JPH11307861A - 半導体レーザ素子およびその製造方法 - Google Patents

半導体レーザ素子およびその製造方法

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JPH11307861A
JPH11307861A JP10109735A JP10973598A JPH11307861A JP H11307861 A JPH11307861 A JP H11307861A JP 10109735 A JP10109735 A JP 10109735A JP 10973598 A JP10973598 A JP 10973598A JP H11307861 A JPH11307861 A JP H11307861A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 共振器端面におけるCOD劣化を抑制して、
高出力で長期安定動作する半導体レーザ素子を実現す
る。 【解決手段】 超高真空中での劈開により半導体レーザ
バー17の共振器端面を形成した後、この共振器端面
に、電子ビーム蒸着器22を用いて半導体材料又は誘電
体材料を堆積させる。その後、熱処理を施して変成層2
4を形成する。変成層24は、共振器端面に堆積させた
半導体元素又は誘電体元素と、共振器端面を構成する半
導体元素とを含む組成を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学損傷による共
振器端面の劣化が抑制され高出力安定動作を実現する半
導体レーザ素子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】AlGaAs系及びAlGaInP系の半導体材料に
よって構成された半導体レーザ素子において、光出力の
増加に伴って共振器端面の劣化(光学損傷、Catastroph
ic Optical Damage ; COD)が生じることが知ら
れている。この光学損傷は高出力動作に伴った共振器端
面の温度上昇に起因している。つまり、共振器端面では
表面準位を介してレーザ光が吸収され、局所的に発熱す
る。また、この光吸収は共振器端面の酸化及び空格子等
の点欠陥の発生によって増加する。温度上昇によって端
面近傍の禁制帯幅が縮小して更にレーザ光の吸収が増加
し、端面温度が上昇する。この正帰還ループによって、
ついには共振器端面が溶融して劣化が生じる。
【0003】従来、共振器端面での光吸収を抑制するた
めに、レーザ光に対して透明な材料を共振器端面に形成
する種々の窓構造が試みられている。例えば、1989年の
アイ・イー・イー・イー・ジャーナル・クォンタム・エ
レクトロニクス(IEEE J.Quantum Electron.)第25
巻、1495〜1499頁の報告によれば、共振器端面での光吸
収を抑制するための窓構造を形成するために、活性領域
における共振器端面のパターニング、選択エッチング、
及び埋め込み再成長のプロセスが施されている(図1
5)。
【0004】また、共振器端面での酸化膜に起因した光
吸収を抑制するために、超高真空中での劈開プロセスが
試みられている。例えば米国特許第5063173号によれ
ば、超高真空中でレーザウェハ52を劈開することによ
って共振器端面を形成し、Si等の材料を堆積させること
によって共振器端面における半導体表面に酸化膜が形成
されることを抑制している(図16)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従
来、半導体レーザの端面劣化を抑制するために、端面で
の光吸収を抑制する種々の窓構造が試みられてきた。し
かし、この窓構造の形成には活性層領域における共振器
端面のパターニング、選択エッチング、及び埋め込み再
成長の加工プロセスが必要となる。Al系の材料を用いた
半導体レーザでは、再成長界面に強固な酸化膜が形成さ
れるために再成長界面は界面準位の多い窓構造となる。
そして、これらの界面準位は光吸収を増加させるため
に、COD劣化を効果的に抑制することはできない。ま
た、窓構造を加えることによってレーザ素子構造は大変
複雑になり、各工程の歩留まりによって生産性を著しく
低下させる欠点がある。
【0006】一方、共振器端面での酸化膜に起因した光
吸収を抑制するため、超高真空中での劈開プロセスも試
みられてきた。超高真空中で共振器端面を被覆すること
によって直接レーザ端面が酸化することは抑制できる。
しかし、表面準位に起因した光吸収を抑制するために
は、レーザ光に対してバンドギャップの大きな材料で、
欠陥なく結晶成長する必要がある。よって、共振器端面
を被覆しただけでは、レーザ素子の光出力及び動作時間
の増加によって共振器端面における被覆材料と半導体材
料間で相互拡散、及び点欠陥の発生が生じる。これら
は、光吸収を増加させるために、やがては端面劣化を引
き起こす。
【0007】本発明では、半導体レーザ素子の共振器端
面における酸化膜の形成を抑制すると同時に、共振器端
面の熱的、及び化学的安定性を向上させることによって
COD劣化を抑制し、高出力で長期安定動作を実現する
ものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明によれば、一対の共振器端面を有する半導体レーザ素
子において、少なくとも一つの共振器端面が保護膜によ
り被覆されてなり、該保護膜は、該共振器端面を構成す
る第一の半導体元素と、これと異なる種類の第二の半導
体元素または誘電体元素とを含有する変成層を含むこと
を特徴とする半導体レーザ素子が提供される。
【0009】本発明の半導体レーザ素子は、(a)共振
器端面を構成する第一の半導体元素、および(b)
(a)と異なる種類の第二の半導体元素または誘電体元
素を含有する変性層を含んだ保護膜により、共振器端面
が被覆されている。この変性層は熱的、化学的に安定な
ため、大気中での酸化反応に伴った酸素原子の内部拡散
を抑制するとともに、酸化膜形成に伴った表面での点欠
陥の発生及び結晶内部への移動を抑制することができ
る。このため、酸化膜の形成、不純物の内部拡散、及び
点欠陥の増加に伴った共振器端面での光吸収を低減し、
COD劣化の誘発が抑制される。
【0010】また本発明によれば、一対の共振器端面を
有する半導体レーザ素子において、少なくとも一つの共
振器端面が、該共振器端面を構成する第一の半導体元素
と異なる種類の第二の半導体元素または誘電体元素を含
む膜により被覆され、該膜と該共振器端面の界面近傍に
変成層を有し、該変成層は、前記共振器端面中に前記第
二の半導体元素もしくは前記誘電体元素が拡散して形成
された層、および/または、前記膜中に前記第一の半導
体元素が拡散して形成された層からなることを特徴とす
る半導体レーザ素子が提供される。
【0011】この発明の半導体レーザ素子は、前記膜と
前記共振器端面の界面近傍に、一方から他方へ元素が拡
散されてなる変成層を有している。このような構成の変
性層は、熱的・化学的安定性に特に優れ、酸素原子の内
部拡散や酸化膜形成に伴う点欠陥の発生・移動を効果的
に抑制でき、さらに、簡便な工程で安定製造できるとい
う利点も有する。
【0012】以上述べた半導体レーザ素子において、共
振器端面を構成する第一の半導体元素と、第二の半導体
元素または誘電体元素とが化学的に結合した分子を変性
層中に含んでいても良い。これにより、熱的・化学的安
定性がさらに向上する場合がある。
【0013】また本発明によれば、一対の共振器端面を
有する半導体レーザ素子の製造方法において、少なくと
も一つの共振器端面を超高真空中での劈開によって形成
した後、該共振器端面に、該共振器端面を構成する第一
の半導体材料と異なる種類の第二の半導体材料または誘
電体材料を堆積し、その後、該共振器端面に対して熱処
理を施すことを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法
が提供される。
【0014】また本発明によれば、一対の共振器端面を
有する半導体レーザ素子の製造方法において、少なくと
も一つの共振器端面を超高真空中での劈開によって形成
した後、該共振器端面に、該共振器端面を構成する第一
の半導体材料と異なる種類の第二の半導体材料または誘
電体材料を堆積し、その後、該共振器端面に対してプラ
ズマ処理を施すことを特徴とする半導体レーザ素子の製
造方法が提供される。
【0015】これらの半導体レーザ素子の製造方法によ
れば、共振器端面が超高真空中での劈開によって形成さ
れるため、端面に酸化膜等の不純物層が形成されること
を防止できる。これにより共振器端面に直接、共振器端
面を構成する半導体材料と異なる半導体材料または誘電
体材料が堆積されることとなる。このため、堆積膜およ
び/または共振器端面の構成元素の拡散により、変成層
を形成することができるのである。上記構成元素の拡散
は、共振器端面を熱処理またはプラズマ処理することに
より、熱的または化学的エエルギーを与えることにより
行われる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明において、「第二の半導体
元素または誘電体元素」は、Si、Ge、CaF2、MgF2、ZnS
e、Si3N4、TaSi2のいずれかであることが好ましい。こ
のような元素を選択することにより、熱的・化学的安定
性に特に優れた変成層が得られ、酸素原子の内部拡散や
酸化膜形成に伴う点欠陥の発生・移動を効果的に抑制で
きる。
【0017】本発明の半導体レーザ素子の製造方法にお
いて、第二の半導体材料または誘電体材料は、室温〜3
00℃程度の温度で堆積させることができる。堆積方法
としては、たとえば電子ビーム蒸着法を用いることが好
ましい。数nm程度の薄膜を容易に形成することができ
るからである。
【0018】本発明の半導体レーザ素子の製造方法にお
ける熱処理は、超高真空中にて行う熱アニール処理であ
ることが好ましい。ここで、「超高真空」の真空度は、
好ましくは10-8torr以下(圧力が10-8torr以下、と
の意味)、さらに好ましくは10-9torr以下とする。こ
のようにすることによって変成層表面に酸化膜が形成さ
れることが防止される。また加熱温度は、好ましくは1
50℃以上750℃以下、さらに好ましくは500℃以
上650℃以下とする。150℃以上とすることによっ
て元素の拡散が良好に行われ、変性層が好適に形成され
る。また750℃以下とすることによって、熱処理に伴
うレーザを構成する半導体層のドーピングプロファイル
の変動を防止できる。
【0019】また、上記熱処理は、AsもしくはPの分
子線、またはラジカル水素を照射しながら行うことが好
ましい。共振器端面近傍における点欠陥の発生を有効に
防止できるからである。
【0020】
【実施例】以下、実施例により、本発明の実施の形態に
ついて説明する。
【0021】実施例1 初めに、InGaAs歪量子井戸構造を有する発振波長0.98μ
m帯の横モード制御型半導体レーザウェハの製造方法に
ついて述べる。
【0022】図1に、半導体レーザウェハの断面構造を
示す。半導体レーザウェハは、常圧MOVPE装置によって
成長させた。SiドープしたGaAs(001)基板1上にGaAs:S
iバッファー層2(不純物濃度=1×1018cm-3)を0.5μ
m、Al0.4Ga0.6As:Siクラッド層3(不純物濃度=1×10
17cm-3)を2μm、成長温度700℃、V/III比100で成長さ
せた。次に、成長温度を680℃、V/III比を80でAl0.2Ga
0.8As光ガイド層4を40nm、GaAsバリア層5を20nm、In
0.24Ga0.76As活性層6を4.5nm、GaAsバリア層7を5nm、
In0.24Ga0.76As活性層8を4.5nm、GaAsバリア層9を20n
m順次成長させた。続いて、Al0.2Ga0.8As光ガイド層1
0を40nm、Al0.4Ga0.6As:Mgクラッド層11(不純物濃
度=1×1018cm-3)を1.5μm、GaAs:Mgキャップ層12
(不純物濃度=1×1019cm-3)を1μm、気相成長させた。
【0023】次に、図2、3を用いて上述の半導体レー
ザウェハを横モード制御型レーザに加工する工程を示
す。図2は、[-110]方向のメサストライプが形成された
後の半導体レーザウェハの(-110)断面図を示す。まず、
図1に示した半導体レーザウェハの最上層のGaAsキャッ
プ層にSiO2を成膜し、フォトリソグラフィ技術によって
図2に示す[-110]方向に幅4μmのSiO2ストライプ13を
形成した。このSiO2ストライプをマスクとする選択エッ
チング技術によってAl0.4Ga0.6As:Mgクラッド層11が
0.3μm残る深さまでエッチングして、図2の断面図に示
すメサストライプが形成された。
【0024】続いて、上記SiO2ストライプをマスクとし
た選択成長技術によって、図3に示すようなメサストラ
イプの側部を膜厚0.8μmのAl0.6Ga0.4As:Si電流ブロッ
ク層14(不純物濃度=1×1018cm-3)、及び膜厚0.8μm
のGaAs:Si電流ブロック層15(不純物濃度=1×1018cm
-3)で順次埋め込み成長を行う。更に、SiO2マスクを除
去した後、膜厚1μmのGaAs:Mgキャップ層16(不純物
濃度=1×1019cm-3)を成長させた。最後に、このウェハ
の両面にコンタクト電極をそれぞれ蒸着して、横モード
制御型半導体レーザウェハが得られた。
【0025】上記半導体レーザウェハ17を、超高真空
チャンバー21内のレーザバーホルダー18により保持
し、劈開用プレス19で、ストライプに直交する[110]
方向に劈開した(図4)。劈開は10-10程度の超高真
空中にて行った。このようにして(-110)面を共振器端
面とするレーザバーが形成される。図4(a)および
(b)において、点線部分は(-110)面に相当し、レー
ザウェハ17中に描かれた水平方向に走る複数の直線
は、図3におけるキャップ層12の凸部に対応してい
る。
【0026】その後、レーザバーを大気及び低真空領域
に露出することなく、電子ビーム蒸着器22によって膜
厚3nmのSi膜を250℃にて堆積させた(図5)。図5
(b)は、複数のレーザバーが配置されたレーザウェハ
の上面図であり、図中、水平方向に走る複数の直線は、
図3におけるキャップ層12の凸部に対応している。こ
こで、レーザバーは劈開後も超高真空中に保持されてい
るために、共振器端面には酸化膜等の不純物層は存在し
ない。
【0027】続いて、水素ラジカル23を照射しなが
ら、加熱ヒータ20によりレーザバーを30分間、400℃
で加熱した。水素ラジカルの照射は熱アニール処理中に
共振器端面近傍より発生する点欠陥の増加を抑制する。
また、点欠陥はV族原子の脱離に起因して発生すること
から、熱アニール中に構成されているV族分子線、この
場合As分子線を照射することも点欠陥の発生を抑制する
ために有効である。この熱アニール処理によって共振器
端面の半導体層とSi層とが熱拡散過程を伴い変性層24
が形成される。共振器端面に変成層を形成することによ
って、大気中にレーザバーを露出した場合でも、共振器
端面に酸化膜の形成、また、酸化に伴った酸素原子の拡
散が効果的に抑制される。つまり、共振器端面には熱
的、及び化学的に安定な変性層が形成されていることか
ら、レーザ素子を高出力で長時間動作させても、端面劣
化を誘発することはない。なお、変性層の形成において
はSi以外に、Ge、CaF2、MgF2、ZnSe、Si3N4、TaSi2など
を用いることができる。
【0028】次に、スパッタ装置を用いて、レーザバー
の共振器端面にAl2O3膜25、及びAl2O326及びアモル
ファスSi27の多層膜をそれぞれ堆積させて、3%−95
%の光反射率を得た(図6)。最後に、劈開によってレ
ーザバーを個々のレーザ素子に分割して、ヒートシンク
に融着することによって本発明のレーザ素子を完成させ
た。
【0029】図7に、本発明によって共振器端面に変成
層を形成した0.98μm帯半導体レーザ素子(A)と変成
層を形成しないレーザ素子(B)のCODレベルの変化
を示す。レーザ素子は、雰囲気温度50℃、光出力250mW
で動作させ、各動作時間において電流−光出力特性から
CODレベルを測定した。変成層を形成しなかったレー
ザ素子は、動作時間の増加に伴ってCODレベルの低下
が観測された。しかし、共振器端面に変成層を形成した
レーザ素子のCODレベルは、低下することなくほぼ一
定の値を示した。これより、共振器端面への変成層の形
成がCOD劣化を効果的に抑制していることがわかる。
【0030】本発明は、0.98μm帯半導体レーザだけで
なく、AlGaInAsP系の材料により構成されるその他の発
振波長の半導体レーザ素子(0.6〜0.8μm帯半導体レー
ザ素子)にも適用可能である。
【0031】実施例2 本発明を発振波長0.6μm帯のAlGaInP系半導体レーザに
応用した実施例を以下に説明する。初めに、レーザウェ
ハの製造方法について述べる。
【0032】図8に、半導体レーザウェハの断面構造を
示す。半導体レーザウェハは、減圧MOVPE法によって成
長成長させた。SiドープしたGaAs(001)基板28上にGaA
s:Siバッファー層29(不純物濃度=1×1018cm-3)を
0.5μm、(Al0.6Ga0.40.5In0.5P:Siクラッド層30
(不純物濃度=5×1017cm-3)を1μm、Ga0.5In0.5P活
性層31を0.1μm、(Al0.6Ga0.40.5In0.5P:Znクラ
ッド層32(不純物濃度=5×1017cm-3)を1μm、GaA
s:Znキャップ層33(不純物濃度=6×1018cm-3)を0.
5μm順次気相成長させた。このとき、成長温度700℃、
圧力100Torr、V/III比160で成長を行う。
【0033】次に、図9、10を用いて上述の半導体レ
ーザウェハを横モード制御型レーザに加工する工程を示
す。図9は、[-110]方向のメサストライプが形成された
後の半導体レーザウェハの(-110)断面図を示す。まず、
図8に示した半導体レーザウェハの最上層のGaAsキャッ
プ層にSiO2を成膜し、フォトリソグラフィ技術によって
図9に示す[-110]方向に幅4μmのSiO2ストライプ34を
形成した。このSiO2ストライプをマスクとする選択エッ
チング技術によって(Al0.6Ga0.40.5In0.5P:Znクラ
ッド層が0.5μm残る深さまでエッチングして、図9の断
面図に示すメサストライプが形成された。
【0034】続いて、上記SiO2ストライプをマスクとし
た選択成長技術によって、図10に示すようなメサスト
ライプの側部を膜厚1μmのGaAs:Si電流ブロック層35
(不純物濃度=1×1018cm-3)で埋め込み成長を行う。更
に、SiO2マスクを除去した後、膜厚1μmのGaAs:Znキャ
ップ層36(不純物濃度=1×1019cm-3)を成長させた。
最後に、このウェハの両面にコンタクト電極をそれぞれ
蒸着して、横モード制御型半導体レーザウェハが得られ
た。
【0035】上記半導体レーザウェハ37を、超高真空
チャンバー41内のレーザバーホルダー38で保持し、
劈開用プレス39により、ストライプに直交する[110]
方向に劈開した(図11)。劈開は10-10程度の超高
真空中にて行った。このようにして(-110)面を共振器
端面とするレーザバーが形成された。図11(a)およ
び(b)において、点線部分は(-110)面に相当し、レ
ーザウェハ37中に描かれた水平方向に走る複数の直線
は、図10におけるキャップ層36の凹部に対応してい
る。
【0036】その後、レーザバーを大気及び低真空領域
に露出することなく、電子ビーム蒸着器42によって膜
厚15nmのGe膜を250℃で堆積させた(図12
(b))。図12(b)は、複数のレーザバーが配置さ
れたレーザウェハの上面図であり、図中、水平方向に走
る複数の直線は、図10におけるキャップ層36の凹部
に対応している。
【0037】次に、スパッタ装置内におけるArプラズマ
中に上記レーザバーを加熱ヒータ40により200℃で20
分間加熱した。共振器端面に堆積させたGe膜は、Arプラ
ズマの衝突エネルギーによって共振器端面近傍では、半
導体層とGe層とが拡散過程を伴い変性層43が形成され
る(図12(b))。ここで形成された変成層は、熱的及
び化学的に安定な層であるため、レーザ素子を高出力で
長時間動作させても端面劣化を誘発することはない。な
お、変性層の形成においては、Ge以外に、Si、CaF2、Mg
F2、ZnSe、Si3N4、TaSi2などを用いることができる。
【0038】続いて、スパッタ装置を用いて、レーザバ
ーの共振器端面にAl2O3膜44、及びAl2O345及びアモ
ルファスSi46の多層膜をそれぞれ堆積させて、7%−9
5%の光反射率を得た(図13)。最後に、劈開によっ
てレーザバーを個々のレーザ素子に分割して、ヒートシ
ンクに融着することによって本発明のレーザ素子を完成
させた。
【0039】図14に、本発明によって共振器端面に変
成層を形成した0.6μm帯半導体レーザ素子(A)と変成
層を形成しないレーザ素子(B)のCODレベルの変化
を示す。レーザ素子は、雰囲気温度70℃、光出力30mWで
動作させ、各動作時間において電流−光出力特性からC
ODレベルを測定した。変成層を形成しなかったレーザ
素子は、動作時間の増加に伴ってCODレベルの低下が
観測された。しかし、共振器端面に変成層を形成したレ
ーザ素子のCODレベルは、低下することなくほぼ一定
の値を示した。これより、共振器端面への変成層の形成
がCOD劣化を効果的に抑制していることがわかる。
【0040】本発明は、0.6μm帯半導体レーザだけで
なく、AlGaInAsP系の材料により構成されるその他の発
振波長の半導体レーザ素子(0.7〜0.9μm帯半導体レー
ザ素子)にも適用可能である。
【0041】
【発明の効果】本発明では、超高真空中で共振器端面を
形成することから、共振器端面には酸化膜等の不純物層
は存在しない。この清浄な共振器端面の表面に変性層を
形成することによって、大気中でも酸素原子の内部拡散
のない、熱的及び化学的に安定な共振器端面を実現する
ことができる。つまり、半導体レーザ素子を高出力で長
時間動作させた場合でも、共振器端面における相互拡
散、点欠陥の発生を抑制することから、COD劣化を効
果的に防止することができる。
【0042】更に、レーザ素子の活性領域における共振
器端面のパターニング、選択エッチング、及び埋め込み
再成長の加工プロセスを行わないことから、レーザ素子
の構造を複雑にすることはなく、また、生産性を低下さ
せることもない。また、多種多様な半導体レーザ素子に
おいて同一プロセスにより幅広い適応性を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体レーザウェハの層構造を示した図であ
る。
【図2】半導体レーザウェハをSiO2ストライプによって
選択エッチングしたときの断面図である。
【図3】選択エッチングした半導体レーザウェハに埋め
込み再成長させたときの断面図である。
【図4】半導体レーザバーの共振器端面形成における劈
開工程を説明する図である。
【図5】半導体レーザバーへのSi膜の堆積及び水素ラジ
カルの照射を説明する図である。
【図6】半導体レーザバーにおいて、誘電体膜コーティ
ングを説明する上面図である。
【図7】本発明および従来技術のレーザ素子のCODレ
ベルの変化を説明する図である。
【図8】半導体レーザウェハの層構造を示した図であ
る。
【図9】半導体レーザウェハをSiO2ストライプによって
選択エッチングしたときの断面図である。
【図10】選択エッチングした半導体レーザウェハに埋
め込み再成長させたときの断面図である。
【図11】半導体レーザバーの共振器端面形成における
劈開工程を説明する図である。
【図12】半導体レーザバーへのGe膜の堆積及び水素ラ
ジカルの照射を説明する図である。
【図13】半導体レーザバーにおいて、誘電体膜コーテ
ィングを説明する図である。
【図14】本発明および従来技術のレーザ素子のCOD
レベルの変化を説明する図である。
【図15】従来例による半導体レーザ素子の製造方法を
説明するための図である。
【図16】従来例による半導体レーザ素子の製造方法を
説明するための図である。
【符号の説明】
1 GaAs(001)基板 2 GaAs:Siバッファー層 3 Al0.4Ga0.6As:Siクラッド層 4 Al0.2Ga0.8As光ガイド層 5 GaAsバリア層 6 In0.24Ga0.76As活性層 7 GaAsバリア層 8 In0.24Ga0.76As活性層 9 GaAsバリア層 10 Al0.2Ga0.8As光ガイド層 11 Al0.4Ga0.6As:Mgクラッド層 12 GaAs:Mgキャップ層 13 SiO2ストライプ 14 Al0.6Ga0.4As:Si電流ブロック層 15 GaAs:Si電流ブロック層 16 GaAs:Mgキャップ層 17 半導体レーザバー 18 レーザバーホルダー 19 劈開用プレス 20 加熱ヒータ 21 超高真空チャンバー 22 電子ビーム蒸着器 23 ラジカル水素源 24 変成層 25 Al2O3膜 26 Al2O3膜 27 アモルファスSi膜 28 GaAs(001)基板 29 GaAs:Siバッファー層 30 (Al0.6Ga0.40.5In0.5P:Siクラッド層 31 Ga0.5In0.5P活性層 32 (Al0.6Ga0.40.5In0.5P:Znクラッド層 33 GaAs:Znキャップ層 34 SiO2ストライプ 35 GaAs:Si電流ブロック層 36 GaAs:Znキャップ層 37 半導体レーザバー 38 レーザバーホルダー 39 劈開用プレス 40 加熱ヒータ 41 超高真空チャンバ 42 電子ビーム蒸着器 43 変成層 44 Al2O3膜 45 Al2O3膜 46 アモルファスSi膜 51 保持器 52 レーザウェハ 53 超高真空チャンバー

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の共振器端面を有する半導体レーザ
    素子において、少なくとも一つの共振器端面が保護膜に
    より被覆されてなり、該保護膜は、該共振器端面を構成
    する第一の半導体元素と、これと異なる種類の第二の半
    導体元素または誘電体元素とを含有する変成層を含むこ
    とを特徴とする半導体レーザ素子。
  2. 【請求項2】 一対の共振器端面を有する半導体レーザ
    素子において、少なくとも一つの共振器端面が、該共振
    器端面を構成する第一の半導体元素と異なる種類の第二
    の半導体元素または誘電体元素を含む膜により被覆さ
    れ、該膜と該共振器端面の界面近傍に変成層を有し、該
    変成層は、前記共振器端面中に前記第二の半導体元素も
    しくは前記誘電体元素が拡散して形成された層、および
    /または、前記膜中に前記第一の半導体元素が拡散して
    形成された層からなることを特徴とする半導体レーザ素
    子。
  3. 【請求項3】 前記第二の半導体元素または誘電体元素
    が、Si、Ge、CaF2、MgF2、ZnSe、Si3N4、TaSi2のいずれ
    かであることを特徴とする請求項1または2に記載の半
    導体レーザ素子。
  4. 【請求項4】 一対の共振器端面を有する半導体レーザ
    素子の製造方法において、少なくとも一つの共振器端面
    を超高真空中での劈開によって形成した後、該共振器端
    面に、該共振器端面を構成する第一の半導体材料と異な
    る種類の第二の半導体材料または誘電体材料を堆積し、
    その後、該共振器端面に対して熱処理を施すことを特徴
    とする半導体レーザ素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記第二の半導体材料または誘電体材料
    が、Si、Ge、CaF2、MgF2、ZnSe、Si3N4、TaSi2のいずれ
    かであることを特徴とする請求項4に記載の半導体レー
    ザ素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記第二の半導体材料または誘電体材料
    を、電子ビーム蒸着法によって堆積させることを特徴と
    する請求項4または5に記載の半導体レーザ素子の製造
    方法。
  7. 【請求項7】 前記熱処理は、超高真空中にて150℃
    以上750℃以下の温度で加熱する熱アニール処理であ
    ることを特徴とする請求項4乃至6いずれかに記載の半
    導体レーザ素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記熱処理を、AsもしくはPの分子
    線、またはラジカル水素を照射しながら行うことを特徴
    とする請求項4乃至7いずれかに記載の半導体レーザ素
    子の製造方法。
  9. 【請求項9】 一対の共振器端面を有する半導体レーザ
    素子の製造方法において、少なくとも一つの共振器端面
    を超高真空中での劈開によって形成した後、該共振器端
    面に、該共振器端面を構成する第一の半導体材料と異な
    る種類の第二の半導体材料または誘電体材料を堆積し、
    その後、該共振器端面に対してプラズマ処理を施すこと
    を特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記第二の半導体材料または誘電体材
    料が、Si、Ge、CaF2、MgF2、ZnSe、Si3N4、TaSi2のいず
    れかであることを特徴とする請求項9に記載の半導体レ
    ーザ素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記第二の半導体材料または誘電体材
    料を、電子ビーム蒸着法によって堆積させることを特徴
    とする請求項9または10に記載の半導体レーザ素子の
    製造方法。
  12. 【請求項12】 前記プラズマ処理は、Arプラズマ処
    理であることを特徴とする請求項9乃至11いずれかに
    記載の半導体レーザ素子の製造方法。
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