホール注入層へホールを効率よく注入することのできるものが好ましく、仕事関数4.5eV〜5.5eVの物質が好ましい。具体的には、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、酸化インジウム(In23 )、酸化スズ(SnO2 )および酸化亜鉛(ZnO)のいずれかを主組成としたものが好ましい。これらの酸化物はその化学量論組成から多少偏倚していてもよい。In2 3 に対するSnO2 の混合比は、1〜20質量%、さらには5〜12質量%が好ましい。また、IZOでのIn2 3 に対するZnOの混合比は、通常、12〜32質量%程度である。
【0500】
ホール注入電極は、仕事関数を調整するため、酸化シリコン(SiO2 )を含有していてもよい。酸化シリコン(SiO2 )の含有量は、ITOに対するSiO2 の mol比で0.5〜10%程度が好ましい。SiO2 を含有することにより、ITOの仕事関数が増大する。
【0501】
光を取り出す側の電極は、発光波長帯域、通常400〜700nm、特に各発光光に対する光透過率が50%以上、特に60%以上、さらには70%以上であることが好ましい。透過率が低くなると、発光層からの発光自体が減衰され、発光素子として必要な輝度を得難くなってくる。
【0502】
電極の厚さは、50〜500nm、特に50〜300nmの範囲が好ましい。また、その上限は特に制限はないが、あまり厚いと透過率の低下や剥離などの心配が生じる。厚さが薄すぎると、十分な効果が得られず、製造時の膜強度等の点でも問題がある。
【0503】
本発明の有機EL素子は、例えば図1に示すように、基板1/ホール注入電極2/無機ホール注入輸送層4/第1の発光層5a/第2の発光層5b/無機電子注入輸送層6/陰電極3と、発光層を2層以上の積層体とした構成を有する。このような素子構造により、発光色の色調調整や多色化を行うことができる。図1において、ホール注入電極2と陰電極3の間には、駆動電源Eが接続されている。さらに、これらの積層順を逆にした逆積層としてもよい。
【0504】
これらの積層構成は、素子に求められる性能や使用目的などにより、適宜最適な構成を選択したり、必要な変更を加えて使用することができる。
【0505】
さらに、素子の有機層や電極の酸化を防ぐために、素子上を封止板等により封止することが好ましい。封止板は、湿気の侵入を防ぐために、接着性樹脂層を用いて、封止板を接着し密封する。封止ガスは、Ar、He、N2 等の不活性ガス等が好ましい。また、この封止ガスの水分含有量は、100ppm 以下、より好ましくは10ppm 以下、特には1ppm 以下であることが好ましい。この水分含有量に下限値は特にないが、通常0.1ppm 程度である。
【0506】
封止板の材料としては、好ましくは平板状であって、ガラスや石英、樹脂等の透明ないし半透明材料が挙げられるが、特にガラスが好ましい。このようなガラス材として、コストの面からアルカリガラスが好ましいが、この他、ソーダ石灰ガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等のガラス組成のものも好ましい。特に、ソーダガラスで、表面処理の無いガラス材が安価に使用でき、好ましい。封止板としては、ガラス板以外にも、金属板、プラスチック板等を用いることもできる。
【0507】
封止板は、スペーサーを用いて高さを調整し、所望の高さに保持してもよい。
スペーサーの材料としては、樹脂ビーズ、シリカビーズ、ガラスビーズ、ガラスファイバー等が挙げられ、特にガラスビーズ等が好ましい。スペーサーは、通常、粒径の揃った粒状物であるが、その形状は特に限定されるものではなく、スペーサーとしての機能に支障のないものであれば種々の形状であってもよい。その大きさとしては、円換算の直径が1〜20μm 、より好ましくは1〜10μm 、特に2〜8μm が好ましい。このような直径のものは、粒長100μm 以下程度であることが好ましく、その下限は特に規制されるものではないが、通常直径と同程度以上である。
【0508】
なお、封止板に凹部を形成した場合には、スペーサーは使用しても、使用しなくてもよい。使用する場合の好ましい大きさとしては、前記範囲でよいが、特に2〜8μm の範囲が好ましい。
【0509】
スペーサーは、予め封止用接着剤中に混入されていても、接着時に混入してもよい。封止用接着剤中におけるスペーサーの含有量は、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0510】
接着剤としては、安定した接着強度が保て、気密性が良好なものであれば特に限定されるものではないが、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を用いることが好ましい。
【0511】
本発明において、有機EL構造体を形成する基板としては、非晶質基板たとえばガラス、石英など、結晶基板たとえば、Si、GaAs、ZnSe、ZnS、GaP、InPなどがあげられ、またこれらの結晶基板に結晶質、非晶質あるいは金属のバッファ層を形成した基板も用いることができる。また金属基板としては、Mo、Al、Pt、Ir、Au、Pdなどを用いることができ、好ましくはガラス基板が用いられる。基板は、通常光取り出し側となるため、上記電極と同様な光透過性を有することが好ましい。
【0512】
さらに、本発明素子を、平面上に多数並べてもよい。平面上に並べられたそれぞれの素子の発光色を変えて、カラーのディスプレーにすることができる。
【0513】
基板に色フィルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を用いて発光色をコントロールしてもよい。
【0514】
色フィルター膜には、液晶ディスプレイ等で用いられているカラーフィルターを用いれば良いが、有機EL素子の発光する光に合わせてカラーフィルターの特性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すればよい。
【0515】
また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収するような短波長の外光をカットできるカラーフィルターを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向上する。
【0516】
また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0517】
蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させることで、発光色の色変換を行うものであるが、組成としては、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成される。
【0518】
蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いことが望ましい。実際には、レーザー色素などが適しており、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロシアニン等も含む)ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素系化合物・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・クマリン系化合物等を用いればよい。
【0519】
バインダーは、基本的に蛍光を消光しないような材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷等で微細なパターニングが出来るようなものが好ましい。また、基板上にホール注入電極と接する状態で形成される場合、ホール注入電極(ITO、IZO等)の成膜時にダメージを受けないような材料が好ましい。
【0520】
光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りない場合に用いるが、必要のない場合は用いなくても良い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しないような材料を選べば良い。
【0521】
本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動型、パルス駆動型のEL素子として用いられるが、交流駆動とすることもできる。印加電圧は、通常、2〜30V 程度とされる。
【0522】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0523】
<実施例1>
ガラス基板としてコーニング社製商品名7059基板を中性洗剤を用いてスクラブ洗浄した。次いで、この基板をスパッタ装置の基板ホルダーに固定し、ITO酸化物ターゲットを用いDCマグネトロンスパッタリング法により、ITOホール注入電極層を形成した。
【0524】
ITOが成膜された基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、煮沸エタノール中から引き上げて乾燥した。次いで、表面をUV/O3 洗浄した後、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、槽内を1×10-4Pa以下まで減圧した。
【0525】
ターゲットにSiO2と、この上に所定の大きさのAuのペレットを配置して用い、高抵抗の無機ホール注入層を20nmの膜厚に成膜した。このときのスパッタガスはAr:30sccm、O2:5sccmで、室温(25℃)下、成膜レート1nm/min 、動作圧力0.2〜2Pa、投入電力500Wとした。成膜した高抵抗の無機ホール注入輸送層の組成は、SiO1.9にAuを4 mol%含有するものであった。
【0526】
さらに、減圧を保ったまま、テトラアリールジアミン誘導体として上記例示化合物N,N,N’,N’−テトラ(3−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No. IA−1)と、ルブレンとを、蒸着速度:0.2nm/secとして40nmの厚さに蒸着し、第2の発光層とした。TPDに対してルブレンを5体積%ドープした。
【0527】
次いで、フェニルアントラセン誘導体として、上記例示化合物I−1を50nmの厚さに蒸着し、第1の発光層とした。フェニルアントラセン誘導体に対して下記の化合物を3体積%ドープした。
【0528】
【化149】
Figure 0004631122
【0529】
次いで、減圧状態を保ったまま、スパッタ装置に移し、Li2OにRuO2 を4 mol%混合したターゲットを用い、高抵抗の無機電子注入輸送層を2nmの膜厚に成膜した。このときのスパッタガスはAr:30sccm、O2:5sccmで、室温(25℃)下、成膜レート1nm/min 、動作圧力:0.2〜2Pa、投入電力:500Wとした。成膜した無機電子注入層の組成は、ターゲットとほぼ同様であった。
【0530】
さらに、減圧を保ったまま、Alを200nmの厚さに蒸着して陰電極とし、最後にガラス封止して有機EL素子を得た。
【0531】
また、比較サンプル1として、発光層をAlq3 単層で40nmの厚さに形成した他は上記と同様にして有機EL素子を得た。また、比較サンプル2として、上記無機ホール注入層に代えて、蒸着法により、ポリチオフェンを蒸着速度0.1nm/secで10nmの厚さに蒸着してホール注入層を形成し、TPDを蒸着速度0.1nm/secで20nmの厚さに蒸着してホール輸送層を形成し、さらに、上記無機電子注入輸送層に代えて、蒸着法により、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )を蒸着速度0.2nm/secとして30nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした有機EL素子を作製した。
【0532】
加速試験として、100mA/cm2 の一定電流密度で発光輝度、寿命特性を調べた。従来の有機材料を電子注入輸送層としたこと以外全く同様の比較サンプルに比べ、80%程度発光輝度が向上していた。また、比較サンプル1は100時間以内に、比較サンプル2は80時間以内に輝度が半減したのに対して本発明サンプルは、800時間以上で、初期輝度の60%以上を保っていた。
【0533】
<実施例2>
実施例1において、高抵抗の無機ホール注入層を成膜する際、ターゲットにGeO2と、このターゲット上に所定の大きさのAuのペレットを配置し、高抵抗の無機ホール注入層を20nmの膜厚に成膜した。このときのスパッタガスはAr:30sccm、O2:5sccmで、室温(25℃)下、成膜レート1nm/min 、動作圧力0.2〜2Pa、投入電力500Wとした。成膜した無機ホール注入層の組成は、GeO2にAuを2 mol%含有するものであった。
【0534】
その他は実施例1と同様にして有機EL素子を得た。得られた有機EL素子を空気中で、10mA/cm2 の定電流密度で駆動したところ、初期輝度は880cd/m2 、駆動電圧6,9V であった。
【0535】
また、4端子法により高抵抗の無機ホール注入層のシート抵抗を測定したところ、膜厚100nmでのシート抵抗は100Ω/cm2であり、抵抗率に換算すると1×107Ω・cmであった。
【0536】
<実施例3>
実施例1において、高抵抗の無機ホール注入輸送層を成膜する際にスパッタガスのO2流量、および膜組成によりターゲットを変えてその主成分の組成をSiO1.7、SiO1.95、GeO1.96、Si0.5Ge0.51.92とした他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、発光輝度を評価したところほぼ同等の結果が得られた。
【0537】
<実施例4>
実施例1において、高抵抗の無機ホール注入層の金属を、AuからCu、Fe、Ni、Ru、Sn,Cr,Ir,Nb,Pt,W,Mo,Ta,PdおよびCoのいずれか1種以上、またはこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硼化物に代えても同等の結果が得られた。
【0538】
<実施例5>
実施例1〜4において、高抵抗の無機電子注入輸送層の組成を、Li2OからNa,K,Rb,CsおよびFrのアルカリ金属元素、またはBe,Mg,Ca,Sr,BaおよびRaのアルカリ土類金属元素、またはLa,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuのランタノイド系元素から選択される1種以上の元素の酸化物に代えても同様の結果が得られた。
【0539】
また、RuからV,Zn,SmおよびInから選択される1種以上の元素に代えても同様であった。
【0540】
<実施例6>
実施例1において、第1の発光層と第2の発光層を形成する際に、上記実施例1で用いた化合物に代えて、上記各合成例の他の化合物、および他の例示化合物を用いた他は実施例1と同様にして有機EL素子を得たところ、実施例1とほぼ同様の結果が得られることがわかった。
【0541】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、従来の有機物質を用いたホール注入輸送層や、電子注入輸送層を有する素子と同等かそれ以上の性能を有し、長寿命で、耐候性を備え、安定性が高く、高効率で、しかも安価な有機EL素子を実現することができる。
【0542】
また、発光層を2層以上とした場合にも、製造が容易で、膜界面での物性が安定した有機EL素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL素子の構成例を示す概略断面図である。
【図2】従来の有機EL素子の構成例を示す概略断面図である。
【図3】従来の有機EL素子の他の構成例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 ホール注入電極
3 陰電極
4 無機ホール注入輸送層
5 発光層
6 無機電子注入輸送層

Claims (15)

  1. 基板と、この基板上に形成されたホール注入電極と電子注入電極と、これらの電極間に設けられた有機物質を含有する発光層とを有し、
    この発光層と電子注入電極の間には、無機電子注入輸送層を有し、
    前記発光層とホール注入電極との間には無機ホール注入輸送層を有し、
    前記発光層は、前記無機電子注入輸送層または無機ホール注入輸送層とそれぞれ接する界面を有する第1の発光層と第2の発光層とを有し、
    前記無機電子注入輸送層は、ホールをブロックするとともに電子を搬送するための導電パスを有する高抵抗の無機電子注入輸送層であり、
    前記無機ホール注入輸送層は、電子をブロックするとともにホールを搬送するための導通パスを有する高抵抗の無機ホール注入輸送層であり、
    前記第1の発光層および第2の発光層は、含有するホスト材料のバンドギャップが2.8eV以上であり、
    前記高抵抗の無機電子注入輸送層は、第1成分として仕事関数4eV以下であって、アルカリ金属元素、およびアルカリ土類金属元素、およびランタノイド系元素から選択される1種以上の酸化物と、
    第2成分として仕事関数3〜5eVの金属の1種以上とを含有し、
    前記第2成分は、Zn,Sn,V,Ru,SmおよびInから選択される1種以上である有機EL素子。
  2. 前記ホスト材料は、フェニルアントラセン誘導体、またはテトラアリールジアミン誘導体である請求項1の有機EL素子。
  3. 前記第1の発光層および第2の発光層は、それぞれ異なったドーパントがドーピングされている請求項1または2の有機EL素子。
  4. 前記第1の発光層および第2の発光層から得られた発光が合成されて白色光として放出される請求項1〜3のいずれかの有機EL素子。
  5. 前記第1の発光層は無機電子注入輸送層と界面を接し、かつホスト材料に青色蛍光物質がドーピングされている請求項1〜4のいずれかの有機EL素子。
  6. 前記アルカリ金属元素は、Li,Na,K,Rb,CsおよびFrの1種以上であり、アルカリ土類金属元素は、Mg,CaおよびSrの1種以上であり、ランタノイド系元素はLaおよびCeから選択される1種以上を有する請求項1〜5のいずれかの有機EL素子。
  7. 前記高抵抗の無機電子注入輸送層は、その抵抗率が1〜1×1011Ω・cmである請求項1〜のいずれかの有機EL素子。
  8. 前記高抵抗の無機電子注入輸送層は、第2成分を全成分に対して、0.2〜40 mol%含有する請求項のいずれかの有機EL素子。
  9. 前記高抵抗の無機電子注入輸送層の膜厚は、0.2〜30nmである請求項1〜のいずれかの有機EL素子。
  10. 前記高抵抗の無機ホール注入輸送層は、抵抗率が1〜1×1011Ω・cmである請求項1〜のいずれかの有機EL素子。
  11. 前記高抵抗の無機ホール注入輸送層は、金属および/または金属の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物および硼化物のいずれか1種以上を含有する請求項1〜10のいずれかの有機EL素子。
  12. 前記高抵抗の無機ホール注入輸送層は、シリコンおよび/またはゲルマニウムの酸化物を主成分とし、この主成分を(Si1−xGe)Oと表したとき
    0≦x≦1、
    1.7≦y≦2.2
    であり、
    さらに、仕事関数4.5eV以上の金属および/または金属の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物および硼化物のいずれか1種以上を含有する請求項1〜11のいずれかの有機EL素子。
  13. 前記金属は、Au,Cu、Fe、Ni、Ru、Sn,Cr,Ir,Nb,Pt,W,Mo,Ta,PdおよびCoのいずれか1種以上である請求項12の有機EL素子。
  14. 前記金属および/または金属の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物および硼化物の含有量は、0.2〜40 mol%である請求項12または13の有機EL素子。
  15. 前記高抵抗の無機ホール注入輸送層の膜厚は、0.2〜100nmである請求項1〜14のいずれかの有機EL素子。
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