JP3921785B2 - 透明被覆成形品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明合成樹脂基材上に、内層として活性エネルギ線(特に紫外線)硬化性被覆組成物に由来する硬化物の層と、この内層に接する最外層としてシリカを形成しうる被覆組成物に由来するシリカの層が形成された、耐磨耗性、透明性、耐候性などに優れた透明硬化物層を有する透明被覆成形品、およびこの透明被覆成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガラスに代わる透明材料として透明合成樹脂材料が用いられている。とりわけ芳香族ポリカーボネート樹脂は耐破砕性、透明性、軽量性、易加工性などに優れ、その特徴を生かして、外壁、アーケード等の大面積の透明部材として各方面で使用されている。また、自動車等の車両用にも一部ガラス(無機ガラスをいう、以下同様)の代わりにこうした透明合成樹脂材料が使われる例がみられる。しかし、ガラスの代わりに使用するには表面の硬度が充分ではなく、傷つきやすく磨耗しやすいことから透明性が損なわれやすい欠点がある。
【0003】
従来、芳香族ポリカーボネート樹脂の耐擦傷性や耐磨耗性の改良には、最も一般的な方法として、分子中にアクリロイル基等の重合性官能基を2個以上有する重合硬化性化合物を基材に塗布し、熱または紫外線等の活性エネルギ線により硬化させ、耐擦傷性に優れた透明被覆層を有する成形品を得る方法がある。この方法は塗布液が比較的安定で、特に紫外線硬化ができるため生産性に優れ、成形品に曲げ加工を施した場合でも硬化被膜にクラックが発生せず、表面の耐擦傷性や耐磨耗性を改善できる。
【0004】
一方、基材により高い表面硬度を付与する方法として、金属アルコキシドを基材に塗布し、熱により硬化させる方法がある。金属アルコキシドとしてはケイ素系の化合物が広く用いられ、耐磨耗性に非常に優れた硬化被膜を形成できる。しかし、金属アルコキシドの硬化に高温を必要とするため生産性が低く、また硬化被膜と基材との密着性に乏しいため、硬化被膜の剥離やクラックを生じやすい等の欠点があった。
【0005】
これらの欠点を改良する方法として、アクリロイル基を有する化合物とコロイド状シリカの混合物を基材に塗布して紫外線等の活性エネルギ線により硬化させ、耐擦傷性に優れた透明被覆層を形成する方法(特開昭61−181809)がある。コロイド状シリカを重合硬化性化合物と併用することにより、かなり高い表面硬度と生産性を両立させうる。しかしその表面耐擦傷性の発現レベルは、先の金属アルコキシド化合物による方法よりは劣っていた。
【0006】
また、前記ケイ素系金属アルコキシド化合物の代わりにポリシラザンを用いる、すなわち、ポリシラザンを基材に塗布し熱等により硬化させる方法も知られている(特開平8−143689)。ポリシラザンは酸素の存在下で縮合反応や酸化反応が起こり、窒素原子を含むこともあるシリカ(二酸化ケイ素)に変化すると考えられており、最終的には実質的に窒素原子を含まないシリカの被膜が形成される。ポリシラザンに由来するシリカの被膜は高い表面硬度を有する。しかし、この被膜は金属アルコキシド化合物の場合と同様に被膜と基材との密着性に乏しいため、被膜の剥離やクラックを生じやすい等の欠点がある。
【0007】
さらに、特開平9−39161には合成樹脂フィルム上に保護被膜を形成し、その表面にポリシラザン溶液を塗工してシリカの表面層を形成する方法が記載されている。保護被膜は合成樹脂フィルムがポリシラザン溶液の溶媒に侵されることを防ぐために設けられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述の欠点を解消しようとするものである。すなわち、最外層は無機物の被膜であるにもかかわらず、内層に対して、および結果的に基材に対して、充分密着し、ガラスと同等ないしそれに近い表面耐擦傷性および耐磨耗性を有する透明被覆成形品およびその製造方法の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の解決を目的として検討した結果、特定の層構成を有する透明被覆成形品およびその製造方法を見いだした。本発明はこの成形品およびその製造方法にかかわる下記発明である。
【0010】
透明合成樹脂基材および透明合成樹脂基材表面の少なくとも一部に設けられた2層以上の透明硬化物層を含む透明被覆成形品において、2層以上の透明硬化物層のうち最外層に接する内層が下記被覆組成物(A)の硬化物の層であり、最外層が下記被覆組成物(B)の硬化物の層であることを特徴とする透明被覆成形品。
被覆組成物(A):カチオン重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)と光によりカチオンを発生する重合開始剤とを含む活性エネルギ線硬化性被覆組成物。
被覆組成物(B1):4官能性の加水分解性シラン化合物、その部分加水分解縮合物、またはポリシラザンを含む硬化性被覆組成物。
前記被覆組成物(A)が、さらにラジカル重合性官能基を2個以上有する化合物(c)と光によりラジカルを発生する重合開始剤とを含む透明被覆成形品。
前記透明被覆成形品の製造方法において、透明合成樹脂基材表面に被覆組成物(A)の硬化物の層を形成した後、その硬化物の層の表面に被覆組成物(B)の未硬化物を形成してその硬化を行う透明被覆成形品の製造方法。
透明合成樹脂基材および透明合成樹脂基材表面の少なくとも一部に設けられた2層以上の透明硬化物層を含む透明被覆成形品であって、2層以上の透明硬化物層のうち最外層に接する内層が被覆組成物(A)の硬化物の層であり、最外層が下記被覆組成物(B)の硬化物の層である透明被覆成形品の製造方法において、透明合成樹脂基材表面に被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬化物の層を形成した後、その未硬化物または部分硬化物の層の表面に被覆組成物(B)の未硬化物層を形成し、その後被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬化物と被覆組成物(B)の未硬化物との硬化を行う透明被覆成形品の製造方法。
被覆組成物(B):シリカを形成しうる硬化性被覆組成物。
透明合成樹脂基材および透明合成樹脂基材表面の少なくとも一部に設けられた2層以上の透明硬化物層を含む透明被覆成形品であって、2層以上の透明硬化物層のうち最外層に接する内層が被覆組成物(A)の硬化物の層であり、最外層が被覆組成物(B)の硬化物の層である透明被覆成形品の製造方法において、透明合成樹脂基材表面に被覆組成物(A)の硬化物の層およびその層の表面に被覆組成物(B)の未硬化物または部分硬化物の層を形成した後、これらの層を有する基材を曲げ加工し、次いで被覆組成物(B)の未硬化物または部分硬化物を硬化させる、曲げ加工された透明被覆成形品の製造方法。
透明合成樹脂基材および透明合成樹脂基材表面の少なくとも一部に設けられた2層以上の透明硬化物層を含む透明被覆成形品であって、2層以上の透明硬化物層のうち最外層に接する内層が被覆組成物(A)の硬化物の層であり、最外層が被覆組成物(B)の硬化物の層である透明被覆成形品の製造方法において、透明合成樹脂基材表面に被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬化物の層およびその層の表面に被覆組成物(B)の未硬化物または部分硬化物の層を形成した後、これらの層を有する基材を曲げ加工し、次いで被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬化物および被覆組成物(B)の未硬化物または部分硬化物を硬化させる、曲げ加工された透明被覆成形品の製造方法。
【0011】
本発明における透明硬化物層は多層構成であり、シリカの被膜である最外層が柔らかい合成樹脂基材に直接積層されているのではなく、硬さの調節された透明硬化物内層上に積層されている。このため透明被覆成形品に対して傷を付けようと加えられた外力による最外層の耐擦傷性が向上すると考えられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明における透明硬化物層は、最外層に直接接する透明硬化物からなる内層と透明硬化物からなる最外層との2層以上の構成からなる。透明合成樹脂基材(以下、単に基材という)と透明硬化物層との間には合成樹脂などからなる第3の層が存在していてもよい。例えば、熱可塑性アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂の層や接着剤層が存在していてもよい。通常は基材上の層は上記内層と最外層の2層からなる。なお、内層は2層以上の種類の異なる透明硬化物からなっていてもよい。
【0013】
被覆組成物(A)はカチオン重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)(以下、「カチオン重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)」を「化合物(a)」ともいう)と光によりカチオンを発生する化合物(以下、光カチオン重合開始剤という)とを含む。
【0014】
カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタン基、または電子供与性基が置換されているビニル基などの光カチオン重合性を有する官能基が好ましく、特にエポキシ基またはビニルオキシ基が好ましい。
【0015】
すなわち、化合物(a)としては、エポキシ基およびビニルオキシ基から選ばれる1種以上のカチオン重合性官能基を2個以上有する化合物が好ましく、特にエポキシ基を2個以上有する化合物が好ましい。
【0016】
エポキシ基を2個以上有する化合物は、エポキシ基やエポキシ基含有有機基(例えば、グリシジル基、エポキシシクロヘキシル基(シクロヘキセンオキシドから水素原子1個を除いてできる基)、エポキシトリシクロデシル基(トリシクロデセンオキシドから水素原子1個を除いてできる基)、エポキシシクロペンチル基(シクロペンテンオキシドから水素原子1個を除いてできる基)など、を2個以上有する化合物をいう。特に、グリシジル基(グリシジルオキシ基、グリシジルオキシカルボニル基、グリシジルアミノ基などを含む)を2個以上含む化合物が好ましい。エポキシ基を2個以上有する化合物は、いわゆるエポキシ樹脂ないしエポキシ樹脂の主剤と呼ばれているポリエポキシドが好ましい。以下、エポキシ基を2個以上有する化合物をポリエポキシドという。
【0017】
ポリエポキシドとしては、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエステル化合物、ポリグリシジルアミン化合物などのポリグリシジル系化合物およびこれらポリグリシジル系化合物のオリゴマーが好ましい。その他、上記エポキシシクロヘキシル基などの脂環型エポキシ基を2個以上有するポリエポキシド(いわゆる脂環型エポキシ樹脂)が好ましい。特に好ましいのは多価フェノール類のポリグリシジルエーテル化合物である。
【0018】
ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(すなわち、2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン)、およびこれらのオリゴマーなどがある。
【0019】
ポリグリシジルエステル化合物としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどがある。
また、グリシジルオキシ基とグリシジルオキシカルボニル基を有するポリエポキシドとしてはp−グリシジルオキシ安息香酸グリシジルなどがある。
【0020】
ポリグリシジルアミン化合物としては、N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、N,N−ジグリシジル−p−アミノフェノールグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N’−ジグリシジル−5,5−ジアルキルヒダントインなどがある。
【0021】
脂環型エポキシ基を2個以上有するポリエポキシドとしては、例えば、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレートなどがある。
脂環型エポキシ基と通常のエポキシ基とを有するポリエポキシドとしては、例えば、ビニルヘキセンジオキシドなどがある。
【0022】
上記のポリエポキシドとしては市販のエポキシ樹脂(ないしその主剤)と呼ばれているものを使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と呼ばれているビスフェノールAジグリシジルエーテルやそのオリゴマー、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂と呼ばれている水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルやそのオリゴマーなどがある。後述実施例では、ポリエポキシドとして市販のこれらエポキシ樹脂を使用した。
【0023】
ビニルオキシ基を2個以上有する化合物は、多価アルコールへのアセチレンの付加によって製造できる。多価アルコールとしては、2〜20個の水酸基を有する多価アルコールが好ましく、特に2〜15個の水酸基を有する多価アルコールが好ましい。多価アルコールは脂肪族多価アルコールでもよく、脂環族多価アルコールや芳香核を有する多価アルコールでもよい。
【0024】
芳香核を有する多価アルコールとしては、例えば多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物や多価フェノール類−ポリグリシジルエーテルなどの芳香核を有するポリエポキシドの開環物などがある。
【0025】
多価アルコールの具体例としては例えば以下の多価アルコールがある。
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、3,9−ビス(ヒドロキシメチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの開環物、ビニルシクロヘキセンジオキシドの開環物。
【0026】
化合物(a)は、1分子中に2種以上のカチオン重合性官能基を合計で2個以上有する化合物であってもよく、同じカチオン重合性官能基を2個以上有する化合物であってもよい。1分子中のカチオン重合性官能基の数の上限は特に限定されないが、通常は2〜30個が適当であり、特に2〜10個が好ましい。
【0027】
被覆組成物(A)において、化合物(a)として2種以上の多官能性化合物が含まれていてもよい。化合物(a)とともに、カチオン重合性官能基を1個有する単官能性化合物(以下、化合物(a’)という)が含まれていてもよい。
被覆組成物(A)が化合物(a’)を含む場合、化合物(a)と化合物(a’)との合計に対する化合物(a’)の割合は、0〜80重量%が好ましく、0〜50重量%が特に好ましい。前記単官能性化合物(a’)の割合が多すぎると硬化塗膜の硬さが低下し耐磨耗性が不充分となるおそれがある。
【0028】
化合物(a)としては、カチオン重合性官能基以外に種々の官能基や結合を有する化合物であってもよい。例えば、水酸基、カルボキシル基、エーテル結合、エステル結合などを有していてもよい。特にグリシジルオキシ基やビニルオキシ基を有する化合物などのエーテル結合を有する化合物は重合性が高く好ましい。
【0029】
被覆組成物(A)に使用される光カチオン重合開始剤としては、公知または周知のものを使用できる。特に入手容易な市販のものが好ましい。透明硬化物層において複数の光カチオン重合開始剤を使用してもよい。
【0030】
光カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム塩系、芳香族スルホニウム塩系、芳香族ジアゾニウム塩系、スルホン酸エステル系、鉄−アレーン錯体系、シラノール−アルミニウム錯体系などの光カチオン重合開始剤などがある。また、これら以外の光カチオン重合開始剤も使用できる。また、光カチオン重合開始剤は光増感剤と組み合わせて使用できる。具体的な光カチオン重合開始剤としては、例えば以下(イ)〜(ヘ)に挙げる化合物が例示できる。
【0031】
【化1】
【0032】
【化2】
【0033】
被覆組成物(A)における光カチオン重合開始剤の量は硬化性成分(化合物(a)と化合物(a’)の合計)100重量部に対して0. 01〜20重量部、特に0. 1〜10重量部が好ましい。
【0034】
被覆組成物(A)は、ラジカル重合性官能基を2個以上有する化合物(c)(以下、「ラジカル重合性官能基を2個以上有する化合物(c)」を単に「化合物(c)」ともいう)を含みうる。化合物(c)は光によりラジカルを発生する化合物(以下、光ラジカル重合開始剤という)の存在下に活性エネルギ線の照射によって硬化しうる。したがって、被覆組成物(A)にさらに化合物(c)と光ラジカル重合開始剤を配合すると、活性エネルギ線の照射によってカチオン重合光ラジカル重合をともに進行させて硬化させることができる。
【0035】
被覆組成物(A)に化合物(c)を配合する場合、その量は特には限定されないが化合物(a)と化合物(a’)の合計100重量部に対し化合物(c)300重量部以下、特に1〜150重量部が好ましい。
【0036】
本明細書では、アクリロイル基およびメタクリロイル基を総称して(メタ)アクリロイル基という。(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート等の表現も同様とする。なお、上記のようにこれらの基や化合物のうちでより好ましいものはアクリロイル基を有するもの、例えばアクリロイルオキシ基、アクリル酸、アクリレート等である。
【0037】
被覆組成物(A)に配合しうる化合物(c)は、1種の化合物であってもよく、また複数種の化合物を用いてもよい。複数の場合、同一範疇の異なる化合物であってもよく、範疇の異なる化合物であってもよい。例えば、それぞれが下記アクリルウレタンである異なる化合物の組み合わせであってもよく、一方がアクリルウレタン、他方がウレタン結合を有しないアクリル酸エステル化合物である組み合わせであってもよい。
【0038】
化合物(c)におけるラジカル重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(前記カチオン重合性基以外のもの)、アリル基などのα,β−不飽和基やそれを有する基が好ましく、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。すなわち、化合物(c)は、アクリロイル基およびメタクリロイル基から選ばれる1種以上のラジカル重合性官能基を2個以上有する化合物が好ましい。とりわけ紫外線によってより重合しやすいアクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0039】
なお、化合物(c)は1分子中に2種以上のラジカル重合性官能基を合計2個以上有する化合物であってもよく、また同じラジカル重合性官能基を合計2個以上有する化合物であってもよい。化合物(c)1分子中におけるラジカル重合性官能基の数は2個以上であり、その上限は特に限定されない。通常は2〜50個が適当であり、特に3〜30個が好ましい。
【0040】
化合物(c)として好ましい化合物は(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物である。そのうちでも(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有するエステル系化合物、すなわち多価アルコールなどの2個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのポリエステル、が好ましい。
【0041】
被覆組成物(A)において、化合物(c)として2種以上の多官能性化合物が含まれていてもよい。また、多官能性化合物とともに、活性エネルギ線によって重合しうるラジカル重合性官能基を1個有する単官能性化合物(以下、化合物(c’)という)が含まれていてもよい。この化合物(c’)としては(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、特にアクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0042】
被覆組成物(A)においてこの化合物(c’)を併用する場合、化合物(c)とこの化合物(c’)との合計に対するこの化合物(c’)の割合は、特に限定されないが0〜60重量%が適当である。化合物(c’)の割合が多すぎると硬化被膜の硬さが低下し耐摩耗性が不充分となるおそれがある。化合物(c)とこの化合物(c’)との合計に対する化合物(c’)との合計に対する化合物(c’)のより好ましい割合は0〜30重量%である。
【0043】
化合物(c)は、光ラジカル重合性官能基以外に種々の官能基や結合を有する化合物であってもよい。例えば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、ウレタン結合、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、アミド結合、ジオルガノシロキサン結合などを有していてもよい。特に、ウレタン結合を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(いわゆるアクリルウレタン)とウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。以下これら2つの化合物(c)について説明する。
【0044】
ウレタン結合を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(以下アクリルウレタンという)は、例えば以下のものがある。
(1)(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有する化合物(X1)と2個以上のイソシアネート基を有する化合物(以下ポリイソシアネートという)との反応生成物。
(2)化合物(X1)と2個以上の水酸基とを有する化合物(X2)とポリイソシアネートとの反応生成物。
(3)(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基とを有する化合物(X3)と化合物(X2)との反応生成物。
【0045】
これらの反応生成物においては、イソシアネート基が存在しないことが好ましいが、水酸基は存在してもよい。したがって、これらの反応生成物の製造においては、全反応原料の水酸基の合計モル数はイソシアネート基の合計モル数と等しいかそれより多いことが好ましい。
【0046】
(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有する化合物(X1)としては、(メタ)アクリロイル基と水酸基を各1個ずつ有する化合物であってもよく、(メタ)アクリロイル基2個以上と水酸基1個を有する化合物、(メタ)アクリロイル基1個と水酸基2個以上を有する化合物、(メタ)アクリロイル基と水酸基を各2個以上有する化合物であってもよい。
【0047】
具体例として、上記順に、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなどがある。これらは2個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのモノエステルまたは1個以上の水酸基を残したポリエステルである。
【0048】
さらに化合物(X1)としては、エポキシ基を1個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸との開環反応生成物であってもよい。エポキシ基と(メタ)アクリル酸との反応によりエポキシ基が開環してエステル結合が生じるとともに水酸基が生じ、(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有する化合物となる。またエポキシ基を1個以上有する化合物のエポキシ基を開環させて水酸基含有化合物としそれを(メタ)アクリル酸エステルに変換することもできる。
【0049】
エポキシ基を1個以上有する化合物としては、前記ポリエポキシドが好ましい。さらに、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートと水酸基やカルボキシル基を有する化合物との反応生成物も化合物(X1)として使用できる。エポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレートがある。
【0050】
ポリイソシアネートとしては、通常の単量体状のポリイソシアネートでもよく、ポリイソシアネートの多量体や変性体またはイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーなどのプレポリマー状の化合物でもよい。
【0051】
多量体としては3量体(イソシアヌレート変性体)、2量体、カルボジイミド変性体などがあり、変性体としてはトリメチロールプロパン等の多価アルコールで変性して得られるウレタン変性体、ビュレット変性体、アロハネート変性体、ウレア変性体などがある。プレポリマー状のものの例としては、後述するポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールなどのポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーなどがある。これらポリイソシアネートは2種以上併用できる。
【0052】
具体的な単量体状のポリイソシアネートとしては、例えば、以下のポリイソシアネートがある([ ]内は略称)。
2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルイソシアネート)[MDI]、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート[XDI]、水添XDI、水添MDI。
【0053】
ポリイソシアネートは特に無黄変性ポリイソシアネート(芳香核に直接結合したイソシアネート基を有しないポリイソシアネート)が好ましい。具体的にはヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートがある。上記のようにこれらポリイソシアネートの多量体や変性体等も好ましい。
【0054】
2個以上の水酸基を有する化合物(X2)としては、多価アルコールや多価アルコールに比較して高分子量のポリオールなどがある。
多価アルコールは、2〜20個の水酸基を有する多価アルコールが好ましく、特に2〜15個の水酸基を有する多価アルコールが好ましい。多価アルコールは脂肪族の多価アルコールでもよく、脂環族多価アルコールや芳香核を有する多価アルコールでもよい。
【0055】
芳香核を有する多価アルコールとしては例えば多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物や多価フェノールポリグリシジルエーテルなどの芳香核を有するポリエポキシドの開環物などがある。
高分子量のポリオールとしてはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどがある。また、ポリオールとして水酸基含有ビニルポリマーをも使用できる。これら多価アルコールやポリオールは2種以上を併用できる。
【0056】
多価アルコールの具体例としては例えば以下の多価アルコールがある。
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの開環物、ビニルシクロヘキセンジオキシドの開環物。
【0057】
ポリオールの具体例としては例えば以下のポリオールがある。
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA−アルキレンオキシド付加物、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール。ポリε−カプロラクトンポリオール等の環状エステルを開環重合して得られるポリエステルポリオール。アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、グルタル酸等の多塩基酸と上記多価アルコールとの反応で得られるポリエステルポリオール。1,6−ヘキサンジオールとホスゲンの反応で得られるポリカーボネートジオール。
【0058】
水酸基含有ビニルポリマーとしては例えばアリルアルコール、ビニルアルコール、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単量体とオレフィンなどの水酸基不含単量体との共重合体がある。
(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物(X3)としては、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルイソシアネートなどがある。
【0059】
次に、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物について説明する。
化合物(c)として好ましい、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物は、前記化合物(X2)と同様の2個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのポリエステルが好ましい。2個以上の水酸基を有する化合物としては前記多価アルコールやポリオールが好ましい。さらに、ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸との反応生成物である(メタ)アクリル酸エステル化合物も好ましい。
【0060】
ウレタン結合を含まない多官能性化合物の具体例としては例えば以下のような化合物がある。
以下の脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレート。
1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート。
【0061】
以下の芳香核またはトリアジン環を有する多価アルコールや多価フェノールの(メタ)アクリレート。
トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェノールA、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェノールS、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェノールF、ビスフェノールAジメタクリレート。
【0062】
以下の水酸基含有化合物−アルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、水酸基含有化合物−カプロラクトン付加物の(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンポリオールの(メタ)アクリレート。ただし、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドを表す。
【0063】
トリメチロールプロパン−EO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−PO付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール−カプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート。
【0064】
化合物(c)としては、被覆組成物(A)の硬化物が充分な耐摩耗性を発揮し得るために、少なくともその一部(好ましくは30重量%以上)が3官能以上の多官能性化合物からなることが好ましい。より好ましくはその50重量%以上が3官能以上の多官能性化合物からなる。具体的な好ましい化合物(c)は下記のアクリルウレタンとウレタン結合を有しない多官能性化合物である。
【0065】
アクリルウレタンの場合、ペンタエリスリトールやその多量体であるポリペンタエリスリトールとポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)の反応生成物であるアクリルウレタン、またはペンタエリスリトールやポリペンタエリスリトールの水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの反応生成物であるアクリルウレタンであって3官能以上(好ましくは4〜20官能)の化合物が好ましい。
【0066】
ウレタン結合を有しない多官能性化合物としては、ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリレートとイソシアヌレート系ポリ(メタ)アクリレートが好ましい。ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリレートとは、ペンタエリスリトールやポリペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸とのポリエステル(好ましくは4〜20官能のもの)をいう。イソシアヌレート系ポリ(メタ)アクリレートとは、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートまたはその1モルに1〜6モルのカプロラクトンやアルキレンオキシドを付加して得られる付加物と(メタ)アクリル酸とのポリエステル(2〜3官能のもの)をいう。これら好ましい多官能性化合物と他の2官能以上の多官能性化合物(特に多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート)とを併用することも好ましい。これら好ましい多官能性化合物は全化合物(c)に対して30重量%以上、特に50重量%以上が好ましい。
【0067】
化合物(c)とともに使用できる化合物(c’)としては、例えば分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。そのような単官能性化合物は、水酸基、エポキシ基などの官能基を有していてもよい。好ましい単官能性化合物は(メタ)アクリル酸エステル、すなわち(メタ)アクリレートである。
【0068】
具体的な単官能性化合物としては例えば以下の化合物がある。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート。
【0069】
最外層に直接接する透明硬化物からなる内層の耐摩耗性を高める意味で被覆組成物(A)は有効量の平均粒径200nm以下のコロイド状シリカを含むことができる。コロイド状シリカの平均粒径は1〜100nmが好ましく、1〜50nmが特に好ましい。コロイド状シリカはまた下記表面修飾されたコロイド状シリカであることが、コロイド状シリカの分散安定性およびコロイド状シリカと多官能性化合物との密着性向上の面で好ましい。
【0070】
コロイド状シリカを使用する場合、その使用する効果を充分発揮するためにはコロイド状シリカの量は、被覆組成物(A)の硬化性成分(化合物(a)、化合物(a’)、化合物(c)および化合物(c’)の合計)100重量部に対して1重量部以上が適当であり、5重量部以上が好ましい。
【0071】
この量が少なすぎると充分な耐摩耗性が得られ難い。また多すぎると被膜に曇り(ヘーズ)が発生しやすくなり、また得られた透明被覆成形品を熱曲げ加工などの2次加工を行う場合にはクラックが生じやすくなるなどの問題を生じる。したがって、被覆組成物(A)におけるコロイド状シリカ量は硬化性成分100重量部に対して300重量部以下であることが好ましい。より好ましいコロイド状シリカの量は硬化性成分100重量部に対して5〜250重量部である。
【0072】
コロイド状シリカとしては表面未修飾のコロイド状シリカを使用できるが、好ましくは表面修飾されたコロイド状シリカ(以下単に修飾コロイド状シリカという)を使用する。修飾コロイド状シリカの使用は組成物中のコロイド状シリカの分散安定性を向上させる。修飾によってコロイド状シリカ微粒子の平均粒径は実質的に変化しないか多少大きくなると考えられるが、得られる修飾コロイド状シリカの平均粒径は上記範囲のものであると考えられる。以下に修飾コロイド状シリカについて説明する。
【0073】
コロイド状シリカの分散媒としては種々の分散媒が知られており、原料コロイド状シリカの分散媒は特に限定されない。必要により分散媒を変えて修飾を行うことができ、また修飾後に分散媒を変えることもできる。修飾コロイド状シリカの分散媒はそのまま被覆組成物(A)の媒体(溶媒)とすることが好ましい。
【0074】
被覆組成物(A)の媒体としては、乾燥性などの面から比較的低沸点の溶媒、すなわち通常の塗料用溶媒、であることが好ましい。製造の容易さなどの理由により、原料コロイド状シリカの分散媒、修飾コロイド状シリカの分散媒および被覆組成物(A)の媒体はすべて同一の媒体(溶媒)であることが好ましい。このような媒体としては、塗料用溶媒として広く使用されているような有機媒体が好ましい。
【0075】
分散媒としては、例えば以下のような分散媒を使用できる。
水。メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−メチルプロパノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールのような低級アルコール類。メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類。ジメチルアセトアミド、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトンなど。
【0076】
前記のように特に分散媒としては有機分散媒が好ましく、上記有機分散媒中ではさらにアルコール類およびセロソルブ類が好ましい。なお、コロイド状シリカとそれを分散させている分散媒との一体物をコロイド状シリカ分散液という。
【0077】
コロイド状シリカの修飾は加水分解性ケイ素基または水酸基が結合したケイ素基を有する化合物(以下これらを修飾剤という)を用いて行うことが好ましい。加水分解性ケイ素基の加水分解によってシラノール基が生じ、これらシラノール基がコロイド状シリカ表面に存在すると考えられるシラノール基と反応して結合し、修飾剤がコロイド状シリカ表面に結合すると考えられる。修飾剤は2種以上を併用してもよい。また後述のように互いに反応性の反応性官能基を有する修飾剤2種をあらかじめ反応させて得られる反応生成物も修飾剤として使用できる。
【0078】
修飾剤は2個以上の加水分解性ケイ素基やシラノール基を有していてもよく、また加水分解性ケイ素基を有する化合物の部分加水分解縮合物やシラノール基を有する化合物の部分縮合物であってもよい。好ましくは1個の加水分解性ケイ素基を有する化合物を修飾剤として使用する(修飾処理過程で部分加水分解縮合物が生じてもよい)。また、修飾剤は、ケイ素原子に結合した有機基を有しその有機基の1個以上は反応性官能基を有する有機基であることが好ましい。
【0079】
好ましい反応性官能基はアミノ基、メルカプト基、エポキシ基および(メタ)アクリロイルオキシ基である。反応性官能基が結合する有機基としては、反応性官能基を除いて炭素数8以下のアルキレン基やフェニレン基が好ましく、特に炭素数2〜4のアルキレン基(とりわけポリメチレン基)が好ましい。
具体的な修飾剤としては反応性官能基の種類によって分けると、例えば以下のような化合物がある。
【0080】
(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン類;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなど。
【0081】
アミノ基含有シラン類;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(N−ビニルベンジル−2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなど。
【0082】
メルカプト基含有シラン類;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなど。
【0083】
エポキシ基含有シラン類;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなど。
【0084】
イソシアネート基含有シラン類;3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシランなど。
【0085】
互いに反応性の反応性官能基を有する修飾剤2種をあらかじめ反応させて得られる反応生成物としては、例えば、アミノ基含有シラン類とエポキシ基含有シラン類との反応生成物、アミノ基含有シラン類と(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン類との反応生成物、エポキシ基含有シラン類とメルカプト基含有シラン類との反応生成物、メルカプト基含有シラン類どうし2分子の反応生成物などがある。
【0086】
コロイド状シリカの修飾は通常、加水分解性基を有する修飾剤を触媒存在下にコロイド状シリカに接触させて加水分解することにより行う。例えば、コロイド状シリカ分散液に修飾剤を添加し、コロイド状シリカ分散液中で修飾剤を加水分解することによって修飾できる。
【0087】
触媒としては、酸やアルカリがある。好ましくは無機酸および有機酸から選ばれる酸を使用する。無機酸としては、例えば塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等のハロゲン化水素酸や硫酸、硝酸、リン酸等を使用できる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、(メタ)アクリル酸等を使用できる。
反応温度としては室温から用いる溶媒の沸点までの間が好ましく、反応時間は温度にもよるが0.5〜24時間の範囲が好ましい。
【0088】
コロイド状シリカの修飾において、修飾剤の使用量は特に限定されないが、コロイド状シリカ(分散液中の固形分)100重量部に対し、修飾剤1〜100重量部が適当である。修飾剤の量が1重量部未満では表面修飾の効果が得られにくい。また、100重量部超では未反応の修飾剤やコロイド状シリカ表面に担持されていない修飾剤の加水分解物〜縮合物が多量に生じ、透明被覆層の硬化組成物の硬化の際それらが連鎖移動剤として働いたり、硬化後の被膜の可塑剤として働き、硬化被膜の硬度を低下させるおそれがある。
【0089】
被覆組成物(A)に化合物(c)が配合される場合、さらに光ラジカル重合開始剤が配合される。光ラジカル重合開始剤としては、公知または周知のものを使用できる。特に入手容易な市販のものが好ましい。
【0090】
光ラジカル重合開始剤としては、アリールケトン系光ラジカル重合開始剤(例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類など)、含硫黄系光ラジカル重合開始剤(例えば、スルフィド類、チオキサントン類など)、アシルホスフィンオキシド系光ラジカル重合開始剤、ジアシルホスフィンオキシド系光ラジカル重合開始剤、その他の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0091】
特にアシルホスフィンオキシド系光ラジカル重合開始剤およびジアシルホスフィンオキシド系光ラジカル重合開始剤の使用が好ましい。光ラジカル重合開始剤は2種以上併用できる。また、光ラジカル重合開始剤はアミン類などの光増感剤と組み合わせて使用できる。具体的な光ラジカル重合開始剤としては、以下の化合物がある。
【0092】
4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン。
【0093】
ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、α−アシロキシムエステル、メチルフェニルグリオキシレート。
【0094】
4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン。
【0095】
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド。
【0096】
被覆組成物(A)における光ラジカル重合開始剤の量は化合物(c)と化合物(c’)の合計100重量部に対して0. 01〜20重量部、特に0. 1〜10重量部、が好ましい。
【0097】
被覆組成物(A)には、上記成分以外に溶剤や種々の配合剤を含ませうる。溶剤は通常必須の成分であり、化合物(a)が特に低粘度の液体でないかぎり溶剤が使用される。溶剤としては、化合物(a)を硬化成分とする被覆用組成物に通常使用される溶剤を使用できる。化合物(c)が配合される場合、その化合物(c)と化合物(a)がともに低粘度の液体でないかぎり通常溶剤が使用される。さらに、基材の種類により適切な溶剤を選択して用いることが好ましい。
【0098】
溶剤の量は必要とする組成物の粘度、目的とする硬化被膜の厚さ、乾燥温度条件などにより適宜変更できる。通常は組成物中の硬化性成分に対して重量で100倍以下、好ましくは0.1〜50倍、用いる。溶剤としては例えば前記コロイド状シリカを修飾するための加水分解に用いる溶媒として挙げた、低級アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類などの溶剤がある。そのほか、酢酸n−ブチル、ジエチレングリコールモノアセテートなどのエステル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類などがある。耐溶剤性の低い芳香族ポリカーボネート樹脂の被覆には低級アルコール類、セロソルブ類、エステル類、それらの混合物などが適当である。
【0099】
被覆組成物(A)は、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱重合防止剤などの安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤類、酸、アルカリおよび塩類などから選ばれる硬化触媒等を適宜含有してもよい。
【0100】
被覆組成物(A)は、特に、紫外線吸収剤や光安定剤を配合することが好ましい。紫外線吸収剤としては合成樹脂用紫外線吸収剤として通常使用されているようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤などが好ましい。光安定剤としては同様に合成樹脂用光安定剤として通常使用されているようなヒンダードアミン系光安定剤(2,2,4,4−テトラアルキルピペリジン誘導体など)が好ましい。
【0101】
このような被覆組成物(A)を硬化させる活性エネルギ線としては特に紫外線が好ましい。しかし、紫外線に限定されず、電子線やその他の活性エネルギ線を使用できる。紫外線源としてはキセノンランプ、パルスキセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等が使用できる。
【0102】
被覆組成物(A)より形成される硬化物の層の厚さは1〜50μmであることが好ましい。この層厚が50μm超では、活性エネルギ線による硬化が不充分になり基材との密着性が損なわれやすく好ましくない。この層厚が1μm未満では、この層の耐摩耗性が不充分となるおそれがあり、またこの層の上の最外層の耐摩耗性や耐擦傷性が充分発現できないおそれがある。より好ましい層厚は2〜30μmである。
【0103】
次に最外層のシリカの層を形成しうる硬化性被覆組成物(B)は、シリカを形成しうる可溶性化合物と通常は溶剤を含む。シリカを形成しうる可溶性化合物としては、4官能性の加水分解性シラン化合物やその部分加水分解縮合物、およびポリシラザンなどがある。4官能性の加水分解性シラン化合物やその部分加水分解縮合物としては、例えばテトラアルコキシシランやその部分加水分解縮合物がある。しかし好ましくはポリシラザンが用いられる。ポリシラザンはより緻密な構造のシリカを形成することより、より表面特性の優れた最外層が得られる。
【0104】
ポリシラザンとしては実質的に有機基を含まないポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)、アルコキシ基などの加水分解性基がケイ素原子に結合したポリシラザン、ケイ素原子にアルキル基などの有機基が結合しているポリシラザンなどがある。このようなポリシラザンとしてはたとえ有機基を有していても、硬化の際の加水分解反応により実質的に有機基を含まないシリカが形成されるものが好ましい。特にペルヒドロポリシラザンはその焼成温度の低さおよび焼成後の硬化被膜の緻密さの点で好ましい。ポリシラザンが充分に硬化した硬化物は窒素原子をほとんど含まないシリカとなる。
【0105】
ポリシラザンは、鎖状、環状もしくは架橋構造を有する重合体、または分子内にこれらの複数の構造を有する重合体からなる。ポリシラザンの分子量としては数平均分子量で200〜50000であるものが好ましい。数平均分子量が200未満では焼成しても均一な硬化被膜が得られにくい。数平均分子量が50000超では溶剤に溶解しがたくなり、また被覆組成物(B)が粘稠になるおそれがある。
【0106】
ポリシラザンを溶解する溶剤としては脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環族エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には以下のものが例示できる。
【0107】
ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素類。塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類。エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチルエーテル、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類など。
【0108】
これらの溶剤を使用する場合、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度を調節するために複数の種類の溶剤を併用してもよい。溶剤の使用量は採用される塗工方法およびポリシラザンの構造や平均分子量などによって異なるが、固形分濃度で0. 5〜80%の範囲で調製することが好ましい。
【0109】
ポリシラザンを硬化させてシリカとするためには通常焼成と呼ばれる加熱が必要である。しかし、本発明においては基材が合成樹脂であることよりその焼成温度は制限される。すなわち、基材の耐熱温度以上に加熱して硬化させることは困難である。一般的に被覆組成物(A)の硬化物の耐熱性は基材のそれよりも高い。しかし場合によってはこの硬化物の耐熱性が基材の耐熱性よりも低い場合があり、その場合はこの硬化物の耐熱温度よりも低い温度でポリシラザンを硬化させる必要が生じることもある。したがって、本発明においてポリシラザンの焼成温度は芳香族ポリカーボネート樹脂などの通常の合成樹脂を基材とする場合は180℃以下とすることが好ましい。
【0110】
ポリシラザンの焼成温度を低下させるために通常は触媒が使用される。触媒の種類や量により低温で焼成でき、場合によっては室温での硬化ができる。焼成を行う雰囲気としては空気中などの酸素の存在する雰囲気が好ましい。ポリシラザンの焼成によりその窒素原子が酸素原子に置換しシリカが生成する。充分な酸素の存在する雰囲気中で焼成することにより緻密なシリカの層が形成される。
【0111】
触媒としては、より低温でポリシラザンを硬化させうる触媒を用いることが好ましい。そのような触媒としては、例えば、金、銀、パラジウム、白金、ニッケルなどの金属の微粒子からなる金属触媒(特開平7−196986参照)、アミン類や酸類(特開平9−31333参照)がある。アミン類としては、例えば、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノアリールアミン、ジアリールアミン、環状アミンなどがある。酸類としては、例えば酢酸などの有機酸や塩酸などの無機酸がある。
【0112】
触媒としての金属微粒子の粒径は0. 1μmより小さいことが好ましく、さらに硬化物の透明性を確保するためには0. 05μmよりも小さいことが好ましい。加えて、粒径が小さくなるに従い比表面積が増大し触媒能が増大することより触媒性能向上の面でもより小さい粒系の触媒を使用することが好ましい。
【0113】
触媒の配合量としてはポリシラザン100重量部に対して0. 01〜10重量部、より好ましくは0. 05〜5重量部である。配合量が0. 01重量部未満では充分な触媒効果が期待できず、10重量部超では触媒どうしの凝集が起こりやすくなり、透明性を損なうおそれがあるために好ましくない。
【0114】
また、この被覆組成物(B)には必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などの安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤類を適宜配合して用いてもよい。
【0115】
被覆組成物(B)を用いて形成される硬化物の層の厚さは0.05〜10μmであることが好ましい。この最外層の層厚が10μm超では、耐擦傷性などの表面特性のそれ以上の向上が期待できないうえ、層が脆くなり被覆成形品のわずかな変形によってもこの層にクラックなどが生じやすくなる。また、0.05μm未満では、この最外層の耐摩耗性や耐擦傷性が充分発現できないおそれがある。より好ましい層厚は0.1〜3μmである。
【0116】
上記のような2種類の被覆組成物(A)、(B)を用いて形成される2層の透明な硬化物の層を形成する方法としては通常の被覆手法を採用できる。例えば、基材上にます被覆組成物(A)を塗工して硬化させ、次にその硬化物の表面に被覆組成物(B)を塗工して硬化させることにより目的とする透明被覆成形品が得られる。
【0117】
これら被覆組成物を塗工する手段としては特に制限されず、公知または周知の方法を採用できる。例えば、ディップ法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、マイクログラビアコート法等の方法を採用できる。
【0118】
塗工後被覆組成物が溶剤を含んでいる場合は乾燥して溶剤を除き、次いで被覆組成物(A)を用いた層の場合は紫外線等を照射して硬化させ、被覆組成物(B)を用いた層の場合は加熱してまたは室温に放置して硬化させる。
被覆組成物(A)の硬化と被覆組成物(B)の塗工〜硬化の組み合わせ(タイミング)としては以下の4つ方法が挙げられる。
【0119】
1)被覆組成物(A)を塗工した後に充分な量の活性エネルギ線を照射して充分に硬化を終了させた後、被覆組成物(B)をその上に塗工する方法(前記した方法)。
【0120】
2)被覆組成物(A)を塗工して被覆組成物(A)の未硬化物の層を形成した後、その未硬化物層の上に被覆組成物(B)を塗工して被覆組成物(B)の未硬化物の層を形成し、その後に充分な量の活性エネルギ線を照射して被覆組成物(A)の未硬化物の硬化を終了させる方法。この場合被覆組成物(B)の未硬化物は被覆組成物(A)の未硬化物とほぼ同時に硬化するか、被覆組成物(A)の未硬化物の硬化後加熱等により硬化される。
【0121】
3)被覆組成物(A)を塗工した後に指触乾燥状態になる最低限の活性エネルギ線(通常約300mJ/cm2 までの照射量)を一旦照射して被覆組成物(A)の部分硬化物の層を形成した後、その部分硬化物層の上に被覆組成物(B)を塗工して被覆組成物(B)の未硬化物の層を形成し、その後に充分な量の活性エネルギ線を照射して被覆組成物(A)の部分硬化物の硬化を終了させる方法。
被覆組成物(B)の未硬化物の硬化は上記2)の場合と同様である。
【0122】
4)上記2)または3)のように被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬化物の層と被覆組成物(B)の未硬化物の層とを形成した後、被覆組成物(B)の未硬化物を先に部分硬化または完全硬化させてその後に被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬化物を完全硬化させる。この場合、被覆組成物(B)の未硬化物を硬化させる時点では被覆組成物(A)は未硬化物よりも部分硬化物であることが好ましい。
【0123】
2つの硬化物層の層間密着力を上げるためには、上記2)または3)の方法がより好ましい。ただし、2)の方法の場合は、被覆組成物(B)を塗工する方法としてディップ法を用いると被覆組成物(A)の未硬化物の成分が被覆組成物(B)のディップ液を汚染するおそれがあるため、このようなディップ法による塗工は適さないなどの制約がある。
【0124】
さらに、本発明の透明被覆成形品の特徴としてその耐摩耗性や耐擦傷性などの表面特性がガラスとほぼ同等のレベルを有することから、従来ガラスが用いられていた各種用途として使用できる。この用途のうちには車両用窓材としての用途などがある。
【0125】
ただし、このような用途では曲げ加工した成形品が必要となる場合が多い。こうした曲げ加工された本発明の透明被覆成形品を製造する場合、曲げ加工された基材を用いて本発明の透明被覆成形品となしうる。しかし、曲げ加工された基材を用いる場合は塗工〜硬化による各層の形成が困難となることが少なくない。一方、本発明者らの従来からの検討によれば、被覆組成物(A)の硬化物の層が形成された基材は熱曲げ加工等により曲げ加工できる。しかし、被覆組成物(B)の硬化物の層が形成された場合はその硬化物が硬いことより曲げ加工は困難である。
【0126】
本発明者は、被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化物の層であれば、そのような層を有する基材(被覆組成物(A)の硬化物の層を有する)を曲げ加工できることを見いだした。また、前記2)や3)の方法のように被覆組成物(A)の未硬化物や部分硬化物の層の上に被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化物の層を形成した状態で曲げ加工することもできる。曲げ加工した後ないし曲げ加工とほぼ同時に被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化物を硬化させることにより、目的とする曲げ加工された被覆成形品が得られる。曲げ加工は通常加熱状態で加工を行う。
【0127】
したがって、曲げ加工のための加熱によって被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化物が硬化するが、通常は曲げ加工に要する時間に比較して被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化物の硬化に要する時間が長いことより、被覆組成物(B)の硬化によって曲げ加工が困難になるおそれは少ない。
【0128】
したがって、本発明の曲げ加工された被覆成形品は、基材上に被覆組成物(A)の未硬化物、部分硬化物ないし硬化物の層およびその層の表面に被覆組成物(B)の未硬化物ないし部分硬化物の層を形成した後これらの層を有する基材を曲げ加工し、次いで被覆組成物(B)の未硬化物ないし部分硬化物を、および被覆組成物(A)の未硬化物や部分硬化物が存在する場合はそれを硬化させることにより、製造できる。
【0129】
具体的には、例えば、被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化物の層を形成した後、基材の熱軟化温度に5分間程度加熱し、続いて曲げ加工を施す。その後基材の熱軟化温度よりも低くかつ被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化物が硬化しうる温度に保持して硬化を行うことにより、本発明の曲げ加工された被覆成形品が得られる。このような方法により、被覆組成物(B)が充分に硬化する前に基材が変形し、その後硬いシリカの層が形成されるためにこのシリカ層にクラック等の不具合が生じることがない。
【0130】
本発明における透明合成樹脂基材の材料としては各種透明合成樹脂を使用しうる。例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(アクリル樹脂)、ポリスチレン樹脂などの透明合成樹脂を基材の材料として使用しうる。特に芳香族ポリカーボネート樹脂からなる基材が好ましい。この透明合成樹脂基材は成形されたものであり、例えば平板や波板などのシート状基材、フィルム状基材、各種形状に成形された基材、少なくとも表面層が各種透明合成樹脂からなる積層体等がある。特に(曲げ加工されていない)平板状の基材が好ましい。
【0131】
本発明において、基材としては特に芳香族ポリカーボネート樹脂からなる平板状のシートが好ましい。このシートの厚さは1〜100mmであることが窓材などの用途に好ましい。このシートの両面または片面に前記した2層以上の透明硬化物層が形成される。
【0132】
【実施例】
以下、本発明を実施例(例1、例3〜12)、比較例(例13〜14)に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されない。例1、例3〜14についての各種物性の測定および評価は以下に示す方法で行い、その結果を表1に示した。
【0133】
[初期曇価、耐磨耗性]
JIS−R3212における耐磨耗試験法により、2つのCS−10F磨耗輪にそれぞれ500gの重りを組み合わせ500回転と1000回転させたときの曇価をヘーズメータにて測定した。曇価(ヘーズ)の測定は磨耗サイクル軌道の4カ所で行い、平均値を算出した。初期曇価は磨耗試験前の曇価の値(%)を、耐磨耗性は(磨耗試験後曇価)−(磨耗試験前曇価)の値(%)を示す。
【0134】
[密着性]
サンプルを剃刀の刃で1mm間隔で縦横それぞれ11本の切れ目を付け、100個の碁盤目を作る。そして、市販のセロハンテープをよく密着させた後、90度手前方向に急激にはがした際の、被膜が剥離せずに残存したマス目の数(m)をm/100で表す。
【0135】
[耐候性]
サンシャインウエザーメータを用いてブラックパネル温度63℃で、降雨12分、乾燥48分のサイクルで3000時間暴露後、外観の評価を行った。
【0136】
[曲げ加工]
サンプルを170℃の熱風循環オーブン中で5分間保持し、取り出し直後に透明硬化物層工面が凸側になるように、180mmRの曲率を持つ型に押しつけ、曲げ加工を施した。
【0137】
[基材]
厚さ3mmの透明な芳香族ポリカーボネート樹脂板(150mm×300mm)。
【0138】
[例1]
化合物(a)として脂環型エポキシ樹脂(旭電化工業社製:商品名「KRM2199」)(以下、KRMという)を用い、芳香族スルホニウム塩型光重合開始剤SP−150(旭電化工業社製:商品名)(以下、SPという)を4重量%と2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(以下、AHという)3重量%を加え、さらにキシレンを加えて不揮発分を30重量%に調節した被覆組成物(以下、塗工液1という)を得た。
【0139】
基材にバーコータを用いて塗工液1を塗工(ウェット厚さ16μm)して、80℃の熱風循環オーブン中で5分間保持した。これに空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて3000mJ/cm2 (波長300〜390nm領域の紫外線積算エネルギ量、以下同じ)の紫外線を照射し、膜厚4. 8μmの透明硬化物層を形成させた。
【0140】
次に、この上にさらに低温硬化性の触媒を含有するペルヒドロポリシラザンのキシレン溶液(固形分20重量%、東燃社製:商品名「L110」)(以下、塗工液2という)をバーコータを用いて塗工(ウェット厚さ6μm)して、80℃の熱風循環オーブン中で10分間保持し、続いて100℃の熱風循環オーブン中で120分間保持することで最外層を充分に硬化させた。そして、IR分析により最外層が完全なシリカ被膜になっていることを確認した。こうして基材上に総膜厚6. 0μmの透明硬化物層を形成した。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0141】
[例2]
例1で得られたサンプルに曲げ加工を施し、外観を観察した結果、硬化物層にクラックとしわが発生していた。
一方、例1において塗工液2を塗工した直後に曲げ加工を施し、室温下で1日養生した後に外観を観察した結果、クラックやしわがない良好な透明硬化物層を有していた。
【0142】
[例3]
KRMのかわりに水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化工業社製:商品名「KRM2408」)を用いた以外は例1と同様にした。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0143】
[例4]
KRMのかわりにフェノールノボラック型エポキシ樹脂(旭電化工業社製:商品名「KRM2604」)を用いた以外は例1と同様にした。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0144】
[例5]
KRMのかわりに1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルを用いた以外は例1と同様にした。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0145】
[例6]
KRMのかわりにエチレングリコールジビニルエーテルを用いた以外は例1と同様にした。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0146】
[例7]
KRMのかわりにトリメチロールプロパントリビニルエーテルを用いた以外は例1と同様にした。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0147】
[例8]
KRMのかわりにポリビニルエーテル系化合物「サンラッド」(三洋化成社製:商品名「URI401」)を用いた以外は例1と同様にした。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0148】
[例9]
撹拌機および冷却管を装着した100mLの4つ口フラスコに、2−プロパノール20g、酢酸ブチル20g、エチルセロソルブ10g、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド150mg、SPを400mg、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル10g、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−アクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾール1000mg、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート200mgを加え溶解させ、続いて、水酸基を有するジペンタエリスリトールポリアクリレートと部分ヌレート化ヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物であるウレタンアクリレート(1分子あたり平均15個のアクリロイル基を含有)10gを加え常温で1時間撹拌して被覆用組成物(以下、塗工液9という)を得た。
塗工液1のかわりに塗工液9を用いた以外は例1と同様にした。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0149】
[例10]
例1におけるサンプル調製方法を以下のように変更した。
塗工液1を塗工して、80℃の熱風循環オーブン中で5分間保持した。これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて150mJ/cm2 の紫外線を照射し、膜厚4. 8μmの部分硬化物層を形成した。
そして、この上に塗工液2をバーコータを用いて塗工(ウェット厚さ6μm)して、80℃の熱風循環オーブン中で10分間保持し、続いて100℃の熱風循環オーブン中で120分間保持した。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0150】
[例11]
例1におけるサンプル調製方法を以下のように変更した。
塗工液1を塗工後、80℃の熱風循環オーブン中で5分間保持し、続いて、この上に塗工液2をバーコータを用いて塗工(ウェット厚さ6μm)して、80℃の熱風循環オーブン中で10分間保持した。これに空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて3000mJ/cm2 の紫外線を照射した後、100℃の熱風循環オーブン中で120分間保持した。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0151】
[例12]
例1におけるサンプル調製方法を以下のように変更した。
100℃の熱風循環オーブン中で120分間保持する代わりに、室温下で1日養生した。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0152】
[例13]
塗工液1を基材にバーコータを用いて塗工(ウェット厚さ20μm)して、80℃の熱風循環オーブン中で5分間保持した。これに空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて3000mJ/cm2 の紫外線を照射し、膜厚6μmの透明硬化物層を形成した。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0153】
[例14]
塗工液2を基材にバーコータを用いて塗工(ウェット厚さ30μm)して、80℃の熱風循環オーブン中で10分間保持した。続いて100℃の熱風循環オーブン中で120分間保持し、膜厚6μmの透明硬化物層を形成した。このサンプルを用いて前記測定を行った。
【0154】
【表1】
【0155】
【発明の効果】
本発明の透明被覆成形品は、ほぼ無機ガラスに匹敵する高い耐摩耗性の表面を有する表面特性に優れた透明被覆成形品である。また、本発明では、平板状の基体を用いて曲げ加工されたこのような表面特性に優れた透明被覆成形品を製造できる。
Claims (6)
- 透明合成樹脂基材および透明合成樹脂基材表面の少なくとも一部に設けられた2層以上の透明硬化物層を含む透明被覆成形品において、2層以上の透明硬化物層のうち最外層に接する内層が下記被覆組成物(A)の硬化物の層であり、最外層が下記被覆組成物(B)の硬化物の層であることを特徴とする透明被覆成形品。
被覆組成物(A):カチオン重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)と光によりカチオンを発生する重合開始剤とを含む活性エネルギ線硬化性被覆組成物。
被覆組成物(B1):4官能性の加水分解性シラン化合物、その部分加水分解縮合物、またはポリシラザンを含む硬化性被覆組成物。 - 被覆組成物(A)が、さらにラジカル重合性官能基を2個以上有する化合物(c)と光によりラジカルを発生する重合開始剤とを含む請求項1記載の透明被覆成形品。
- 請求項1または2記載の透明被覆成形品の製造方法において、透明合成樹脂基材表面に被覆組成物(A)の硬化物の層を形成した後、その硬化物の層の表面に被覆組成物(B)の未硬化物を形成してその硬化を行う透明被覆成形品の製造方法。
- 透明合成樹脂基材および透明合成樹脂基材表面の少なくとも一部に設けられた2層以上の透明硬化物層を含む透明被覆成形品であって、2層以上の透明硬化物層のうち最外層に接する内層が下記被覆組成物(A)の硬化物の層であり、最外層が下記被覆組成物(B)の硬化物の層である透明被覆成形品の製造方法において、透明合成樹脂基材表面に被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬化物の層を形成した後、その未硬化物または部分硬化物の層の表面に被覆組成物(B)の未硬化物層を形成し、その後被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬化物と被覆組成物(B)の未硬化物との硬化を行う透明被覆成形品の製造方法。
被覆組成物(A):カチオン重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)と光によりカチオンを発生する重合開始剤とを含む活性エネルギ線硬化性被覆組成物。
被覆組成物(B):シリカを形成しうる硬化性被覆組成物。 - 透明合成樹脂基材および透明合成樹脂基材表面の少なくとも一部に設けられた2層以上の透明硬化物層を含む透明被覆成形品であって、2層以上の透明硬化物層のうち最外層に接する内層が下記被覆組成物(A)の硬化物の層であり、最外層が下記被覆組成物(B)の硬化物の層である透明被覆成形品の製造方法において、透明合成樹脂基材表面に被覆組成物(A)の硬化物の層およびその層の表面に被覆組成物(B)の未硬化物または部分硬化物の層を形成した後、これらの層を有する基材を曲げ加工し、次いで被覆組成物(B)の未硬化物または部分硬化物を硬化させる、曲げ加工された透明被覆成形品の製造方法。
被覆組成物(A):カチオン重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)と光によりカチオンを発生する重合開始剤とを含む活性エネルギ線硬化性被覆組成物。
被覆組成物(B):シリカを形成しうる硬化性被覆組成物。 - 透明合成樹脂基材および透明合成樹脂基材表面の少なくとも一部に設けられた2層以上の透明硬化物層を含む透明被覆成形品であって、2層以上の透明硬化物層のうち最外層に接する内層が下記被覆組成物(A)の硬化物の層であり、最外層が下記被覆組成物(B)の硬化物の層である透明被覆成形品の製造方法において、透明合成樹脂基材表面に被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬化物の層およびその層の表面に被覆組成物(B)の未硬化物または部分硬化物の層を形成した後、これらの層を有する基材を曲げ加工し、次いで被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬化物および被覆組成物(B)の未硬化物または部分硬化物を硬化させる、曲げ加工された透明被覆成形品の製造方法。
被覆組成物(A):カチオン重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)と光 によりカチオンを発生する重合開始剤とを含む活性エネルギ線硬化性被覆組成物。
被覆組成物(B):シリカを形成しうる硬化性被覆組成物。
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