JPH1135717A - 微多孔性ポリエステル系樹脂フィルム - Google Patents

微多孔性ポリエステル系樹脂フィルム

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JPH1135717A
JPH1135717A JP9195895A JP19589597A JPH1135717A JP H1135717 A JPH1135717 A JP H1135717A JP 9195895 A JP9195895 A JP 9195895A JP 19589597 A JP19589597 A JP 19589597A JP H1135717 A JPH1135717 A JP H1135717A
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JP
Japan
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weight
resin
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film
polyester resin
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Application number
JP9195895A
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English (en)
Inventor
Ichiro Okawachi
一郎 大川内
Sanehiro Shibuya
修弘 渋谷
Yuuta Kumano
勇太 熊野
Mitsutoshi Aritomi
充利 有富
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Yupo Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Yupo Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鉛筆筆記性、耐熱性に優れた半透明乃至不透
明の微多孔性ポリエステル系樹脂フィルムを提供する。 【解決手段】 熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)10
0重量部に対し、重量平均分子量800〜7,000、
かつガラス転移点が120〜270℃である環状オレフ
ィンのビニレン重合体(B)5〜80重量部を配合した
樹脂組成物を基材とする樹脂フィルムを、成分(A)の
融点より低い温度であって、かつ、(B)成分の環状オ
レフィンのビニレン重合体のガラス転移点より低い温度
で延伸して得られる空孔率が20〜70%の微多孔性ポ
リエステル系樹脂フィルム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はフィルムの内部に微
細な空洞を多量に含有するポリエステル系樹脂フィルム
に関する。この微多孔性ポリエステル系樹脂フィルムは
半透明乃至不透明であり、鮮明な印字、印刷ができる。
従って、屋外ポスター用紙、ラベル用紙、製図用紙、ス
テッカー用紙、バーコード用紙、印画紙等の用紙、感熱
記録紙や熱転写画像受容紙の支持体として有用である。
【0002】
【従来の技術】合成樹脂を樹脂基材とする合成紙に代表
される微多孔性樹脂フィルム(特公昭46−40794
号公報、米国特許第3,841,943号明細書)は、天然パル
プを主原料とする抄造紙に比べて耐水性、耐吸湿性、寸
法安定性、表面安定性、印刷物の光沢性や鮮明性、機械
的強度などに優れたものであるから、近年その特徴を生
かしてポスター用紙、手提袋、地図用紙、感熱記録紙の
支持体等、様々の用途に使用されている。
【0003】微多孔性樹脂フィルムの基材樹脂原料とし
ては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィ
ン系樹脂、あるいはポリエステル系樹脂があり、中でも
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル
系樹脂は、耐熱性が高く、且つ、腰が強いといった微多
孔性樹脂フィルムとして重要な要求特性を備えているの
で、感熱記録紙、熱転写記録画像受容紙支持体ラベル等
広い範囲に利用されている。
【0004】熱可塑性ポリエステル樹脂を主原料とし、
パルプ抄造紙に似た機能を備えるフィルムを得る方法と
しては(1)フィルム内部に微細な空洞を多量に含有さ
せる方法、(2)通常の透明なポリエステルフィルムの
表面をサンドブラスト処理、ケミカルエッチング処理し
て粗面化する方法、(3)マット剤、バインダーを含有
するピグメント塗工層をフィルム表面に設ける方法等に
よって粗面化する方法等が挙げられる。このうち(1)
の方法は、フィルムの軽量化に優れると共に適度な柔軟
性を付与し得るという点で(2)、(3)の方法に比べ
優れており、それより鮮明な印刷・転写性をもたらすこ
とができ、現在最も有望視されているものである。
【0005】(1)の方法としては具体的には、(イ)
ポリエステル系樹脂に、ガスあるいは気化可能な物理発
泡剤を添加し、これを押出発泡する方法(例えば特開昭
50−38765号公報、特公昭57−46456号公
報、特開昭57−34931号公報)、(ロ)ポリエス
テル系樹脂に化学発泡剤を添加し、これを押出発泡する
方法(例えば特開昭52−43871号公報、特公昭5
8−50625号公報)、(ハ)ポリエステル系樹脂
に、溶剤に可溶な物質を添加し、これをフィルム化した
後に前記物質を溶剤で抽出する方法(例えば特開昭51
−34963号公報、特公昭52−27666号公
報)、(ニ)ポリエステル系樹脂に対して非相溶の樹脂
を混合し、これを押出機で溶融混練し、ポリエステル系
樹脂中に該非相溶樹脂を分散させたフィルムを形成した
後、これを延伸する方法などが知られている。
【0006】しかし、これらの方法はいずれもほとんど
実用化されていない。その理由としては、これらの方法
によってポリエステル系樹脂フィルム中にボイドを発生
せしめることは可能であるが、その大きさの制御が非常
に困難であり、粗大なボイドになり易いばかりでなく、
その空間的な分布も不均一になりやすい。あるいはポリ
エステルフィルム中に極端に強度の低い部分が発生し、
延伸時にフィルムの切断が起こり易いこと等が挙げられ
る。
【0007】特に(ニ)の方法において、非相溶な樹脂
成分をブレンドする場合、ポリエステル系樹脂と溶融粘
度の大きく違う非相溶なポリマーは一般に分散性が悪い
ので、非相溶なポリマーの使用量が多いとフィルム内部
に粗大な粒子を形成し、延伸により巨大な空孔を形成
し、印刷時にペコが生じたり、折れじわが発生する。ま
た、延伸成形温度域が狭くなる。逆に、非相溶のポリマ
ーの使用量が少ないと、得られる延伸フィルムの光線透
過率が高く、不透明のものが得られない。
【0008】以上のような課題を解決すべく、フィルム
に空洞を発現させることができるポリエステル系樹脂に
対して非相溶の樹脂(以下、空洞発現剤と記す)とし
て、ポリオレフィン系樹脂(例えば特開昭49−134
755号公報)、ポリスチレン系樹脂(例えば特公昭4
9−2016号公報、特公昭54−29550号公報
等)、ポリアリレート樹脂(例えば特公昭58−280
97号公報)等が多数報告されているが、空洞形成能、
得られる合成紙の低密度性、経済性等の観点からすれ
ば、ポリプロピレン樹脂やポリスチレン系樹脂を用いる
ことが推奨される。
【0009】しかしながら、この様な従来の空洞発現剤
を用いたフィルムの場合、得られるフィルムは、より鮮
明な印刷・印字性を得るために空洞発現剤を多量に用い
る必要があり、多孔性フィルムの耐熱性が低下する。
【0010】また、例えば特開昭63−168441号
公報に記載のフィルムは、空洞の大きさが最大で50〜
100μmとかなり大きいため、ポリエステル系樹脂多
孔性フィルムの耐熱性が低下する等の問題がある。この
様な多孔性フィルムを感熱記録材料に用いると、熱によ
るカールやしわが多数発生する。
【0011】そこで空洞の大きさや厚みを適正化すべ
く、例えば特開平3−76727号公報には、空洞の径
を小さくするために、ポリエステル系樹脂、空洞発現剤
のポリプロピレン素材に界面活性剤やポリアルキレング
リコール等を添加したフィルムを延伸する方法が開示さ
れている。しかしながら、この様な低分子量成分を混合
すると多孔性フィルムの耐熱性が低下するため、感熱転
写、熱転写、昇華転写等のように印字記録時に記録紙の
支持体にダイヘッドからの高温の熱が伝導するような条
件下では、その部分にカールやしわが発生するという問
題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な低
分子量物の添加による問題点に鑑みてなされたものであ
り、その目的は、昇華転写記録材料、熱転写記録材料、
感熱記録材料等の支持体に用いた場合にも熱によるカー
ルやしわの発生がなく、少量の空洞発現剤の添加で不透
明性が上がり鮮明な印字ができる微多孔性ポリエステル
系樹脂フィルムを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、熱可塑性ポリ
エステル系樹脂(A)100重量部に対し、下記式
(I)または(II)で示される環状オレフィンを重合さ
せて得られる重量平均分子量が800〜7,000、か
つ、ガラス転移点が120〜270℃である環状オレフ
ィンのビニレン重合体(B)5〜80重量部の割合で含
有する樹脂組成物を基材とする樹脂フィルムを、成分
(A)の融点より低い温度であって、かつ、(B)成分
の環状オレフィンのビニレン重合体のガラス転移点より
低い温度で延伸して得られる、下記式
【0014】
【数2】
【0015】で示される空孔率が20〜70%の多孔性
フィルムを提供するものである。
【0016】
【化3】
【0017】(式中、R1〜R4は、それぞれ独立して、
水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基またはハロゲン
原子を含む置換基を示す。R5およびR6は、水素原子で
あり、kは0または1〜4の整数である。)
【0018】
【化4】
【0019】(式中、R1〜R4およびR7〜R14は、そ
れぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素
基またはハロゲン原子を含む置換基を示す。R9とR11
〜R14のいずれかとは、またはR10とR11〜R14のいず
れかとは、互いに連結して環を形成していてもよい。k
は0または1〜4の整数である。mは0または1〜8の
整数である。)
【0020】
【発明の実施の形態】
〔1〕熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物 本発明の微多孔性ポリエステル系樹脂フィルムは、
(A)熱可塑性ポリエステル系樹脂と、(B)重量平均
分子量が800〜7,000未満、かつ、ガラス転移点
が120℃〜270℃である環状オレフィンのビニレン
重合体、必要により他のオレフィン系樹脂、ビスフェノ
ール型エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物を基材とする
フィルムを延伸することによりフィルム内部に微細なボ
イドを形成させて得られる。
【0021】(A)成分:熱可塑性ポリエステル系樹脂 本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル系樹脂は、一
種又は二種以上のジカルボン酸又はその低級アルキルジ
エステル、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,
5−、2,6−又は2,7−ナフタレンジカルボン酸、
コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ビ
フェニルー4,4’−ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレ
フタル酸、ビス−p−カルボキシフェノキシエタン等、
と一種又は二種以上のグリコール、例えば、エチレング
リコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグ
リコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等、必
要によりオキシカルボン酸との縮合により製造すること
ができる。また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエス
テル系樹脂は、混合水酸基、及び/又はエステル形成性
酸基を含むポリエステル共重合体でも良く、また、異な
るポリエステルからなるブロック共重合体であっても良
い。好ましい熱可塑性ポリエステル樹脂は、ポリエチレ
ンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ
エチレンナフタレートである。
【0022】成分(B):環状オレフィンの重合体 (B)成分の環状オレフィンのビニレン重合体として
は、シクロブテン類、シクロペンテン類、シクロヘキセ
ン類等の式(I)で示される単環式環状オレフィン、も
しくはノルボルネン類、トリシクロ−3−デセン類等の
式(II)で示される多環式環状オレフィンから選ばれ
る、環状オレフィンの単独重合体、或いは、該環状オレ
フィンの2種以上の相互共重合体であって、その重量平
均分子量(ポリプロピレン換算)が800〜7,000
未満、好ましくは1,000〜7,000、かつ、ガラ
ス転移温度が120℃〜270℃のもの、好ましくは1
40〜270℃のもの、特に好ましくは170〜270
℃のものが挙げられる。
【0023】上記環状オレフィンの具体例としては、シ
クロブテン、シクロペンテン、4−メチルシクロペンテ
ン等のシクロペンテン類、シクロヘキセン、3−メチル
シクロヘキセン、3−ビニルシクロヘキセン等のシクロ
ヘキセン類等の前式(I)で示される単環式環状オレフ
ィン;ノルボルネン、1−メチルノルボルネン、5−エ
チル−2−ノルボルネン等のノルボルネン類、トリシク
ロ[4,3,0,12.5]−3−デセン、2−メチルトリシ
クロ[4,3,0,12.5]−3−デセン等のトリシクロ−
3−デセン類、ジシクロペンタジエン(トリシクロ
[4,3,0,12.5]−3,7−デカジエンまたはトリシ
クロ[4,3,0,12.5]−3,8−デカジエン)、7−
メチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン
類、テトラシクロ[4、4、0、12.5、17.10]−3
−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4、4、0、1
2.5、17.l0]−3−ドデセン、5,10−ジメチルテト
ラシクロ[4、4、0、12.5、17.l0]−3−ドデセ
ン等のテトラシクロ−3−ドデセン類、ペンタシクロ
[6,5,1,13.6,02.7,09.13]−4−ペンタデセ
ン、10−メチルペンタシクロ[6,5,1,13.6,
2.7,09.13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ
[4,7,0,12.5,08.13,19.l2]−3−ペンタデセン
等のペンタシクロペンタデセン類、ペンタシクロ[6,
5,1,13.6,02.7,09.13]−4,10−ペンタデカジ
エン、ペンタシクロ[6,5,1,13.6,02.7,09.13
−4,11−ペンタデカジエン等のペンタシクロペンタ
デカジエン類、ヘキサシクロ[6,6,1,13.6,
10.13,02.7,09.14]−4−ヘプタデセン類等の式
(II)で示される多環式環状オレフィンを挙げることが
できる。
【0024】該環状オレフィンのビニレン重合体として
は、その重合形態がビニレン重合のもの、あるいは、こ
れら環状オレフィン重合体を過酸化物等で低分子量化し
たもの等が挙げられる。
【0025】該ビニレン重合形態による環状オレフィン
のビニレン重合体は、特定の有機遷移金属化合物と有機
アルミニウムオキシ化合物を触媒成分として用いること
により、環状オレフィンのエチレン性不飽和結合を介し
て付加重合が進行してビニレン重合体が得られ、その構
造は次の一般式(III)または式(IV)に示す構成単位
を有するものである。
【0026】
【化5】
【0027】(式中、R1〜R4およびR7〜R14は、そ
れぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素
基またはハロゲン原子を含む置換基を示す。R9とR11
〜R14のいずれかとは、またはR10とR11〜R14のいず
れかとは、互いに連結して環を形成していてもよい。k
は0または1〜4の整数である。mは0または1〜8の
整数である。なお、ビニレン重合体において、この式
(III)で表されるモノマー単位において、各モノマー
でR1〜R14、kおよびmがそれぞれ異なったモノマー
を用いてもよい。)
【0028】
【化6】
【0029】(式中、R1〜R4は、それぞれ独立して、
水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基またはハロゲン
原子を含む置換基を示す。R5とR6は水素原子であり、
kは0または1〜4の整数である。)
【0030】該環状オレフィンのビニレン重合方法につ
いては、例えば、スラリー重合法、気相重合法、塊状重
合法、溶液重合法および懸濁重合法等のいずれの方法を
用いてもよいが、スラリー重合法、溶液重合法および塊
状重合法が好適である。また重合形式はバッチ式でも連
続式でもよい。
【0031】該環状オレフィンの重合触媒の構成成分で
ある有機遷移化合物および有機アルミニウムオキシ化合
物は、モノマーの存在下あるいは非存在下を問わず、そ
れぞれ別々に重合系に添加して重合系内で両者を接触さ
せて触媒系を形成させてもよいし、重合系に添加する前
に各触媒成分を予め接触させて触媒系を形成させてから
重合系内に導入してもよい。ここで触媒系を形成させる
べく各触媒成分を接触させる場合の順序については特に
制限はなく、任意の順序によることができる。触媒系の
形成は、例えば不活性溶媒中で、不活性ガス雰囲気下、
各成分を接触させることにより行うことができる。
【0032】本発明の環状オレフィン重合体の製造触媒
の好適な例として、下記のものを例示することができ
る。すなわち、次の2つの一般式のいずれかで表される
触媒成分とアルモキサンを含んでなる触媒系が好適に用
いられる。
【0033】(C5n)X(C5n)MeQ2 もしくは (C5n)XabMeQ3-b
【0034】式中、Meは4族の遷移金属、例えばZ
r、Hfであり、各(C5n)はシクロペンタジエニル
又は置換シクロペンタジエニルであり、各Rは同一もし
くは異なるもので、水素、炭素数1〜20のアルキル、
アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアリ
ールアルキル基からなる群から選択したものである。X
は2つの(C5n)環を、または(C5n)環とYを橋
架する炭素数1〜4のアルキレンまたはケイ素である。
aは0又は1〜4の整数、bは0又は1の整数であり、
a=0のときb=0である。各Qは同一もしくは異なる
もので、炭素数1〜20のアリール、アルキル、アルケ
ニル、アルキルアリール、アリールアルキル基もしくは
アルキリデン基、またはハロゲンであり、Yは酸素、窒
素、リンまたは硫黄原子である。nは0〜4の数を示
す。
【0035】なお、本発明の環状オレフィンのビニレン
重合体は、上記の触媒を用いて重合する際に、所望の分
子量の重合体を得るために適当な量の水素を添加するこ
とができる。
【0036】環状オレフィンを重合する温度は、通常−
78℃〜+150℃、好ましくは−30℃〜+80℃の
範囲である。また触媒系の構成成分である有機遷移金属
化合物および有機アルミニウムオキシ化合物の使用量
は、合目的的な範囲内において任意である。例えば溶液
重合系の場合は、有機遷移金属化合物の使用量は10-7
〜102ミリモル/リットル、特に10-4〜10ミリモ
ル/リットルの範囲が好ましい。アルミニウムオキシ化
合物の使用量はアルミニウム/遷移金属のモル比が通常
10〜100,000、特に100〜10,000となる
ような範囲が好ましい。環状オレフィンの使用量は、環
状オレフィン/上記遷移金属化合物のモル比が通常1〜
1,000,000、好ましくは100〜100,000
となるような範囲が好ましい。また、重合体の分子量を
調節する方法としては、各触媒成分の種類や使用量、重
合温度、重合時間等の選択、さらには水素存在下での重
合による方法等が挙げられる。
【0037】重合溶媒を用いる場合には、この種の重合
法において従来から用いられてきた重合溶媒、例えば塩
化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭
化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等
の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン
等の脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン
等の芳香族炭化水素類、ガソリン、灯油、軽油等の石油
留分、またはこれらの混合溶媒等を用いることができ
る。これらの中でも芳香族炭化水素類が特に好ましい。
【0038】また該環状オレフィンのビニレン重合体の
分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
(GPC)で測定した重量平均分子量(ポリプロピレン
換算)が800〜7,000未満、好ましくは1,000
〜7,000、特に好ましくは2,000〜5,000の
範囲のものである。800未満では、フィルムの延伸時
の空孔形成能が低くなる。7,000を越えると延伸成
形温度域が狭くなる。
【0039】また該環状オレフィンのビニレン重合体の
示差走査型熱量計での測定によるガラス転移点(Tg)
は、JIS K7121−1987の9・3項に準じた
示差走査型熱量測定により求められる中間点ガラス転移
温度(Tms)であり、120℃〜270℃、好ましく
は140〜270℃、より好ましくは170〜270
℃、特に好ましくは200〜270℃の範囲のものであ
る。この範囲未満ではフィルム延伸時の空孔形成が得ら
れず、この範囲を超えるとフィルム基材の樹脂組成物の
調製温度が高くなる。
【0040】これらの環状オレフィンのビニレン重合体
の中では、多環式の環状オレフィンを主に用いた多環式
環状オレフィンのビニレン重合体が本発明の延伸成形温
度の広域化、空孔の発生の効果を好適に発揮するので好
ましい。
【0041】この多環式環状オレフィン重合体として
は、多環式環状オレフィンの単独重合体、多環式環状オ
レフィンの相互共重合体、或いは、多環式環状オレフィ
ンと単環式環状オレフィンの相互共重合体等が挙げられ
る。
【0042】また、多環式環状オレフィンの中では、ノ
ルボルネン類を用いたものが、重合時の分子量制御が容
易であり、高重合活性が得られ好ましい。 このノルボ
ルネン系重合体としては、ノルボルネン類の単独重合
体、ノルボルネン類の相互共重合体、或いは、ノルボル
ネン類と他環状オレフィンの相互共重合体等が挙げられ
る。
【0043】また、これらノルボルネン系重合体の中で
も、ノルボルネン類の単独重合体、ノルボルネン類と他
環状オレフィンとの相互共重合体が好ましく、特にノル
ボルネン単独重合体が重合収率が高く好ましい。
【0044】これらの環状オレフィン重合体は上記重合
体を単独で或いは、複数種混合した混合物として使用す
ることができる。
【0045】また、該環状オレフィンのビニレン重合体
において、本発明の効果を損なわない範囲において、エ
チレン、プロピレン等のα一オレフィン、スチレン、α
−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等と共重合す
ることは差し支えない。
【0046】本発明のフィルム基材には、ポリエステル
系樹脂(A)、環状オレフィンのビニレン重合体(B)
の他に、両者の相溶性を向上させるため、後述する変性
オレフィン系樹脂(C)を、フィルム成形性を向上させ
るため低分子量ポリエチレン樹脂(D)を、延伸樹脂フ
ィルムの耐湿性を向上させるためビスフェノールA型エ
ポキシ樹脂(E)を配合するのが好ましい。
【0047】成分(C):オレフィン系樹脂 (C)成分のオレフィン系樹脂としては、重量平均分子
量が10,000〜1,000,000、密度0.86
〜0.97g/cm3の分岐状ないしは直鎖状のポリエチレ
ン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、プロピレン単独
共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン
・エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・酢酸ビニ
ル共重合体、エチレン・グリシジルメタクリレート共重
合体を用いることができる。これらは単独で用いても良
いし、または二種以上併用しても良く、変性されたのも
でも良い。中でも、フィルムの剛性の面からはプロピレ
ン系樹脂が好ましい。
【0048】なお、変性されたオレフィン系樹脂として
は、極性基含有不飽和化合物を上記オレフィン系樹脂に
グラフト共重合したものである。オレフィン系樹脂を変
性するための極性基含有不飽和化合物としては水酸基、
カルボン酸基、カルボン酸無水物基、エポキシ基、アミ
ノ基などの極性基含有不飽和化合物である。
【0049】水酸基を含有する不飽和化合物としては、
たとえばα,β−不飽和カルボン酸エステル、すなわ
ち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジ
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロ
キシメチル−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ
ート、2,2−ビスヒドロキシメチル−3−ヒドロキシ
プロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ
(メタ)アクリレート、炭素数4〜40のエチレングリ
コールのオリゴマーの(メタ)アクリル酸エステルな
ど、{ただし(メタ)アクリレートは、アクリレート及
びメタクリレートを意味する}、さらにN−メチロール
アクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、さ
らに、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレート、ビス
(2−ヒドロキシプロピル)マレート、ビス(2,3−
ジヒドロキシプロピル)マレート、ビス(2−ヒドロキ
シメチル−2−ヒドロキシプロピル))マレート、ビス
(2,2−ビスヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロ
ピル)マレートなど、並びにこれらの異性体である、フ
マレート、炭素数4〜40のエチレングリコールまたは
プロピレングリコールのオリゴマーのマレイン酸もしく
はフマル酸エステルは、上述のように、両方のカルボン
酸がヒドロキシアルキル基のエステルでなく、一方の場
合も同様の化合物として例示することができる。さら
に、アリルアルコール、クロチルアルコール、4−(2
−ヒドロキシエチル)スチレン、3−(2−ヒドロキシ
エチル)スチレン、4−(ヒドロキシメチル)スチレ
ン、3−(ヒドロキシメチル)スチレン、4−ヒドロキ
シスチレン、3−ヒドロキシスチレンなどが挙げられ
る。以上の水酸基含有不飽和化合物は、単独または2種
以上併用して用いることができる。これらのなかで、2
−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロ
キシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0050】カルボキシル基を含有する不飽和化合物と
しては、たとえばα,β−不飽和カルボン酸、すなわ
ち、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン
酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸、フマル酸、ク
ロトン酸、イソクロトン酸などが挙げられる。これらの
なかで、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレ
イン酸である。
【0051】カルボン酸無水物基を含有する不飽和化合
物としては、たとえばα,β−不飽和カルボン酸無水
物、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン
酸、無水メチル(ハイミック)酸、無水アクリル酸、無
水メタクリル酸などが挙げられる。これらのなかで、無
水マレイン酸、無水イタコン酸が好ましい。
【0052】エポキシ基を含有する不飽和化合物の具体
例としては、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリ
シジル、N−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−
3,5−ジメチルフェニルアクリルアミド、N−{4−
(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフ
ェニルメタクリルアミド、アリルグリシジルエーテル、
マレイン酸ジグリシジル、マレイン酸メチルグリシジ
ル、マレイン酸エチルグリシジル、マレイン酸イソプロ
ピルグリシジル、マレイン酸t−ブチルグリシジル、フ
マル酸ジグリシジル、フマル酸メチルグリシジル、フマ
ル酸エチルグリシジル、フマル酸イソプロピルグリシジ
ル、フマル酸t−ブチルグリシジル、イタコン酸ジグリ
シジル、イタコン酸メチルグリシジル、イタコン酸エチ
ルグリシジル、イタコン酸イソプロピルグリシジルなど
のα,β−不飽和カルボン酸のエポキシ基含有誘導体、
2−メチレングルタル酸ジグリシジル、2−メチレング
ルタル酸メチルグリシジル、2−メチレングルタル酸エ
チルグリシジル、p−グリシジルスチレンなどが挙げら
れる。これらのなかで、好ましくはメタクリル酸グリシ
ジル、アクリル酸グリシジル、N−{4−(2,3−エ
ポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニルアクリ
ルアミドである。
【0053】アミノ基を含有する不飽和化合物として
は、たとえばα,β−不飽和カルボン酸のアミン含有ア
ルキルエステル、すなわちジメチルアミノエチル(メ
タ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アク
リレート、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0054】これらの極性基含有不飽和化合物の中で、
より高いレベルの成形加工適性を得るという観点からよ
り好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ
ート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン
酸、もっとも好ましいものは、2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレートである。
【0055】この極性基含有不飽和化合物のグラフト量
は0.05〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量
%、より好ましくは0.5〜3重量%である。0.05
重量%未満では、ポリエステル系樹脂への相溶効果が小
さく、10重量%を越えると、ポリエステル系樹脂の過
度の分子切断に起因する機械的物性の低下ないしは、ゲ
ル化による成形加工時の流動性不良が顕著になるなどの
不都合を生じやすい。
【0056】グラフト工程に使用する極性基含有不飽和
化合物の使用量は、オレフィン系樹脂に対して0.05
〜50重量部、好ましくは1〜20重量部である。0.
05重量部未満では、必要なグラフト量が得られないた
め、ポリエステル系樹脂の相溶効果が低く、50重量部
を越えると、ポリエステル系樹脂の過度の分子切断ない
しは架橋を促進し、成形加工性に難点が生じたり、成形
品の機械的物性低下したりする場合があり好ましくな
い。
【0057】上記の極性基含有不飽和化合物でオレフィ
ン系樹脂を変性する方法としては、有機過酸化物等のラ
ジカル発生剤の存在下又は非存在下で反応させる方法、
紫外線や放射線を照射する方法、あるいは酸素やオゾン
と接触させる方法等がある。
【0058】上記の変性オレフィン系樹脂は、変性され
るオレフィンがポリプロピレン樹脂であるときはJIS
K−7201に準拠して測定したMFR(230℃、
2.16kg荷重)が0.01〜200g/10分が好
ましく、より、好ましくは0.1〜100g/10分の
範囲のものである。
【0059】(D)成分:低分子量ポリエチレン樹脂 低分子量ポリエチレンの分子量は10,000未満、好
ましくは1,000〜8,000のものであり、具体的
には、ポリエチレンワックス、パラフィン、カルバナル
ロウ等が挙げられる。
【0060】(E)成分:ビスフェノール型エポキシ樹
脂 ビスフェノール型エポキシ樹脂はビスフェノールA、ビ
スフェノールF、ビスフェノールSとエピクロルヒドリ
ンとの反応物であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂
が好ましい。そのエポキシ当量が2,000g/eq以
下、好ましくはエポキシ当量が120〜500g/eq
のビスフェノールA型グリシジルエーテルである。
【0061】付加的成分 本発明のフィルム基材は、上記(A)〜(E)成分の他
に充填剤、顔料、安定剤、紫外線吸収剤を含有してもよ
い。無機充填剤としては、粒径が0.05〜5μmの炭
酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、硫酸バリウ
ム、ケイ酸カリウム、チタン酸カリウム等が挙げられ
る。これらは樹脂の合計和100重量部に対し、300
重量部以下の割合で配合される。
【0062】組成比 本発明に用いる樹脂組成物を構成する上記各成分の配合
の量比は、(A)成分の熱可塑性ポリエステル系樹脂1
00重量部に対して(B)成分の環状オレフィンのビニ
レン重合体は5〜80重量部、好ましくは10〜60重
量部の割合で配合される。
【0063】(A)成分100重量部に対し(B)成分
の配合量が5重量部未満では、延伸によりフィルム内部
に十分な量のボイドが生成されなく、満足する不透明度
を有する多孔性フィルムが得られない。また、80重量
部より多く添加するとフィルム成形性が低下し、フィル
ムの延伸時に破断を起こし易いので好ましくない。ま
た、十分な耐熱性を有する延伸フィルムが得られない。
【0064】上記(A)成分と(B)成分を基材とする
延伸樹脂フィルムの他に、次の組成物を基材とする延伸
樹脂フィルムも又、使用できる。熱可塑性ポリエステル
系樹脂(A)100重量部に対し、環状オレフィンのビ
ニレン重合体(B)5〜80重量部、好ましくは10〜
60重量部、オレフィン樹脂(C)3〜100重量部、
好ましくは5〜40重量部を配合したポリエステル系樹
脂組成物を基材とする樹脂フィルムを、延伸して得られ
る微多孔性ポリエステル系樹脂フィルム。
【0065】熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)100
重量部に対し、環状オレフィンの重合体(B)5〜80
重量部、好ましくは10〜60重量部、オレフィン系樹
脂(C)3〜100重量部、好ましくは5〜50重量
部、低分子量ポリエチレン樹脂(D)を1〜10重量
部、好ましくは2〜7重量部、ビスフェノール型エポキ
シ樹脂(E)1〜10重量部、好ましくは2〜7重量部
を配合したポリエステル系樹脂組成物を基材とする樹脂
フィルムを、延伸して得られる微多孔性ポリエステル系
樹脂フィルム。
【0066】(A)成分100重量部に対する(C)成
分の配合量が3重量部未満では、不透明度向上効果が不
十分であり、かつ、フィルム成形時に成形性の改良効果
が小さい。また、100重量部より多く添加すると組成
物中の(A)成分と(C)成分とのマトリックス相の樹
脂逆転が生じ、オレフィン系樹脂(C)がマトリックス
となり、十分な耐熱性を有する微多孔性フィルムが得ら
れない。
【0067】(A)成分のポリエステル系樹脂100重
量部に対する(D)成分の配合量が1重量部未満では、
成形性の改良が見られなく、また、10重量部を越える
と得られるフィルムの耐熱性の低下を生起する。
【0068】(A)成分のポリエステル系樹脂100重
量部に対する(E)成分の配合量が1重量部未満では、
組成物中に吸着された大気中の水分による溶融粘度低下
防止効果が小さい。また、10重量部を越えるとフィル
ム成形した場合に層間剥離(デラミネーション)が生じ
る。
【0069】延伸フィルムの製造 本発明の延伸樹脂フィルムは、(A)熱可塑性ポリエス
テル系樹脂、(B)環状オレフィンのビニレン重合体、
必要により(C)オレフィン系樹脂、(D)低分子量ポ
リエチレン樹脂及び(E)ビスフェノール型エポキシ樹
脂を含有する樹脂組成物を押出機を用いてポリエステル
樹脂の融点を越える温度、例えば260〜300℃で混
練することにより、熱可塑性ポリエステル系樹脂マトリ
ックス中に環状オレフィンの重合体、オレフィン系樹脂
および/または変性オレフィン系樹脂、低分子量ポリエ
チレン及びビスフェノール型エポキシ樹脂を分散させ、
次いでこれをダイより熱可塑性ポリエステル樹脂が非晶
状態で存在したままフィルム状に押し出し、更にこのフ
ィルムを熱可塑性ポリエステル系樹脂の再結晶化温度以
下(例えば60〜120℃)まで冷却し、これを少なく
とも一方向に2〜10倍、好ましくは押出方向(MD)
に2〜5倍、幅方向(TD)に2〜5倍延伸し、続いて
ポリエステル系樹脂の再結晶化温度(例えば、ポリエチ
レンテレフタレートの際は130〜170℃)以上、融
点未満の温度で熱セットを行って、ポリエステル樹脂を
再結晶化することにより得られる。
【0070】本発明の微多孔性ポリエステル系樹脂フィ
ルムはこれを製造する際に、他の樹脂層と積層しても良
い。他の樹脂層としては、エチレン系樹脂、プロピレン
系樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリ
エステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6などのポ
リアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等を挙げ
ることができる。この様な他の樹脂層は、炭酸カルシウ
ム、二酸化チタン、クレー、硫酸バリウム等の充填剤を
樹脂組成物中に0〜50重量%、好ましくは8〜50重
量%、UV剤、抗酸化防止剤を樹脂組成物中に2重量%
以下含んでいても良い。延伸によりフィルム内部にマイ
クロボイドが発生し、延伸樹脂フィルムは軽量化される
と共に半透明ないし不透明化され、かつ、延伸樹脂フィ
ルムの表面が粗面化(マット)される。その粗面の程度
は、ベック指数(JIS P−8119)で100〜
6,000秒程度、好ましくは400〜4,500秒の
範囲である。
【0071】延伸樹脂フィルムの肉厚は、本発明の微多
孔性ポリエステル系樹脂フィルムが単層であるときは2
0〜300μm、好ましくは40〜150μmの範囲で
ある。二層以上の積層の積層フィルムとして用いるとき
は、1〜150μm、好ましくは3〜120μmであ
り、他の肉厚を別の層としてあてがって積層フィルムの
総肉厚を30〜300μmとなるようにする。
【0072】(3)用途 本発明の微多孔性ポリエステル系樹脂フィルムは、それ
自身、ポスター用紙、製図用紙、ラベル用紙として、ま
たこの延伸樹脂フィルム単独、あるいはパルプ抄造紙、
ポリエチレンテレフタレート2軸延伸フィルム等と積層
して、このフィルム表面にゼラチン層、感熱記録塗工
層、画像受容記録層を設けて、印画紙、感熱記録紙、熱
転写画像受容紙として用いるための支持体として有用で
ある。
【0073】
【作用】特定の分子量を有し、特定構造の環状オレフィ
ンのビニレン重合体(B)と熱可塑性ポリエステル系樹
脂(A)とは押出時の溶融粘度が近く、両者の混合物を
溶融混練し、フィルムとしたものは熱可塑性ポリエステ
ル系樹脂(A)マトリックス中に特定構造の環状オレフ
ィン重合体(B)が微細分散したものであるので延伸温
度域を広くすることができると共に、これを延伸するこ
とにより微細ボイドが生成される。また、従来のボイド
形成剤(空洞発生剤)の添加量より少ない添加量で適度
な不透明度を有する微多孔性ポリエステル系樹脂フィル
ムが得られる。
【0074】
【実施例】以下に示す実施例によって、本発明を更に具
体的に説明する。なお、実施例及び比較例における評価
は、以下に示す評価方法によって評価した。
【0075】[I]評価方法 不透明度:JIS−P8138による。 鉛筆筆記性:東洋精機(株)社製鉛筆硬度計(スクラッ
チテスター)を用いて、得られた延伸樹脂フィルムに垂
直になるようにセットされた硬度Hの鉛筆に、200g
の荷重をかけて、200秒/mの速度で線分を描く。こ
の線分を目視観察して次のように判定する。 ○:はっきりと読みとれる。 △:筆記されているが薄くて読みにくい。 ×:ほとんど筆記されていない。 カール高さ:延伸樹脂フィルムを縦200mm、横20
0mmに断裁し、試験片とした。試験片をレーザープリ
ンター(キャノンA404GII)でテストプリントし、
フェースアップ通紙(印字面が上向き)を行った。これ
を温度23℃、相対湿度50%の条件下で平坦面に1分
間置いた際の浮き上がり高さ(4隅)の平均値(mm)
を求めた。なお、プリンター内部で紙詰りし、通紙でき
ないものについては判定を×印で示した。
【0076】以下に実施例および比較例により、本発明
を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限
定されるものではない。各実施例および比較例において
の「部」は重量部である。 〈環状オレフィン重合体の製造〉 重合例1 1リットルのオートクレーブ内に、ノルボルネン(C7
10)30gを含むトルエン溶液450ml、およびポ
リメチルアルモキサンのトルエン溶液(濃度85mg/
ml)51.3mlを加え、70℃で15分攪絆した。
次に触媒としてシクロペンタジエニルジルコニウムトリ
クロリド65.7mgを加え、重合温度70℃で4時間
反応操作を行った。反応混合物を、塩酸酸性メタノール
溶液に添加し、沈殿した白色個体を濾別後、洗液が中性
になるまでメタノールで繰り返し洗浄した。その後得ら
れた白色個体(ノルボルネンの単独重合体)を減圧乾燥
させた。重合体の収量は25.3gであった。GPCに
よる分子量測定の結果、重量平均分子量(Mw)は3,
200、Mw/Mnは1.51であった。またDSC測
定の結果、ガラス転移点は210℃であった。13C−N
MRによる測定によれば、重合はランダムに進行してお
り、また環構造を保持したままであることが判った。こ
の重合体をNBO(1)とする。
【0077】重合例2 重合例1において、ノルボルネン仕込量を30gの代わ
りに50gとした以外は、全く同様な条件で重合操作を
行って白色個体を得た。収量は44.8gであった。G
PCによる分子量測定の結果、Mwは4,700、Mw
/Mnは1.68であった。またDSC測定の結果、ガ
ラス転移点は240℃であった。この重合体をNBO
(2)とする。
【0078】重合例3 重合例1において、ノルボルネン仕込量を50gとし、
ポリメチルアルモキサンの代わりにメチルイソブチルア
ルモキサンのトルエン溶液(濃度113mg/ml)3
8.4mlとした以外は、全く同様な条件で重合操作を
行って白色固体を得た。収量は、39.1gであった。
GPCによる分子量測定の結果、Mwは45,000、
Mw/Mnは2.13であった。またDSC測定ではガ
ラス転移点より先にポリマーの分解が始まり、ガラス転
移点は測定できなかった。この重合体をNBO(3)と
する。
【0079】GPC測定条件: 装置: Waters社製、ゲルパーミエーションクロマト
グラフ測定装置GPC150C(商品名) カラム: 昭和電工製、AD80M/S×3(商品名) 溶媒: オルトジクロロベンゼン 温度: 140℃ 流速: 1.0ml/分 濃度: 20mg/ml IR: 3.42μ 注入量:200μl 以上の条件でGPC測定から、ポりプロピレン換算の重
量平均分子量を算出した。
【0080】DSC測定条件: 装置: セイコー電子社製、示差走査型熱量計DSC−
SS5200(商品名) 昇温速度: 20℃/分 サンプル量:10mg
【0081】(変性オレフィン系樹脂の製造方法) 参考例1 プロピレン単独重合体粉末(230℃のMFRが1g/
10 分、DSCのピーク温度164℃、融解終了温度
176℃)100重量部、2−ヒドロキシエチルメタク
リレート3重量部、スチレン2重量部及びt−ブチルパ
ーオキシベンゾエート1重量部をスーパーミキサーで混
合した後、二軸押出機(日本製鋼所製)を用いて、シリ
ンダー温度180℃、スクリュー回転数250rpmの
条件で減圧混練し、ダイよりストランド状に押し出し、
これをカッティングして変性オレフィン系樹脂のペレッ
トを得た。
【0082】このペレット0.3gをキシレン20ml
に温度110℃で完全溶解させた後、メタノール150
ml中に注ぎ、生成物を析出させて、ろ過洗浄する操作
を2回実施した後、減圧乾燥して精製した変性オレフィ
ン系樹脂を得た。この精製した変性オレフィン系樹脂
の、下記(1)、(2)の方法より求めた2−ヒドロキ
シエチルメタクリレートの含量は、IR法で求めた値で
1.31%、NMR法で求めた値で0.94%であり、
水酸基残存率は0.72(0.94÷1.31)であっ
た。同様にこの精製した変性オレフィン系樹脂のスチレ
ン含量は、IR法による1置換ベンゼンに由来する70
0cm-1のピークを用いて求めた。結果は0.80%であ
った。
【0083】水酸基残存率測定方法: (1)赤外線分光法(以下「IR法」という):精製し
た変性オレフィン系樹脂をプレスを用いてフィルムに成
形し、赤外線分光スペクトルを測定して、カルボニルに
由来する1724cm-1の吸収より、α,β−不飽和カル
ボン酸エステルの含量をあらかじめ作成した検量線から
定量した。
【0084】(2)プロトン核磁気共鳴法(以下「NM
R法」という):精製した変性オレフィン系樹脂50m
gをo−ジクロロベンゼン約2mlに130℃で加熱溶
解させ、重ベンゼンを標準物質として用いてサンプルを
調整し、NMRスペクトルを測定して、水素基の結合し
たメチレン(化学シフト:3.7ppm)及びそれに結
合したメチレン(化学シフト:4.2ppm)の吸収を
用いてα,β−不飽和カルボン酸エステルの含量を定量
した。これらの2種類の測定方法によって得られた含量
の比を用い、次式より水酸基残存率を求めた。
【0085】
【数3】水酸基残存率=(NMR法により求めた含量
%)/(IR法より求めた含量%)
【0086】(実施例1〜4及び比較例1〜4)表1の
組成比に従い、三菱化学(株)製〔η〕=0.80のポ
リエチレンテレフタレート”TGS83A”(商品名)
100重量部に、前記重合例1、2、3で得た環状オレ
フィン系重合体を表1に示す割合で配合し、これを、二
軸押出機(日本製鋼所製)を用いて、シリンダー設定温
度280℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量2
0kg/時で溶融混練した。この溶融物をダイよりスト
ランド状に押し出し、30〜40℃に冷却後、カッティ
ングしてペレットを得た。これらペレットを280℃に
設定した単軸押出機(日本製鋼所製)にて溶融混練後、
ダイよりシート状に押し出し、直ちに80℃の温度にま
で冷却して、厚さ1.5mmのシートを得た。 このシ
ートを、縦120mm、横120mmに切り抜き試験片
とした。この試験片を小型の二軸延伸機(岩本製作所
製)で100℃に加熱し、1分間予熱した後、延伸速度
10mm/秒で、同時に縦方向3倍、横方向2.5倍に
延伸した。次に200℃にて、端末固定状態で15分間
アニーリング処理して2軸延伸フィルムを得た。得られ
た延伸フィルムの密度、不透明度、及び、鉛筆筆記性を
評価した結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】(実施例5〜10及び比較例5〜6)三菱
化学(株)のポリエチレンテレフタレート”TGS83
A”(商品名)100重量部に、前記重合例1、2、3
で得た環状オレフィン系重合体NBO(1)を表−2に
示す量、更に、前記参考例1で得た変性オレフィン系樹
脂を20重量部の配合した配合物。また、この組成物に
プロピレン単独重合体”MA3”(商品名;MFR10
g/10分、結晶化度60%、DSC融解終了温度17
2℃)10重量部、三洋化成工業(株)の低分子量ポリ
エチレン樹脂”サンワックス”(商品名;分子量5,0
00)3重量部を配合した配合物をタンブラーで混合し
た樹脂組成物を、二軸押出機(日本製鋼所製)を用い
て、シリンダー設定温度280℃、スクリュー回転数2
50rpm、吐出量20kg/時で溶融混練し、押出機
のシリンダー途中から油化シェルエポキシ(株)製ビス
フェノールA型のグリシジルエーテル”エピコート82
8”(エポキシ当量184g/eq)を70℃でコント
ロールしたものをポンプで3重量部添加した。この溶融
物をダイよりストランド状に押し出し、30〜40℃に
冷却後、カッティングしてペレットを得た。このペレッ
トを用い、実施例1と同様の方法で延伸フィルムを作製
し、実施例1と同様の方法で評価を行った。その評価結
果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
【発明の効果】本発明によれば、鉛筆筆記性、耐熱性に
優れた半透明乃至不透明の微多孔性ポリエステル系樹脂
フィルムが提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B29K 55:00 67:00 105:04 B29L 7:00 (72)発明者 熊野 勇太 三重県四日市市東邦町1番地 三菱化学株 式会社四日市総合研究所内 (72)発明者 有富 充利 三重県四日市市東邦町1番地 三菱化学株 式会社四日市総合研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)10
    0重量部に対し、下記式(I)または(II)で示される
    環状オレフィンを重合させて得られる重量平均分子量が
    800〜7,000、かつガラス転移点が120〜27
    0℃である環状オレフィンのビニレン重合体(B)5〜
    80重量部を配合した樹脂組成物を基材とする樹脂フィ
    ルムを、成分(A)の融点より低い温度であって、か
    つ、(B)成分の環状オレフィンのビニレン重合体のガ
    ラス転移点より低い温度で延伸して得られる、下記式 【数1】 で示される空孔率が20〜70%の微多孔性ポリエステ
    ル系樹脂フィルム。 【化1】 (式中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭
    素数1〜20の炭化水素基またはハロゲン原子を含む置
    換基を示す。R5およびR6は、水素原子であり、kは0
    または1〜4の整数である。) 【化2】 (式中、R1〜R4およびR7〜R14は、それぞれ独立し
    て、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基またはハロ
    ゲン原子を含む置換基を示す。R9とR11〜R14のいず
    れかとは、またはR10とR11〜R14のいずれかとは、互
    いに連結して環を形成していてもよい。kは0または1
    〜4の整数である。mは0または1〜8の整数であ
    る。)
  2. 【請求項2】 不透明度(JIS P−8138)が2
    0%以上である、請求項1に記載の微多孔性ポリエステ
    ル系樹脂フィルム。
  3. 【請求項3】 熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)10
    0重量部に対し、請求項1に記載のガラス転移点が12
    0〜270℃の環状オレフィンのビニレン重合体(B)
    5〜80重量部およびオレフィン系樹脂(C)3〜10
    0重量部を配合したポリエステル系樹脂組成物を基材と
    する樹脂フィルムを、成分(A)の融点より低い温度で
    あって、かつ成分(B)の環状オレフィンのビニレン重
    合体のガラス転移点より低い温度で延伸して得られる微
    多孔性ポリエステル系樹脂フィルム。
  4. 【請求項4】 熱可塑性ポリエステル系樹脂(A)10
    0重量部、請求項1に記載のガラス転移点が120〜2
    70℃の環状オレフィンのビニレン重合体(B)5〜8
    0重量部、オレフィン系樹脂(C)3〜100重量部含
    有する組成物に、更に、分子量が1,000以上10,
    000未満の低分子量ポリエチレン樹脂(D)を1〜1
    0重量部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(E)を1〜
    10重量部配合したポリエステル系樹脂組成物を基材と
    する樹脂フィルムを、成分(A)の融点より低い温度で
    あって、かつ、成分(B)の環状オレフィンのビニレン
    重合体のガラス転移点より低い温度で延伸して得られる
    微細な空孔をフィルム内に形成してなる請求項3記載の
    微多孔性ポリエステルフィルム。
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