JPH11256738A - コンクリート壁構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 施工性が良好で強度向上を図ることができる
コンクリート壁構造を提供する。 【解決手段】 パネル取付用梁11と、このパネル取付用
梁11の長手方向に並設した気泡コンクリート製の壁用パ
ネル12とを備える。この各壁用パネル12をパネル取付用
梁11に対して固定具14にて取付固定する。固着体31をパ
ネル取付用梁11の上下面に固着する。壁用パネル12の側
端面にこの壁用パネル12の成形時に予め埋設した係合体
17の被嵌挿溝部21に、ナット体32を嵌挿する。このナッ
ト体32をパネル取付用梁11に対する壁用パネル12の高さ
位置に対応させて所定位置に位置決めする。ボルト体33
をナット体32に強く螺合することにより、このナット体
32の係合部45と係合体17の係合縁辺部25とを係合させる
とともに固着体31の当接面部36に壁用パネル12の後面を
強く当接させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、建物の屋上、バル
コニー等に用いられるコンクリート壁構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種のコンクリート壁構造とし
ては、例えば、図６に示す構成のコンクリート壁構造が
知られている。

【０００３】この図６に示すコンクリート壁構造は、建
物における例えばバルコニーの床体１の下方に配設され
たＨ形鋼等のパネル取付用梁２と、このパネル取付用梁
２の長手方向に互いに近接して並設されたコンクリート
製の少なくとも一対の壁用パネル３とを備えている。

【０００４】そして、施工現場における前記パネル取付
用梁２に対しての前記壁用パネル３の取付固定は、ボル
ト体５を、座金体６を介して壁用パネル３の後面部の所
定位置にこの壁用パネル３の成形時に予め埋設した図示
しないインサートに、パネル取付用梁２に溶接等にて固
着した断面略Ｌ字状の固着体７に穿設されている挿通孔
８から挿通して螺合することにより、取付固定してい
た。なお、互いに近接する壁用パネル３同士は、必要に
応じて別個の連結用の固定具を用いて連結固定してい
た。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記図
６に示す従来のコンクリート壁構造のように、パネル取
付用梁２に対する壁用パネル３の取付固定に際し、ボル
ト体５をパネル取付用梁２に固着した固着体７の挿通孔
８から挿通して壁用パネル３の後面部に予め埋設したイ
ンサートに螺合する構成では、壁用パネル３に作用する
バルコニーの内側から建物外に向う荷重に対する強度上
の問題があるばかりでなく、施工現場においてパネル取
付用梁２に対する壁用パネル３の高さ位置決め調整が必
要な場合に、その高さ位置決め調整作業に手間がかか
り、施工性が悪い問題を有している。

【０００６】本発明は、このような点に鑑みなされたも
ので、施工性が良好で強度向上を図ることができるコン
クリート壁構造に関する。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明のコンクリート壁
構造は、パネル取付用梁と、このパネル取付用梁の長手
方向に互いに近接して並設されコンクリートにて略矩形
板状に成形された少なくとも一対の壁用パネルと、この
各壁用パネルを前記パネル取付用梁に対して取付固定す
るための固定具とを備え、前記各壁用パネルには、並設
された状態で互いに近接して対向する側端面にこの側端
面に沿って開口された長手方向の被嵌挿溝部およびこの
被嵌挿溝部の開口部に間隙をもって突出した係合縁辺部
を有する細長形状の係合体が埋設され、前記固定具は、
前記パネル取付用梁の上面および下面の少なくとも一方
に前記近接する各壁用パネルの後面に跨がって固着され
る固着面部およびこの固着面部の一端側に立設され前記
近接する各壁用パネルの後面に当接する当接面部を有す
る固着体と、ねじ孔が穿設された基板部およびこの基板
部の幅方向の両端にそれぞれ立設され前記係合体の係合
縁辺部に係合する係合部を有しかつ前記係合体の被嵌挿
溝部に溝方向に沿って嵌挿されるナット体と、前記固着
体の当接面部を介して前記ナット体の基板部のねじ孔に
螺合されるボルト体とを有したものである。

【０００８】そして、パネル取付用梁に対して、固定具
を用いて少なくとも一対の壁用パネルを取付固定するに
際して、固着体の固着面部をパネル取付用梁の上面およ
び下面の少なくとも一方に近接する各壁用パネルの後面
に跨がらせて固着する。

【０００９】一方で、係合体は、壁用パネルの側端面に
この壁用パネルの成形時等に予め埋設する。

【００１０】そして、パネル取付用梁の長手方向に互い
に近接して並設された状態にある壁用パネルの係合体の
被嵌挿溝部に、ナット体を溝方向に沿って嵌挿する。

【００１１】次いで、この嵌挿したナット体を、パネル
取付用梁に対する高さ位置決め調整後の壁用パネルの高
さ位置に対応させて、所定位置に位置決めした後、ボル
ト体を固着体の当接面部を介してナット体に強く螺合す
ることにより、このナット体の係合部と係合体の係合縁
辺部とを係合させるとともに固着体の当接面部に壁用パ
ネルの後面を強く当接させる。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、本発明のコンクリート壁構
造の一実施の形態の構成を図面を参照して説明する。

【００１３】図４において、10は建物のバルコニーにお
ける床体で、この床体10の下方には、Ｈ形鋼等のパネル
取付用梁11が敷設されている。

【００１４】そして、前記建物のバルコニーの広さに応
じた数枚の少なくとも一対の壁用パネル12が、このパネ
ル取付用梁11の長手方向に互いに近接した状態で並設さ
れており、この各壁用パネル12は、固定具14にてこのパ
ネル取付用梁12に対して取り付けられて固定されるよう
になっている。

【００１５】前記壁用パネル12は、例えば、気泡コンク
リートにて略矩形板状に成形された、いわゆるＡＬＣ
（Ａｕｔｏｃｌａｖｅｄ ｌｉｇｈｔ−ｗｅｉｇｈｔ
ｃｏｎｃｒｅｔｅ）であり、この壁用パネル12のバルコ
ニー側とは反対側である外側の前面には複数の外装タイ
ル16が固着されている。

【００１６】また、この壁用パネル12の両側端面には、
係合体17が埋設されている。

【００１７】この係合体17は、例えば工場等において壁
用パネル12の成形時に予め埋設されたもので、図１ない
し図３に示すように、鋼材等を用いて例えば押出し加工
にて細長形状でかつ断面略Ｃ字形状に成形されており、
この係合体17は、細長矩形状の基板部18を有し、この基
板部18の幅方向の両端には略垂直に側板部19が一体にそ
れぞれ立設されており、この各側板部19の先端は互いに
対向する方向に向って略垂直に折り曲げ形成されてい
る。

【００１８】そして、この基板部18と側板部19とにて、
前記壁用パネル12の側端面に沿って開口する被嵌挿溝部
21が、この係合体17の長手方向に沿って区画形成されて
いる。また、前記壁用パネル12に埋設された状態でこの
壁用パネル12の後面側に位置する一方の側板部19の先端
側にて、前記被嵌挿溝部21の開口部22に間隙23をもって
突出した係合縁辺部25が形成されている。

【００１９】なお、前記壁用パネル12の上面には、図４
に示されるように、前記係合体17と同一形状のアンカー
ベース体27が埋設されており、このアンカーベース体27
を用いて例えば笠木付手摺装置28が取付固定されてい
る。

【００２０】次に、前記固定具14は、前記パネル取付用
梁11に溶接等にて固着される２つの固着体31と、前記係
合体17の被嵌挿溝部21にその溝方向に沿って移動可能に
嵌挿される２つのナット体32と、このナット体32に螺合
される２つのボルト体33とを有している。

【００２１】この各固着体31は、鋼材等にて略山形状に
成形されたもので、前記パネル取付用梁11の上面又は下
面に、前記各壁用パネル12の後面に跨がって固着される
矩形板状の固着面部35を有している。この固着面部35の
一端には前記各壁用パネル12の後面に当接する略矩形板
状の当接面部36が略垂直に一体に突設され、さらに前記
固着面部35の幅方向の両側には略三角形状の側板部37が
略垂直に一体に突設されている。なお、前記当接面部36
には、前記ボルト体33の軸部を挿入可能な寸法で縦方向
に細長状の挿通孔38が上縁中央から中心に向って切り欠
き形成されている。

【００２２】前記各ナット体32は、鋼材等にて断面略コ
字形状に成形されたもので、略矩形状の基板部42を有し
ており、この基板部42の略中央には前記ボルト体33が螺
合されるねじ孔43が穿設されている。また、この基板部
42の幅方向の両端には矩形状の係合部45が略垂直に一体
に突設されている。この係合部45は、前記係合体17の係
合縁辺部25に対応する形状に形成されており、前記ボル
ト体33の締付け時この係合縁辺部25に確実に係合するよ
うになっている。

【００２３】次に、上記一実施の形態の組み立て施工を
説明する。

【００２４】建物のバルコニーにおける床体10の下方に
敷設したパネル取付用梁11に対して、固定具14を用いて
壁用パネル12を取付固定するに際し、固着体31の固着面
部35をパネル取付用梁11の上面、下面に、互いに近接す
る各壁用パネル12の後面に跨がらせて固着する。なお、
係合体17は壁用パネル12の側端面にこの壁用パネル12の
成形時に予め埋設しておく。

【００２５】そして、パネル取付用梁11の長手方向に互
いに近接して並設された状態にある壁用パネル12の係合
体17の被嵌挿溝部21に、ナット体32を溝方向に沿って移
動可能に嵌挿する。なお、ナット体32の嵌挿前にこのナ
ット体32の基板部42のねじ孔43にボルト体33を緩く螺合
しておく。

【００２６】次いで、このナット体32を、パネル取付用
梁11に対する高さ位置決め調整後の壁用パネル12の高さ
位置に対応させて、所定位置に位置決めする。すなわ
ち、ボルト体33を固着体31の当接面部36の挿通孔38に挿
通させた状態とし、このボルト体33を当接面部36にて係
止させることにより、ナット体32を位置決めする。

【００２７】その後、ボルト体33を締付け方向に移動さ
せて、このボルト体33の頭部を固着体31の当接面部36の
内面に圧接させることにより、このボルト体33をナット
体32に強く螺合する。この結果、ナット体32の係合部45
と係合体17の係合縁辺部25とが強く確実に係合するとと
もに、固着体31の当接面部36の外面が壁用パネル12の後
面に強く当接して、壁用パネル12がパネル取付用梁に対
して取付固定された状態となる。

【００２８】そして、上記一実施の形態によれば、パネ
ル取付用梁11に対する壁用パネル12の取付固定の際に、
パネル取付用梁11に対する壁用パネル12の高さ位置決め
調整が必要な場合でも、壁用パネル12の係合体17の被嵌
挿溝部21に嵌挿したナット体32を溝方向に沿って適宜に
移動させることで対応できるので、従来のように壁用パ
ネルの後面部の所定位置にインサートを固定埋設した構
造に比して、施工性を向上できる。

【００２９】また、固定具14にて壁用パネル12をパネル
取付用梁11に対して取付固定した後において、この壁用
パネル12にバルコニーの内側から建物外に向う向きの荷
重が作用した場合には、この壁用パネル12に働く固定具
14からの反力は係合体17を介して壁用パネル12に伝達す
るため、この壁用パネル12の内部に生じる応力が広範囲
に亘って分散され、従来に比して、壁用パネル12の強度
を向上できる。

【００３０】さらに、固定具14にて壁用パネル12をパネ
ル取付用梁11に取付固定することにより、近接する壁用
パネル12同士を同時に連結固定できるので、別個の連結
用の固定具を不要とでき、コストを削減できる。

【００３１】なお、上記一実施の形態においては、固定
具14の固着体31は、この固着体31の当接面部36に細長状
の挿通孔38を上縁中央から中心に向って切り欠き形成し
た構成について説明したが、例えば、固着体31の強度向
上のために、当接面部36の中央に円形状の挿通孔を形成
した構成とすることもできる。なお、この構成とする場
合には、ナット体32を所定位置に位置決めした後、ボル
ト体33をその円形状の挿通孔に挿入して、ナット体32の
基板部42のねじ孔43に螺合することとなる。

【００３２】また、上記一実施の形態においては、固定
具14の２つのナット体32は、略中央にねじ孔43が穿設さ
れた基板部42およびこの基板部42の幅方向の両端に立設
された係合部45を有する２つの別部材からなる構成につ
いて説明したが、例えば、係合部45と係合縁辺部25との
係合部分の面積を増大させることにより壁用パネル12の
内部に生じる応力をより確実に広範囲に分散させて壁用
パネル12の更なる強度の向上を図るために、２つのねじ
孔43が長手方向に互いにパネル取付用梁11の高さ寸法に
対応する寸法の間隙をおいて穿設された細長形状の基板
部42およびこの基板部42の幅方向の両端に立設された係
合部45を有する１つの部材（図示しない）からなる構成
とすることもできる。

【００３３】さらに、上記一実施の形態においては、係
合体17の係合縁辺部25は、一方の側板部19の先端側にて
形成されている構成について説明したが、例えば、壁用
パネル12の強度をより向上するために、図５に示すよう
に、係合縁辺部50を一方の側板部19全体にて形成した構
成とすることもできる。

【００３４】

【発明の効果】本発明によれば、パネル取付用梁に対す
る壁用パネルの取付固定の際に、パネル取付用梁に対す
る壁用パネル３の高さ位置決め調整が必要な場合でも、
壁用パネルの係合体の被嵌挿溝部に嵌挿したナット体を
溝方向に沿って適宜に移動させることで対応できるの
で、従来に比して、施工性を向上できる。

【００３５】また、固定具にて壁用パネルをパネル取付
用梁に対して取付固定した後において、この壁用パネル
にバルコニーの内側から建物外に向う向きの荷重が作用
した場合には、この壁用パネルに働く固定具からの反力
は係合体を介して壁用パネルに伝達するため、この壁用
パネルの内部に生じる応力が広範囲に亘って分散される
ので、従来に比して、壁用パネルの強度を向上できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のコンクリート壁構造の一実施の形態を
示す斜視図である。

【図２】同上コンクリート壁構造を示す横断面図であ
る。

【図３】同上コンクリート壁構造を示す縦断面図であ
る。

【図４】同上コンクリート壁構造を示す斜視図である。

【図５】同上コンクリート壁構造における係合体の係合
縁辺部の他の形態を示す断面図である。

【図６】従来のコンクリート壁構造を示す縦断面図であ
る。

【符号の説明】

11 パネル取付用梁 12 壁用パネル 14 固定具 17 係合体 21 被嵌挿溝部 22 開口部 23 間隙 25，50 係合縁辺部 31 固着体 32 ナット体 33 ボルト体 35 固着面部 36 当接面部 42 基板部 43 ねじ孔 45 係合部

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 パネル取付用梁と、 このパネル取付用梁の長手方向に互いに近接して並設さ
   れコンクリートにて略矩形板状に成形された少なくとも
   一対の壁用パネルと、 この各壁用パネルを前記パネル取付用梁に対して取付固
   定するための固定具とを備え、 前記各壁用パネルには、並設された状態で互いに近接し
   て対向する側端面にこの側端面に沿って開口された長手
   方向の被嵌挿溝部およびこの被嵌挿溝部の開口部に間隙
   をもって突出した係合縁辺部を有する細長形状の係合体
   が埋設され、 前記固定具は、前記パネル取付用梁の上面および下面の
   少なくとも一方に前記近接する各壁用パネルの後面に跨
   がって固着される固着面部およびこの固着面部の一端側
   に立設され前記近接する各壁用パネルの後面に当接する
   当接面部を有する固着体と、ねじ孔が穿設された基板部
   およびこの基板部の幅方向の両端にそれぞれ立設され前
   記係合体の係合縁辺部に係合する係合部を有しかつ前記
   係合体の被嵌挿溝部に溝方向に沿って嵌挿されるナット
   体と、前記固着体の当接面部を介して前記ナット体の基
   板部のねじ孔に螺合されるボルト体とを有したことを特
   徴とするコンクリート壁構造。