JPH11291401A - 建築用板 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】高気密・高断熱工法における、防湿気密シート
の施工は部屋を構成する床、天井、壁面の外側全てに行
なうものである。施工途中に防湿気密シートを損傷し易
く、一か所でも傷または穴を開けてしまうと、気密性能
が低下する。本発明は防湿気密シートを施工中損傷する
ことのない建築用板を提供しようとする。 【解決手段】蒸着によるアルミニウム層２が形成された
合成樹脂フィルム３を、該アルミニウム層２側が木質基
板１に接するように貼着されてなる建築用板。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、構造用パネルを始め、
壁材、床材、建具用または家具用に使用可能な建築用板
に関する。

【０００２】

【従来技術】近年、冷暖房に要するエネルギーの節約と
住み心地の良い居住空間の提供を目的として、室内の空
気および水分が勝手に壁裏、床下等に移動しないよう
に、部屋を構成する床、天井、壁面の全てに防湿気密性
能を有する防湿気密シートを張り、気密性能を付与した
状態で計画的に２４時間換気を行なう高気密・高断熱工
法が実施されるようになった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】このような高気密・高
断熱工法における、防湿気密シートの施工は部屋を構成
する床、天井、壁面の外側全てに行なうものであり、施
工が煩雑で手間がかかり、施工途中に防湿気密シートを
損傷し易く、一か所でも傷または穴を開けてしまうとい
う気密性能が低下してしまうという問題を有していた。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明はこのような問題
点を解決するため、防湿気密シートを施工した状態と同
等以上の防湿性能を有し、現場での施工手間を減少させ
ることを目的として鋭意研究を重ねた結果、本願発明に
到達したものである。

【０００５】すなわち本発明は、蒸着によるアルミニウ
ム層が形成された合成樹脂フィルムを、該アルミニウム
層側が木質基板に接するように貼着されてなる建築用板
である。

【０００６】

【作用】本発明の建築用板によれば、蒸着によるアルミ
ニウム層が形成された合成樹脂フィルムを、該アルミニ
ウム層側が木質基板に貼着されることにより、高気密・
高断熱工法に用いられる防湿気密シートと同等以上の防
湿性能を有する板材となる。

【０００７】このため、高気密・高断熱工法の構造パネ
ルとして使用すれば、パネル間あるいは構造材との固定
部においてのみ、防湿気密テープあるいは合成樹脂フォ
ームの充填などの防湿・気密処理をすることで、気密性
能を確保することができ、施工期間が著しく短縮するこ
とができるものである。

【０００８】

【実施例】図１は本発明の建築用板の一例を示すもので
あり、蒸着によりアルミニウム層２が形成された合成樹
脂フィルム３の、アルミニウム層２側が木質基板１に貼
着されるように積層された状態の建築用板を示す。

【０００９】本発明の建築用板を構成する木質基板１と
しては、例えば合板、木削片板、木質繊維板、単板積層
板を単独でまたは任意組み合わせ複合したものを用いる
ことができる。

【００１０】また、木質基板表面には用途に応じ任意化
粧層を形成することができる。この化粧層は、天然木材
を切削して得られる天然突板、人工突板、および不織
布、紙、合成樹脂シートを裏打ちした突板シート、また
は、化粧紙、樹脂含浸紙、不織布、紙、合成樹脂シート
等の化粧シートを、接着剤を用いて接着することにより
形成するか、あるいは木質基板表面に直接塗装または印
刷を施すことにより形成される。また、化粧層の表面
に、上塗り層を設けることもできる。このような化粧層
を設けることにより、表面側からの水分の浸透も防止さ
れることとなり、湿度変化に伴う反り、結露、腐食等の
問題を解決することができるものである。

【００１１】本発明で用いる合成樹脂フィルム３として
は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、
硬質塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフ
タレート等の合成樹脂フィルムを使用することができ
る。合成樹脂フィルムの厚さは１０μｍから３０μｍの
範囲のものを使用することができる。

【００１２】合成樹脂フィルムの厚さが１０μｍより薄
いとアルミニウム層を蒸着しても十分な防湿性能を得る
ことができない、また、３０μｍより厚いものを用いて
も、アルミニウム層を蒸着した状態の防湿性能は同等の
性能しか得られず、単にコストが上昇するだけで好まし
くない。

【００１３】本発明ではこれら合成樹脂フィルム３にア
ルミニウム層２を蒸着したものを使用する。アルミニウ
ムの蒸着は、アルミニウム層と合成樹脂フィルムの複合
的防湿性能を発揮するため、７００Åの蒸着量でアルミ
箔１０μｍ厚さと同等の防湿性能を示すことができる。
アルミニウムの蒸着は、例えば１０^−４ｍｍＨｇ程度の
高度の真空下でアルミニウムを融点以上の温度に加熱す
ることにより、アルミニウムは蒸気となり飛散する。

【００１４】この蒸気中に冷却状態の合成樹脂フィルム
をさらすことにより、アルミニウムの蒸気は合成樹脂フ
ィルムの表面に付着して分子状の微粒子で凝固する。こ
のような方法により合成樹脂フィルム３の表面に非常に
薄いアルミニウムコーティングを行なうことができる。

【００１５】本発明における合成樹脂フィルム３に蒸着
するアルミニウム層２の厚さは、４００Å〜８００Åの
厚さに形成することが好ましい。このような厚さに形成
することにより、防湿気密シートとして使用されている
１００Å厚のポリエチレンフィルムや２００Å厚の塩化
ビニルフィルムの防湿性能、すなわち水蒸気透過率７ｇ
／ｍ^２・２４ｈｒと同等以上の優れた防湿気密性能を示
す。アルミニウム層が４００Åより薄い層では高気密・
高断熱工法において要求される防湿性能を十分に発揮す
ることができない。また８００Åより厚くアルミニウム
層２を形成してもそれ以上防湿性能は向上しない。

【００１６】尚、前記合成樹脂フィルム３の中でも特
に、ポリエチレンテレフタレートは、そのフィルム単独
での水蒸気透過率は１２Åの厚さのシートで７０ｇ／ｍ
^２・２４ｈｒ以上と水蒸気を通しやすいものであるが、
アルミニウムを蒸着することにより水蒸気透過率を格段
と減少させることができる。すなわち、単独のシート状
態ではポリエチレンテレフタレートよりも水蒸気透過率
が低い樹脂シートと比較して、同一厚さのアルミニウム
層を形成した状態では、ポリエチレンテレフタレートの
シートの方がその水蒸気透過率は低くなる。このため他
の樹脂よりも薄いシートで十分な防湿性能を発揮するこ
とができ特に好ましい。

【００１７】さらに、図２に示すようにアルミニウム層
が形成された合成樹脂フィルムは木質基板１の片面だけ
でなく、両面に貼着することもできる。このように、木
質基板１の両側にアルミニウム層が形成された合成樹脂
フィルムを貼着することにより、建築用板の表裏両方向
からの、空気の移動および水分の移動を完全に遮断する
ことが可能となる。また、木質基板の両面に加え四周木
口面にもアルミニウム層が形成された合成樹脂フィルム
を貼着することにより、いずれの方向からの水分の移動
も完全に遮断することができる。

【００１８】また、合成樹脂フィルム３としてポリエチ
レンテレフタレートを用いその表面にアルミニウム層２
を蒸着したアルミニウム層が形成された合成樹脂フィル
ムは、６００Åのアルミニウム層を蒸着したもので、酸
素透過率が６ｃｃｍ^２・２４ｈｒと他の合成樹脂に比べ
優れた酸素透過防止性能を有する。このため、最近室内
で建築部材から放出されるホルムアルデヒドが、人体へ
悪影響を及ぼすことが問題となり、建築部材を形成する
ための板材または芯材としてホルムアルデヒドを放出し
ない材が提供されるようになってきた。

【００１９】しかし、このようなホルムアルデヒドを放
出しない板材または芯材は、その含水率の上昇に伴って
黴の発生および腐食が起き易いため、これらを防止する
ための新たな薬剤の処理を施す必要がある。

【００２０】しかし、本発明の建築用板の構成であれ
ば、アルミニウム層２の蒸着された合成樹脂フィルムの
貼着面から木質基板内部への水分および酸素の通過は遮
断されることとなり、黴および腐食等の問題も発生しな
いものである。

【００２１】また、ホルムアルデヒドを内部に含有する
木質基板であっても、アルミニウム層２の蒸着された合
成樹脂フィルムの貼着面から水分および酸素はもちろ
ん、ホルムアルデヒドの通過も遮断され、木質基板中の
ホルムアルデヒドの放出を抑制することも可能となる。

【００２２】さらに、本発明の建築用板を実際に建築用
パネルとして使用する状態の一例を示したのが図３であ
る。予め一面の長手方向に渡って溝９の形成された縦枠
４ａ，４ｂおよび横枠５ａ，５ｂからパネル枠体６が構
成されている。パネル枠体６を形成したときに、パネル
枠体６の内面に縦枠および横枠の接合部で溝９が連続す
るように各縦枠４ａ，４ｂおよび横枠５ａ，５ｂに形成
する溝９の位置が決められる。

【００２３】さらに、建築用板Ａの四周縁が溝９内に嵌
合固定されることにより、建築用パネル体が形成され
る。また、パネル枠体６の強度を高めるため、図３に示
すように中桟８ａ，８ｂを設けることができる。中桟の
組み込みは、図３の形状に限定されるものではなく、横
桟を複数設けたり、縦桟を複数設けたり、または格子状
に中桟を設けたり任意形状に組み込むことができる。

【００２４】また、断熱性能を高めるために建築用板Ａ
の片面パネル枠体６内に断熱板７を積層することもでき
る。さらに、必要に応じ、断熱板は建築用板Ａの両面に
積層することもできる。

【００２５】図４は図３のＸ−Ｘ′部の断面図を示すも
のである。縦枠４ａ，４ｂに形成された溝９内に建築用
板Ａが嵌合固定されている状態が示されている。この溝
９内部には、図に示すようにシール材１０を設けること
ができる。

【００２６】溝９内部にシール材１０を設けることによ
り、建築用板Ａの木口面にアルミニウム層が形成された
合成樹脂フィルムが貼着されていない状態でも、防湿気
密板の四周縁を溝内部に嵌合した状態では、建築用板Ａ
の木口面はシール材１０により密封され水分を吸収また
は放出することが遮断される。

【００２７】シール材１０としては、シリコーン系、ポ
リサルファイド系、ポリウレタン系、アクリル系、ＳＢ
Ｒ系、ブチルゴム系の合成樹脂からなる不定形のシール
材、または、塩化ビニル系、クロロプレンゴム系、エチ
レンプロピレンゴム系、シリコーンゴム系樹脂の発泡体
または未発泡体などからなる弾性を有する定形シール材
を用いることができる。

【００２８】また、図４の建築用板Ａは木質基板１の断
熱板７側の片側にアルミニウム層が形成された合成樹脂
フィルムが貼着されたものであるが、断熱板７側からの
水分はアルミニウム層が形成された合成樹脂フィルムに
より遮断された木質基板１の面まで到達することはでき
ず、さらに、縦枠４ａ，４ｂとの嵌合部に入り込もうと
する水分もシール材１０により遮断されることとなり、
同建築用パネル体を施工した後に、断熱板７側の湿度が
上昇しても、建築用パネルの表面側と裏面側との間では
水分の移動が完全に遮断され、逆側の面の湿度は全くそ
の影響を受けないものである。

【００２９】図５は、建築用パネル体の縦枠４ａを柱１
１に釘打ち固定することにより、柱と柱の間に組み込み
真壁を形成した状態の断面図を示すものである。建築用
パネル体を真壁として組み込んだ場合には、建築用パネ
ル体の表裏面間での水分の移動は完全に遮断されるた
め、柱１１と縦枠４ａとの接合部に気密テープ１２を貼
着するだけで、従来の防湿気密シートを施工した状態と
同等以上の防湿気密性能を得ることができる。

【００３０】また、建築用パネル体において建築用板Ａ
の両側に断熱板を設けることにより、図５における建築
用板Ａの室内側にも断熱板７が柱１１および枠材４ａの
室内側の面と同一面まで配されることとなり、その表面
に化粧材を貼るだけで室内側の仕上げが得られる。ま
た、建築用パネル体は、柱材の角部に切り欠きを形成
し、該切り欠き部に建築用パネル体を嵌め込み固定する
工法や、柱の外側で建築用パネル体の枠材同志が接合す
るように配置し固定する工法においても使用することが
できる。さらに、壁面を構成するパネルとしての使用だ
けでなく、床面の根太または大引き上に建築用パネルを
固定することにより、床面における防湿気密性能を得る
ことができ、また、天井において、はりに本発明の建築
用パネルを固定することによっても、同様に天井面にお
ける防湿気密性能を得ることができる。１５は胴縁、１
６は外壁材、１７は釘である。

【００３１】

【効果】本発明の建築用板によれば、アルミニウム層が
形成された合成樹脂フィルムを貼着した面においては、
高気密・高断熱工法における、防湿気密シートを貼着し
たのと同等の防湿気密性能を有するため、高気密・高断
熱工法の構造パネルとして使用する場合においては、パ
ネル間あるいは構造材との固定部においてのみ、防湿気
密のシートあるいは合成樹脂フォームの充填などの防湿
・気密処理をすることで、気密性能を確保することがで
き、施工期間が著しく短縮することができる。さらに、
アルミニウム層により熱輻射が行なわれるため、断熱効
果も十分に発揮するものである。

【００３２】また、ホルムアルデヒドを放出しない木質
基板を用いたときには、アルミニウム層の蒸着された合
成樹脂フィルムの貼着面から木質基板内部への水分およ
び酸素の通過は遮断されることとなり、黴および腐食な
どの問題が発生しないものである。また、ホルムアルデ
ヒドを内部に含有する木質基板を用いたときにも、アル
ミニウム層の蒸着された合成樹脂フィルムの貼着面から
水分および酸素はもちろん、ホルムアルデヒドの通過も
遮断され、木質基板中のホルムアルデヒドの放出を抑制
することも可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 木質基板１に蒸着アルミニウム層２が形成さ
れた合成樹脂フィルム３を貼着した建築用板の断面図、

【図２】 木質基板１の両側に蒸着アルミニウム層２が
形成された合成樹脂フィルム３，３を貼着した場合の断
面図、

【図３】 本発明建築用板を建築用パネルとして使用す
る状態を示す。

【図４】 図３のＸ−Ｘ′断面図、

【図５】 建築用パネル体の縦枠４を柱１１に釘打ち固
定することにより、柱１１と柱１１の間に組み込み真壁
形成したときの断面図、

【符号の説明】

１：木質基板、２：アルミニウム層、３：合成樹脂フィ
ルム、４，４ａ，４ｂ：縦枠、５，５ａ，５ｂ：横枠、
６：パネル枠体、７：断熱板、８，８ａ，８ｂ：中桟、
９：溝、１０：シール材、１１：柱、１２：気密テー
プ、１５：胴縁、１６：外壁材、１７：釘、Ａ：建築用
板。

─────────────────────────────────────────────────────

【手続補正書】

【提出日】平成１１年３月５日

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】特許請求の範囲

【補正方法】変更

【補正内容】

【特許請求の範囲】

【手続補正２】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】０００５

【補正方法】変更

【補正内容】

【０００５】すなわち本発明は、「蒸着によるアルミニ
ウム層が形成されたポリエチレンテレフタレートからな
る合成樹脂フィルムを、該アルミニウム層側が木質基板
に接するように貼着されてなる建築用板。」に関する。

【手続補正３】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】０００６

【補正方法】変更

【補正内容】

【０００６】

【作用】本発明の建築用板によれば、蒸着によるアルミ
ニウム層が形成されたポリエチレンテレフタレートから
なる合成樹脂フィルムを、該アルミニウム層側が木質基
板に貼着されることにより、高気密・高断熱工法に用い
られる防湿気密シートと同等以上の防湿性能を有する板
材となる。

【手続補正４】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１１

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１１】本発明では、ポリエチレンテレフタレート
からなる合成樹脂フィルムを用いる。該合成樹脂フィル
ムの厚さは１０μｍから３０μｍの範囲のものを使用す
ることができる。

【手続補正５】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１５

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１５】本発明における合成樹脂フィルム３に蒸着
するアルミニウム層２の厚さは、４００Å〜８００Åの
厚さに形成することが好ましい。このような厚さに形成
することにより、防湿気密シートとして使用されている
１００μｍ厚のポリエチレンフィルムや２００μｍ厚の
塩化ビニルフィルムの防湿性能、すなわち水蒸気透過率
７ｇ／ｍ^２・２４ｈｒと同等以上の優れた防湿気密性能
を示す。アルミニウム層が４００Åより薄い層では高気
密・高断熱工法において要求される防湿性能を十分に発
揮することができない。また８００Åより厚くアルミニ
ウム層２を形成してもそれ以上防湿性能は向上しない。

【手続補正６】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１６

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１６】尚、本発明で用いるポリエチレンテレフタ
レートからなる合成樹脂フィルムは、そのフィルム単独
での水蒸気透過率は１２μｍの厚さのシートで７０ｇ／
ｍ^２・２４ｈｒ以上と水蒸気を通しやすいものである
が、アルミニウムを蒸着することにより水蒸気透過率を
格段と減少させることができる。すなわち、単独のシー
ト状態ではポリエチレンテレフタレートよりも水蒸気透
過率が低い樹脂シートと比較して、同一厚さのアルミニ
ウム層を形成した状態では、ポリエチレンテレフタレー
トのシートの方がその水蒸気透過率は低くなる。このた
め他の樹脂よりも薄いシートで十分な防湿性能を発揮す
ることができ特に好ましい。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 蒸着によるアルミニウム層が形成された
   合成樹脂フィルムを、該アルミニウム層側が木質基板に
   接するように貼着されてなる建築用板。
2. 【請求項２】 合成樹脂フィルムとしてポリエチレンテ
   レフタレートを用いることを特徴とする請求項１記載の
   建築用板。