JPH11342566A - 透明被覆成形品およびその製造方法 - Google Patents

透明被覆成形品およびその製造方法

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JPH11342566A
JPH11342566A JP10150125A JP15012598A JPH11342566A JP H11342566 A JPH11342566 A JP H11342566A JP 10150125 A JP10150125 A JP 10150125A JP 15012598 A JP15012598 A JP 15012598A JP H11342566 A JPH11342566 A JP H11342566A
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JP
Japan
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coating composition
layer
uncured
meth
transparent
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Application number
JP10150125A
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English (en)
Inventor
Satoshi Kondo
聡 近藤
Toshihiko Higuchi
俊彦 樋口
Takashi Shibuya
崇 澁谷
Hirotsugu Yamamoto
博嗣 山本
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AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】透明合成樹脂基材上に非常に高度な耐摩耗性を
発現する硬化物層を形成した透明被覆成形品を提供す
る。 【解決手段】透明合成樹脂基材上に紫外線硬化性被覆組
成物から形成された硬化物からなる内層と、その内層に
接した特定の有機化合物を含むポリシラザンに由来する
シリカからなる最外層とが形成されてなる透明被覆成形
品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明合成樹脂基材
上に、内層として活性エネルギ線(特に紫外線)硬化性
被覆組成物に由来する硬化物の層と、この内層に接する
最外層としてポリシラザンに由来するシリカと特定の有
機化合物からなる層が形成された、耐磨耗性、透明性、
耐候性、靱性などに優れた透明硬化物層を有する透明被
覆成形品、およびこの透明被覆成形品の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、ガラスに代わる透明材料として透
明合成樹脂材料が用いられている。とりわけ芳香族ポリ
カーボネート系樹脂は耐破砕性、透明性、軽量性、易加
工性などに優れ、その特徴を生かして、外壁、アーケー
ド等の大面積の透明部材として各方面で使用されてい
る。また、自動車等の車両用にも一部にガラス(無機ガ
ラスをいう、以下同様)の代わりにこうした透明合成樹
脂材料が使われる例がみられる。しかし、ガラスの代わ
りに使用するには表面の硬度が充分ではなく、傷つきや
すく磨耗しやすいことから透明性が損なわれやすい欠点
がある。
【0003】従来、芳香族ポリカーボネート系樹脂の耐
擦傷性や耐磨耗性の改良には、最も一般的な方法とし
て、分子中にアクリロイル基等の重合性官能基を2個以
上有する重合硬化性化合物を基材に塗布し、熱または紫
外線等の活性エネルギ線により硬化させ、耐擦傷性に優
れた透明硬化物層を有する成形品を得る方法がある。こ
の方法は、塗布液が比較的安定で特に紫外線硬化ができ
るため生産性に優れ、成形品に曲げ加工を施した場合で
も硬化被膜にクラックが発生せず、表面の耐擦傷性や耐
磨耗性を改善できる。
【0004】一方、基材により高い表面硬度を付与する
方法として、金属アルコキシド化合物を基材に塗布し、
熱により硬化させる方法がある。金属アルコキシド化合
物としてはケイ素系の化合物が広く用いられ、耐磨耗性
に非常に優れた硬化被膜を形成できる。しかし、金属ア
ルコキシドの硬化に高温を必要とするため生産性が低
く、また、硬化被膜と基材との密着性に乏しいため、硬
化被膜の剥離やクラックを生じやすい等の欠点があっ
た。
【0005】これらの技術の欠点を改良する方法として
アクリロイル基を有する化合物とコロイド状シリカの混
合物を基材に塗布して、紫外線等の活性エネルギ線によ
り硬化させ、耐擦傷性に優れた透明硬化物層を形成する
方法(特開昭61−181809)がある。コロイド状
シリカを重合硬化性化合物と併用することにより、かな
り高い表面硬度と生産性を両立させうる。しかし、その
表面耐擦傷性の発現レベルは、先の金属アルコキシド化
合物による方法には劣っていた。
【0006】また、前記ケイ素系金属アルコキシド化合
物の代わりにポリシラザンを用いる、すなわち、ポリシ
ラザンを基材に塗布し熱等により硬化させる方法も知ら
れている(特開平8−143689)。ポリシラザンは
酸素の存在下で縮合反応や酸化反応が起こり、窒素原子
を含むこともあるシリカ(二酸化ケイ素)に変化すると
考えられており、最終的には実質的に窒素原子を含まな
いシリカの被膜が形成される。ポリシラザンに由来する
シリカの被膜は高い表面硬度を有する。しかし、この被
膜は金属アルコキシド化合物の場合と同様に被膜と基材
との密着性に乏しいため、被膜の剥離やクラックを生じ
やすい等の欠点がある。
【0007】さらに、特開平9−39161にはプラス
チックフィルム上に保護被膜を形成し、その表面にポリ
シラザン溶液を塗工してシリカの表面層を形成する方法
が記載されている。保護被膜はプラスチックフィルムが
ポリシラザン溶液の溶媒に侵されることを防ぐために設
けられている。
【0008】また、特開平6−212004において紫
外線硬化型化合物の未硬化物および部分硬化物の上にシ
リコーン系熱重合硬化物を塗工し、紫外線を照射し、さ
らに加熱重合させる方法が提案されている。しかし、こ
の方法でもシリコーン系熱重合硬化物の硬化のために数
時間の加熱焼成操作が必要であり、生産性に問題があっ
た。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前述の欠点を
解消しようとするものである。すなわち、ポリシラザン
から形成されるシリカの層の表面は耐摩耗性を有するこ
とが知られている。しかし、このシリカの層を形成した
プラスチックフィルムを曲率半径30mmR以下の曲率
に曲げると、シリカの層にクラックが入る問題があっ
た。本発明者はこのシリカ層の靭性がシリカ層に含まれ
る他の成分により変化することを見い出した。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は30mmRよ
り小さな曲率に曲げてもクラックが生じない硬化物を検
討した結果、ポリシラザンに特定の化合物を添加するこ
とで最外層に靱性を付与することができ、30mmRよ
り小さな曲率に曲げてもクラックが生じないことを見い
出した。本発明はこの成形品およびその製造方法にかか
わる下記発明である。
【0011】透明合成樹脂基材および透明合成樹脂基材
表面の少なくとも一部に設けられた2層以上の透明硬化
物層を含む透明被覆成形品において、2層以上の透明硬
化物層のうち最外層に接する内層が下記被覆組成物
(A)の硬化物の層であり、最外層が下記被覆組成物
(B)の硬化物の層であることを特徴とする透明被覆成
形品。 被覆組成物(A):活性エネルギ線硬化性の重合性官能
基を2個以上有する多官能性化合物(a)を含む活性エ
ネルギ線硬化性被覆組成物。 被覆組成物(B):溶剤可溶性フッ素樹脂(b1)、ア
クリル系樹脂(b2)、および活性エネルギ線硬化性の
重合性官能基を1個以上有する化合物(b3)からなる
群から選ばれる1種以上の物質とポリシラザン(b)と
を含む被覆組成物。
【0012】被覆組成物(A)の硬化物の層を形成した
後、被覆組成物(A)の硬化物の層の表面に被覆組成物
(B)の未硬化物の層を形成して被覆組成物(B)の未
硬化物の硬化を行うことを特徴とする上記の透明被覆成
形品の製造方法。
【0013】被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬
化物の層を形成した後、被覆組成物(A)の未硬化物ま
たは部分硬化物の層の表面に被覆組成物(B)の未硬化
物層を形成し、その後被覆組成物(A)の未硬化物また
は部分硬化物と被覆組成物(B)の未硬化物との硬化を
行うことを特徴とする上記の透明被覆成形品の製造方
法。
【0014】被覆組成物(A)の未硬化物、部分硬化物
または硬化物の層およびその層の表面に被覆組成物
(B)の未硬化物または部分硬化物の層を形成した後、
被覆組成物(B)の未硬化物または部分硬化物の層越し
に活性エネルギ線を照射し、被覆組成物(A)を硬化さ
せ、これらの層を有する基材を曲げ加工し、次いで被覆
組成物(B)の未硬化物または部分硬化物を硬化させる
とともに被覆組成物(A)の未硬化物、部分硬化物が存
在する場合はそれを硬化させることを特徴とする曲げ加
工された上記の透明被覆成形品の製造方法。
【0015】本発明における透明硬化物層は多層構成で
あり、シリカと有機物からなる被膜である最外層が柔ら
かい透明合成樹脂基材に直接積層されているのではな
く、硬さの調節された透明硬化物内層上に積層されてい
る。このため透明被覆成形品に対して傷を付けようと加
えられた外力による最外層の変位が小さくなり、有機物
と無機物の混合物でありながら通常の無機被膜が与える
表面特性と同等の表面特性を持ち、かつ曲げ性にも優れ
ると考えられる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明における透明硬化物層は、
最外層に直接接する透明硬化物からなる内層と透明硬化
物からなる最外層との2層以上の構成からなる。透明合
成樹脂基材(以下、単に基材という)と透明硬化物層と
の間には合成樹脂などからなる第3の層が存在していて
もよい。たとえば、熱可塑性アクリル樹脂などの熱可塑
性樹脂の層や接着剤層が存在していてもよい。通常は基
材上の層は上記内層と最外層の2層からなる。内層は2
層以上の種類の異なる透明硬化物からなっていてもよ
い。
【0017】透明硬化物層のうち最外層に接する内層が
活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層は
最外層と高い密着性を有する。また、基材とも高い密着
性を有する。この内層と基材との間に第3の層が存在す
る場合、その層は両者に対し充分な密着性を有すること
が好ましい。この内層はさらに充分な耐摩耗性を有す
る。この内層はJIS−R3212における耐摩耗性試
験による試験回数100回後の曇価(摩耗試験後の曇価
と摩耗試験前の曇価との差)が15%以下の耐摩耗性を
有することが好ましい。耐摩耗性試験は、基材(必ずし
も基材であることを要しない)に被覆組成物(A)の硬
化物の層を形成した試験片を用いて行いうる。本発明透
明被覆成形品自体はこの硬化物の層の上に最外層が形成
されているので、この透明被覆成形品自体を内層の耐摩
耗性試験に供することは困難である。内層のより好まし
い耐摩耗性は試験回数100回後の曇価が10%以下、
特に5%以下、のものである。
【0018】密着性と耐摩耗性の高い内層を得るため
に、活性エネルギ線硬化性の被覆組成物(A)として多
官能性化合物(a)を用いる。また、同様に高い耐摩耗
性の硬化物を形成するために、被覆組成物(A)に平均
粒径200nm以下のコロイド状シリカを配合してコロ
イド状シリカを含む硬化物を形成することも好ましい。
なお、多官能性化合物(a)を活性エネルギ線(特に紫
外線)で効率よく硬化させるために、通常被覆組成物
(A)は光開始剤を含む。
【0019】被覆組成物(A)における活性エネルギ線
硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物
(a)は、1種類の多官能性化合物であってもよく、ま
た複数の種類の化合物を用いてもよい。複数の場合、同
一範疇の異なる化合物であってもよく、範疇の異なる化
合物であってもよい。たとえば、それぞれがアクリルウ
レタンである異なる化合物の組み合わせであってもよ
く、一方がアクリルウレタン、他方がウレタン結合を有
しないアクリル酸エステル化合物である組み合わせであ
ってもよい。
【0020】活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2
個以上有する多官能性化合物における活性エネルギ線硬
化性の重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル
基、ビニル基、アリル基などの不飽和基やそれを有する
基であり、(メタ)アクリロイル基であることが好まし
い。すなわち、多官能性化合物としては、(メタ)アク
リロイル基から選ばれる1種以上の重合性官能基を2個
以上有する化合物が好ましい。さらにそのうちでも紫外
線によってより重合しやすいアクリロイル基が好まし
い。なお、この多官能性化合物は1分子中に2種以上の
重合性官能基を合計2個以上有する化合物であってもよ
く、また同じ重合性官能基を合計2個以上有する化合物
であってもよい。多官能性化合物1分子中における重合
性官能基の数は2個以上であり、その上限は特に限定さ
れない。通常は2〜50個が適当であり、特に3〜30
個が好ましい。
【0021】本明細書では、アクリロイル基およびメタ
クリロイル基を総称して(メタ)アクリロイル基とい
う。(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリル
酸、(メタ)アクリレート等も表現も同様とする。な
お、上記のようにこれらの基や化合物のうちでより好ま
しいものはアクリロイル基を有するもの、たとえばアク
リロイルオキシ基、アクリル酸、アクリレート等であ
る。
【0022】多官能性化合物(a)として好ましい化合
物は(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物で
ある。そのうちでも(メタ)アクリロイルオキシ基を2
個以上有する化合物、すなわち多価アルコールなどの2
個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸と
のポリエステル、が好ましい。
【0023】被覆組成物(A)において、多官能性化合
物(a)として2種以上の多官能性化合物が含まれてい
てもよい。また、多官能性化合物とともに、活性エネル
ギ線によって重合しうる重合性官能基を1個有する単官
能性化合物が含まれていてもよい。この単官能性化合物
としては(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ま
しく、特にアクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0024】被覆組成物(A)においてこの単官能性化
合物を使用する場合、多官能性化合物(a)とこの単官
能性化合物との合計に対するこの単官能性化合物の割合
は、特に限定されないが0〜60重量%が適当である。
単官能性化合物の割合が多すぎると硬化塗膜の硬さが低
下し耐磨耗性が不充分となるおそれがある。多官能性化
合物(a)とこの単官能性化合物との合計に対する単官
能性化合物のより好ましい割合は組成物0〜30重量%
である。
【0025】多官能性化合物(a)としては、重合性官
能基以外に種々の官能基や結合を有する化合物であって
もよい。たとえば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン
原子、ウレタン結合、エーテル結合、エステル結合、チ
オエーテル結合、アミド結合、ジオルガノシロキサン結
合などを有していてもよい。特に、ウレタン結合を有す
る(メタ)アクリロイル基含有化合物(いわゆるアクリ
ルウレタン)とウレタン結合を有しない(メタ)アクリ
ル酸エステル化合物が好ましい。以下これら2種の多官
能性化合物について説明する。
【0026】ウレタン結合を有する(メタ)アクリロイ
ル基含有化合物(以下アクリルウレタンという)は、た
とえば、(1)(メタ)アクリロイル基と水酸基を有す
る化合物(X1)と2個以上のイソシアネート基を有す
る化合物(以下ポリイソシアネートという)との反応生
成物、(2)化合物(X1)と2個以上の水酸基を有す
る化合物(X2)とポリイソシアネートとの反応生成
物、(3)(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基
を有する化合物(X3)と化合物(X2)との反応生成
物、などがある。これらの反応生成物においては、イソ
シアネート基が存在しないことが好ましい。しかし、水
酸基は存在してもよい。したがって、これらの反応生成
物の製造においては、全反応原料の水酸基の合計モル数
はイソシアネート基の合計モル数と等しいかそれより多
いことが好ましい。
【0027】(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する
化合物(X1)としては、(メタ)アクリロイル基と水
酸基をそれぞれ1個ずつ有する化合物であってもよく、
(メタ)アクリロイル基2個以上と水酸基1個を有する
化合物、(メタ)アクリロイル基1個と水酸基2個以上
を有する化合物、(メタ)アクリロイル基と水酸基をそ
れぞれ2個以上有する化合物であってもよい。具体例と
して、上記順に、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)
アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)ア
クリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレ
ートなどがある。これらは2個以上の水酸基を有する化
合物と(メタ)アクリル酸とのモノエステルまたは1個
以上の水酸基を残したポリエステルである。
【0028】さらに化合物(X1)としては、エポキシ
基を1個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸との開
環反応生成物であってもよい。エポキシ基と(メタ)ア
クリル酸との反応によりエポキシ基が開環してエステル
結合が生じるとともに水酸基が生じ、(メタ)アクリロ
イル基と水酸基を有する化合物となる。またエポキシ基
を1個以上有する化合物のエポキシ基を開環させて水酸
基含有化合物としそれを(メタ)アクリル酸エステルに
変換することもできる。
【0029】エポキシ基を1個以上有する化合物として
は、いわゆるエポキシ樹脂と呼ばれているポリエポキシ
ドが好ましい。ポリエポキシドとしては、たとえば多価
フェノール類−ポリグリシジルエーテル(たとえばビス
フェノールA−ジグリシジルエーテル)などのグリシジ
ル基を2個以上有する化合物や脂環族エポキシ化合物が
好ましい。さらに、エポキシ基を有する(メタ)アクリ
レートと水酸基やカルボキシル基を有する化合物との反
応生成物も化合物(X1)として使用できる。エポキシ
基を有する(メタ)アクリレートとしては、たとえばグ
リシジル(メタ)アクリレートがある。
【0030】ポリイソシアネートとしては、通常の単量
体状のポリイソシアネートでもよく、ポリイソシアネー
トの多量体や変性体またはイソシアネート基含有ウレタ
ンプレポリマーなどのプレポリマー状の化合物であって
もよい。
【0031】多量体としては3量体(イソシアヌレート
変性体)、2量体、カルボジイミド変性体などがあり、
変性体としてはトリメチロールプロパン等の多価アルコ
ールで変性して得られるウレタン変性体、ビュレット変
性体、アロハネート変性体、ウレア変性体などがある。
プレポリマー状のものの例としては、後述ポリエーテル
ポリオールやポリエステルポリオールなどのポリオール
とポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシア
ネート基含有ウレタンプレポリマーなどがある。これら
ポリイソシアネートは2種以上併用して使用できる。
【0032】具体的な単量体状のポリイソシアネートと
しては、たとえば、以下のポリイソシアネートがある
([ ]内は略称)。2,6−トリレンジイソシアネー
ト、2,4−トリレンジイソシアネート、メチレンビス
(4−フェニルイソシアネート)[MDI]、ヘキサメ
チレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネー
ト、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネー
ト、キシリレンジイソシアネート[XDI]、水添XD
I、水添MDI。
【0033】ポリイソシアネートとしては特に無黄変性
ポリイソシアネート(芳香核に直接結合したイソシアネ
ート基を有しないポリイソシアネート)が好ましい。具
体的にはヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族
ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど
の脂環族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネ
ートなどの芳香族ポリイソシアネートがある。上記のよ
うにこれらポリイソシアネートの多量体や変性体等も好
ましい。
【0034】2個以上の水酸基を有する化合物(X2)
としては、多価アルコールや多価アルコールに比較して
高分子量のポリオールなどがある。多価アルコールとし
ては、2〜20個の水酸基を有する多価アルコールが好
ましく、特に2〜15個の水酸基を有する多価アルコー
ルが好ましい。多価アルコールは脂肪族の多価アルコー
ルであってもよく、脂環族多価アルコールや芳香核を有
する多価アルコールであってもよい。
【0035】芳香核を有する多価アルコールとしてはた
とえば多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物や
多価フェノール類−ポリグリシジルエーテルなどの芳香
核を有するポリエポキシドの開環物などがある。高分子
量のポリオールとしてはポリエーテルポリオール、ポリ
エステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオー
ル、ポリカーボネートポリオールなどがある。また、ポ
リオールとして水酸基含有ビニルポリマーをも使用でき
る。これら多価アルコールやポリオールは2種以上併用
できる。
【0036】多価アルコールの具体例としてはたとえば
以下の多価アルコールがある。エチレングリコール、
1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオー
ル、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコー
ル、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコー
ル、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキ
サン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエ
リスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエ
リスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシ
アヌレート、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシ
アヌレート、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル
の開環物、ビニルシクロヘキセンジオキシドの開環物。
【0037】ポリオールの具体例としてはたとえば以下
のポリオールがある。ポリエチレングリコール、ポリプ
ロピレングリコール、ビスフェノールA−アルキレンオ
キシド付加物、ポリテトラメチレングリコール等のポリ
エーテルポリオール。ポリε−カプロラクトンポリオー
ル等の環状エステルを開環重合して得られるポリエステ
ルポリオール。アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、マ
レイン酸、フマル酸、アゼライン酸、グルタル酸等の多
塩基酸と上記多価アルコールとの反応で得られるポリエ
ステルポリオール。1,6−ヘキサンジオールとホスゲ
ンの反応で得られるポリカーボネートジオール。
【0038】水酸基含有ビニルポリマーとしてはたとえ
ばアリルアルコール、ビニルアルコール、ヒドロキシア
ルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)ア
クリレートなどの水酸基含有単量体とオレフィンなどの
水酸基不含単量体との共重合体がある。(メタ)アクリ
ロイル基とイソシアネート基を有する化合物(X3)と
しては、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレー
ト、メタクリロイルイソシアネートなどがある。
【0039】次に、ウレタン結合を有しない(メタ)ア
クリル酸エステル化合物について説明する。多官能性化
合物(a)として好ましいウレタン結合を有しない(メ
タ)アクリル酸エステル化合物としては、前記化合物
(X2)と同様の2個以上の水酸基を有する化合物と
(メタ)アクリル酸とのポリエステルが好ましい。2個
以上の水酸基を有する化合物としては前記多価アルコー
ルやポリオールが好ましい。さらに、2個以上のエポキ
シ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成
物である(メタ)アクリル酸エステル化合物も好まし
い。
【0040】2個以上のエポキシ基を有する化合物とし
てはエポキシ樹脂と呼ばれているポリエポキシドがあ
る。たとえば、グリシジルエーテル型ポリエポキシド、
脂環型ポリエポキシドなどのエポキシ樹脂として市販さ
れているものを使用できる。
【0041】ウレタン結合を含まない多官能性化合物の
具体例としてはたとえば以下のような化合物がある。以
下の脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレート。
1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオ
ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ
(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリ
レート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレ
ート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリ
レート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレー
ト、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレー
ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレー
ト、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレー
ト。
【0042】以下の芳香核またはトリアジン環を有する
多価アルコールや多価フェノールの(メタ)アクリレー
ト。トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)
イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオ
キシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレー
ト、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピ
ル)イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイ
ルオキシエチル)ビスフェノールA、ビス(2−(メ
タ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェノールS、ビ
ス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェ
ノールF、ビスフェノールAジメタクリレート。
【0043】以下の水酸基含有化合物−アルキレンオキ
シド付加物の(メタ)アクリレート、水酸基含有化合物
−カプロラクトン付加物の(メタ)アクリレート、ポリ
オキシアルキレンポリオールの(メタ)アクリレート。
ただし、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオ
キシドを表す。トリメチロールプロパン−EO付加物の
トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−
PO付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリ
スリトール−カプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)ア
クリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシア
ヌレート−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリ
レート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ
ート−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレー
ト。
【0044】多官能性化合物(a)としては、被覆組成
物(A)の硬化物が充分な耐摩耗性を発揮しうるため
に、少なくともその一部(好ましくは30重量%以上)
が活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を3個以上有す
る多官能性化合物からなることが好ましい。好ましくは
その50重量%以上が活性エネルギ線硬化性の重合性官
能基を3個以上有する多官能性化合物からなる。また、
具体的な好ましい多官能性化合物(a)は下記のアクリ
ルウレタンとウレタン結合を有しない多官能性化合物で
ある。
【0045】アクリルウレタンの場合、ペンタエリスリ
トールやその多量体であるポリペンタエリスリトールと
ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アク
リレート)の反応生成物であるアクリルウレタン、また
はペンタエリスリトールやポリペンタエリスリトールの
水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートとポリイソシアネ
ートとの反応生成物であるアクリルウレタンであって活
性エネルギ線硬化性の重合性官能基を3個以上(好まし
くは4〜20個)有する化合物が好ましい。
【0046】ウレタン結合を有しない多官能性化合物と
しては、ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリレ
ートとイソシアヌレート系ポリ(メタ)アクリレートが
好ましい。ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリ
レートとは、ペンタエリスリトールやポリペンタエリス
リトールと(メタ)アクリル酸とのポリエステル(好ま
しくは活性エネルギ線硬化性の重合性官能基が4〜20
個のもの)をいう。イソシアヌレート系ポリ(メタ)ア
クリレートとは、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシ
アヌレートまたはその1モルに1〜6モルのカプロラク
トンやアルキレンオキシドを付加して得られる付加物と
(メタ)アクリル酸とのポリエステル(活性エネルギ線
硬化性の重合性官能基が2〜3個のもの)をいう。これ
ら好ましい多官能性化合物と他の活性エネルギ線硬化性
の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(特に
多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート)とを併用
することも好ましい。これら好ましい多官能性化合物は
全多官能性化合物(a)に対して30重量%以上、特に
50重量%以上が好ましい。
【0047】多官能性化合物(a)とともに使用できる
単官能性化合物としては、たとえば分子中に1個の(メ
タ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。そのよ
うな単官能性化合物は、水酸基、エポキシ基などの官能
基を有していてもよい。好ましい単官能性化合物は(メ
タ)アクリル酸エステル、すなわち(メタ)アクリレー
トである。
【0048】具体的な単官能性化合物としてはたとえば
以下の化合物がある。メチル(メタ)アクリレート、エ
チル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレー
ト、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メ
タ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリ
レート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシ
ル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート。
【0049】最外層に直接接する透明硬化物層の耐摩耗
性や硬度を高める意味で組成物(A)は有効量の平均粒
径200nm以下のコロイド状シリカを含むことができ
る。コロイド状シリカの平均粒径は1〜100nmであ
ることが好ましく、特に1〜50nmが好ましい。コロ
イド状シリカはまた下記表面修飾されたコロイド状シリ
カであることが、コロイド状シリカの分散安定性および
コロイド状シリカと多官能性化合物との密着性向上の面
で好ましい。
【0050】これらコロイド状シリカを使用する場合、
その使用する効果を充分発揮するためにはコロイド状シ
リカの量は、透明硬化物層の硬化性成分(多官能性化合
物と単多官能性化合物の合計)100重量部に対して5
重量部以上が適当であり、10重量部以上が好ましい。
この量が少ない場合には充分な耐摩耗性が得られ難い。
また多すぎると被膜に曇り(ヘーズ)が発生しやすくな
り、また得られた透明被覆成形品を熱曲げ加工などの2
次加工を行う場合にはクラックが生じやすくなるなどの
問題を生じやすくなる。したがって、透明硬化物層にお
けるコロイド状シリカ量の上限は硬化性成分100重量
部に対して300重量部であることが好ましい。より好
ましいコロイド状シリカの量は硬化性成分100重量部
に対して50〜250重量部である。
【0051】コロイド状シリカとしては表面未修飾のコ
ロイド状シリカを使用できるが、好ましくは表面修飾さ
れたコロイド状シリカを使用する。表面修飾されたコロ
イド状シリカの使用は組成物中のコロイド状シリカの分
散安定性を向上させる。修飾によってコロイド状シリカ
微粒子の平均粒径は実質的に変化しないか多少大きくな
ると考えられるが、得られる修飾コロイド状シリカの平
均粒径は上記範囲のものであると考えられる。以下表面
修飾されたコロイド状シリカ(以下単に修飾コロイド状
シリカという)について説明する。
【0052】コロイド状シリカの分散媒としては種々の
分散媒が知られており、原料コロイド状シリカの分散媒
は特に限定されない。必要により分散媒を変えて修飾を
行うことができ、また修飾後に分散媒を変えることもで
きる。修飾コロイド状シリカの分散媒はそのまま基材に
直接接する透明硬化物層の硬化組成物の媒体(溶媒)と
することが好ましい。基材に直接接する透明硬化物層の
硬化組成物の媒体としては、乾燥性などの面から比較的
低沸点の溶媒、すなわち通常の塗料用溶媒、であること
が好ましい。製造の容易さなどの理由により、原料コロ
イド状シリカの分散媒、修飾コロイド状シリカの分散媒
および透明硬化物層の硬化組成物の媒体はすべて同一の
媒体(溶媒)であることが好ましい。このような媒体と
しては、塗料用溶媒として広く使用されているような有
機媒体が好ましい。
【0053】分散媒としては、たとえば以下のような分
散媒を使用できる。水、メタノール、エタノール、イソ
プロパノール、n−ブタノール、2−メチルプロパノー
ル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エ
チレングリコールのような低級アルコール類。メチルセ
ロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセ
ロソルブ類。ジメチルアセトアミド、トルエン、キシレ
ン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトンな
ど。
【0054】前記のように特に分散媒としては有機分散
媒が好ましく、上記有機分散媒のうちではさらにアルコ
ール類およびセロソルブ類が好ましい。なお、コロイド
状シリカとそれを分散させている分散媒との一体物をコ
ロイド状シリカ分散液という。
【0055】コロイド状シリカの修飾は加水分解性ケイ
素基または水酸基が結合したケイ素基を有する化合物
(以下これらを修飾剤という)を用いて行うことが好ま
しい。加水分解性ケイ素基の加水分解によってシラノー
ル基が生じ、これらシラノール基がコロイド状シリカ表
面に存在すると考えられるシラノール基と反応して結合
し、修飾剤がコロイド状シリカ表面に結合すると考えら
れる。修飾剤は2種以上を併用してもよい。また後述の
ように互いに反応性の反応性官能基を有する修飾剤2種
をあらかじめ反応させて得られる反応生成物を修飾剤と
して用いることもできる。
【0056】修飾剤は2個以上の加水分解性ケイ素基や
シラノール基を有していてもよく、また加水分解性ケイ
素基を有する化合物の部分加水分解縮合物やシラノール
基を有する化合物の部分縮合物であってもよい。好まし
くは1個の加水分解性ケイ素基を有する化合物を修飾剤
として使用する(修飾処理過程で部分加水分解縮合物が
生じてもよい)。また、修飾剤はケイ素原子に結合した
有機基を有し、その有機基の1個以上は反応性官能基を
有する有機基であることが好ましい。
【0057】好ましい反応性官能基はアミノ基、メルカ
プト基、エポキシ基および(メタ)アクリロイルオキシ
基である。反応性官能基が結合する有機基としては、反
応性官能基を除いて炭素数8以下のアルキレン基やフェ
ニレン基が好ましく、特に炭素数2〜4のアルキレン基
(とりわけポリメチレン基)が好ましい。具体的な修飾
剤としては反応性官能基の種類によって分けると、たと
えば以下のような化合物がある。
【0058】(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン
類;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメト
キシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル
トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシ
プロピルメチルジメトキシシランなど。
【0059】アミノ基含有シラン類;3−アミノプロピ
ルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキ
シシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラ
ン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルト
リメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−ア
ミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミ
ノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(N−
ビニルベンジル−2−アミノエチル)−3−アミノプロ
ピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメ
トキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリ
メトキシシランなど。
【0060】メルカプト基含有シラン類;3−メルカプ
トプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピ
ルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチル
ジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエ
トキシシランなど。エポキシ基含有シラン類;3−グリ
シドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキ
シプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシ
プロピルトリエトキシシランなど。イソシアネート基含
有シラン類;3−イソシアネートプロピルトリメトキシ
シラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラ
ン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラ
ン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラ
ンなど。
【0061】互いに反応性の反応性官能基を有する修飾
剤2種をあらかじめ反応させて得られる反応生成物とし
ては、たとえば、アミノ基含有シラン類とエポキシ基含
有シラン類との反応生成物、アミノ基含有シラン類と
(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン類との反応生
成物、エポキシ基含有シラン類とメルカプト基含有シラ
ン類との反応生成物、メルカプト基含有シラン類同士2
分子の反応生成物などがある。
【0062】コロイド状シリカの修飾は通常、加水分解
性基を有する修飾剤を触媒存在下にコロイド状シリカに
接触させて加水分解することにより行う。たとえば、コ
ロイド状シリカ分散液に修飾剤と触媒を添加し、コロイ
ド状シリカ分散液中で修飾剤を加水分解することによっ
て修飾できる。触媒としては、酸やアルカリがある。好
ましくは無機酸および有機酸から選ばれる酸を使用す
る。無機酸としては、たとえば塩酸、フッ化水素酸、臭
化水素酸等のハロゲン化水素酸や硫酸、硝酸、リン酸等
を使用できる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、シュウ
酸、アクリル酸、メタクリル酸等を使用できる。反応温
度としては室温から用いる溶媒の沸点までの間が好まし
く、反応時間は温度にもよるが0.5〜24時間の範囲
が好ましい。
【0063】コロイド状シリカの修飾において、修飾剤
の使用量は特に限定されないが、コロイド状シリカ(分
散液中の固形分)100重量部に対し、修飾剤1〜10
0重量部が適当である。修飾剤の量が1重量部未満では
表面修飾の効果が得られにくい。また、100重量部超
では未反応の修飾剤やコロイド状シリカ表面に担持され
ていない修飾剤の加水分解物〜縮合物が多量に生じ、透
明被覆層の硬化組成物の硬化の際それらが連鎖移動剤と
して働いたり、硬化後の被膜の可塑剤として働き、硬化
被膜の硬度を低下させるおそれが生じる。
【0064】前記のように多官能性化合物(a)を硬化
させるために通常被覆組成物(A)は光開始剤を含む。
光開始剤としては、公知または周知のものを使用でき
る。特に入手容易な市販のものが好ましい。透明硬化物
層において複数の光開始剤を使用してもよい。
【0065】光開始剤としては、アリールケトン系光開
始剤(たとえば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン
類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベ
ンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチル
ケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキ
シムエステル類など)、含イオウ系光開始剤(たとえ
ば、スルフィド類、チオキサントン類など)、アシルホ
スフィンオキシド系光開始剤、ジアシルホスフィンオキ
シド系光開始剤、その他の光開始剤がある。特に、アシ
ルホスフィンオキシド系光開始剤およびジアシルホスフ
ィンオキシド系光開始剤の使用が好ましい。また、光開
始剤はアミン類などの光増感剤と組み合わせて使用する
こともできる。具体的な光開始剤としては、たとえば以
下のような化合物がある。
【0066】4−フェノキシジクロロアセトフェノン、
4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブ
チル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフ
ェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプ
ロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)
−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1
−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1
−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(2
−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン−1−オ
ン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2
−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−
モルホリノプロパン−1−オン。
【0067】ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチル
エーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソ
プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベ
ンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル
安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベ
ンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化
ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベ
ンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−
ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,1
0−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベン
ゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4”−
ジエチルイソフタロフェノン、α−アシロキシムエステ
ル、メチルフェニルグリオキシレート。
【0068】4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニル
スルフィド、チオキサントン、2−クロルチオキサント
ン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオ
キサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジ
クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサント
ン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン。2,4,
6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシ
ド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6
−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−
トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,
4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオ
キシド。
【0069】被覆組成物(A)における光開始剤の量は
硬化性成分(多官能性化合物(a)と単官能性化合物の
合計)100重量部に対して0. 01〜20重量部、特
に0. 1〜10重量部が好ましい。被覆組成物(A)の
塗膜を形成するために被覆組成物(A)を溶剤に溶解し
て用いることができる。塗膜形成のためには溶剤は通常
必須の成分であり、多官能性化合物が特に低粘度の液体
でない限り溶剤が使用される。溶剤は被覆組成物(A)
の塗膜形成後、その塗膜を硬化させる前に除去される。
溶剤としては、多官能性化合物(a)を硬化成分とする
被覆用組成物に通常使用される溶剤を使用できる。また
原料コロイド状シリカの分散媒をそのまま溶剤としても
使用できる。さらに基材の種類により適切な溶剤を選択
して用いることが好ましい。
【0070】溶剤の量は必要とする組成物の粘度、目的
とする硬化被膜の厚さ、乾燥温度条件などにより適宜変
更できる。通常は組成物中の硬化性成分に対して重量で
100倍以下、好ましくは0.1〜50倍用いる。溶剤
としてはたとえば前記コロイド状シリカの修飾するため
の加水分解に用いる溶媒として挙げた、低級アルコール
類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類などの溶剤が
ある。そのほか、酢酸n−ブチル、ジエチレングリコー
ルモノアセテートなどのエステル類、ハロゲン化炭化水
素類、炭化水素類などがある。耐溶剤性の低い芳香族ポ
リカーボネート樹脂の被覆には低級アルコール類、セロ
ソルブ類、エステル類、それらの混合物などが適当であ
る。
【0071】被覆組成物(A)には、必要に応じて前記
以外の種々の配合剤を含むことができる。たとえば、紫
外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱重合防止剤など
の安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止
剤、顔料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性
剤類、酸、アルカリおよび塩類などから選ばれる硬化触
媒等を適宜配合して用いてもよい。
【0072】被覆組成物(A)には、特に、紫外線吸収
剤や光安定剤を配合することが好ましい。紫外線吸収剤
としては合成樹脂用紫外線吸収剤として通常使用されて
いるようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾ
フェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤な
どが好ましい。光安定剤としては同様に合成樹脂用光安
定剤として通常使用されているようなヒンダードアミン
系光安定剤(2,2,4,4−テトラアルキルピペリジ
ン誘導体など)が好ましい。
【0073】このような被覆組成物(A)を硬化させる
活性エネルギ線としては特に紫外線が好ましい。しか
し、紫外線に限定されず、電子線やその他の活性エネル
ギ線を使用できる。紫外線源としてはキセノンランプ、
パルスキセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高
圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、
タングステンランプ等が使用できる。
【0074】被覆組成物(A)を用いて形成される硬化
物の層の厚さは1〜50μmであることが好ましい。こ
の層厚が50μm超では、活性エネルギ線による硬化が
不充分になり基材との密着性が損なわれやすく好ましく
ない。また、1μm未満では、この層の耐摩耗性が不充
分となるおそれがあり、またこの層の上の最外層の耐摩
耗性や耐擦傷性が充分発現できないおそれがある。より
好ましい層厚は2〜30μmである。
【0075】次に最外層の硬化物の層を形成する被覆組
成物(B)は、溶剤可溶性フッ素樹脂(b1)、アクリ
ル系樹脂(b2)、および活性エネルギ線重合性官能基
を1個以上有する化合物(b3)からなる群から選ばれ
る1種類以上の化合物とポリシラザンと溶剤とを含む。
【0076】被覆組成物(B)におけるポリシラザン
(b)としては実質的に有機基を含まないポリシラザン
(ペルヒドロポリシラザン)、アルコキシ基などの加水
分解性基がケイ素原子に結合したポリシラザン、ケイ素
原子にアルキル基などの有機基が結合しているポリシラ
ザンなどが挙げられる。特にペルヒドロポリシラザンは
その焼成温度の低さおよび焼成後の硬化被膜の緻密さの
点で好ましい。なお、ポリシラザンが充分に硬化した硬
化物は窒素原子をほとんど含まないシリカとなる。
【0077】ポリシラザンとしては、鎖状、環状もしく
は架橋構造を有する重合体、または分子内にこれらの複
数の構造を有する混合物からなる。ポリシラザンの分子
量としては数平均分子量で200〜5万であるものが好
ましい。数平均分子量が200未満では焼成しても均一
な硬化被膜が得られにくい。また、数平均分子量が5万
超では溶剤に溶解しがたくなり、また被覆組成物(B)
が粘稠になるおそれがあることより、好ましくない。
【0078】被覆組成物(B)の塗膜を形成するため
に、通常被覆組成物(B)は溶剤に溶解して塗工等に用
いられる。溶剤は被覆組成物(B)の塗膜形成後その塗
膜を硬化させる前に除去される。ポリシラザンを溶解す
る溶剤としては脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香
族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶
媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が
使用できる。
【0079】具体的には、ペンタン、ヘキサン、イソヘ
キサン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オ
クタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロ
ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベ
ンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化
水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロ
モホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロ
エタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハ
ロゲン化炭化水素、エチルエーテル、イソプロピルエー
テル、エチルブチルエーテル、ブチルエーテル、ジオキ
サン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、テト
ラヒドロピラン等のエーテル類などがある。
【0080】これらの溶剤を使用する場合、ポリシラザ
ンの溶解度や溶剤の蒸発速度を調節するために複数の種
類の溶剤を混合してもよい。溶剤の使用量は採用される
塗工方法およびポリシラザンの構造や平均分子量などに
よって異なるが、固形分濃度で0. 5〜80重量%の範
囲で調製することが好ましい。
【0081】被覆組成物(B)における溶剤可溶性フッ
素樹脂(b1)としては、溶媒可溶性のフッ素樹脂が好
ましく、クロロトリフロロエチレンまたはテトラフルオ
ロエチレン(以下両者をHTFEという)とそれと共重
合性の他のモノマーとの共重合体が知られている。特に
HTFEとアルキルビニルエーテル、シクロアルキルビ
ニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、ヒドロキシ
アルキルビニルエーテル、カルボキシアルキルビニルエ
ーテルなどとの共重合体(以下FEVEという)が好ま
しい。たとえば水酸基やカルボキシル基を有するFEV
Eである旭硝子社製商品名「ルミフロン(登録商標)」
はポリシラザンを安定的に溶解でき、かつキシレン、ト
ルエンなどの溶媒に可溶なため好ましい。さらにOH価
および酸価が少ないタイプのFEVE(たとえば、同上
「ルミフロンLF810」)は、ポリシラザンの加水分
解による変質が抑制されるので好ましい。
【0082】また、溶媒可溶なフッ素樹脂としてセント
ラル硝子社製商品名「セフラルコート」が知られてお
り、この樹脂もOH価を有し(さらに酸価を有するもの
もある)、キシレン(同上「A−600X」)トルエン
(同上「A−201TB、A−100TMB」)のほ
か、酢酸ブチル(同上「A−402B、A−201T
B、A−100TMB」)、メチレンイソブチルケトン
(同上「A−100TMB」)などに可溶性であるもの
などが市販されている。
【0083】さらに、塗料用フッ化ビニリデン系樹脂は
キシレンには不溶であるが、テトラヒドロフラン(TH
F)、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルム
アミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、
ジエチルホルムアミド(DEF)、ジエチルアセトアミ
ド(DEA)、ブチルカルビトールアセテート(BC
A)などに可溶であり、かつ樹脂が官能基を有していな
いためポリシラザンが劣化せず好ましい。たとえば、ポ
リフッ化ビニリデン(ATOCHEM NORTH A
MERICA社製商品名「KYNAR500」)、フッ
化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合体(同
上「KYNAR SL」)、フッ化ビニリデンとテトラ
フルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重
合体(同上「KYNAR ADS」)などが市販されて
いる。その他のフッ素樹脂も各種共重合により溶媒可溶
にして使用できる。
【0084】アクリル系樹脂(b2)としては、たとえ
ば以下の化合物が好ましい。(メタ)アクリル酸エステ
ル(アルコール残基としては、メチル基、エチル基、n
−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブ
チル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロ
ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル
基等を例示できる);2−ヒドロキシエチル(メタ)ア
クリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ
ート等のようなヒドロキシ含有モノマー;(メタ)アク
リルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−
メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロ
ールアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アク
リルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のようなア
ミド基含有モノマー;N,N−ジエチルアミノエチル
(メタ)アクリレート等のようなアミノ基含有モノマ
ー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジ
ルエーテル等のようなエポキシ基含有モノマー;スチレ
ンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩(た
とえばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)
等のようなスルホン酸基またはその塩を含有するモノマ
ー;クロトン酸、イタコン酸、アクリル酸、マレイン
酸、フマール酸、およびそれらの塩(たとえばナトリウ
ム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等のようなカル
ボキシル基またはその塩を含有するモノマー;無水マレ
イン酸、無水イタコン酸等の無水物を含有するモノマ
ー;その他ビニルイソシアネート、アリルイソシアネー
ト、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエ
ーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレ
イン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステ
ル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキル
イタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニ
ル、塩化ビニル等の単量体の組合せからつくられたも
の。アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体のような
(メタ)アクリル系単量体の成分が50モル%以上含ま
れているものが好ましく、特にメタクリル酸メチルの成
分を含有しているものが好ましい。
【0085】またフッ素を含むアクリル系樹脂、たとえ
ば、パーフルオロアルキル基の炭素数が1〜20である
2−(パーフルオロアルキル)エチル(メタ)アクリレ
ートの重合体やそれと他の共重合性モノマーとの共重合
性がある。これらは溶剤可溶性フッ素樹脂と併用する場
合その相溶性も向上し、かつ、フッ素樹脂の特性も失な
わせない利点があるため好ましい。
【0086】最後に活性エネルギ線硬化性の重合性官能
基を1個以上有する化合物(b3)としては前記被覆組
成物(A)で挙げた多官能性化合物(a)や単官能性化
合物がある。単官能性化合物としてはたとえば前記した
以下の化合物が好ましい。
【0087】メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ
タ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソ
ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アク
リレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、
ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メ
タ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アク
リレート、グリシジル(メタ)アクリレート等。
【0088】なお、活性エネルギ線硬化性の重合性官能
基を1個以上有する化合物(b3)を添加する場合には
光開始剤を併用するのがより好ましい。用いる光開始剤
としては、公知または周知のものを使用できる。特に入
手容易な市販のものが好ましい。また複数の光開始剤を
使用してもよい。具体例としては被覆組成物(A)で挙
げた化合物を使用できる。
【0089】被覆組成物(B)における溶剤可溶性フッ
素樹脂(b1)、アクリル系樹脂(b2)および活性エ
ネルギ線硬化性の重合性官能基を1個以上有する化合物
(b3)から選ばれる添加化合物の合計量はポリシラザ
ン100重量部に対して0.5〜1000重量部、特に
1〜500重量部が好ましい。ポリシラザンに活性エネ
ルギ線を照射することでポリシラザンの硬化はかなり進
行する。さらに硬化を迅速に完了させるには通常触媒が
使用される。触媒の種類や量により室温での硬化が可能
となる。また、硬化を行う雰囲気としては空気中などの
酸素の存在する雰囲気であることが好ましい。
【0090】触媒としては、たとえば、金、銀、パラジ
ウム、白金、ニッケルなどの金属の微粒子からなる金属
触媒(特開平7−196986)、およびそれらのカル
ボン酸錯体(特開平5−93275)の使用が挙げられ
る。また、触媒をポリシラザン溶液に添加しておくので
はなく、特開平9−31333には、触媒溶液、具体的
にはアミン水溶液等に直接被覆成型物を接触させる、も
しくはその蒸気に一定時間曝す方法も挙げられている。
【0091】また、この被覆組成物(B)には必要に応
じて紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などの安定
剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔
料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤類を
適宜配合して用いてもよい。被覆組成物(B)を用いて
形成される硬化物の層の厚さは0.05〜10μmであ
ることが好ましい。この最外層の層厚が10μm超で
は、耐擦傷性などの表面特性のそれ以上の向上が期待で
きないうえ、層が脆くなり被覆成形品のわずかな変形に
よってもこの層にクラックなどが生じやすくなる。ま
た、0.05μm未満では、この最外層の耐摩耗性や耐
擦傷性が充分発現できないおそれがある。より好ましい
層厚は0.1〜3μmである。
【0092】上記のような2種類の被覆組成物(A)、
(B)を用いて形成される2層の透明な硬化物の層を形
成する方法としては通常の被覆手法を採用できる。たと
えば、基材上にまず被覆組成物(A)を塗工して硬化さ
せ、次にその硬化物の表面に被覆組成物(B)を塗工し
て硬化させることにより目的とする透明被覆成形品が得
られる。
【0093】これら被覆組成物を塗工する手段としては
特に制限されず、公知または周知の方法を採用できる。
たとえば、ディップ法、フローコート法、スプレー法、
バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブ
レードコート法、エアーナイフコート法、スピンコート
法、スリットコート法、マイクログラビアコート法等の
方法を採用できる。塗工後被覆組成物が溶剤を含んでい
る場合は乾燥して溶剤を除き、次いで紫外線等を照射し
て硬化させる。
【0094】被覆組成物(A)の硬化と被覆組成物
(B)の塗工〜硬化の組み合わせ(タイミング)として
は以下の3つ方法が挙げられる。 1)被覆組成物(A)を塗工した後に充分な量の活性エ
ネルギ線を照射して充分に硬化を終了させた後、組成物
(B)をその上に塗工する方法。
【0095】2)被覆組成物(A)を塗工して被覆組成
物(A)の未硬化物の層を形成した後、その未硬化物層
の上に被覆組成物(B)塗工して被覆組成物(B)の未
硬化物の層を形成し、その後に充分な量の活性エネルギ
線を照射して被覆組成物(A)および(B)の未硬化物
の硬化を終了させる方法。
【0096】3)被覆組成物(A)を塗工した後に指触
乾燥状態になる最低限の活性エネルギ線(通常約300
mJ/cm2 までの照射量)を一旦照射して被覆組成物
(A)の部分硬化物の層を形成した後、その部分硬化物
層の上に被覆組成物(B)を塗工して被覆組成物(B)
の未硬化物の層を形成し、その後に充分な量の活性エネ
ルギ線を照射して被覆組成物(A)および(B)の未硬
化物の硬化を終了させる方法。
【0097】2つの硬化物層の層間密着力を上げるため
には、上記2)または3)の方法がより好ましい。ただ
し、2)の方法の場合は、被覆組成物(B)塗工する方
法としてディップ法を用いると被覆組成物(A)の未硬
化物の成分が被覆組成物(B)のディップ液を汚染する
おそれがあるため、このようなディップ法による塗工は
適さないなどの制約がある。
【0098】また、本発明の透明被覆成形品の特徴とし
てその耐摩耗性や耐擦傷性などの表面特性がガラスとほ
ぼ同等のレベルを有することから、従来ガラスが用いら
れていた各種用途として使用できる。この用途のうちに
は車両用窓材としての用途などがある。ただし、このよ
うな用途では曲げ加工した成形品が必要となる場合が多
い。こうした曲げ加工された本発明の透明被覆成形品を
製造する場合、曲げ加工された基材を用いて本発明の透
明被覆成形品となしうる。しかし、曲げ加工された基材
を用いる場合は塗工〜硬化による各層の形成が困難とな
ることが少なくない。一方、本発明者らの従来からの検
討によれば、被覆組成物(A)の硬化物の層が形成され
た基材は熱曲げ加工等により曲げ加工ができる。しか
し、被覆組成物(B)の硬化物の層が形成された場合
は、有機成分が添加されているとはいえ、その硬化物が
硬いことより曲げ加工は困難である。
【0099】本発明者は、被覆組成物(B)の未硬化物
や部分硬化物の層であれば、そのような層を有する基材
(被覆組成物(A)の硬化物の層を有する)を曲げ加工
できることを見いだした。また、前記2)や3)の方法
のように被覆組成物(A)の未硬化物や部分硬化物の層
の上に被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化物の層を
形成した状態で曲げ加工することもできる。曲げ加工し
た後ないし曲げ加工とほぼ同時に被覆組成物(B)の未
硬化物や部分硬化物を硬化させることにより、目的とす
る曲げ加工された被覆成形品が得られる。曲げ加工は通
常加熱状態で加工を行う。したがって、曲げ加工のため
の加熱によって被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化
物が硬化するが、通常は曲げ加工に要する時間に比較し
て被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化物の硬化に要
する時間が長いことより、被覆組成物(B)の硬化によ
って曲げ加工が困難になるおそれは少ない。
【0100】したがって、本発明の曲げ加工された被覆
成形品は、基材上に被覆組成物(A)の未硬化物、部分
硬化物ないし硬化物の層およびその層の表面に被覆組成
物(B)の未硬化物ないし部分硬化物の層を形成し、活
性エネルギ線の照射により被覆組成物(A)を完全に硬
化させ、被覆組成物(B)をある程度硬化させた後、こ
れらの層を有する基材を曲げ加工し、次いで被覆組成物
(B)の部分硬化物を硬化させることにより、製造でき
る。
【0101】具体的には、たとえば、被覆組成物(B)
の部分硬化物の層を形成した後、基材の熱軟化温度に5
分間程度加熱し、続いて曲げ加工を施す。その後室温放
置、もしくは被覆組成物(B)の硬化触媒溶液の蒸気雰
囲気下に曝す等して被覆組成物(B)の硬化を行うこと
により、本発明の曲げ加工された被覆成形品が得られ
る。このような方法により、被覆組成物(B)が充分に
硬化する前に基材が変形し、その後硬いシリカの層が形
成されるためにこのシリカ層にクラック等の不具合が生
じることがない。
【0102】本発明における透明合成樹脂基材の材料と
しては各種透明合成樹脂を使用しうる。たとえば、芳香
族ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹
脂(アクリル樹脂)、ポリスチレン樹脂などの透明合成
樹脂を基材の材料として使用しうる。特に芳香族ポリカ
ーボネート樹脂からなる基材が好ましい。この透明合成
樹脂基材は成形されたものであり、たとえば平板や波板
などのシート状基材、フィルム状基材、各種形状に成形
された基材、少なくとも表面層が各種透明合成樹脂から
なる積層体等がある。特に(曲げ加工されていない)平
板状の基材が好ましい。本発明において、基材としては
特に芳香族ポリカーボネート樹脂からなる平板状のシー
トまたはフィルムが好ましい。この厚さは0.1〜10
0mmであることが窓材などの用途に好ましい。このシ
ートまたはフィルムの両面または片面に前記した少なく
とも2層の透明硬化物層が形成される。
【0103】
【実施例】以下、本発明を合成例(例1)、実施例(例
2〜9)、比較例(例10〜13)に基づき説明する
が、本発明はこれらに限定されない。例2〜14(例9
は除く)についての各種物性の測定および評価は以下に
示す方法で行い、その結果を表1に示した。なお、表1
には通常の建築用ガラスシートを使用した物性の測定お
よび評価の結果も示す。
【0104】[初期曇価、耐磨耗性]JIS−R321
2における耐磨耗試験法により、2つのCS−10F磨
耗輪にそれぞれ500gの重りを組み合わせ500回転
させたときの曇価(ヘーズ)をヘーズメータにて測定し
た。曇価の測定は磨耗サイクル軌道の4カ所で行い、平
均値を算出した。初期曇価は耐磨耗試験前の曇価の値
(%)を、耐磨耗性は(磨耗試験後曇価)−(磨耗試験
前曇価)の値(%)を示す。
【0105】[密着性]サンプルを剃刀の刃で1mm間
隔で縦横それぞれ11本の切れ目を付け、100個の碁
盤目を作る。そして、市販のセロハンテープをよく密着
させた後、90度手前方向に急激にはがした際の、被膜
が剥離せずに残存した碁盤目の数(m)をm/100で
表す。
【0106】[耐候性]サンシャインウエザーメータを
用いてブラックパネル温度63℃で、降雨12分、乾燥
48分のサイクルで3000時間暴露後、外観の評価を
行った。
【0107】[耐曲げ性]厚さ1mm、幅25mm、長
さ150mmの短冊状サンプル(片面のみ被覆)を用意
し、ひび割れが発生した最大曲率を測定した。
【0108】[基材]透明な芳香族ポリカーボネート樹
脂板(150mm×300mm、厚さは1mmと3mm
がある)。
【0109】[例1]エチルセロソルブ分散型コロイド
状シリカ(シリカ含量30重量%、平均粒径11nm)
100重量部に3−メルカプトプロピルトリメトキシシ
ラン5重量部と0. 1N塩酸3. 0重量部を加え、10
0℃にて6時間加熱撹拌した後12時間室温下で熟成す
ることにより、メルカプトシラン修飾コロイド状シリカ
分散液を得た。
【0110】[例2]撹拌機および冷却管を装着した1
00mLの4つ口フラスコに、イソプロパノール15
g、酢酸ブチル15g、エチルセロソルブ7. 5g、
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィ
ンオキシド150mg、2−(3,5−ジ−ペンチル−
2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール1000
mg、およびビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,
6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート20
0mgを加え溶解させ、続いて水酸基を有するジペンタ
エリスリトールポリアクリレートと部分ヌレート化ヘキ
サメチレンジイソシアネートの反応生成物であるウレタ
ンアクリレート(1分子あたり平均15個のアクリロイ
ル基を含有)10. 0gを加え常温で1時間撹拌して被
覆用組成物(以下、塗工液1という)を得た。
【0111】厚さ1mmの基材にバーコータを用いてこ
の塗工液1を塗工(ウエット厚み30μm)して、80
℃の熱風循環オーブン中で5分間保持した。これを空気
雰囲気中、高圧水銀灯を用いて3000mJ/cm2
(波長300〜390nm領域の紫外線積算エネルギ
量、以下同じ)の紫外線を照射し、膜厚7μmの透明硬
化物層を形成した。
【0112】次に、この上にさらにペルヒドロポリシラ
ザンのキシレン溶液(固形分20重量%、数平均分子量
n ≒1000、東燃社製商品名「V110」)100
gに溶剤可溶性フッ素樹脂(固形分45重量%、水酸基
価=9mgKOH/g、旭硝子社製商品名「ルミフロン
LF810」)22. 2gを加え窒素気流下、室温で1
時間撹拌して得た被覆組成物(以下、塗工液2という)
をもう一度バーコータを用いて塗工(ウエット厚み3μ
m)して、80℃の熱風循環オーブン中で10分間保持
し、溶媒を除去した後23℃、相対湿度50%の環境で
24時間保持して膜厚7.7μmの透明硬化物層を形成
した。こうして基材上に総膜厚7. 7μmの透明硬化物
層を形成した。このサンプルを用いて前記測定を行っ
た。
【0113】[例3]例2におけるサンプル調製方法を
以下のように変更した。塗工液1を塗工後、80℃の熱
風循環オーブン中で5分間保持し、これを空気雰囲気
中、高圧水銀灯を用いて150mJ/cm2 の紫外線を
照射し、膜厚7μmの部分硬化物層を形成した。そし
て、この上に塗工液2をもう一度バーコータを用いて塗
工(ウエット厚み6μm)して、80℃の熱風循環オー
ブン中で10分間保持した後、これを空気雰囲気中、高
圧水銀灯を用いて3000mJ/cm2 の紫外線を照射
した。さらに相対湿度50%の環境で24時間保持して
膜厚7.7μmの透明硬化物層を形成した。このサンプ
ルを用いて前記測定を行った。
【0114】[例4]例3におけるサンプル調製方法を
以下のように変更した。最後に紫外線を照射した後にさ
らに、25℃に保たれた3%トリエチルアミン水溶液の
浴の上に3分保持することで硬化さた。このサンプルを
用いて前記測定を行った。
【0115】[例5]例3におけるサンプル調製方法を
以下のように変更した。塗工液1を塗工後、80℃の熱
風循環オーブン中で5分間保持し、続いて、この上に塗
工液2をもう一度バーコータを用いて塗工(ウエット厚
み3μm)して、80℃の熱風循環オーブン中で10分
間保持した後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用い
て3000mJ/cm2 の紫外線を照射し、相対湿度5
0%の環境で24時間保持して膜厚7.7μmの透明硬
化物層を形成した。このサンプルを用いて前記測定を行
った。
【0116】[例6]撹拌機および冷却管を装着した1
00mLの4つ口フラスコに、イソプロパノール15
g、酢酸ブチル15g、2,4,6−トリメチルベンゾ
イルジフェニルホスフィンオキシド150mg、2−
(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)
ベンゾトリアゾール1000mg、およびビス(1−オ
クチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピ
ペリジニル)セバケート200mgを加えて溶解させ、
続いてトリス(2−アクリロイルオシエチル)イソシア
ヌレート10. 0gを加え常温で1時間撹拌した。続い
て、例1で合成したメルカプトシラン修飾コロイド状シ
リカ分散液を30. 3g加えさらに室温で15分撹拌し
て被覆用組成物(以下、塗工液3という)を得た。
【0117】次に、ペルヒドロポリシラザンのキシレン
溶液(固形分20重量%、Mn ≒1000、東燃社製商
品名「V110」)100gに対してトリシクロデカン
ジメタノールジアクリレート4. 0gと2−メチル−1
−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプ
ロパン−1−オン120mgを加え、窒素雰囲気下常温
で1時間撹拌して被覆組成物(以下、塗工液4という)
を得た。
【0118】次に、厚さ1mmの基材にバーコータを用
いてこの塗工液3を塗工(ウエット厚み30μm)し
て、80℃の熱風循環オーブン中で5分間保持した。こ
れを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて150mJ/c
2 の紫外線を照射し、膜厚7μmの部分硬化物層を形
成した。そして、この上に塗工液4をもう一度バーコー
タを用いて塗工(ウエット厚み3μm)して、80℃の
熱風循環オーブン中で10分間保持して溶媒を除去した
後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて3000
mJ/cm2 の紫外線を照射し、相対湿度50%の環境
で24時間保持して膜厚7.7μmの透明硬化物層を形
成した。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0119】[例7]例3におけるサンプル調製方法を
以下のように変更した。塗工液2の代わりにペルヒドロ
ポリシラザンのキシレン溶液(固形分20重量%、Mn
≒1000、東燃社製商品名「V110」)100gに
5. 0gのポリメチルメタクリレート樹脂のキシレン溶
液(固形分40重量%、三菱レーヨン社製商品名「ダイ
ヤナールLR574」)を加え、窒素雰囲気下常温で1
時間撹拌して得られた被覆組成物(以下、塗工液5とい
う)を用いた。このサンプルを用いて前記測定を行っ
た。
【0120】[例8]例3におけるサンプル調製方法を
以下のように変更した。塗工液2の代わりに塗工液2と
塗工液5の1対1の溶液を用いた。このサンプルを用い
て前記測定を行った。
【0121】[例9]例6におけるサンプル調製方法を
以下のように変更した。塗工液3を厚さ3mmの基材に
バーコータを用いて塗工(ウエット厚み30μm)し
て、80℃の熱風循環オーブン中で5分間保持した。こ
れを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて150mJ/c
2 の紫外線を照射し、膜厚7μmの部分硬化物層を形
成した。そして、この上に塗工液4をもう一度バーコー
タを用いて塗工(ウエット厚み3μm)して、80℃の
熱風循環オーブン中で5分間保持した後、これを空気雰
囲気中、高圧水銀灯を用いて3000mJ/cm2 の紫
外線を照射し、引き続いて170℃の熱風循環オーブン
中で5分間保持し、取り出し直後に透明硬化物層塗工面
が凸側になるように、64mmRの曲率を持つ型に押し
つけ、曲げ加工を施した。そして相対湿度50%の環境
で24時間保持して膜厚7.7μmの透明硬化物層を形
成した。このサンプルの外観を観察した結果、クラック
やしわがない良好な硬化物層を有していた。
【0122】一方、例6で最終的に得られた充分硬化し
た2層の硬化物層を有するサンプルを170℃の熱風循
環オーブン中で5分間保持し、取り出し直後に透明硬化
物層塗工面が凸側になるように、64mmRの曲率を持
つ型に押しつけ、曲げ加工を施した。得られたサンプル
の外観を観察した結果、硬化物層にクラックとしわが発
生していた。
【0123】[例10]例3におけるサンプル調製方法
を以下のように変更した。塗工液2の代わりにペルヒド
ロポリシラザンのキシレン溶液(固形部20重量%、M
n ≒1000、東燃社製商品名「V110」)(以下、
塗工液7という)を用いた。このサンプルを用いて前記
測定を行った。
【0124】[例11]塗工液2を厚さ1mmの基材に
バーコータを用いて塗工(ウエット厚み5μm)して、
80℃の熱風循環オーブン中で10分間保持し溶媒を除
去した。これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて30
00mJ/cm2 の紫外線を照射することで膜厚1.1
μmの透明硬化物層を硬化させた。このサンプルを用い
て前記測定を行った。
【0125】[例12]塗工液4を厚さ1mmの基材に
バーコータを用いて塗工(ウエット厚み5μm)して、
80℃の熱風循環オーブン中で10分間保持し溶媒を除
去した。これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて30
00mJ/cm2 の紫外線を照射することで膜厚1.1
μmの透明硬化物層を硬化させた。このサンプルを用い
て前記測定を行った。
【0126】[例13]塗工液5を厚さ1mmの基材に
バーコータを用いて塗工(ウエット厚み5μm)して、
80℃の熱風循環オーブン中で10分間保持し溶媒を除
去した。これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて30
00mJ/cm2 の紫外線を照射することで膜厚1.1
μmの透明硬化物層を硬化させた。このサンプルを用い
て前記測定を行った。
【0127】
【表1】
【0128】
【発明の効果】本発明の透明被覆成形品は、ほぼ無機ガ
ラスに匹敵する高い耐摩耗性の表面を有する表面特性に
優れた透明被覆成形品である。さらに、強制的にこの被
覆成型品を小さな曲率まで曲げてもクラックが生じるこ
とがない。また、本発明では、このような表面特性に優
れた透明被覆成形品を高い生産性で製造できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C09D 4/02 C09D 4/02 127/12 127/12 133/06 133/06 155/00 155/00 183/16 183/16 (72)発明者 山本 博嗣 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明合成樹脂基材および透明合成樹脂基材
    表面の少なくとも一部に設けられた2層以上の透明硬化
    物層を含む透明被覆成形品において、2層以上の透明硬
    化物層のうち最外層に接する内層が下記被覆組成物
    (A)の硬化物の層であり、最外層が下記被覆組成物
    (B)の硬化物の層であることを特徴とする透明被覆成
    形品。 被覆組成物(A):活性エネルギ線硬化性の重合性官能
    基を2個以上有する多官能性化合物(a)を含む活性エ
    ネルギ線硬化性被覆組成物。 被覆組成物(B):溶剤可溶性フッ素樹脂(b1)、ア
    クリル系樹脂(b2)、および活性エネルギ線硬化性の
    重合性官能基を1個以上有する化合物(b3)からなる
    群から選ばれる1種以上の物質とポリシラザン(b)と
    を含む被覆組成物。
  2. 【請求項2】被覆組成物(A)が、さらに平均粒径20
    0nm以下のコロイド状シリカを含む、請求項1記載の
    透明被覆成形品。
  3. 【請求項3】ポリシラザン(b)がペルヒドロポリシラ
    ザンである請求項1また2記載の透明被覆成形品。
  4. 【請求項4】被覆組成物(A)の硬化物の層を形成した
    後、被覆組成物(A)の硬化物の層の表面に被覆組成物
    (B)の未硬化物の層を形成して被覆組成物(B)の未
    硬化物の硬化を行うことを特徴とする請求項1、2また
    は3記載の透明被覆成形品の製造方法。
  5. 【請求項5】被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬
    化物の層を形成した後、被覆組成物(A)の未硬化物ま
    たは部分硬化物の層の表面に被覆組成物(B)の未硬化
    物層を形成し、その後被覆組成物(A)の未硬化物また
    は部分硬化物と被覆組成物(B)の未硬化物との硬化を
    行うことを特徴とする請求項1、2または3記載の透明
    被覆成形品の製造方法。
  6. 【請求項6】被覆組成物(A)の未硬化物、部分硬化物
    または硬化物の層およびその層の表面に被覆組成物
    (B)の未硬化物または部分硬化物の層を形成した後、
    被覆組成物(B)の未硬化物または部分硬化物の層越し
    に活性エネルギ線を照射し、被覆組成物(A)を硬化さ
    せ、これらの層を有する基材を曲げ加工し、次いで被覆
    組成物(B)の未硬化物または部分硬化物を硬化させる
    とともに被覆組成物(A)の未硬化物、部分硬化物が存
    在する場合はそれを硬化させることを特徴とする曲げ加
    工された請求項1、2または3記載の透明被覆成形品の
    製造方法。
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