JPH11251108A - サーミスタ素子およびその製造方法 - Google Patents

サーミスタ素子およびその製造方法

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JPH11251108A
JPH11251108A JP4783898A JP4783898A JPH11251108A JP H11251108 A JPH11251108 A JP H11251108A JP 4783898 A JP4783898 A JP 4783898A JP 4783898 A JP4783898 A JP 4783898A JP H11251108 A JPH11251108 A JP H11251108A
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正徳 山田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 室温〜1000℃の熱履歴等においても抵抗
値の変化が小さく安定した特性を有し、室温〜1000
℃の温度範囲において抵抗値を50Ω〜100kΩとし
たサーミスタ素子を得る。 【解決手段】 サーミスタ素子1の素子部13は、ペロ
ブスカイト系化合物であるY(Cr0.5 Mn0.5 )O3
とAl2 3 との混合焼結体aY(Cr0.5 Mn 0.5
3 ・bAl2 3 もしくは、Y(Cr0.5 Mn0.5
3 とY2 3 とAl2 3 との混合焼結体aY(Cr
0.5 Mn0.5 )O3 ・b(Y2 3 +Al 2 3 )から
構成される。ここでモル分率aおよびbは、0.05≦
a<1.0、0<b≦0.95、a+b=1の関係にあ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、室温から約100
0℃の高温域にわたって温度検知可能なサーミスタ素
子、いわゆるワイドレンジ型サーミスタ素子に関するも
のであり、特に自動車排ガスの温度センサに用いて好適
である。
【0002】
【従来の技術】温度センサ用サーミスタ素子は、自動車
用排ガス温度、ガス給湯器等のガス火炎温度、加熱炉の
温度等、400〜1300℃という中温から高温度域の
測定に用いられている。この種のサーミスタ素子の特性
は、抵抗値と抵抗温度係数(抵抗値の温度依存性)で示
される。ここで、温度センサを構成する温度検出回路の
実用的な抵抗値範囲に対応するためには、サーミスタ素
子の抵抗値は所定の範囲であることが望まれている。そ
のため、ワイドレンジ型サーミスタ素子に適した抵抗値
特性を有するものとしてペロブスカイト系材料等が主と
して用いられている。
【0003】ペロブスカイト系材料を用いたサーミスタ
素子としては、例えば、特開平6−325907号公報
及び特開平7−201528号公報に記載のものが提案
されている。これらは、広い温度範囲で使用可能なサー
ミスタ素子を実現するために、Y、Sr、Cr、Fe、
Ti等の酸化物を所定の組成割合で混合し、焼成して完
全固溶体としサーミスタ素子としたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】サーミスタ素子の抵抗
値特性は、抵抗値と抵抗温度係数によって示される。通
常の温度センサにおいては、温度検出回路の抵抗値範囲
を鑑みて、サーミスタ素子の抵抗値は、使用温度範囲に
おいて50Ω〜100kΩであることが必要である。ま
た、サーミスタ素子に室温〜1000℃の熱履歴等を与
えた場合、熱履歴後の抵抗値と初期抵抗値との変化が小
さい方が良い。
【0005】上記各公報においては、種々の完全固溶体
からなるサーミスタ素子が提案されているが、300℃
以上のサーミスタ素子抵抗値のデータしか開示されてい
ない。そのため、本発明者等は、上記各公報における種
々のサーミスタ素子について室温付近における抵抗値特
性を調査した。その結果、室温〜1000℃の熱履歴等
における抵抗値安定性を有するものは、室温から300
℃の温度域において、抵抗値が高くなってしまい絶縁と
の判別ができずに温度が検出できない。一方、50Ω〜
100kΩの低抵抗値を満足するものは、熱履歴等にお
いて抵抗値が初期抵抗値に対して10%以上変化し安定
性に欠けることがわかった。
【0006】いずれにしても、室温〜1000℃の高温
域にわたる低抵抗値特性、および熱履歴等における抵抗
値安定性の相反する2つの抵抗特性を満足できるサーミ
スタ素子(いわゆるワイドレンジ型サーミスタ素子)
は、これまでになかった。本発明は上記問題点に鑑み
て、室温〜1000℃の熱履歴等においても抵抗値の変
化が小さく安定した特性を有し、室温〜1000℃の温
度範囲において抵抗値を50Ω〜100kΩとしたサー
ミスタ素子を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】従来のサーミスタ素子
は、ペロブスカイト型構造の完全固溶体になっている
が、本発明者等は、単品の化合物である完全固溶体で
は、上記のような相反する傾向にある抵抗特性を満足す
ることは難しいと考えた。そこで、完全固溶体ではな
く、比較的低い抵抗値を有するペロブスカイト系材料
(酸化物)と、比較的高い抵抗値を有する材料との2種
の化合物を混合した混合焼結体からなる新規なサーミス
タ材料を用いて、上記目的を達成することとした。
【0008】そして、種々のペロブスカイト系材料につ
いて検討した結果、上記目的を達成するために適正な抵
抗特性を有する材料としては、組成物(M1M2)O3
(ここで、M1は、元素周期律表第2A族及びLaを除
く第3A族の元素から選択される少なくとも1種以上の
元素であり、M2は、元素周期律表第2B族、第3B
族、第4A族、第5A族、第6A族、第7A族及び第8
族の元素から選択される少なくとも1種以上の元素であ
る)が好ましいことを実験的に見いだした。
【0009】ここで、Laは吸湿性が高く、大気中の水
分と反応して不安定な水酸化物を作りサーミスタ素子を
破壊する等の問題があるため、M2として用いない。一
方、混合する相手方の材料としては、検討の結果、比較
的高い抵抗値を有し且つサーミスタ材料の抵抗値を安定
化するAl2 3 (酸化アルミニウム)が好ましいこと
を実験的に見いだした。
【0010】請求項1記載の発明は、上記(M1M2)
3 とAl2 3 を混合焼結して混合焼結体(M1M
2)O3 ・Al2 3 からなるサーミスタ素子としたも
のである。このサーミスタ素子を温度センサに組み込ん
で素子の抵抗値特性を調査したところ、室温〜1000
℃の熱履歴等においても抵抗値の変化が数%と小さく安
定であり、室温〜1000℃の温度域において、抵抗値
は50Ω〜100kΩであることが確認できた。
【0011】よって、請求項1記載の発明においては、
室温〜1000℃の高温域にわたって温度を検知可能
で、室温〜1000℃の熱履歴等においても抵抗値の変
化が小さく安定した特性を持つサーミスタ素子、いわゆ
るワイドレンジ型サーミスタ素子を提供することができ
る。また、本発明者等の検討によれば、上記のペロブス
カイト系化合物(M1M2)O3 における各元素は、請
求項5記載の発明のように、M1は、Y、Ce、Pr、
Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、M
g、Ca、Sr、Ba、Scから選択する1種以上の元
素であり、M2は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、C
o、Ni、Zn、Al、Ga、Zr、Nb、Mo、H
f、Ta、Wから選択する1種以上の元素であることが
実用上好ましい。
【0012】さらに、(M1M2)O3 とAl2 3
の混合比について検討を進めた結果、その混合比が所定
範囲であれば、すなわち、請求項2記載の発明のよう
に、上記の(M1M2)O3 のモル分率をa、上記のA
2 3 のモル分率をbとした場合、これらのモル分率
aおよびbが、0.05≦a<1.0、0<b≦0.9
5、a+b=1の関係にあれば、より確実に請求項1記
載の発明の効果を達成できることがわかった。
【0013】また、このように広い範囲でモル分率を変
えることができるので、(M1M2)O3 とAl2 3
との両者を適宜混合、焼成することにより、抵抗値、抵
抗温度係数を広い範囲で種々制御できる。また、上記混
合焼結体(M1M2)O3 ・Al2 3 において、(M
1M2)O3 の相手としてAl2 3 とともにY2 3
(酸化イットリウム)を含むものであってもよいこと
が、実験的にわかった。
【0014】請求項3記載の発明は、この知見に基づい
てなされたものであり、混合焼結体(M1M2)O3
2 3 ・Al2 3 からなるサーミスタ素子を提供す
る。本発明によれば、請求項1記載のサーミスタ素子と
同様の効果を実現できる。そして、(M1M2)O3
モル分率a及びY2 3 とAl2 3 とを合計したモル
分率をbが、請求項4記載の所定関係を満足すれば、よ
り確実に請求項3記載の発明の効果を達成できることが
わかった。
【0015】また、焼結体においては、各粒子の焼結性
等を向上させるために焼結助剤を添加するが、種々の焼
結助剤について実験検討の結果、請求項1〜請求項5記
載の混合焼結体については、請求項7記載の発明のよう
に、CaO、CaCO3 およびCaSiO3 のうち少な
くとも1種とSiO2 とからなる焼結助剤を用いること
が好ましいことがわかった。それによって、焼結密度等
に優れたワイドレンジ型サーミスタ素子が得られる。
【0016】ところで、実験を進めていくうちに、上記
混合焼結体(M1M2)O3 ・Al 2 3 および混合焼
結体(M1M2)O3 ・Y2 3 ・Al2 3 (以下、
両混合焼結体をまとめて混合焼結体という)からなるサ
ーミスタ素子を用いた温度センサにおいて、作製したセ
ンサごとの検出温度精度が、室温〜1000℃の温度域
で±20〜30℃のレベルにばらつくことがわかった。
【0017】ここで、これら混合焼結体は、通常M1や
M2の酸化物を仮焼成して(M1M2)O3 を得た(第
1の調製工程)後、Al2 3 或いはY2 3 およびA
23 (以下、Al2 3 等と略す)と混合して成形
焼成する(第2の調製工程)ことで得られる。なお、混
合焼結体(M1M2)O3 ・Y2 3 ・Al2 3 にお
いてM1にYが含まれる場合には、第1の調製工程にて
予めM1の原料としてのY2 3 を過剰に加えて、仮焼
成により(M1M2)O3 の代わりに(M1M2)O3
・Y23 を得てもよい。この場合、第2の調製工程に
て、最終的に所望組成比の混合焼結体となるように、仮
焼成により得られた(M1M2)O3 ・Y2 3 に適宜
Al2 3 等を混合する。
【0018】ここにおいて、よりいっそうの温度精度の
向上(センサ毎の検出温度精度ばらつき低減)という面
から、調合、成形、焼成条件等、サーミスタ素子の製造
工程における各条件について調査を進めた。その結果、
まず、上記温度精度のばらつきは、仮焼成により得られ
る(M1M2)O3 または(M1M2)O3 ・Y2 3
(以下、仮焼成体という)の平均粒径がAl2 3 等の
平均粒径よりも大きく、両者が均一に混合せず混合焼結
体の組成がばらつき、結果として、サーミスタ素子の抵
抗がばらつくことに起因することがわかった。よって、
焼結前の混合状態において、仮焼成体の平均粒径をAl
2 3 等の平均粒径と同等とすれば、組成の均一混合が
実現できると考え検討を行った。
【0019】その結果、請求項9、請求項12及び請求
項15記載の発明のように、仮焼成体を、Al2 3
と混合、粉砕し、この混合物の平均粒径を、混合前のA
23 等の平均粒径以下とすればよいことが実験的に
わかった。すなわち、請求項9、請求項12及び請求項
15の製造方法(第1の製造方法)を用いれば、微粒化
により、仮焼成体とAl2 3 等との均一混合が図られ
て、混合焼結体の組成変動が低減されるので、サーミス
タ素子の抵抗値のばらつきを低減できる。従って、より
良好なセンサ温度精度(センサ毎の温度精度ばらつきの
少ない)を可能とするワイドレンジ型サーミスタ素子を
提供できる。
【0020】更に、混合焼結体からなるサーミスタ素子
を用いた温度センサの検出温度精度の向上の面から、サ
ーミスタ素子の製造方法について調査を進めた結果、仮
焼成体自体の組成ばらつきが、結果的に混合焼結体の組
成ばらつき(つまり、サーミスタ素子の抵抗値ばらつ
き)に影響することがわかった。ここで、仮焼成体自体
の組成ばらつきの原因について検討した一例を、仮焼成
体Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 を用いる場合、すなわち
(M1M2)O3 においてM1=Y、M2=Cr及びM
nの場合について述べる。
【0021】Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 の調製は、例
えば、次のように行う(図1参照)。M1の原料である
2 3 (平均粒径約1μm)と、M2の原料であるC
23 (平均粒径約4μm)及びMn2 3 (平均粒
径約7μm)とを、Y:Cr:Mn=1:0.5:0.
5のモル比で調合し、従来よりのボールミル等で混合・
粉砕し、この混合物を1000℃以上で仮焼成して、Y
(Cr0.5 Mn0.5 )O3 を得る。
【0022】ここで、ボールミル等での混合・粉砕で
は、混合・粉砕後の平均粒径は約2μmが限界で、また
Cr2 3 及びMn2 3 の平均粒径はY2 3 の平均
粒径に比べて大きい。従って、Y2 3 とCr2 3
Mn2 3 の混合物を仮焼成反応によって得られるY
(Cr0.5 Mn0.5 )O3 は、各々の原料のY2 3
Cr2 3 、Mn2 3 の粒径差により、Y:Cr:M
n=1:0.5:0.5からずれた組成物、例えば、
Y:Cr:Mn=1:0.6:0.4組成物からY:C
r:Mn=1:0.4:0.6組成物まで種々の組成物
を含む混合物となる。
【0023】これらY:Cr:Mn=1:0.6:0.
4組成物からY:Cr:Mn=1:0.4:0.6組成
物は、各々異なる抵抗値、抵抗温度係数(β値)を持つ
ために素子ごとに抵抗が変動し、素子抵抗値のばらつき
の原因となっている。また原料のY2 3 、Cr
2 3 、Mn2 3 の一部(組成比からずれたもの)が
未反応物として残存する場合は、素子抵抗値のバラツキ
の原因にもなっている。
【0024】ここで、仮焼成体を得る第1の調製工程に
おいて、混合・粉砕条件について検討を行った結果、ボ
ールミルよりも粉砕能力の高い、例えば媒体攪拌ミル等
によってM2の原料をM1の原料と共に混合・粉砕し
て、混合・粉砕後の原料混合物(混合粉砕物)の平均粒
径を混合前のM1の原料の平均粒径以下でかつ0.5μ
m以下となるように微粒化すれば上記不具合を抑制で
き、実用レベルである温度精度±10℃以下となること
が実験的にわかった。
【0025】請求項10、請求項13及び請求項16記
載の製造方法(第2の製造方法)は上記知見に基づいて
なされたものであり、M1の原料とM2の原料とを混合
・粉砕する混合工程で、M2の原料をM1の原料と共に
混合・粉砕して、この混合粉砕物の平均粒径を混合前の
M1の原料の平均粒径以下でかつ0.5μm以下とした
後、仮焼成により仮焼成体を得て、Al2 3 等と混合
後、所定形状に成形、焼成することを特徴としている。
【0026】それによって、M1及びM2の原料の均一
微粒化により、仮焼成体組成の均一混合が図られるの
で、仮焼成体組成ばらつきの低減、及び原料未反応物の
存在の抑制が実現でき、サーミスタ素子の抵抗値のばら
つきを低減できる。従って、より良好なセンサ温度精度
を可能とするワイドレンジ型サーミスタ素子を提供でき
る。
【0027】また、請求項11、請求項14及び請求項
17の発明は、請求項9、請求項12及び請求項15記
載の製造方法(つまり、第1の製造方法)に、それぞ
れ、請求項10、請求項13及び請求項16記載の製造
方法(つまり、第2の製造方法)を組み合わせたもので
あり、両製造方法の効果の組合せにより、より高いレベ
ルでサーミスタ素子の抵抗値のばらつきを低減できる。
【0028】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)本発明のペロブ
スカイト系材料組成物(M1M2)O3 において、例え
ば、M1の元素は、周期律表の第2A族としては、M
g、Ca、Sr、Ba、第3A族としては、Laを除く
Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、H
o、Er、Yb、Sc等から選択できる。
【0029】また、例えばM2の元素は、第2B族とし
てはZn、第3B族としては、Al、Ga、第4A族と
しては、Ti、Zr、Hf、第5A族としては、V、N
b、Ta、第6A族としてはCr、Mo、W、第7A族
としては、Mn、Tc、Re、第8族としては、Fe、
Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptから
選択できる。
【0030】ここで、混合焼結体(M1M2)O3 ・A
2 3 および(M1M2)O3 ・Y2 3 ・Al2
3 の製造方法について述べる。その製造工程は、大きく
は、仮焼成により仮焼成体((M1M2)O3 又は(M
1M2)O3 ・Y2 3 )を得る第1の調製工程と、得
られた仮焼成体とAl2 3 等(Al2 3 、又は、Y
2 3 とAl2 3 )を調合して所定形状の混合焼結体
とし、サーミスタ素子を得る第2の調製工程とに分かれ
る。
【0031】第1の調製工程では、M1及びM2の原料
であるM1の酸化物(M1OX )やM2の酸化物(M2
X )等を調合して(調合1)、混合、粉砕(混合工
程)した後、仮焼成(例えば1000℃〜1500℃程
度)する(仮焼成工程)ことにより仮焼成体を得ること
ができる。そして、第2の調製工程では、得られた仮焼
成体を、所望の抵抗値と抵抗温度係数となるようにAl
2 3 等と調合する(調合2)。調合2にて調合された
混合物(仮焼成体とAl2 3 等との混合物)を粉砕し
(粉砕工程)、Pt等のリード線を組み込み、所望の形
状に金型等で成形(成形工程)して焼成(例えば140
0℃〜1600℃程度)を行う(焼成工程)と、混合焼
結体からなるサーミスタ素子が得られる。
【0032】なお、混合焼結体(M1M2)O3 ・Y2
3 ・Al2 3 においてM1にYが含まれる場合に
は、上述のように、調合1にて予めM1の酸化物として
のY23 を加えて、同様に混合及び仮焼成の各工程を
経て仮焼成体(M1M2)O3・Y2 3 を得、その
後、所望組成比の混合焼結体となるように、仮焼成体
(M1M2)O3 ・Y2 3 に適宜Al2 3 等を混合
して混合焼結体を得る。
【0033】ところで、上記の第2の調製工程において
は、CaO、CaCO3 およびCaSiO3 のうち少な
くとも1種とSiO2 とを焼結助剤として、仮焼成体と
Al 2 3 等との混合物に添加すれば、焼結密度がより
向上する。それによって、サーミスタ素子の抵抗値が安
定したり、焼成温度の変動に対して抵抗値のばらつきが
低減できる。
【0034】このようにして得られたサーミスタ素子
は、ペロブスカイト系化合物である(M1M2)O3
Al2 3 (またはAl2 3 とY2 3 )とが粒界を
介して均一混合された混合焼結体となっている。得られ
たサーミスタ素子を一般的な温度センサアッシーに組み
込み温度センサとする。そして、温度センサを高温炉に
入れ、室温(例えば27℃)から1000℃の温度範囲
における抵抗値及び抵抗温度係数β、更に、室温〜10
00℃の熱履歴における抵抗変化率ΔRの各特性を測定
する。
【0035】ここでβは、β(°K)=ln(R/
0 )/(1/K−1/K0 )で表される。なお、ln
は自然対数、R及びR0 は、各々大気中で室温(300
°K)及び1000℃(1273°K)におけるサーミ
スタ素子の抵抗値を示す。また、抵抗変化率ΔRは、各
温度センサにて、大気中1100℃で100時間放置の
高温耐久試験の温度センサの抵抗値変化について表すも
のであり、式ΔR(%)=(R’t /Rt )×100−
100で表される。なお、Rt は所定温度t(例えば5
00℃)における初期抵抗値、R’t は100時間放置
後の所定温度tにおける抵抗値を示す。
【0036】その結果、室温〜1000℃の温度範囲に
おいて、Rt は50Ω〜100kΩであり、βは200
0〜4000(°K)に調整可能とでき、ΔRも数%程
度のレベルを安定して実現できることが確認できた(図
5等参照)。ここで、上記のRt 範囲、β、ΔRの各値
をより確実に実現するには、a(M1M2)O3 ・bA
2 3 におけるモル分率a、bが、0.05≦a<
1.0、0<b≦0.95、a+b=1の関係にあるこ
とが好ましい。また、よって、本実施形態によれば、室
温〜1000℃の高温域にわたって温度を検知可能で、
室温〜1000℃の熱履歴等においても抵抗値の変化が
小さく安定した特性を持つワイドレンジ型サーミスタ素
子を提供することができる。
【0037】また、温度抵抗係数βは、従来のサーミス
タ素子よりも小さい2000〜4000(°K)に調整
可能とできるため、温度変動に伴う抵抗値のばらつきを
小さいものとすることができる。 (第2実施形態)本第2実施形態は、解決する手段の欄
にて述べた第1の製造方法に係る混合焼結体の製造方法
を提供するもので、上記第1実施形態と同様に第1及び
第2の調製工程を有するが、次の様にしたことが特徴で
ある。
【0038】すなわち、上記第2の調製工程中、調合さ
れた仮焼成体とAl2 3 等との混合物を粉砕する工程
(粉砕工程)において、粉砕後におけるこの混合物の平
均粒径を混合前のAl2 3 等の平均粒径以下とする。
以下、この点について主として述べる。本第2実施形態
の製造方法は、上記第1実施形態の製造方法によるサー
ミスタ素子を組み込んだ温度センサについてセンサの温
度精度を調査したところ、センサ毎に温度精度がばらつ
いていたという結果に基づいて見出された。ここで、温
度精度の評価方法は、例えば、次のようにして行った。
【0039】作製した多数(例えば100台)の温度セ
ンサの抵抗値−温度データから、所定温度(例えば50
0℃)の抵抗値の標準偏差σ(シグマ)を算出し、標準
偏差σの6倍を抵抗値のばらつき幅(両側)とし、この
抵抗値ばらつき幅を温度換算した値を半分にした値Aと
して、温度精度±A℃と表記して評価する。その結果、
センサ毎の温度精度±A℃は、±20〜30℃にばらつ
いていることがわかった。
【0040】一方、サーミスタ材料をSEM、EPMA
等により観察したところ、上記第1実施形態において、
第1の調製工程にて得られる仮焼成体の平均粒径(例え
ば(M1M2)O3 の場合、2〜5μm)が、これと混
合されるAl2 3 等の平均粒径(例えばAl2 3
場合、0.6μm以下)よりも大きいため、両者が均一
に混合せず混合焼結体の組成分布がばらつくことがわか
った。
【0041】そこで、更に上記第1実施形態の第2の調
製工程中において、調合され、粉砕された後の混合物
(仮焼成体とAl2 3 等との混合物)の平均粒径を種
々変えてこの平均粒径と温度精度±A℃との関係を調査
した。その結果、第2の調製工程の粉砕工程において、
前記の混合物の平均粒径を、混合前のAl2 3 等の平
均粒径以下とすれば、温度精度±A℃は、±10℃以下
に低減できることがわかった(図7参照)。
【0042】ここで、平均粒径を微粒化するための粉砕
手段としては、媒体攪拌ミル等を用いることができる。
また、媒体攪拌ミルの粉砕媒体としてはZrO2 製のボ
ール(例えばφ0.5mm)等を用いることができる。
本第2実施形態によれば、第2の調製工程の粉砕工程に
おいて、仮焼成体とAl2 3 等の微粒化により均一混
合が図られて、混合焼結体の組成変動が低減されるの
で、サーミスタ素子の抵抗値のばらつきを低減できる。
【0043】従って、上記第1実施形態の効果に加え
て、室温〜1000℃の温度域において、より良好なセ
ンサ温度精度(センサ毎の温度精度ばらつきの少ない)
を可能とするワイドレンジ型サーミスタ素子を提供でき
る。 (第3実施形態)本第3実施形態は、解決する手段の欄
にて述べた第2の製造方法に係る混合焼結体の製造方法
を提供するもので、上記第1実施形態と同様に第1及び
第2の調製工程を有するが、次の様にしたことが特徴で
ある。
【0044】すなわち、本実施形態では、上記第1の調
製工程中、調合1にて調合されたM1の酸化物及びM2
の酸化物等を混合、粉砕する工程(混合工程)におい
て、M2の原料をM1の原料と共に混合・粉砕して、こ
の混合粉砕物の平均粒径を混合前のM1の原料の平均粒
径以下でかつ0.5μm以下とし、仮焼成により仮焼成
体を得ることを特徴とする。
【0045】ここにおいて、上記混合、粉砕(混合工
程)の粉砕は、上記第2実施形態にて述べた媒体攪拌ミ
ル等により行うことができる。その後、第2の調製工程
において、仮焼成体とAl2 3 等とを調合し、粉砕し
て、Pt等のリード線を組み込み、所望の形状に金型等
で成形して焼成を行うと、混合焼結体からなるサーミス
タ素子が得られる。
【0046】本実施形態では、M1及びM2の原料の均
一微粒化により組成の均一混合が図られるので、仮焼成
体の組成ばらつきの低減、及び原料未反応物の存在の抑
制が実現でき、サーミスタ素子の抵抗値のばらつきを低
減できる。従って、上記第1実施形態の効果に加えて、
室温〜1000℃の温度域において、より良好なセンサ
温度精度(センサ毎の温度精度ばらつきの少ない)を可
能とするワイドレンジ型サーミスタ素子を提供できる。
【0047】なお、第2の調製工程の粉砕工程における
粉砕は、ボールミル等による粉砕でもよいが、第2実施
形態と同様に媒体攪拌ミル等を用いたものとしてもよ
い。それによって、上記した本実施形態の効果に加え
て、粉砕工程の後工程の成形及び焼成工程において、仮
焼成体とAl2 3 等との均一混合が図られ混合焼結体
の組成変動が低減されるという上記第2実施形態の効果
が付与され、より高いレベルでサーミスタ素子の抵抗値
のばらつきを低減できる。
【0048】また、第2及び第3実施形態のワイドレン
ジ型サーミスタ素子を用いた温度センサは、温度精度が
±10℃以下に抑制されているので、高度な温度精度を
要求されるマップ制御装置、例えば自動車の排気ガス用
の酸素センサの温度モニタ等に用いて好適である。次
に、上記各実施形態を以下に示す実施例1〜実施例8と
比較例1及び2とにより、更に詳述するが、上記各実施
形態はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
【実施例】(実施例1)本実施例1は、(M1M2)O
3 において、M1としてY、M2としてCrおよびMn
を選択したY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とAl2 3
から、Y(Cr 0.5 Mn0.5 )O3 ・Al2 3 の混合
焼結体を得るものである。
【0050】本実施例1のサーミスタ素子の製造工程を
図1に示す。この製造工程は、大きくは、図中の調合1
からY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 を得る迄の第1の調製
工程と、得られたY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とAl2
3 とを調合(調合2)してサーミスタ素子を得る迄第
2の調製工程とに分かれる。第1の調製工程では、ま
ず、いずれの純度も99.9%以上のY2 3 とCr 2
3 とMn2 3 を用意し、Y:Cr:Mnのモル比
が、2:1:1となるようにY2 3 とCr2 3 とM
2 3 を秤量して、全量500gとする(調合1)。
【0051】この秤量物を混合するため、ボールミルと
してAl2 3 またはZr2 3 製玉石φ15を2.5
kg、φ20を2.5kg入れた樹脂製ポット(容量5
リットル)を用い、このポットに、Y2 3 とCr2
3 とMn2 3 の全量を入れ、純水1500ccを加え
た後に、60rpmで6〜12時間混合する(混合工
程)。ここで、混合処理後の混合スラリーをレーザ式粒
度計で評価した結果、平均粒径は1.7μmであった
(図7参照)。
【0052】混合処理後に得られたY2 3 とCr2
3 とMn2 3 の混合スラリーを磁器製の蒸発皿に移
し、熱風乾燥機にて150℃で12時間以上乾燥し、Y
2 3とCr2 3 とMn2 3 との混合固形体を得
る。続いて、この混合固形体をライカイ機で粗粉砕し、
♯30メッシュ篩いを通し、Y2 3 とCr2 3 とM
2 3 との混合粉体を得る。
【0053】仮焼成工程では、この混合粉体を、99.
3%Al2 3 製ルツボに入れ、大気中で高温炉にて1
100〜1300℃で1〜2時間仮焼成し、Y(Cr
0.5 Mn0.5 )O3 を得る。仮焼成で塊状の固形となっ
たY(Cr0.5 Mn0.5 )O3をライカイ機で粗粉砕
し、♯30メッシュ篩いを通し、粉体とする。このY
(Cr0.5 Mn0.5 )O3 は、単独でサーミスタ材料と
して用いた場合、低抵抗および1000〜4000(°
K)の低抵抗温度係数を示す。ワイドレンジ型サーミス
タ材料としては、このY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 と、
サーミスタの抵抗値を安定化する材料であるAl2 3
を用いる。
【0054】第2の調製工程では、まず、所望の抵抗値
と抵抗温度係数となるように、Y(Cr0.5 Mn0.5
3 :Al2 3 の調合モル比(モル分率)を、40:
60となるように粉体とされたY(Cr0.5 Mn0.5
3 と市販の粉体のAl2 3 (純度99.9%以上、
平均粒径0.6μm)とを秤量し全量500gとする。
【0055】ここで、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とA
2 3 のモル分率を各々a、b(a+b=1)とすれ
ば、これらaおよびbは上記調合モル比と一致し、a=
0.38、b=0.62となる。また、焼成時に150
0〜1650℃の範囲で液相となるSiO2 、CaCO
3 を焼結助剤として用い、前記のY(Cr0.5
0.5 )O3 とAl2 3 の全量(500g)に対し
て、SiO2 は3重量%、CaCO3 は4.5重量%を
添加する(調合2)。
【0056】続いて、粉砕工程(図中、混合・粉砕)で
は、上記のY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とAl2 3
SiO2 とCaCO3 とを、ボールミルとしてのAl2
3またはZr2 3 製玉石φ15を2.5kg、φ2
0を2.5kg入れた樹脂製ポット(容量5リットル)
に入れ、純水1500ccを加えた後に、60rpmで
4時間以上混合、粉砕する。
【0057】また、上記の粉砕工程では、Y(Cr0.5
Mn0.5 )O3 とAl2 3 の固形分に対して、バイン
ダーとしてポリビニルアルコール(PVA)をY(Cr
0.5Mn0.5 )O3 とAl2 3 との混合粉100g当
たり1gを添加し、同時に混合、粉砕する。ここで、粉
砕後の混合粉砕スラリーをレーザ式粒度計で評価した結
果、平均粒径は2.5μmであった(図7参照)。
【0058】混合、粉砕後に得たY(Cr0.5
0.5 )O3 とAl2 3 の混合粉砕スラリーをスプレ
ードライヤで造粒、乾燥し、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O
3 とAl23 の混合粉体を得る。この混合粉体をサー
ミスタ原料とする。続いて、成形工程(金型成形)で
は、このサーミスタ原料を用いて、外径×長さがφ0.
3mm×10.5mmで、材質がPt100(純白金)
をリード線として、リード線をインサートして外径φ
1.74mmの金型にて圧力約1000kgf/cm2
で成形し、リード線が形成された外径φ1.75mmの
サーミスタ素子の成形体を得る。
【0059】焼成工程では、サーミスタ素子の成形体
を、Al2 3 製波型セッタに並べ、大気中1400〜
1600℃で1〜2時間焼成し、混合焼結体aY(Cr
0.5 Mn0.5 )O3 ・bAl2 3 からなる外径φ1.
60mmのサーミスタ素子を得る。図2に、得られたサ
ーミスタ素子1を示す。平行な2本のリード線11、1
2の各端部が、外径φ1.60mmの円柱形の素子部1
3に埋設された形となっている。このサーミスタ素子1
は、図3および図4に示す一般的な温度センサアッシー
に組み込み温度センサとする。
【0060】サーミスタ素子1は、図3に示すように、
筒状の耐熱性の金属ケース2内に配置されている。ま
た、図示しないが、リード線11、12は、金属パイプ
3の内部を通る金属パイプのリード線31、32に接続
されている。なお、図4に示すように、金属パイプ3の
内部には、マグネシア粉体33が充填されており、金属
パイプ3内のリード線31、32の絶縁性を確保してい
る。以上のように、温度センサが構成されている。
【0061】なお、以下、本実施例および他の実施例2
〜実施例8、および比較例1、比較例2において、作製
されるサーミスタ素子および温度センサは、図2ないし
図4のものと同構造であり、説明を省略する。ただし、
素子部13を構成する混合焼結体の材料組成は、各例に
おけるものとなっているのは勿論である。さらに、上記
の第2の調製工程において、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O
3 :Al 2 3 の調合モル比を、95:5および5:9
5となるように秤量し、以下、同様の手順にてサーミス
タ素子を作製し、温度センサに組み込む。ここで、本実
施例の各素子は、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 :Al2
3 の調合モル比(a:bに一致)が、40:60、9
5:5、5:95の順に、素子番号1、素子番号2、素
子番号3とする。
【0062】番号1〜3の素子を組み込んだ温度センサ
を、高温炉に入れ、室温(27℃)から1000℃ま
で、上記第1実施形態に記載のように、抵抗値の温度特
性を評価した。評価結果を図5の表に示す。ここで、図
5には、後述の実施例2〜実施例4のサーミスタ素子の
抵抗値温度特性の評価結果も示してある。先に結論を述
べると、実施例1〜実施例4は、それぞれ同じ混合焼結
体を、異なる製法で製造したものであるが、図5からわ
かるように、異なる製法であっても、調合モル比a:b
毎に同様の抵抗値温度特性が得られている。
【0063】図5に示すように、本実施例1のサーミス
タ素子は、aY(CrMn)O3 ・bAl2 3 のモル
分率(a+b=1)が、0.05≦a<1.0、0<b
≦0.95の範囲において、温度センサとして必要な5
0Ω〜100kΩの低抵抗値であり、抵抗温度係数βに
ついても、2000〜4000(°K)を示し、抵抗
値、抵抗温度係数を広い範囲で制御が可能である。それ
故、室温から1000℃の高温域にわたって温度を検知
することができる。
【0064】また、高温耐久試験(抵抗変化率ΔR)の
結果からも、抵抗値の変化の少ない安定した特性を持つ
ワイドレンジ型サーミスタ材料を提供することができる
ことがわかる。従って、本実施例1のサーミスタ素子は
本発明の目的を達成する。 (実施例2)本実施例2では、Y(Cr0.5 Mn0.5
3 とAl2 3 との混合焼結体(M1=Y、M2=C
r、Mn)を得るための原料として、まず、Y(Cr
0.5 Mn0.5 )O3 を調製する。本実施例2のサーミス
タ素子の製造工程を図6に示す。本例は上記第2の実施
形態で述べた第1の製造方法に係る製造方法であり、第
2の調整工程における粉砕工程をボールミルでなく媒体
攪拌ミルにて行う。
【0065】出発原料のY2 3 とCr2 3 とMn2
3 は、いずれも99.9%の高純度な原料を用いる。
なお、Y2 3 とCr2 3 とMn2 3 の平均粒径
は、それぞれ1.0μm、2.0〜4.0μm、7.0
〜15.0μmである。各原料の平均粒径は上述の実施
例1及び後述の実施例3〜実施例8、比較例1及び2に
おいても同様のものとした。
【0066】第1の調製工程(図中、調合1からY(C
0.5 Mn0.5 )O3 迄)では、まず、Y(Cr0.5
0.5 )O3 は、Y2 3 とCr2 3 とMn2 3
をモル比(Y:Cr:Mn)が2:1:1となるよう
に、Y2 3 を秤量し、全量500gとする(調合
1)。この秤量物を混合するため、ボールミルとしてA
2 3 又はZrO2 製玉石φ15を2.5kg、φ2
0を2.5kgを入れた樹脂製ポット(容量5リット
ル)を用い、このポットに入れ、純水1500ccを加
えた後、60rpmで4時間混合する(混合工程)。こ
こで、混合処理後の混合スラリーをレーザ式粉度計で評
価した結果、平均粒径は1.7μm(ミクロンメータ)
であった(図7参照)。これは、混合前のY2 3 の平
均粒径1.0μmよりも大きい。
【0067】混合処理後に得たY2 3 とCr2 3
Mn2 3 の混合スラリーを磁器製蒸発皿に移し、熱風
乾燥機にて100〜150℃で12〜17時間乾燥し、
23 とCr2 3 とMn2 3 の混合物を得る。Y
2 3 とCr2 3 とMn23 の混合固形体をライカ
イ機で粗粉砕し、#30メッシュ篩いで通し、Y2 3
とCr2 3 とMn2 3 の混合物粉体を得る。
【0068】仮焼成工程では、このY2 3 とCr2
3 とMn2 3 の混合物粉体を、99.3%Al2 3
製ルツボに入れ、常圧雰囲気(空気中)で高温炉にて1
100℃で2時間熱処理し、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O
3 を得る。熱処理の塊状の固形となったY(Cr0.5
0.5 )O3 は、ライカイ機で粗粉砕し、#30メッシ
ュ篩いで通し、粉体とする。
【0069】本サーミスタ材料は、上記Y(Cr0.5
0.5 )O3 とAl2 3 とを用いる。第2の調製工程
(図中、調合2以降)では、まず、所望の抵抗値と抵抗
温度係数となるように、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O
3 (平均粒径2〜5μm)とAl23 (平均粒径0.
6μm)とを調合モル比(Y(Cr0.5 Mn0.5
3 :Al2 3 )が40:60となるようにY(Cr
0.5 Mn0.5 )O3 とAl2 3を秤量し合計2000
gとする。
【0070】また、焼成時に1500〜1650℃の範
囲で液相となるSiO2 、CaCO 3 を焼結助剤として
用い、前記Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とAl2 3
計2000gに対して、SiO2 は3重量%の60g、
CaCO3 は4.5重量%の90gを添加する(調合
2)。従って、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3
とSiO2 とCaCO3 とを合計した2150gを粉砕
原料とする。
【0071】次いで粉砕工程(図中、混合・粉砕)で
は、サーミスタ原料の微粒化を行うために、媒体攪拌ミ
ルとしてパールミル装置(アシザワ(株)製 RV1
V、有効容積:1.0リットル 実容量:0.5リット
ル)を使用する。このパールミル装置による操作条件
は、粉砕媒体としてジルコニア製ボール直径0.5mm
を3.0kg使用し攪拌槽体積の80%をジルコニア製
ボールで充填する。
【0072】操作条件は、周速12m/sec、回転数
3110rpmとする。なお、粉砕原料2150gに対
して分散媒に蒸留水を4.5リットル用い、同時にバイ
ンダーと離型剤と分散剤とを添加して10時間の混合・
粉砕を行う。バインダーとしてはポリビニルアルコール
(PVA)を粉砕原料100g当り1g添加する。粉砕
処理したサーミスタ材料の原料スラリーをレーザ式粉度
計で評価した結果、平均粒径は0.4μmであった(図
7参照)。これは、混合前のAl2 3 の平均粒径0.
6μmよりも小さい。
【0073】得られたサーミスタ材料の原料スラリー
は、スプレードライヤで乾燥室入口温度200℃、出口
温度120℃の条件で造粒・乾燥する。得られたサーミ
スタ材料の造粒粉は平均粒径30μmの球状で、この造
粒粉を用いてサーミスタ素子の成形を行う。成形工程は
金型成形法で行い、オス金型にPt100(φ0.3×
10.5)をリード線として装填し、φ1.74のメス
金型に造粒粉を入れ、圧力約1000kgf/cm2
成形し、リード線が付与されたサーミスタ素子の成形体
を得る。そして、焼成工程では、サーミスタ素子の成形
体を、Al2 3 製の波型セッタに置き、1500〜1
600℃で1〜2時間焼成し、サーミスタ素子を得る。
【0074】得られたサーミスタ素子及びこのサーミス
タ素子を組み込んだ温度センサは、図2〜図4に示すも
のと同一構造である。さらに、上記の第2の調製工程に
おいて、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 :Al2 3 の調
合モル比を、95:5および5:95となるように秤量
し、同様の手順にてサーミスタ素子を作製し、温度セン
サに組み込む。
【0075】ここで、本実施例2の各素子は、Y(Cr
0.5 Mn0.5 )O3 :Al2 3 の調合モル比a:b
が、40:60、95:5、5:95の順に、素子番号
4、素子番号5、素子番号6とする。素子番号4〜6の
サーミスタ素子の温度センサにおける抵抗値温度特性を
評価した結果を図5に示す。本実施例2のサーミスタ素
子も、抵抗値温度特性に関して、実施例1と同様の効果
を有するサーミスタ素子を提供できる。
【0076】また、本実施例2のサーミスタ素子につい
て、上記第2実施形態にて述べた方法にて温度精度の評
価を行った。その結果を図7に示す。ここで図7は、実
施例1〜実施例8のサーミスタ素子(a:b=40:6
0)について、上記第2実施形態にて述べた方法にて求
めた温度精度(±A℃)を示す表である。なお、図7
中、Y(CrMn)O3 は、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O
3 を表す。また、図中、粉砕時の原料成分は、第2の調
製工程の粉砕工程における原料成分(本例では、Y(C
0.5 Mn0.5 )O3 とY2 3 )を示す。また、混合
後の平均粒径(μm)は、第1の調製工程の混合工程に
て混合処理後の混合スラリーにおける平均粒径(本例で
は、上記1.7μm)を示し、粉砕後の平均粒径(μ
m)は、第2の調製工程の粉砕工程にて粉砕後の原料ス
ラリーにおける平均粒径(本例では、上記0.4μm)
を示す。他の実施例1及び実施例3〜実施例8において
も同様である。
【0077】本実施例2の素子番号4(a:b=40:
60)のサーミスタ素子について、その温度精度は、従
来法で製造した実施例1の素子番号(a:b=40:6
0)のサーミスタ素子(±23℃)に比べて、±10℃
と良好な値が得られた。 (実施例3)本実施例3では、Y2 3 とCr2 3
Mn2 3 とCaCO3 を原料に、Y(Cr0.5 Mn
0.5 )O3 ・Al2 3 の混合焼結体(M1=Y、M2
=Cr、Mn)を得る。本実施例2のサーミスタ素子の
製造工程を図8に示す。
【0078】本実施例は、上記第2及び第3実施形態に
て述べた第1の製造方法と第2の製造方法を組み合わせ
たものである。本例では、第1の調製工程(図中、調合
1からY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2 3 )の混合
工程、及び第2の調製工程(図中、調合2以降)の粉砕
工程において、共に媒体攪拌ミルを用いる。まず、いず
れの純度も99.9%以上のY2 3 とCr2 3 とM
2 3 とCaCO3 を用意する。調合1では、サーミ
スタ素子として所望の抵抗値と抵抗温度係数となるよう
に、これら各成分を調合する。
【0079】調合は、上記実施例1と同様に、Y:C
r:Mnのモル比が2:1:1となるように、Y2 3
とCr2 3 とMn2 3 を秤量して全量2000gと
する。さらにCaCO3 を36g添加し、Y2 3 とC
2 3 とMn2 3 のとCaCO3 を合計した203
6gを混合原料とする(調合1)。次いで、混合工程で
は、原料を微粒化するために媒体攪拌ミルを用いる。本
実施例の媒体攪拌ミルは、上記実施例2と同様のパール
ミル装置を用い、混合条件も同様としている。
【0080】操作条件は、周速12m/sec、回転数
3110rpmで行う。なお、粉砕原料2036gに対
して分散媒に蒸留水を4.5リットル用い、同時に分散
剤とバインダーを添加して10時間の混合、粉砕を行
う。バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PV
A)を混合原料2036g当り20g添加する。上記混
合工程にて、混合・粉砕処理したサーミスタ材料の原料
スラリーをレーザ式粒度計で評価した結果、平均粒径は
0.3μmであった(図7参照)。これは混合前のY2
3 の平均粒径(1.0μm)よりも小さく且つ0.5
μmより小さい。
【0081】得られた原料スラリーは、スプレードライ
ヤで乾燥室入口温度200℃、出口温度120℃の条件
で乾燥する。得られたサーミスタ原料粒は平均粒径30
μmの球状で、この原料粉を99.3%Al2 3 製ル
ツボに入れ、高温炉で大気中にて1100〜1300℃
で1〜2時間仮焼成し、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3
得る(仮焼成工程)。
【0082】仮焼成で塊状の固形となったY(Cr0.5
Mn0.5 )O3 をライカイ機で粗粉砕し、#30メッシ
ュ篩いで通し、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 の粉体を得
る。次いで実施例1と同様に、調合2において、上記Y
(Cr0.5 Mn0.5 )O3の粉体とAl2 3 (平均粒
径0.6μm)を用意する。Y(Cr0.5 Mn0.5)O
3 とAl2 3 との調合モル比は40:60とし、秤量
して全量2000gとする。
【0083】粉砕工程では上記混合工程と同様にパール
ミル装置を使用する。そして、調合2で用意された前駆
体に、分散剤、バインダー、離型剤を添加し、混合・粉
砕して微粒化する。このパールミル装置による粉砕条件
は、上記混合工程の条件と同じである。粉砕処理をした
サーミスタ材料の原料スラリーをレーザ式粒度計で評価
した結果、平均粒径は0.3μmであった(図7参
照)。これは、調合2にて調合(混合)する前のAl2
3 の平均粒径0.6μmよりも小さい。
【0084】粉砕後に得たY(Cr0.5 Mn0.5 )O3
・Al2 3 のスラリーは、上記乾燥工程の条件同様
に、スプレードライヤで造粒し、Y(Cr0.5
0.5 )O3・Al2 3 の造粒粉を得る。この造粒粉
を用いてサーミスタ素子の成形を行う。成形工程は金型
成形法で行い、オス金型にPt100(φ0.3mm×
10.5mm)をリード線として装填し、外径φ1.8
9mmのメス金型にY(Cr0. 5 Mn0.5 )O3 ・Al
2 3 の造粒粉を入れ、圧力約1000Kgf/cm2
で成形し、リード線が付与されたサーミスタ素子の成形
体を得る。
【0085】サーミスタ素子の成形体は、Al2 3
波型セッタに並べ、大気中1400〜1600℃で1〜
2時間焼成し、外径φ1.60mmサーミスタ素子(混
合焼結体)を得る。このサーミスタ素子を温度センサア
ッシーに組み込み、温度センサとする。これらサーミス
タ素子及び温度センサの構造は、図2ないし図4のもの
と同構造である。
【0086】さらに、調合2で、Y(Cr0.5
0.5 )O3 :Al2 3 の調合モル比(a:b)が、
95:5及び5:95となるように調製したサーミスタ
原料で、同様にサーミスタ素子を製作し、温度センサに
組み込んだ。本実施例3において、上記モル比a:b
が、40:60、95:5、5:95の順に、素子番号
7、素子番号8、素子番号9とし、それらの抵抗値温度
特性の評価結果を図5に示した。本実施例3のサーミス
タ素子も、抵抗値温度特性に関して、実施例1と同様の
効果を有するサーミスタ素子を提供できる。
【0087】また、本実施例3の素子番号7(a:b=
40:60)のサーミスタ素子について、上記第2実施
形態にて述べた方法にて温度精度の評価を行った結果を
図7に示す。本実施例による温度センサの温度精度は、
従来法で製造した実施例1(±23℃)及び上記実施例
2(±10℃)に比べて、±5℃と良好な値が得られ
た。
【0088】(実施例4)本実施例4は、Y(Cr0.5
Mn0.5 )O3 とAl2 3 から、Y(Cr0.5Mn
0.5 )O3 ・Al2 3 の混合焼結体(M1=Y、M2
=Cr、Mn)を得る。本実施例4のサーミスタ素子の
製造工程を図9に示す。本実施例4は、上記第3実施形
態にて述べた第2の製造方法に係るものである。本例で
は、第1の調製工程(図中、調合1からY(Cr0.5
0.5 )O3 )の混合工程において媒体攪拌ミルを、及
び第2の調製工程(図中、調合2以降)の粉砕工程にお
いてボールミルを用いる。つまり、上記実施例3におけ
る粉砕工程で媒体攪拌ミルの代わりにボールミルを用い
る。
【0089】本実施例の第1の調製工程は、上記実施例
3と同様であり、説明を省略する。なお、本実施例4に
おいても、調合1において、混合工程にて混合・粉砕処
理したサーミスタ材料の原料スラリーをレーザ式粒度計
で評価した結果、平均粒径は0.3μm(図7参照)で
あった。そして、第1の調製工程から、仮焼成されたY
(Cr0.5 Mn0.5 )O3 の粉体を得る。
【0090】調合2では。サーミスタ素子として所望の
抵抗値と抵抗温度係数とすべく、aY(Cr0.5 Mn
0.5 )O3 ・bAl2 3 のaとbが、a:b=40:
60となるように、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 (粉
体)とAl2 3 (平均粒径0.6μm)とを秤量して
全量2000gとする。次いで、粉砕工程では、調合2
で秤量されたY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とAl2 3
との秤量物を混合・粉砕するために、ボールミル装置を
使用する。このボールミル装置による粉砕条件として
は、Al2 3 製玉石φ15を10kg、φ20を10
kgを入れた樹脂製ポット(容量20リットル)の中
に、上記混合秤量物2000gを入れ、純水6000c
cを加えた後、60rpmで6時間混合・粉砕する。
【0091】粉砕処理したサーミスタ材料の原料スラリ
ーをレーザ式粒度計で評価した結果、平均粒径1.6μ
mであった(図7参照)。これは、調合2にて調合する
前のAl2 3 の平均粒径0.6μmよりも大きい。ま
た、粉砕工程で、分散剤、バインダー、離型剤を添加
し、同時に粉砕する。粉砕後に得たY(Cr0.5 Mn
0.5 )O3 ・Al2 3 のスラリーは、実施例2と同様
に、造粒、金型成形、焼成し、サーミスタ素子を得る。
このサーミスタ素子は、実施例2と同様に、温度センサ
アッシーに組み込み、温度センサとする。これらサーミ
スタ素子及び温度センサの構造は、図2ないし図4のも
のと同構造である。
【0092】さらに、調合2で、Y(Cr0.5
0.5 )O3 :Al2 3 の調合モル比(a:b)が、
95:5及び5:95となるように調製したサーミスタ
原料で、同様にサーミスタ素子を製作し、温度センサに
組み込んだ。本実施例4において、上記モル比a:b
が、40:60、95:5、5:95の順に、素子番号
10、素子番号11、素子番号12とし、それらの抵抗
値温度特性の評価結果を図5に示した。本実施例4のサ
ーミスタ素子も、抵抗値温度特性に関して、実施例1と
同様の効果を有するサーミスタ素子を提供できる。
【0093】また、本実施例4の素子番号10(a:b
=40:60)のサーミスタ素子について、上記第2実
施形態にて述べた方法にて温度精度の評価を行った結果
を図7に示す。本実施例による温度センサの温度精度
は、従来法で製造した実施例1(±23℃)に比べて、
±9℃と良好な値が得られた。 (比較例1)比較例1として、抵抗値を安定化するAl
2 3 及び(Y2 3 +Al2 3)を用いないで、Y
(Cr0.5 Mn0.5 )O3 を単独組成とするサーミスタ
素子を用いる温度センサについて説明する。
【0094】上記実施例1と同じ製造方法により、Y
(Cr0.5 Mn0.5 )O3 を得る。原料として調製した
Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 を用いて、温度センサとし
て評価した結果を図10の表に示す。抵抗値特性の評価
方法は、実施例1と同様に行った。図10から明らかな
ように、抵抗値を安定化するAl2 3 を用いない場合
には、1000℃の高温域での抵抗値(40Ω)が低す
ぎるため温度を検出できない。また、高温耐久試験(抵
抗変化率)の結果からも。抵抗変化率ΔRが、±20%
を越え、安定した抵抗値の温度特性を持つサーミスタ素
子を提供することができない。
【0095】従って、本比較例1におけるY(Cr0.5
Mn0.5 )O3 単独組成のサーミスタ素子は、本発明の
目的とする温度センサの素子としては使用できない。 (比較例2)比較例2として、抵抗値を安定化するAl
2 3 及び(Y2 3 +Al2 3)を用いないで、Y
TiO3 を単独組成とするサーミスタ素子を用いる温度
センサについて説明する。温度センサとして評価した結
果を図10の表に示す。抵抗値特性の評価方法は、実施
例1と同様に行った。
【0096】図10から明らかなように、YTiO3
独組成のサーミスタ素子では、室温(27℃)の低温域
での抵抗値が著しく高く、1000kΩより大となるた
め温度を検出できない。また、高温耐久試験の結果から
も、抵抗変化率ΔRが、±20%を越え、安定した抵抗
値の温度特性を持つサーミスタ素子を提供することがで
きない。
【0097】従って、YTiO3 単独組成のサーミスタ
素子は、本発明の目的とする温度センサの素子としては
使用できない。ところで、以上のごとく、実施例1〜実
施例4を比較すると、いずれのサーミスタ素子も、本発
明の目的である良好な抵抗値の温度特性を示すが、セン
サの温度精度においては、実施例2〜実施例4すなわち
上記第2及び第3実施形態にて示した製造方法が、従来
製法よりも優れているといえる。
【0098】つまり、実施例2〜実施例4記載の製造方
法では、良好な抵抗値の温度特性を達成しつつ、サーミ
スタ材料の微粒化により組成の均一混合をはかり、混合
焼結体(M1M2)O3 ・Al2 3 の組成変動を低減
することで、センサ毎の抵抗値のバラツキを低減でき
る。上記実施例1〜4は混合焼結体Y(Cr0.5 Mn
0.5 )O3 ・Al2 3 を得るものであったが、以下に
示す実施例5〜8は混合焼結体Y(Cr0.5 Mn0.5
3 ・Y2 3 ・Al2 3 を得るものである。なお、
混合工程及び粉砕工程におけるボールミル又は媒体攪拌
ミルの適用について、実施例5、6、7、8は、それぞ
れ実施例1、2、3、4に対応している。
【0099】(実施例5)本実施例5の製造工程を図1
1に示す。本例は、実施例1と同様に第1の調製工程
(図中、調合1からY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 )を行
い、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 の粉体を得、更に、Y
2 3 とAl2 3 を加えて第2の調整工程(図中、調
合2以降)を行うものであり、混合工程及び粉砕工程共
にボールミルを用いる。
【0100】調合2でサーミスタ素子として所望の抵抗
値と抵抗温度係数となるように、aY(Cr0.5 Mn
0.5 )O3 ・b(Al2 3 +Y2 3 )のaとbが、
a:b=40:60で、且つAl2 3 :Y2 3 の比
が、50:10となるようにY(Cr0.5 Mn0.5 )O
3 とAl2 3 とY2 3 を秤量して全量2000gと
する。
【0101】秤量したY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とA
2 3 とY2 3 を、実施例1と同様に粉砕処理(粉
砕工程)したサーミスタ材料の原料スラリーをレーザ式
粒度計で評価した結果、平均粒径は2.3μmであった
(図7参照)。これは、混合前のY2 3 の平均粒径約
1μm及びAl2 3 の平均粒径約0.6μmよりも大
きい。
【0102】粉砕後に得たY(Cr0.5 Mn0.5 )O3
とAl2 3 とY2 3 の混合粉砕スラリーをスプレー
ドライヤで造粒し、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とAl
2 3 とY2 3 の混合造粒粉を得る。続いて、成形工
程では、この混合造粒粉を用いて、外径・長さがφ0.
3mm×10.5mmで材質がPt100(純白金)を
リード線として、リード線をインサートして外径φ1.
89mmの金型にて圧力約1000Kgf/cm2 で成
形し、リード線が形成された外径φ1.89mmのサー
ミスタ素子の成形を得る。
【0103】そして、焼成工程にて、サーミスタ素子の
成形体をAl2 3 製波型セッタに並べ、大気中140
0〜1600℃で1〜2時間焼成し、外径φ1.60m
mのサーミスタ素子を得る。このサーミスタ素子を実施
例1と同様に、温度センサアッシーに組み込み、温度セ
ンサとする。作製されたサーミスタ素子および温度セン
サは、図2ないし図4のものと同構造である。
【0104】さらに、上記の第2の調製工程において、
aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・b(Al2 3 +Y2
3 )の調合モル比a:bが、a:b=95:5及び
5:95(ここで、Al2 3 :Y2 3 の比は50:
10)となるように秤量し、以下、同様の手順にてサー
ミスタ素子を作製し、温度センサに組み込んだ。ここ
で、本実施例の各素子は、調合モル比a:bが、40:
60、95:5、5:95の順に、素子番号13、素子
番号14、素子番号15とする。
【0105】番号13〜15の素子を組み込んだ温度セ
ンサについて、実施例1と同様に抵抗値の温度特性を評
価した。評価結果を図12の表に示す。ここで、図12
には、後述の実施例6〜実施例8のサーミスタ素子の抵
抗値温度特性の評価結果も示してある。先に結論を述べ
ると、実施例5〜実施例8は、それぞれ同じ混合焼結体
を、異なる製法で製造したものであるが、図12からわ
かるように、異なる製法であっても、調合モル比a:b
毎に同様の抵抗値温度特性が得られている。
【0106】図12に示す様に、本実施例5のサーミス
タ素子は、aY(Cr0.5 Mn0.5)O3 ・b(Al2
3 +Y2 3 )のモル分率(a+b=1)が、0.0
5≦a<1.0、0<b≦0.95の範囲において温度
センサとして必要な50Ω〜100kΩの低抵抗値であ
り、抵抗温度係数βについても、2000〜4000
(K)を示し、それ故、室温から1000℃の高温域に
わたって温度を検知できる。
【0107】また、高温耐久試験(抵抗変化率ΔR)の
結果からも、抵抗値の変化の少ない安定した特性を持つ
サーミスタ素子を提供することができる。従って、本例
のサーミスタ素子は本発明の目的を達成する。また、本
実施例5の素子番号13(a:b=40:60)のサー
ミスタ素子を用いた温度センサは、温度精度として±2
2℃が得られた(図7参照)。
【0108】(実施例6)本実施例6の製造工程を図1
3に示す。本例は、実施例2と同様にY(Cr0. 5 Mn
0.5 )O3 の粉体を得、更に、Y2 3 とAl2 3
加えて第2の調整工程(図中、調合2以降)にて媒体攪
拌ミルによる粉砕を行うものである。調合2でサーミス
タ素子として所望の抵抗値と抵抗温度係数となるよう
に、aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・b(Al2 3
2 3 )のaとbが、a:b=40:60(Al
2 3 :Y2 3 比は50:10)となるように、Y
(Cr0. 5 Mn0.5 )O3 とAl2 3 とY2 3 を秤
量して全量2000gとする。
【0109】秤量したY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とA
2 3 とY2 3 を、実施例2と同様に粉砕処理(粉
砕工程)したサーミスタ材料の原料スラリーをレーザ式
粒度計で評価した結果、平均粒径は0.3μmであった
(図7参照)。これは、混合前のY2 3 の平均粒径約
1μm及びAl2 3 の平均粒径約0.6μmよりも小
さい。
【0110】粉砕後に得たY(Cr0.5 Mn0.5 )O3
とAl2 3 とY2 3 の混合粉砕スラリーを、上記実
施例5と同様に処理し、混合造粒粉を得る。続いて、こ
の混合造粒粉を用いて、上記実施例5と同様に成形工
程、及び、焼成工程を行い、外径φ1.60mmのサー
ミスタ素子を得る。このサーミスタ素子を実施例1と同
様に、温度センサアッシーに組み込み、温度センサとす
る。作製されたサーミスタ素子および温度センサは、図
2ないし図4のものと同構造である。
【0111】さらに、上記の第2の調製工程において、
aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・b(Al2 3 +Y2
3 )の調合モル比a:bが、a:b=95:5及び
5:95(ここで、Al2 3 :Y2 3 の比は50:
10)となるように秤量し、以下、同様の手順にてサー
ミスタ素子を作製し、温度センサに組み込んだ。ここ
で、本実施例の各素子は、調合モル比a:bが、40:
60、95:5、5:95の順に、素子番号16、素子
番号17、素子番号18とする。
【0112】番号16〜18の素子を組み込んだ温度セ
ンサについて、実施例1と同様に抵抗値の温度特性を評
価した結果を図12の表に示す。本実施例6のサーミス
タ素子も、抵抗値温度特性に関して、実施例5と同様の
効果を有するサーミスタ素子を提供できる。また、本実
施例6の素子番号16(a:b=40:60)のサーミ
スタ素子を用いた温度センサの温度精度は、従来法で製
造した実施例5(±22℃)に比べて、±9℃と良好な
値が得られた(図7参照)。
【0113】(実施例7)本実施例7の製造工程を図1
4に示す。本例は実施例3と同様に、第1の調製工程
(図中、調合1からY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 )にて
媒体攪拌ミルを用い、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 の粉
体を得、更にY2 3 とAl2 3 を加えて第2の調整
工程(図中、調合2以降)にて媒体攪拌ミルによる粉砕
を行うものである。
【0114】調合2では、サーミスタ素子として所望の
抵抗値と抵抗温度係数となるように、aY(Cr0.5
0.5 )O3 ・b(Al2 3 2 3 )のaとbが、
a:b=40:60(Al2 3 :Y2 3 比は50:
10)となるように、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とA
2 3 とY2 3 を秤量して全量2000gとする。
【0115】秤量したY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とA
2 3 とY2 3 を、実施例3と同様に粉砕処理(粉
砕工程)したサーミスタ材料の原料スラリーをレーザ式
粒度計で評価した結果、平均粒径は0.3μmであった
(図7参照)。これは、混合前のY2 3 の平均粒径約
1μm及びAl2 3 の平均粒径約0.6μmよりも小
さい。
【0116】粉砕後に得たY(Cr0.5 Mn0.5 )O3
とAl2 3 とY2 3 の混合粉砕スラリーを、上記実
施例5と同様に処理し、混合造粒粉を得る。続いて、こ
の混合造粒粉を用いて、上記実施例5と同様に成形工
程、及び、焼成工程を行い、外径φ1.60mmのサー
ミスタ素子を得る。このサーミスタ素子を実施例1と同
様に、温度センサアッシーに組み込み、温度センサとす
る。作製されたサーミスタ素子および温度センサは、図
2ないし図4のものと同構造である。
【0117】さらに、上記の第2の調製工程において、
aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・b(Al2 3 +Y2
3 )の調合モル比a:bが、a:b=95:5及び
5:95(ここで、Al2 3 :Y2 3 の比は50:
10)となるように秤量し、以下、同様の手順にてサー
ミスタ素子を作製し、温度センサに組み込んだ。ここ
で、本実施例の各素子は、調合モル比a:bが、40:
60、95:5、5:95の順に、素子番号19、素子
番号20、素子番号21とする。
【0118】番号19〜21の素子を組み込んだ温度セ
ンサについて、実施例1と同様に抵抗値の温度特性を評
価した結果を図12の表に示す。本実施例7のサーミス
タ素子も、抵抗値温度特性に関して、実施例5と同様の
効果を有するサーミスタ素子を提供できる。また、本実
施例7の素子番号19(a:b=40:60)のサーミ
スタ素子を用いた温度センサの温度精度は、実施例5
(±22℃)及び実施例6に比べて、±5℃と良好な値
が得られた(図7参照)。
【0119】(実施例8)本実施例8の製造工程を図1
5に示す。本例は、実施例4と同様に第1の調製工程
(図中、調合1からY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 )を行
い、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 の粉体を得、更に、Y
2 3 とAl2 3 を加えて第2の調整工程(図中、調
合2以降)を行うものであり、混合工程にてボールミ
ル、粉砕工程にて媒体攪拌ミルを用いる。
【0120】調合2では、サーミスタ素子として所望の
抵抗値と抵抗温度係数となるように、aY(Cr0.5
0.5 )O3 ・b(Al2 3 2 3 )のaとbが、
a:b=40:60(Al2 3 :Y2 3 比は50:
10)となるように、Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とA
2 3 とY2 3 を秤量して全量2000gとする。
【0121】秤量したY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 とA
2 3 とY2 3 を、実施例4と同様に粉砕処理(粉
砕工程)したサーミスタ材料の原料スラリーをレーザ式
粒度計で評価した結果、平均粒径は1.5μmであった
(図7参照)。これは、混合前のY2 3 の平均粒径約
1μm及びAl2 3 の平均粒径約0.6μmよりも大
きい。
【0122】粉砕後に得たY(Cr0.5 Mn0.5 )O3
とAl2 3 とY2 3 の混合粉砕スラリーを、上記実
施例5と同様に処理し、混合造粒粉を得る。続いて、こ
の混合造粒粉を用いて、上記実施例5と同様に成形工
程、及び、焼成工程を行い、外径φ1.60mmのサー
ミスタ素子を得る。このサーミスタ素子を実施例1と同
様に、温度センサアッシーに組み込み、温度センサとす
る。作製されたサーミスタ素子および温度センサは、図
2ないし図4のものと同構造である。
【0123】さらに、上記の第2の調製工程において、
aY(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・b(Al2 3 +Y2
3 )の調合モル比a:bが、a:b=95:5及び
5:95(ここで、Al2 3 :Y2 3 の比は50:
10)となるように秤量し、以下、同様の手順にてサー
ミスタ素子を作製し、温度センサに組み込んだ。ここ
で、本実施例の各素子は、調合モル比a:bが、40:
60、95:5、5:95の順に、素子番号22、素子
番号23、素子番号24とする。
【0124】番号22〜24の素子を組み込んだ温度セ
ンサについて、実施例1と同様に抵抗値の温度特性を評
価した結果を図12の表に示す。本実施例8のサーミス
タ素子も、抵抗値温度特性に関して、実施例5と同様の
効果を有するサーミスタ素子を提供できる。また、本実
施例8の素子番号22(a:b=40:60)のサーミ
スタ素子を用いた温度センサの温度精度は、実施例5
(±22℃)に比べて、±9℃と良好な値が得られた
(図7参照)。
【0125】ところで、実施例5〜実施例8を比較する
と、いずれのサーミスタ素子も、本発明の目的である良
好な抵抗値の温度特性を示すが、センサの温度精度にお
いては、実施例6〜実施例8すなわち上記第2及び第3
実施形態にて示した製造方法が、従来製法よりも優れて
いるといえる。つまり、実施例6〜実施例8記載の製造
方法では、良好な抵抗値の温度特性を達成しつつ、サー
ミスタ材料の微粒化により組成の均一混合をはかり、混
合焼結体(M1M2)O3 ・Y2 3 ・Al2 3 の組
成変動を低減することで、センサ毎の抵抗値のバラツキ
を低減できる。
【0126】(他の変形例)なお、Y2 3 等のイット
リア化合物と、Cr2 3 等のクロム化合物と、Mn2
3 等のマンガン化合物と、Al2 3 等のアルミニウ
ム化合物から、上記実施例1〜8のようなY(CrM
n)O3 と、Al2 3 (またはAl2 3 とY
2 3 )の混合焼結体からなるワイドレンジ型サーミス
タ素子を調製できることはいうまでもない。
【0127】また、上記の実施例1〜8では、第1の調
製工程において、仮焼成前の乾燥を熱風乾燥して混合固
形体をライカイ機で粗粉砕して仮焼成を行っているが、
組成の均一性を図るために、混合工程でバインダーを添
加し、スプレードライヤにより造粒、乾燥した混合粉を
仮焼成を実施することによっても、ワイドレンジ型サー
ミスタ素子を提供することができる。
【0128】同様に、組成の均一性を図るために、サー
ミスタ素子の製造工程の仮焼成を2回以上実施すること
によってもワイドレンジ型サーミスタ素子を提供するこ
とができる。上記各実施例1〜8では、リード線の線
径、長さをφ0.3×10.5(mm)、材質をPt1
00(純白金)としていたが、温度センサの形状、寸法
及び温度センサの使用環境条件に応じて、リード線の形
状、線径、長さを任意に選択でき、リード線の材質はP
t100(純白金)のみならず、サーミスタ素子の焼成
温度に耐えうる融点を持ち、リード線としての導電性が
得られる、例えばPt80Ir20(白金80%、イリ
ジウム20%)等の高融点金属も使用できる。
【0129】さらに、リード線抜けを防止する目的で、
断面形状を円形以外、例えば矩形、半円等の形状とする
ことも可能であり、リード線表面にローレット加工等で
凹凸を付与し、サーミスタ素子のリード線として使用し
てもよい。また、上記各実施例1〜8では、サーミスタ
素子の成形方法としてリード線をインサートして、金型
成形を行っているが、サーミスタ原料(粉体)を用いて
円柱成形体を成形後に、リード線を付与するための穴を
開け、リード線を装填して焼成することで、リード線を
形成し、サーミスタ素子を得ることができる。
【0130】また、上記円柱成形体を焼成後にリード線
を形成し、サーミスタ素子を得ることも可能である。ま
た、サーミスタ素子の原料にバインダー、樹脂材料等を
混合添加して、押し出し成形に好適な粘度、固さに調整
し、押し出し成形により、リード線を付与するための穴
が形成されたサーミスタ素子の成形体を得、リード線を
装填して焼成することで、リード線を形成したサーミス
タ素子を得ることができる。
【0131】また、サーミスタ素子の原料に、バインダ
ー、樹脂材料等を混合添加して、シート成形に好適な粘
度、固さに調整し、厚さ200μmのシート状のサーミ
スタシートを得る。このサーミスタシートを5枚積層し
厚さを1mmとし、金型により外径がφ1.8mmリー
ド線を付与するための穴を直径φ0.4mmで形成され
たサーミスタ素子の成形体を得、リード線を装填して焼
成することで、リード線を形成したサーミスタ素子の成
形体を得ることができる。
【0132】なお、上記実施例5〜実施例8において、
調合1にてY2 3 を多めに入れて仮焼成してY2 3
が過剰の仮焼成体Y(Cr0.5 Mn0.5 )O3 ・Y2
3 を作り、その後、調合2にて混合焼結体が所望の組成
比となるように、Y2 3 及びAl2 3 を加えるよう
にしてもよい。以上、本発明について述べてきたが、本
発明のサーミスタ素子は、上記のごとく、低抵抗値及び
低抵抗温度係数(例えば1000〜4000(°K))
を示す(M1M2)O3 と、サーミスタ素子の抵抗値を
安定化する材料であるAl2 3 (またはY2 3 とA
2 3 )との混合焼結体よりなるa((M1M2)O
3 )・b(Y2 3 )、またはa((M1M2)O3
・b(Y2 3 +Al23 )の一般式で示される材料
である。
【0133】そのため、両者を適宜混合、焼成すること
により、抵抗値及び抵抗温度係数を広い範囲で種々制御
できるため、室温〜1000℃の広い温度域に渡って温
度を検知可能で、室温〜1000℃の熱履歴等の信頼性
の点からも抵抗値の変化がない安定した特性を持つサー
ミスタ材料を提供することができる(上記実施例1〜
8)。
【0134】また、本発明のサーミスタ素子の製造方法
では、サーミスタ原料の微粒化により組成の均一混合を
図り、組成変動を低減することで、サーミスタ素子の抵
抗値のばらつきを低減し、室温〜1000℃において温
度精度が±10℃以下に向上し(従来製造方法では、±
23℃程度)、温度センサの高精度化が可能となるサー
ミスタ素子を提供できる(実施例2〜4及び実施例6〜
8)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1のサーミスタ素子の製造工程
図である。
【図2】上記実施例1におけるサーミスタ素子の構成図
である。
【図3】図2のサーミスタ素子を用いた温度センサの断
面構成図である。
【図4】図3の温度センサの金属パイプの断面構成図で
ある。
【図5】本発明の実施例1〜実施例4のサーミスタ素子
における抵抗値温度特性を示す図表である。
【図6】本発明の実施例2のサーミスタ素子の製造工程
図である。
【図7】本発明の実施例1〜実施例8のサーミスタ素子
におけるセンサ温度精度を示す図表である。
【図8】本発明の実施例3のサーミスタ素子の製造工程
図である。
【図9】本発明の実施例4のサーミスタ素子の製造工程
図である。
【図10】本発明の比較例のサーミスタ素子の抵抗特性
を示す図表である。
【図11】本発明の実施例5のサーミスタ素子の製造工
程図である。
【図12】本発明の実施例5〜実施例8のサーミスタ素
子における抵抗値温度特性を示す図表である。
【図13】本発明の実施例6のサーミスタ素子の製造工
程図である。
【図14】本発明の実施例7のサーミスタ素子の製造工
程図である。
【図15】本発明の実施例8のサーミスタ素子の製造工
程図である。
【符号の説明】
1…サーミスタ素子、2…金属ケース、3…金属パイ
プ、11、12…リード線、13…素子部、31、32
…リード線、33…マグネシア粉体。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 葛岡 馨 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成物(M1M2)O3 において、M1
    は元素周期律表第2A族及びLaを除く第3A族の元素
    から選択される少なくとも1種以上の元素であり、M2
    は元素周期律表第2B族、第3B族、第4A族、第5A
    族、第6A族、第7A族及び第8族の元素から選択され
    る少なくとも1種以上の元素であり、 前記(M1M2)O3 とAl2 3 との混合焼結体(M
    1M2)O3 ・Al23 からなるサーミスタ素子。
  2. 【請求項2】 前記(M1M2)O3 のモル分率をa、
    前記Al2 3 のモル分率をbとし、これらモル分率a
    およびbが、0.05≦a<1.0、0<b≦0.9
    5、a+b=1の関係を満足することを特徴とする請求
    項1に記載のサーミスタ素子。
  3. 【請求項3】 組成物(M1M2)O3 において、M1
    は元素周期律表第2A族及びLaを除く第3A族の元素
    から選択される少なくとも1種以上の元素であり、M2
    は元素周期律表第2B族、第3B族、第4A族、第5A
    族、第6A族、第7A族及び第8族の元素から選択され
    る少なくとも1種以上の元素であり、 前記(M1M2)O3 とY2 3 とAl2 3 との混合
    焼結体(M1M2)O 3 ・Y2 3 ・Al2 3 からな
    るサーミスタ素子。
  4. 【請求項4】 前記(M1M2)O3 のモル分率をa、
    前記Y2 3 と前記Al2 3 とを合計したモル分率を
    bとし、これらモル分率aおよびbが、0.05≦a<
    1.0、0<b≦0.95、a+b=1の関係を満足す
    ることを特徴とする請求項3に記載のサーミスタ素子。
  5. 【請求項5】 前記M1は、Y、Ce、Pr、Nd、S
    m、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、Mg、C
    a、Sr、Ba、Scから選択する1種以上の元素であ
    り、前記M2は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、
    Ni、Zn、Al、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、T
    a、Wから選択する1種以上の元素であることを特徴と
    する請求項1ないし4のいずれか1つに記載のサーミス
    タ素子。
  6. 【請求項6】 前記M1はY、前記M2はCrとMnで
    あり、前記(M1M2)O3 はY(CrMn)O3 であ
    ることを特徴とする請求項5に記載のサーミスタ素子。
  7. 【請求項7】 CaO、CaCO3 およびCaSiO3
    のうち少なくとも1種とSiO2 とからなる焼結助剤が
    含有されていることを特徴とする請求項1ないし6のい
    ずれか1つに記載のサーミスタ素子。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか1つのサー
    ミスタ素子を有することを特徴とする温度センサ。
  9. 【請求項9】 請求項1または2に記載のサーミスタ素
    子を製造する製造方法において、 仮焼成により前記Al2 3 よりも平均粒径が大きい前
    記(M1M2)O3 を得て、 この(M1M2)O3 と前記Al2 3 とを混合して粉
    砕し、粉砕後におけるこの混合物の平均粒径を混合前の
    前記Al2 3 の平均粒径以下とした後、所定形状に成
    形、焼成することを特徴とするサーミスタ素子の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 請求項1または2に記載のサーミスタ
    素子を製造する製造方法において、 前記M2の原料を前記M1の原料と共に混合して粉砕
    し、粉砕後におけるこの混合粉砕物の平均粒径を混合前
    の前記M1の原料の平均粒径以下でかつ0.5μm以下
    とした後に、仮焼成により前記(M1M2)O3 を得
    て、 前記仮焼成により得られた前記(M1M2)O3 と前記
    Al2 3 とを混合した後、所定形状に成形、焼成する
    ことを特徴とするサーミスタ素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記仮焼成により得られた前記(M1
    M2)O3 と前記Al2 3 とを混合して粉砕し、粉砕
    後におけるこの混合物の平均粒径を混合前の前記Al2
    3 の平均粒径以下とした後、所定形状に成形、焼成す
    ることを特徴とする請求項10に記載のサーミスタ素子
    の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項3に記載のサーミスタ素子を製
    造する製造方法において、 仮焼成により前記Al2 3 よりも平均粒径が大きい前
    記(M1M2)O3 を得て、 この(M1M2)O3 と前記Y2 3 と前記Al2 3
    とを混合して粉砕し、粉砕後におけるこの混合物の平均
    粒径を混合前の前記Y2 3 および前記Al23 の平
    均粒径以下とした後、所定形状に成形、焼成することを
    特徴とするサーミスタ素子の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項3に記載のサーミスタ素子を製
    造する製造方法において、 前記M2の原料を前記M1の原料と共に混合して粉砕
    し、粉砕後におけるこの混合粉砕物の平均粒径を混合前
    の前記M1の原料の平均粒径以下でかつ0.5μm以下
    とした後に、仮焼成により前記(M1M2)O3 を得
    て、 前記仮焼成により得られた前記(M1M2)O3 と前記
    2 3 と前記Al23 とを混合した後、所定形状に
    成形、焼成することを特徴とするサーミスタ素子の製造
    方法。
  14. 【請求項14】 前記仮焼成により得られた前記(M1
    M2)O3 と前記Y 2 3 と前記Al2 3 とを混合し
    て粉砕し、粉砕後におけるこの混合物の平均粒径を混合
    前の前記Y2 3 および前記Al2 3 の平均粒径以下
    とした後、所定形状に成形、焼成することを特徴とする
    請求項13に記載のサーミスタ素子の製造方法。
  15. 【請求項15】 請求項3に記載のサーミスタ素子を製
    造する製造方法において、 前記M1の原料として少なくともY2 3 を含むものを
    用い、 仮焼成により前記Al2 3 よりも平均粒径が大きい
    (M1M2)O3 ・Y23 を得て、 この(M1M2)O3 ・Y2 3 と、前記Al2 3
    いは前記Y2 3 および前記Al2 3 とを混合して粉
    砕し、粉砕後におけるこの混合物の平均粒径を混合前の
    前記Y2 3 および前記Al2 3 の平均粒径以下とし
    た後、所定形状に成形、焼成することを特徴とするサー
    ミスタ素子の製造方法。
  16. 【請求項16】 請求項3に記載のサーミスタ素子を製
    造する製造方法において、 前記M1の原料として少なくともY2 3 を含むものを
    用い、 前記M2の原料を前記M1の原料と共に混合して粉砕
    し、粉砕後におけるこの混合粉砕物の平均粒径を混合前
    の前記M1の原料の平均粒径以下でかつ0.5μm以下
    とした後に、仮焼成により(M1M2)O3 ・Y2 3
    を得て、 この(M1M2)O3 ・Y2 3 と、前記Al2 3
    いは前記Y2 3 および前記Al2 3 とを混合した
    後、所定形状に成形、焼成することを特徴とするサーミ
    スタ素子の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記仮焼成により得られた前記(M1
    M2)O3 ・Y2 3 と、前記Al2 3 或いは前記Y
    2 3 および前記Al2 3 とを混合して粉砕し、粉砕
    後におけるこの混合物の平均粒径を混合前の前記Y2
    3 および前記Al2 3 の平均粒径以下とした後、所定
    形状に成形、焼成することを特徴とする請求項16に記
    載のサーミスタ素子の製造方法。
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