JPH11344325A - 積層膜の膜厚測定方法及びその装置、並びに、磁気記録媒体の製造方法及びその装置 - Google Patents

積層膜の膜厚測定方法及びその装置、並びに、磁気記録媒体の製造方法及びその装置

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JPH11344325A
JPH11344325A JP15470198A JP15470198A JPH11344325A JP H11344325 A JPH11344325 A JP H11344325A JP 15470198 A JP15470198 A JP 15470198A JP 15470198 A JP15470198 A JP 15470198A JP H11344325 A JPH11344325 A JP H11344325A
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thickness
magnetic
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coating
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JP15470198A
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Masahiro Yoshikawa
正弘 吉川
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Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 重層塗布型の磁気記録媒体における上層磁性
層の膜厚を迅速かつ高精度にコントロールし、均一化す
ること。 【解決手段】 上層磁性層3と、非磁性層又は磁性層か
らなる下層2とを有する磁気記録媒体1を製造するに際
し、上下各層の回折X線の強度検出を行い、予め作成さ
れた検量線に基づいて、上層3及び下層2の膜厚を換算
し、この膜厚情報に基づいて成膜時の上層膜厚d1 及び
下層膜厚d2 をコントロールする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、積層膜の膜厚測定
方法及びその装置、並びに、磁気記録媒体(特に重層塗
布型の磁気記録媒体)の製造方法及びその装置に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、磁気テープ、磁気ディスク等
の磁気記録媒体としては、強磁性粉末を結合剤中に分散
させることで調整された磁性塗料を非磁性支持体上に塗
布することによって磁性層が形成された、いわゆる塗布
型の磁気記録媒体が広く用いられている。
【0003】近年、磁気記録の分野においては、高密度
記録、短波長化が進められており、塗布型の磁気記録媒
体においても、そのような高密度記録、短波長化に対応
する特性を有することが求められている。
【0004】塗布型の磁気記録媒体において、高密度記
録領域での電磁変換特性を改善する手法としては、特に
磁性層の薄膜化が有効である。即ち、磁性層を薄膜化す
ることにより、記録時の自己減磁損失や再生時の厚み損
失などが減少し、電磁変換特性が効果的に改善されるこ
とになる。
【0005】ここで、磁性層を薄膜化すると、その表面
性は非磁性支持体の表面性に強く依存することになる。
つまり、非磁性支持体の表面が粗ければ、その形状に従
って磁性層の表面も粗い状態になる。一般に、磁性層表
面の粗さは、スペーシングロスによる電磁変換特性の劣
化や、ドロップアウトを誘発させる原因になる。
【0006】そこで、塗布型の磁気記録媒体では、磁性
層と非磁性支持体との間に比較的厚い下層非磁性層を介
在させ、磁性層の表面性が非磁性支持体の表面形状に追
随することを防ぎ、磁性層の表面性を自由に設計できる
ようにした重層塗布型構成が提案されている。このよう
な重層塗布型の磁気記録媒体では、短波長領域において
も優れた電磁変換特性が得られることになる。
【0007】また、重層塗布型の磁気記録媒体において
は、磁性層の表面性を向上させると同時に、特に長波長
領域での優れた電磁変換特性を得ることを目的として、
前記下層非磁性層の代わりに下層磁性層を形成させる場
合もある。
【0008】このような重層塗布型の磁気記録媒体は、
まず、非磁性支持体上に、非磁性粉末及び結合剤を溶剤
と共に分散させることによって調整した下層用非磁性塗
料を塗布して下層塗膜を形成し、その後、この下層塗膜
上に磁性粉末及び結合剤を溶剤と共に分散させることに
よって調整した上層用磁性塗料を塗布することで上層塗
膜を形成し、さらに配向、乾燥等の所定の処理工程を経
て作製される。また、下層が磁性層の場合は、前記の非
磁性粉末の代わりに磁性粉末を用い、同様の方法で作製
される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、重層塗布型
の磁気記録媒体では、良好な表面性を有する薄膜化され
た上層磁性層を形成できるが、その電磁変換特性は上層
の膜厚やその均一性に大きく左右されるため、特に上層
の膜厚を厳密に管理することは磁気記録媒体の製造工程
において非常に重要である。
【0010】上層及び下層を有する重層塗布型の磁気記
録媒体を製造するには、 (1)下層を塗布、乾燥した後、この下層上に上層を形
成する方法(ウエット・オン・ドライ方式) (2)上下層を同時に塗布、形成する方法(ウエット・
オン・ウエット方式又は同時重層塗布方式)が知られて
いる。
【0011】重層塗布型の磁気記録媒体における上層及
び下層の膜厚をそれぞれ測定するために、前者の方法
(ウエット・オン・ドライ方式)においては、例えば、
一層ずつ塗布した際の膜厚をそれぞれ測定し、上層及び
下層の各層厚(又は膜厚)を算出していた。
【0012】また、後者の方法(ウエット・オン・ウエ
ット方式)においては、上層及び下層を同時に重層塗布
するので、膜厚をそれぞれ測定することは困難であり、
例えば、下層のみを非磁性支持体上に塗布して膜厚を測
定し、上下層の同時重層塗布したときの両層の膜厚から
下層の膜厚を差し引いて上層の膜厚を求める方法や、ウ
ルトラミクロトーム法により作製した断面試料を透過型
電子顕微鏡(TEM)で観察する方法等に従って、上層
及び下層の膜厚をそれぞれ求めていた。
【0013】しかしながら、これらの方法では、断面試
料を作製する等の手間がかかるといった問題点を有して
いる他、製造時にインラインでの膜厚管理が困難である
ので、得られる磁性層の膜厚にムラが生じてしまうこと
がった。
【0014】また、蛍光X線を用い、ターゲット元素の
蛍光X線強度を検出することにより、各層の膜厚(又は
層厚)を求める方法が知られている(特公平7−119
594号公報参照)。しかしながら、この方法では、上
層及び下層に同じ主構成元素が含まれている場合など
は、上層と下層との区別ができないといった問題があっ
た。
【0015】本発明は、上述した従来の実情に鑑みてな
されたものであり、その目的は、迅速かつ精度よく積層
膜の膜厚測定を行う、積層膜の膜厚測定方法及びその装
置を提供することにある。
【0016】さらに本発明の他の目的は、磁性層等の膜
厚を高精度にコントロールし、膜厚の均一性に優れた磁
気記録媒体を製造する、磁気記録媒体の製造方法及びそ
の装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上述した課
題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、積層膜におけ
る各層の膜厚をそれぞれ測定するに際し、回折X線を利
用することによって、迅速かつ精度よく積層膜の膜厚測
定を行うことができることを見出した。
【0018】即ち、本発明は、第1層と第2層とを有す
る積層膜における前記第1層、前記第2層の膜厚を測定
するに際し、X線回折によって前記第1層、前記第2層
の膜厚を測定する、積層膜の膜厚測定方法(以下、本発
明の膜厚測定方法と称する。)に係るものである。
【0019】本発明の膜厚測定方法によれば、前記第1
層、前記第2層の膜厚を測定するに際し、X線回折を利
用して各層の膜厚を求めているので、非破壊、非接触に
て膜厚測定が行われ、さらに、たとえ第1層、第2層が
同じ主構成元素からなる場合でも、前記各層の膜厚を迅
速かつ高精度に測定できる。
【0020】また、本発明は、本発明の膜厚測定方法を
再現性良く実施する装置として、第1層と第2層とを有
する積層膜における前記第1層、前記第2層の膜厚を測
定する装置であって、前記第1層、前記第2層の膜厚を
測定するためのX線回折部を有する、積層膜の膜厚測定
装置(以下、本発明の膜厚測定装置と称する。)を提供
するものである。
【0021】さらに、本発明は、上層磁性層と、非磁性
層又は磁性層からなる下層とを有する磁気記録媒体を製
造するに際し、前記上層及び前記下層の膜厚をX線回折
によって測定し、この測定情報に基づいて、成膜時の前
記上層の膜厚及び/又は前記下層の膜厚を制御する、磁
気記録媒体の製造方法(以下、本発明の製造方法と称す
る。)に係るものである。
【0022】本発明の製造方法によれば、前記上層及び
前記下層の膜厚をX線回折を利用して測定し、この測定
情報に基づいて、成膜時の前記上層の膜厚及び/又は前
記下層の膜厚を制御しているので、非接触、非破壊にて
各層の膜厚が測定され、さらに、たとえ上下各層が同じ
主構成元素からなる場合でも、迅速かつ高精度に膜厚測
定できる。従って、成膜時の膜厚制御を製造ライン内で
随時行うことができ、膜厚、特に電磁変換特性を大きく
左右する上層磁性層の膜厚を精密に制御、管理して、そ
の均一化が達成できる。
【0023】また、本発明は、本発明の製造方法を再現
性良く実施する装置として、上層磁性層と、非磁性層又
は磁性層からなる下層とを有する磁気記録媒体を製造す
る装置であって、前記上層及び前記下層の膜厚を測定す
るX線回折部と、この膜厚測定情報に基づいて、成膜時
の前記上層の膜厚及び/又は前記下層の膜厚を制御する
制御部とを有する、磁気記録媒体の製造装置(以下、本
発明の製造装置と称する。)を提供するものである。
【0024】
【発明の実施の形態】まず、本発明の膜厚測定方法及び
膜厚測定装置を説明する。
【0025】本発明の膜厚測定方法及び膜厚測定装置に
おいては、前記第1層と前記第2層とにおける特定の結
晶性物質の回折X線をそれぞれ検出し、これらの検出強
度に対応した前記第1層、前記第2層の膜厚をそれぞれ
測定することができる。なお、この特定元素は、前記第
1層及び前記第2層に共通の元素であっても構わない
が、特定の結晶構造を有するものであることが望まし
い。
【0026】但し、各膜厚をそれぞれ測定する方法は、
前記の方法の他、例えば、第1層と第2層との合計の厚
みD1+2 と第1層の厚みD1 とをそれぞれ求め、D1+2
−D1 によって第2層の厚みD2 を求めてもよいし、第
1層と第2層との合計の厚みD1+2 と第2層の厚みD2
とを夫々求め、D1+2 −D2 によって第1層の厚みD1
を求めてもよい。何れにしても、各層の膜厚は迅速かつ
高精度に求められる。
【0027】また、前記第1層と前記第2層とは、互い
に異なる結晶性物質を含有していることが望ましい。
【0028】即ち、各層の主構成元素が同一の元素であ
る場合、上述した蛍光X線分析等ではその膜厚測定を行
うことが難しいが、各層の主構成元素が同一であって
も、その結晶性が各層で互いに異なっていれば、回折X
線の検出強度ピークがそれぞれ異なる位置に現れるの
で、前記第1層と前記第2層との区別が明瞭である。但
し、各層に同一の結晶構造を有する結晶性物質を含有す
る場合でも、例えば、組成などが異なればピーク位置が
シフトし、また複数の回折ピークのいずれかを選択して
測定可能であり、特定の結晶性物質の回折X線の強度検
出に加えて、他の成分元素の蛍光X線や他の結晶性成分
の回折X線の検出強度を測定することによって、各層の
膜厚測定を行うことが十分に可能である。
【0029】また、前記第1層の膜厚に関する検量線、
及び、前記第2層の膜厚に関する検量線を予め作成し、
この検量線をもとに、前記第1層の回折X線、前記第2
層の回折X線の各検出強度から、前記第1層の膜厚及び
前記第2層の膜厚をそれぞれ算出することができる。
【0030】即ち、回折X線強度と膜厚とは相関を有し
ているので、予め、回折X線強度と膜厚との相関関係を
求めて検量線を作成しておけば、この検量線に従って、
回折X線強度の実測値から膜厚の定量値が求められる。
さらに、検量線に関するデータを演算装置に予めインプ
ットしておけば、この演算装置に回折X線の強度を入力
するだけで、その定量値が自動的に算出される。
【0031】また、前記第1層と前記第2層とは重層塗
布(特に同時重層塗布や逐次重層塗布)で形成された層
であってよい。
【0032】上述したように、断面試料の透過型電子顕
微鏡観察による測定方法等では、重層塗布によって形成
された積層膜の膜厚をそれぞれ迅速に、インラインで測
定することは困難であったが、本発明によれば、回折X
線を利用した非接触、非破壊の測定法であり、かつ、短
時間で行うことができるため、インラインにて測定可能
である。但し、本発明における測定対象は、重層塗布に
よって形成された積層膜に限定されるものではなく、任
意の積層膜の各膜厚を測定できる。また、前記積層膜は
2層の積層膜に限定されるものではなく、3層以上の積
層膜に対しても適用可能である。
【0033】さらに、前記第1層が磁性粉末を含有する
上層磁性層であって、前記第2層が非磁性粉末を含有す
る下層非磁性層、或いは、磁性粉末を含有する下層磁性
層である、重層塗布型の磁気記録媒体の上層及び下層の
膜厚測定に適用することが望ましい。
【0034】上述したように、重層塗布型の磁気記録媒
体では、上層磁性層の薄膜化と同時に表面性の向上によ
って、スペーシングロスやドロップアウトの減少が抑制
されるが、その電磁変換特性は上層の膜厚やその均一性
に大きく左右されるため、特に上層磁性層の膜厚を厳密
に管理することは磁気記録媒体の製造工程において非常
に重要であり、本発明によれば、迅速かつ高精度に上下
各層の膜厚を測定、管理することができる。
【0035】また、前記X線回折部は、前記第1層及び
前記第2層の塗布後の乾燥部、又は、塗布部に後続され
ていることが望ましい。
【0036】但し、X線源及び回折X線検出器からなる
X線回折部は、これらの位置に限定されるものではな
く、任意の位置に設置可能であるが、特に、前記第1
層、前記第2層の塗布、乾燥工程部に前記X線回折部を
後続すれば、各層の膜厚をより正確に検出、管理するこ
とができ、また、前記第1層、前記第2層の塗布工程部
に後続すれば、各層の膜厚をより迅速に検出、管理でき
る。
【0037】次に、本発明の製造方法及び製造装置を説
明する。
【0038】本発明の製造方法及び製造装置において
は、前記上層と前記下層とにおける特定の結晶性物質の
回折X線をそれぞれ検出し、これらの検出強度に対応し
た前記上層、前記下層の膜厚をそれぞれ測定することが
できる。なお、この特定元素は、前記上層及び前記下層
に共通の元素であっても構わないが、特定の結晶構造を
有するものであることが望ましい。
【0039】但し、各層の膜厚をそれぞれ測定する方法
は、前記のように、上層及び下層からの回折X線強度を
それぞれ測定することによって上層膜厚、下層膜厚をそ
れぞれ算出する方法の他、例えば、上層と下層との合計
の厚みD1+2 と上層の厚みD1 とをそれぞれ求め、D
1+2 −D1 によって下層の厚みD2 を求めてもよいし、
上層と下層との合計の厚みD1+2 と下層の厚みD2 とを
それぞれ求め、D1+2 −D2 によって上層の厚みD1
求めてもよい。いずれにしても、各層の膜厚は迅速かつ
高精度に求められる。
【0040】また、前記上層と前記下層とは、互いに異
なる結晶性物質を含有していることが望ましい。
【0041】即ち、各層の主構成元素が同一の元素であ
る場合、上述した蛍光X線分析等ではその膜厚測定を行
うことが難しいが、本発明によれば、各層の主構成元素
が同一であっても、その結晶性が互いに異なっていれ
ば、回折X線の検出強度ピークがそれぞれ異なる位置に
現れるので、前記上層と前記下層との区別が明瞭であ
る。但し、各層に同一の結晶構造を有する結晶性物質を
含有する場合でも、例えば、特定の結晶性物質の回折X
線の強度検出に加えて、他の結晶性成分の回折X線や成
分元素の蛍光X線の検出強度を測定することによって、
各層の膜厚測定を行うことが十分に可能である。
【0042】また、前記上層と前記下層とは、重層塗布
(特に、同時重層塗布、逐次重層塗布)で形成された層
であることが望ましい。
【0043】上述したように、断面試料の透過型電子顕
微鏡観察による膜厚測定方法等では、重層塗布によって
形成された各層の膜厚をそれぞれ迅速に、インラインで
測定することは困難であったが、本発明によれば、回折
X線を利用した非接触、非破壊の測定法であり、かつ、
短時間で行うことができるため、インラインにて測定可
能である。従って、この膜厚測定結果をもとに、重層塗
布時の膜厚を随時コントロールしながら(即ち、フィー
ドバックしながら)成膜を実施し、膜厚の均一な上下各
層を形成できる。
【0044】但し、本発明は、重層塗布によって形成さ
れた各層の膜厚測定に限定されるものではなく、例え
ば、非磁性支持体に関して一方の面に設けられた磁性層
と、他方の面に設けられたバックコート層や磁性層(例
えば、磁気ディスクの両面磁性層)の各層厚をそれぞれ
求めることも可能であり、任意の積層膜の各膜厚を測定
できる。また、本発明は、前記上層及び前記下層の2層
膜に限定されるものではなく、3層以上の積層膜に対し
ても適用可能である。
【0045】また、前記上層の膜厚に関する検量線、及
び、前記下層の膜厚に関する検量線を予め作成し、この
検量線をもとに、前記上層の回折X線、前記下層の回折
X線の各検出強度から、前記第1層の膜厚及び前記第2
層の膜厚をそれぞれ算出し、この膜厚測定情報に基づい
て、前記上層の塗布厚、前記下層の塗布厚をそれぞれ制
御することができる。
【0046】即ち、回折X線強度と膜厚とは相関を有し
ているので、予め、回折X線強度と膜厚との相関関係を
求めて検量線を作成しておけば、この検量線に従って、
回折X線強度の実測値から膜厚の定量値が求められ、こ
の膜厚測定情報に基づいて、上下各層の膜厚をコントロ
ールすることができる。
【0047】また、前記磁気記録媒体が、非磁性粉末を
含有する非磁性塗料を塗布してなる下層非磁性層或いは
磁性粉末を含有する磁性塗料を塗布してなる下層磁性層
と、磁性粉末を含有する磁性塗料を塗布してなる上層磁
性層とが非磁性支持体上に順次形成された重層塗布型の
磁気記録媒体であり、前記膜厚測定情報に基づいて、前
記上層の塗布厚及び前記下層の塗布厚をそれぞれ制御す
ることができる。
【0048】そして、検量線に関するデータを演算装置
に予めインプットしておけば、この演算装置に回折X線
の強度を入力するだけで、その定量値(即ち膜厚)を自
動的に算出でき、さらに、この演算装置を塗布装置の制
御部に接続すれば、前記膜厚の定量値に基づき、塗布装
置に供給する塗料流量や塗布装置の位置などを適宜調節
して、塗布形成される薄膜の厚みを任意に設定できる。
【0049】また、前記上層磁性層中の磁性粉末、前記
下層非磁性層中の非磁性粉末若しくは前記下層磁性層中
の磁性粉末からの回折X線を検出することができる。
【0050】即ち、磁性粉末や非磁性粉末等の無機粉末
による回折X線を利用することにより、その検出強度を
十分に取ることができ、従って、S/Nが大きくなっ
て、高精度の検出が可能になる。但し、本発明によるX
線回折は、種々の金属、合金、鉱物、無機及び有機の化
合物の結晶構造を利用することが可能である。
【0051】さらに、前記X線回折部は、前記上層及び
前記下層の塗布後の乾燥部、又は、塗布部に後続されて
いることが望ましい。
【0052】但し、X線源及び回折X線検出器からなる
X線回折部は、これらの位置に限定されるものではな
く、任意の位置に設置可能であるが、特に、前記第1
層、前記第2層の塗布、乾燥工程部に前記X線回折部を
後続すれば、各層の膜厚をより正確に検出、管理するこ
とができ、また、前記第1層、前記第2層の塗布工程部
に後続すれば、各層の膜厚をより迅速に検出、管理でき
る。
【0053】このように、本発明の製造方法及びその装
置によれば、非磁性支持体上に、非磁性粉末を含有する
非磁性塗料、又は、強磁性粉末を含有する磁性塗料を塗
布して下層塗膜を形成した後、この下層塗膜上に、強磁
性粉末を含有する磁性塗料を塗布することで上層塗膜を
形成してなる重層塗布型の磁気記録媒体において、上層
膜厚を磁性粉末(磁性顔料)の回折X線の強度を検出す
ることにより測定し、下層膜厚を非磁性粉末(非磁性顔
料)又は磁性粉末(磁性顔料)の回折X線の強度を検出
することにより測定することによって、同時重層塗布方
式において各膜厚を設定するときに、設定のための時間
を短縮して迅速に、製造ロスを少なく、さらに高精度に
膜厚制御を行うことができる。
【0054】X線回折分析法では、一般に、結晶性物質
に対してその結晶構造特有の回折パターンを示すことか
ら、各層に共通の元素が含まれていて、蛍光X線分析法
のような元素を測定する方法では区別できないような場
合でも、結晶構造が異なれば各層の区別ができる。従っ
て、X線回折分析法によって、各層の結晶性物質固有の
回折X線強度を測定し、検量線によって膜厚に換算すれ
ば、各層毎に、或いは特定の層の膜厚が測定できる。
【0055】特に、重層塗布型の磁気記録媒体を作製す
るためには、非磁性支持体上に、非磁性粉末(又は強磁
性粉末)及び結合剤を溶剤と共に分散させることで調整
された下層用塗料を塗布して下層塗膜を形成した後、こ
の下層塗膜上に、強磁性粉末及び結合剤を溶剤と共に分
散させることで調整された上層用塗料を塗布することで
上層塗膜を形成する。これらの上下各層を形成するため
の手法としては、下層塗膜が湿潤状態にあるうちに上層
塗膜を形成する、いわゆるウエット・オン・ウエット塗
布方式や、下層塗膜を塗布、乾燥した後に上層塗膜を形
成する、いわゆるウエット・オン・ドライ塗布方式が挙
げられ、いずれの方式による重層塗布層であっても、そ
の膜厚を測定、制御できる。
【0056】本発明の磁気記録媒体における上層磁性層
は、磁性粉末(強磁性粉末)、結合剤、及び、溶剤から
なるものであり、下層非磁性層(又は下層磁性層)は、
非磁性粉末(又は磁性粉末)、結合剤、及び、溶剤から
なるものであることが望ましい。但し、その他、上層磁
性層が金属磁性粉末の蒸着によって形成された磁性層
(特に垂直配向した薄膜)であっても構わない。
【0057】この上層磁性層及び下層非磁性層(又は磁
性層)の具体的な構成材料は、以下に示すものが例示さ
れる。
【0058】まず、上層磁性層(或いは下層磁性層)に
用いる磁性粉末(強磁性粉末)としては、従来より公知
の材料がいずれも使用可能であって、酸化物磁性粉末で
もよく、金属磁性粉末でもよい。
【0059】前記酸化物磁性粉末としては、例えば、γ
−Fe2 3 、Co含有γ−Fe23 、γ−Fe3
4 、Fe3 4 、Co含有γ−Fe3 4 、Co被着γ
−Fe3 4 、CrO2 等が挙げられる。
【0060】また、前記金属磁性粉末としては、例え
ば、Fe、Co、Ni、Fe−Co、Fe−Ni、Fe
−Co−Ni、Co−Ni、Fe−Co−B、Fe−C
o−Cr−B、Mn−Bi、Mn−Al、Fe−Co−
Vの金属又は合金粉末等が挙げられ、さらに、これらの
金属磁性粉末の種々の特性を改善する目的で、Al、S
i、Ti、Cr、Mn、Cu、Zn等の金属成分が添加
されたものであってもよい。これらの金属磁性粉末のう
ち、Fe系の磁性粉末は電気的特性に優れているので望
ましい。また、耐蝕性や分散性の点では、Fe−Al
系、Fe−Al−Ca系、Fe−Al−Zn系、Fe−
Al−Co系、Fe−Ni−Si−Al−Zn系、Fe
−Ni−Si−Al−Mn等のFeとAlとを含むFe
−Al系の合金粉末が望ましい。
【0061】これらの強磁性粉末の形状は、平均長軸長
が0.5μm以下、望ましくは0.01〜0.4μm、
さらに望ましくは0.01〜0.3μmが好適であり、
かつ、軸比(平均長軸長/平均短軸長)が12以下、望
ましくは10以下のものが好適である。
【0062】また、いずれの場合においても、飽和磁化
量σsは70emu/g以上であることが望ましい。飽
和磁化量σsが70emu/g未満であると、十分な電
磁変換特性が得られないことがある。また、特に高密度
記録領域での記録再生能を向上させる点から、BET法
による比表面積が45m2 /g以上であることが望まし
い。
【0063】また、前記磁性粉末としては、バリウムフ
ェライト等の六方晶系フェライトや窒化鉄等も使用可能
である。バリウムフェライトにおいては、Feの一部が
少なくともCo及びZnで置換されたバリウムフェライ
トであって、平均粒径(六方晶フェライトの板面の対角
線の長さ)が300〜900オングストローム、板状比
(六方晶フェライトの板面の対角線の長さを板厚で除し
た値)が2.0〜10.0、保磁力が450〜1500
Oeのものが望ましい。
【0064】また、前記下層非磁性層に用いる非磁性粉
末としては、カーボンブラック、グラファイト、TiO
2 、BaSO4 、ZnS、MgCO3 、CaCO3 、Z
nO、CaO、WS2 、MoS2 、MgO、SnO2
SiO2 、Cr2 3 、α−Al2 3 、α−Fe2
3 、SiC、酸化セリウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、
炭化モリブデン、チタンカーバイド等が挙げられる。こ
のうち、特に、カーボンブラック、TiO2 、BaSO
4 、α−Al2 3 、α−Fe2 3 、Cr23 等の
無機粉末が望ましい。
【0065】なお、これらの非磁性粉末は、Si化合物
やAl化合物によって表面処理されていてもよい。表面
処理は、Si、Alの含有量が非磁性粉末に対して0.
1〜10重量%となるように行うのが望ましい。
【0066】これらの非磁性粉末の形状は、針状であっ
ても球状であってもよいく、望ましくは針状であった方
がよい。針状の非磁性粉末を用いることにより、非磁性
層表面の平滑性が向上し、その結果、この上に積層され
る上層磁性層の表面性もより平滑なものになる。
【0067】また、非磁性粉末の長軸径、短軸径、軸比
(長軸径/短軸径)、及び、比表面積は、次のような範
囲内であることが望ましい。即ち、非磁性粉末の長軸径
は0.5μm以下、さらには0.30μm以下であるの
が望ましい。また、短軸径は、0.1μm以下、さらに
は0.06μm以下であるのが望ましい。また、軸比は
2〜20、さらには5〜10が適当である。さらに、比
表面積は10〜250m2 /g、さらには30〜100
2 /gが好適である。このような長軸径、短軸径、軸
比及び比表面積を有する非磁性粉末を使用すると、その
上に積層される磁性層の表面性がさらに良好な状態にな
る。
【0068】また、前記上層磁性層及び前記下層非磁性
層(又は前記下層磁性層)に用いる結合剤としては、従
来より磁気記録媒体用に結合剤として使用される公知の
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂などが使用可
能であり、数平均分子量が5000〜100000のも
のが望ましい。
【0069】この結合剤としては、熱可塑性樹脂の例と
して、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニ
ル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩
化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エス
テル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル
−塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エ
ステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステ
ル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−
塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン
共重合体、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン−アクリ
ロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共
重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セル
ロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セル
ロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セ
ルロースプロピオネート、ニトロセルロース等)、スチ
レン−ブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエ
ステル樹脂、アミノ樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
【0070】また、熱硬化性樹脂の例として、フェノー
ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素
樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹
脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が使
用可能である。
【0071】また、前記上層磁性層、及び、前記下層非
磁性層(又は前記下層磁性層)の塗料化に用いられる溶
剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイ
ソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、
メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール
系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プ
ロピル、乳酸エチル、エチレングリコールアセテート等
のエステル系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエー
テル、2−エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、
ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、
キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチレンクロライ
ド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、
クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙
げられ、これらを適宜混合して使用できる。
【0072】また、上層用塗料及び下層用塗料を作製す
るための製造装置としては、ロールミル、ボールミル、
サンドミル、アジター、ニーダー、エクストルーダー、
横型サンドミル、縦型サンドミル、スパイクミル、ピン
ミル、タワーミル、DCP、ホモジナイザー、超音波分
散機等、従来公知の機器が使用可能であり、何ら限定さ
れるものではない。
【0073】また、本発明の製造方法においては、必要
に応じて、潤滑剤、非磁性補強粒子等の添加剤を、上層
磁性層及び下層非磁性層(又は下層磁性層)に含有させ
ることが可能である。
【0074】前記潤滑剤としては、例えば、黒鉛、二硫
化モリブデン、二硫化タングステン、シリコーンオイ
ル、炭素数10〜22の脂肪酸、並びに、これと炭素数
2〜26のアルコールからなる脂肪酸エステル、テルペ
ン化合物、並びに、これらのオリゴマー、フッ素系滑剤
等が挙げられる。これらの潤滑剤は、上層磁性層のみの
添加では潤滑剤の絶対量が不足することがあるので、上
下両層に添加することが望ましい。
【0075】また、前記非磁性補強粒子としては、例え
ば、酸化アルミニウム(α、β、γ)、酸化クロム、炭
化ケイ素、ダイヤモンド、ガーネット、エメリー、窒化
ホウ素、チタンカーバイド、炭化チタン、酸化チタン
(ルチル、アナターゼ)等が挙げられる。これらの粒子
は、強磁性粉末100重量部に対して20重量部以下、
さらには10重量部以下、さらには5重量部以下が望ま
しい。また、モース硬度は、4以上、さらには5以上、
さらには6以上が望ましい。また、比重は2〜6、さら
には3〜5の範囲が望ましく、平均一次粒径は1.0μ
m以下、さらには0.5μm以下、さらには0.3μm
以下が好適である。
【0076】本発明においては、前記結合剤を架橋硬化
させる硬化剤を使用することが望ましく、例えば、ポリ
イソシアネート類を併用することが可能である。このポ
リイソシアネート類としては、トルエンジイソシアネー
ト並びにこの付加体、アルキレンジイソシアネート並び
にこの付加体等が挙げられる。
【0077】これらポリイソシアネートの前記結合剤へ
の配合量は、前記結合剤100重量部に対して、5〜8
0重量部、さらには10〜50重量部が望ましい。これ
らポリイソシアネート類は、上下両層に用いることが可
能であるし、上層のみに用いることも可能である。上下
両層に用いる場合の配合両は、各層に等量投入すること
も可能であるし、その配合量を任意の比率で変えること
も可能である。
【0078】上層磁性層を形成するための上層用塗料
は、例えば、先に例示した強磁性粉末及び結合剤の他、
分散剤、潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等の各種添加剤を
溶媒とと共に混練して高濃度磁性塗料を調整した後、こ
の高濃度磁性塗料を希釈、分散させ、その後、硬化剤を
添加することによって調製される。
【0079】同様に、下層非磁性層(又は下層磁性層)
を形成するための下層用塗料は、例えば、先に例示した
非磁性粉末(又は磁性粉末)及び結合剤の他、分散剤、
潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等の各種添加剤を溶媒と共
に混練して高濃度塗料を調整した後、この高濃度塗料を
希釈、分散させ、その後、硬化剤を添加することで調製
される。
【0080】上層磁性層及び下層非磁性層(又は下層磁
性層)は、このようにして調製された上層用塗料と下層
用塗料とを、下層用塗料、上層用塗料の順に非磁性支持
体上に塗布、乾燥することによって形成される。
【0081】ここで、非磁性支持体としては、例えば、
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−
ナフタレート等のポリエステル類、ポリプロピレン等の
ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロ
ースダイアセテート等のセルロース誘導体、ポリアミ
ド、アラミド樹脂、ポリカーボネート等のプラスチック
などが挙げられる。これらの非磁性支持体は単層構造で
あっても、多層構造であってもよい。また、例えば、コ
ロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0082】この非磁性支持体の厚みは特に制限されな
いが、例えば、磁気記録媒体がフィルム状やシート状の
場合には、2μm〜100μm、さらには3μm〜50
μmとするのが適当である。また、ディスク状やカード
状の場合は、30μm〜10mm程度、ドラム状の場合
にはレコーダー等の設計に応じて適宜選択される。ま
た、磁気記録媒体の形状は、テープ状、フィルム状、シ
ート状、カード状、ディスク状、ドラム状など磁気記録
媒体において通常用いられている形状がいずれも採用可
能である。
【0083】また、上層用塗料と下層用塗料とを非磁性
支持体上に塗布する方式としては、グラビア塗布方式、
ブレード塗布方式、塗料押し出し方式などが挙げられる
が、従来公知のいずれの塗布方式を用いてもよい。
【0084】また、本発明においては、重層塗布方式と
して下記(1)及び(2)の方式があり、いずれの重層
塗布方式を用いてもよいが、ウエット・オン・ウエット
塗布方式における同時重層塗布方式においては、下層用
塗料が湿潤状態のまま上層用塗料が塗布されるので、下
層の表面(即ち、上下層の境界部分)が滑らかになると
共に上層の表面性が良好となり、かつ、上下層の接着性
も向上するので望ましい。 (1)非磁性支持体上に下層用塗料を塗布、乾燥させた
後、必要に応じてカレンダー処理を施し、これらの処理
が施された下層上に、上層用磁性塗料を塗布する、ウエ
ット・オン・ドライ塗布方式。 (2)特開昭63−191315号公報等に記載されて
いるように、下層塗膜が湿潤状態である間に、上層用塗
料を塗布する、ウエット・オン・ウエット塗布方式。
【0085】ここで、本発明による磁気記録媒体の一例
を図1を参照に説明する。
【0086】図1に示すように、非磁性支持体4の一方
の面には、非磁性粉末(又は強磁性粉末)を含有した厚
みd2 の下層2を介して、強磁性粉末を含有した厚みd
1 の上層磁性層2を有している。また、他方の面には、
図中一点鎖線の如くにバックコート5を有していてもよ
い。
【0087】特に、上層2及び下層3がウエット・オン
・ウエット塗布方式で形成された場合は、上下層の境界
部分6は、一定の厚みを持って両層の成分が混在する境
界領域が存在することになる。なお、特に高密度記録領
域における電磁変換特性を向上させるためには、上層磁
性層の膜厚d1 は0.3μm以下、さらには0.1〜
0.3μmとするのが望ましい。上層磁性層の厚みd1
が0.3μmを越えると電磁変換特性が劣化することが
あり、本発明によれば、均一かつ高精度にて、上層磁性
層の厚みをコントロールできる。
【0088】次に、このような磁気記録媒体を作製する
ための製造装置の一例を図2を参照に説明する。
【0089】図2に示すように、この製造装置において
は、上層用塗膜及び下層用塗膜が形成される非磁性支持
体4が、送りロール10から巻取りロール16に向かっ
て図中矢印D方向に順次搬送されるように構成されてお
り、この搬送方向に沿って、重層塗布装置11、配向用
磁石12、乾燥器13、カレンダー装置14、及び、X
線回折部15が設けられている。
【0090】まず、送りロール10に巻回されている非
磁性支持体4には、重層塗布装置11によって、下層用
塗料(非磁性塗料又は磁性塗料)、上層用塗料(磁性塗
料)が順次塗布される。
【0091】この重層塗布装置11は、図4(A)及び
図3(B)に示すように、下層用塗料2aを塗布するた
めの下層用押し出しコーター28と、上層用塗料3aを
塗布するための上層用押し出しコーター27とが、上層
用押し出しコーター27が非磁性支持体4の送り出し
側、下層用押し出しコーター28が非磁性支持体4の導
入側となるように配置、構成されている。
【0092】これら下層用押し出しコーター28、上層
用押し出しコーター27には、その先端部に各塗料が押
し出されるスリット部が形成されており、このスリット
部の背面側には、下層用塗料2a、上層用塗料3aがそ
れぞれ適宜供給されるように、塗料溜まり26、25が
それぞれ設けられている。即ち、押し出しコーター2
8、27において、塗料溜まり26、25に随時供給さ
れる各塗料が、スリット部を介して、コーター先端部に
押し出されるように構成されている。これら押し出しコ
ーターへの各塗料の供給は図示しないインラインミキサ
ーを介して行うように構成してもよい。
【0093】従って、図中矢印D方向に搬送される非磁
性支持体4には、まず、下層用押し出しコーター28に
よって下層用塗料が塗布されて下層塗膜(下層)2が形
成され、そして、上層用押し出しコーター27によっ
て、湿潤状態の下層塗膜3上に塗布される。
【0094】次いで、以上のようにして下層塗膜2、上
層塗膜3が形成された非磁性支持体4は、配向用磁石1
5にて磁場配向処理される。下層塗膜が非磁性塗料の場
合は、配向用磁石は1つであってよく、下層塗膜が磁性
塗料の場合は、配向用磁石は2つあることが望ましい。
次いで、乾燥器13では、例えば乾燥器16内の上下に
配されたノズルからの熱風によって、下層塗膜2及び上
層塗膜3がそれぞれ乾燥され、さらにカレンダー装置1
4に導かれて表面平滑化処理される。
【0095】次いで、非磁性支持体(非磁性フィルム)
4上に下層及び上層が形成された磁気記録媒体はX線回
折部15に導かれる。なお、X線回折部は、図中仮想線
15’に示すように、重層塗布装置11の直後に設けら
れていてもよい。また、X線回折部は、図中の工程部に
設けられていなくてもよく、巻取りロール16に巻き取
られた後の磁気記録媒体に対してX線回折を行ってもよ
い。
【0096】このX線回折部15は、図3(B)に示す
ように、X線源18aとX線検出器17aとからなる上
層用X線回折部と、同じくX線源18bとX線検出器1
7bとからなる下層用X線回折部とからなるものであ
り、それぞれのX線検出器によって所定の回折ピーク強
度が検出される。但し、X線源及びX線検出器は、上層
及び下層に共通のものを設けてもよい。
【0097】そして、例えば図3(A)に示すように、
X線回折部15にて検出された上下各層の回折X線強度
を演算装置21に導き、ここで、予め作成された検量線
に基づいて各層の膜厚が算出され、得られた膜厚情報
を、塗布装置11を制御する制御回路22に導き、さら
に、制御回路22によって、塗布装置11のコーター位
置や塗料供給量などが適宜制御され、成膜時の前記上層
の膜厚及び/又は前記下層の膜厚が制御される。このよ
うに、本発明の磁気記録媒体の製造装置においては、X
線回折部からの測定情報を基に塗布装置における塗布厚
をコントロールできるように、フィードバック回路が構
成されている。
【0098】なお、重層塗布装置11は、図4(A)に
示した構成(4リップ方式コーター)の塗布装置11a
に限定されるものではなく、図4(B)に示す如き、1
つの押し出しコーター29内に2つのスリットを有する
タイプの重層塗布装置(3リップ方式コーター)11
b、図4(C)に示す如き、1つの押し出しコーター3
0内に上下各塗料に共通のスリットを有するタイプの重
層塗布装置(2リップ方式)11cなどを使用できる。
また、塗布装置は押し出しコーターに限定されるもので
はなく、スライドコーター、グラビアロール、ブレード
コーターなどを適宜組み合わせることによって構成して
もよい。
【0099】次に、このような構成、方法で形成された
重層塗布型の磁気記録媒体について、前記上層及び前記
下層の膜厚測定方法をさらに詳細に説明する。
【0100】膜厚の測定は、通常のX線回折装置を利用
して行うことができる。例えば、市販のX線回折装置と
して、理学電機社製の RAD-IIXが使用できる。
【0101】また、X線源のターゲットとしては、銅
(Cu)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、クロム(C
r)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)などを用いるこ
とができる。但し、磁気記録媒体の磁性層がFeを主成
分としている場合、X線の吸収効果を考慮すると、Cu
以外のターゲットを使用することが望ましく、特に、高
い回折X線の強度を得るためにはCoを用いることが望
ましい。
【0102】また、X線源のタイプは、封入管方式、回
転対陰極方式、放射光等のいずれであっても構わない。
さらに、回折X線の検出器も市販のシンチレーション検
出器、比例検出器、半導体検出器など、いずれの検出器
であっても構わない。
【0103】この膜厚測定を行うに際しては、上層磁性
層に使用される強磁性粉末と、下層非磁性層に使用され
る非磁性粉末(又は下層磁性層に使用される磁性粉末)
とは、結晶構造の異なる無機粉末であることが望まし
い。また、例えば、強磁性粉末であっても、金属磁性粉
末と酸化物磁性粉末とはその結晶構造が異なっており、
上下各層に用いる強磁性粉末と非磁性粉末(又は強磁性
粉末)とはX線回折のパターン位置が異なるものである
ことが望ましい。
【0104】例えば、上層の磁性粉末としてFe系金属
微粉末、下層の非磁性粉末としてα−Fe2 3 を使用
した場合、元素として上下層共にFeが共通して含まれ
るために、蛍光X線のような元素を測定する方法では上
層と下層との区別ができないため、それぞれの膜厚を測
定することができない。
【0105】これに対して、X線回折のように結晶構造
の違いによる測定の場合、上層のFe系金属微粉末は立
方晶系で、下層のα−Fe2 3 は六方晶系であるか
ら、X線の回折パターンがそれぞれ異なり、ピークの位
置も異なっている。
【0106】そして、回折X線の強度はその含有量に比
例するため、均一に塗布された状態では膜厚に比例する
ことになる。従って、それぞれ固有の回折X線強度を測
定することにより、検量線によって上下各層のそれそれ
の膜厚に換算することができる。また、X線源の強度が
大きく、検出器も高感度なものを使用すれば、S/Nの
良い回折ピークが短時間で測定できるため、上下各層の
膜厚を迅速かつ好適に調整することができ、高品質かつ
膜厚の均一な上下各層が得られ、従って、スペーシング
ロスやドロップアウトが抑制され、電磁変換特性等に優
れた磁気記録媒体を提供することができる。
【0107】また、下層が磁性層の場合でも、例えば、
上層の強磁性粉末がFe系金属微粉末、下層の強磁性粉
末がFe3 4 のような酸化物の場合では、それぞれの
結晶構造が互いに異なっているため、それぞれの回折X
線強度を測定することにより、同様に上下各層の膜厚を
測定することができる。
【0108】
【実施例】以下、本発明を具体的な実施例について説明
するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。
【0109】まず、下記の組成に準じて上層用磁性塗
料、下層用非磁性塗料の各成分を計量し、それぞれニー
ダー及びサンドミルを用いて混練、分散することで、上
層用磁性塗料及び下層用非磁性塗料を調整した。
【0110】 <上層用磁性塗料の組成> ・Fe系メタル強磁性粉末 100重量部 (平均長軸長:0.2μm、針状比:9、 飽和磁化量:130Am2 /kg、保磁力:135kA/m) ・ポリ塩化ビニル樹脂 14重量部 (重合度:150、 極性官能基としてスルホン酸ナトリウム塩を5×10-5mol/g含む) ・ポリエステルポリウレタン樹脂 6重量部 (極性官能基としてスルホン酸ナトリウム塩を1×10-4mol/g含む) ・ポリイソシアネート 4重量部 ・添加剤 5重量部 (一次粒径0.09μmのα−Al2 3 、スラリーとして添加) ・ステアリン酸 1重量部 ・ヘプチルステアレート 1重量部 ・メチルエチルケトン 150重量部 ・シクロヘキサノン 150重量部
【0111】 <下層用非磁性塗料の組成> ・α酸化鉄(α−Fe2 3 ) 100重量部 (平均長軸長:0.15μm、針状比:12、pH:5.7) ・カーボンブラック 11重量部 (酸化鉄/カーボンブラック=90/10) ・ポリ塩化ビニル樹脂 17重量部 (重合度:150、 極性官能基としてスルホン酸ナトリウム塩を5×10-5mol/g含む) ・ポリイソシアネート 2重量部 ・ステアリン酸 1重量部 ・ヘプチルステアレート 1重量部 ・メチルエチルケトン 150重量部 ・シクロヘキサノン 150重量部
【0112】実施例1(回折X線による検量線の作成) 上記組成の上層用磁性塗料及び下層用非磁性塗料を4リ
ップ方式のダイコーター〔図4(A)参照〕で、厚さ6
2μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(表面祖
度Ra=8nm)上に、上層、下層それぞれ膜厚を変え
て同時重層塗布し、3種のサンプル(サンプルA、サン
プルB、サンプルC)をそれぞれ作製した。
【0113】なお、上層及び下層のそれぞれの膜厚は、
包理樹脂に包理後、ウルトラミクロトーム法により断面
観察用切片を作製し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製
200CX、加速電圧:200kV)によって、断面方向から観察
することにより求めた(ミクロトーム−TEM法)。こ
の透過型電子顕微鏡による測定結果(測定基準値)を下
記表1に示す。
【0114】次に、各サンプルの上層及び下層それぞれ
について、市販のX線回折装置(理学電機社製 RAD-II
X)を用い、回折X線強度を測定した。なお、X線源と
しては封入管タイプのCoターゲットを用い、出力は2
kWとした。
【0115】また、回折X線強度測定による上層磁性層
の測定結果を図5(メタル強磁性粉末のFe(110) の回
折ピーク(52.4°) の強度を測定)に示し、下層非磁性
層の測定結果を図6(α−Fe2 3 非磁性粉末の(10
4) の回折ピーク(38.7 °) の強度を測定)に示した
(図中丸印)。そして、これら図5及び図6における検
量線を作成した。
【0116】即ち、図5は、Feの (100)面の回折X線
ピーク強度による上層膜厚の検量線を示し、図6は、α
−Fe2 3 の (104)面の回折X線ピーク強度による下
層膜厚の検量線を示している。
【0117】
【0118】図5及び図6に示した検量線から分かるよ
うに、回折X線強度測定による膜厚測定は、原点を通る
直線となっていて、最小自乗法による相関係数Rもほぼ
1になっており、ばらつきが少なく信頼性の高い測定法
といえる。即ち、上下各層に関する信頼性の高い検量線
が得られた。
【0119】実施例2(回折X線による実測値を基準値
との比較) 実施例1と同じ組成の上層用磁性塗料及び下層用非磁性
塗料を、実施例1と同じダイコーターで上下層それぞれ
ランダムに膜厚を設定して同時重層塗布し、サンプル
(サンプルD〜I)を作製した。
【0120】これらのサンプルを市販のX線回折装置
(理学電機社製 RAD-IIX)を用い、回折X線強度を測定
した。測定条件は実施例1と同様である。
【0121】得られた回折X線強度から、図5及び図6
の検量線を利用して、各層の厚みを算出した。なお、基
準値は、実施例1と同様に、ミクロトーム−TEM法に
より求めた。その測定結果を下記表2A及び表2Bに示
す。また、下記表2Aは、上層磁性層の膜厚測定結果を
示し、下記表2Bは、下層非磁性層の膜厚測定結果を示
す。
【0122】 但し、表中、「X線回折検量線」はX線回折装置による
測定結果を示し、「基準値」はミクロトーム−TEM法
による測定結果を示す。
【0123】 但し、表中、「X線回折検量線」はX線回折装置による
測定結果を示し、「基準値」はミクロトーム−TEM法
による測定結果を示す。
【0124】このように、いずれのサンプルもミクロト
ーム−TEM法による基準値と良く一致しており、本実
施例による膜厚検出は信頼性が高く、高品質の磁気記録
媒体の製造を可能にするものである。
【0125】比較例1(蛍光X線による検量線の作成) 実施例1で作製したサンプル(サンプルA〜C)につい
て、蛍光X線による強度測定を行い、検量線を作成し
た。測定は、市販の蛍光X線測定装置(理学電機社製 3
370E)で行い、X線源としてRhターゲットを用い、出
力2.5kWで行った。
【0126】但し、上下各層の主構成元素であるFe
は、蛍光X線では上層、下層のそれぞれについて検出で
きないので、上層磁性層に関しては、上層磁性層のみに
添加されているα−Al2 3 のAlを検出することで
上層磁性層の検量線を作成し、上下両層に含まれるFe
を検出することで、トータル(Total )の厚みの検量線
を作成した。従って、下層の厚みは、トータルの厚みか
ら上層の厚みを差し引くことで算出した。
【0127】図7に、Al−Kα線による検出ピーク強
度に従う検量線を示し、図8に、Fe−Kα線による検
出ピーク強度に従う検量線を示す。
【0128】図7及び図8に示した検量線から分かるよ
うに、Total 膜厚測定用のFe−Kαの強度は相関良く
十分に取ることができるが、上層膜厚測定用のAl−K
αの強度は、α−Al2 3 の添加量が少なく、しかも
膜厚が薄いため、ほとんど強度が取れなかった。従っ
て、ピーク強度のS/Nが悪く、図7に示すように、ば
らつきの多い検量線になってしまった。
【0129】比較例2(蛍光X線による実測値と基準値
との比較) 実施例2と同じサンプル(サンプルD〜I)を、比較例
1と同じ条件で蛍光X線による強度測定を行い、各層の
膜厚を図7及び図8に示した検量線に従い算出した。但
し、上述したように蛍光X線では、上層の膜厚のみAl
−Kα検量線から求められるので、下層はFe−Kα検
量線から求めたトータル(total )膜厚から上層膜厚を
差し引くことで求めた。
【0130】なお、基準値は、実施例2と同様に、ミク
ロトーム−TEM法により求めた。その測定結果を下記
表3A及び表3Bに示す。また、下記表3Aは、上層磁
性層の膜厚測定結果を示し、下記表3Bは、下層非磁性
層の膜厚測定結果を示す。
【0131】 但し、表中、「蛍光X線検量線」は蛍光X線装置による
測定結果を示し、「基準値」はミクロトーム−TEM法
による測定結果を示す。
【0132】 但し、表中、「蛍光X線検量線」は蛍光X線装置による
測定結果を示し、「基準値」はミクロトーム−TEM法
による測定結果を示す。
【0133】表3A及び表3Bに示すように、上層磁性
層の膜厚を導くためのAl−Kαによるピーク強度が低
く、S/Nが悪いために検量線から求めた測定値はばら
つきが大きく、しかも、ミクロトーム−TEM法による
膜厚と大きな差が出ている。従って、下層膜厚も同じく
精度の低い値になっている。
【0134】以上述べたように、本実施例による膜厚測
定は、非磁性支持体上に非磁性粉末を含有する非磁性塗
料(又は、強磁性粉末を含有する磁性塗料)を塗布して
下層塗膜を形成した後、この下層塗膜上に、強磁性粉末
を含有する磁性塗料を塗布することで上層塗膜を形成し
て成る重層塗布型の磁気記録媒体において、X線回折を
利用し、前記上層膜厚を強磁性粉末の回折X線を検出す
ることにより測定し、前記下層膜厚を非磁性粉末の回折
X線を検出することにより測定しているので、迅速に、
かつ、正確に各層の膜厚を測定することができた。
【0135】従って、X線源と検出器とを独自に制御す
ることにより、図2及び図3に示したように、インライ
ンでの膜厚測定を行うことが可能となり、例えば、同時
重層塗布装置にX線源と検出器とを取り付けることによ
り、塗布した塗膜中の含量の回折X線強度を検出するこ
とができる。
【0136】その場合、図3(B)に示したように、上
層磁性層の強磁性粉末の回折X線を検出するめと、下層
の非磁性粉末(又は強磁性粉末)の回折X線を検出する
ための2つの検出器を取り付けておくことにより、上層
と下層とからの回折X線を同時に検出することができ、
その検出強度を検量線によって膜厚に換算できる。
【0137】この測定は迅速に行うことができ、この測
定結果を塗布工程にフィードバックすることによって、
上下各層の膜厚を所望の値に調整することができ、塗布
厚の均一な上下各層を有する高品質な磁気記録媒体を提
供することができる。即ち、上層の厚みムラによる電磁
変換特性の劣化を防止した磁気記録媒体を製造すること
ができる。
【0138】以上の実施例は、非磁性支持体上に、非磁
性粉末を含有する非磁性塗料を下層として形成する場合
を示したが、下層として磁性粉末を含有する磁性塗料を
塗布した場合でも、上層と異なる結晶構造を持つ場合
(例えば、上層にFe金属磁性粉末、下層に酸化鉄系磁
性粉末を使用)、同じ原理により、上層と下層それぞれ
の膜厚を正確に測定することができる。
【0139】
【発明の効果】本発明の膜厚測定方法によれば、第1層
と第2層とを有する積層膜における前記第1層、前記第
2層の膜厚を測定するに際し、X線回折によって前記第
1層、前記第2層の膜厚を測定するので、非破壊、非接
触にて各層の膜厚測定が行われ、さらに、たとえ第1
層、第2層が同じ主構成元素からなる場合でも、前記各
層の膜厚を迅速かつ高精度に測定できる。
【0140】本発明の膜厚測定装置によれば、第1層と
第2層とを有する積層膜における前記第1層、前記第2
層の膜厚を測定する装置であって、前記第1層、前記第
2層の膜厚を測定するためのX線回折部を有しているの
で、本発明の膜厚測定方法を再現性良く実施できる。
【0141】本発明の製造方法によれば、上層磁性層
と、非磁性層又は磁性層からなる下層とを有する磁気記
録媒体を製造するに際し、前記上層及び前記下層の膜厚
をX線回折によって測定し、この測定情報に基づいて、
成膜時の前記上層の膜厚及び/又は前記下層の膜厚を制
御するので、非接触、非破壊にて各層の膜厚測定され、
さらに、たとえ上下各層が同じ主構成元素からなる場合
でも、迅速かつ高精度に膜厚測定できる。従って、成膜
時の膜厚制御を製造ライン内で随時行うことができ、膜
厚、特に電磁変換特性を大きく左右する上層磁性層の膜
厚を精密に制御、管理し、その均一化が達成できる。
【0142】本発明の製造装置によれば、上層磁性層
と、非磁性層又は磁性層からなる下層とを有する磁気記
録媒体を製造する装置であって、前記上層及び前記下層
の膜厚を測定するX線回折部と、この膜厚測定情報に基
づいて、成膜時の前記上層の膜厚及び/又は前記下層の
膜厚を制御する制御部とを有しているので、本発明の製
造方法を再現性良く実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による磁気記録媒体の概略断面図であ
る。
【図2】本発明による磁気記録媒体の製造装置の一例の
概略模式図である。
【図3】同、磁気記録媒体の製造装置のブロック図
(A)、重層塗布装置及び回折部の概略模式図(B)で
ある。
【図4】同、磁気記録媒体の製造方法に使用可能な重層
塗布装置の一例の概略断面図(A)、同、他の重層塗布
装置の概略断面図(B)、同、さらに他の重層塗布装置
の概略断面図(C)である。
【図5】同、X線回折による上層磁性層の検量線を表す
グラフである。
【図6】同、X線回折による下層非磁性層の検量線を表
すグラフである。
【図7】蛍光X線による上層磁性層の検量線を表すグラ
フである。
【図8】蛍光X線による下層非磁性層の検量線を表すグ
ラフである。
【符号の説明】
1…磁気記録媒体、2…上層(磁性層)、2a…上層用
塗料、3…下層(非磁性層又は磁性層)、3a…下層用
塗料、4…非磁性支持体、5…バックコート層、6…境
界部分、10…送りロール、11、11a、11b、1
1c…重層塗布装置、12…配向用磁石、13…乾燥
器、14…カレンダー装置、15、15’…X線回折
部、16…巻取りロール、17、17a、17b…回折
X線検出器、18a、18b…X線源、21…演算装
置、22…制御回路、25、26…塗料溜まり、27、
28、29、30…コーター

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1層と第2層とを有する積層膜におけ
    る前記第1層、前記第2層の膜厚を測定するに際し、 X線回折によって前記第1層、前記第2層の膜厚を測定
    する、積層膜の膜厚測定方法。
  2. 【請求項2】 前記第1層と前記第2層とにおける特定
    の結晶性物質の回折X線をそれぞれ検出し、これらの検
    出強度に対応した前記第1層、前記第2層の膜厚をそれ
    ぞれ測定する、請求項1に記載した積層膜の膜厚測定方
    法。
  3. 【請求項3】 前記第1層と前記第2層とが互いに異な
    る前記結晶性物質を含有している、請求項2に記載した
    積層膜の膜厚測定方法。
  4. 【請求項4】 前記第1層の膜厚に関する検量線及び前
    記第2層の膜厚に関する検量線を予め作成し、この検量
    線をもとに、前記第1層の回折X線、前記第2層の回折
    X線の各検出強度から、前記第1層の膜厚及び前記第2
    層の膜厚をそれぞれ算出する、請求項2に記載した積層
    膜の膜厚測定方法。
  5. 【請求項5】 前記第1層と前記第2層とが重層塗布で
    形成された層である、請求項1に記載した積層膜の膜厚
    測定方法。
  6. 【請求項6】 前記第1層を磁性粉末を含有する上層磁
    性層とし、前記第2層を非磁性粉末を含有する下層非磁
    性層、又は、磁性粉末を含有する下層磁性層とする、請
    求項1に記載した積層膜の膜厚測定方法。
  7. 【請求項7】 第1層と第2層とを有する積層膜におけ
    る前記第1層、前記第2層の膜厚を測定する装置であっ
    て、 前記第1層、前記第2層の膜厚を測定するためのX線回
    折部を有する、積層膜の膜厚測定装置。
  8. 【請求項8】 前記第1層と前記第2層とにおける特定
    の結晶性物質の回折X線がそれぞれ検出され、これらの
    検出強度に対応した前記第1層、前記第2層の膜厚がそ
    れぞれ測定される、請求項7に記載した積層膜の膜厚測
    定装置。
  9. 【請求項9】 前記第1層と前記第2層とが互いに異な
    る結晶性物質を含有している、請求項8に記載した積層
    膜の膜厚測定装置。
  10. 【請求項10】 前記第1層の膜厚に関する検量線及び
    前記第2層の膜厚に関する検量線が予め作成され、この
    検量線をもとに、前記第1層の回折X線、前記第2層の
    回折X線の各検出強度から、前記第1層の膜厚及び前記
    第2層の膜厚がそれぞれ算出される、請求項8に記載し
    た積層膜の膜厚測定装置。
  11. 【請求項11】 前記第1層と前記第2層とが重層塗布
    で形成された層である、請求項7に記載した積層膜の膜
    厚測定装置。
  12. 【請求項12】 前記第1層が磁性粉末を含有する上層
    磁性層であり、前記第2層が非磁性粉末を含有する下層
    非磁性層、又は、磁性粉末を含有する下層磁性層であ
    る、請求項7に記載した積層膜の膜厚測定装置。
  13. 【請求項13】 前記X線回折部が、前記第1層及び前
    記第2層の塗布後の乾燥部、又は、塗布部に後続されて
    いる、請求項7に記載した積層膜の膜厚測定装置。
  14. 【請求項14】 上層磁性層と、非磁性層又は磁性層か
    らなる下層とを有する磁気記録媒体を製造するに際し、 前記上層及び前記下層の膜厚をX線回折によって測定
    し、この測定情報に基づいて、成膜時の前記上層の膜厚
    及び/又は前記下層の膜厚を制御する、磁気記録媒体の
    製造方法。
  15. 【請求項15】 前記上層と前記下層とにおける特定の
    結晶性物質の回折X線をそれぞれ検出し、これらの検出
    強度に対応した前記上層、前記下層の膜厚をそれぞれ測
    定する、請求項14に記載した磁気記録媒体の製造方
    法。
  16. 【請求項16】 前記上層と前記下層とが互いに異なる
    前記結晶性物質を含有している、請求項15に記載した
    磁気記録媒体の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記上層と前記下層とが重層塗布で形
    成された層である、請求項14に記載した磁気記録媒体
    の製造方法。
  18. 【請求項18】 前記上層の膜厚に関する検量線及び前
    記下層の膜厚に関する検量線を予め作成し、この検量線
    をもとに、前記上層の回折X線、前記下層の回折X線の
    各検出強度から、前記第1層の膜厚及び前記第2層の膜
    厚をそれぞれ算出し、この膜厚測定情報に基づいて、前
    記上層の塗布厚、前記下層の塗布厚をそれぞれ制御す
    る、請求項14に記載した磁気記録媒体の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記磁気記録媒体が、 非磁性粉末を含有する非磁性塗料を塗布してなる下層非
    磁性層、又は、磁性粉末を含有する磁性塗料を塗布して
    なる下層磁性層と、 磁性粉末を含有する磁性塗料を塗布してなる上層磁性層
    とが非磁性支持体上に順次形成された重層塗布型の磁気
    記録媒体であり、 前記膜厚測定情報に基づいて、前記上層の塗布厚及び前
    記下層の塗布厚をそれぞれ制御する、請求項18に記載
    した磁気記録媒体の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記上層磁性層中の磁性粉末、前記下
    層非磁性層中の非磁性粉末若しくは前記下層磁性層中の
    磁性粉末からの回折X線を検出する、請求項19に記載
    した磁気記録媒体の製造方法。
  21. 【請求項21】 上層磁性層と、非磁性層又は磁性層か
    らなる下層とを有する磁気記録媒体を製造する装置であ
    って、 前記上層及び前記下層の膜厚を測定するX線回折部と、 この膜厚測定情報に基づいて、成膜時の前記上層の膜厚
    及び/又は前記下層の膜厚を制御する制御部とを有す
    る、磁気記録媒体の製造装置。
  22. 【請求項22】 前記上層と前記下層とにおける特定の
    結晶性物質の回折X線がそれぞれ検出され、これらの検
    出強度に対応した前記上層、前記下層の膜厚がそれぞれ
    測定される、請求項21に記載した磁気記録媒体の製造
    装置。
  23. 【請求項23】 前記上層と前記下層とが互いに異なる
    前記結晶性物質を含有している、請求項22に記載した
    磁気記録媒体の製造装置。
  24. 【請求項24】 前記上層と前記下層とが重層塗布で形
    成された層である、請求項21に記載した磁気記録媒体
    の製造装置。
  25. 【請求項25】 前記上層の膜厚に関する検量線及び前
    記下層の膜厚に関する検量線が予め作成され、この検量
    線をもとに、前記上層の回折X線、前記下層の回折X線
    の各検出強度から、前記第1層の膜厚及び前記第2層の
    膜厚がそれぞれ算出され、この膜厚測定情報に基づい
    て、前記上層の塗布厚、前記下層の塗布厚がそれぞれ制
    御される、請求項21に記載した磁気記録媒体の製造装
    置。
  26. 【請求項26】 前記磁気記録媒体が、 非磁性粉末を含有する非磁性塗料を塗布してなる下層非
    磁性層、又は、磁性粉末を含有する磁性塗料を塗布して
    なる下層磁性層と、 磁性粉末を含有する磁性塗料を塗布してなる上層磁性層
    とが非磁性支持体上に順次形成された重層塗布型の磁気
    記録媒体であり、 前記膜厚測定情報に基づいて、前記上層の塗布厚及び前
    記下層の塗布厚がそれぞれ制御される、請求項25に記
    載した磁気記録媒体の製造装置。
  27. 【請求項27】 前記上層磁性層中の磁性粉末、前記下
    層非磁性層中の非磁性粉末若しくは前記下層磁性層中の
    磁性粉末からの回折X線が検出される、請求項26に記
    載した磁気記録媒体の製造装置。
  28. 【請求項28】 前記X線回折部が、前記上層及び前記
    下層の塗布後の乾燥部、又は、塗布部に後続されてい
    る、請求項21に記載した磁気記録媒体の製造装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007078616A (ja) * 2005-09-16 2007-03-29 Sony Corp 複数層からなる薄膜の各構成層の膜厚測定方法および膜厚測定装置
JP2010014432A (ja) * 2008-07-01 2010-01-21 Covalent Materials Corp 膜厚測定方法
JP2013072776A (ja) * 2011-09-28 2013-04-22 Shin Etsu Handotai Co Ltd ポリシリコン膜の膜厚評価方法

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