JPH11317550A - 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法 - Google Patents

圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法

Info

Publication number
JPH11317550A
JPH11317550A JP12373498A JP12373498A JPH11317550A JP H11317550 A JPH11317550 A JP H11317550A JP 12373498 A JP12373498 A JP 12373498A JP 12373498 A JP12373498 A JP 12373498A JP H11317550 A JPH11317550 A JP H11317550A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
piezoelectric element
piezoelectric
thin film
pressure chamber
mol
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP12373498A
Other languages
English (en)
Inventor
Soichi Moriya
壮一 守谷
Koji Sumi
浩二 角
Hiroshi Kyu
宏 邱
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Seiko Epson Corp filed Critical Seiko Epson Corp
Priority to JP12373498A priority Critical patent/JPH11317550A/ja
Publication of JPH11317550A publication Critical patent/JPH11317550A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 電圧依存性の少ない圧電体素子を提供する。 【解決手段】 この圧電体素子は、ペロブスカイト結晶
構造を持つ強誘電体を備えた圧電体層と当該圧電体層を
挟んで配置される上電極および下電極とを備える。そし
て圧電体層(41)における(001)方位の結晶の分極軸
方向が下部電極(32)および上部電極(42)間に生ずる電界
の方向と略平行になるように設定されている。このよう
な構造の圧電体素子は、電圧の増加に対して圧電d定数
が変動しないので、振動量やインクの吐出量の管理が楽
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気機械変換機能
を示す圧電体素子に係り、特に、圧電体素子の特定配向
の結晶における分極軸方向を特定の条件に設定すること
により圧電特性を向上させた圧電体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、圧電体素子に用いられる圧電体層
としてジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等の圧電性セラ
ミックスを用いることが一般的である。これら化学式R
MXで表される物質はペロブスカイト(perovskite)
構造を示すことが知られており、この結晶構造は電気機
械変換作用を有する。圧電体素子を構成するペロブスカ
イト結晶は、いくつかの面方位に結晶が配向していると
考えられる。例えばPZT等を構成する結晶は(00
1)面方位と(111)面方位とが混在していることが
わかっている。このような結晶構造を備えた圧電体素子
の例が、特開平3−69512号公報、Applied Physic
s Letters, 1991, Vol. 58, No. 11, pp1161-1163に開
示されている。上記圧電体素子を用いたインクジェット
式記録ヘッドの従来例としては、例えば米国特許第5,
265,315号明細書が存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで圧電体素子の
品質を評価するために圧電気による誘電分極と応力との
関係、すなわち電気機械変換効率を表す圧電率を用い
る。圧電率は、具体的には圧電d定数という圧電g定数
と誘電率との積から得られる値により定量化することが
できる。ここで圧電d定数とは、変位と電場間の比例係
数のことをいい、圧電g定数とは、電場と応力間の比例
係数のことをいう。誘電率とは電場と面電荷密度との間
の比例係数をいう。圧電d定数が電圧によって変動しな
ければ、圧電体素子は低い電圧から高い電圧まで一定し
た電気機械変換特性を示す。
【0004】しかしながら従来品の圧電体素子について
圧電d定数を測定したところ、圧電体素子にある電圧以
上印加すると電圧の増加に伴って圧電d定数が漸次低下
してしまうという電圧依存性があることが判った。圧電
d定数の大きさは電気機械変換特性に直接影響するの
で、印加電圧の大きさによって圧電体素子の体積変化率
が変わることになる。例えばこのような圧電体素子を使
用して製造したインクジェット式記録ヘッドは、印加す
る駆動電圧の大きさによってインクの吐出量が変化して
しまうことになる。測定時に使用した電圧と実際の製品
に使用する電圧とを常に同じにしておかなければインク
ジェット式記録ヘッドの設計が行えないのでは振動量の
制御が困難で設計上大きな制約を生ずる。ある程度以上
の電圧に対し体積変化が一定な圧電体素子を製造できれ
ば、これらの問題が解決する。
【0005】本願発明の発明者は圧電体素子の結晶にお
ける分極軸方向が傾いていることに鑑み、この傾きが圧
電体素子における圧電d定数の電圧依存性の原因になっ
ているとの仮定のもと、上記問題を解決可能な圧電体素
子およびその製造方法について考案した。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の課題は、
高い電圧まで圧電特性を備える圧電体素子を提供するこ
とにより、振動量の制御を容易にすることである。
【0007】本発明の第2の課題は、高い電圧まで圧電
特性に変化のない圧電体素子を備えたインクジェット式
記録ヘッドを提供することにより、インク吐出量の制御
を容易にし圧電体素子の汎用性を高めることである。
【0008】本発明の第3の課題は、高い電圧まで圧電
特性に変化のない圧電体素子の製造方法を提供すること
により、振動量の制御を容易にすることである。
【0009】本発明の第4の課題は、高い電圧まで圧電
特性に変化のない圧電体素子を有するインクジェット式
記録ヘッドの製造方法を提供することにより、インクの
吐出量を容易に制御可能にしインクジェット式記録ヘッ
ドの汎用性を高めることである。
【0010】上記第1の課題を解決する発明は、下部電
極膜および上部電極膜の間に結晶化された圧電体層を備
える圧電体素子において、前記圧電体層における結晶の
分極軸方向が前記下部電極膜および上部電極膜間に生ず
る電界の方向と略平行になるように設定されていること
を特徴とする圧電体素子である。分極軸方向が電場の方
向と一致していれば、高い電場が印加された場合に高い
応力が発生しても結晶方位が変化することないため、圧
電d定数の変動がなくなると考えられる。
【0011】また上記第1の課題を解決する発明は、下
部電極膜および上部電極膜の間に結晶化された圧電体層
を備える圧電体素子において、前記圧電体層を構成する
結晶が(001)面方位を有し、かつその分極軸方向が
前記下部電極膜および上部電極膜間に生ずる電界の方向
と略平行になるように設定されていることを特徴とする
圧電体素子である。圧電d定数の変動を生ずるのは(0
01)面方位の結晶が傾いたためであるため、この方向
を電場の方向と一致させれば電圧依存性が少なくなると
考えられる。
【0012】ここで上記圧電体層は、複数の積層された
薄膜層を備えており、当該薄膜層一層当たりの厚みが1
0nm以上であって100nm以下に形成されている。
余りに薄くすると、積層に要する処理の回数が多くなり
過ぎてスループットが得られないからである。上記結晶
方位を備えた圧電体素子を形成するためには圧電性セラ
ミックスの濃度を薄くした溶液(前駆体)を使う必要が
あるため、溶媒蒸発後の結晶の厚みが必然的に従来品よ
り薄くなるからである。
【0013】また上記圧電体層は、ジルコニウム酸チタ
ン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O:PZT)、チタン酸
鉛ランタン((Pb,La)TiO)、ジルコニウム
酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO:PLZT)ま
たはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛
(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O:PMN−P
ZT)のうちいずれかの圧電性セラミックスを含むこと
が好ましい。これらは代表的な強誘電性の圧電性セラミ
ックスであり、圧電体素子の材料として好ましい条件を
備え現実に多くの圧電体素子の製造に用いられるものだ
からである。
【0014】上記第2の課題を解決する発明は、圧力室
基板に設けられた圧力室に体積変化を生じさせることに
よって前記圧力室に設けられたノズルからインクを吐出
可能に構成されたインクジェット式記録ヘッドにおい
て、前記圧力室に体積変化を生じさせる駆動手段として
本発明の圧電体素子を備えたことを特徴とするインクジ
ェット式記録ヘッドである。圧電体素子の電圧依存性が
ないため、インクジェット式記録ヘッドの駆動電圧が変
化してもインクの吐出量が変動しないからである。
【0015】上記第3の課題を解決する発明は、電気機
械変換作用を示す圧電体素子を製造するための圧電体素
子の製造方法であって、圧電性セラミックスのモル濃度
が0.1mol/l乃至0.45mol/lになるよう
に調整した圧電体層の前駆体を下部電極膜上に塗布して
薄膜層を複数積層する工程と、積層された前記薄膜層上
に上部電極膜を形成する工程と、を備えたことを特徴と
する圧電体素子の製造方法である。圧電性セラミックス
のモル濃度を従来品の製造時より低く抑えると経験上
(001)面方位の分極軸方向を電極面に対してほぼ垂
直に形成することができるからである。
【0016】例えば上記圧電体層の前駆体は、圧電性セ
ラミックス1molに対してポリエチレングリコールを
0.5mol以上5mol以下含有させて生成したもの
である。溶媒の量を従来の製造方法より上げることによ
り圧電性セラミックスのモル濃度を下げることができる
からである。これ以上の溶媒量では圧電性セラミックス
の濃度が薄くなり過ぎて、積層に要する処理の回数が多
くなりスループットが得られないからであり、これ以下
の溶媒量では(001)配向の結晶の分極軸方向が電極
面に対して垂直から若干傾き出してしまうからである。
とくにポリエチレングリコールを0.75mol含有さ
せることが好ましい。この溶媒量において上記バランス
が最良になるからである。
【0017】さらに上記薄膜層を複数積層する工程で
は、所定の厚みに前記圧電体層の前駆体を塗布する塗布
工程と、塗布された前記前駆体を乾燥させ脱脂する乾燥
・脱脂工程と、により各前記薄膜層を形成し、さらに当
該薄膜層を一定総数積層するたびにこれら一定数積層さ
れた薄膜層に高速熱処理を施して結晶化させることが好
ましい。高速熱処理によって上記結晶方位のペロブスカ
イト結晶構造を形成可能だからである。
【0018】またさらに上記圧電体層の前駆体(ゾル)
を塗布する塗布工程では10nm以上であって120n
m以下の厚みで前記前駆体を塗布することが好ましい。
上記結晶方位を備えた圧電体素子を形成するためには圧
電性セラミックスの濃度を薄くした溶液(前駆体)を使
うため、ある程度以上の厚みに塗布しなければ積層に要
する処理の回数が多くなり過ぎてスループットが得られ
ないからである。また余りに厚く塗布するとできあがっ
た圧電体層が厚くなりすぎ、製造時にクラック等を発生
してしまうからである。
【0019】さらに上記高速熱処理は、650℃で5分
間加熱し次いで900℃で1分間加熱することにより行
うことが好ましい。この条件において結晶構造が良好に
形成可能だからである。
【0020】例えば上記薄膜層を複数積層する工程で
は、前記薄膜層を16層積層し、当該薄膜層を4層積層
するたびに前記高速熱処理を施す。本発明では比較的薄
い薄膜層を良好に結晶させながら適正な厚みに積層する
必要があり、このような積層構造であれば、良好な圧電
特性を示す圧電体素子を製造可能だからである。
【0021】上記第4の課題を解決する発明は、圧力室
基板に設けられた圧力室に体積変化を生じさせることに
よって前記圧力室に設けられたノズルからインクを吐出
可能に構成されたインクジェット式記録ヘッドにおい
て、前記圧力室基板に絶縁膜を形成する工程と、前記絶
縁膜に本発明の圧電体素子の製造方法により圧電体素子
を形成する工程と、前記圧電体素子を前記圧力室に体積
変化を生じさせることが可能な形状に整形する工程と、
前記圧力室基板に前記圧力室を形成する工程と、を備え
たことを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造
方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、本発明における最良の実施
の形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は特定
の結晶構造を備えた圧電体素子、それを使用したインク
ジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法に関す
る。特にPZTなどの強誘電性の圧電性セラミックスを
用いる。
【0023】(構成)図1(a)に本実施形態の圧電体
素子の積層構造を説明するための断面図を示す。本圧電
体素子40は、図1(a)に示すように、下部電極32
と上部電極42との間に複数の薄膜層411〜41n
(nは任意の自然数、例えば16とする)が積層された
圧電体層41を備えている。
【0024】下部電極32は、圧電体層41に電圧を印
加するための上部電極42と対になる電極であり、導電
性を有する材料、例えば、チタン(Ti)層、白金(P
t)層、チタン(Ti)層を積層して構成されている。
このように複数の層を積層して下部電極を構成するの
は、白金層と圧電体層、白金層と絶縁膜との密着性を高
めるためである。上部電極膜42は、圧電体層41に電
圧を印加するための一方の電極となり、導電性を有する
材料、例えば膜厚0.1μmの白金(Pt)で構成され
ている。導電性があれば素材に限定されるものではな
い。
【0025】圧電体層41は、強誘電性の圧電性セラミ
ックスにより構成されている。この圧電性セラミックス
の組成としては、ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Z
r、Ti)O:PZT)、((Pb,La)Zr
:PLZT)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニ
ウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)
:PMN−PZT)のうちいずれかであることが好
ましい。これら強誘電体の圧電性セラミックスは圧電d
定数、つまり電気機械変換効率が高く、圧電体素子の材
料として適する特性を備えているからである。例えば、
マグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛であれ
ば、 Pb(Mg1/3Nb2/30.1Zr0.504
0.396 という組成が好適である。ただしこの圧電体層の組成と
しては電気機械変換作用を示せば十分であり常誘電体な
ど他の組成であってもよい。
【0026】特に本実施形態では当該圧電体層41の結
晶構造のうち、(001)面方位の結晶の分極軸方向が
電場の方向、すなわち平行に向かい合う下部電極32や
上部電極42の面に対し垂直な方向に向いていることに
特徴がある。圧電体層は下層において小さな結晶粒から
結晶が成長し、界面において接すると、柱状結晶として
上部へと成長していく。一つの柱状結晶は単位結晶の連
なりにより構成されているが、この単位結晶の結晶の連
続方向、すなわち分極軸が電場に対して平行になってい
る。このような結晶構造を有する圧電体層は後述する製
造方法によって製造される。なおこれら結晶構造は肉眼
では確認できないが、圧電体層の断面TEM(Transmis
sion Electron Microscopy)写真等を撮影することによ
り確認できる。
【0027】上記圧電体層41を構成する各薄膜層41
1〜41nの各層の厚みは、10nm以上であって10
0nm以下に形成されている。余りに薄くすると、積層
に要する処理の回数が多くなり過ぎてスループットが得
られないからである。また上記結晶方位を備えた圧電体
素子を形成するためには圧電性セラミックスの濃度を薄
くした溶液(前駆体)を使うため、溶媒蒸発後の結晶の
厚みが必然的に従来品より薄くなるからである。
【0028】薄膜層の積層数は5層乃至50層が好まし
い。この積層数は上記薄膜層との関係で定められる。す
なわち圧電体素子に必要とされる体積変化率を確保でき
る程度に積層する必要がある一方、余りに多く積層する
と製造工程中に薄膜層にクラックを生じたり駆動電圧が
高くなりすぎたりするからである。したがって圧電体層
41全体の厚みは500nm〜2000nm程度が好ま
しい。
【0029】なお、下部電極32と上部電極42は必ず
しも平面を成している必要はなく、また平行である必要
もない。ただし下部電極と上部電極が平面でなく平行で
もない場合には、圧電体層の(001)面方位の結晶方
向が両電極間に生ずる電場の方向に平行になるように形
成する必要がある。
【0030】図2に上記圧電体素子40を使用したイン
クジェット式記録ヘッドの分解斜視図を示す。図3にイ
ンクジェット式記録ヘッドの主要部一部断面図を示す。
図2に示すように、本インクジェット式記録ヘッド1
は、ノズル板10、圧力室基板20、振動板30および
筐体25を備えて構成されている。
【0031】圧力室基板20はシリコンや石英の単結晶
基板をエッチングすることにより構成され、図3に示す
ようにキャビティ21、側壁22、リザーバ23および
供給口24を備えている。キャビティ21は、インクに
圧力を印加するための圧力室として作用可能に形成され
ている。側壁(隔壁)22はキャビティ21間を仕切る
よう構成され、リザーバ23は各キャビティ21にイン
クを供給可能に構成されている。供給口24は各キャビ
ティ21にインクを導入可能に構成されている。全体で
オンデマンド方式のピエゾジェットインクジェット式記
録ヘッドを構成している。
【0032】振動板30は圧力室基板20の一方の面に
貼り合わせ可能に構成されている。振動板30には本発
明の圧電体素子40が設けられている。圧電体素子40
は、ペロブスカイト構造を持つ強誘電体の結晶であり、
振動板30上に所定の形状で形成されて構成されてい
る。なお、本実施形態では振動板30を絶縁膜31と下
部電極32とが積層された構造にしてあるが、下部電極
32を圧電体層41の形状と同様に成形し、絶縁膜31
でのみ振動板30を形成するようにしてもよい。
【0033】ノズル板10は、圧力室基板20に複数設
けられたキャビティ21の各々に対応する位置にそのノ
ズル穴11が配置されるよう、圧力室基板20に貼り合
わせられている。ノズル板10を貼り合わせた圧力室基
板20は、さらに図2に示すように筐体25に填められ
てインクジェット式記録ヘッド1を構成される。
【0034】絶縁膜31は、導電性のない材料、例えば
シリコン単結晶基板を熱酸化等して形成された二酸化珪
素により構成され、圧電体層の体積変化により変形し、
キャビティ21の内部の圧力を瞬間的に高めることが可
能に構成されている。
【0035】(作用)図8に上記組成の圧電性セラミッ
クスにおいて見られるペロブスカイト結晶構造の単位結
晶構造図を示す。この構造図は前記したようにABO
という化学式で表される。例えば圧電性セラミックスが
PZTである場合、AはPb2+、BはZr4+または
Ti4+、OはO2−が配置される。圧電性セラミック
スがPMN−PZTで構成される場合には、PZTにお
けるBに相当する原子としてMg2+またはNb5+
置換される。結晶の配向は面方位によって特定する場合
が多い。結晶はいくつかの晶系に分けられるが、いずれ
の晶系であっても基準となる結晶軸によって晶系の頂点
を含む面が特定される。結晶はその結晶に設定可能な面
のうちいずれかの面の法線方向に配向する。この法線ベ
クトルをこの法線に対応する面を特定するための結晶軸
の数値によって特定する。この方向性を面方位という。
結晶内の平面や方位はミラー指数(Miller index)によ
って示せる。ミラー指数では図8のa,bおよびcのよ
うに基本ベクトルを規定すると、斜線で示した面に配向
する結晶が(001)面方位および(111)面方位で
ある。
【0036】従来の製造方法では(001)面方位の柱
状結晶は、図1(b)に示すように全体としては電極面
に垂直に成長しているが、結晶構造の成長方向が電極面
に垂直な方向から若干傾いているものを多数含んでい
た。この点本発明における圧電体層の(001)面方位
の柱状結晶は、図1(a)に示すように、その結晶方向
のほとんどが電極面に垂直になっている。すなわち結晶
の分極軸方向が電場の方向と一致している。このような
構造では高い電場が印加され高い応力が発生しても結晶
方位が変化することない。このため(001)配向の結
晶構造が電場の方向に平行になっている圧電体素子では
圧電d定数の変動がなくなると考えられる(図9参
照)。
【0037】したがって本実施形態の圧電体素子40で
はある程度以上高い電圧では圧電d定数の電圧依存性が
なく体積変化率が一定になるので、従来の圧電体素子よ
り制御が容易である。さらにこの圧電体素子40を使用
したインクジェット式記録ヘッド1では、圧電体素子の
体積変化が一定であるため吐出されるインクの液量も一
定になり、安定した吐出動作が可能となる。
【0038】(製造方法)上記条件を満たす圧電体素子
およびインクジェット式記録ヘッドの製造方法について
図4乃至図7を参照して説明する。本実施形態では酢酸
系溶液からPZTを強誘電体とした圧電体素子を製造す
る。
【0039】酢酸系溶液(圧電体前駆体)製造工程(図
4): この工程では圧電体層の前駆体となる溶液を製
造する。圧電性セラミックスを含んだ前駆体としては、
酢酸系溶液やアルコールアミン系溶液がある。それらの
製造工程は種々に考えることができるが以下に例示す
る。
【0040】酢酸系溶液を作るには、図4に示すよう
に、まず酢酸鉛・三水和物(Pb(CHCOO)
3HO)、ジルコニウムアセチルアセトナート(Zr
(CHCOCHCOCH)および酢酸マグネシ
ウム・三水和物(Mg(CHCOO)・3HO)
を、酢酸を溶媒として攪拌する(S1)。初期は室温で
攪拌し、次いで100℃程度の雰囲気下で10分から2
0分間程度攪拌し、室温下で冷却する。次いでチタニウ
ムテトライソプロポキシド(Ti(O−i−C
)およびペンタエトキシニオブ(Nb(OC
)を加えて攪拌する(S2)。さらにブトキシエタノ
ール(COCOH)を加えて室温下で5分
間程度攪拌する(S3)。3%塩酸アルコールを加えて
室温下で5分間程度攪拌する(S4)。さらにアセチル
アセトン(CHCOCHCOCH)を加えて室温
にて60分間程度攪拌する(S5)。最後に、ポリエチ
レングリコール(HO(CH)を加えて室温
下で5分間程度攪拌する(S6)。
【0041】このポリエチレングリコールは従来の製造
方法では圧電性セラミックス1molに対して0.5m
ol/l程度混ぜていたが、本実施形態では圧電性セラ
ミックスの鉛原子に対してポリエチレングリコールを
0.5mol以上で5mol以下、好ましくは0.75
mol程度含有させる。溶媒の量を従来の製造方法より
上げることにより圧電性セラミックスのモル濃度が下が
る。この低いモル濃度の前駆体を用いて圧電体層を形成
すると、(001)面方位の結晶方向が電極面に対して
垂直に形成できる。
【0042】なお、アルコールアミン系溶液を作るに
は、図7に示すように、まずチタニウムテトライソプロ
ポキシド(Ti(O−i−C)およびペンタ
エトキシニオブ(Nb(OC)を溶媒として
ブトキシエタノール(COCOH)を加え
て室温下で10分間程度攪拌する(S1)。さらにジエ
タノールアミンを加えて室温で10分間程度攪拌する
(S2)。次いで酢酸鉛・三水和物(Pb(CHCO
O)・3HO)、ジルコニウムアセチルアセトナー
ト(Zr(CHCOCHCOCH)および酢酸
マグネシウム・三水和物(Mg(CHCOO)・3
O)を加えて攪拌する(S3)。前半は75℃程度
の温度で30分間程度攪拌し、後半は室温にて10分程
度冷却する。最後に、ポリエチレングリコール(HO
(CH)を加えて室温下で10分間程度攪拌
する(S4)。ポリエチレングリコールの含有量につい
ては上記酢酸系溶液と同様である。以上の工程によって
アルコールアミン系溶液が完成する。
【0043】絶縁膜形成工程(図5(a)): 本絶縁
膜形成工程は、圧力室基板の基礎となるシリコン基板2
0に絶縁膜31を形成する工程である。シリコン基板2
0は、例えば200μm程度、絶縁膜31は、1μm程
度の厚みに形成する。絶縁膜の製造には、公知の熱酸化
法等を用いる。
【0044】下部電極形成工程(図5(b)): 下部電
極形成工程では絶縁膜31の上に下部電極32を形成す
る工程である。下部電極32は、例えば、チタン層、酸
化チタン層、チタン層、白金層、チタン層を0.01μ
m、0.01μm、0.005μm,0.5μm、0.
005μmの厚みで積層する。これら層の製造は、公知
の直流スパッタ法等を用いる。
【0045】圧電体層形成工程(図5(c)(d)):
圧電体層形成工程は、前記前駆体を用いて上部電極3
2上に本発明の圧電体層41を形成する工程である。薄
膜層の形成を繰り返して薄膜層を所定層数積層し圧電体
層41にする。
【0046】各薄膜層の形成工程を説明する。上記のよ
うにして作成した前駆体を一定の厚みに塗布する。塗布
する厚みは10nm以上であって120nm以下程度に
することが好ましい。本実施形態では前駆体の圧電性セ
ラミックスの濃度を薄くしているため、ある程度以上の
厚みに塗布しなければ積層に要する処理の回数が多くな
り過ぎてスループットが得られないからである。また余
りに厚く塗布するとできあがった圧電体層が厚くなりす
ぎ、製造時にクラック等を発生してしまうからである。
【0047】例えば、公知のスピンコート法を用いる場
合には、毎分500回転で10秒、毎分1500回転で
30秒、最後に毎分500回転で10秒間塗布する。塗
布後、一定温度(例えば180度)で一定時間(例えば
10分程度)乾燥させる。乾燥により溶媒であるブトキ
シエタノールやポリエチレングリコールが蒸発する。従
来の製造方法より多めの溶媒を使用しているため、乾燥
における厚みの減少が大きい。乾燥後、さらに大気雰囲
気下において所定の高温(例えば400度)で一定時間
(30分間)脱脂する。脱脂により金属に配位している
有機の配位子が熱分解され、金属が酸化されて金属酸化
物の薄膜層411となる(図5(c))。この塗布→乾
燥→脱脂の各工程をさらに所定回数、例えば4回繰り返
して4層の薄膜層411〜414を積層する(図5
(d))。酢酸系溶液を4層重ねた後には、さらに圧電
体層の結晶化を促進し圧電体としての特性を向上させる
ために、所定の雰囲気下で熱処理する。
【0048】例えば、4層積層後、酸素雰囲気下におい
て、高速熱処理で、650℃で5分間、さらに900℃
で1分間加熱する。高速熱処理によりペロブスカイト結
晶構造が形成されるが、そのときに格子欠陥が生じるこ
となく製造される(001)面方位の結晶方向は電場に
対して平行な方向となる。
【0049】さらにこれら薄膜層の積層と高速熱処理を
繰り返していく。高速熱処理は、例えば16層薄膜層を
積層する場合には、4層目、8層目、12層目、16層
目の薄膜層を形成後に行う。16層目の高速熱処理では
温度条件を変え、650度で5分間、さらに900度で
1分間熱処理する。この熱処理によりアモルファス状態
の溶媒からペロブスカイト結晶構造が形成される。この
濃度の比較的低い前駆体から結晶させることにより、
(001)面方位の結晶方向が電極面に垂直になる。
【0050】上部電極形成工程(同図(e)): 上部電
極形成工程は圧電体層41の上にさらに上部電極42を
形成する工程である。上部電極の材料は、白金(Pt)
等を用い、形成方法には電子ビーム蒸着法、スパッタ法
等の技術を用いる。厚みは100nm程度にする。
【0051】エッチング工程(図6(a)): エッチン
グ工程は、振動板膜30(31,32)上の積層構造
(411〜41n)を、各キャビティ21に合わせた形
状になるようマスクし、その周囲をエッチングする工程
である。エッチングの前準備として、まずスピンナー
法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジスト
材料を上部電極42上に塗布する。次いでマスクを圧電
体素子の形状に形成してから露光し現像し、レジストを
圧電体素子の形状に残す。エッチング法としては、通常
用いるウェットエッチングやドライエッチング法を適用
する。レジストが残された上部電極上からエッチングす
ることにより、圧電体素子とする領域以外の上部電極お
よび圧電体層を除去し、圧電体素子40を形成する。
【0052】圧力室形成工程(図6(b)): 圧力室
形成工程は、圧力室基板にキャビティを形成する工程で
ある。エッチングしてキャビティ21を形成する。例え
ば、異方性エッチング、平行平板型反応性イオンエッチ
ング等の活性気体を用いた異方性エッチングを用いて、
圧電体素子40が形成された圧力室基板20の他方の面
をエッチングする。エッチングされて基板材料が除去さ
れた部分がキャビティ21になり、エッチングされずに
残された部分が側壁22になる。
【0053】ノズル板貼り合わせ工程(図6(c)):
ノズル板貼り合わせ工程はノズル板を圧力室基板20
に貼り合わせる工程である。ノズル板10を貼り合わせ
る接着剤としては樹脂等を用いる。貼り合わせのときに
各ノズル穴11がキャビティ21各々の空間に対応して
配置されるよう位置合せする。ノズル板10の貼り合わ
せられた圧力室基板20を筐体25に取り付け(図2参
照)、インクジェット式記録ヘッド1を完成させる。な
お、ノズル板10を貼り合わせる代わりに、圧力室基板
とノズル板とを一体的に形成してもよい。すなわち単一
のシリコン基板をキャビティ形状にエッチングしてノズ
ル板に相当する部材と圧力室基板としての形状を同時に
形成する。そしてエッチング後にノズル板に相当する部
分にノズル穴を穴開けする。これらの工程により、ノズ
ル板を貼り合わせることなくインクジェット式記録ヘッ
ドを製造できる。
【0054】上記したように本実施形態によれば、(0
01)面方位を有する結晶の結晶方向が電場に平行とな
った構造を備えているので、この圧電体層により構成さ
れた圧電体素子は電圧依存性が少ない。このため圧電体
素子使用時における振動量の制御やこの圧電体素子を使
用したインクジェット式記録ヘッドにおけるインク吐出
量の制御が容易である。
【0055】(その他の変形例)本発明は、上記各実施
形態によらず種々に変形して適応することが可能であ
る。例えば、本発明の圧電体素子は、上記同一の結晶方
位の条件を満たすものであれば、他の製造方法によって
製造されるものであってもよい。(001)面方位の結
晶の大部分が電場に平行な結晶方向になっていれば、圧
電d定数の電圧依存性を小さくすることができ、制御が
容易な圧電体素子およびインクジェット式記録ヘッドを
提供できる。
【0056】また本発明の圧電体素子は、上記インクジ
ェット式記録ヘッドのみならず、不揮発性半導体記憶装
置、薄膜コンデンサ、パイロ電気検出器、センサ、表面
弾性波光学導波管、光学記憶装置、空間光変調器、ダイ
オードレーザ用周波数二倍器等のような強誘電体装置、
誘電体装置、パイロ電気装置、圧電装置、および電気光
学装置の製造に適応することができる。すなわち、本発
明の圧電体素子は電圧依存性が少ないために、振動量の
制御を容易にしたい装置に適用可能だからである。
【0057】
【実施例】アルコールアミン系溶液を用いて上記製造方
法により本発明のPZT素子を製造したので、その特性
を以下に説明する。従来例として、同じアルコールアミ
ン系溶液において、ポリエチレングリコールの濃度を圧
電性セラミックス1molに対して0.25mol含有
させて製造したPZTを示す。
【0058】図9は圧電体素子の電気機械変換特性を示
すバロメータになる圧電d定数の電圧依存性を測定した
ものである。つまり圧電体素子に印加する電圧を増加さ
せながら圧電体素子の圧電d定数を測定したものであ
る。図9から判るように、本発明の圧電体素子では7ボ
ルト以上の印加電圧において圧電d定数の変動が従来例
より少ない。すなわち一定以上の電圧では印加電圧が変
動しても圧電d特性が変動せず体積変化率もほとんど変
化しない。このような圧電体素子は印加電圧を安定化で
きない環境であっても電圧変動を気にすることなく使用
できる。またこのような圧電体素子を用いたインクジェ
ット式記録ヘッドは電圧変動に対して吐出されるインク
量が変化せず、安定して動作させることができる。
【0059】図10は、X線回折法(広角法)により測
定した本発明の圧電体素子の分布図である。図10から
判るように、圧電体層41は(111)面方位と(00
1)面方位の結晶を備えている。これらの面方位を有す
る結晶の挙動が圧電体素子の電圧依存性を決定する。
【0060】図11および図12は、従来例と本発明に
おける圧電体素子における(001)面方位の結晶の分
極軸が電極面となす角度を、それぞれ正極点図測定法で
測定したものである。横軸は電極面と分極軸方向のなす
角度を示し、縦軸はカウント数、つまり結晶構造の存在
率に対応している。従来例の圧電体素子では、図11か
ら判るように(001)面方位の結晶方向が77度前後
付近に集中している。すなわち結晶の分極軸が電場に対
して10度以上傾いているものが大部分である。これに
対し本発明の圧電体素子は、図12から判るように(0
01)面方位の結晶の分極軸方向が90度に近くなるほ
ど増えている。
【0061】図13および図14は、従来例と本発明に
おける圧電体素子における(111)面方位の結晶軸が
電極面となす角度を、それぞれ正極点図測定法で測定し
たものである。図13と図14とを比較してもほとんど
差が無いことから、(111)面方位を有する結晶軸方
向については従来例と本発明の圧電体素子との間で差が
出ないことが判る。これらの測定結果から、圧電体素子
を構成する結晶のうち、(001)面方位を有する結晶
が圧電体素子の電圧依存性に影響を与えることが判っ
た。したがって(001)面方位を有する結晶の分極軸
方向を電場に平行に設定することにより、電圧依存性の
少ない圧電体素子やインクジェット式記録ヘッドを製造
できるのである。
【0062】
【発明の効果】本発明の圧電体素子によれば、高い電圧
まで圧電特性を備えるための結晶構造を備えたので、振
動量の制御を容易にすることが可能である。
【0063】本発明のインクジェット式記録ヘッドによ
れば、高い電圧まで圧電特性に変化のない結晶構造の圧
電体素子を備えたので、インク吐出量の制御を容易にし
圧電体素子の汎用性を高めることが可能である。
【0064】本発明の圧電体素子の製造方法によれば、
高い電圧まで圧電特性に変化のない結晶構造に圧電体素
子を形成することができるので、振動量の制御を容易に
する圧電体素子を製造することが可能である。
【0065】本発明のインクジェット式記録ヘッドの製
造方法によれば、高い電圧まで圧電特性に変化のない結
晶構造の圧電体素子を形成してインクジェット式記録ヘ
ッドを製造する方法を提供したので、インクの吐出量を
容易に制御可能にし汎用性を高めることのできるインク
ジェット式記録ヘッドを製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電体素子を構成する圧電体層の結晶
構造を説明する断面図である。
【図2】本発明のインクジェット式記録ヘッドの分解斜
視図である。
【図3】本発明のインクジェット式記録ヘッドの斜視図
一部断面図である。
【図4】酢酸系溶液を製造するための工程図である。
【図5】本発明のインクジェット式記録ヘッド(圧電体
素子)の製造方法を説明する製造工程断面図である。
【図6】本発明のインクジェット式記録ヘッドの製造方
法を説明する製造工程断面図である。
【図7】アルコールアミン系溶液を製造するための工程
図である。
【図8】ペロブスカイト結晶構造と結晶方位の説明図で
ある。
【図9】本発明の圧電体素子と従来例の圧電体素子とに
おける電圧依存性特性図である。
【図10】本発明の圧電体素子におけるX線回折分析図
である。
【図11】X線の正極点図測定法で測定した結果を示す
図であり、従来例の圧電体素子における(001)面方
位の柱状結晶の分極軸方向が電極面となす角度を説明す
る特性図である。
【図12】X線の正極点図測定法で測定した結果を示す
図であり、本発明の圧電体素子における(001)面方
位の柱状結晶の分極軸方向が電極面となす角度を説明す
る特性図である。
【図13】X線の正極点図測定法で測定した結果を示す
図であり、従来例の圧電体素子における(111)面方
位の柱状結晶の結晶軸方向が電極面となす角度を説明す
る特性図である。
【図14】X線の正極点図測定法で測定した結果を示す
図であり、本発明の圧電体素子における(111)面方
位の柱状結晶の結晶軸方向が電極面となす角度を説明す
る特性図である。
【符号の説明】
1…インクジェット式記録ヘッド 10…ノズル板 20…圧力室基板 21…圧力室(キャビティ) 30…振動板 32…下部電極 40…圧電体素子 41…圧電体層 411〜41n…薄膜層 42…上部電極

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下部電極および上部電極の間に結晶化さ
    れた圧電体層を備える圧電体素子において、 前記圧電体層における結晶の分極軸方向が前記下部電極
    および上部電極間に生ずる電界の方向と略平行になるよ
    うに設定されていることを特徴とする圧電体素子。
  2. 【請求項2】 下部電極および上部電極の間に結晶化さ
    れた圧電体層を備える圧電体素子において、 前記圧電体層を構成する結晶が(001)面方位を有
    し、かつその分極軸方向が前記下部電極および上部電極
    間に生ずる電界の方向と略平行になるように設定されて
    いることを特徴とする圧電体素子。
  3. 【請求項3】 前記圧電体層は、複数の積層された薄膜
    層を備えており、当該薄膜層一層当たりの厚みが10n
    m以上であって100nm以下に形成されている請求項
    1または請求項2のいずれか一項に記載の圧電体素子。
  4. 【請求項4】 前記圧電体層は、ジルコニウム酸チタン
    酸鉛(Pb(Zr、Ti)O:PZT)、チタン酸鉛
    ランタン((Pb,La)TiO)、ジルコニウム酸
    鉛ランタン((Pb,La)ZrO:PLZT)また
    はマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(P
    b(Mg、Nb)(Zr、Ti)O:PMN−PZ
    T)のうちいずれかの圧電性セラミックスを含む請求項
    1または請求項2のいずれか一項に記載の圧電体素子。
  5. 【請求項5】 圧力室基板に設けられた圧力室に体積変
    化を生じさせることによって前記圧力室に設けられたノ
    ズルからインクを吐出可能に構成されたインクジェット
    式記録ヘッドにおいて、 前記圧力室に体積変化を生じさせる駆動手段として請求
    項1乃至請求項4に記載された圧電体素子を備えたこと
    を特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  6. 【請求項6】 電気機械変換作用を示す圧電体素子を製
    造するための圧電体素子の製造方法であって、 圧電性セラミックスのモル濃度が0.1mol/l乃至
    0.45mol/lになるように調整した圧電体層の前
    駆体を下部電極膜上に塗布して薄膜層を複数積層する工
    程と、 積層された前記薄膜層上に上部電極膜を形成する工程
    と、を備えたことを特徴とする圧電体素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記圧電体層の前駆体は、圧電性セラミ
    ックス1molに対してポリエチレングリコールを0.
    5mol以上で5mol以下含有させて生成したもので
    ある請求項6に記載の圧電体素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記圧電体層の前駆体は、圧電性セラミ
    ックス1molに対してポリエチレングリコールを0.
    75mol含有させて生成したものである請求項6に記
    載の圧電体素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記薄膜層を複数積層する工程では、所
    定の厚みに前記圧電体層の前駆体を塗布する塗布工程
    と、塗布された前記前駆体を乾燥させ脱脂する乾燥・脱
    脂工程と、により各前記薄膜層を形成し、さらに当該薄
    膜層を一定総数積層するたびにこれら一定数積層された
    薄膜層に高速熱処理を施して結晶化させる請求項6に記
    載の圧電体素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記圧電体層の前駆体を塗布する塗布
    工程では10nm以上であって120nm以下の厚みで
    前記前駆体を塗布する請求項9に記載の圧電体素子の製
    造方法。
  11. 【請求項11】 前記高速熱処理は、650℃で5分間
    加熱し次いで900℃で1分間加熱することにより行う
    請求項9に記載の圧電体素子の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記薄膜層を複数積層する工程では、
    前記薄膜層を16層積層し、当該薄膜層を4層積層する
    たびに前記高速熱処理を施す請求項9に記載の圧電体素
    子の製造方法。
  13. 【請求項13】 圧力室基板に設けられた圧力室に体積
    変化を生じさせることによって前記圧力室に設けられた
    ノズルからインクを吐出可能に構成されたインクジェッ
    ト式記録ヘッドにおいて、 前記圧力室基板に絶縁膜を形成する工程と、 前記絶縁膜に請求項6乃至請求項12のいずれか一項に
    記載の圧電体素子の製造方法により圧電体素子を形成す
    る工程と、 前記圧電体素子を前記圧力室に体積変化を生じさせるこ
    とが可能な形状に整形する工程と、 前記圧力室基板に前記圧力室を形成する工程と、を備え
    たことを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造
    方法。
JP12373498A 1998-05-06 1998-05-06 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法 Withdrawn JPH11317550A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12373498A JPH11317550A (ja) 1998-05-06 1998-05-06 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12373498A JPH11317550A (ja) 1998-05-06 1998-05-06 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11317550A true JPH11317550A (ja) 1999-11-16

Family

ID=14868030

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP12373498A Withdrawn JPH11317550A (ja) 1998-05-06 1998-05-06 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11317550A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100502825B1 (ko) * 2002-11-13 2005-07-22 기성금속 주식회사 전기장 하에서 결정축이 배향된 압전 세라믹 및 그 제조방법
JP2008010880A (ja) * 2007-07-09 2008-01-17 Seiko Epson Corp 圧電体膜の製造方法、圧電体素子の製造方法、インクジェット式記録ヘッドの製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100502825B1 (ko) * 2002-11-13 2005-07-22 기성금속 주식회사 전기장 하에서 결정축이 배향된 압전 세라믹 및 그 제조방법
JP2008010880A (ja) * 2007-07-09 2008-01-17 Seiko Epson Corp 圧電体膜の製造方法、圧電体素子の製造方法、インクジェット式記録ヘッドの製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4122564B2 (ja) 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法
US7478558B2 (en) Piezoelectric element, ink jet head, angular velocity sensor, method for manufacturing the same, and ink jet recording apparatus
US20050280335A1 (en) Piezoelectric element, ink jet head, angular velocity sensor, method for manufacturing the same, and ink jet recording apparatus
JP3902023B2 (ja) 圧電アクチュエータ、液滴噴射ヘッド、およびそれを用いた液滴噴射装置
JP3567977B2 (ja) 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッド、プリンタ、及び圧電体素子の製造方法
JP3498836B2 (ja) 圧電体素子およびその製造方法
JPH10287468A (ja) 圧電性薄膜、その製造方法、圧電体素子およびインクジェットプリンタヘッド
JP2004186646A (ja) 圧電素子、インクジェットヘッド及びこれらの製造方法、並びにインクジェット式記録装置
JP4875827B2 (ja) 圧電薄膜及びその製造方法、並びにその圧電薄膜を備えた圧電素子、並びにその圧電素子を用いたインクジェットヘッド、並びにそのインクジェットヘッドを備えたインクジェット式記録装置
JP2002084012A (ja) 圧電体膜及びこれを備えた圧電体素子
JP2001203404A (ja) 強誘電体薄膜素子の製造方法及び加熱処理装置
JP3695625B2 (ja) 圧電体素子およびその製造方法
JP4178578B2 (ja) 圧電体素子の製造方法
JPH11317550A (ja) 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法
JPH11307834A (ja) 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法
JP2000294844A (ja) 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法
JP3750413B2 (ja) 圧電体素子の製造方法及びインクジェット式記録ヘッドの製造方法
JP3899639B2 (ja) 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッド
JP2001237467A (ja) 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッド及びこれらの製造方法並びにインクジェットプリンタ
JP2008153674A (ja) インクジェット式記録ヘッド及び圧電体素子
JP4289429B2 (ja) インクジェット式記録ヘッド及び圧電体素子
JP3646773B2 (ja) 圧電体素子、インクジェット式記録ヘッドおよびそれらの製造方法
JP4836003B2 (ja) 圧電体膜の製造方法、圧電体素子の製造方法、インクジェット式記録ヘッドの製造方法
JP4737027B2 (ja) 圧電体素子の製造方法、及びインクジェット式記録ヘッドの製造方法
JP2000299513A (ja) 圧電体素子およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20050802